特許第6831413号(P6831413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000002
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000003
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000004
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000005
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000006
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000007
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000008
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000009
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000010
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000011
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000012
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000013
  • 特許6831413-真空ポンプ 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831413
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
   F04D19/04 B
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-56559(P2019-56559)
(22)【出願日】2019年3月25日
(65)【公開番号】特開2019-210931(P2019-210931A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年6月26日
(31)【優先権主張番号】18175114.0
(32)【優先日】2018年5月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ライプ
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・ゴーゴル
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・コッホ
【審査官】 井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2018−501431(JP,A)
【文献】 特表2018−504570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ(111)、又はターボ分子ポンプであって、
ローター軸(153)を有するローター(149)、
ローター軸(153)を支承するための回転支承部(181)、
回転支承部(181)への供給のための流体の作動媒体、および作動媒体の貯蔵の為に適した貯蔵材料を有する作動媒体貯蔵部(21)を有し、
その際、貯蔵材料が、少なくとも二つの異なる材料(M1、M2)を含む真空ポンプ(111)において、
作動媒体貯蔵部(21)に少なくとも一つの移行部分(23)が形成されており、この移行部分が作動媒体を回転支承部(181)に、又は搬送装置に伝達し、そしてその際、移行部分(23)が、丸められた接触領域(25)を有し、及び
二つの材料(M1、M2)は、フェルト繊維の解ける傾向が異なる二つのフェルト材料であり、そしてその際、フェルト繊維が解けにくい構造部材に、スキマーとして使用される移行部分(23)が形成されている、
ことを特徴とする真空ポンプ(111)。
【請求項2】
作動媒体貯蔵部(21)が、少なくとも二つの構造部材(31,33)を有し、そしてその際、少なくとも一方の構造部材(31)が、第一の材料(M1)から成り、そして少なくとも一つの他方の構造部材(33)が、第二の材料(M2)から成り、この材料が、第一の材料(M1)と異なっていることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項3】
材料(M1,M2)が、作動媒体をそれぞれ貯蔵し、かつ搬送も行うものであることを特徴とする請求項1または2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項4】
少なくとも一方の材料(M1,M2)がフェルト材料であり、その際、フェルト材料が、樹脂から製造されており、又はポリエステル、ポリイミド、ポリアラミド、若しくはPBOから製造されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項5】
少なくとも一方の材料(M1,M2)が表面処理を施されており、表面の焦がし、及び/又は熱硬化、及び/又はコーティングを施されたものであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項6】
少なくとも一方の材料(M1,M2)が支持構造、又は支持格子を有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項7】
触領域(25)、0.2mm以上の曲率半径(R1,R2)を有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項8】
作動媒体貯蔵部(21)の貯蔵材料も、移行部分(23)もフェルト材料から製造されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項9】
材料(M1,M2)が、縫合(27)によって又はフェルト化によって、互いに接続されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項10】
材料(M1,M2)が、少なくとも一つの接続要素(29)によって互いに接続されており、その際、接続要素(29)が、作動媒体を搬送するよう形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項11】
材料(M1,M2)が異なるフェルト材料であり、これらフェルト材料が、個々のフェルト繊維が解けるための異なる程度の傾向を有し、そしてその際、フェルト繊維が解けにくい傾向を有するフェルト材料、又はポリエステルが、フェルト繊維が解けやすい傾向を有するフェルト材料、又はポリイミドを少なくとも部分的に取り囲んでいることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項12】
材料(M1,M2)、作動媒体による汚染から回転支承部を保護するようなフィルターでありそしてその際、材料(M1,M2)のフィルター効率が互いに異なり、そしてその際、より高いフィルター効率を有する材料が、より低いフィルター効率を有する材料を少なくとも部分的に取り囲んでいる、又はその逆であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプに関する。これらは、ローター軸を有するローター、ローター軸の支承のための回転支承部、回転支承部への供給の為の流体の作動媒体、および作動媒体を貯蔵するのに適した貯蔵材料を有する作動媒体貯蔵部を有する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプで、回転支承部に作動媒体、特に潤滑媒体を供給するための作動媒体貯蔵部を有するものは基本的に公知である。作動媒体貯蔵部は、その際、スプラッシュナットとも称される円錐形の部分(ローター軸の部分)に設けられていることが可能である。これには作動媒体が伝達される。円錐形の形状によって、小さな直径の部分に付与される作動媒体は、真空ポンプの作動中に遠心力、および毛細管効果による力にさらされる。これによって作動媒体は、大きな直径の部分の領域へと、そしてひいては回転支承部のほうへと搬送される。作動媒体貯蔵部は、多くの場合貯蔵材料を有する。これは作動媒体を染み込ませられている。
【0003】
貯蔵材料の選択は、真空ポンプの特性と後に使用される領域に依存することころが大きい。よって、公知の貯蔵材料のメリットおよびデメリットは、各使用目的に対して互いに比較検討される。これは、つねにデメリットが考慮されなければならないことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2728195号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本願発明の課題は、冒頭に記載した形式の真空ポンプにおいて、作動媒体供給を、真空ポンプの特性と使用目的に関して改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載の特徴を有する真空ポンプによって解決される。
【0007】
発明に係る真空ポンプにおいては、貯蔵材料は、少なくとも二つの異なる材料を有する。これによって異なる材料の各メリットが、貯蔵材料としての仕様の為に組み合わせられることが可能となる。そのような「ハイブリッド貯蔵部」においては、どの材料が、そのメリットに基づいて、他の同様に有利な特性を有する材料より好ましいかを検討する必要が無い。
【0008】
よって例えば異なる材料は、作動媒体の内部に、その各メリットが特に良好に利用されることが可能であるように配置されることが可能である。例えば、耐高温性材料は、作動媒体貯蔵部の箇所において使用されることが可能である。そこでは作動中、例えば摩擦に基づいて特に高い温度となる。
【0009】
作動媒体は、特に、ローラー支承部として形成される回転支承部の潤滑のための潤滑オイルである。
【0010】
本発明の有利な実施形は、請求項、以下の明細書、および図面中にも記載されている。
【0011】
一つの実施形においては、作動媒体貯蔵部が、少なくとも二つの構造部材を有し、その際、少なくとも一方の構造部材が、第一の材料から成り、そして少なくとも一つの他方の構造部材が、第二の材料から成り、この材料が、第一の材料と異なっている。
【0012】
これによって作動媒体貯蔵部は、其々、異なる材料からなる個々の構造部材から組み合わせられることが可能となる。特に、構造部材の形状、大きさおよび配置は、材料に対して追加的に、各要求に応じて意図的に選択されることが可能である。既に存在する真空ポンプは、その作動媒体貯蔵部が同じ材料の複数の個々の部材からなるが、これは、発明に係る作動媒体貯蔵部を設けられることが可能である。
【0013】
個々の構造部材は、例えば、互いに積層された、其々ディスク形状の、またはプレート形状の複数の材料層である。代替として、複雑な形状を実現し、そして例えば、一又は複数の構造部材を、其々、一、又は複数の他の構造部材を、少なくとも部分的に取り囲む、または取り巻く、又は包囲する。特に、複数の構造部材が互いに入れ子式、積層式、又は隣接式にパックされることが可能である。任意に形成された構造部材の任意のパック状の配置が実現されることが可能である。
【0014】
その上、別の実施形に従い、個々の構造部材が、互いに離れて真空ポンプの異なる箇所に配置されていることが可能である。その際、間隔をあけて配置された構造部材が、適当な手段によって互いに接続していることが可能であり、構造部材の間の作動媒体を搬送する。接続手段は、結果、作動媒体に関して搬送を行うよう形成されていることが可能である。接続手段は、チャネル、例えば小さな穴の形式のチャネルであることが可能である。これらの穴は毛細管効果を発揮する。代替として、又は追加的に、接続手段は、一又は複数の芯によって形成されることも可能である。
【0015】
別の実施形においては、材料は、作動媒体に関して貯蔵も搬送も行う。これは材料の使用可能性を改善する。
【0016】
更に、少なくとも一つの材料が、フェルト材料であり、その際、解けにくいフェルト材料が樹脂、又は樹脂繊維から製造されており、好ましくはポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、又はPBOから製造されていることも意図され得る。
【0017】
フェルト材料は、真空ポンプの作動媒体貯蔵部の使用の際に選択されたものである。例えば、樹脂から製造されているフェルト材料は、貯蔵材料としての使用に有利である特定の特性を有することが可能である。
【0018】
ポリエステルフェルトは、例えば、高い貯蔵性を有し、そしてフェルト束から個々の繊維が解ける傾向が低い。
【0019】
ポリイミドフェルトは、これに対して、相対的に温度耐性および摩耗耐性があり、そして作動媒体を特に良好に放出することができる。
【0020】
フェルトの製造のため、各樹脂繊維は、ニードルプロセスによって固化されることが可能である。
【0021】
好ましくは、貯蔵材料は、一、又は複数の特性に関して互いに異なり、そして共通していわば一つの「ハイブリッドフェルト」を形成するフェルト材料のみを有する。
【0022】
好ましくは、少なくとも一つの材料は、焼結された材料であり、特に焼結された樹脂であり、好ましくは焼結された多孔性のUHMW−PEである(UHMW=Ultra Heigh Molecular Weightまたはultrahochmolekular、PE=Polyethylen)。
【0023】
焼結された材料の多孔性と、ひいては良好な流体およびガスの透過性は、発明に従いメリットして利用されることが可能である。
【0024】
別の実施形に従い、少なくとも一方の材料が表面処理を施されており、特に表面の焦がし、及び/又は熱硬化、及び/又はコーティングを施されたものである。
【0025】
表面処理によって、使用される材料の特定の特性が、更に改善されるか、又は達成されることさえあり得る。更に、材料の搬送特性、及び/又は貯蔵特性は、意図的に変更されることが可能である。更に材料は、例えばコーティングによって高い耐摩耗性を、特に摩耗に対して有することが可能であり、又は化学的により安定させられることが可能である。
【0026】
このような背景から、同じ基本材料からなる、しかしそれらの一方は表面処理にさらされた、又は異なる表面処理にさらされた二つの材料が、本発明の意味における異なる材料である。
【0027】
別の実施形に従い、少なくとも一つの材料は、支持構造、特に支持格子を有する。これによって、材料に高い形状安定性が与えられることが可能である。
【0028】
好ましくは、作動媒体貯蔵部に少なくとも一つの移行部分が形成されており、この移行部分が作動媒体を回転支承部に、又は搬送装置に伝達し、そしてその際、移行部分(23)が、丸められた接触領域を有し、この接触領域が、特に0.2mm以上の曲率半径を有する。移行部分のそのような形状によって、あまりに細密で、かつあまりに不安定な構造が防止され、このことは当該材料がフェルトであるとき特に有利である。あまりに細密な構造は繊維が解ける傾向を有している可能性があるからである。
【0029】
移行部分は、接触領域において凹状、または凸状に丸められていることが可能である。
【0030】
発展形に従い、作動媒体貯蔵部の貯蔵材料も、移行部分もフェルト材料から製造されている。よって例えば、フェルトからなる構造部材が、回転支承部、又は搬送部分の方に向けられた縁部領域に、例えばノーズのような突出部、又は凹状に形成された当接部分を設けられていることが可能である。これは、作動媒体の移行部分として使用される。これによって、フェルト材料の、全ての空間的方向において少なくとも基本的に同じ搬送作用が作動媒体の特に効果的な供与のために利用されつくすことが可能である。
【0031】
別の実施形に従い、材料は互いに接続されている、特に縫合によって、又はフェルト化によって接続されている。
【0032】
これによって、特に一様な作動媒体の搬送が行われ、そして作動媒体貯蔵部の取り扱いが簡易化される。このことは特に組み立て、及び/又はのちのサービスに対して有利である。
【0033】
好ましくは、材料は、少なくとも一つの接続要素によって互いに接続されている。その際、接続要素は、作動媒体を搬送するよう形成されている。
【0034】
接続要素は、機械的安定性に寄与し、そして同時に作動媒体を搬送することが可能である。例えば、作動媒体が、例えば複数の積層された材料層のような、複数の構造部材を有するとき、材料層の内部、または外部で、例えば材料層に対して垂直に伸びる一、又は複数の接続要素が材料層をまとめることが可能である。長くのばされた接続要素は、構造部材を通って延びていることが可能である。このために、構造部材内に、接続要素の断面形状に対応して形成された切り欠き部が設けられていることが可能である。
【0035】
作動媒体貯蔵部の材料が、作動媒体を良好に貯蔵し、しかしあまり良好に搬送することができないとき、搬送機能の少なくとも基本的な部分は、接続要素によって担われることが可能である。
【0036】
この接続要素、又は各接続要素は、一つの材料から製造されていることが可能である。この材料は、作動媒体貯蔵部の材料にも適している。
【0037】
別の実施例に従い、材料は、異なるフェルト材料である。これらは、個々のフェルト繊維の解ける傾向が異なり、その際、フェルト繊維に解けにくいフェルト材料、特にポリエステルが、フェルト繊維に解けやすいフェルト材料、特にポリイミドを少なくとも部分的に取り囲んでいる。
【0038】
これによって、解けたフェルト繊維が、真空ポンプの作動に悪影響を与えること、例えば作動媒体サーキットに至ることが防止される。一方の材料は、他方の材料により部分的に、又は完全に包囲されることが可能である。繊維が解けることに関してより危機的である材料は、他方の材料によっていわばカプセル封印されることが可能である。
【0039】
このコンセプトは、フェルト材料と異なる材料においても適用されることが可能である。よって、そのメリットに基づいて望まれる材料を使用することは、真空ポンプのためのその潜在的デメリットに基づいて破棄される必要がない。
【0040】
別の実施形に従い、材料は、作動媒体に関して、そのフィルター効率が互いに異なり、そしてその際、より高いフィルター効率を有する材料が、より低いフィルター効率を有する材料を少なくとも部分的に取り囲んでいる、又はその逆である。
【0041】
外側の領域で高められたフィルター効率によって、例えば作動媒体から粒子が取り除かれることが可能である。これは、作動媒体が内側の領域に達する前に行われる。これは特に、例えばローター軸の回転支承部への、又は、搬送装置への作動媒体の伝達が、作動媒体貯蔵部の内側の領域を介して行われるとき、特に有利である。特に敏感な回転支承部は、そのようにして作動媒体による汚染から保護されることが可能である。
【0042】
以下に本発明を、有利な実施形に基づき添付の図面を参照しつつ説明する。:
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】ターボ分子ポンプの斜視図
図2図1のターボ分子ポンプの下側の図
図3図2に示された線A−Aに沿うターボ分子ポンプの断面図
図4図2に示された線B−Bに沿うターボ分子ポンプの断面図
図5図2に示された線C−Cに沿うターボ分子ポンプの断面図
図6a】発明に係る真空ポンプの作動媒体貯蔵部の一つの実施形の簡略図
図6b図6aに示された線D−Dに沿う断面図
図7a】発明に係る真空ポンプの作動媒体貯蔵部の別の実施形、図6aの図に相応する簡略図
図7b図6aに示された線D−Dに沿う断面図
図8a】発明に係る真空ポンプの作動媒体貯蔵部の別の実施形、図6aの図に相応する簡略図
図8b図6aに示された線D−Dに沿う断面図
図9】発明に係る真空ポンプの作動媒体貯蔵部の別の実施形、図6aの図に相応する簡略図
図10】発明に係る真空ポンプの作動媒体貯蔵部の別の実施形、図6aの図に相応する簡略図
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、インレットフランジ113に取り囲まれたポンプインレット115を有する。このポンプインレットには、公知の方法で、図示されていないレシピエントが接続されることが可能である。レシピエントからのガスは、ポンプインレット115を介してレシピエントから吸引され、そしてポンプを通してポンプアウトレット117へと搬送されることが可能である。ポンプアウトレットには、予真空ポンプ(例えばロータリーベーンポンプ)が接続されていることが可能である。
【0045】
インレットフランジ113は、図1の真空ポンプの向きにおいては、真空ポンプ111のハウジング119の上端部を形成する。ハウジング119は、下部分121を有する。これには、側方にエレクトロニクスハウジング123が設けられている。エレクトロニクスハウジング123内には、真空ポンプ111の電気的、及び/又は電子的コンポーネントが収容されている。これらは例えば、真空ポンプ内に配置される電動モーター125を作動させるためのものである。エレクトロニクスハウジング123には、アクセサリーのための複数の接続部127が設けられている。更に、データインターフェース129(例えばRS485スタンダードに従うもの)と、電源供給接続部131がエレクトロニクスハウジング123には設けられている。
【0046】
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、フローインレット133が、特にフローバルブの形式で設けられている。これを介して真空ポンプ111は溢出を受けることが可能である。下部分121の領域には、更にシールガス接続部135(洗浄ガス接続部とも称される)が設けられている。これを介して、洗浄ガスが、電動モーター15をポンプによって搬送されるガスに対して保護するため、モーター室137内に取り込まれることが可能である。モーター室内には、真空ポンプ111の電動モーター125が収容されることが可能である。下部分121内には、更に二つの冷却媒体接続部139が設けられている。その際、一方の冷却媒体接続部は冷却媒体のインレットとして、そして他方の冷却媒体接続部はアウトレットとして設けられている。冷却媒体は、冷却目的で真空ポンプ内に導かれることが可能である。
【0047】
真空ポンプの下側面141は、起立面として使用されることが可能であるので、真空ポンプ111は下側面141上に起立して作動させられることが可能である。しかしまた、真空ポンプ111は、インレットフランジ113を介してレシピエントに固定されることも可能であり、これによっていわば懸架して作動させられることが可能である。更に真空ポンプ111は、図1に示されたものと異なった向きとされているときにも作動させられることが可能であるよう構成されていることが可能である。下側面141が下に向かってではなく、当該面に向けられて、又は上に向けられて配置されている真空ポンプの実施形も実現されることが可能である。
【0048】
図2に表わされている下側面141には、更に、種々のスクリュー143が設けられている。これらによって、ここでは詳細に特定されない真空ポンプの部材が互いに固定されている。例えば、支承部カバー145が下側面145に固定されている。
【0049】
下側面141には、更に、固定穴147が設けられている。これを介してポンプ111は例えば載置面に固定されることが可能である。
【0050】
図2から5には、冷却媒体配管148が表わされている。この中に、冷却媒体接続部139を介して導入、又は導出される冷却媒体が循環していることが可能である。
【0051】
図3から5の断面図に示されているように、真空ポンプは、複数のプロセスガスポンプ段を有している。これは、ポンプインレット115に及ぶプロセスガスをポンプアウトレット117に搬送するためのものである。
【0052】
ハウジング119内には、ローター149が配置されている。このローターは、回転軸151を中心として回転可能なローター軸153を有している。
【0053】
ターボ分子ポンプ111は、ポンプ効果を奏するよう互いにシリアルに接続された複数のポンプ段を有している。これらポンプ段は、ローター軸153に固定された複数の半径方向のローターディスク155と、ローターディスク155の間に配置され、そしてハウジング119内に固定されているステーターディスク157を有している。その際、一つのローターディスク155とこれに隣接する一つのステーターディスク157がそれぞれ一つのターボ分子ポンプ段を形成している。ステーターディスク157は、スペーサーリング159によって互いに所望の軸方向間隔に保持されている。
【0054】
真空ポンプは、更に、半径方向において互いに入れ子式に配置され、そしてポンプ作用を奏するよう互いにシリアルに接続されたホルベックポンプ段を有する。ホルベックポンプ段のローターは、ローターシャフト153に設けられるローターハブ161と、ローターハブ161に固定され、そしてこれによって担持されるシリンダー側面形状の二つのホルベックロータースリーブ163,165を有している。これらは、回転軸151と同軸に向けられており、そして半径方向において互いに入れ子式に接続されている。更に、シリンダー側面形状の二つのホルベックステータースリーブ167,169が設けられている。これらは同様に、回転軸151に対して同軸に向けられており、そして半径方向で見て互いに入れ子式に接続されている。
【0055】
ポンプ効果を発揮するホルベックポンプ段の表面は、側面によって、つまり、ホルベックロータースリーブ163,165とホルベックステータースリーブ167,169の内側面、及び/又は外側面によって形成されている。外側のホルベックステータースリーブ167の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ、外側のホルベックロータースリーブ163の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、ターボ分子ポンプに後続する第一のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータースリーブ163の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ、内側のホルベックステータースリーブ169の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、第二のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックステータースリーブ169の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ、内側のホルベックロータースリーブ165の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、第三のホルベックポンプ段を形成する。
【0056】
ホルベックロータースリーブ163の下側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられていることが可能である。これを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が、中央のホルベック間隙173と接続されている。更に、ホルベックステータースリーブ169の上側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられていることが可能である。これを介して、中央のホルベック間隙173が、半径方向内側に位置するホルベック間隙175と接続されている。これによって、入れ子式に接続される複数のホルベックポンプ段が互いにシリアルに接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータースリーブ165の下側の端部には、更に、アウトレット117への接続チャネル179が設けられていることが可能である。
【0057】
ホルベックステータースリーブ163、165の上述したポンプ効果を発揮する表面は、それぞれ、螺旋形状に回転軸151の周りを周回しつつ軸方向に延びる複数のホルベック溝を有する。他方で、ホルベックロータースリーブ163、165のこれに向かい合った側面は、滑らかに形成されており、そして真空ポンプ111の作動のためのガスをホルベック溝内へと駆り立てる。
【0058】
ローター軸153の回転可能な支承のため、ポンプインレット117の領域にローラー支承部181、およびポンプアウトレット115の領域に永久磁石支承部183が設けられている。
【0059】
ローラー支承部181の領域には、ローター軸153に円錐形のスプラッシュナット185が設けられている。これは、ローラー支承部181の方に向かって増加する外直径を有している。スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも一つのスキマー(独語:Abstreifer)と滑り接触状態にある。作動媒体貯蔵部は、互いに積層された吸収性の複数のディスク187を有する。これらディスクは、ローラー支承部181のための作動媒体、例えば潤滑剤を染み込ませてある。
【0060】
真空ポンプ111の作動中、作動媒体は、毛細管効果によって作動媒体貯蔵部からスキマーを介して回転するスプラッシュナット185へと伝達され、そして、遠心力によってスプラッシュナット185に沿って、スプラッシュナット185の大きくなる外直径の方向へと、ローラー支承部181に向かって搬送される。そこでは例えば、潤滑機能が発揮される。ローラー支承部181と作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ内において槽形状のインサート189と、支承部カバー145に囲まれている。
【0061】
永久磁石支承部183は、ローター側の支承半部191と、ステーター側の支承半部193を有している。これらは、各一つのリング積層部を有している。リング積層部は、軸方向に互いに積層された永久磁石の複数のリング195、197から成っている。リングマグネット195,197は、半径方向の支承部間隙199を形成しつつ互いに向き合っており、その際、ローター側のリングマグネット195は、半径方向外側に、そしてステーター側のリングマグネット197は半径方向内側に設けられている。支承部間隙199内に存在する地場は、リングマグネット195,197の間の磁気的反発力を引き起こす。これは、ローター軸153の半径方向の支承を実現する。ローター側のリングマグネット195は、ローター軸153のキャリア部分201によって担持されている。これは、リングマグネット195を半径方向外側で取り囲んでいる。ステーター側のリングマグネット197は、ステーター側のキャリア部分203によって担持されている。これは、リングマグネット197を通って延びており、そしてハウジング119の支材205に吊架されている。回転軸151に平行に、ローター側のリングマグネット195が、キャリア部分203と連結されるカバー要素207によって固定されている。ステーター側のリングマグネット197は、回転軸151に平行に、一方の方向でキャリア部分203と接続される固定リング209により、およびキャリア部分203と接続される固定リング211により固定されている。その上、固定リング211とリングマグネット197の間には、さらばね213が設けられていることが可能である。
【0062】
磁石支承部の内部には、緊急用または安全用支承部215が設けられている。これは、真空ポンプの通常の作動時には、非接触で空転し、そしてローター149がステーターに対して半径方向において過剰に偏移した際に初めて作用するに至る。ローター149のための半径方向のストッパーを形成するためである。ローター側の構造がステーター側の構造と衝突するのが防止されるからである。安全用支承部215は、潤滑されないローラー支承部として形成されており、そして、ローター149及び/又はステーターと半径方向の間隙を形成する。この間隙は、安全用支承部215が通常のポンプ作動中は作用しないことに供する。安全用支承部が作用するに至る半径方向の間隙は、十分大きく寸法取られているので、安全用支承部215は、真空ポンプの通常の作動中は作用せず、そして同時に十分小さいので、ローター側の構造がステーター側の構造と衝突するのがあらゆる状況で防止される。
【0063】
真空ポンプ111は、ローター149を回転駆動するための電動モーター125を有している。電動モーター125のアンカーは、ローター149によって形成されている。そのローター軸153はモーターステーター217を通って延びている。ローター軸153の、モーターステーター217を通って延びる部分には、半径方向外側に、または埋め込まれて、永久磁石装置が設けられていることが可能である。ローター149の、モーターステーター217を通って延びる部分と、モーターステーター217との間には、中間空間219が設けられている。これは、半径方向のモーター間隙を有する。これを介して、モーターステーター217と永久磁石装置は、駆動トルク伝達のため、互いに磁気的に影響することが可能である。
【0064】
モーターステーター217は、ハウジング内において、電動モーター125のために設けられるモーター室137の内部に固定されている。シールガス接続部135を介して、シールガス(洗浄ガスとも称され、これは例えば空気や窒素であることが可能である)が、モーター室137内へと至る。シールガスを介して電動モーター125は、プロセスガス、例えばプロセスガスの腐食性の部分に対して保護されることが可能である。モーター室137は、ポンプアウトレット117を介しても真空引きされることが可能である、つまりモーター室137は、少なくとも近似的に、ポンプアウトレット117に接続される読真空ポンプによって実現される予真空状態となっている。
【0065】
モーター室137を画成する壁部221とローターハブ161の間には、更に、いわゆる公知のラビリンスシール223が設けられていることが可能である。特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対してモーター室217をより良好にシールすることを達成するためである。
【0066】
作動媒体貯蔵部の以下に説明する実施例は、上述されたようにターボ分子ポンプ内で使用されることが可能であるが、しかしまた、他の真空ポンプで使用することも可能である。
【0067】
図6aには、ターボ分子真空ポンプのローター軸153の下側の端部領域が示されている。しかもこれは、ローター軸153の回転軸151に沿う断面図で示されている。ローター軸153の為に回転支承部181が設けられている。回転支承部181の領域には、ローター軸153にスプラッシュナット185が設けられている。これは、ローター軸153の円錐形の部分によって形成されている。
【0068】
スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部21によって取り囲まれている。作動媒体貯蔵部は、この実施形においては、材料ディスク187の形式で設けられる二つの構造部材31,33を有する。構造部材31,33は、異なる二つの材料M1,M2から製造されている。第一の材料M1からなる構造部材31には、スキマーとして使用される二つの移行箇所23が形成されている。移行箇所23は、丸められた接触領域25によってスプラッシュナット185と接触している。図6に例示的に示されているように、接触領域25は凸状又は凹状に丸められていることが可能である。
【0069】
作動媒体貯蔵部21は、作動中、回転支承部181のための作動媒体としての潤滑オイルを染み込ませられ、そしてポンプを有する閉じた作動媒体サーキットの構成要素であることが可能であり、そして一又は複数の配管によって作動媒体リザーバーと接続されていることが可能である。作動媒体貯蔵部を真空ポンプ内へと組み込むための様々な可能性が、当業者に基本的に公知である。よって、ここでは詳説されない。
【0070】
すでに冒頭部に記載したように、作動媒体貯蔵部21の様々な材料M1,M2によって様々なメリットが互いに結び付けられることが可能である。例えば、材料M1は特に熱に強く、よって回転するスプラッシュナット185との接触に適しており、移行箇所23を有する構造部材31を形成する。熱により弱いが、例えば作動媒体の搬送により適している材料M2は、これと反対に、他の構造部材33のために使用される。
【0071】
図7aおよび図7bのバリエーションでは、材料M2から成る構造部材3は、材料M1によって製造され、そして移行箇所23を形成する他の構造部材3によって完全に取り囲まれている。構造部材31に対しては、結果、材料M1が選択されることが可能である。この材料は、個々の繊維を解かし出す傾向があるが、しかし例えば、単位ボリュームあたり比較的多くの作動媒体を貯蔵することができる。
【0072】
図8aおよび図8bの実施例においては、材料M1からなる構造部材31が材料M2を有する構造部材32によって、(回転軸151に関して)周囲方向で部分的にのみ取り囲まれている。よって例えば作動媒体は、半径方向内側の構造部材31に直接周囲側で供給されることが可能であり、他方、半径方向外側の構造部材33には貯蔵部機能のみが与えられる。その際、外側の構造部材33は、高い貯蔵性を有し、そして作動媒体の搬送のためには内側の構造部材31よりも低い適性を有することが可能である。
【0073】
図9のバリエーションでは、互いに重ね合わせられた、それぞれディスク形状の二つの構造部材31,32が互いに縫合されている。作動媒体貯蔵部21は、これによって全体として扱うことができる。更に、縫合によって、両方の構造部材31,32が縫合箇所でそれらの全体面を介して互いに密に当接する結果、(回転軸151に関して)構造部材31,32の全断面にわたって、作動媒体にとって理想的な移行が存在しているという結果が得られる。
【0074】
図10の実施例においては、作動媒体貯蔵部21の構造部材31,33は、ピン状の複数の接続要素29によって貫通されている。これら接続要素は、その前に構造部材31,33内に作られた切り欠き部内に配置されている。接続要素29は、其々、各作動媒体を特に良好に搬送する材料から製造されていることが可能である。その結果、作動媒体の個々の構造部材31,33の間での理想的な分配が保証されている。
【0075】
図6から10に表わされているのとは異なり、作動媒体貯蔵部21は代替的な態様では、二つより多くの構造部材31,33を例えば材料層の形で含んでいることが可能である。よって、例えば基本的に任意の数量の個々のフェルトディスクが互いに積層され、そして例えば、図9に従う縫合によって、又は、図10に従う一又は複数の接続要素によって、全体として取り扱い可能な一つのユニットへと組み合わせられることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
21 作動媒体貯蔵部
23 移行箇所
25 丸められた接触領域
27 縫合箇所
29 接続要素
31 構造部材
33 構造部材
104 保護装置
105 冷却リブ
111 ターボ分子ポンプ
113 インレットフランジ
115 ポンプインレット
117 ポンプアウトレット
119 ハウジング
121 下部分
123 エレクトロニクスハウジング
125 電動モーター
127 アクセサリー接続部
129 データインターフェース
131 電源供給接続部
133 フローインレット
135 シールガス接続部
137 モーター室
139 冷却媒体接続部
141 下側面
143 ねじ
145 支承部カバー
147 固定穴
148 冷却媒体配管
149 ローター
151 回転軸
153 ローターシャフト
155 ローターディスク
157 ステーターディスク
159 スペーサーリング
161 ローターハブ
163 ホルベックロータースリーブ
165 ホルベックロータースリーブ
167 ホルベックステータースリーブ
169 ホルベックステータースリーブ
171 ホルベック間隙
173 ホルベック間隙
175 ホルベック間隙
179 接続チャネル
181 ローラー支承部
183 永久磁石支承部
185 スプラッシュナット
187 ディスク
189 インサート
191 ローター側の支承半部
193 ステーター側の支承半部
195 リングマグネット
197 リングマグネット
199 支承部間隙
201 担持部分
203 担持部分
205 半径方向の支柱
207 カバー要素
209 支持リング
211 固定リング
213 さらばね
215 緊急用または安全用支承部
217 モーターステーター
219 中間空間
221 壁部
223 ラビリンスシール
M1 第一の材料
M2 第二の材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10