特許第6831415号(P6831415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831415
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】アダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20210208BHJP
【FI】
   A61B34/30
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-63490(P2019-63490)
(22)【出願日】2019年3月28日
(65)【公開番号】特開2020-162638(P2020-162638A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2020年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 健二
(72)【発明者】
【氏名】宗藤 康治
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/205333(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0032444(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/170519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 − 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームに設けられるとともに駆動部材を有する駆動部と、被駆動部材を有する手術器具との間に配置されるアダプタであって、
回転可能に設けられ、前記駆動部の前記駆動部材から前記手術器具の前記被駆動部材に駆動力を伝達する駆動伝達部材を備え、
前記駆動伝達部材は、
前記手術器具の前記被駆動部材と嵌合する第1部材と、
前記第1部材に対して前記手術器具側および前記駆動部側に相対移動可能に設けられ、前記駆動部の前記駆動部材と嵌合する第2部材とを、含み、
前記第2部材は、前記駆動部の前記駆動部材が前記第2部材に嵌合し、かつ、前記手術器具の前記被駆動部材が前記第1部材に嵌合している場合において、前記手術器具の前記被駆動部材に当接することにより、前記第2部材の前記手術器具側への移動を制限する移動制限部を有する、アダプタ。
【請求項2】
前記移動制限部は、突起である、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記突起は、
前記駆動部の前記駆動部材が前記第2部材に嵌合し、かつ、前記手術器具の前記被駆動部材が前記第1部材に嵌合している場合において、前記手術器具の前記被駆動部材に当接していることにより、前記第2部材の前記手術器具側への移動を制限するように設けられている、請求項2に記載のアダプタ。
【請求項4】
前記突起は、
前記駆動部の前記駆動部材が前記第2部材に嵌合し、かつ、前記手術器具の前記被駆動部材が前記第1部材に嵌合している場合において、前記突起と前記手術器具の前記被駆動部材との間に隙間を有し、前記隙間を介して前記第2部材が前記手術器具側へ移動した場合に、前記手術器具の前記被駆動部材に当接することにより、前記第2部材の前記手術器具側への移動を制限するように設けられている、請求項2に記載のアダプタ。
【請求項5】
前記隙間の大きさは、前記第2部材と前記駆動部の前記駆動部材との嵌合高さよりも小さい、請求項4に記載のアダプタ。
【請求項6】
前記被駆動部材は、前記第1部材と嵌合する嵌合凸部を有し、
前記第1部材は、前記突起が挿入される貫通孔が設けられ、前記被駆動部材の前記嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部を有し、
前記突起は、前記第1部材の前記嵌合凹部内において、前記被駆動部材の前記嵌合凸部と当接するように設けられている、請求項2〜5のいずれか1項に記載のアダプタ。
【請求項7】
前記嵌合凸部は、複数設けられており、
前記突起は、前記複数の嵌合凸部と対応するように、複数設けられている、請求項6に記載のアダプタ。
【請求項8】
前記嵌合凹部は、前記貫通孔を有する底面部を有し、
前記突起は、先端部を有し、前記駆動部の前記駆動部材が前記第2部材に嵌合している場合において、前記第1部材の前記嵌合凹部の前記底面部の近傍に、前記先端部が位置するように設けられている、請求項6または7に記載のアダプタ。
【請求項9】
前記突起は、複数設けられており、
前記複数の突起は、前記駆動伝達部材の回転中心を中心として、均等な位置に設けられている、請求項2〜8のいずれか1項に記載のアダプタ。
【請求項10】
前記突起は、先端部を有し、前記先端部が前記第1部材の前記手術器具側の端面から突出しないように設けられている、請求項2〜9のいずれか1項に記載のアダプタ。
【請求項11】
前記駆動伝達部材は、付勢部材を含み、
前記第2部材は、前記付勢部材を介して前記第1部材に対して前記手術器具側および前記駆動部側に相対移動可能に設けられている、請求項1〜10のいずれか1項に記載のアダプタ。
【請求項12】
ドレープを保持するためのドレープアダプタである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アダプタに関し、特に、駆動部と手術器具との間に配置されるアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手術を支援するためのロボット手術システムが知られている。このようなロボット手術システムは、一般的に、ロボットアームを含む患者側装置と、患者側装置を遠隔操作するための遠隔操作装置とを備える。患者側装置のロボットアームには、患者の体内を撮影して可視化するための内視鏡と、患者に対する施術を行うためのエンドエフェクタを含む手術器具とが取り付けられている。医師は、内視鏡による患者の体内の画像を確認しつつ、遠隔操作装置により患者側装置を操作して、患者に対して内視鏡手術を行う。ロボット手術システムでは、手術時に患者の皮膚の切開により形成される傷口を小さくすることができるので、患者への負担を抑えた低侵襲手術を行うことができる。
【0003】
特許文献1には、駆動部であるアダプタ受容部分と、アダプタ受容部分に取り付けられる外科手術器具と、アダプタ受容部分と外科手術器具との間に配置される器具無菌アダプタとを備えたロボット手術システムが開示されている。この器具無菌アダプタは、アダプタ受容部分から外科手術器具に駆動力を伝達するディスクを備えている。ディスクは、外科手術器具のピンと嵌合するホールと、アダプタ受容部分のバネ装填入力のピンと嵌合するホールとを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5403864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたロボット手術システムでは、外科手術器具をアダプタ受容部分に装着する際にバネ装填入力が手術器具側及びアダプタ受容部分(駆動部)側の方向に移動するため、長期間使用しているうちにバネ装填入力が摩耗する虞がある。そして、バネ装填入力を有するアダプタ受容部分がロボットアームに設けられているため、ユーザーによりバネ装填入力を交換することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明の目的は、手術器具を駆動部に装着する際に手術器具側及び駆動部側の方向に移動する部品をユーザーにより容易に交換可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願発明者らは、手術器具を駆動部に装着する際に手術器具側及び駆動部側の方向に移動する部品を、ロボットアームに設けられた駆動部ではなく、ユーザーにより交換されるアダプタに設けることを想到した。
具体的に、この発明の一の局面によるアダプタは、ロボットアームに設けられるとともに駆動部材を有する駆動部と、被駆動部材を有する手術器具との間に配置されるアダプタであって、回転可能に設けられ、駆動部の駆動部材から手術器具の被駆動部材に駆動力を伝達する駆動伝達部材を備え、駆動伝達部材は、手術器具の被駆動部材と嵌合する第1部材と、第1部材に対して手術器具側および駆動部側に相対移動可能に設けられ、駆動部の駆動部材と嵌合する第2部材とを、含み、第2部材は、駆動部の駆動部材が第2部材に嵌合し、かつ、手術器具の被駆動部材が第1部材に嵌合している場合において、手術器具の被駆動部材に当接することにより、第2部材の手術器具側への移動を制限する移動制限部を有する。
【0008】
この発明の一の局面によるアダプタは、手術器具側及び駆動部側の方向に移動する駆動伝達部材を有している。アダプタは、ユーザーが交換する部品であるため、ユーザーにより容易に交換することができる。また、アダプタは、手術のたびに交換する部品であるため、駆動伝達部材の第1部材及び第2部材が摩耗した状態でのアダプタの使用を回避することができる。
また、第2部材は、駆動部の駆動部材が第2部材に嵌合し、かつ、手術器具の被駆動部材が第1部材に嵌合している場合において、手術器具の被駆動部材に当接することにより、第2部材の手術器具側への移動を制限する移動制限部を有する。これにより、大きな振動などの外力に起因してアダプタの駆動伝達部材の第2部材が手術器具側に移動しようとする場合、移動制限部と手術器具の被駆動部材とを当接させることにより、アダプタの駆動伝達部材の第2部材の手術器具側への移動を制限することができる。その結果、アダプタの駆動伝達部材の第2部材と、駆動部の駆動部材との嵌合状態を確実に維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザーが交換するアダプタが、手術器具を駆動部に装着する際に手術器具側及び駆動部側の方向に移動する部品を備えているため、当該部品をユーザーにより容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態によるロボット手術システムの概略を示した図である。
図2】一実施形態によるロボット手術システムの制御的な構成を示したブロック図である。
図3】一実施形態によるロボットアームの駆動部にアダプタを介して手術器具が取り付けられた状態を示した斜視図である。
図4】一実施形態によるロボットアームの駆動部からアダプタおよび手術器具を取り外した状態を示した斜視図である。
図5】一実施形態によるアダプタおよび手術器具をZ2方向側から見た斜視図である。
図6】(A)は、一実施形態によるアダプタの駆動伝達部材を示した斜視図であり、(B)は、一実施形態によるアダプタの駆動伝達部材を示した分解斜視図である。
図7】一実施形態によるアダプタのアダプタ本体部に保持された状態の駆動伝達部材を示した模式的な断面図である。
図8】一実施形態によるロボットアームの駆動部にアダプタが装着され、かつ、アダプタが嵌合されていない状態を示した模式的な断面図である。
図9】一実施形態によるロボットアームの駆動部にアダプタが装着され、かつ、アダプタが嵌合されている状態を示した模式的な断面図である。
図10】一実施形態によるアダプタに手術器具が装着され、かつ、手術器具が嵌合されていない状態を示した模式的な断面図である。
図11】一実施形態によるアダプタに手術器具が装着され、かつ、手術器具が嵌合されている状態を示した模式的な断面図である。
図12】一実施形態の変形例によるアダプタに手術器具が装着され、かつ、手術器具が嵌合されている状態を示した模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(ロボット手術システムの構成)
図1および図2を参照して、一実施形態によるロボット手術システム100の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、ロボット手術システム100は、遠隔操作装置10と、患者側装置20と、を備えている。遠隔操作装置10は、患者側装置20に設けられた医療器具(medical equipment)を遠隔操作するために設けられている。患者側装置20によって実行されるべき動作態様指令が術者(surgeon)である操作者Oにより遠隔操作装置10に入力されると、遠隔操作装置10は、動作態様指令をコントローラ26を介して患者側装置20に送信する。そして、患者側装置20は、遠隔操作装置10から送信された動作態様指令に応答して、ロボットアーム21aに取り付けられた手術器具(surgical instrument)40、ロボットアーム21bに取り付けられた内視鏡50等の医療器具を操作する。これにより、低侵襲手術が行われる。
【0014】
患者側装置20は、患者Pに対して手術を行うインターフェースを構成する。患者側装置20は、患者Pが横たわる手術台30の傍らに配置される。患者側装置20は、複数のロボットアーム21aおよび21bを有し、このうち1つのロボットアーム21bに内視鏡50が取り付けられ、その他のロボットアーム21aに手術器具40が取り付けられる。各ロボットアーム21aおよび21bは、プラットホーム23に共通に支持されている。複数のロボットアーム21aおよび21bは、各々、複数の関節を有し、それぞれの関節には、サーボモータを含む駆動部と、エンコーダ等の位置検出器とが設けられている。ロボットアーム21aおよび21bは、コントローラ26を介して与えられた駆動信号によりロボットアーム21aおよび21bに取り付けられた医療器具が所望の動作を行うように制御されるように構成されている。
【0015】
プラットホーム23は、手術室の床の上に載置されたポジショナ22に支持されている。ポジショナ22は、鉛直方向に調整可能な昇降軸を有する柱部24が、車輪を備え床面を移動可能なベース25に連結されている。
【0016】
ロボットアーム21aには、先端部に医療器具としての手術器具40が着脱可能に取り付けられる。手術器具40は、ロボットアーム21aに取り付けられるハウジング43(図4参照)と、細長形状のシャフト42(図4参照)と、シャフト42の先端部に設けられたエンドエフェクタ41(図4参照)とを備えている。エンドエフェクタ41として、例えば、把持鉗子、シザーズ、フック、高周波ナイフ、スネアワイヤ、クランプ、ステイプラーが挙げられるがこれに限られるものではなく、各種の処置具を適用することができる。患者側装置20を用いた手術において、ロボットアーム21aは、患者Pの体表に留置したカニューラ(トロッカ)を介して患者Pの体内に手術器具40を導入する。そして、手術器具40のエンドエフェクタ41は、手術部位の近傍に配置される。
【0017】
ロボットアーム21bには、先端部に医療器具としての内視鏡50が着脱可能に取り付けられる。内視鏡50は、患者Pの体腔内を撮影するものであり、撮影した画像は、遠隔操作装置10に対して出力される。内視鏡50として、3次元画像を撮影することができる3D内視鏡若しくは2D内視鏡が用いられる。患者側装置20を用いた手術において、ロボットアーム21bは、患者Pに体表に留置したトロッカを介して患者Pの体内に内視鏡50を導入する。そして、内視鏡50が手術部位の近傍に配置される。
【0018】
遠隔操作装置10は、操作者Oとのインターフェースを構成する。遠隔操作装置10は、ロボットアーム21aおよび21bに取り付けられた医療器具を操作者Oが操作するための装置である。すなわち、遠隔操作装置10は、操作者Oによって入力された手術器具40および内視鏡50によって実行されるべき動作態様指令をコントローラ26を介して患者側装置20へ送信可能に構成されている。遠隔操作装置10は、たとえば、マスタの操作をしながらも患者Pの様子がよく見えるように手術台30の傍らに設置される。なお、遠隔操作装置10は、例えば動作態様指令を無線で送信するようにし、手術台30が設置された手術室とは別室に設置することも可能である。
【0019】
手術器具40によって実行されるべき動作態様とは、手術器具40の動作(一連の位置及び姿勢)及び手術器具40個別の機能によって実現される動作の態様である。たとえば、手術器具40が把持鉗子である場合には、手術器具40によって実行されるべき動作態様とは、エンドエフェクタ41の手首のロール回転位置及びピッチ回転位置と、ジョーの開閉を行う動作である。また、手術器具40が高周波ナイフである場合には、手術器具40によって実行されるべき動作態様とは、高周波ナイフの振動動作、具体的には高周波ナイフに対する電流の供給であり得る。また、手術器具40がスネアワイヤである場合には、手術器具40によって実行されるべき動作態様とは、束縛動作および束縛状態の解放動作であり得る。また、バイポーラやモノポーラに電流を供給することによって手術対象部位を焼き切る動作であり得る。
【0020】
内視鏡50によって実行されるべき動作態様とは、たとえば、内視鏡50先端の位置及び姿勢、又はズーム倍率の設定である。
【0021】
遠隔操作装置10は、図1および図2に示すように、操作ハンドル11と、操作ペダル部12と、表示部13と、制御装置14と、を備えている。
【0022】
操作ハンドル11は、ロボットアーム21aおよび21bに取り付けられた医療器具を遠隔で操作するために設けられている。具体的には、操作ハンドル11は、医療器具(手術器具40、内視鏡50)を操作するための操作者Oによる操作を受け付ける。操作ハンドル11は、水平方向に沿って2つ設けられている。つまり、2つの操作ハンドル11のうち一方の操作ハンドル11は、操作者Oの右手により操作され、2つの操作ハンドル11のうち他方の操作ハンドル11は、操作者Oの左手により操作される。
【0023】
また、操作ハンドル11は、遠隔操作装置10の後方側から、前方側に向かって延びるように配置されている。操作ハンドル11は、所定の3次元の操作領域内で動かすことができるように構成されている。すなわち、操作ハンドル11は、上下方向、左右方向、および前後方向に動かすことができるように構成されている。
【0024】
遠隔操作装置10と患者側装置20とは、ロボットアーム21aおよびロボットアーム21bの動作の制御においては、マスタスレーブ型のシステムを構成する。すなわち、操作ハンドル11は、マスタスレーブ型のシステムにおけるマスタ側の操作部を構成し、医療器具が取り付けられたロボットアーム21aおよびロボットアーム21bはスレーブ側の動作部を構成する。そして、操作ハンドル11を操作者Oが操作すると、操作ハンドル11の動きをロボットアーム21aの先端部(手術器具40のエンドエフェクタ41)またはロボットアーム21bの先端部(内視鏡50)がトレースして移動するようにロボットアーム21aまたはロボットアーム21bの動作が制御される。
【0025】
また、患者側装置20は、設定された動作倍率に応じてロボットアーム21aの動作を制御するよう構成されている。たとえば、動作倍率が1/2倍に設定されている場合、手術器具40のエンドエフェクタ41は、操作ハンドル11の移動距離の1/2の移動距離を移動するよう制御される。これによって、精細な手術を精確に行うことができる。
【0026】
操作ペダル部12は、医療器具に関する機能を実行するための複数のペダルを含んでいる。複数のペダルは、凝固ペダルと、切断ペダルと、カメラペダルと、クラッチペダルと、を含んでいる。また、複数のペダルは、操作者Oの足により操作される。
【0027】
凝固ペダルは、手術器具40を用いて手術部位を凝固させる操作を行うことができる。具体的には、凝固ペダルは、操作されることにより、手術器具40に凝固用の電圧が印加されて、手術部位の凝固が行われる。切断ペダルは、手術器具40を用いて手術部位を切断させる操作を行うことができる。具体的には、切断ペダルは、操作されることにより、手術器具40に切断用の電圧が印加されて、手術部位の切断が行われる。
【0028】
カメラペダルは、体腔内を撮像する内視鏡50の位置及び姿勢を操作するために用いられる。具体的には、カメラペダルは、内視鏡50の操作ハンドル11による操作を有効にする。つまり、カメラペダルが押されている間は、操作ハンドル11により内視鏡50の位置および姿勢を操作することが可能である。たとえば、内視鏡50は、左右の操作ハンドル11の両方を用いることにより操作される。具体的には、左右の操作ハンドル11の中間点を中心に左右の操作ハンドル11を回動させることにより、内視鏡50が回動される。また、左右の操作ハンドル11を共に押し込むことにより、内視鏡50が奥に進む。また、左右の操作ハンドル11を共に引っ張ることにより、内視鏡50が手前に戻る。また、左右の操作ハンドル11を共に上下左右に移動させることにより、内視鏡50が上下左右に移動する。
【0029】
クラッチペダルは、ロボットアーム21aおよび21bと、操作ハンドル11との操作接続を一時切断し手術器具40の動作を停止させる場合に用いられる。具体的には、クラッチペダルが操作されている間は、操作ハンドル11を操作しても、患者側装置20のロボットアーム21aおよび21bが動作しない。たとえば、操作により操作ハンドル11が移動可能な範囲の端部近傍に来た場合に、クラッチペダルが操作されることにより、操作接続を一時切断して、操作ハンドル11を中央位置付近に戻すことができる。そして、クラッチペダルの操作を中止するとロボットアーム21aおよび21bと操作ハンドル11とが再び接続され、中央付近で操作ハンドル11の操作を再開することができる。
【0030】
表示部13は、内視鏡50が撮像した画像を表示することができるものである。表示部13は、スコープ型表示部または非スコープ型表示部からなる。スコープ型表示部とは、たとえば、覗き込むタイプの表示部である。また、非スコープ型表示部とは、通常のパーソナルコンピュータのディスプレイのような覗き込むタイプではない平坦な画面を有する開放型の表示部を含む概念である。
【0031】
スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置20のロボットアーム21bに取り付けられた内視鏡50により撮像された3D画像が表示される。非スコープ型表示部が取り付けられた場合にも、患者側装置20に設けられた内視鏡50により撮像された3D画像が表示される。なお、非スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置20に設けられた内視鏡50により撮像された2D画像が表示されてもよい。
【0032】
図2に示すように、制御装置14は、例えば、CPU等の演算器を有する制御部141と、ROMおよびRAM等のメモリを有する記憶部142と、画像制御部143とを含んでいる。制御装置14は、集中制御する単独の制御装置により構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御装置により構成されてもよい。制御部141は、操作ハンドル11により入力された動作態様指令を、操作ペダル部12の切替状態に応じて、ロボットアーム21aによって実行されるべき動作態様指令であるか、または、内視鏡50によって実行されるべき動作態様指令であるかを判定する。そして、制御部141は、操作ハンドル11に入力された動作態様指令が手術器具40によって実行されるべき動作態様指令であると判断すると、動作態様指令をロボットアーム21aに対して送信する。これによって、ロボットアーム21aが駆動され、この駆動によってロボットアーム21aに取り付けられた手術器具40の動作が制御される。
【0033】
また、制御部141は、操作ハンドル11に入力された動作態様指令が内視鏡50によって実行されるべき動作態様指令であると判定すると、当該動作態様指令をロボットアーム21bに対して送信する。これによって、ロボットアーム21bが駆動され、この駆動によってロボットアーム21bに取り付けられた内視鏡50の動作が制御される。
【0034】
記憶部142には例えば手術器具40の種類に応じた制御プログラムが記憶されていて、取り付けられた手術器具40の種類に応じて制御部141がこれらの制御プログラムを読み出すことにより、遠隔操作装置10の操作ハンドル11及び/又は操作ペダル部12の動作指令が個別の手術器具40に適合した動作をさせることができる。
【0035】
画像制御部143は、内視鏡50が取得した画像を表示部13に伝送する。画像制御部143は、必要に応じて画像の加工修正処理を行う。
【0036】
(手術器具、アダプタ、ドレープおよびロボットアームの構成)
図3図11を参照して、一実施形態による手術器具40、アダプタ60、ドレープ70およびロボットアーム21aの構成について説明する。
【0037】
図3図5に示すように、手術器具40は、ロボットアーム21aにアダプタ60を介して取り外し可能に接続される。アダプタ60は、ロボットアーム21aの後述する駆動部200と、手術器具40との間に配置される。アダプタ60は、ドレープ70を保持するためのドレープアダプタであり、手術のたびにユーザーにより交換される。これにより、アダプタ60を利用してドレープ70を保持することができる。ドレープ70は、ロボットアーム21aを覆うためのドレープであり、滅菌処理されている。アダプタ60は、ロボットアーム21aとの間にドレープ70を挟み込むように構成されている。
【0038】
手術器具40は、Z2方向側に配置されたハウジング43の取付面40aがアダプタ60に取り付けられる。また、アダプタ60は、Z1方向側に配置された取付面60aに手術器具40が取り付けられる。また、アダプタ60は、Z2方向側に配置された取付面60bがロボットアーム21aの駆動部200に取り付けられる。また、ロボットアーム21aの駆動部200は、Z1方向側に配置された取付面21cにアダプタ60が取り付けられる。
【0039】
ロボットアーム21aは、清潔区域において使用されるため、ドレープ70により覆われる。ここで、手術室では、手術により切開した部分および医療機器が病原菌や異物などにより汚染されることを防ぐため、清潔操作が行われる。この清潔操作においては、清潔区域および清潔区域以外の区域である汚染区域が設定される。手術部位は、清潔区域に配置される。操作者Oを含む手術チームのメンバーは、手術中、清潔区域に殺菌されている物体のみが位置するよう配慮し、かつ、汚染区域に位置している物体を清潔区域に移動させる場合は、この物体に滅菌処理を施す。同様に、操作者Oを含む手術チームのメンバーがその手を汚染区域に位置させたときは、清潔区域に位置している物体に直接接触する前に、手の滅菌処理を行う。清潔区域において用いられる器具は、滅菌処理が行われる、または、滅菌処理されたドレープ70により覆われる。
【0040】
ドレープ70は、ロボットアーム21aを覆う本体部71と、ロボットアーム21aの駆動部200とアダプタ60との間に挟み込まれる取付部72とを備えている。本体部71は、フィルム状に形成された可撓性フィルム部材により構成されている。可撓性フィルム部材は、熱可塑性ポリウレタンやポリエチレンなどの樹脂材料からなっている。本体部71には、ロボットアーム21aの駆動部200とアダプタ60とが互いに係合可能なように、開口部が設けられている。本体部71の開口部には、開口部を塞ぐように取付部72が設けられている。取付部72は、樹脂成形部材により構成されている。樹脂成形部材は、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料からなる。取付部72は、本体部71に比べて硬く(撓みにくく)形成されている。取付部72は、ロボットアーム21aの駆動部200とアダプタ60とが互いに係合可能なように、開口部が設けられている。取付部72の開口部は、ロボットアーム21aの駆動部200とアダプタ60との係合する部分に対応するように設けられていてもよい。また、取付部72の開口部は、ロボットアーム21aの駆動部200とアダプタ60との複数の係合する部分に対応するように複数個設けられていてもよい。
【0041】
手術器具40は、ハウジング43内に設けられ、Z方向に延びる回転軸線A1(図10参照)について回転可能に設けられた複数(4つ)の被駆動部材44(図5参照)を備えている。複数の被駆動部材44は、エンドエフェクタ41を操作(駆動)するために設けられている。たとえば、被駆動部材44は、シャフト42内に挿通されたワイヤやケーブルなどの細長要素(図示せず)により、エンドエフェクタ41と接続されている。これにより、被駆動部材44の回転に応じてワイヤが駆動されるとともに、ワイヤの駆動に応じてエンドエフェクタ41が操作(駆動)される。また、たとえば、被駆動部材44は、ギヤ(図示せず)を介してシャフト42に接続されている。これにより、被駆動部材44の回転に応じてシャフト42が回転されるとともに、シャフト42の回転に応じてエンドエフェクタ41が回転操作される。
【0042】
被駆動部材44は、ロボットアーム21aの駆動部200からの駆動力を伝達されるために、アダプタ60の後述する駆動伝達部材62と嵌合する嵌合凸部441を含んでいる。嵌合凸部441は、被駆動部材44のZ2方向側の表面からアダプタ60側(Z2方向側)に向かって突出するように設けられている。また、嵌合凸部441は、Y1方向側の被駆動部材44に設けられた嵌合凸部441aと、Y2方向側の被駆動部材44に設けられた嵌合凸部441bとを含んでいる。嵌合凸部441aと嵌合凸部441bとは、互いに異なる形状を有している。また、嵌合凸部441aと嵌合凸部441bとは、それぞれ、アダプタ60の後述する嵌合凹部621aと嵌合凹部621bと対応する形状を有している。
【0043】
アダプタ60は、アダプタ本体部61と、アダプタ本体部61にZ方向に延びる回転軸線A2(図6(A)参照)について回転可能に保持された複数(4つ)の駆動伝達部材62とを備えている。アダプタ本体部61は、Z方向に貫通する複数(4つ)の貫通孔611を含んでいる。複数の貫通孔611の各々には、駆動伝達部材62が回転軸線A2について回転可能に配置されている。駆動伝達部材62は、手術器具40の複数(4つ)の被駆動部材44に対応するように複数(4つ)設けられている。駆動伝達部材62は、ロボットアーム21aからの駆動力を手術器具40の被駆動部材44に伝達するように構成されている。駆動伝達部材62は、手術器具40の被駆動部材44の嵌合凸部441と嵌合する嵌合凹部621(図4参照)を含んでいる。嵌合凹部621は、駆動伝達部材62の手術器具40側(Z1方向側)に、駆動伝達部材62のZ1方向側の表面から手術器具40側とは反対側(Z2方向側)に向かって窪むように形成されている。また、嵌合凹部621は、Y1方向側の駆動伝達部材62に設けられた嵌合凹部621aと、Y2方向側の駆動伝達部材62に設けられた嵌合凹部621bとを含んでいる。嵌合凹部621aと嵌合凹部621bとは、互いに異なる形状を有している。
【0044】
また、駆動伝達部材62は、ロボットアーム21aの駆動部200の後述する駆動部材201の嵌合凸部201bと嵌合する嵌合凹部622(図5参照)を含んでいる。嵌合凹部622は、駆動伝達部材62のロボットアーム21a側(Z2方向側)に、駆動伝達部材62のZ2方向側の表面からロボットアーム21a側とは反対側(Z1方向側)に向かって窪むように形成されている。なお、複数の駆動伝達部材62は、嵌合凹部621aと嵌合凹部621bとが互いに異なる形状を有していることを除いて、実質的に同様の構成を有している。
【0045】
ロボットアーム21aは、手術器具40の被駆動部材44を駆動するための駆動部200を備えている。駆動部200は、手術器具40の被駆動部材44に与える駆動力を発生する。具体的には、駆動部200は、手術器具40の複数の被駆動部材44に対応するように設けられた、複数(4つ)の駆動部材201を含んでいる。駆動部材201は、駆動源であるモータを含むアクチュエータ201aと、アクチュエータ201aによりZ方向に延びる回転軸線A3(図8参照)について回転される嵌合凸部201bとを有している。嵌合凸部201bは、駆動部材201のZ1方向側の表面からアダプタ60側(Z1方向側)に向かって突出するように設けられている。
【0046】
(アダプタの駆動伝達部材に関する構成)
図6(A)(B)、図7図11に示すように、駆動伝達部材62は、上記した嵌合凹部621を有し、手術器具40の被駆動部材44と嵌合する第1部材623と、上記した嵌合凹部622を有し、ロボットアーム21aの駆動部200の駆動部材201と嵌合する第2部材624と、を含んでいる。第1部材623は、取付面60a側(Z1方向側)に配置されている。第2部材624は、取付面60b側(Z2方向側)に配置されている。また、第1部材623は、第2部材624と嵌合する嵌合凹部623aを有している。また、第2部材624は、ばね625を収容する収容凹部624aを有している。第1部材623と第2部材624とは、ばね625を間に挟んだ状態でZ方向に相対移動可能に嵌合している。また、第1部材623と第2部材624とは、アダプタ60のアダプタ本体部61により、Z方向に相対移動可能に保持されている。なお、図6(A)および(B)では、嵌合凹部621bが設けられた駆動伝達部材62のみを示しているが、嵌合凹部621aが設けられた駆動伝達部材62も、嵌合凹部621bが設けられた駆動伝達部材62と同様の構成を有している。また、ばね625は、特許請求の範囲の「付勢部材」の一例である。
【0047】
第1部材623は、ばね625を介して第2部材624に対してZ方向に相対移動可能に設けられている。すなわち、第1部材623は、ばね625を介して第2部材624に対して手術器具40側(Z1方向側)および駆動部200側(Z2方向側)に相対移動可能に設けられている。これにより、ばね625を利用して第1部材623を第2部材624に対して容易に相対移動させることができる。また、手術器具40をアダプタ60に装着する際に、駆動伝達部材62の第1部材623をZ2方向側に窪むように移動させることができる。また、第2部材624は、ばね625を介して第1部材623に対してZ方向に相対移動可能に設けられている。すなわち、第2部材624は、ばね625を介して第1部材623に対して手術器具40側(Z1方向側)および駆動部200側(Z2方向側)に相対移動可能に設けられている。これにより、ばね625を利用して第2部材624を第1部材623に対して容易に相対移動させることができる。また、アダプタ60をロボットアーム21aの駆動部200に装着する際に、駆動伝達部材62の第2部材624をZ1方向側に窪むように移動させることができる。ばね625は、第1部材623をZ1方向側に付勢し、第2部材624をZ2方向側に付勢している。ばね625は、圧縮ばね(圧縮コイルばね)である。
【0048】
また、第1部材623と第2部材624とは、Z方向に延びる回転軸線A2について一体的に回転するように構成されている。具体的には、第1部材623は、第2部材624と回転方向に係合するように、第2部材624と嵌合する嵌合凸部623bを有している。また、第2部材624は、第1部材623と回転方向に係合するように、第1部材623と嵌合する嵌合凹部624bを有している。嵌合凸部623bは、第1部材623の嵌合凹部623aの内周部から内側に突出するように設けられており、第2部材624の嵌合凹部624bと係合する。嵌合凹部624bは、第2部材624の外周部に内側に窪むように設けられており、第1部材623の嵌合凸部623bと係合する。また、第2部材624の嵌合凹部624bと第1部材623の嵌合凸部623bとは、ばね625を介して第1部材623または第2部材624がZ方向に移動した場合にも、互いの係合状態を維持するように設けられている。これにより、駆動伝達部材62は、ばね625を介して第1部材623または第2部材624がZ方向に移動した場合にも、第1部材623と第2部材624とが一体的に回転するように構成されている。
【0049】
また、第2部材624は、嵌合凹部622内に設けられた貫通孔624cを有している。貫通孔624cは、第2部材624を、回転軸線A2が延びる方向である回転軸方向(Z方向)に貫通している。貫通孔624cは、回転軸方向から見て、略円形状を有している。第1部材623は、第2部材624の貫通孔624cにZ方向に挿入される挿入部623cを有している。挿入部623cは、回転軸方向に延びるように設けられている。挿入部623cは、略円柱形状を有している。第2部材624の貫通孔624cおよび第1部材623の挿入部623cは、共に、駆動伝達部材62の回転中心に設けられている。また、ばね625は、挿入部623cを取り囲むように設けられている。
【0050】
第2部材624は、駆動部200の駆動部材201が第2部材624に嵌合し、かつ、手術器具40の被駆動部材44が第1部材623に嵌合している場合において、手術器具40の被駆動部材44に当接することにより、第2部材624の手術器具40側(Z1方向側)への移動を制限する移動制限部である突起624dを有している。これにより、大きな振動などの外力に起因してアダプタ60の駆動伝達部材62の第2部材624が手術器具40側に移動しようとする場合、突起624dと手術器具40の被駆動部材44とを当接させることにより、アダプタ60の駆動伝達部材62の第2部材624の手術器具40側への移動を制限することができる。その結果、アダプタ60の駆動伝達部材62の第2部材624と、駆動部200の駆動部材201との嵌合状態が確実に維持される。
【0051】
突起624dは、手術器具40側(Z1方向側)の端部である先端部624daと、駆動部200側(Z2方向側)の端部である基端部624db(根元部)とを有している。突起624dは、基端部624db側(Z2方向側)から先端部624da側(Z1方向側)に向かって、回転軸方向(Z方向)に延びるように設けられている。突起624dは、略円柱形状を有している。
【0052】
突起624dの先端部624daは、手術器具40の被駆動部材44とZ方向に対向する平坦な面624dcを有している。面624dcは、第2部材624の手術器具40側(Z1方向側)への移動の制限時において、手術器具40の被駆動部材44と当接する当接面である。具体的には、面624dcは、手術器具40の被駆動部材44の嵌合凸部441の面441cと当接するように設けられている。面441cは、面624dcとZ方向に対向する平坦な面である。基端部624dbは、第2部材624の周壁部624eと一体的に設けられている。これにより、細長状の突起624dを基端部624dbにおいて強固に支持することができる。周壁部624eは、第1部材623の嵌合凹部623aと嵌合する部分である。周壁部624eは、駆動伝達部材62の回転方向に沿って延びるように設けられている。
【0053】
また、本実施形態では、突起624dは、駆動部200の駆動部材201が第2部材624に嵌合し、かつ、手術器具40の被駆動部材44が第1部材623に嵌合している場合において、突起624dと手術器具40の被駆動部材44との間に隙間626(図11参照)を有している。突起624dは、隙間626を介して第2部材624が手術器具40側(Z1方向側)へ移動した場合に、手術器具40の被駆動部材44に当接することにより、第2部材624の手術器具40側への移動を制限するように設けられている。これにより、隙間626の大きさの分だけ、第2部材624の移動の自由度を確保しつつ、第2部材624と、駆動部材201との嵌合状態を確実に維持することができる。すなわち、第2部材624の移動の自由度を確保した分だけ、第2部材624に負荷が掛かることを抑制しつつ、第2部材624と、駆動部材201との嵌合状態を確実に維持することができる。
【0054】
隙間626は、突起624dの被駆動部材44との当接面(面624dc)と、被駆動部材44の突起624dとの当接面(面441c)との間の空間である。隙間626は、第2部材624が手術器具40側へ移動していない場合において、大きさL1(図11参照)を有している。隙間626の大きさL1は、ゼロよりも大きい。また、隙間626の大きさL1は、第2部材624と駆動部200の駆動部材201との嵌合高さL2よりも小さい。これにより、第2部材624が、手術器具40側へ移動した場合にも、第2部材624が、嵌合高さL2よりも小さい距離である隙間626の大きさL1分だけしか、手術器具40側へ移動しないので、第2部材624と、駆動部材201との嵌合状態を確実に維持することができる。なお、第2部材624と、駆動部材201との嵌合状態を確実に維持する観点からは、隙間626の大きさL1は、嵌合高さL2よりも小さい程好ましい。隙間626の大きさL1は、たとえば、嵌合高さL2の1/2以下とすることができる。
【0055】
隙間626の大きさL1は、第2部材624が手術器具40側へ移動するにつれて徐々に小さくなる。隙間626の大きさL1は、突起624dと被駆動部材44とが当接している状態で、ゼロである。突起624dは、隙間626が大きさL1を有し、被駆動部材44と当接していない状態と、隙間626がなくなって、被駆動部材44と当接している状態との間で遷移するように設けられている。なお、隙間626の大きさL1とは、たとえば、突起624dの被駆動部材44との当接面(面624dc)と、被駆動部材44の突起624dとの当接面(面441c)との間のZ方向の距離である。また、嵌合高さL2とは、たとえば、第2部材624と駆動部200の駆動部材201とのZ方向の嵌合量である。
【0056】
また、本実施形態では、第1部材623は、第2部材624の突起624dが挿入される貫通孔623dを有している。貫通孔623dは、第1部材623を、回転軸方向(Z方向)に貫通している。貫通孔623dは、突起624dに対応するように、回転軸方向から見て、略円形状を有している。貫通孔623dは、第1部材623の嵌合凹部621の底面部621cに設けられている。突起624dは、嵌合凹部621の貫通孔623dを介して第1部材623側(Z1方向側)に突出して露出するように設けられている。また、突起624dは、駆動部200の駆動部材201が第2部材624に嵌合し、かつ、手術器具40の被駆動部材44が第1部材623に嵌合しているときに第2部材624が手術器具40側へ移動した場合に、第1部材623の嵌合凹部621内において、被駆動部材44の嵌合凸部441と当接するように設けられている。これにより、被駆動部材44の嵌合凸部441を利用して、第2部材624の手術器具40側への移動を制限することができる。その結果、専用の移動制限部を被駆動部材44に設ける必要がないので、被駆動部材44の構造が複雑化することを抑制しつつ、第2部材624の手術器具40側への移動を制限することができる。
【0057】
また、突起624dは、駆動部200の駆動部材201が第2部材624に嵌合している場合において、第1部材623の嵌合凹部621の底面部621cの近傍に、先端部624daが位置するように設けられている。すなわち、突起624dは、第2部材624が最も駆動部200側(Z2方向側)に移動している状態で、第1部材623の嵌合凹部621の底面部621cの近傍に、先端部624daが位置するように設けられている。これにより、第1部材623の嵌合凹部621内における突起624dの突出量を少なくすることができる。その結果、被駆動部材44の嵌合凸部441と第1部材623の嵌合凹部621との嵌合量を容易に確保することができる。
【0058】
また、突起624dは、先端部624daが第1部材623の手術器具40側の端面623eから手術器具40側に突出しないように設けられている。これにより、突起624dの先端部624daが第1部材623の端面623eから突出する場合と異なり、突起624dの先端部624daに意図しない外力が加わり、突起624dに負荷が掛かることを抑制することができる。突起624dは、第2部材624が最も手術器具40側(Z1方向側)に移動している状態で、第1部材623の端面623eの近傍に、先端部624daが位置するように設けられている。
【0059】
また、本実施形態では、突起624dは、被駆動部材44の複数(2つ)の嵌合凸部441に対応するように、複数(2つ)の突起624dを含んでいる。これにより、第2部材624の手術器具40側への移動の制限時に、複数の嵌合凸部441と複数の突起624dとを当接させることができる。その結果、第2部材624の手術器具40側への移動をより確実に制限することができる。また、複数の突起624dは、駆動伝達部材62の回転中心を中心として、均等な位置に設けられている。これにより、複数の突起624dが駆動伝達部材62の回転中心を中心として不均等な位置に設けられている場合と異なり、第2部材624の手術器具40側への移動の制限時に、第2部材624の突起624dにより移動が制限される側の部分に対して、第2部材624の突起624dにより移動が制限されない側の部分が傾くことを抑制することができる。その結果、第2部材624が傾いた状態で、第2部材624の手術器具40側への移動が制限されることを抑制することができる。複数の突起624dは、駆動伝達部材62の回転中心に対して等距離の位置に設けられているとともに、駆動伝達部材62の回転方向に沿って等角度間隔(本実施形態では、180度間隔)の位置に設けられている。
【0060】
(アダプタおよび手術器具の装着)
次に、図8図11を参照して、ロボットアーム21aの駆動部200へのアダプタ60の装着、および、アダプタ60への手術器具40の装着について説明する。患者側装置20では、ロボットアーム21aの駆動部200へアダプタ60が装着された後、駆動部200に装着されたアダプタ60へ手術器具40が装着される。なお、図8図11では、理解の容易化のために、駆動部200の駆動部材201の嵌合凸部201bを簡略化して示している。同様に、図10および図11では、理解の容易化のために、手術器具40の被駆動部材44の嵌合凸部441を簡略化して示している。
【0061】
まず、図8および図9を参照して、ロボットアーム21aの駆動部200へのアダプタ60の装着について説明する。なお、ドレープ70の図示を省略しているが、ロボットアーム21aの駆動部200へのアダプタ60の装着は、駆動部200とアダプタ60との間にドレープ70を挟んだ状態で行われる。
【0062】
図8は、ロボットアーム21aの駆動部200へアダプタ60が装着されたが、駆動部200の駆動部材201と、アダプタ60の駆動伝達部材62とが未嵌合である状態を示している。この状態では、駆動部材201の嵌合凸部201bにより、第2部材624がZ1方向側(手術器具40側)に押されるため、第2部材624がばね625を介して第1部材623に対してZ1方向側に移動される。この際、第2部材624の突起624dは、先端部624daが第1部材623の端面623eから突出しないように、第1部材623の貫通孔623dに回転軸方向(Z方向)に挿入された状態である。
【0063】
そして、駆動部材201の嵌合凸部201bにより第2部材624がZ1方向側に押された状態で、駆動部材201が回転軸線A3について回転される。これにより、駆動部材201の嵌合凸部201bが、第2部材624の嵌合凹部622と嵌合可能な位置まで移動される。その結果、図9に示すように、第2部材624がばね625を介して第1部材623に対してZ2方向側(駆動部200側)に移動されるとともに、駆動部材201の嵌合凸部201bと、第2部材624の嵌合凹部622とが互いに嵌合される。駆動部材201の嵌合凸部201bと、第2部材624の嵌合凹部622との嵌合量は、L2(図11参照)である。これにより、駆動伝達部材62が駆動部材201による駆動力を受けることが可能になり、駆動伝達部材62が駆動部材201による駆動力により回転軸線A2について回転可能になる。この際、第2部材624の突起624dは、先端部624daが第1部材623の嵌合凹部621の底面部621cの近傍に位置するように、第1部材623の貫通孔623dに回転軸方向(Z方向)に挿入された状態である。
【0064】
次に、図10および図11を参照して、アダプタ60への手術器具40の装着について説明する。
【0065】
図10は、ロボットアーム21aの駆動部200に装着されたアダプタ60へ手術器具40が装着されたが、アダプタ60の駆動伝達部材62と、手術器具40の被駆動部材44とが未嵌合である状態を示している。この状態では、被駆動部材44の嵌合凸部441により、第1部材623がZ2方向側(駆動部200側)に押されるため、第1部材623がばね625を介して第2部材624に対してZ2方向側に移動される。この際、第2部材624の突起624dは、先端部624daが第1部材623の端面623eから突出しないように、第1部材623の貫通孔623dに回転軸方向(Z方向)に挿入された状態である。
【0066】
そして、被駆動部材44の嵌合凸部441により第1部材623がZ2方向側に押された状態で、駆動伝達部材62が駆動部材201により回転軸線A2について回転される。これにより、駆動伝達部材62の第1部材623の嵌合凹部621が、被駆動部材44の嵌合凸部441と嵌合可能な位置まで移動される。その結果、図11に示すように、第1部材623がばね625を介して第2部材624に対してZ1方向側(手術器具40側)に移動されるとともに、第1部材623の嵌合凹部621と、被駆動部材44の嵌合凸部441とが互いに嵌合される。これにより、被駆動部材44が駆動伝達部材62を介して駆動部材201による駆動力を受けることが可能になり、被駆動部材44が駆動伝達部材62を介した駆動部材201による駆動力により回転軸線A1について回転可能になる。この際、第2部材624の突起624dは、先端部624daが第1部材623の嵌合凹部621の底面部621cの近傍に位置するように、第1部材623の貫通孔623dに回転軸方向(Z方向)に挿入された状態である。
【0067】
また、第2部材624の突起624dと、被駆動部材44の嵌合凸部441との間には、大きさL1を有する隙間626が形成されている。この状態において、大きな振動などの外力に起因して、第2部材624がZ1方向側(手術器具40側)に移動された場合、第2部材624の突起624dと、被駆動部材44の嵌合凸部441とが嵌合凹部621内において当接するため、第2部材624のZ1方向側への移動が制限される。その結果、第2部材624の駆動部材201との嵌合状態が確実に維持される。
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、手術器具40をロボットアーム21aの駆動部200に装着する際に、アダプタ60の駆動伝達部材62の第1部材623及び第2部材624が手術器具40側及び駆動部200側の方向に移動する。すなわち、アダプタ60が手術器具を駆動部に装着する際に手術器具側及び駆動部側の方向に移動する部品を備えている。そのため、アダプタ60を交換することで、前記手術器具側及び駆動部側の方向に移動する部品を交換することができる。ここで、アダプタ60は、ユーザーが交換する部品であるため、ユーザーにより容易に交換することができる。また、アダプタ60は、手術のたびに交換する部品であるため、第1部材623及び第2部材624が摩耗した状態でのアダプタ60の使用を回避することができる。
ところで、上記特許文献1に記載のロボット手術システムにおいて、仮にバネ装填入力が摩耗した状態で使用された場合には、駆動部とアダプタとの間の嵌合状態が意図せず解除される虞がある。そのため、駆動部とアダプタとの間の嵌合状態を検知するためのセンサをロボット手術システムに設けることが考えられる。これに対し、本実施形態では、第2部材624が突起624dを有しているため、駆動部200とアダプタ60との間の嵌合状態を確実に維持することができ、その結果、駆動部200とアダプタ60との間の嵌合状態を検知するためのセンサを不要にすることができる。
【0068】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0069】
たとえば、上記実施形態では、第2部材の突起と手術器具の被駆動部材との間に、隙間が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2部材の突起と手術器具の被駆動部材との間に、隙間が設けられていなくてもよい。たとえば、図12に示す変形例では、第2部材624の突起624dと手術器具40の被駆動部材44との間に隙間626(図11参照)が設けられていない。すなわち、図12に示す変形例では、突起624dは、駆動部200の駆動部材201が第2部材624に嵌合し、かつ、手術器具40の被駆動部材44が第1部材623に嵌合している場合において、手術器具40の被駆動部材44(嵌合凸部441)に当接していることにより、第2部材624の手術器具40側(Z1方向側)への移動を制限するように設けられている。これにより、第2部材624と、駆動部材201との嵌合状態を確実に維持することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、第2部材の突起と、手術器具の被駆動部材の嵌合凸部とが当接することにより、第2部材の手術器具側への移動が制限される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2部材の手術器具側への移動を制限し得る限り、第2部材の突起が、被駆動部材の嵌合凸部以外と当接するように設けられていてもよい。たとえば、第2部材の突起が、被駆動部材のアダプタ側の面と当接するように設けられていてもよい。この場合、第1部材の嵌合凹部の底面部以外(たとえば、手術器具側の端面623e)に、第2部材の突起が挿入される貫通孔が設けられていてもよい。
【0071】
また、上記第実施形態では、第2部材の突起が、2つの突起を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2部材の手術器具側への移動を制限し得る限り、第2部材の突起が、1つの突起のみを含んでいてもよいし、3つ以上の突起を含んでいてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、第2部材の突起が、略円柱形状を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2部材の手術器具側への移動を制限し得る限り、第2部材の突起が、略円柱形状以外の形状を有していてもよい。たとえば、第2部材の突起が、略角柱形状を有していてもよいし、柱形状以外の形状を有していてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、第2部材の突起が、駆動部の駆動部材が第2部材に嵌合している場合において、第1部材の嵌合凹部の底面部の近傍に、先端部が位置するように設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2部材の突起が、駆動部の駆動部材が第2部材に嵌合している場合において、必ずしも、第1部材の嵌合凹部の底面部の近傍に、先端部が位置するように設けられていなくてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、第2部材の複数の突起が、駆動伝達部材の回転中心を中心として、均等な位置に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2部材の複数の突起のうちの1つの突起が、駆動伝達部材の回転中心に設けられるとともに、第2部材の複数の突起のうちの他の突起が駆動伝達部材の回転中心を中心として、均等な位置に設けられていてもよい。また、第2部材の突起が、1つの突起のみを含む場合、この1つの突起が、駆動伝達部材の回転中心に設けられていてもよい。また、第2部材の複数の突起が、駆動伝達部材の回転中心を中心として、必ずしも均等な位置に設けられていなくてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、第2部材の突起が、先端部が第1部材の手術器具側の端面から突出しないように設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2部材の突起が、先端部が第1部材の手術器具側の端面から突出するように設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
40:手術器具、44:被駆動部材、60:アダプタ、62:駆動伝達部材、200:駆動部、201:駆動部材、201b:嵌合凸部、441:嵌合凸部、621:嵌合凹部、621c:底面部、623:第1部材、623d:貫通孔、624:第2部材、624d:突起、624da:先端部、625:ばね(付勢部材)、626:隙間、L1:隙間の大きさ、L2:嵌合高さ
図1
図2
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図4
図5
図6
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図10
図11
図12