特許第6831466号(P6831466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831466
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】印刷ヘッドのための圧力制御システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20210208BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20210208BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   B41J2/175 121
   B41J2/175 501
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
   B41J2/165 205
   B41J2/175 171
【請求項の数】32
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2019-536036(P2019-536036)
(86)(22)【出願日】2017年12月13日
(65)【公表番号】特表2020-503195(P2020-503195A)
(43)【公表日】2020年1月30日
(86)【国際出願番号】IB2017057878
(87)【国際公開番号】WO2018122655
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2020年12月9日
(31)【優先権主張番号】62/439,950
(32)【優先日】2016年12月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】グラスマン, バラク
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−200903(JP,A)
【文献】 特開2010−264678(JP,A)
【文献】 特開2015−058657(JP,A)
【文献】 特開2008−149527(JP,A)
【文献】 再公表特許第2016/098536(JP,A1)
【文献】 特開2012−210824(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0004653(US,A1)
【文献】 中国実用新案第202200661(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンターのための圧力制御システムであって、圧力制御システムが:
体積を持つ圧力室;
前記圧力室に流体接続され、かつ前記圧力室中に空気をポンピングすることによって前記圧力室内の圧力を増加するため、及び前記圧力室から外に空気をポンピングすることによって前記圧力室内の圧力を減少するために適応されたポンプ;
前記圧力室に制御可能に流体接続可能な第一ポート、一つ以上のインクジェット印刷ヘッドに制御可能に流体接続可能な第二ポート、及び大気空気と制御可能に流体接続可能な第三ポートを有する制御可能な三ポート二方弁;及び
一つ以上の圧力センサーを含む圧力センサーユニットであって、前記圧力室内の圧力を感知するために前記圧力室と流体連通している圧力センサーユニット
を含み、
前記圧力センサーユニットが、前記圧力室内の圧力を表わす信号を少なくとも一つの処理装置/制御装置に送るために適応され、前記ポンプが、前記ポンプの操作を制御するために前記少なくとも一つの処理装置/制御装置から制御信号を受けるために適応され、前記弁が、前記弁の操作を制御するために前記少なくとも一つの処理装置/制御装置から制御信号を受けるために適応されており
前記処理装置/制御装置が、前記第一ポートが閉鎖されているときに前記圧力室内の圧力を増加するために、及び前記第一ポートと前記第二ポートの間に開放流路があるときに前記圧力室内の圧力を減少するために前記ポンプに信号を送るように構成されている、圧力制御システム。
【請求項2】
前記少なくとも一つの処理装置/制御装置が、
前記圧力制御システムに含まれ、かつ前記弁及び前記ポンプの操作を制御するために適応された少なくとも一つの処理装置/制御装置であって、前記少なくとも一つの処理装置/制御装置がまた、少なくとも第二処理装置/制御装置から指令信号を受けるために前記プリンターの一つ以上の印刷ヘッドの操作を制御する少なくとも第二処理装置/制御装置と通信するために適応されているもの;
前記プリンターに含まれ、かつ前記圧力制御システムの操作を制御するために適応され、かつ前記プリンターの前記一つ以上の印刷ヘッドの操作を制御するための少なくとも一つの処理装置/制御装置;及び
前記圧力制御システムに含まれる少なくとも一つの処理装置/制御装置と、前記プリンターに含まれ、かつ前記圧力制御システムの前記少なくとも一つの処理装置/制御装置と通信する少なくとも一つの処理装置/制御装置との組み合わせであって、前記組み合わせが、前記ポンプ及び前記弁を操作するため、及び前記プリンターの前記一つ以上の印刷ヘッドの操作を制御するために適応されているもの、
から選択される、請求項1に記載の圧力制御システム。
【請求項3】
圧力制御システムがまた、前記ポンプに入る空気を濾過するために前記ポンプと大気空気との間で流体接続されたフィルターを含む、請求項1又は2に記載の圧力制御システム。
【請求項4】
前記弁の前記第二ポートが、前記一つ以上のインクジェット印刷ヘッド内の圧力を制御するために一つ以上の中空導管によって前記一つ以上のインクジェット印刷ヘッドに流体接続され、前記圧力制御システムがまた、前記インクが前記第二ポートに入る前に一つ以上の中空導管を通して前記一つ以上のインクジェット印刷ヘッドからのインクの逆流を検出するためのインク逆流検出センサーを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の圧力制御システム。
【請求項5】
前記一つ以上の中空導管が、透明中空導管であり、前記インク逆流検出センサーが、光センサーである、請求項4に記載の圧力制御システム。
【請求項6】
前記ポンプが、可逆回転形蠕動ポンプである、請求項1〜5のいずれかに記載の圧力制御システム。
【請求項7】
前記ポンプが、ステッパーモーターを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の圧力制御システム。
【請求項8】
前記圧力センサーユニットが、
前記圧力室内に配置された圧力センサーユニット;及び
前記圧力室の外側に配置され、かつ前記一つ以上の圧力センサーに接続された一つ以上の中空導管を通して前記圧力室に流体接続された圧力センサーユニット、
から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の圧力制御システム。
【請求項9】
前記圧力センサーユニットが、複数の圧力センサーを含み、前記複数の圧力センサーの各圧力センサーが、前記圧力センサーユニットのダイナミックレンジ及び/又は解像度を増加するために前記圧力室内で達成可能な圧力のフルレンジのサブレンジにおいて圧力を感知するために適応されている、請求項1〜8のいずれかに記載の圧力制御システム。
【請求項10】
前記三ポート二方弁が、ソレノイド弁である、請求項1〜9のいずれかに記載の圧力制御システム。
【請求項11】
以下のものを含む、インクジェットプリンター:
請求項1に記載の圧力制御システム;及び
少なくとも一つの制御可能に移動可能なインクジェット印刷ヘッドであって、前記少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッドが、前記少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッド内に配置された少なくとも一つの内部インクリザーバー内の圧力レベルを制御するために前記圧力制御システムに流体接続されているもの。
【請求項12】
前記少なくとも一つの処理装置/制御装置が、
前記圧力制御システムに含まれ、かつ前記弁及び前記ポンプの操作を制御するために適応された少なくとも一つの処理装置/制御装置であって、前記少なくとも一つの処理装置/制御装置がまた、少なくとも第二処理装置/制御装置から指令信号を受けるために前記プリンターの少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッドの操作を制御する少なくとも第二処理装置/制御装置と通信するために適応されているもの;
前記プリンターに含まれ、かつ前記圧力制御システムの操作を制御するために適応され、かつ前記プリンターの前記少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッドの操作を制御するための少なくとも一つの処理装置/制御装置;及び
前記圧力制御システムに含まれる少なくとも一つの処理装置/制御装置と、前記プリンターに含まれ、かつ前記圧力制御システムの前記少なくとも一つの処理装置/制御装置と通信する少なくとも一つの処理装置/制御装置との組み合わせであって、前記組み合わせが、前記ポンプ及び前記弁を操作するため、及び前記プリンターの前記少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッドの操作を制御するために適応されているもの、
から選択される、請求項11に記載のプリンター。
【請求項13】
圧力制御システムがまた、前記ポンプに入る空気を濾過するために前記ポンプと大気空気との間で流体接続されたフィルターを含む、請求項11又は12に記載のプリンター。
【請求項14】
前記弁の前記第二ポートが、前記少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッド内の圧力を制御するために中空導管によって前記少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッドに流体接続され、前記圧力制御システムがまた、前記インクが前記第二ポートに入る前に前記中空導管を通して前記少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッドからのインクの逆流を検出するためのインク逆流検出センサーを含む、請求項11〜13のいずれかに記載のプリンター。
【請求項15】
前記中空導管が、透明中空導管であり、前記インク逆流検出センサーが光センサーである、請求項14に記載のプリンター。
【請求項16】
前記ポンプが、可逆回転形蠕動ポンプである、請求項11〜15のいずれかに記載のプリンター。
【請求項17】
前記ポンプが、ステッパーモーターを含む、請求項11〜16のいずれかに記載のプリンター。
【請求項18】
前記圧力センサーユニットが、
前記圧力室内に配置された圧力センサーユニット;及び
前記圧力室の外側に配置され、かつ前記一つ以上の圧力センサーに接続された一つ以上の中空導管を通して前記圧力室に流体接続された圧力センサーユニット、
から選択される、請求項11〜17のいずれかに記載のプリンター。
【請求項19】
前記圧力センサーユニットが、複数の圧力センサーを含み、前記複数の圧力センサーの各圧力センサーが、前記圧力センサーユニットのダイナミックレンジ及び/又は解像度を増加するために前記圧力室内で達成可能な圧力のフルレンジのサブレンジにおいて圧力を感知するために適応されている、請求項11〜18のいずれかに記載のプリンター。
【請求項20】
前記三ポート二方弁が、ソレノイド弁である、請求項11〜19のいずれかに記載のプリンター。
【請求項21】
前記インクジェットプリンターが、2Dインクジェットプリンター及び3Dインクジェットプリンターから選択される、請求項11〜20のいずれかに記載のプリンター。
【請求項22】
請求項1に記載の圧力制御システムを含むインクジェットプリンターの印刷ヘッドにおいて圧力を制御するための方法であって、下記の工程を含む方法:
前記圧力制御システムの前記圧力センサーユニットから圧力関連信号を受ける、但し前記圧力関連信号が、前記圧力室内の圧力レベルを表わす;
前記印刷ヘッドを操作するための印刷制御信号を受ける;
ポンプ制御信号を前記ポンプに与えるか、及び/又は弁制御信号を前記弁に与えるために前記圧力関連信号及び/又は前記制御信号を処理する。
【請求項23】
前記処理の工程が、以下の工程を含む、請求項22に記載の方法:
真空モード制御信号を受ける;
前記印刷ヘッドを大気に流体接続し、前記圧力室を大気から接続解除するために前記弁を閉鎖する;
前記圧力室内の圧力を真空モード圧力レベルに減少するように前記ポンプを操作する;及び
前記印刷ヘッドを前記圧力室に流体接続するために前記弁を開放する。
【請求項24】
前記真空モード圧力レベルが、設定又は予備設定圧力レベルである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポンプを操作する前記工程が、前記ポンプを操作する前記工程の前に前記圧力室内の圧力を大気圧と平衡させることができるように前記弁を閉鎖する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記処理の工程が、以下の工程を含む、請求項22に記載の方法:
前記印刷ヘッドのパージを実施するためのパージ制御信号を受ける;
前記印刷ヘッド内の圧力を大気圧と平衡させることができるように前記弁を閉鎖する;
前記圧力室内の圧力をパージ圧力レベルまで増加するように前記ポンプを操作する;及び
前記印刷ヘッドをパージするために、前記印刷ヘッドを大気から流体接続解除し、前記圧力室を前記印刷ヘッドに流体接続するように前記弁を開放する。
【請求項27】
前記パージ圧力レベルが、設定又は予備設定値である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記処理の工程がまた、前記パージが前記圧力室内の圧力を真空モード圧力レベルに等しいか又はそれより小さいレベルに減少することを完了した後に前記ポンプのポンピングの方向を逆転することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記処理の工程がまた、インク逆流が検出されるかどうかをチェックし、インク逆流が検出されたなら、インクが前記圧力制御システムに入ることを防止するために前記圧力室内の圧力を増加するように前記ポンプを操作する工程を含む、請求項22〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記チェックの工程がまた、前記防止後に前記ポンプを使用不能にする工程を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記チェックの工程がまた、インク逆流メッセージを出力する工程を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
インクジェットプリンターの印刷ヘッドにおいて圧力を制御するための圧力制御システムであって、圧力制御システムが:
圧力室に制御可能に流体接続可能な第一ポート、インクジェット印刷ヘッドに制御可能に流体接続可能な第二ポート、及び大気空気と制御可能に流体接続可能な第三ポートを有する三ポート二方弁;及び
第一流路又は第二流路を前記弁内に形成させるように前記弁を制御するように構成されている制御装置
を含み、
前記第一流路は、前記大気空気から接続解除され、前記圧力室と前記インクジェットプリンターの印刷ヘッドを接続し、
前記第二流路は、前記圧力室から接続解除され、前記インクジェットプリンターの印刷ヘッドと大気空気を接続し、
前記制御装置は、前記第二流路が形成されているときに前記圧力室内の圧力を増加し、前記第一流路が形成されているときに前記圧力室内の圧力を減少するためにポンプを操作するように構成されている、圧力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2016年12月29日出願の米国仮特許出願No.62/439950の優先権の利益を主張し、その内容は、参考としてそれらの全体をここに組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、その一部の実施形態では、インクジェットプリンターに関し、特に限定されないが、インクジェット印刷ヘッドに付与される圧力を制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
インクジェット印刷技術は、多くの用途のために現在使用されている。例えば、2Dインクジェットプリンター(ページ又は他の平坦なもしくは平坦でない表面の上にパターンを印刷するためのもの)は、家庭、オフィス、及び産業印刷用途のためにデスクトップ印刷用途で広範に使用されている。最近、2Dインクジェット技術は、有機電子構成要素の製造のために好適な有機材料を含むインクを使用することによって選択された2D表面の上に様々なタイプの電子回路全体及び/又は別の電子構成要素(電気伝導体、抵抗、コンデンサー、トランジスター、ダイオード、及び他の電子構成要素)を印刷することに適用されている。
【0004】
インクジェット技術はまた、規定された3D物体を製造することができる3Dプリンターに使用するために適応されることができる。付加製造(AM)は、一般に3D物体が物体のコンピューターモデルを利用して製造される方法である。かかる方法は、視覚化、デモンストレーション、機械的試作、並びにラピットマニュファクチャリングの目的のためのデザイン関連分野のような様々な分野で使用されている。
【0005】
いずれのAMシステムの基本操作も3Dコンピューターモデルを薄い断面にスライスし、その結果を二次元位置データに変換し、そのデータを、層状に3D構造を構築するシステムの制御装置に供給することからなる。
【0006】
AMは、3D印刷、例えば3Dインクジェット印刷、ステレオリソグラフィー、薄膜積層法、熱溶解積層法などを含む製造法に多くの異なるアプローチを伴なう。
【0007】
3D印刷法では、例えば構築材料は、一つ以上の印刷ヘッドを含む印刷ブロックから吐出される。印刷ヘッドの各々は、一組又は一列のノズルを有し、それから材料を印刷トレイの上に選択的に吐出して一回で3D物体の一つの層を形成することができる。構築材料に依存して、層は、次いで印刷ブロックに担持されている好適な装置を使用して硬化又は凝固されることができる。構築材料は、物体を形成する造形用材料、及び物体が構築されるときに物体を支持する支持体材料を含むことができる。印刷ブロックは、支持構造を走査し、それをパターン化する。様々な3D印刷技術が存在し、それらは、例えば米国特許第6259962,6569373,6658314,6850334,7183335,7209797,7225045,7300619,7364686,7500846,7658976,7962237,8781615及び9031680、及び米国出願公開第20130040091及び20150035186に開示され、それらは、全て同じ出願人のものであり、その内容は参考としてここに組み入れる。
【0008】
インクジェット印刷ヘッド(2D及び3Dプリンターの両方のもの)は、適切な操作のための独自の一連の条件を持つ。一つのかかる条件は、印刷ヘッドノズルオリフィスにおけるインクの「ウィーピング(weeping)」を避けるために印刷ヘッドの内側のインクに負圧(ここでは印刷ヘッド環境における大気圧より低い圧力として規定される)の適用である。別の条件は、オリフィス/ノズルに蓄積するデブリ及び/又は凝固インクによる印刷ヘッドのノズル及び/又はオリフィスの詰まりを回避又は減少するために印刷ヘッドノズルオリフィスを浄化することに関連する。
【0009】
これは、印刷ヘッドの内側のインクに正圧(ここでは印刷ヘッド環境における大気圧より高い圧力として規定される)を一時的に適用することによって印刷ヘッドをパージすることによって達成されることができる。かかる正圧の脈動は、強制的に印刷ヘッドの内部インクリザーバーからオリフィス/ノズルを通して一定量のインクを流出させ、それは、オリフィス/ノズルを浄化し、詰まりを防止する。かかる印刷ヘッドのパージは、プリンターによって定期的に実施されることができ、及び/又は印刷ジョブの開始で実施されることができ、及び/又はユーザーが開始する「オンデマンド」パージであることさえできる。
【0010】
かかるパージ動作中にオリフィス/ノズルから排出されるインクの量は、無駄にされる。それゆえ、パージ中に浪費されるインクの量を減少するために、印刷ヘッドに対する正圧の適用の時間を最小にするようにインクジェット印刷ヘッド圧の急激な階段状の関数増加を与えることによってパージを実施することが望ましい。
【0011】
負圧が印刷ヘッドにおいて適用されかつ最小にされるために必要とされるとき、低容量ポンプが、かかる負圧維持を適切に実施することができる。しかしながら、正圧脈動又は階段状関数の圧力増加が必要とされるとき、低容量ポンプによって達成することは難しく、それゆえ、より高価な高容量ポンプの使用を要求するかもしれない。
【0012】
さらに、いったん正圧パージが達成され、パージが完了したら、ウィーピングを防止するために好適な操作負圧レベルを達成するためにできるだけ早く印刷ヘッド中の圧力を減少することが必要である。これはまた、低容量ポンプを使用することによって十分に迅速に達成することは難しく、これまた、高価な高容量ポンプの使用を要求するかもしれない。
【0013】
印刷ヘッドの様々な動作を実施するために変動可能な圧力レベルを供給する必要性は、従来技術のインクジェット印刷ヘッドにおいて様々な方法で対処されている。例えば、米国特許第6302516(Brooksら)は、インクジェット印刷ヘッドのためのインク供給システムを開示する。インク供給システムは、真空ポンプ及び制限された通路に接続された真空リザーバー、及び空気ポンプ及び別の制限された通路に接続されたパージリザーバーを含む。
【0014】
中国特許第CN104626403(A)(Huang Xiang Feng)は、光硬化3D印刷材料供給液通路システムを開示する。
【0015】
中国特許第CN204095297(U)(Li Xiaoping)は、インク粘度自動適応コード噴射プリンターを開示する。
【0016】
インクジェット印刷ヘッドに付与される圧力を効率的かつコスト効果的に制御し、速い印刷変化を実施するためのシステムに対する必要性が継続している。
【発明の概要】
【0017】
本願は、インクジェットプリンターの印刷ヘッド(単数又は複数)に付与される圧力を制御するためのシステムを開示する。
【0018】
圧力制御システムの一部の実施形態の態様は、圧力制御システムが印刷ヘッド(又は複数の印刷ヘッド)の内部インクリザーバーにおいて正圧を生成することによる印刷ヘッドパージのため、及び印刷ヘッドのオリフィス又はノズルを通してのウィーピングを回避するために印刷ヘッドの内部インクリザーバー内に負圧を生成するために使用可能なポンプを含む。
【0019】
ポンプは、圧力室と流体連通し、圧力室は、圧力室に制御可能に流体接続可能な第一ポート、印刷ヘッド内部インクリザーバーに又は印刷ヘッド圧力マニホールド(マニホールドを通して圧力制御システムに接続される複数の印刷ヘッドの場合)に制御可能に流体接続可能な第二ポート、及び印刷ヘッドを包囲する大気に制御可能に流体接続可能な第三ポートを有する二方弁/三ポート弁と流体連通している。圧力制御システムは、一つ又は複数の圧力センサーを含む圧力センサーユニットを含む。圧力センサーユニットは、圧力室と流体連通し、圧力室内の圧力を感知する。圧力センサーユニットは、前記圧力室内の圧力を表わす信号を少なくとも一つの処理装置/制御装置に送るために適応され、ポンプは、ポンプの操作を制御するために処理装置/制御装置から制御信号を受けるように適応されている。弁は、弁の操作を制御するために処理装置/制御装置から信号を受けるために適応されている。
【0020】
一部の実施形態によれば、処理装置/制御装置ユニットは、圧力制御システムに含まれかつ弁及びポンプの操作を制御するように適応された少なくとも一つの処理装置/制御装置であることができる。処理装置/制御装置はまた、第二処理装置/制御装置から指令信号を受け、(任意選択的に)状態信号を第二処理装置/制御装置に送るためにプリンターの一つ以上の印刷ヘッドの操作を制御する少なくとも第二処理装置/制御装置と通信するように適応されることができる。
【0021】
一部の実施形態によれば、圧力制御システムの操作及びプリンターの一つ以上の印刷ヘッドの操作を制御するように適応される少なくとも一つの処理装置/制御装置がプリンター内に含まれる。
【0022】
一部の実施形態によれば、圧力制御システムに含まれる少なくとも一つの処理装置/制御装置と、プリンターに含まれ、かつ圧力制御システムの少なくとも一つの処理装置/制御装置と通信する少なくとも一つの処理装置/制御装置との組み合わせがある。この組み合わせは、ポンプ及び弁を操作するため、及びプリンターの一つ以上の印刷ヘッドの操作を制御するために適応されている。
【0023】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、圧力制御システムはまた、ポンプに入る空気を濾過するためにポンプと大気空気との間で流体接続されたフィルターを含む。
【0024】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、弁の第二ポートは、一つ以上のインクジェット印刷ヘッド内の圧力を制御するために中空導管によって一つ以上のインクジェット印刷ヘッドに流体接続され、圧力制御システムはまた、インクが第二ポートに入る前に中空導管を通して一つ以上のインクジェット印刷ヘッドからのインクの逆流を検出するためのインク逆流検出センサーを含む。
【0025】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、中空導管は、透明中空導管であり、インク逆流検出センサーは、光センサーである。
【0026】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、ポンプは、可逆回転形蠕動ポンプであり、それは、圧力室の中に又は圧力室から外に空気をポンピングすることができる。
【0027】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、ポンプは、ステッパーモーターを含む。
【0028】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、圧力センサーユニットは、圧力室内に配置された圧力センサーユニットであることができる。
【0029】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、圧力センサーユニットは、圧力室の外側に配置され、かつ圧力センサーに接続された一つ以上の中空導管を通して圧力室に流体接続された圧力センサーユニットである。
【0030】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、圧力センサーユニットは、複数の圧力センサーを含み、複数の圧力センサーの各圧力センサーは、圧力センサーユニットのダイナミックレンジ及び/又は解像度を増加するために圧力室内で達成可能な圧力のフルレンジのサブレンジにおいて圧力を感知するために適応されている。
【0031】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、三ポート二方弁は、ソレノイド弁である。
【0032】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、ポンプは、流体又は気体を二つの反対方向にポンピングすることができる双方向又は可逆回転形ポンプである。
【0033】
圧力制御システムの一部の実施形態によれば、蠕動ポンプは、可変速ポンプである。
【0034】
本願はまた、ここで開示された圧力制御システム、及び少なくとも一つの制御可能に移動可能なインクジェット印刷ヘッドを含む。印刷ヘッドは、前記印刷ヘッド内に配置された少なくとも一つの内部インクリザーバー内の圧力レベルを制御するために圧力制御システムに流体接続されている。
【0035】
プリンターの一部の実施形態によれば、圧力制御ユニットの少なくとも一つの処理装置/制御装置は、圧力制御システムに含まれ、かつ弁及びポンプの操作を制御するために適応された少なくとも一つの処理装置/制御装置である。少なくとも一つの処理装置/制御装置はまた、少なくとも第二処理装置/制御装置から指令信号を受けるため、及び(任意選択的に)状態信号を前記少なくとも第二処理装置/制御装置に送るためにプリンターの少なくとも一つの印刷ヘッドの操作を制御する少なくとも第二処理装置/制御装置と通信するために適応されている。
【0036】
プリンターの一部の実施形態によれば、少なくとも一つの処理装置/制御装置は、プリンターに含まれ、かつ圧力制御システムの操作を制御するため、及びプリンターの少なくとも一つの印刷ヘッドの操作を制御するために適応されている。
【0037】
プリンターの一部の実施形態によれば、プリンターは、圧力制御システムに含まれる少なくとも一つの処理装置/制御装置と、プリンターに含まれ、かつ圧力制御システムの少なくとも一つの処理装置/制御装置と通信する少なくとも一つの処理装置/制御装置との組み合わせを含む。この組み合わせは、ポンプ及び弁を操作するため、及びプリンターの少なくとも一つの印刷ヘッドの操作を制御するために適応されている。
【0038】
プリンターの一部の実施形態によれば、圧力制御システムはまた、ポンプに入る空気を濾過するためにポンプと大気空気との間で流体接続されたフィルターを含む。
【0039】
プリンターの一部の実施形態によれば、弁の第二ポートは、少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッド内の圧力を制御するために中空導管によって少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッドに流体接続され、圧力制御システムはまた、インクが第二ポートに入る前に中空導管を通して少なくとも一つのインクジェット印刷ヘッドからのインクの逆流を検出するためのインク逆流検出センサーを含む。
【0040】
プリンターの一部の実施形態によれば、中空導管は、透明中空導管であり、インク逆流検出センサーは、光センサーである。
【0041】
プリンターの一部の実施形態によれば、ポンプは、可逆回転形蠕動ポンプである。
【0042】
プリンターの一部の実施形態によれば、ポンプは、ステッパーモーターを含む。
【0043】
プリンターの一部の実施形態によれば、圧力センサーユニットは、圧力室内に配置された圧力センサーユニットである。
【0044】
プリンターの一部の実施形態によれば、圧力センサーユニットは、圧力室の外側に配置され、かつ一つ以上の圧力センサーに接続された一つ以上の中空導管を通して圧力室に流体接続されている。
【0045】
プリンターの一部の実施形態によれば、圧力センサーユニットは、複数の圧力センサーを含む。複数の圧力センサーの各圧力センサーは、圧力センサーユニットのダイナミックレンジ及び/又は解像度を増加するために圧力室内で達成可能な圧力のフルレンジのサブレンジにおいて圧力を感知するために適応されている。
【0046】
プリンターの一部の実施形態によれば、三ポート二方弁は、ソレノイド弁である。
【0047】
プリンターの一部の実施形態によれば、ポンプは、流体又は気体を二つの反対方向にポンピングすることができる双方向又は可逆回転形ポンプである。
【0048】
プリンターの一部の実施形態によれば、蠕動ポンプは、可変速ポンプである。
【0049】
プリンターの一部の実施形態によれば、インクジェットプリンターは、2Dインクジェットプリンター又は3Dインクジェットプリンターである。
【0050】
また、ここに開示された圧力制御システムを含むインクジェットプリンターの印刷ヘッドにおいて圧力を制御するための方法が提供される。この方法は、圧力制御システムの圧力センサーユニットから圧力関連信号を受ける、但し圧力関連信号が、圧力室内の圧力レベルを表わす;印刷ヘッドを操作するための印刷制御信号を受ける;及びポンプ制御信号をポンプに与えるか、及び/又は弁制御信号を弁に与えるために圧力関連信号及び/又は制御信号を処理する工程を含む。
【0051】
方法の一部の実施形態によれば、処理の工程は、真空モード制御信号を受ける;印刷ヘッドを大気に流体接続し、圧力室を大気から接続解除するために弁を閉鎖する;圧力室内の圧力を真空モード圧力レベルに減少するようにポンプを操作する;及び印刷ヘッドを圧力室に流体接続するために弁を開放する工程を含む。
【0052】
方法の一部の実施形態によれば、真空モード圧力レベルは、設定又は予備設定圧力レベルである。
【0053】
方法の一部の実施形態によれば、ポンプを操作する工程は、ポンプを操作する工程の前に印刷ブロック(一つより多い印刷ブロックがあるなら、それらの印刷ブロック)の内部空間内の圧力を大気圧と平衡させることができるように弁を閉鎖する工程を含む。
【0054】
方法の一部の実施形態によれば、処理の工程は、印刷ヘッドのパージを実施するためのパージ制御信号を受ける;印刷ヘッド内の圧力を大気圧と平衡させることができるように弁を閉鎖する;圧力室内の圧力をパージ圧力レベルまで増加するようにポンプを操作する;及び印刷ヘッドをパージするために、印刷ヘッドを大気から流体接続解除し、圧力室を印刷ヘッドに流体接続するように弁を開放する工程を含む。
【0055】
方法の一部の実施形態によれば、パージ圧力レベルは、設定又は予備設定値である。
【0056】
方法の一部の実施形態によれば、真空圧力値及びパージ圧力値は、圧力制御システム内の体積、及び印刷ヘッド及び印刷ヘッドを圧力制御システムに接続する中空導管内に含まれる合計体積から決定される。
【0057】
方法の一部の実施形態によれば、真空圧力値及びパージ圧力値は、圧力制御システムと一つ以上の印刷ヘッドのそれぞれの異なる組み合わせに対して決定され、設定される。
【0058】
方法の一部の実施形態によれば、処理の工程はまた、パージが圧力室内の圧力を真空モード圧力レベルに等しいか又はそれより小さいレベルに減少することを完了した後にポンプのポンピングの方向を逆転することを含む。
【0059】
方法の一部の実施形態によれば、処理の工程はまた、インク逆流が検出されるかどうかをチェックし、インク逆流が検出されたなら、インクが圧力制御システムに入ることを防止するために圧力室内の圧力を増加するようにポンプを操作する工程を含む。
【0060】
方法の一部の実施形態によれば、チェックの工程はまた、インクが圧力制御システムに入ることを防止した後にポンプを使用不能にする工程を含む。
【0061】
方法の一部の実施形態によれば、チェックの工程はまた、インク逆流メッセージを出力する工程を含む。
【0062】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0063】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでもよい。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0064】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。
【0065】
任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明し、そこでは同様の構成要素は、同様の参照符号によって示される。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面(同様の構成要素は、同様の参照符号によって示される)について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0067】
図1図1は、本願の圧力制御システムの一実施形態による圧力制御システムを示す概略図である。
【0068】
図2図2は、本願の圧力制御システムの別の実施形態による圧力制御システムを示す概略図である。
【0069】
図3図3は、本願のインクジェットプリンターの一部の実施形態による、インクジェットプリンターのインクジェット印刷ヘッドに流体接続された圧力制御システムを含むインクジェットプリンターの部分を示す概略図である。
【0070】
図4図4は、本願の圧力制御システムの例示的実施形態による圧力制御システムを示す概略等角図である。
【0071】
図5図5は、図4の圧力制御システムの概略側面図である。
【0072】
図6図6は、図4の圧力制御システムの部分の概略等角図である。
【0073】
図7図7は、本願のインクジェットプリンターの一実施形態による、圧力制御システムに接続された3Dインクジェットプリンターの多数の印刷ヘッド印刷ブロックを示す概略的な部分断面部分流体ブロック図である。
【0074】
図8図8は、本願の圧力制御システム及びインクジェットプリンターのさらに別の実施形態による、圧力制御システムを使用するインクジェットプリンターを示す概略的な部分流体/部分ブロック図である。
【0075】
図9図9は、本願の方法の一部の実施形態による、プリンター中で圧力制御システムを操作する方法の工程を示す概略的なフローチャートである。
【0076】
図10A図10Aは、本願の方法の一部の実施形態による、プリンター中で圧力制御システムを操作する方法の工程を示す概略的なフローチャートである。
図10B図10Bは、本願の方法の一部の実施形態による、プリンター中で圧力制御システムを操作する方法の工程を示す概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
略語:
以下の略語は、本願の全体を通して使用される:
AM=付加製造
ATM=大気(圧力の単位)
2D=二次元
3D=三次元
DSP=デジタル信号処理装置
DOD=ドロップオンデマンド
IC=集積回路
mm=ミリメートル
NO3/2弁=通常開放の三ポート二方弁
NC3/2弁=通常閉鎖の三ポート二方弁
PCB=印刷回路板
PSI=ポンド/平方インチ
SEC=秒
S/N=信号対雑音比
TTL=トランジスタトランジスタロジック
【0078】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0079】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、流体をポンピングする多くの関連する装置及びシステムが開発されることが予想され、「ポンプ」の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、印刷のための多くの関連するインクジェット印刷ヘッドが開発されることが予想され、「印刷ヘッド」、「インクジェット印刷ヘッド」の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0080】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0081】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0082】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0083】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0084】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0085】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0086】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0087】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0088】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0089】
図1を参照すると、それは、本願の圧力制御システムの一実施形態による圧力制御システムを示す概略図である。圧力制御システム10は、圧力室2、三ポート/二方弁4、フィルター6、第一ポンプポート8A及び第二ポンプポート8Bを有する双方向(可逆回転形)ポンプ8、圧力センサーユニット12、及び処理装置/制御装置14を含む。圧力センサーユニット12は、圧力室2内の圧力を感知するために圧力室2内に配置されている。圧力センサーユニット12は、一つ以上の圧力センサー(図の明確化のために図1に詳細に示されず)を含むことができる。
【0090】
圧力室2は、圧力室2とポンプ8の間に介在されるフィルター6を通してポンプ8に流体接続されている。フィルター6は、中空導管6Aによって第二ポンプポート8Bに流体接続されている。フィルター6は、中空導管6Bによって圧力室2に流体接続されている。ポンプ8は、圧力制御システム10の外側の大気空気に開口する第一ポンプポート8A、及びフィルター6を通して圧力室2と流体連通しかつフィルター6に接続される第二ポンプポート8Bを有する。
【0091】
フィルター6は、第一ポンプポート8Aを通してポンプ8に入る外部大気空気を濾過するために適応されたフィルターである。フィルター6は、圧力室2内に包囲される体積に入る汚染物質の量を減らすためにポンプ8の第一ポンプポート8Aを通して入る空気からダスト又はいずれかの他の粒状物質又は湿分の滴又は他の汚染物質を除去し、それは、圧力制御システム10のいずれの流体通路の詰りも減少し、またシステム10に流体接続されたいずれの印刷ヘッドにもかかる汚染物質をキャリーオーバーすることを減少する。圧力室2はまた、弁4に接続されている。
【0092】
弁は、三ポートを持つ。弁4の第一ポート4Aは、圧力室2に制御可能に流体接続可能である。弁4の第二ポート4Bは、インクジェット印刷ヘッド(印刷ヘッドは、図1に示されず、以下の図3及び4を参照されたい)に制御可能に流体接続可能である。弁4の第三ポート4Cは、大気空気と制御可能に流体接続可能である。三ポート/二方弁4は、例えば三ポート/二方向に通常開放するソレノイド弁のように従来知られたいずれかの好適なタイプの制御可能な三ポート二方弁であることができる。図1では、弁4は、通常開放する三ポート二方弁(NO3/2弁)として実施され、開放状態(弁4が不活化されるとき)で示される。開放状態では、弁4は、第一ポート4Aと第二ポート4Bの間で流体接続し、大気空気から第三ポート4Cを流体接続解除する。開放状態では、ポート4Bに接続された印刷ヘッド(図1に示されず)は、圧力室2と流体接続されている。
【0093】
弁4が活性化されている弁4の閉鎖状態(図1に示されず)では、第二ポート4Bは、第一ポート4Aに流体接続解除され、第一ポート4Aは、第三ポート4Cに流体接続されている。弁4の閉鎖状態では、弁4の第二ポート4Bに接続された印刷ヘッド(図1に示されず)は、圧力室2から流体接続解除され、第三ポート4Cを通して大気空気に流体接続され、それは、印刷ヘッドの内側の圧力の大気圧への素早い増加をもたらす。
【0094】
ポンプ8は、二つの異なる操作モードで操作されることができる。第一操作モード(真空モード)では、ポンプ8は、圧力室2内の空気が圧力室2から外にフィルター6及びポート8Bを通ってポンプ8中に、そしてポート8Aから外に大気中にポンピングされるように真空室から空気を吸引するように操作される。このモードの操作では、ポンプ8は、圧力室2内の圧力を減少し、その結果、圧力室2内の部分真空(負圧)をもたらす。もし弁4が開放状態であるなら、第二ポート4Bに流体接続された印刷ヘッド内の圧力はまた、負圧であるだろう。第一操作モード(真空モード)では、弁4が開放状態であるとき、ポンプ8は、印刷ヘッドのオリフィスにおけるウィーピングを避けるために相対的に安定した負圧レベルで負圧を維持するために低スピードで操作されることができる。
【0095】
第二操作モード(パージモード)では、ポンプ3は、大気空気を大気からポート8Aを通って第二ポンプポート8B中に、そしてフィルター6を通って圧力室2中にポンピングするように操作される。操作のパージモードでは、ポンプ8は、大気圧レベルより大きい圧力レベルに達するまで圧力室2内の圧力を増加する。一般的には、パージモードの初期部分時には、弁4は、圧力室2が印刷ヘッドが流体接続解除され、印刷ヘッドが第三ポート4Cを通って大気空気に流体接続されるように閉鎖状態である。ポンプ8は、次いで大気圧より大きい予備設定パージ圧力まで圧力室内の圧力を上昇させるために高スピードで操作されることができる。
【0096】
圧力室2内で達成される予備設定パージ圧力の正確な値は、以下により詳細に開示されるように、特に圧力制御システム10に接続される特定の印刷ヘッド(単数又は複数)内の空間の初期体積によって、及び圧力室2の体積に対する印刷ヘッド内の体積の比率によって決定される。いったん圧力室2内の圧力が予備設定パージ圧力に到達したら、弁4は、印刷ヘッドのパージを実施するために(大気からの印刷ヘッドの流体接続解除を同時に行ないながら)印刷ヘッドと圧力室2を流体接続するように開放されることができる。弁4が開放された後、ポンプ8は、パージを実施するために十分な予備設定期間、パージ圧力を維持するために高スピードで操作されることができる。
【0097】
パージを実施するための弁4の閉鎖は、印刷ヘッドにおける迅速な圧力増加をもたらすことが認識されるだろう。なぜなら大気圧とヘッドの圧力均等化のために要求される時間は、低容量ポンプ8が印刷ヘッド及び圧力室2内の合計の組み合わせた体積内の大気圧に到達するために弁4を閉鎖することなく圧力室2中に空気をポンピングするために操作されるためにかかる時間より実質的に短いからである。さらに、弁4の閉鎖後、ポンプ8は、圧力室の内部体積内だけ希望のパージ圧力まで圧力を上昇させなければならないので、またポンプ8は、弁4がパージを実施するために再び開放された後に最大スピードで操作し続けることができるので、印刷ヘッド内の必要なパージ圧力を達成するために必要な合計時間は、(弁4を閉鎖することなく印刷ヘッド内の圧力を増加するようにポンプが操作されるときの同じ必要なパージ圧力に到達するために必要な時間と比較して)減少される。これは、有利に速い割合で圧力増加をもたらし、それは、時間の関数として、より急激でより速く、かつより「階段状」の関数の圧力増加をもたらす。
【0098】
パージが完了した後、弁4は、圧力室2から印刷ヘッドを流体接続解除し、大気空気に印刷ヘッドを流体接続するために再び閉鎖されることができ、それは、第三ポート4Cを通して大気圧と均等化する印刷ヘッド内の圧力をもたらす。この段階で、プリンターは、インクジェット印刷の分野で良く知られているようにいずれかのワイピング法又はワイピング機構を使用することによってパージ後のオリフィス板を浄化するために印刷ヘッドオリフィス板のワイピングを実施することができる。
【0099】
インクジェット印刷ヘッドのオリフィス板のワイピングは、印刷ヘッドの内部インクリザーバー内の圧力がオリフィス板を効率的にワイピングするために大気圧であるときに実施されることが好ましいことが注意される。もしワイピングが、印刷ヘッドの内部インクリザーバー内の圧力が大気圧より高い間に実施されるなら、インクは、まだオリフィスを通って押されることができ、それは、インク滲みや効率に劣るワイピングをもたらす。もしワイピングが、印刷ヘッドの内部インクリザーバー内の圧力が負であるとき(即ち、大気圧より低いとき)に実施されるなら、オリフィスからパージされたインクの一部、並びにオリフィス板の表面に付着する粒状物質は、ワイピング作用によってオリフィス中に吸引されるかもしれず、それは、オリフィスの詰まりをもたらしうる。従って、大気圧で印刷ブロックでオリフィス板をワイピングするとき、パージ中にオリフィスから追い出されたデブリによってオリフィスが潜在的に詰まること、又はいずれかの粒状物質とともに印刷ヘッドにインク滴を吸引することは、防止又は減少される。
【0100】
弁4の閉鎖は、(例えば内部インクリザーバー、及びそれに付けられたいずれかのマニホールド(より詳細には以下の図7参照)のように)印刷ヘッドの通路及び/又は内部キャビティ内の大気圧の迅速な到達をもたらし、それは、(従来技術のシステムにおける大気圧の遅い到達と比較して)大気圧下での印刷ヘッドのワイピングの迅速な実施を有利に可能にする。それゆえ、本願の圧力制御システムに開示された弁構成は、上で開示されたように弁4の第三ポート4Cを通って印刷ヘッドから大気中に加圧空気を換気することによってパージ後に印刷ヘッドからパージ圧力を迅速に消散するために有利に使用されることができ、それは、ワイピングのための適切な圧力条件下での印刷ヘッドのオリフィス板のワイピングの速い実施を有利に可能にする。
【0101】
ワイピングを実施するために弁4を閉鎖した後、ポンプ8は、印刷ヘッドがワイピングされながら圧力室2内の負圧を生成しかつ維持するように圧力室2内の圧力を下げるように第一モード(真空モード)で活性化されることができる。これは、(ポンプ8が、ワイピングが完了した後に圧力室2と印刷ヘッドの組み合わせた体積内の圧力を減少するように操作され、印刷ヘッドワイピングが完了した後に弁4が開放される仮説の状況と比較して)印刷のために要求される負圧に素早く戻ることを可能にするためにワイピングのために要求される時間期間を有利に利用する。操作負圧レベルへのこの素早い戻りは、印刷ヘッドの待機時間を減少し、全体の印刷スピードを有利に改良する。
【0102】
本願の圧力制御システムの操作の制御は、一つ以上の処理装置/制御装置によって実施されることが一般的である。圧力制御システム10の例示的実施形態では、操作を制御する処理装置/制御装置14は、圧力制御システム10の上又は中に(関連電子回路とともに)物理的に配置された専用の処理装置/制御装置である専用の処理装置/制御装置として実施される。処理装置/制御装置14は、従来公知のいずれのタイプの処理装置及び/又は制御装置ユニットであってもよい。
【0103】
例えば、処理装置/制御装置ユニットは、マイクロプロセッサー、マイクロコンピューター、デジタルデータ処理装置(DSP)、マイクロコントローラー、又はセンサーから又はいずれかの他の装置からデータを受けとり、処理し、(例えば別の制御装置/処理装置からのような)他の装置から指令及び/又は制御信号を受けとり、(例えば弁4及びポンプ8のような)他の装置に制御及び/又は指令信号を出力することができるいずれかの他のタイプの装置であることができる。処理装置/制御装置14は、従来業界で知られているようなデジタル装置又はアナログ装置又はデジタル/アナログ混成装置であることができる。処理装置/制御装置14は、集積回路(IC)であることができ、従来業界で知られているようにインクジェットプリンターの中又は外側に配置されたいずれかの必要な離散又は集積支持回路を含むように実施されることができる。例えば、処理装置/制御装置14は、印刷回路板(PCB)(図示の明確化のために図1に示されていないが、以下の図5参照)に好適に含まれることができる。処理装置/制御装置14はまた、もしデータ記憶が操作のために要求されるなら、データを記憶するために必要ないずれかのタイプのメモリー装置を含むことができる。
【0104】
処理装置/制御装置14は、圧力センサーユニット12に含まれるいずれかの圧力センサーに電気的に結合されることが好適であり、圧力室2内の圧力を表わす信号を圧力センサーから受けとるように構成される。圧力センサーユニット12に含まれる個々の圧力センサーは、図示の明確化のために図1に詳細に示されていないことが注目される。処理装置/制御装置14はまた、ポンプ8に電気的に接続され、ポンプ8の操作を制御するためのポンプ制御信号をポンプ8に送ることができる。ポンプ制御信号は、ポンピングの方向(圧力室2内の圧力を増加するための圧力室2中への空気のポンピング、又はその中の圧力を減少するための圧力室2から外への空気のポンピングのいずれか)及び/又はポンプ8のポンピングの速度を制御することができる。
【0105】
処理装置/制御装置14はまた、弁4の操作を制御するために弁4に電気的に接続されることが好適である。弁4がNO3/2弁である図1の圧力制御システム10の例示的実施形態では、制御信号は、弁4を開放状態で維持するために弁4の電気端子にいかなる電圧も付与せず、弁4を閉鎖状態に切り替えるために弁4を閉鎖するために弁4の電気端子に好適な電圧を付与する付勢信号を含むことができる(弁4の開閉状態は、上で詳細に開示されているようであることができる)。
【0106】
処理装置/制御装置14は、プリンターの処理装置/制御装置から指令信号を受けるために通信ライン15によって圧力制御システム10が含まれるプリンターを操作する処理装置/制御装置(図1に示されず)に好適に接続されることができる。一般的には、かかる指令信号は、圧力制御システム10に印刷ヘッドをパージするために要求される工程のパージ順序を実施することを指示する「パージ信号」、及びウィーピングを防止するために要求される負圧に印刷ヘッド内の圧力を戻すために要求される工程の順序を実施することを圧力制御システムに指示する「真空信号」を含むことができる。
【0107】
本願の圧力制御システムの一部の実施形態では、通信ライン15は、(任意選択的に)プリンターを操作する処理装置/制御装置(図1に示されず)に信号(例えば状態信号)及び/又はデータを与えるための双方向通信ラインであることができる。かかるデータは、とりわけ、圧力センサーユニット12から得られた圧力レベルデータ、インク逆流検出装置(もし存在するなら以下の図3の圧力制御システム30の例示的実施形態におけるようなもの)からの信号又はデータ、又は他のデータを含むことができる。
【0108】
図1の圧力制御ユニット10の例示的実施形態は、通常開放の三ポート二方弁を使用することが好ましいが、これは義務ではなく、好適な通常閉鎖の三ポート二方弁(NC3/2弁)もまた、制御ソフトウェア又はファームウェアの好適な適応で使用されることができることも注意される。NC3/2弁を使用するかかる実施形態の構成は、当業者には明らかであり、それゆえ以下において詳細に開示されない。簡単に、もし圧力制御システムがNC3/2弁を使用するなら、弁を制御する処理装置/制御装置は、弁を開放状態で保持するために(例えば正電圧のような)開放信号を適用することができるが、一方かかる信号は、弁を閉鎖状態で維持するために全く要求されない。
【0109】
図2を参照すると、それは、本願の圧力制御システムの別の実施形態による圧力制御システムを示す概略図である。
【0110】
圧力制御システム20は、圧力室3、三ポート/二方弁4、フィルター6、双方向(可逆回転形)ポンプ8、圧力センサーユニット12、及び処理装置/制御装置14を含む。圧力制御システム20は、(図1の)圧力制御システム10において圧力センサーユニット12が圧力室2内に配置されるのに対して、(図2の)圧力制御システム20の圧力センサーユニット12が圧力室3の外側に配置され、一つ以上の好適な中空導管5によって圧力室3内の内部空間に流体接続されることを除いて、図1のシステム10に対して構成及び操作において類似する。
【0111】
圧力室3は、中空導管5が圧力室3の内部体積に圧力センサーユニット12の圧力センサーのいずれかを流体接続するように中空導管5を接続するためにその中に好適な開口を持つことを除いて、図1の圧力室2と体積及び形状において同じにすることができる。圧力制御システム20の一部の実施形態では、圧力センサーユニット12は、二つ(又は任意選択的には二つより多く)の異なるセンサーを含むことができ、各圧力センサーは、圧力センサーユニット12のダイナミックレンジ及び感度を増強しかつ改良するために異なる圧力作用範囲を持つ。かかる例示的実施形態は、以下の図4〜6に関して詳細に開示されている。
【0112】
圧力制御システム20の構成の利点は、それが圧力室3の内部体積を過剰に減少せずに使用されるために比較的大きな圧力センサーの使用を可能にすることである。圧力制御システム20の構成の別の利点は、圧力センサーユニット12に含まれるいずれの圧力センサーも処理装置/制御装置14の近くのかかる圧力センサーの設置を可能にするシステム20の中又はその上のいずれかの位置に配置されることができることであり、これは、処理装置/制御装置14からセンサーまでのいずれの電気接続の長さも減少し、かかる電気接続におけるいずれの電気圧力関連信号のより良好な遮蔽を可能にし、それは、圧力関連信号の信号対ノイズ比(S/N)を改良することができる。以下の図4〜5に示された圧力制御システムは、システム20の例示的実施形態を詳細に開示する。
【0113】
弁4、処理装置/制御装置14、ポンプ8、及びフィルター6の構成及び操作は、図1の圧力制御システムに対して上で詳細に開示されている通りである。
【0114】
圧力制御システム20の処理装置/制御装置14は、プリンターを操作する処理装置/制御装置(図2に示されず)に好適に接続されることができ、その中で圧力制御システム10は、プリンターの処理装置/制御装置から指令信号を受けるために通信ライン15によって含められる。一般的には、かかる指令信号は、印刷ヘッドをパージするために要求される工程のパージ順序を実施することを圧力制御システム10に指示する「パージ信号」、及び圧力制御システムにウィーピングを防止するために要求される負圧に印刷ヘッド内の圧力を戻すために要求される工程の順序を実施することを指示する「真空信号」を含むことができる。
【0115】
本願の圧力制御システムの一部の実施形態では、通信ライン15は、(任意選択的に)プリンターを操作する処理装置/制御装置(図2に示されず)に信号(例えば状態信号)及び/又はデータを与えるための双方向通信ラインであることができる。かかるデータは、とりわけ、圧力センサーユニット12から得られた圧力レベルデータ、インク逆流検出装置(もし存在するなら以下の図3の圧力制御システム30の例示的実施形態におけるようなもの)からの信号又はデータ、又は他のデータを含むことができる。
【0116】
図3を参照すると、それは、本願のインクジェットプリンターの一部の実施形態による、インクジェットプリンターのインクジェット印刷ヘッドに流体接続された圧力制御システムを含むインクジェットプリンターの一部を示す概略図である。
【0117】
インクジェットプリンター50は、圧力制御システム30、可撓性中空導管40Bによって圧力制御システム30に流体接続されたインクジェット印刷ヘッド40、(任意の)インクオーバーフロー検出装置7、インクを印刷ヘッド40に供給するための印刷ヘッド40に流体接続された外部インク供給システム39、及び(任意の)印刷トレイ41を含む。もしプリンター50が3DのAMプリンターとして実施されるなら、トレイ41は、その上に印刷物体を構築するために使用されることができる。
【0118】
インクジェットプリンター50はまた、印刷ヘッド40の動きを制御するために処理装置/制御装置24及び全ての必要な制御電子機器(図示せず)及び移動機構(図示せず)を含む。プリンター50の制御電子機器及び印刷ヘッド40の移動機構は、図の明確化のために図3に詳細に示されていないことが注意される。かかる制御電子機器及び印刷ヘッド移動機構(それは、2D移動機構又は3D移動機構であることができる)は、業界で良く知られており、本願の主題ではなく、従って以下において詳細に記載されない。
【0119】
プリンター50の処理装置/制御装置24は、印刷ヘッド40Dを操作するために印刷ヘッド40に接続されることができ、また印刷ヘッド移動機構(図示せず)の操作を制御するためにいずれの印刷ヘッド移動機構にも接続されることができる(処理装置/制御装置24と印刷ヘッド40の間で接続された通信ライン、及び処理装置/制御装置24と印刷ヘッド40を移動するためのいずれかの移動機構の間で接続された通信ラインは、図の明確化のために図3では示されない)。プリンター50の処理装置/制御装置24はまた、処理装置/制御装置14に指令信号を与えるために通信ライン15によって圧力制御システムの処理装置/制御装置14に接続される。
【0120】
一般的には、かかる指令信号は、印刷ヘッド40をパージするために要求される工程のパージ順序を実施することを圧力制御システム30に指示する「パージ信号」、及びウィーピングを防止するために要求される負圧に印刷ヘッド40内の圧力を戻すために要求される工程の順序を実施することを圧力制御システムに指示する「真空信号」を含むことができる。通信ライン15は、(任意選択的に)プリンターを操作する処理装置/制御装置24に(状態信号のような)信号及び/又はデータを与えるための双方向通信ラインであることができる。かかるデータは、とりわけ圧力センサーユニット12から得られた圧力レベルデータ、インク逆流検出装置7からの信号又はデータ、及び/又は他のデータを含むことができる。
【0121】
印刷ヘッド40は、外部インク供給システム39に流体接続された内部インクリザーバー40Aを含む印刷ブロック40Cを含むことができる。内部インクリザーバー40Aは、インク排出機構40Dと流体連通している。インク排出機構40Dは、熱的インク滴排出機構、圧電インク滴排出機構、又は従来公知のドロップオンデマンド(DOD)インク排出機構のいずれかの他のタイプであることができるが、これに限定されない。内部インクリザーバー40Aは、外部インク供給システム39に流体接続され、それは、内部インクリザーバー40A中のインク43のレベルを実質的に固定したレベルで維持するためにインク43を供給する。外部インク供給システム39は、外部インクリザーバー49を含むことができる。粒状物質は、空気孔49A、ポンプ48、及びフィルター46を含むことができる。外部インクリザーバー49は、インク43をポンプ48に供給するためにポンプ48に流体接続されている。ポンプ48は、フィルター46に流体接続され、インク43を濾過してあらゆる粒状物質を除去するためにフィルター46を通してインク43をポンピングすることができる。粒状物質は、印刷ヘッド40内のいずれかの流体経路又はインク排出機構40におけるいずれかの小さい経路及び/又はオリフィスを詰まらせうる。フィルター46は、内部インクリザーバー4Aに流体接続され、インク43をそれに供給することができることが好適である。
【0122】
圧力制御システム30は、それがまた、(任意の)インク逆流検出装置7を含むことができることを除いて図2の圧力制御システム20と構成及び操作において同じである。本願の圧力制御システムの一部の実施形態によれば、逆流検出装置7は、二方/三ポート弁4の第三ポート4Bに内部インクリザーバー40Aを接続する中空導管40Bを通るインク43の逆流を検出するために使用されることができる。かかる逆流検出装置は、インク供給システムが誤作動し(又はポンプ48の操作を制御する処理装置/制御装置及び/又はいずれかの電気回路からの異常制御信号を受け)、過剰のインク43が内部インクリザーバー40Aを通って中空導管40B中に及び中空導管40Bから弁4中に逆流する場合に有利である。かかる逆流は、弁4内の通路をブロックし、弁4の誤作動を生じうる。
【0123】
本願の圧力制御システムの一部の実施形態では、中空導管40Bは、可撓性の光学的に透明な中空管であることができ、逆流検出装置は、可視光で又は中空導管40Bの材料が透明である波長又は波長範囲を有するいずれかの他の電磁放射線(例えば赤外線)で中空導管40Bの一部を照明する光源(図示せず)、及び逆流検出装置7によって監視される中空導管40Bの部分を通って流れるインク43によって起こされる光の吸収の変化を感知するための光センサー(図示せず)を含むアクティブ光センサーであることができる。
【0124】
逆流検出装置7は、中空導管40Bの監視された部分による光の吸収を表わす信号を与えるための処理装置/制御装置14に好適に接続されることができる。もしインク43が中空導管40Bの監視された部分に到達するなら、逆流検出装置7の光学路におけるインク43の存在による光吸収の変化が感知され、処理装置/制御装置14に出力される。処理装置/制御装置14は、逆流検出装置の光センサーによって出力された信号を処理することによって中空導管40Bの監視された部分におけるインク43の存在を検出し、インク43が弁4に到達することを避けるために内部インクリザーバー40Aの方に中空導管40B中のインクを押し戻すために圧力室3内の圧力をパージ圧力レベルに増加するように最大スピードで操作する指令をポンプ8に送ることによってインク逆流の検出に対応するようにプログラムされている。
【0125】
逆流検出装置7は、光センサーとして義務的に実施される必要はなく、他のタイプのセンサーも逆流検出装置7を実施するために使用されることができることが注意される。例えば、本願の圧力制御システムの一部の実施形態によれば、逆流検出装置は、従来知られているように、静電容量センサー、超音波センサー、インダクタンス感知センサー、又は中空導管40Bの選択された部分に到達するインクを検出することができるセンサー/検出装置のいずれかの他のタイプであることができる。本願の圧力制御システムの一部の実施形態では、処理装置/制御装置14は、インクが中空導管40B中に逆流したかどうかを検出するために逆流検出装置によって感知される信号を処理することが必要でありうる。本願の圧力制御システムの一部の他の実施形態では、逆流検出装置7は、処理装置/制御装置14によっていかなる処理の必要もなしでインク逆流の存在を自律的に検出するために逆流検出装置7に含まれるいずれのセンサーによっても感知されるいかなる信号もさらに処理することができる追加の(アナログ及び/又はデジタル)電気回路を含むことができる。かかる実施形態では、逆流検出装置7は、(例えば正極性TTL電圧パルス、又は従来公知のいずれかの他のタイプの好適な信号のような)インク逆流の検出を表わす信号を処理装置/制御装置14に出力することができる。
【0126】
内部インク室40A内の圧力は、図2の圧力制御システム20のための上で詳細に開示されたような圧力制御ユニット30によって制御される。逆流検出装置7を含む実施形態では、処理装置/制御装置14(又はプリンター50に含まれるいずれかの他の処理装置/制御装置)はまた、上で詳細に開示されているように圧力室3内の圧力レベルをパージ圧力レベルまで増加するようにポンプ8を操作することによってインク逆流の検出に反応するようにプログラムされることができる。
【0127】
図3のプリンター50の特定の例示的実施形態は単一の印刷ヘッドを含むが、これは義務ではなく、本願の圧力制御システム(例えば図1,2及び3のそれぞれの圧力制御システム10,20及び30)は、複数の印刷ヘッドを有する(2D又は3Dタイプの)インクジェットプリンターに含まれることができ、複数の印刷ヘッド内の圧力レベルを制御するために上で開示されたように使用されることができることが注意される。
【0128】
例えば、図4〜6に対して以下に開示された圧力制御システム100(並びに本願に開示された他の圧力制御システムのいずれか)は、(例えば以下の図8の8つの異なる印刷ヘッドを含む複数の印刷ヘッド集成体のような)複数の印刷ヘッドを有するいずれかのタイプのプリンターにおいて圧力レベルを制御するために使用されることができる。従って、本願に開示された圧力制御システムは、1〜32個の印刷ヘッドを含む印刷ヘッド集成体又は32個の印刷ヘッドより多いいずれかの数の印刷ヘッドのようないかなる実際の数の印刷ヘッドも含むインクジェット印刷ヘッド集成体の圧力を同時に制御するために使用されることができる。
【0129】
図3の圧力制御システムに対して開示されるインク逆流検出装置(又はインク逆流センサー)は、本願の圧力制御システムを実施するための義務ではないこと、そして(図1及び2のそれぞれにおいて示されかつ上で開示されたような例示的システム10及び20のような)圧力制御システムの一部の実施形態は、インク逆流検出装置/センサーなしで構成及び操作されることができることもまた、注意される。
【0130】
図4〜6を参照されたい。図4は、本願の圧力制御システムの例示的実施形態による圧力制御システムを示す概略等角図である。図5は、図4の圧力制御システムの概略側面図である。図6は、図4の圧力制御システムの一部の概略等角図である。
【0131】
圧力制御システム100は、圧力室103、三ポート/二方弁104、フィルター106(図4の特定の等角図では見えないが、図5に示されている)、双方向(可逆回転形)ポンプ108、二つの圧力センサー112A及び112B、及び処理装置/制御装置114を含む。圧力センサー112A及び112B、及び処理装置/制御装置114は、装着パネル109に取り付けられる印刷回路板107の上に配置される。圧力センサー112A及び112Bは、圧力室103内の圧力を感知するために、二つの好適な導管105A及び105Bのそれぞれによって圧力室103に流体結合されている。圧力室103は、圧力室103とポンプ108の間に介在されるフィルター(図6で最も良好に見られる)を通してポンプ108に流体接続されている。フィルター106は、中空導管106Aによって第二ポンプポート108Bに流体接続されている。
【0132】
フィルター106は、中空導管106Bによって圧力室103に流体接続されている。ポンプ108は、圧力制御システム100の外側の大気空気に開放する第一ポンプポート108A、及びフィルター106に接続されかつフィルター106を通って圧力室103と流体連通する第二ポンプポート108Bを有する。フィルター106は、第一ポンプポート108Aを通ってポンプ108に入る外部の大気空気を濾過するために適応されたフィルターである。
【0133】
圧力室103はまた、弁104に接続されている。弁104は、三つのポートを有する。弁104の第一ポート(図示せず)は、圧力室103に制御可能に流体接続可能である。弁104の第二ポート(図5の等角図に示されず)は、インクジェット印刷ヘッド(印刷ヘッドは、図4〜6に示されていないが、圧力制御システムに結合された印刷ヘッドを示す図3,7、及び8を参照されたい)に接続可能な出力用器具104Bに制御可能に流体接続されている。弁104の第三ポート(示されていないが、それは、弁104の底部に配置される)は、大気空気と制御可能に流体接続可能である。三ポート/二方弁104は、AMISCO、イタリアから商業的に入手可能な、通常開放のソレノイド弁、モデル15C1C2A4HNOAMである。弁104の操作状態(開放状態及び閉鎖状態)は、図1の弁4に対して上で詳細に開示されている通りである。
【0134】
ポンプ108は、Welco Co.,Ltd.から商業的に入手可能な、BA型ステッパーモーター及び1/4′′内径を有するモデルWP11−N1/4(200)BA2G−BS材料蠕動ポンプである。ポンプ108は、可逆回転形ステッパーモーター108Dによって出力される。ポンプ108は、可逆回転形ポンプであり、ステッパーモーター108Dを第一方向に回転することによって圧力室103から外に空気をポンピングするか、ステッパーモーター108Dを第一方向とは反対の第二方向に回転することによって圧力室103中に空気をポンピングすることができる。ステッパーモーター108Dの回転スピードはまた、処理装置/制御装置114によって制御可能であり、ポンプ108の空気流れの速度を決定する。
【0135】
弁104が開放状態であるとき、ポンプ108は、二つの異なる操作モードで操作されることができる。第一操作モード(真空モード)では、ポンプは、圧力室103中の空気が圧力室103から外にフィルター106及びポート108Bを通ってポンプ108中に、そしてポート108Aから外に出て大気中にポンピングされるように圧力室103から空気を吸引するように操作される。
【0136】
ポンプ108のこの操作モードは、圧力室103内の圧力を低下し、圧力室103内の部分真空を生じる。第二操作モード(パージモード)では、ポンプ108は、大気空気を大気からポート108Aを通って第二ポンプポート108B中に、そしてフィルター106を通って圧力室103中にポンピングするように操作される。ポンプ108のこの操作モードは、圧力室103内の圧力を増加する。
【0137】
圧力制御システム100の例示的実施形態では、システム100の操作を制御する処理装置/制御装置114は、システム100のパネル109に取り付けられるPCB107の上に関連電子回路に電気的に配線されかつ物理的に配置される専用の処理装置/制御装置として実施される。処理装置/制御装置14は、圧力センサー112A及び112Bに電気的に結合されることが好適であり、圧力センサー112A及び112Bはまた、PCB107の上に配置される。圧力センサー112Aは、モデルMPXV5100DP圧力センサーであり、圧力センサー112Bは、モデルMPXV4006DP低圧力センサーであり、両センサーは、Freescale Semiconductor Inc.、米国から商業的に入手可能である。圧力センサー112Aは、0〜14.6ATMの公称作用圧力範囲を有する高圧力センサーである。圧力センサー112Bは、0〜0.87ATMの公称作用圧力範囲を有する低圧力センサーである。二つのセンサー112A及び112Bの使用は、システム100の全作用圧力範囲に対して単一の圧力センサーを使用することによって得られるダイナミックレンジ及び感度より良好なダイナミックレンジ及び感度で広い圧力範囲にわたって圧力測定を実施することを可能にする。圧力センサー112A及び112Bの組み合わせの使用は、コスト効果的な方法で優れたダイナミックレンジ及び感度を可能にする。
【0138】
処理装置/制御装置114は、圧力室103内の圧力を表わす信号を圧力センサー112A及び112Bから受けとる。処理装置/制御装置114はまた、ポンプ108に電気接続され、その操作を制御するためにポンプ108にポンプ制御信号を送ることができる。ポンプ制御信号は、ポンピングの方向(圧力室103中の圧力を増加するために圧力室103内に空気をポンピングするか、又はその中の圧力を減少するために圧力室103から外に空気をポンピングする)、及び/又はポンプ108のポンピングの速度を制御することができる。
【0139】
処理装置/制御装置114はまた、弁104の操作を制御するため、そして図1の弁4及び処理装置/制御装置14に対して上で詳細に開示したように開閉状態の間で弁104を制御可能に切り替えるために弁104に電気的に接続されることが好適である。
【0140】
図6を参照すると、それは、図4の圧力制御システムの一部の概略側面図である。
【0141】
図6に示された圧力制御システム100の部分は、圧力室103に流体接続された二方/三ポート弁104、(図4のフィルター106に圧力室103を流体接続するために使用される)中空導管106B、圧力室に取り付けられ(かつ図4の圧力センサー112A及び112Bのそれぞれに圧力室103を流体接続するために使用される)導管105A及び105B、及び印刷ヘッド(図6に示されず)に弁104を接続するために使用可能なポート104Bを含む。
【0142】
図4〜5の圧力制御システム100の一部の実施形態はまた、(図3のインク逆流検出装置7のような)インク逆流センサー/検出装置を含んでもよいことが注意される。一つのかかる例示的実施形態によれば、逆流検出装置は、OPTEK TECHNOLOGY Inc.a TT ELECTRONICS COMPANY,TX、米国から商業的に入手可能なカタログNo.OCB350L178Zを有する管液センサーとして実施される。センサー/検出装置(図示の明瞭のために図4に示されず)は、(図4の)装着パネル109に取り付けられてもよく、透明可撓性中空管(図示の明瞭のために図4に示されず)は、その一端をポート104Bに、その他端を印刷ヘッド集成体(図4に示されないが、かかる印刷ヘッド集成体の例示的実施形態のために以下の図8を参照)に封止して取り付けられ、印刷ヘッド集成体において印刷ヘッドの内部インクリザーバーにポート104Bを流体接続してもよい。
【0143】
ポート104Bと印刷ヘッドを接続する透明管の部分は、検出装置/センサー内を通ることができる。検出装置/センサーは、任意選択的に、検出装置/センサーを通過する中空管の部分に到達するいかなるインクも検出/感知することができ、処理装置/制御装置114に信号(検出)を送り、それは、インク逆流の検出により、最大スピードでポンプ108を操作して圧力室103内の圧力をパージ圧力レベルまで増加することができ、弁104及び/又は圧力制御システム100のいずれかの他の構成要素中へのインクの移動を防止し、圧力制御システム100の誤作動を回避することができる。
【0144】
図7を参照すると、それは、本願のインクジェットプリンターの一実施形態による、圧力制御システムに接続された3Dインクジェットプリンターの複数の印刷ヘッド集成体を示す概略の部分断面部分流体のブロック図である。
【0145】
図7は、インクジェットプリンターの圧力制御システム150及び印刷ヘッド集成体170の構造及び操作を理解するために関連する構成要素だけを示すことが注意される。示された構成要素が含められるプリンターの他の構成要素のいずれか、例えばプリンターのハウジング又は台、印刷ブロック172を(二次元又は三次元的に)移動するための電気機械的システム、又は電力を供給し、かかるプリンターの操作を制御するためのいずれかの他の機械的及び/又は電気機械的及び/又は電気的及び/又は電子的構成要素は、図示の明瞭のために示されていない。図7に示されていない構成要素のいずれかの構造及び操作は、従来業界で知られており、それゆえ以下において詳細に述べられない。
【0146】
印刷ヘッド集成体170は、印刷ブロック172及び八つのインク供給システム139A−139Hを含む。印刷ブロック172は、八つの印刷ヘッド165A−165H、及び八つのそれぞれの内部インクリザーバー164A−164Hを含む。印刷ヘッド165A−165Hの各々は、印刷ブロック172内に形成された八つの中空通路144のうちの一つの中空通路144によってそれぞれの内部インクリザーバー164A−164Hの内部インクリザーバーに流体接続されている。中空通路144の各々は、内部インクリザーバーから内部インクリザーバーと関連する印刷ヘッドにインクを供給する。例えば、内部インクリザーバー164Aは、中空通路144を通してインク43Aを印刷ヘッド165Aに供給し、内部インクリザーバー164Bは、中空通路144を通してインク43Bを印刷ヘッド165Bに供給する。
【0147】
印刷ブロック172はまた、その中に形成された八つの中空通路145を含む。八つの中空通路145の各々は、その第一端で(図7に詳細に示されているように)八つの内部インクリザーバー164A−164Hのうちの単一内部インクリザーバーに流体接続されている。八つの中空通路145の各々は、その第二端で可撓性中空導管147によってインク供給システム139A−139Hの一つに流体接続かつ封止接続されている。八つの中空導管147は、インクジェットインクを含有するために好適ないずれかの材料から作られたいずれかの好適な可撓性中空管であることができる。
【0148】
八つのインク供給システム139A−139Hの各々は、ポンプ148に流体接続される外部インクリザーバー149、及び入力端でポンプ148に、出力端で中空導管147に流体接続されるインクフィルター146を含む。外部インクリザーバー149は、(図3の)外部インクリザーバー49と同様の通気リザーバーであることができる。好ましくは、しかし義務ではなく、外部インクリザーバーは、従来公知のような交換可能なカートリッジタイプのリザーバーであることができる。
【0149】
操作において、インク供給システム139A−139Hのいずれか一つでは、ポンプ148は、インク供給システムの外部インクリザーバー149からインクフィルター146にインクをポンピングし、特定のインク供給システムが流体接続される内部インクリザーバーから印刷時に使用されるインクを補給することができる。
【0150】
印刷ヘッド集成体170の一部の実施形態では、印刷ヘッド165A−165Hの各々は、それぞれ異なるタイプのインク43A−43Hを充填される。異なるインク43A−43Hは、異なる色のインクであってもよく、又は従来公知のように異なる物理的及び/又は化学的特性を有する異なる材料組成を有するいずれのインクであってもよく、いかなる好適なインクの組み合わせも印刷のために使用されてもよい。
【0151】
印刷ブロック172は、その中に形成された中空マニホールド162を含む。中空マニホールド162は、中空マニホールド162内及び八つの内部インクリザーバー164A−164Hの各々の空気空間内の空気圧が均等になるように内部インクリザーバー164A−164Hの各々と流体連通している。印刷ブロック172はまた、圧力制御システム150を含む。圧力制御システム150は、好適な中空導管160によって印刷ブロック172に流体接続されることができる。中空導管160は、圧力制御システム150によって生成された負圧と正圧の範囲に耐えることができるいずれかの好適な可撓性管であることができる。中空導管160は、その第一端で印刷ブロック172の中空マニホールド162に封止的に流体接続され、その第二端で圧力制御システム150の二方/三ポート弁(図7に示されない弁)に接続されている。
【0152】
圧力制御システム150は、本願に開示された圧力制御システムのいずれかとして実施されることができる。例えば、もし圧力制御システム150が(図1,2及び3のそれぞれの)圧力制御システム10又は20又は30のいずれかとして実施されるなら、中空導管160の第二端は、二方/三ポート弁4の第二ポート4Bに封止的に流体接続されることができる。
【0153】
もし圧力制御システム150が(図4〜5の)圧力制御システム100として実施されるなら、中空導管160の第二端は、二方/三ポート弁104の第二ポート104Bに封止可能に流体接続されることができる。同様に、もし圧力制御システム150が(以下の図8の)圧力制御システム120として実施されるなら、中空導管160の第二端は、二方/三ポート弁4の第二ポート4Bに封止可能に流体接続される。
【0154】
図7に戻ると、操作において、印刷ヘッド集成体170は、2Dインクジェットプリンターの場合には2D印刷物、又は3DのAMインクジェットプリンターの場合には3D物体を印刷するために使用されることができる。図7の圧力制御システム150の利点の一つは、中空マニホールド162を通る八つの内部インクリザーバー164A−164Hの全てに含まれるインクの上の内部空間内の圧力を同時に制御することを可能にし、複数の別個の圧力制御システムが内部インクリザーバー164A−164Hの各々の中の圧力を別個にかつ個別に制御する必要性を除去することである。
【0155】
本願に開示された圧力制御システムの別の利点は、単一の比較的安価な低容量の可逆回転形ポンプを圧力室及び二方三ポート弁と組み合わせて使用することを可能にし、印刷ヘッドのオリフィスでウィーピングを避けるために要求される希望の負圧レベルを効率的かつ迅速に達成し、かつ印刷ヘッドのパージのために要求される正圧レベルを効率的かつ迅速に達成することができることである。
【0156】
(三ポート二方弁に接続された圧力室に結合された)安価な低容量ポンプの使用は、システムの全体コスト並びに印刷システムの維持の全体コストを減少し、パージ、ワイピング、印刷作業の間にプリンターによって要求される迅速な圧力変化を与えながら、パージサイクル時に消耗されるインクの量を減少することによるインクの不必要な浪費を減少し(パージサイクルの期間は、本明細書で開示された圧力制御システムを使用するときに有意に減少されることができる)、印刷のために要求される真空レベル(負圧)に戻すために要求される時間及びパージ時間の全体的な減少をもたらし、それは、有利には速い印刷速度をもたらす。
【0157】
正及び/又は負圧レベルに迅速に到達するというこの有利な能力は、上で詳細に開示されたように二方三ポート弁の操作からもたらされる。
【0158】
例えば、パージが完了した後、本明細書で開示された圧力制御システムのいずれの圧力室内の圧力レベルも比較的高く、圧力制御システムの低容量ポンプが要求される操作負圧を達成するために圧力室内の空気の全てを排気することは極めて長い時間が要求されるだろう。しかしながら、圧力室内の圧力を減少するためにポンプを操作する前に本願の圧力制御システムの(通常開放の)弁の閉鎖は、印刷ヘッドの内部体積内の高いパージ圧が二方/三ポート弁の第三ポート(例えば図1〜2の第三ポート4C、又は図4の弁104の第三ポート)を通して外部大気圧と均等化することによって迅速に消散することを可能にする。
【0159】
同様に、印刷ヘッド内及び圧力室内の圧力が負でありながらパージが実施されることが必要であるとき、二方/三ポート弁の閉鎖は、ポンプが最大スピードで操作されて圧力室内の圧力を必要なパージ圧力にのみ増加しながら、(例えば図1〜2の第三ポート4C、又は図4の弁104の第三ポートのような)二方/三ポート弁の第三ポートを通して大気圧との印刷ヘッドの内部体積内の圧力の迅速な均等化を可能にする。この迅速な圧力均等化は、パージ圧力に到達するポンピング時間をより短くすることができる。
【0160】
従って、本明細書に開示された圧力制御システムの操作の方法及び構造は、圧力制御システムに流体接続された印刷ヘッド内の圧力変化を負の操作圧力とパージ圧の間で、そしてパージ圧から負の操作圧力の間で実施するために要求される時間を効果的に減少する。
【0161】
本願の圧力制御システムの一部の実施形態において(例えば図3のインク逆流検出装置7のような)インク逆流検出装置及び/又はインク逆流センサーを含めることは、かかるインク逆流検出装置/センサーを含む本願の圧力制御システムの構成要素中へのインクの侵入を減少又は防止することを有利に可能にすることができ、それは、プリンターの休止時間を減少し、プリンターの信頼性を高め、プリンターの保守を減少し、インク逆流によって損傷される圧力制御システムの交換の必要性の減少によるプリンターの操作コストを減少する。
【0162】
好ましくは、圧力制御システムは、信号(例えば印刷関連信号が挙げられるが、これに限定されない)を処理するため、及び圧力制御システムに含まれるポンプ及び二方/三ポート弁の操作を制御するための内部の処理装置/制御装置を含むことができるが、これは義務ではないことが注意される。本願の圧力制御システムの一部の実施形態によれば、圧力制御システムは、圧力制御システムが配置されるプリンターの処理装置/制御装置によって操作されることができる。プリンターのかかる処理装置/制御装置は、プリンターの全ての機能を制御し(例えば印刷ヘッドの移動の制御、印刷ヘッドの印刷制御、プリンター診断、プリンターインターフェース、及び他のいずれかのプリンター機能があるが、これらに限定されない)、プリンターに設置された圧力制御ユニットの操作を制御するようにプログラムされることができる。
【0163】
図8を参照すると、それは、本願のインクジェットプリンター及び圧力制御システムのさらに別の実施形態による圧力制御システムを使用するインクジェットプリンターを示す概略的な部分流体部分ブロック図である。
【0164】
図8は、インクジェットプリンター200の圧力制御システム120及び印刷ヘッド130の構造及び操作を理解するために関連する構成要素だけを示すことが注意される。示された構成要素が含められるプリンター200の他の構成要素のいずれか、例えばプリンターのハウジング又は台、印刷ヘッド130を(二次元又は三次元的に)移動するための電気機械的システム、又は電力を供給し、プリンター200の操作を制御するためのいずれかの他の機械的及び/又は電気機械的及び/又は電気的及び/又は電子的構成要素は、図示の明瞭のために図8に示されていない。図8に示されていない構成要素のいずれかの構造及び操作は、従来業界で知られており、それゆえ以下において詳細に述べられない。
【0165】
インクジェットプリンター200は、2Dプリンター又は3Dプリンターであることができる。プリンター200は、一つ以上の処理装置/制御装置154、圧力制御システム120、及び一つ以上の印刷ヘッド130を含むことができる。圧力制御システム120は、圧力制御システム120がシステム20の内部処理装置/制御装置14を含まないことを除いて、図2の圧力制御システム20と構造及び操作において同じである。圧力制御システム120のポンプ8、圧力室3、圧力センサーユニット12、及び弁4は、処理装置/制御装置154がポンプ8の操作を制御するためにポンプ8に好適に接続されることができることを除いて、圧力制御システム20の操作と同様に構成され、操作することができる。処理装置/制御装置154はまた、図2の圧力制御システム20の処理装置/制御装置14に対して上で詳細に開示されたように圧力センサーユニット12から圧力関連信号を受けとり、受けとった圧力関連信号を処理するために圧力センサーユニット12に接続されることができる。処理装置/制御装置154はまた、弁4を操作(開放及び/又は閉鎖)するために弁4に好適に接続されることができる。
【0166】
処理装置/制御装置154はまた、印刷指令を印刷ヘッド130に送るため、及び(任意選択的に)印刷ヘッド130によって出力される状態信号又はいずれかの他の信号を受けるために印刷ヘッド130に双方向で接続されることができる。処理装置/制御装置154はまた、図3のインク逆流検出装置7と同様の構造及び操作で(任意選択的な)インク逆流検出装置7に接続されることができる。しかしながら、プリンター200のインク逆流検出装置7は、圧力制御システム120の一部であっても一部でなくてもよいことが注意される(図8に示された特定の実施形態では、インク逆流検出装置7は、圧力制御システムの一部ではなく、プリンター200内のどこに配置される)。
【0167】
中空導管260は、弁4の第二ポート4Bと印刷ヘッド130を封止可能に流体接続する。中空導管260の一部は、上で詳細に開示されたように、インク逆流検出装置7と関連した中空導管の部分に達するインクを感知及び/又は検出するためにインク逆流検出装置7に隣接して又はインク逆流検出装置7内に配置される。しかしながら、インク逆流が起こったことを示すプリンター200のインク逆流検出装置7によって出力されるいかなる信号も、処理装置/制御装置154に送られ、それは、インク逆流検出装置7から信号を受けるためにインク逆流検出装置7と好適に接続されることができる。
【0168】
プリンター200の一部の実施形態によれば、インク逆流検出装置7によって送られた信号は、インク逆流が起こったかどうかを決定するために処理装置/制御装置154によってさらに処理されることが必要でありうる。プリンター200の他の実施形態によれば、インク逆流検出装置7は、感知されるあらゆる信号を処理する追加の検出回路(図8に詳細に示されず)をその中に含めて持つことができ、処理装置/制御装置154にインク逆流の発生を表わす信号を出力することができる。もしインク逆流が検出されたなら、処理装置/制御装置154は、図3の圧力制御システム30に関して詳細に上で開示したように、ポンプ8を操作して圧力室3内の圧力を迅速に増加し(その間、弁4は開放している)、インクを中空導管から追い出し、圧力制御システム120の構成要素のいずれかの中へのインクの侵入を防止することができる。
【0169】
処理装置/制御装置154は、圧力制御システム120の操作の制御を実施してもよく、また、例えばプリンター200に含まれるいずれかの移動機構(図示せず)によって印刷ヘッド130の(2D又は3Dの)移動を制御したり、インク排出のための印刷ヘッド指令を出力したり、プリンター200の診断操作を実施するようなプリンター200の他の機能を実施してもよく、また、(例えばインディケーターLEDのオン/オフ又は状態データを示すディスプレイなどを制御するような)様々な状態データ/信号及び/又は警告をプリンターの使用者又は操作者に与えるように機能してもよく、また、プリンター200に含まれうる人のインターフェース(図示せず)を通して操作者によって発されるいずれの指令も受けとるために使用されてもよいことが注意される。
【0170】
処理装置/制御装置154はまた、プリンター200のいずれかの部分の操作のために要求されるいずれかの他の機能を実施してもよい。処理装置/制御装置154はまた、実施される印刷ジョブと関連するデータ及び/又は指令を受けとるために(限定されないが、パーソナルコンピューター、ラップトップコンピューター、遠隔又はローカルサーバー、又はいずれかの他の好適なコンピューティング及び/又はデータ貯蔵装置のような)外部データ源と通信してもよい。
【0171】
(例えば圧力室2,3及び103のような)本願の圧力制御システムの圧力室において達成されることが必要な圧力レベルは、特に圧力室の体積、圧力制御システムに流体接続される印刷ヘッド内の空気空間の内部体積(それは、もしプリンターに一つより多くの印刷ヘッドがあるなら複数の印刷ヘッドによって共有されるいずれのマニホールドの体積を含むことができる)、及び(例えば弁4又は弁104のような)二方/三ポート弁の(例えば第二ポート4B又は104Bのような)第二ポートに印刷ヘッド又はマニホールドを接続するいずれかの中空導管の体積に依存して、異なるプリンターにおいて変動しうることが注意される。
【0172】
それゆえ、本明細書で開示された圧力制御システムの一つを含むそれぞれの異なるプリンターに対しては、二方/三ポート弁が開放されて、パージを実施するか、又はウィーピングを避けるために要求される必要な負圧レベルを達成する前に圧力室内で達成されることが必要である特定の圧力レベルは、(例えば処理装置/制御装置14又は114のような)圧力制御システムの処理装置/制御装置と関連したメモリー中に、又は圧力制御システムがその上に専用の処理装置/制御装置を含まない場合は、(例えば図8のプリンター200の処理装置/制御装置154のような)プリンターを操作する処理装置/制御装置と関連するメモリー中にこれらの二つの要求される圧力レベルをプログラム又は貯蔵するために計算及び/又は校正されることが必要である。
【0173】
特定のプリンターのために要求される圧力レベルの計算
理想気体の状態方程式は、仮説の理想気体の状態の方程式である。それは、多くの条件下で多くの気体及び/又は気体混合物の挙動の良好な近似であるが、それは、複数の制限を持つ。理想気体の状態方程式は、方程式(1)として書かれることが多い。
(1) PV=nRT
式中、Pは、気体の圧力であり、
Vは、気体の体積であり、
nは、気体の物質の量(mol)であり、
Rは、ボルツマン定数とアボガドロ定数の積に等しい理想又は一般気体の定数であり、
Tは、気体の絶対温度(ケルビン度)である。
同じ気体を含む二つの体積に対して方程式(1)を使用することによる閉鎖系では、以下の方程式(2)が導かれる。
式中、Cは、気体の量nに正比例する定数である(アボガドロの法則)。
比例因数は、一般気体定数Rである。
【0174】
方程式(2)から、特定の印刷システムにおいて必要とされる希望のパージ圧力を決定することが可能である。
【0175】
システムは、二つの別個の空気区画に分割される。第一区画は、ポンプつまみ(蠕動ポンプローラーが管をつまんで管を封止する点)から第一ソレノイドポート4Aまでの圧力制御システム100の内側の体積の全てを含む。第二区画は、第二ソレノイドポート4B、印刷ヘッドにポート4Bを接続する管又は導管、及び印刷ヘッド内の内部空間内の空気の体積(いずれかのインクリザーバー内の空気の体積、及びインクリザーバーと流体接続される印刷ヘッド内の全ての他の空気空間を含む)に含まれる全ての空気体積を含む。第一区画の体積は、Vであり、第二区画の体積は、Vである。
【0176】
方程式(3)は、次いで方程式(2)から誘導して静的な態様(ポンプが作動していないとき)で二つの区画の二つの体積間の関係を記載するだろう。
【0177】
いったんソレノイド弁104が開放されると、システム全体の与えられた組み合わせ体積は、ほぼV=V+V(ソレノイド弁104のいずれの内部体積も無視する)である。以下の関係が成り立つ:
式中、Vは、印刷システムの圧力リザーバーの体積である。
は、特定の印刷システムにおける一定の体積である。
は、Vの体積を有する第二区画(ソレノイド弁に印刷ヘッドを接続する全ての管又は中空導管の内部体積及びプリンターの全ての印刷ブロック内の内部体積を含む)及び体積Vを有する圧力リザーバーを有するプリンターの圧力室内で達成されることが必要である予備設定圧力値である。
は、第一区画における空気温度(ケルビン度)である。
は、第二区画における空気温度(ケルビン度)である。
【0178】
通常の作業条件下では、(図4の)圧力センサー112A及び112Bは、圧力室103中の圧力レベルを感知することができる。感知は、連続的又は間欠的であってもよく、又は個別のサンプリングで連続的であってもよい(好ましくは、希望の頻度でデジタル化する)。感知された圧力レベルに基づいて、処理装置/制御装置114は、ポンプ108を好適な回転方向でかつ適切な回転スピードで操作して圧力を増加又は減少し、圧力制御システムの様々な操作のために設定される圧力値(例えば本明細書に開示された設定「パージ圧」及び設定「真空圧」)を達成及び/又は維持してもよい。
【0179】
パージ順序が実施されるとき、二つの区画は、ソレノイド弁(例えば図5の弁104)によって互いに流体接続解除され、ポンプ(例えば図5のポンプ108)は、第一区画内の圧力を増加するように活性化される。
【0180】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0181】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0182】
以下の実施例1及び2は、例示的計算である。
【0183】
実施例1
第一区画の既知の体積V及び第二区画の既知の体積Vを有する二つの印刷ヘッドを有するプリンターにおいて、所定のパージ圧力Pを達成するために(図1,3及び8の弁4又は図4の弁104のような弁を開放する前の)第一区画で達成されることが必要である圧力Pは、以下のように計算されることができる。
【0184】
第二区画の全体積V(それは、弁104のポート104Bに印刷ヘッドを接続するいかなる導管の体積も含む二つの印刷ヘッド内の近似的な全空気体積である)は、約17300mmである。
【0185】
第一区画の全体積V(それは、圧力室103の近似的全体積+ポート104Aに圧力室103を接続する導管の体積及び圧力室103にポンプ108のポート108Aを接続する導管の体積である)は、約25250mmである。
【0186】
第二区画T2中の空気の温度は、約70℃である(それは、約343K°である)。
【0187】
第一区画T1中の空気の温度は、約45℃である(それは、約318K°である)。
【0188】
達成される所定のパージ圧力は、P=4PSIである。それゆえ、
【0189】
上記の計算は、弁104が開放された後に流体接続された第一及び第二区画の組み合わされた体積において4PSIのパージ圧力を達成するために、弁104を開放する前にポンプ108によって第一区画内で達成されることが必要である圧力が約6.5PSIであることを示す。上記の計算は、Vにおける小さな変動が印刷ヘッド内のインクのレベルの変化によってプリンターの操作時に起こりうるという理由だけで近似する結果を与えている。しかしながら、計算は、弁104の開放前に第一区画内で要求される圧力Pを実際に決定するためには十分な精度を与える。
【0190】
実施例2
実施例1と同じ圧力制御システムを使用するが、八つの印刷ヘッドを含む印刷ブロックを有するプリンターにおいて、第一区画の体積Vは、第一区画が同じであるので、上記の実施例1と同様である。第二区画の体積は、圧力室103の体積+様々な取り付けられた導管の体積が変わらない(同じ圧力制御システムが使用される)ので、上記の実施例1と同じである。所定のパージ圧力Pを達成するために(弁104を開放する前に)第一区画で達成されることが必要である圧力Pは、以下のように計算されることができる。Vは、(八つの印刷ヘッドの気体体積は、上記の実施例1の二つの印刷ヘッドより大きいとき)約54000mmである。Vは、約25250mmである。
【0191】
第二区画T2中の空気の温度は、約70℃である(それは、約343K°である)。
【0192】
第一区画T1中の空気の温度は、約45℃である(それは、約318K°である)。
【0193】
達成される所定のパージ圧力は、変化されず、P=4PSIである。実施例1と同じ方程式を使用すると、
【0194】
全ての八つの印刷ヘッド内で同じパージ圧力Pを達成するために弁104を開放する前にポンプ108によって第一区画内で達成されることが必要である圧力Pは、約12.6PSIである。
【0195】
計算の簡単のため、上記の実施例1及び2で計算された圧力値は、パージ順序が実施されながらポンプが作動しない単純化した想定を使用して計算されることが注意される。それゆえ、現実に想定される値は、パージ順序が実施されながらポンプが実際に作動しないので、より低いかもしれない。ポンプが活性化され、弁が開放状態であるとき、組み合わされた体積Vにおける圧力は、時間依存関数である。
【0196】
圧力制御システムは、異なる圧力室体積を持ってもよく、特定の内部体積を有する印刷ヘッド(単数又は複数)及び圧力制御システムの各々の特定の組み合わせにおいて、様々な内部体積を有する多くの異なるタイプの印刷ヘッドと組み合わされてもよいので、パージ順序の間、及び/又は真空モードに戻る間の時間の関数としての圧力の挙動は異なってもよいことが認識されるだろう。従って、Pの値は、各々のかかる異なる組み合わせに対して独自に設定及び/又は校正されることが必要であるかもしれない。
【0197】
図9を参照すると、それは、本願の方法の一部の実施形態による、プリンターにおいて本願の圧力制御システムを操作する方法の工程を示す概略的なフローチャートである。
【0198】
この方法は、以下の工程を含む。圧力制御システム(例えば圧力制御システム10,20,50,100,150及び200)は、工程202において、圧力センサーユニット(例えば図1〜3及び8の圧力センサーユニット12、又は図4の圧力センサー112A及び/又は112B)から圧力室(例えば図1の圧力室2、又は図2〜3及び8の圧力室3、又は図4〜6の圧力室)内の圧力レベルを表わす圧力関連信号を受けとる。
【0199】
圧力制御システムはまた、印刷ヘッドを操作するための印刷制御信号を受けとることができる(工程204)。一般的に、印刷制御信号は、プリンターの操作を制御する別個の処理装置/制御装置(例えば図3の処理装置/制御装置24、又は図1〜3の通信ライン15に接続されたいずれかのプリンターを制御する処理装置/制御装置)から送られることができる。しかしながら、本願の圧力制御システムの一部の実施形態では、単一の処理装置/制御装置は、圧力制御システムの操作を含む、プリンターの全ての異なる機能及び操作を制御する(例えば図8のプリンター200の処理装置/制御装置154)。かかる場合において、工程204のプリンター制御信号を受けとることは、共通のプリンター処理装置/制御装置(例えば処理装置/制御装置154)で操作するソフトウェアプログラムが印刷制御信号を実際に発生してもよく、別の処理装置からそれらを受けとる必要がないことを意味することができ、用語「印刷制御信号を受けとること」は、印刷制御システムの操作を制御するソフトウェアサブルーチン又はプログラムソフトウェアモジュールが主要なプログラムから、又はプリンターの印刷機能を制御してもよい別のサブルーチン又はプログラムソフトウェアモジュールから印刷制御信号を受けとることを意味することができる。従って、用語「印刷制御信号を受けとること」は、この場合において、「内部的に」、同じ処理装置/制御装置内に発生されるかかる信号に対してアクセスを持ったり又はそれを受けとることを意味することができる。
【0200】
圧力制御システムは、次いで工程206において、圧力関連信号及び印刷制御信号を処理し、(例えば図1,2,3及び8のポンプ8、又は図4のポンプ108のような)ポンプのポンピングの方向及び/又はスピードを制御するためのポンプ制御信号、及び(例えば図1,2,3及び8の弁4、又は図4の弁104のような)弁の操作を制御するための弁制御信号を与えることができる。上に詳細に開示されたように、弁は、二つの状態(開放状態及び閉鎖状態)を有する。もし弁が通常開放弁であるなら、弁を閉鎖するための制御信号は、弁制御端子に付与された正電圧パルスのような正電圧信号であることができ、閉鎖された弁を開放するための制御信号は、弁を開放するために要求される正電圧値より低い正電圧又はゼロへの電圧信号の戻りであることができる。しかしながら、信号は、従来良く知られているように使用される弁の特定のタイプによって他の異なる信号であることができる。
【0201】
同様に、もし弁が通常閉鎖弁であるなら、弁を開放するための制御信号は、弁制御端子に付与された正電圧パルスのような正電圧信号であることができ、開放弁を閉鎖するための制御信号は、弁を開放するために要求される正電圧値より低い正電圧又はゼロへの電圧信号の戻りであることができる。しかしながら、信号は、従来良く知られているように使用される弁の特定のタイプによって他の異なる信号であることができる。
【0202】
図10A〜10Bを参照すると、それは、本願の方法の一部の実施形態による、プリンター中の圧力制御システムを操作する方法の工程を示す概略的フローチャートである。
【0203】
図10A〜10Bのフローチャートは、特定のインクジェット印刷ヘッド(示されず)と関連して図4〜6の圧力制御システム100を操作するための方法の実施の特定の例である。
【0204】
圧力制御システム100で操作するプログラムは、ポンプ108が待機状態(静止状態)であり、かつ弁104が開放している状態から出発することができる(工程250)。プログラムは、真空モード指令が検出されるかどうかをチェックする(工程252)。もし真空モード指令が検出されるなら、プログラムは、工程254において、液体(インク)逆流が(例えば図3及び8のインク逆流検出装置7によって)検出されたかどうかをチェックする。もしインク逆流が検出されたなら、プログラムは、(「+」符号によって示されるように)正回転方向で中スピードでポンプ108を操作して圧力室108内、及び弁106に流体接続された印刷ヘッド内の圧力をT1秒の時間期間増加し(工程256)、ポンピングなしでT2秒の時間期間待ち(工程258)、ポンプ108を再び正(+)回転方向に中スピードでT3秒の時間期間操作し(工程260)、ポンプ108を使用不能にする(工程262)。任意選択的に、プログラムはまた、使用者に逆流が起こったことを示すために逆流警告又はメッセージを発することができる(工程264)。工程264において、好ましくは、ポンプが使用不能になるとき、印刷が停止され、プリンターは、逆流問題が解決されるまで再活性化されることができない。
【0205】
工程254では、もしインク逆流が検出されなかったなら、プログラムは、「パージ段階1」フラグの値が1に等しい(それは、印刷ヘッドパージが要求されることを示す)かどうかをチェックすることを行なう(工程266)。もしパージ段階1フラグ=1であるなら、プログラムは、弁104を閉鎖し(工程268)、ポンプ108を中スピードで負回転方向(「−」符号によって示される)に操作して圧力室103内の圧力を低下する(工程270)。プログラムは、次いで圧力室103内の圧力レベルが設定真空圧力レベルより大きいか又はそれに等しいかどうかをチェックする(工程272)。もし圧力室103内の圧力レベルが真空圧力レベルより大きいか又はそれに等しいなら、プログラムは、制御を工程272に戻すことによってポンプ108を操作することを継続し、さらに圧力室103内の圧力を減少する。「真空圧力レベル」は、上記の実施例1及び2で詳細に説明されるように、圧力制御システムに流体接続された特定の印刷ヘッドの体積によって決定される設定又は予備設定又はプログラムされた圧力値である。
【0206】
もし圧力室103内の圧力レベルが設定真空圧力レベルより小さいなら、プログラムは、弁103を開放して印刷ヘッド内の圧力が上で詳細に説明したように希望の真空モード圧力まで減少し(工程274)、段階1フラグの値を1に設定し(工程276)、制御を工程250に戻す。
【0207】
工程266では、もし段階1のパージフラグが1に等しくないなら、プログラムは、圧力室103内の圧力レベルが設定真空圧力レベルより大きいかどうかをチェックする(工程278)。「真空圧力レベル」値は、上記の実施例1及び2で詳細に説明されるように、圧力制御システムに流体接続された特定の印刷ヘッドの体積によって決定される設定又は予備設定又はプログラムされた圧力値である。もし圧力室103内の圧力レベルが真空圧力レベルより大きいなら、プログラムは、ポンプを中スピードで負(−)回転方向に操作して圧力室103内の圧力をさらに減少し(工程280)、制御を工程278に移す。
【0208】
もし圧力室103内の圧力レベルが真空圧力レベルより大きくないなら、プログラムは、圧力室103内の圧力が真空圧力レベルより小さいかどうかをチェックする(工程282)。
【0209】
もし圧力室103内の圧力レベルが真空圧力レベルより小さいなら、プログラムは、ポンプ108を低スピードで正回転方向で操作して圧力室103内の圧力レベルを増加し、制御を工程282に戻す。
【0210】
もし圧力室103内の圧力レベルが真空圧力レベルより小さくないなら、プログラムは、制御を工程250に移す。
【0211】
図10Aの)工程252では、もし真空モード指令が検出されなかったなら、プログラムは、圧力室103内の圧力レベルがパージ圧力レベルに等しいか又はそれより大きいかどうかをチェックする(工程288)。もしパージ段階1フラグ=1であるなら、プログラムは、制御を工程250に移す。もしパージ段階1フラグの値が1に等しくないなら、プログラムは、ポンプ108を中スピードで正回転方向(+)に操作して圧力室103内の圧力レベルを増加し(工程290)、制御を工程288に移す。
【0212】
工程286では、もしパージ段階1フラグが1に等しくないなら、プログラムは、弁104を閉鎖し(工程292)、ポンプ108を最大スピードで正回転方向(+)で操作し(工程294)、圧力室103内の圧力レベルがパージ圧力レベルより大きいか又はそれに等しいかどうかをチェックする(工程296)。もし圧力室103内の圧力レベルがパージ圧力レベルより大きくないか又はそれに等しいなら、プログラムは、制御を工程294に移し、ポンプ108の操作を継続する。もし圧力室103内の圧力レベルがパージ圧力レベルより大きいか又はそれに等しいなら、プログラムは、弁104を開放し、段階1フラグ=1を設定し(工程298)、次いで制御を工程250に移す。
【0213】
図10A〜10Bの方法の特定の例示的実施形態によれば、(工程256,258及び260のそれぞれの)時間間隔T1,T2及びT3は、次の値を持つこと(T1=5秒、T2=30秒、及びT3=15秒)が注意される。時間間隔T1,T2及びT3のこれらの特定の値は、圧力制御システム100が上記の実施例1に開示されたようなパラメーターで特定の印刷ブロックで流体接続されるときに圧力制御システム100の適当な操作のために適切であることが見い出され、これらの特定の値は、方法を実施するための義務では全くなく、(本明細書で開示された特定の例で与えられた特定の値より低い及び/又は高い)T1,T2及びT3の他の異なる値が特に圧力制御システムと結合して使用される印刷ヘッド又は印刷ブロック、ポンプのポンピング容量及び他の考慮事項に依存して使用されることができることが認識されるべきである。これらのパラメーターのための適切な値は、過度の実験なしに当業者によって容易に経験的に決定されることができる。
【0214】
上で開示されたような圧力制御システム100の一つの特定の例示的な実施形態に使用される特定の蠕動ポンプ(モデルWP11−N1/4(200)BA2G−BS材料蠕動ポンプ)に対して、以下のポンプスピード範囲が、圧力制御システム100が上記の実施例1に開示されたのと同じ体積及び圧力パラメーターを有する印刷ヘッドに流体接続されたときにプログラムの操作のために好適であることを見い出した:
低スピード=0.3〜0.4RPS
中スピード=1.0〜1.5RPS
高スピード=2.3〜2.5RPS
【0215】
しかしながら、ポンプスピード範囲は、例示にすぎず、義務ではなく、特に使用されるシステムの第一区画の体積、使用される印刷ヘッド内の全内部体積(第二区画の体積)、及び圧力制御システムに使用される特定のポンプのポンピング容量及び他の特性に依存して変動しうる。
【0216】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B