(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
発明の背景
疾病の診断及びモニタリングでは、多くの場合、患者から採取された血液、組織、又は他の媒質に対して医療用検査が実行される。そのような検査は自動化された検査機で実行されることが多い。典型的なシナリオでは、特定の検査が実行されることを医師が要求し、患者から試料が採取される。試料はオンサイト又はオフサイトの検査ラボ検査に送られ、検査結果が医師に戻されて検討され、患者に報告される。
【0003】
適切な診断及び治療を確保するために、最初の使用前とその後定期的に医療用検査機は較正されるべきである。
発明の概要
一態様によれば、医療用検査機において較正を実行する方法は、較正材料のパッケージが医療用検査機に挿入されたことを自動的に検知することと、医療用検査機により、較正材料を使用して較正シーケンスを実行して、医療用検査機の較正パラメータを確定することとを含む。本方法は、医療用検査機によって実行される後の検査で使用するために、較正パラメータを電子記憶装置に記憶することを更に含む。幾つかの実施形態において、本方法は、較正材料のパッケージから較正設定値を読み出すことを更に含む。幾つかの実施形態において、較正材料は凍結乾燥した状態で提供され、本方法は、較正シーケンスを実行する前に、医療用検査機を制御して、凍結乾燥した状態の材料を自動的に復元することを更に含む。幾つかの実施形態において、医療用検査機は、洗浄液を使用する液体クロマトグラフィを実行し、洗浄液は、凍結乾燥した状態の材料を復元するためにも使用される。本方法は、復元された材料の少なくとも一部をバイアルから吸引し、吸引された復元材料をバイアルに再注入することにより、復元された材料を攪拌することを更に含んでもよい。医療用検査機は、高速液体クロマトグラフィを実行してもよい。医療用検査機は、血中のHbA1cヘモグロビン濃度を測定する検査を実行してもよい。幾つかの実施形態において、本方法は、較正パラメータを所定の条件と比較することと、較正パラメータが所定の条件を満たさない場合には、自動的に較正を再実行することとを更に含む。幾つかの実施形態において、本方法は、較正パラメータを所定の条件と比較することと、較正パラメータが所定の条件を満たす場合には、自動的に較正を再実行することとを更に含む。較正は二点較正であってもよく、二点較正では、2つの較正パラメータが確定される。較正パラメータは、傾き及び切片(intercept)を含んでもよい。
【0004】
別の態様によれば、医療用検査機は、患者から採取された媒質に対して医学的検査を実行する検査システムと、媒質ハンドリング機構と、プロセッサと、メモリとを備える。メモリは命令を保持し、命令は、プロセッサによって実行されると、較正材料のパッケージが医療用検査機に挿入されたことを自動的に認識することと、較正材料を使用して較正シーケンスを実行して、医療用検査機の較正パラメータを確定することと、医療用検査機によって実行される後の検査で使用するために、較正パラメータをメモリに記憶することとを医療用検査機に実行させる。幾つかの実施形態において、医療用検査機は、スタット入力(STAT input)を更に備え、医療用検査機は、較正材料のパッケージがスタット入力に挿入されたことを自動的に認識する。医療用検査機は、高速液体クロマトグラフィを実行してもよい。医療用検査機は、血中のHbA1cヘモグロビン濃度を測定する検査を実行してもよい。幾つかの実施形態において、医療用検査機はディスプレイを更に備え、命令は、プロセッサによって実行されると、較正シーケンスの進行を示すユーザインタフェース画面をディスプレイに提示することを医療用検査機に更に実行させる。ディスプレイはタッチスクリーンディスプレイであってもよい。
【0005】
別の態様によれば、医療用検査機を較正するための較正材料のパッケージは、少なくとも一方が較正材料である2つの材料と、両材料のそれぞれのための各容器とを備える。両容器は、較正パッケージの使用前に材料同士の間の分離を維持し、容器同士は接続されている。幾つかの実施形態において、両材料のうちの一方は調整用の流体である。両材料のうちの一方は、凍結乾燥した状態の較正材料であってもよい。幾つかの実施形態において、較正材料のパッケージは、それぞれ別々の容器内に2つの較正材料と1つの調整用の流体とを備える。幾つかの実施形態において、較正材料のパッケージは、パッケージが医療用検査機の較正用のものであるという機械可読インジケータをパッケージの外部に更に備える。機械可読インジケータはバーコードであってもよい。幾つかの実施形態において、較正材料のパッケージは、両材料のうちの一方の較正設定値についての機械可読インジケータをパッケージの外部に更に含む。機械可読インジケータはバーコードであってもよい。幾つかの実施形態において、較正材料のパッケージは、互いに接続された採血バイアルの形状である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、医療用検査機のための改良された較正プロセスを提供する。
継続したモニタリング及び繰り返しの検査が必要とされる疾患の一例として糖尿病がある。糖尿病は、患者の体が代謝調整ホルモンであるインスリンを十分に生成しないか、あるいは患者体内の細胞がインスリンに対して適切に応答しないために、血糖値の上昇を患者が示すという種類の疾患に与えられた名称である。糖尿病は、米国及び世界の他の地域でますます広まっている。
【0008】
糖尿病の管理には多くの場合、頻繁な血糖値測定が関わり、多くの患者は、家庭用の血糖値検査装置を使用して、血糖値の瞬間的な読み取りを頻繁に行う。
長期間、通常数ヶ月にわたる患者の平均血糖値は、患者の血液中のHbA1cヘモグロビンの濃度にも反映される。HbA1c濃度の検査は、瞬間血糖値の検査よりも複雑であり、専用の検査機において高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を使用して行うことができる。患者は、1年当たり数回の検査を受けることがあり、その結果得られるHbA1cの測定濃度は、患者の血糖値がどの程度良好にコントロールされているかについての基準として使用される。
【0009】
図1は、本発明の例示の実施形態に係る医療用検査機100を示す。例示の検査機100は、HbA1cヘモグロビンの濃度について血液試料を検査するように構成されているが、本発明の原理が、他の目的で使用されるか、あるいは他の技術を用いる検査機にも同様に適用可能なことが理解されよう。患者から採取された血液を含むバイアル101はラック102に装填され、次に、ラック102は検査機100の入力位置103に配置される。バイアル101は患者の媒質のための容器の一例であるが、他の種類の検査では他の種類の容器を使用してもよい。医療用検査機100内の自動化検査システムは、各バイアルからある量を順に抜き取って、各試料でHPLCを実行して血中のHbA1c濃度を特定する。ラック内の全てのバイアルが検査されると、ラックは出力位置104において機械から取り出される。順序どおりでない(out of sequence)検査を開始するために「スタット入力」105を設けてもよい。スタット入力105にバイアルを配置すると、そのバイアルは、入力位置103に先に配置されていたバイアルよりも高い優先度で検査される。
【0010】
検査結果及び他の情報がディスプレイ画面106上に示される。ディスプレイ画面106は、任意の好適な種類のディスプレイ、例えば、フラットパネル液晶ディスプレイ(LCD)であってもよい。ディスプレイ画面106は、タッチスクリーンを含んでもよく、医療用検査機100のユーザからの入力を受信するための入力装置として機能し得る。
【0011】
HPLCはその性質上、特定の消耗材料、例えば緩衝液及び洗浄液を使用し、消耗材料のパケット107は医療用検査機100内で定期的に交換され得るHPLCで使用される固定媒質も定期的に交換され得る。
【0012】
図2はバイアル101をより詳細に示している。各バイアル101には、試料についての情報を伝える機械可読ラベル201が付されている。多くの異なるラベルの形式が可能である。例示のラベル201は患者識別子202を含み、これは、人間が可読の形態かつバーコード203等の機械が可読の形態で示され得る。ラベル201は、受入番号204も含み得る。受入番号は、数字、アルファベット、英数字、記号、あるいは特定の媒質試料にとって一義的な他の識別子であり得る。受入番号204はバーコード203に符号化することもできる。
【0013】
図3は、本発明の実施形態に係る医療用検査機100の構造の簡略ブロック図を示す。プロセッサ301は全般に、医療用検査機100の動作を制御する。プロセッサ301は、任意の好適な種類のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、あるいは必要とされる機能を実行可能な他の回路であり得る。メモリ302は、異なる種類のメモリを単独で、あるいは組み合わせて含んでもよく、様々なデジタル情報を記憶する。例えば、メモリ302は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリ、他の種類のメモリ、あるいはそれらの任意の好適な組み合わせを含んでもよい。特にメモリ302は大量の情報、例えば医療用検査機100によって実行される検査の結果を不揮発的に記憶する大容量記憶装置303を含む。大容量記憶装置303は、磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、固体状態メモリ、他の種類の記憶装置、あるいはそれらの任意の好適な組み合わせを含んでもよい。
【0014】
メモリ302の一部分は、好ましくは、プロセッサ301によって実行されると、意図される機能を医療用検査機100に実行させる命令を保持する。
医療用検査機100は、患者試料のバイアルを検査のためにシステムの中を移動させるバイアルハンドリング機構304を含む。バイアルリーダ305は、バイアル101から情報を読み取る。例えば、バイアルリーダ305は、ラベル201等のラベルから、患者番号202及び受入番号204等のバーコード化された情報を読み取るバーコードリーダであり得る。他の実施形態では、試料についての情報を取得する異なる機構、例えば、無線周波識別(RFID)スキャナ、光学文字認識、あるいは別の好適な機構を提供し得る。幾つかの実施形態では、ユーザが情報を手動で入力してもよい。
【0015】
抽出機構306は、プロセッサ301の制御下で、検査のために順に各バイアルから血液を自動的に抜き取って、その試料を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)システム307に送る。液体クロマトグラフィは一般に、小量の採取した血液を液体媒質流内に導入し、液体媒質を固定媒質に通すことを含む。導入された血液中の各成分は、液体媒質及び固定媒質との間の異なる相互作用により、異なる速度で固定媒質を移動する。固定媒質は「カラム」と呼ばれることがある。ある時間の後、導入された血液試料の各成分はカラム内で分離され、分離された成分は異なる時間にカラムの端部に到着する。カラム端部の近傍にあるセンサ308は、異なる成分が通過中であることの指標を観測する。指標は、色、屈折率、スペクトル吸収特性、pH、あるいは他の特徴の違いであってもよい。クロマトグラフィの手短な概説が、2012年11月13日に出願された「クロマトグラフィ構成インタフェース(Chromatography Configuration Interface)」というタイトルの同時係属中の米国特許出願第13/675,022号明細書に与えられており、この開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0016】
センサ308の出力がデータをプロセッサ301に渡し、プロセッサ301は検査の結果を特定する。結果はディスプレイ画面106に表示することができる。検査結果は、バイアルラベルから読み出された情報等の他の情報に関連付けられて大容量記憶装置303に記憶される。特に、特定の検査結果は、検査された媒質の受入番号に関連付けられて記憶してもよく、受入番号は後に、患者情報に関連付けられ得る。好ましくは、検査情報に含まれる他の種類の情報としては、検査からの生のセンサ出力、医療用検査機100の最新の較正時間、及びその結果として生成された較正パラメータ、検査で使用された消耗品についてのシリアル番号又は他の識別情報、並びに検査時に課された任意の再検査ルールが挙げられる。他の種類の情報を記憶してもよい。例えば、特定の検査は、試料に伴う問題又は特定の検査での異常により、数値結果を生成しないことがある。この状況では、検査の結果は、報告する数値結果がないことであり得る。本開示において、「結果」という用語は、数値結果あり又は数値結果なしの検査結果を包含する。
【0017】
大容量記憶装置303は、医療用検査機100の内部にあるものとして
図3に示されているが、他の構成も可能であり、添付の特許請求の範囲は他の構成も包含することが意図されている。例えば、大容量記憶装置303の一部又は全てが医療用検査機100の外部にあり、ケーブル又は無線インタフェースによって医療用検査機100に接続されてもよい。幾つかの実施形態において、大容量記憶装置303は、医療用検査機100とは別の場所にあり、コンピュータネットワークを通じて医療用検査機100に接続されてもよい。
【0018】
正確な結果及びそれらの結果の適切な解釈を保証するために、最初の使用前とその後定期的に医療用検査機100を較正することが重要である。較正は通常、既知の特性を有する1つ又は複数の較正材料を医療用検査機100に提示することを含む。較正材料は、実際の検査媒質であるか、あるいは実際の検査媒質を模倣した合成材料であってもよい。較正材料は、較正材料の割当値と呼ばれる特定の検査結果を生成するように準備される。較正材料は、検査システムを使用して検査され、特定の較正材料に対する検査の生の出力が、その較正材料の割当値に対応するものと仮定する。
【0019】
割当値に一致するように生の出力を調整するのに使用することができる1つ又は複数の較正パラメータが特定される。そのパラメータは記憶され、患者の媒質試料の将来の検査に適用される。
【0020】
このプロセスの説明においては例示が有用である。
図4Aは、例示の実施形態に係る較正材料のパッケージ400を示す。他の構成を使用することも可能であるが、例としてのパッケージ400は、ラック102のうちの1つのようなラックに好都合に配置されるよう形成され、互いにまとめられた3つのバイアル401、402、及び403を含む。バイアル401〜403は、標準的な採血バイアルの形状及びサイズのものであってもよく、パッケージ400内で較正材料同士の分離を維持する容器の一例である。バイアル401は調整用の流体を含んでもよく、一方、バイアル402及び403は2つの異なる較正材料を含む。バイアル402は、HbA1c濃度について第1の割当値(この例では、31.1mmol/mol)を有する第1の材料を含み、バイアル403は、HbA1c濃度について第2の割当値(この例では、93.4mmol/mol)を有する第2の材料を含む。パッケージ400は、医療用検査機100がそれを較正材料のパッケージとして自動的に認識することができるように印が付けられていてもよい。例えば、第1のバーコード404は、パッケージ400が較正材料のパッケージであることの印を符号化したものであってもよく、それにより、リーダ305がバーコード404に対面すると、プロセッサ301は、患者の媒質試料の検査ではなく、較正シーケンスを実行すべきであることを即座に認識する。他の情報、例えば、パッケージ400内の較正材料の使用期限日、ロット番号、あるいは他の情報を同様にバーコード404に符号化してもよい。
【0021】
パッケージ400は、任意の作業可能な様式で、例えば、医療用検査機100のラックの入力位置103に配置されるか、あるいはスタット入力105に配置されることにより、医療用検査機に提示し得る。
【0022】
幾つかの実施形態において、バーコード405及び406等の追加のバーコードによって医療用検査機100に他の情報が提供されてもよい。例えば、バーコード405は、バイアル402内の材料の割当値(この例では、31.1mmol/mol)を符号化したものであってもよく、バーコード406は、バイアル403内の材料の割当値(この例では、93.4mmol/mol)を符号化したものであってもよい。これらの値は設定値と呼ぶこともでき、較正材料の製造時に決定され得る。
【0023】
図4Bは、別の例示の実施形態に係る較正材料のパッケージ410を示す。例示のパッケージ410は、調整用の流体及び較正材料を保持するバイアル411、412、及び413を含む。ラベル414は、パッケージ410を較正パッケージとして識別し、パッケージ410についての様々な情報を符号化したバーコード415を含む。例えば、バーコード415は、バイアル412及び413内の較正材料の割当値、使用期限日、ロット番号、あるいは他の種類の情報を符号化したものであってもよい。他の較正構成も可能である。
【0024】
幾つかの実施形態において、医療用検査機100は、較正シーケンスを実行すべきことが認識されると、ユーザインタフェース画面を提示し得る。
図5は、ディスプレイ106等のディスプレイに提示し得る一例としてのユーザインタフェース画面500を示す。医療用検査機100のユーザは、ユーザインタフェース画面500を使用することにより、較正シーケンスに進むか、較正をキャンセルするか、あるいは他の動作をとるように医療用検査機に指示することができる。
【0025】
抽出機構306は、プロセッサ301の制御下で、較正シーケンスで必要とされる混合、あるいは他の必要な処理を実行可能であり得る。例えば、抽出機構306は、バイアル401から調整用の流体を抜き取って、検査を実行するようにカラムを準備し得る。消耗品107のうちの1つ又は複数を、バイアル402及び403のうちの一方又は両方に分注して、較正シーケンスに向けてそれらのバイアル内の材料を調整してもよい。
【0026】
医療用検査機はその後、バイアル402及び403から試料を抜き取って検査を実行し、結果を記憶する。この例では、異なる割当値を有する2つの異なる材料が検査されるため、これは二点較正である。他の実施形態が単一の較正材料又は3つ以上の較正材料を使用し得ることが認識されよう。
【0027】
この例では、バイアル402内の材料に対する検査により30.5mmol/molの読み取り値が生成され、バイアル403内の材料に対する検査により94.9mmol/molの読み取り値が生成されると仮定する。これらの結果を以下の表1にまとめる。
【0028】
【表1】
割当値と実際の読み取り値の不一致が医療用検査機の誤較正によるものであると仮定すると、医療用検査機100は、HbA1c濃度が低い材料では低すぎる結果、HbA1c濃度が高い材料では高すぎる結果を提供することが明らかである。
【0029】
医療用検査機100は、プロセッサ301を使用して、将来の検査結果を補正するために将来の検査に適用すべき較正パラメータを確定することができる。二点較正の場合、割当値への実際の読み取り値の線形変換に基づいて、2つのパラメータを特定することができる。表1中の読み取り値の例については、
割り当て値=0.9674
*実際の読み取り値+1.5946であることを特定するのは容易である。この例では、2つの較正パラメータは、割当値への実際の読み取り値の線形変換の傾き(0.9674)及び切片(1.5946)である。この線形変換が他の濃度レベルでの読み取り値の精度も改善すると仮定すると、傾き及び切片は記憶され、この線形変換が将来の検査の結果に適用される。例えば、患者から採取された媒質の将来の検査において、医療用検査機100が最初に77.4mmol/molという読み取り値を取得する場合、その読み取り値は、
報告される結果=0.9674
*77.4+1.5946=76.5mmol/molに従って調整されてから報告される。
【0030】
実際の実施形態で特定される傾き及び切片は、使用される特定の検査機、実行される検査の種類、及び他の変数に依存する。
幾つかの実施形態において、検査機によって使用される内部測定単位は、検査結果が提示する単位と異なってもよい。例えば、HbA1c濃度についてのHPLC検査の場合、医療用検査機100は、クロマトグラムでの特定のピークの面積を計算して、HbA1c濃度を測定し得るが、mmol/mol単位で検査結果を報告してもよい。この変換は較正において反映されてもよい。
【0031】
単位変換を含む較正を実行するデータの例を以下の表2に示す。この例では、HbA1c濃度に対して医療用検査機が内部で使用する単位は、任意の単位でのHbA1cピークに起因するクロマトグラムの面積である。
【0032】
【表2】
表2の読み取り値の例について、
割当値(mmol/mol)=14.169
*実際の読み取り値(任意の単位)−15.405であることを特定することは容易である。したがって、任意の単位の7.4という面積読み取り値を生成する将来の検査は、
報告される結果=14.169
*7.4−15.405=89.4mmol/molとして報告される。他の単位変換もこのようにして実施され得る。
【0033】
他の実施形態において、より多数又はより少数の較正点を使用してもよい。一点較正では、単一の較正パラメータは、報告前に測定結果に適用される単純なスケーリング係数又はオフセットであり得る。三点較正では、初期読み取り値と報告される読み取り値との間の変換はより複雑であり、例えば、二次方程式である。
【0034】
幾つかの実施形態において、較正材料のうちの1つ又は複数は、凍結乾燥した状態で貯蔵される。例えば、バイアル402及び403内の材料のうちの一方又は両方は、凍結乾燥した形態であってもよい。この場合、材料は、検査が行われる前に、液体を材料に添加することによって復元される。復元に使用される液体は、較正パッケージ内、例えば、バイアル401内で提供してもよく、あるいは医療用検査機内に既に存在する液体を使用してもよい。例えば、クロマトグラフィを実行する医療用検査機100の場合、クロマトグラフィに使用される洗浄液を、凍結乾燥された状態の較正材料の復元に使用してもよい。
【0035】
凍結乾燥した状態の材料の復元に当たり、凍結乾燥した状態の材料に液体を添加してもよく、混合物を攪拌してもよい。幾つかの実施形態において、攪拌は、抽出機構306を使用して、攪拌中のバイアルから混合物の一部又は全てを吸引し、吸引された混合物をバイアルに再注入することによって達成される。吸引及び再注入は、完全な混合を保証するのに必要な回数だけ実行してもよい。
【0036】
幾つかの場合、実施形態に係る医療用検査機は、較正が失敗したことを認識することがあり、較正を自動的に繰り返してもよい。例えば、較正パラメータを確定した後、プロセッサ301は、較正パラメータを所定の条件と比較し、パラメータが所定の条件を満たさない場合には、較正を繰り返してもよい。上記の例では、傾きパラメータは常にゼロよりも大きい値であるべきである。較正の結果が、傾きパラメータが負であるというものである場合、較正は明らかに不良である。この場合、所定の条件は、傾きパラメータが正でなければならないというものである。
【0037】
他の実施形態において、パラメータが期待の範囲外である場合には、較正を繰り返してもよい。例えば、傾きがその期待値から所定の割合を超えて異なる場合、あるいは切片が期待値から所定の量を超えて異なる場合には、較正を繰り返してもよい。所定の量は、実行される特定の検査、較正パラメータの数及び種類、実際の検査結果及び期待される検査結果に使用される測定単位、及び他の要因に依存する。幾つかの実施形態において、傾きが1%、2%、5%、10%、25%を超える場合、あるいは別の好適な量だけ期待値から異なる場合には、検査を繰り返してもよい。繰り返された較正がそれでもなお、期待範囲内になる較正パラメータを生成しない場合には、メンテナンスの必要があることを機械が通知してもよい。
【0038】
幾つかの実施形態において、医療用検査機は、較正の進行についてのユーザフィードバックを提供する。
図6は、この目的での一例としてのユーザインタフェース画面600を示す。例示のユーザインタフェース画面600では、アニメーション化されたカウンタ601が、較正シーケンスにおける残り時間をカウントダウンする。矢印602すなわち陰影付き特徴は、カウンタ601を中心として回転して、検査が進行中であることを示し得る。例えば、矢印602は1秒に1回又は別の好適な速度で回転し得る。ユーザインタフェース画面600の他の領域は、較正の進行を視覚的に示し得る。例えば、ディスプレイにおいて活動状態を強調表示してもよい。強調表示は、色、アニメーション、あるいは他の好適なグラフィック手法を使用することによって達成してもよい。
【0039】
好ましくは、実施形態に係る検査機は、後で検索及び調査するために、較正シーケンスについての情報を記憶する。記憶される情報は、各較正材料で得られたクロマトグラム、各較正材料で測定された結果、較正によって確定された傾き及び切片等の較正パラメータ、あるいは他の情報を含んでもよい。
【0040】
図7は、較正シーケンスに関連する記憶された情報を呼び出すための一例としてのユーザインタフェース画面700を示す。ユーザインタフェース画面700では、ユーザは、例えば、画面106に触れることにより、特定の較正材料の検査を強調表示するころができる。
図7では、特定の較正結果701が強調表示されている。別の制御機構702により、較正に関連付けられた特定の較正結果を選択することもできる。画面の例では、強調表示された較正試料の表データ703及びクロマトグラム704が表示される。較正パラメータ705も表示される。
【0041】
HPLCを使用してHbA1cヘモグロビンの濃度について血液を検査する機械の文脈の中で本発明の実施形態について上述したが、特許請求の範囲はそのように限定されるものではなく、本発明の原理を、他の流体、組織、又は他の患者媒質に対して異なる検査を実行する他の種類の検査機で実施し得ることを理解されたい。本明細書に記載される特徴及び機能の機能する全ての組み合わせも開示されるものとしてみなされることを理解されたい。例えば、本発明を実施する医療用検査機は、上述される互換性のある特徴及び機能の何れか1つ、任意の組み合わせ、あるいは全てを包含し得る。
【0042】
明確さ及び理解を目的として、本発明を詳細に説明してきた。しかしながら、添付の特許請求の範囲内において特定の変更及び変形を実施し得ることが理解されよう。
[付記1]
医療用検査機において較正を実行する方法であって、
較正材料のパッケージが前記医療用検査機に挿入されたことを自動的に検知することと、
前記医療用検査機により、前記較正材料を使用して較正シーケンスを実行して、前記医療用検査機の較正パラメータを確定することと、
前記医療用検査機によって実行される後の検査で使用するために、前記較正パラメータを電子記憶装置に記憶することと
を含む、方法。
【0043】
[付記2]
前記較正材料のパッケージから較正設定値を読み出すことを更に含む、付記1に記載の方法。
【0044】
[付記3]
前記較正材料は凍結乾燥した状態で提供され、前記方法は、前記較正シーケンスを実行する前に、前記医療用検査機を制御して、凍結乾燥した状態の材料を自動的に復元することを更に含む、付記1に記載の方法。
【0045】
[付記4]
前記医療用検査機は、洗浄液を使用する液体クロマトグラフィを実行し、前記洗浄液は、凍結乾燥した状態の材料を復元するためにも使用される、付記3に記載の方法。
【0046】
[付記5]
復元された材料の少なくとも一部をバイアルから吸引し、吸引された復元材料をバイアルに再注入することにより、復元された材料を攪拌することを更に含む、付記3に記載の方法。
【0047】
[付記6]
前記医療用検査機は、高速液体クロマトグラフィを実行する、付記1に記載の方法。
[付記7]
前記医療用検査機は、血中のHbA1cヘモグロビン濃度を測定する検査を実行する、付記1に記載の方法。
【0048】
[付記8]
前記較正パラメータを所定の条件と比較することと、
前記較正パラメータが前記所定の条件を満たさない場合には、自動的に較正を再実行することと
を更に含む、付記1に記載の方法。
【0049】
[付記9]
前記較正パラメータを所定の条件と比較することと、
前記較正パラメータが前記所定の条件を満たす場合には、自動的に較正を再実行することと
を更に含む、付記1に記載の方法。
【0050】
[付記10]
前記較正は二点較正であり、2つの較正パラメータが確定される、付記1に記載の方法。
【0051】
[付記11]
前記較正パラメータは、傾き及び切片を含む、付記9に記載の方法。
[付記12]
患者から採取された媒質に対して医学的検査を実行する検査システムと、
媒質ハンドリング機構と、
プロセッサと、
命令を保持するメモリと
を備えた医療用検査機であって、
前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、
較正材料のパッケージが前記医療用検査機に挿入されたことを自動的に認識することと、
前記較正材料を使用して較正シーケンスを実行して、前記医療用検査機の較正パラメータを確定することと、
前記医療用検査機によって実行される後の検査で使用するために、前記較正パラメータを前記メモリに記憶することと
を前記医療用検査機に実行させる、医療用検査機。
【0052】
[付記13]
スタット入力を更に備え、前記医療用検査機は、前記較正材料のパッケージが前記スタット入力に挿入されたことを自動的に認識する、付記12に記載の医療用検査機。
【0053】
[付記14]
高速液体クロマトグラフィを実行する、付記12に記載の医療用検査機。
[付記15]
血中のHbA1cヘモグロビン濃度を測定する検査を実行する、付記12に記載の医療用検査機。
【0054】
[付記16]
ディスプレイを更に備え、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記較正シーケンスの進行を示すユーザインタフェース画面を前記ディスプレイに提示することを前記医療用検査機に更に実行させる、付記12に記載の医療用検査機。
【0055】
[付記17]
前記ディスプレイはタッチスクリーンディスプレイである、付記16に記載の医療用検査機。