【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載の特徴を有する真空ポンプによって解決される。
【0007】
発明に係る真空ポンプにおいては、貯蔵材料は、少なくとも二つの異なる材料を有する。これによって異なる材料の各メリットが、貯蔵材料としての仕様の為に組み合わせられることが可能となる。そのような「ハイブリッド貯蔵部」においては、どの材料が、そのメリットに基づいて、他の同様に有利な特性を有する材料より好ましいかを検討する必要が無い。
【0008】
よって例えば異なる材料は、作動媒体の内部に、その各メリットが特に良好に利用されることが可能であるように配置されることが可能である。例えば、耐高温性材料は、作動媒体貯蔵部の箇所において使用されることが可能である。そこでは作動中、例えば摩擦に基づいて特に高い温度となる。
【0009】
作動媒体は、特に、ローラー支承部として形成される回転支承部の潤滑のための潤滑オイルである。
【0010】
本発明の有利な実施形は、請求項、以下の明細書、および図面中にも記載されている。
【0011】
一つの実施形においては、作動媒体貯蔵部が、少なくとも二つの構造部材を有し、その際、少なくとも一方の構造部材が、第一の材料から成り、そして少なくとも一つの他方の構造部材が、第二の材料から成り、この材料が、第一の材料と異なっている。
【0012】
これによって作動媒体貯蔵部は、其々、異なる材料からなる個々の構造部材から組み合わせられることが可能となる。特に、構造部材の形状、大きさおよび配置は、材料に対して追加的に、各要求に応じて意図的に選択されることが可能である。既に存在する真空ポンプは、その作動媒体貯蔵部が同じ材料の複数の個々の部材からなるが、これは、発明に係る作動媒体貯蔵部を設けられることが可能である。
【0013】
個々の構造部材は、例えば、互いに積層された、其々ディスク形状の、またはプレート形状の複数の材料層である。代替として、複雑な形状を実現し、そして例えば、一又は複数の構造部材を、其々、一、又は複数の他の構造部材を、少なくとも部分的に取り囲む、または取り巻く、又は包囲する。特に、複数の構造部材が互いに入れ子式、積層式、又は隣接式にパックされることが可能である。任意に形成された構造部材の任意のパック状の配置が実現されることが可能である。
【0014】
その上、別の実施形に従い、個々の構造部材が、互いに離れて真空ポンプの異なる箇所に配置されていることが可能である。その際、間隔をあけて配置された構造部材が、適当な手段によって互いに接続していることが可能であり、構造部材の間の作動媒体を搬送する。接続手段は、結果、作動媒体に関して搬送を行うよう形成されていることが可能である。接続手段は、チャネル、例えば小さな穴の形式のチャネルであることが可能である。これらの穴は毛細管効果を発揮する。代替として、又は追加的に、接続手段は、一又は複数の芯によって形成されることも可能である。
【0015】
別の実施形においては、材料は、作動媒体に関して貯蔵も搬送も行う。これは材料の使用可能性を改善する。
【0016】
更に、少なくとも一つの材料が、
フェルト材料であり、その際、解けにくいフェルト材料が樹脂、又は樹脂繊維から製造されており、好ましくはポリエステル、ポリイミド、ポリア
ラミド、又はPBOから製造されていることも意図され得る。
【0017】
フェルト材料は、真空ポンプの作動媒体貯蔵部の使用の際に選択されたものである。例えば、樹脂から製造されているフェルト材料は、貯蔵材料としての使用に有利である特定の特性を有することが可能である。
【0018】
ポリエステルフェルトは、例えば、高い貯蔵性を有し、そしてフェルト束から個々の繊維が解ける傾向が低い。
【0019】
ポリイミドフェルトは、これに対して、相対的に温度耐性および摩耗耐性があり、そして作動媒体を特に良好に放出することができる。
【0020】
フェルトの製造のため、各樹脂繊維は、ニードルプロセスによって固化されることが可能である。
【0021】
好ましくは、貯蔵材料は、一、又は複数の特性に関して互いに異なり、そして共通していわば一つの「ハイブリッドフェルト」を形成するフェルト材料のみを有する。
【0022】
好ましくは、少なくとも一つの材料は、焼結された材料であり、特に焼結された樹脂であり、好ましくは焼結された多孔性のUHMW−PEである(UHMW=Ultra Heigh Molecular Weightまたはultrahochmolekular、PE=Polyethylen)。
【0023】
焼結された材料の多孔性と、ひいては良好な流体およびガスの透過性は、発明に従いメリットして利用されることが可能である。
【0024】
別の実施形に従い、少なくとも一方の材料が表面処理を施されており、特に表面の焦がし、及び/又は熱硬化、及び/又はコーティングを施されたものである。
【0025】
表面処理によって、使用される材料の特定の特性が、更に改善されるか、又は達成されることさえあり得る。更に、材料の搬送特性、及び/又は貯蔵特性は、意図的に変更されることが可能である。更に材料は、例えばコーティングによって高い耐摩耗性を、特に摩耗に対して有することが可能であり、又は化学的により安定させられることが可能である。
【0026】
このような背景から、同じ基本材料からなる、しかしそれらの一方は表面処理にさらされた、又は異なる表面処理にさらされた二つの材料が、本発明の意味における異なる材料である。
【0027】
別の実施形に従い、少なくとも一つの材料は、支持構造、特に支持
格子を有する。これによって、材料に高い形状安定性が与えられることが可能である。
【0028】
好ましくは、作動媒体貯蔵部に少なくとも一つの
移行部分が形成されており、この
移行部分が作動媒体を回転支承部に、又は搬送装置に伝達し、そしてその際、
移行部分(23)が、丸められた接触領域を有し、この接触領域が、特に0.2mm以上の曲率半径を有する。
移行部分のそのような形状によって、あまりに細密で、かつあまりに不安定な構造が防止され、このことは当該材料がフェルトであるとき特に有利である。あまりに細密な構造は繊維が解ける傾向を有している可能性があるからである。
【0029】
移行部分は、接触領域において凹状、または凸状に丸められていることが可能である。
【0030】
発展形に従い、作動媒体貯蔵部の貯蔵材料も、
移行部分もフェルト材料から製造されている。よって例えば、フェルトからなる構造部材が、回転支承部、又は搬送部分の方に向けられた縁部領域に、例えばノーズのような突出部、又は凹状に形成された当接部分を設けられていることが可能である。これは、作動媒体の
移行部分として使用される。これによって、フェルト材料の、全ての空間的方向において少なくとも基本的に同じ搬送作用が作動媒体の特に効果的な供与のために利用されつくすことが可能である。
【0031】
別の実施形に従い、材料は互いに接続されている、特に縫合によって、又はフェルト化によって接続されている。
【0032】
これによって、特に一様な作動媒体の搬送が行われ、そして作動媒体貯蔵部の取り扱いが簡易化される。このことは特に組み立て、及び/又はのちのサービスに対して有利である。
【0033】
好ましくは、材料は、少なくとも一つの接続要素によって互いに接続されている。その際、接続要素は、作動媒体を搬送するよう形成されている。
【0034】
接続要素は、機械的安定性に寄与し、そして同時に作動媒体を搬送することが可能である。例えば、作動媒体が、例えば複数の積層された材料層のような、複数の構造部材を有するとき、材料層の内部、または外部で、例えば材料層に対して垂直に伸びる一、又は複数の接続要素が材料層をまとめることが可能である。長くのばされた接続要素は、構造部材を通って延びていることが可能である。このために、構造部材内に、接続要素の断面形状に対応して形成された切り欠き部が設けられていることが可能である。
【0035】
作動媒体貯蔵部の材料が、作動媒体を良好に貯蔵し、しかしあまり良好に搬送することができないとき、搬送機能の少なくとも基本的な部分は、接続要素によって担われることが可能である。
【0036】
この接続要素、又は各接続要素は、一つの材料から製造されていることが可能である。この材料は、作動媒体貯蔵部の材料にも適している。
【0037】
別の実施例に従い、材料は、異なるフェルト材料である。これらは、個々のフェルト繊維の解ける傾向が異なり、その際、フェルト繊維に解けにくいフェルト材料、特にポリエステルが、フェルト繊維に解けやすいフェルト材料、特にポリイミドを少なくとも部分的に取り囲んでいる。
【0038】
これによって、解けたフェルト繊維が、真空ポンプの作動に悪影響を与えること、例えば作動媒体サーキットに至ることが防止される。一方の材料は、他方の材料により部分的に、又は完全に包囲されることが可能である。繊維が解けることに関してより危機的である材料は、他方の材料によっていわばカプセル封印されることが可能である。
【0039】
このコンセプトは、フェルト材料と異なる材料においても適用されることが可能である。よって、そのメリットに基づいて望まれる材料を使用することは、真空ポンプのためのその潜在的デメリットに基づいて破棄される必要がない。
【0040】
別の実施形に従い、材料は、作動媒体に関して、そのフィルター効率が互いに異なり、そしてその際、より高いフィルター効率を有する材料が、より低いフィルター効率を有する材料を少なくとも部分的に取り囲んでいる、又はその逆である。
【0041】
外側の領域で高められたフィルター効率によって、例えば作動媒体から粒子が取り除かれることが可能である。これは、作動媒体が内側の領域に達する前に行われる。これは特に、例えばローター軸の回転支承部への、又は、搬送装置への作動媒体の伝達が、作動媒体貯蔵部の内側の領域を介して行われるとき、特に有利である。特に敏感な回転支承部は、そのようにして作動媒体による汚染から保護されることが可能である。
【0042】
以下に本発明を、有利な実施形に基づき添付の図面を参照しつつ説明する。: