特許第6831470号(P6831470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831470
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】無段変速機の制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/04 20060101AFI20210208BHJP
   F16H 61/66 20060101ALI20210208BHJP
   F16H 59/14 20060101ALI20210208BHJP
   F16H 59/42 20060101ALI20210208BHJP
   F16H 59/70 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   F16H61/04
   F16H61/66
   F16H59/14
   F16H59/42
   F16H59/70
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-542055(P2019-542055)
(86)(22)【出願日】2018年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2018033560
(87)【国際公開番号】WO2019054354
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-178270(P2017-178270)
(32)【優先日】2017年9月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】岡原 謙
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−160982(JP,A)
【文献】 特開2011−207240(JP,A)
【文献】 特開平11−194801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実変速制御値が目標変速制御値になるように無段変速機の変速制御を行う無段変速機の制御装置であって、
前記目標変速制御値の進み補償を行う進み補償部と、
前記目標変速制御値の遅れ補償を行う遅れ補償部と、
前記無段変速機の入力側回転速度、前記無段変速機の従動側回転要素への入力トルク、前記無段変速機の変速比及び変速比の変化率のうち少なくともいずれかに応じて、前記進み補償部によって補償が行われるとともに、前記無段変速機の入力側回転速度、前記無段変速機の従動側回転要素への入力トルク、前記無段変速機の変速比及び変速比の変化率のうち少なくともいずれかに応じて、前記遅れ補償部によって補償が行われた補償後目標変速制御値を前記目標変速制御値として設定する設定部と、
を有する、無段変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無段変速機の制御装置において、
前記設定部は、前記入力側回転速度及び前記入力トルクに応じた動作点が、前記入力側回転速度及び前記入力トルクに応じて設定された補償領域にある場合に、前記補償後目標変速制御値を前記目標変速制御値として設定する、無段変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無段変速機の制御装置において、
前記補償領域は、前記入力トルクが所定トルクよりも小さい領域を含む、無段変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無段変速機の制御装置において、
前記補償領域は、前記入力トルクが前記所定トルク以上、かつ前記入力側回転速度が所定回転速度以上の領域をさらに含み、
前記所定回転速度は、前記入力トルクが大きくなるほど大きくなるように設定される、無段変速機の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の無段変速機の制御装置において、
前記設定部は、前記変速比が所定変速比よりも大きい場合に、前記補償後目標変速制御値を前記目標変速制御値として設定する、無段変速機の制御装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の無段変速機の制御装置において、
前記設定部は、前記変化率が所定値よりも小さい場合に、前記補償後目標変速制御値を前記目標変速制御値として設定する、無段変速機の制御装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の無段変速機の制御装置において、
前記無段変速機は、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを介して動力が入力され、
前記設定部は、さらに前記ロックアップクラッチが締結されている場合に、前記補償後目標変速制御値を前記目標変速制御値として設定する、無段変速機の制御装置。
【請求項8】
実変速制御値が目標変速制御値になるように無段変速機の変速制御を行う無段変速機の制御方法であって、
前記無段変速機の入力側回転速度、前記無段変速機の従動側回転要素への入力トルク、前記無段変速機の変速比及び変速比の変化率のうち少なくともいずれかに応じて、前記目標変速制御値の進み補償を行うとともに、前記無段変速機の入力側回転速度、前記無段変速機の従動側回転要素への入力トルク、前記無段変速機の変速比及び変速比の変化率のうち少なくともいずれかに応じて、遅れ補償を行って、補償後目標変速制御値を前記目標変速制御値として設定する、
無段変速機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される無段変速機の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無段変速機の変速制御に関し、目標変速比に対する実変速比の応答遅れ分だけ目標変速比を進み補償する技術が開示されている。
【0003】
無段変速機では、パワートレインの共振周波数で前後方向の振動を引き起こすことがある。前後振動は、パワートレインのトルク変動に対して無段変速機の変速比の安定性が不足している場合に、トルク変動と無段変速機の変速とが連成して発生すると考えられる。このため、進み補償を行い、無段変速機の変速比の安定性、つまり制振性を高めることで、前後振動を抑制することが考えられる。進み補償としては、ピーク値周波数における進み量を固定して進み補償を行うことが考えられる。ピーク値周波数は、周波数に応じた進み量がピークを示す周波数である。しかしながら、車両の運転状態によっては進み量が足りず、十分な制振性能が得られないおそれがある。一方、進み補償では、進み量を大きくすると、高周波のゲインが大きくなるため、進み量を大きくしすぎると、変速比制御系が不安定になるという問題があった。
【0004】
本発明は、進み補償を行う無段変速機の変速比の安定性を確保しつつ制振効果を得ることが可能な無段変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−106700号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、実変速制御値が目標変速制御値になるように無段変速機の変速制御を行う無段変速機の制御装置であって、
前記目標変速制御値の進み補償を行う進み補償部と、
前記目標変速制御値の遅れ補償を行う遅れ補償部と、
前記無段変速機の入力側回転速度、前記無段変速機の従動側回転要素への入力トルク、前記無段変速機の変速比及び変速比の変化率のうち少なくともいずれかに応じて、前記進み補償部及び/又は前記遅れ補償部によって補償が行われた補償後目標変速制御値を前記目標変速制御値として設定する設定部と、
を有する。
【0007】
よって、前後振動が発生する領域で補償後目標変速制御値を目標変速制御値として設定することができる。このため、目標変速制御値の進み補償及び遅れ補償による無段変速機の変速比の安定性向上を必要に応じて図ることができ、前後振動の収束を図ることで、無段変速機の前後振動を適切に改善できる。また、位相進み補償及び/又は位相遅れ補償により変速比の安定性を高めることができ、変速比の制御応答性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の変速機コントローラを含む車両の概略構成図である。
図2】実施例の変速機コントローラの概略構成図である。
図3】位相進み補償器のボード線図の一例を示す図である。
図4】変速比制御系の要部を示すブロック図の一例を示す図である。
図5】変速機コントローラが行う制御の一例を示すフローチャートである。
図6】位相補償領域の説明図である。
図7】変速機コントローラが行う制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例]
図1は、実施例の変速機コントローラを含む車両の概略構成図である。車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の動力は、パワートレインPTを構成するトルクコンバータ2と、第1ギヤ列3と、変速機4と、第2ギヤ列(ファイナルギヤ)5と、差動装置6と、を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には、駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
【0010】
トルクコンバータ2は、ロックアップクラッチ2aを有する。ロックアップクラッチ2aが締結されると、トルクコンバータ2の滑りが無くなり、トルクコンバータ2の伝達効率が向上する。以下、ロックアップクラッチ2aをLUクラッチ2aと記載する。
変速機4は、バリエータ20を有する無段変速機である。バリエータ20は、プライマリプーリであるプーリ21と、セカンダリプーリであるプーリ22と、プーリ21,22の間に掛け回されたベルト23と、を有する。プーリ21は、主動側回転要素を構成し、プーリ22は従動側回転要素を構成する。
プーリ21,22は、それぞれ固定円錐板と、固定円錐板に対してシーブ面を対向配置して固定円錐版との間にV溝を形成する可動円錐板と、可動円錐板の背面に設けられ可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダと、を有する。プーリ21は、油圧シリンダ23aを有し、プーリ22は、油圧シリンダ23bを有する。
油圧シリンダ23a,23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化し、ベルト23と各プーリ21,22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比が無段階に変化する。バリエータ20は、トロイダル型の無段変速機であってもよい。
【0011】
変速機4は、副変速機構30を更に備える。副変速機構30は、前進2段・後進1段の変速機構であり、前進用変速段として1速と、1速よりも変速比の小さな2速を有する。副変速機構30は、エンジン1から駆動輪7に至る動力伝達経路において、バリエータ20と直列に設けられる。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されてもよいし、その他の変速ないしギヤ列等の動力伝達機構を介して接続されていてもよい。あるいは、副変速機構30はバリエータ20の入力軸側に接続されていてもよい。
【0012】
車両は、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10が発生させる油圧を調整して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御する変速機コントローラ12と、を有する。油圧制御回路11は、複数の流路及び複数の油圧制御弁から構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧供給経路を切り替える。また、油圧制御回路11は、オイルポンプ10が発生させる油圧から必要な油圧を調整し、調整した油圧を変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速、副変速機構30の変速段の変更、LUクラッチ2aの締結・解放が行われる。
【0013】
図2は、実施例の変速機コントローラ12の概略構成図である。変速機コントローラ12は、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125と、を有する。
入力インターフェース123は、例えばアクセルペダルの操作量を表すアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力側回転速度を検出する回転速度センサ42の出力信号、プーリ22の回転速度Nsecを検出する回転速度センサ43の出力信号、変速機4の出力側回転速度を検出する回転速度センサ44の出力信号が入力される。
【0014】
変速機4の入力側回転速度は、具体的には、変速機4の入力軸の回転速度、すなわちプーリ21の回転速度Npriである。変速機4の出力側回転速度は、具体的には、変速機4の出力軸の回転速度、すなわち副変速機構30の出力軸の回転速度である。変速機4の入力側回転速度は、例えばトルクコンバータ2のタービン回転速度など、変速機4との間にギヤ列等を挟んだ位置の回転速度であってもよい。変速機4の出力側回転速度についても同様である。
【0015】
入力インターフェース123は、車速VSPを検出する車速センサ45の出力信号、変速機4の油温TMPを検出する油温センサ46の出力信号、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ47の出力信号、エンジン1の回転速度Neを検出する回転速度センサ48の出力信号、変速機4の変速範囲を1よりも小さい変速比に拡大するためのODスイッチ49の出力信号、LUクラッチ2aへの供給油圧を検出する油圧センサ50の出力信号、プーリ22への供給油圧であるセカンダリ圧Psecを検出する油圧センサ52の出力信号、車両の前後加速度を検出するGセンサ53の出力信号等が入力される。入力インターフェース123には、エンジン1を制御するエンジンコントローラ51から、エンジントルクTeのトルク信号も入力される。
【0016】
記憶装置122には、変速機4の変速制御プログラム、変速制御プログラムに用いる各種マップ等が格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に基づいて変速制御信号を生成する。また、CPU121は、生成した変速制御信号を、出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値及びCPU121の演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0017】
変速機4は、パワートレインPTの共振周波数であるPT共振周波数Fptで前後振動が発生することがある。前後振動は、パワートレインPTのトルク変動に対して、変速機4の変速比の安定性が不足している場合に、トルク変動と変速機4の変速とが練成して発生すると考えられる。このため、進み補償を行い、変速機4の変速比の安定性を確保し、制振性を高めることで、前後振動を抑制する。
【0018】
ところが、車両の走行状態によっては、次に説明するように、進み補償による制振効果が十分に得られない場合がある。図3は、位相進み補償器のボード線図の一例を示す図である。ボード線図の横軸は、周波数を対数表示したものである。図3では、二次の位相進み補償を行う場合を示す。ピーク値周波数Fpkは、周波数に応じた進み量Aがピークを示す周波数であり、位相進み補償で狙いの周波数に応じて設定される。狙いの周波数は、具体的には、PT共振周波数Fptである。このため、ピーク値周波数Fpkは、例えば、PT共振周波数Fptに設定される。進み量Apkは、ピーク値周波数Fpkに応じた進み量Aを示す。
【0019】
曲線Cは、周波数に応じた進み量Aの一例を示す。周波数に応じた進み量Aは、位相進み補償の進み量Aであって、変速機4の入力軸のねじり振動の振動周波数に応じた進み量Aである。周波数に応じた進み量Aは、曲線Cのうち、例えばPT共振周波数Fptなど、ある周波数に対応する進み量Aと把握されてもよい。図3では、ゲインGとして曲線Cに対応するゲインを示す。
【0020】
ここで、前後振動を抑制するにあたり、位相進み補償としては、ピーク値周波数Fpkにおける進み量Apkを固定して位相進み補償を行うことが考えられる。言い換えると、周波数に応じた進み量Aを、例えば曲線Cに固定して位相進み補償を行うことが考えられる。しかしながら、車両の運転状態によっては、進み量Aが足りずに十分な制振効果が得られない場合があった。その一方で、ピーク値周波数Fpkの進み量Apkが増加するほど、制振効果は大きくなる傾向がある。このため、周波数に応じた進み量Apkを車両の運転状態に応じて可変にすることが考えられる。ところが、進み量Apkを増加させるとゲインGも増加するため、進み量Apkを大きくしすぎると、後述する変速比制御系100が不安定になることが懸念される。また、変速比制御系100の安定性は、車両の運転状態によって異なる。
【0021】
一方、進み量Apkを大きくしていくと、変速機コントローラ12の状態が変化した場合、進み量Apkが不適切となる場合がある。そこで、位相進み補償に加えて、位相遅れ補償を行うことが望ましい。しかしながら、車両の運転状態によっては、遅れ量Bが足りずに、PT共振由来の車両振動が起きることが懸念される。また、遅れ量Bが多すぎると、制御系が不安定になって低周波制御加振が起きるおそれがある。
【0022】
そこで、変速機コントローラ12(以下、コントローラ12とも記載する。)は、以下で説明する変速制御を行う。以下では、変速機4の変速比としてバリエータ20の変速比Ratioを用いて説明する。変速比Ratioは、後述する実変速比Ratio_A,目標変速比Ratio_D及び到達変速比Ratio_Tを含むバリエータ20の変速比の総称である。
【0023】
図4は、実施例の変速比制御系の要部を示す制御ブロック図である。変速比制御系100は、実変速制御値が目標変速制御値になるように変速機4の変速比制御を行うことで、変速機4のフィードバック変速制御を行う。変速比制御系100は、コントローラ12、アクチュエータ111、バリエータ20から構成される。
【0024】
コントローラ12は、目標値生成部131と、FB補償器132と、位相補償オンオフ決定部133と、進み量決定部134と、進み量フィルタ部135と、第1位相進み補償器136と、第2位相進み補償器137と、第1スイッチ部138と、オンオフ指令フィルタ部139と、センサ値フィルタ部140と、第1ピーク値周波数決定部141と、遅れ量決定部142と、遅れ量フィルタ部143と、第2ピーク値周波数決定部144と、第1位相遅れ補償器145と、第2位相遅れ補償器146と、第2スイッチ部147と、PT共振検知部150と、油振検知部151と、発散検知部152と、を有する。FBは、フィードバックの略である。
【0025】
目標値生成部131は、変速制御の目標値を生成する。目標値は、具体的には、変速比Ratioを変速制御値とした最終目標変速制御値である到達変速比Ratio_Tに基づく目標変速比Ratio_Dとされる。変速制御値は、例えば、制御パラメータとしてのプライマリ圧Ppriとしてもよい。到達変速比Ratio_Tは、変速マップで車両の運転状態に応じて予め設定されている。このため、目標値生成部131は、検出された運転状態に基づき、対応する到達変速比Ratio_Tを変速マップから読み出す。車両の運転状態は、具体的には、車速VSP及びアクセル開度APOを用いる。
【0026】
目標値生成部131は、到達変速比Ratio_Tに基づき、目標変速比Ratio_Dを算出する。目標変速比Ratio_Dは、到達変速比Ratio_Tになるまでの間の過渡的な目標変速比であり、目標変速制御値を構成する。算出された目標変速比Ratio_Dは、FB補償器132に入力される。
【0027】
FB補償器132は、変速比Ratioの実値である実変速比Ratio_A、目標変速比Ratio_Dに基づき、フィードバック指令値を算出する。フィードバック指令値は、例えば、実変速比Ratio_Aと目標変速比Ratio_Dの誤差を埋めるためのフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBである。FB補償器132では、FBゲインG_FBが可変とされる。FBゲインG_FBは、変速比制御系100で行う変速機4の変速比制御のFBゲインであり、車両の運転状態に応じて可変とされる。車両の運転状態は、例えば、変速比Ratio,変速比Ratioの変化率α,入力トルクTpri等である。変速比Ratioの変化率αは、言い換えると、変速速度である。FB補償器132で算出されたフィードバック指令値(フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FB)は、進み量決定部134と、第1位相進み補償器136に入力される。
【0028】
位相補償オンオフ決定部133は、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの位相進み補償及び位相遅れ補償のオンオフを決定する。位相補償オンオフ決定部133は、プーリ状態値Mと、後述する発散検知部152の指示値発散情報と、FBゲインG_FBと、後述する油振検知部151の油振検知情報と、後述するPT共振検知部150のPT共振情報と、目標変速比Ratio_Dと、に応じて、位相補償のオンオフを決定する。プーリ状態値Mは、プーリ21,22が、前後振動が発生する状態であるか否かを判定するための値であり、回転速度Npri,プーリ22への入力トルクTsec,変速比Ratio,及び変速比Ratioの変化率αを含む。入力トルクTsecは、例えばエンジン1及びプーリ22間に設定された変速比(第1ギヤ列3のギヤ比及びバリエータ20の変速比)をエンジントルクTeに乗じた値として算出することができる。変速比Ratioには、実変速比Ratio_A及び目標変速比Ratio_Dを適用することができる。変速比Ratioは、実変速比Ratio_Aまたは目標変速比Ratio_Dとしてもよい。
【0029】
位相補償オンオフ決定部133は、具体的には、回転速度Npri,入力トルクTsec,変速比Ratio,及び変化率αの4つのパラメータすべてに応じて、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの位相進み補償及び位相遅れ補償のオンオフを決定する。位相補償オンオフ決定部133は、入力トルクTsec,変速比Ratio,及び変化率αのいずれかのパラメータに応じて、位相進み補償及び位相遅れ補償のオンオフを決定するように構成してもよい。位相補償オンオフ決定部133は、プーリ状態値Mに加えて、更にLUクラッチ2aの締結状態と、変速比4に対するドライバ操作の状態と、フェールの有無とに応じてフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの位相補償のオンオフを決定する。
【0030】
図5は、実施例の位相補償オンオフ決定部が行う処理を表すフローチャートである。ステップS1からステップS5までの処理は、パワートレインPTの共振が起きるか否かを判定する処理であり、言い換えると、変速機4の前後振動が発生するか否かを判定する処理である。以下では、パワートレインPTの共振をPT共振と記載する。
【0031】
ステップS1では、プーリ状態値Mが、前後振動が発生する値であるか否かを判定する。ステップS1では、プーリ状態値Mである回転速度Npri,入力トルクTsec,変速比Ratio,及び変速比Ratioの変化率αそれぞれにつき、次の判定を行う。図6は、位相補償領域の説明図である。図6では、複数の動作点Mで動作点Mの分布を示す。位相補償領域Rは、回転速度Npri及びプーリ22への入力トルクTsecに応じて設定される。位相補償領域Rは、入力トルクTsecが所定トルクTsec1以上、かつ、回転速度Npriが所定回転速度Npri1以上の領域R2を更に含む。所定回転速度Npri1は、入力トルクTsecが大きくなるほど大きくなるように設定される。所定回転速度Npri1は、境界Bを規定するように設定される。境界Bは、入力トルクTsecに比例して回転速度Npriが増加する直線とされる。
【0032】
所定トルクTsec1,所定回転速度Npri1は、前後振動が発生する入力トルクTsec及び回転速度Npriを規定するための値であり、実験等により予め設定することができる。位相補償領域Rは、コースト走行時にロードロードすなわち道路負荷に見合う開度でアクセルペダルが踏み込まれた場合の動作点Mを含む。動作点Mは、エンジン1のアイドル回転速度に対応する回転速度Npriよりも低い領域には分布しない。
【0033】
境界Bで位相補償領域Rから区分された領域は、跳ね返り領域RXである。ここで、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBに位相補償を施す前の指示圧をPpri_D1,位相補償後の指示圧をPpri_D2と定義する。跳ね返り領域RXでは、指示圧Ppri_D2を設定すると、指示圧が振動する結果、実圧Ppri_Aの振動が引き起こされることになる。このため、動作点Mが位相補償領域Rにない場合には、指示圧Ppri_D1を設定することで、変速比Ratioの安定性を不要に高めることが防止されるだけでなく、実圧Ppri_Aの振動の発生を防止する。
【0034】
ところで、位相補償領域Rは、変速比Ratioが所定変速比Ratio1よりも大きい場合、言い換えると、変速比Ratioが所定変速比Ratio1よりもLow側の場合に対して設定される。所定変速比Ratio1は、前後振動が発生する変速比を規定するための値であり、例えば1である。所定変速比Ratio1は、実験等により予め設定することができる。
【0035】
位相補償領域Rは、更に、変速比Ratioの変化率αが所定値α1よりも小さい場合に対して設定される。所定値α1は、前後振動が発生する変速比Ratioの変化率を規定するための値であり、具体的には変速比Ratioが定常状態であるか否かを判定する判定値として設定される。所定値α1は、実験等により予め設定することができる。位相補償領域Rは、更にLUクラッチ2aが締結されている場合に対して設定される。実施例では、位相補償領域Rそのものが、更に変速比Ratio,変化率α及びLUクラッチ2aの締結状態に応じて設定される形で設定される。動作点Mについても同様である。
【0036】
図7は、動作点Mが位相補償領域内か否かを判定するフローチャートである。
ステップS11では、入力トルクTsecが所定トルクTsec1よりも小さいか否かを判定し、TsecがTsec1以上のときは、ステップS22に進み、TsecがTsec1よりも小さいときは、ステップS13に進む。
ステップS12では、回転速度Npriが所定回転速度Npri1よりも大きいか否かを判定し、大きい場合はステップS13に進み、NpriがNpri1以下の場合はステップS17に進む。
ステップS13では、変速比Ratioが所定変速比Ratio1よりも大きいか否かを判定する。具体的には、実変速比Ratio_A又は目標変速比Ratio_Dが、所定変速比Ratio1よりも大きいか否かを判定する。RatioがRatio1よりも大きいか否かは、例えばODスイッチ49がOFFであるか否かで判定することができる。実変速比Ratio_A、目標変速比Ratio_Dは、演算値であってもよい。ステップS13で大きいと判定された場合はステップS14に進み、それ以外の場合はステップS17に進む。
【0037】
ステップS14では、変化率αが所定値α1よりも小さいか否かを判定する。変化率αが所定値α1よりも小さいか否かは、例えばインヒビタスイッチ47の出力に基づき、セレクトレバーでマニュアルレンジがセレクトされているか否かなど、ドライバ操作によって変速比Ratioが固定される状態であるか否かで判定することができる。ステップS14で変化率αが所定値α1よりも小さいと判定された場合はステップS15に進み、それ以外の場合はステップS17に進む。
ステップS15では、LUクラッチ2aが締結されているか否かを判定する。LUクラッチ2aが締結されているか否かは、油圧センサ50の出力に基づき判定できる。LUクラッチ2aが締結されている場合はステップS16に進み、それ以外の場合はステップS17に進む。
ステップS16では、動作点Mが位相補償領域Rにあると判定する。
ステップS17では、動作点Mが位相補償領域Rに無いと判定する。言い換えると、動作点Mが跳ね返り領域RXにあると判定する。
【0038】
図5のステップS1では、これらのプーリ状態値M全てが前後振動発生値であると判定した場合は、ステップS2に進む。一方、これらのプーリ状態値Mのいずれかが前後振動発生値でないと判定した場合は、ステップS5に進み、PT共振ではないと判定する。したがって、前後振動は発生しないと判定してステップS10に進み、位相補償をオフにする。
【0039】
ステップS2では、LUクラッチ2aが締結されているか否かを判定する。これにより、LUクラッチ2aの締結状態に応じて、位相補償のオンオフが決定される。LUクラッチ2aが解放されている場合は、前後振動は発生しないと判断してステップS5に進み、LUクラッチ2aが締結している場合は、前後振動が発生する状態であると判断してステップS3に進む。
【0040】
ステップS3では、変速機4に対するドライバ操作の状態が所定状態であるか否かを判定し、変速比Ratioが所定変速比Ratio1よりも大きくなる第1操作状態、もしくは変速比Ratioが定常状態になる第2操作状態か否かを判定する。
第1操作状態とは、ODスイッチ49がOFFの状態である。第2操作状態は、セレクトレバーによってマニュアルレンジが選択されている状態や、スポーツモード等のマニュアルモードが選択されている状態など、ドライバ操作によって変速比Ratioが固定される状態である。ドライバ操作の状態が所定状態であるか否かを判定することで、変速比Ratioが所定変速比Ratio1よりも継続的に大きくなることや、変速比Ratio1が継続的に定常状態になることを判定することができる。よって、変速比Ratioが、前後振動が発生する状態であることを確実に判定する。ステップS3において、所定状態ではないと判定された場合はステップS5に進み、所定状態であると判定された場合はステップS4に進む。
【0041】
ステップS4では、PT共振が起きると判定してステップS6に進む。ステップS6からステップS8では、位相補償をオンにできる状態か否かの判定が行われる。言い換えると、位相補償の実行の可否が判定される。
ステップS6では、フェールがあるか否かを判定する。フェールは、例えば、変速機4の変速制御に用いられる油圧制御回路11やセンサ・スイッチ類のフェールを含む変速機4に関するフェールである。尚、変速機4に関連する他の車両のフェールであってもよい。
ステップS6でフェールがあると判定した場合は、ステップS8に進んで位相補償の実行を禁止し、ステップS10に進んで位相補償をオフにする。一方、フェールが無いと判定した場合は、ステップS7に進んで位相補償の実行を許可し、ステップS9に進んで位相補償をオンにする。
【0042】
図4に戻り、位相補償オンオフ決定部133は、位相補償のオンを決定した場合はオン指令を出力し、位相補償のオフを決定した場合はオフ指令を出力する。オンオフ指令は、位相補償オンオフ決定部133から、進み量決定部134と、オンオフ指令フィルタ部139とに入力される。
【0043】
進み量決定部134は、進み量Apkを決定する。進み量決定部134は、位相補償オンオフ決定部133の後流に設けられる。進み量決定部134は、信号経路における配置上、このように設けられる。進み量決定部134は、オンオフ指令に応じて、言い換えると、位相補償のオンオフ決定に応じて進み量Apkを決定する。進み量決定部134は、オフ指令が入力された場合に進み量Apkをゼロに決定する。進み量決定部134は、オン指令が入力された場合、車両の運転状態に応じて進み量Apkを決定する。進み量決定部134には、車両の運転状態を指標するパラメータとして、FBゲインG_FB,回転速度Npri,入力トルクTsec,変速比Ratio,セカンダリ圧Psec及び油温TMPが入力される。進み量決定部134は、これら複数のパラメータに応じて進み量Apkを決定する。言い換えると、車両の運転状態に応じて進み量Apkを可変にする。尚、進み量決定部134は、これら複数のパラメータのうち少なくともいずれかに応じて進み量Apkを可変としてもよい。
【0044】
進み量決定部134は、各パラメータに応じて進み量Apkを決定することで、運転状態に応じて可変とすることができ、狙いの周波数での進み量Aを設定できる。尚、進み量Aを増加させる場合、バリエータ20など変速比制御系100の具体的仕様との関係を考慮し、安定的に動作可能な範囲に制限する。この制限は、各パラメータに応じた制限量として計算あるいは実験により予め求めることができる。進み量Apkは、実際には各パラメータに応じて決定した進み量Apkを各パラメータに応じて設定した制限量の分、更に減少させることで決定される。
【0045】
進み量決定部134は、決定した進み量Apkをもとに第1進み量Apk1,第2進み量Apk2を決定する。第1進み量Apk1は、後述する一次の位相進み補償を行う場合に対応させて設定され、第2進み量Apk2は、後述する二次の位相進み補償を行う場合に対応させて設定される。第2進み量Apk2は、第1進み量Apk1の1/2とされる。各パラメータに応じて決定される進み量Apkは、第2進み量Apk2に対応するように設定される。各パラメータに応じて決定される進み量Apkは、第1進み量Apk1に対応するように設定されてもよい。進み量Apkは、進み量決定部134から進み量フィルタ部135に入力される。
【0046】
進み量フィルタ部135は、進み量決定部134の後流に設けられ、進み量Apkのフィルタ処理を行う。進み量フィルタ部135は、信号経路における配置上、このように設けられる。進み量フィルタ部135は、具体的にはローパスフィルタ部とされ、例えば一次のローパスフィルタで構成される。進み量フィルタ部135は、進み量Apkのフィルタ処理を行うことで、進み補償のオンオフが切り替えられた際に、位相補償のオンオフの決定に応じた位相補償のゲインGの変化のなましを行うゲインなまし部を構成する。ゲインGの変化のなましを行うことで、位相補償のオンオフの切り替えに伴うゲインGの変化量の抑制が図られる。
【0047】
第1位相進み補償器136と、第2位相進み補償器137と、第1スイッチ部138とには、進み量フィルタ部135から進み量Apkが入力される。第1位相進み補償器136と第2位相進み補償器137とには、第1ピーク値周波数決定部141からピーク値周波数Fpkも入力される。第1位相進み補償器136と第2位相進み補償器137とは共に入力された進み量Apk、更には入力されたピーク値周波数Fpkに基づき、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの一次の位相進み補償を行う。フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの位相進み補償を行うことで、変速機4のフィードバック変速制御の位相進み補償が行われる。第1位相進み補償器136と第2位相進み補償器137とは、具体的には一次のフィルタで構成され、入力された進み量Apk、さらには入力されたピーク値周波数Fpkに応じたフィルタ処理を行うことで、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの一次の位相進み補償を行う。
【0048】
第2位相進み補償器137は、第1位相進み補償器136と直列に設けられる。第2位相進み補償器137は、信号経路における配置上、このように設けられる。第2位相進み補償器137は、第1位相進み補償器136によって一次の位相進み補償が行われたフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBが入力される。したがって、第2位相進み補償器137は、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの一次の位相進み補償を行う場合、一次の位相進み補償を更に重ねて行う。これにより、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの二次の位相進み補償が行われる。第2位相進み補償器137は、第1位相進み補償器136と共に進み補償部を構成する。
【0049】
第1スイッチ部138は、入力された進み量Apkに応じて第1位相進み補償器136と第2位相進み補償器137とで位相進み補償を行う場合、つまり二次の位相進み補償を行う場合と、第1位相進み補償器136のみで位相進み補償を行う場合、つまり一次の位相進み補償を行う場合とを切り替える。二次の位相進み補償を行うことで、一次の位相進み補償を行う場合と比較してゲインGの増大を抑制し、変速制御の不安定化を抑制できるためである。また、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBに応じた一次の位相進み補償の進み量Aが所定値A1よりも小さい場合には、ゲイン抑制効果が望めない一方、一次の位相進み補償を行うことで、周波数ずれによってゲインGが低下し、制振効果が減少しやすくなる事態を回避できるためである。所定値A1は、位相進み補償の二次化によるゲイン抑制効果が得られる範囲内で、好ましくは最小値に設定することができる。
【0050】
このように、位相進み補償を行うにあたり、進み量決定部134と第1スイッチ部138とは、具体的には次のように構成される。すなわち、進み量決定部134は、各パラメータに応じて決定した進み量Aが所定値A1よりも小さい場合に一次の位相進み補償を行うと判断し、進み量Apkを第1進み量Apk1に決定する。また、進み量決定部134は、進み量Aが所定値A1以上の場合に二次の位相進み補償を行うと判断し、進み量Apkを第2進み量Apk2に決定する。進み量Aは、マップデータ等で予め設定することができる。
【0051】
第1スイッチ部138は、第1進み量Apk1が選択された場合に、第1位相進み補償器136のみで位相進み補償を行うように切り替えを行う。また、第1スイッチ部138は、第2進み量Apk2が選択された場合に、第1位相進み補償器136と第2位相進み補償器137とで位相進み補償を行うように切り替えを行う。このように構成することで、第1位相進み補償器136及び第2位相進み補償器137は、進み量Aが所定値A1よりも小さい場合に、第1位相進み補償器136のみで位相進み補償を行うように構成される。
【0052】
第1スイッチ部138は、一次の位相進み補償を行う場合に、第2位相進み補償器137のみで位相進み補償を行うように構成されてもよい。進み量決定部134は、進み量Apkの代わりに進み量Aを第1スイッチ部138に入力してもよい。第1スイッチ部138は、このようにして入力された進み量Aに基づいて切り替えを行ってもよい。これにより、第1進み量Apk1や第2進み量Apk2になましが施されていても、一次、二次の位相進み補償を適切に行える。
【0053】
第1スイッチ部138は、位相補償オンオフ決定部133とともに、プーリ状態値Mに応じて、第1位相進み補償器136及び第2位相進み補償器137の少なくともいずれかによって進み補償が行われたフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBをフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBとして設定する。第1位相進み補償器136及び第2位相進み補償器137の少なくともいずれかは、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの進み補償を行う進み補償部を構成する。進み補償が行われたフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBは、第1位相遅れ補償器145に出力される。
【0054】
第1ピーク値周波数決定部141は、位相進み補償のピーク値周波数Fpk1を決定する。第1ピーク値周波数決定部141は、変速比Ratioに応じてピーク値周波数Fpk1を決定することで、ピーク値周波数Fpk1を変化させる。変速比Ratioは、具体的には、目標変速比Ratio_Dが目標値生成部131から入力される。第1ピーク値周波数決定部141が決定したピーク値周波数Fpk1は、第1位相進み補償器136及び第2位相進み補償器137それぞれに入力される。これにより、第1ピーク値周波数決定部141は、変速比Ratioに基づき、第1位相進み補償器136及び第2位相進み補償器137が行う位相進み補償それぞれのピーク値周波数Fpkを設定するように構成される。
【0055】
遅れ量決定部142は、遅れ量Bpkを決定する。遅れ量決定部142は、位相補償オンオフ決定部133の後流に設けられる。遅れ量決定部142は、信号経路における配置上、このように設けられる。遅れ量決定部142は、オンオフ指令に応じて、言い換えると、位相補償のオンオフ決定に応じて遅れ量Bpkを決定する。遅れ量決定部142は、オフ指令が入力された場合に遅れ量Bpkをゼロに決定する。遅れ量決定部142は、オン指令が入力された場合、車両の運転状態に応じて遅れ量Bpkを決定する。遅れ量決定部142には、車両の運転状態を指標するパラメータとして、FBゲインG_FB,回転速度Npri,入力トルクTsec,変速比Ratio,セカンダリ圧Psec,車両加速度,ブレーキ操作状態,プライマリ圧Ppri,エンジントルク,トルクコンバータのトルク比,LUクラッチ2aの締結状態,油温TMP等が入力される。遅れ量決定部142は、これら複数のパラメータに応じて遅れ量Bpkを決定する。言い換えると、車両の運転状態に応じて遅れ量Bpkを可変にする。尚、遅れ量決定部142は、これら複数のパラメータのうち少なくともいずれかに応じて遅れ量Bpkを可変としてもよい。
【0056】
遅れ量決定部142は、図示しない設定に基づき、各パラメータに応じて遅れ量Bpkを決定することで、運転状態に応じて可変とすることができ、狙いの周波数での遅れ量Bを設定できる。尚、遅れ量Bを増加させる場合、バリエータ20など変速比制御系100の具体的仕様との関係を考慮し、安定的に動作可能な範囲に制限する。この制限は、各パラメータに応じた制限量として計算あるいは実験により予め求めることができる。遅れ量Bpkは、実際には各パラメータに応じて決定した遅れ量Bpkを各パラメータに応じて設定した制限量の分、更に減少させることで決定される。
【0057】
遅れ量決定部142は、決定した遅れ量Bpkをもとに第1遅れ量Bpk1,第2遅れ量Bpk2を決定する。第1遅れ量Bpk1は、後述する一次の位相遅れ補償を行う場合に対応させて設定され、第2遅れ量Bpk2は、後述する二次の位相遅れ補償を行う場合に対応させて設定される。第2遅れ量Bpk2は、第1遅れ量Bpk1の1/2とされる。各パラメータに応じて決定される遅れ量Bpkは、第2遅れ量Bpk2に対応するように設定される。各パラメータに応じて決定される遅れ量Bpkは、第1遅れ量Bpk1に対応するように設定されてもよい。遅れ量Bpkは、遅れ量決定部142から遅れ量フィルタ部143に入力される。
【0058】
遅れ量フィルタ部143は、遅れ量決定部142の後流に設けられ、遅れ量Bpkのフィルタ処理を行う。遅れ量フィルタ部143は、信号経路における配置上、このように設けられる。遅れ量フィルタ部143は、具体的にはローパスフィルタ部とされ、例えば一次のローパスフィルタで構成される。遅れ量フィルタ部143は、遅れ量Bpkのフィルタ処理を行うことで、位相補償のオンオフが切り替えられた際に、位相補償のオンオフの決定に応じた位相遅れ補償のゲインの変化のなましを行うゲインなまし部を構成する。ゲインの変化のなましを行うことで、位相補償のオンオフの切り替えに伴うゲインの変化量の抑制が図られる。
【0059】
第2ピーク値周波数決定部144は、位相遅れ補償のピーク値周波数Fpk2を決定する。第2ピーク値周波数決定部144は、変速比Ratioに応じてピーク値周波数Fpk2を決定することで、ピーク値周波数Fpk2を変化させる。変速比Ratioは、具体的には、目標変速比Ratio_Dが目標値生成部131から入力される。第2ピーク値周波数決定部144が決定したピーク値周波数Fpk2は、第1位相遅れ補償器145及び第2位相遅れ補償器146それぞれに入力される。これにより、第2ピーク値周波数決定部144は、変速比Ratioに基づき、第1位相遅れ補償器145及び第2位相遅れ補償器146が行う位相進み補償それぞれのピーク値周波数Fpk2を設定するように構成される。
【0060】
第1位相遅れ補償器145と、第2位相遅れ補償器146と、第2スイッチ部147とには、遅れ量フィルタ部143から遅れ量Bpkが入力される。第1位相遅れ補償器145と第2位相遅れ補償器146とには、第2ピーク値周波数決定部144からピーク値周波数Fpk2も入力される。第1位相遅れ補償器145と第2位相遅れ補償器146とは共に入力された遅れ量Bpk、更には入力されたピーク値周波数Fpk2に基づき、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの一次の位相遅れ補償を行う。フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの位相遅れ補償を行うことで、変速機4のフィードバック変速制御の位相遅れ補償が行われる。第1位相遅償器145と第2位相遅れ補償器146とは、具体的には一次のフィルタで構成され、入力された遅れ量Bpk、さらには入力されたピーク値周波数Fpk2に応じたフィルタ処理を行うことで、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの一次の位相遅れ補償を行う。
【0061】
第2位相遅れ補償器146は、第1位相遅れ補償器145と直列に設けられる。第2位相遅れ補償器146は、信号経路における配置上、このように設けられる。第2位相遅れ補償器146は、第1位相遅れ補償器145によって一次の位相遅れ補償が行われたフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBが入力される。したがって、第2位相遅れ補償器146は、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの一次の位相遅れ補償を行う場合、一次の位相遅れ補償を更に重ねて行う。これにより、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの二次の位相遅れ補償が行われる。第2位相遅れ補償器146は、第1位相遅れ補償器146と共に遅れ補償部を構成する。
【0062】
第2スイッチ部147は、入力された遅れ量Bpkに応じて第1位相遅れ補償器145と第2位相遅れ補償器146とで位相遅れ補償を行う場合、つまり二次の位相遅れ補償を行う場合と、第1位相遅れ補償器145のみで位相遅れ補償を行う場合、つまり一次の位相遅れ補償を行う場合とを切り替える。二次の位相遅れ補償を行うことで、一次の位相遅れ補償を行う場合と比較して、遅れ量が影響する範囲を狭くすることができる。よって、ピーク周波数Fpk2を低くする必要が無く、すぐに安定限界に達することを回避できる。また、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBに応じた一次の位相遅れ補償の進み量Bが所定値B1よりも小さい場合には、第1位相遅れ補償器145のみで位相遅れ補償を行い、進み量Bが所定値B1以上のときは、第2位相遅れ補償器を用いて二次の位相遅れ補償を行う。
【0063】
このように、位相遅れ補償を行うにあたり、遅れ量決定部142と第2スイッチ部147とは、具体的には次のように構成される。すなわち、遅れ量決定部142は、各パラメータに応じて決定した遅れ量Bが所定値B1よりも小さい場合に一次の位相遅れ補償を行うと判断し、遅れ量Bpkを第1遅れ量Bpk1に決定する。また、遅れ量決定部142は、遅れ量Bが所定値B1以上の場合に二次の位相遅れ補償を行うと判断し、遅れ量Bpkを第2遅れ量Bpk2に決定する。遅れ量Bは、マップデータ等で予め設定することができる。
【0064】
第2スイッチ部147は、第1遅れ量Bpk1が選択された場合に、第1位相遅れ補償器145のみで位相遅れ補償を行うように切り替えを行う。また、第2スイッチ部147は、第2遅れ量Bpk2が選択された場合に、第1位相遅れ補償器145と第2位相遅れ補償器146とで位相遅れ補償を行うように切り替えを行う。このように構成することで、第1位相遅れ補償器145及び第2位相遅れ補償器146は、遅れ量Bが所定値B1よりも小さい場合に、第1位相遅れ補償器145のみで位相遅れ補償を行うように構成される。すなわち、位相遅れ補償器の遅れ量が増えれば増えるほど、ピーク周波数のすそ野の位相遅れを低減できる。そのため、制御加振が起こる低周波の位相遅れが解消されるため、制御加振が起こりにくくなる。しかし、例えば遅れ量が40degを超えたあたりから、高周波ゲインを下げる量が減少し、ロバスト性が低下する。よって、40degを下回る遅れ量の場合は、二次化によるデメリットが強くなるため、第1位相遅れ補償器145のみを使用する。
【0065】
第2スイッチ部147は、一次の位相遅れ補償を行う場合に、第2位相遅れ補償器146のみで位相遅れ補償を行うように構成されてもよい。遅れ量決定部142は、遅れ量Bpkの代わりに遅れ量Bを第2スイッチ部147に入力してもよい。第2スイッチ部147は、このようにして入力された遅れ量Bに基づいて切り替えを行ってもよい。これにより、第1遅れ量Bpk1や第2遅れ量Bpk2になましが施されていても、一次、二次の位相遅れ補償を適切に行える。
【0066】
第2スイッチ部147は、位相補償オンオフ決定部133とともに、プーリ状態値Mに応じて、第1位相遅れ補償器136及び第2位相遅れ補償器137の少なくともいずれかによって遅れ補償が行われたフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBをフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBのとして設定する設定部を構成する。第1位相遅れ補償器136及び第2位相遅れ補償器137の少なくともいずれかは、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの遅れ補償を行う遅れ補償部を構成する。遅れ補償が行われたフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBは、補償後のフィードバック指令値を構成する。
【0067】
アクチュエータ111には、第1スイッチ部138から選択されたフィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBと、目標変速比Ratio_Dに基づいて設定された図示しないプライマリ指示圧Ppri_FF(バランス推力や変速比を決定する目標プライマリ指示圧)が入力される。アクチュエータ111は、例えば、油圧制御回路11に設けられたプライマリ圧Ppriを制御するプライマリ圧制御弁であり、プライマリ圧Ppriの実圧Ppri_Aが目標変速比Ratio_Dに応じた指示圧Ppri_Dになるようにプライマリ圧Ppriを制御する。これにより、実変速比Ratio_Aが目標変速比Ratio_Dになるように変速比Ratioが制御される。
【0068】
センサ部40は、バリエータ20の実変速比Ratio_Aを検出する。センサ部40は、具体的には、回転速度センサ42及び回転速度センサ43で構成されている。センサ部40が検出した変速比の実値(センサ値)である実変速比Ratio_Aは、センサ値フィルタ部140に入力される。センサ値フィルタ部140には、オンオフ指令フィルタ部139を介してオンオフ指令も入力される。オンオフ指令フィルタ部139は、進み補償がオンになる場合に、オン指令をセンサ値フィルタ部140に出力し、進み補償がオフになる場合に、オフ指令をセンサ値フィルタ部140に出力し、進み補償がオフになる場合、オフ指令をセンサ値フィルタ部140に出力する。オンオフ指令フィルタ部139は省略されてもよい。
【0069】
センサ値フィルタ部140は、実変速比Ratio_Aのフィルタ処理を行う。センサ値フィルタ部140では、オンオフ指令に応じてフィルタ処理の態様が変更される。具体的には、センサ値フィルタ部140では、オンオフ指令に応じてフィルタ処理の次数又は実行・停止が切り替えられる。センサ値フィルタ部140は、オフ指令が入力された場合に、一次のローパスフィルタとされ、オン指令が入力された場合に高次のローパスフィルタとされるか、或いはフィルタ処理を停止する。
【0070】
このように、センサ値フィルタ部140を構成することで、一次のローパスフィルタを用いると、除去したい周波数以下の領域で僅かな遅れが発生することに対し、オン指令が入力された場合には、遅れが改善される。結果、フィードバックプライマリ指示圧Ppri_FBの位相を更に進めることができる。センサ値フィルタ部140は、例えば、フィルタ処理の実行・停止又は次数を切り替え可能に設けられた1又は複数の一次のローパスフィルタを有した構成とすることができる。センサ値フィルタ部140からの実変速比Ratio_Aは、FB補償器132に入力される。
【0071】
PT共振検知部150では、Gセンサ53により検出された前後加速度Gの振動成分を抽出し、振動成分の振幅が所定値以上の状態が所定時間以上継続した場合、振動が発生していると判断する。一方、振動成分の振幅が所定値未満の状態が所定時間以上継続した場合には、振動が発生していないと判断する。
【0072】
油振検知部151では、まず、油圧センサ52により検出された電圧信号を油圧信号に変換し、バンドパスフィルタ処理によってDC成分(制御指令に応じた変動成分)を除去し、振動成分のみを抽出する。そして、振動成分の振幅を算出し、油圧信号の振幅が所定振幅以上の状態が所定時間以上継続した場合には、油振が発生していると判断する。一方、油振が発生しているときに、振幅が所定振幅未満の状態が所定時間以上継続した場合には、油振が発生していないと判断する。尚、油圧信号としてプライマリプーリ油圧を用いてもよいし、両方を用いてもよい。
【0073】
発散検知部152では、最終的な指令信号が発散しているか否かを検知する。ここで、指令信号の発散は、周波数が所定値以上で、かつ、振幅が所定値以上の状態が所定時間継続したか否かに基づいて検知する。
【0074】
以上説明したように、実施例にあっては、下記の作用効果が得られる。
(1)実圧Ppri_Aが指示圧Ppri_Dになるように変速機4の変速制御を行う無段変速機の制御装置であって、指示圧Ppri_Dの進み補償を行う第1位相進み補償器136及び第2位相進み補償器137と、指示圧Ppri_Dの遅れ補償を行う第1位相遅れ補償器145及び第2位相遅れ補償器146と、回転速度Npri、入力トルクTsec、変速比Ratio、及び変化率αのうち少なくともいずれかに応じて、第1位相進み補償器136,第2位相進み補償器137,第1位相遅れ補償器145,第2位相遅れ補償器146によって補償が行われた指示圧Ppri_D2を指示圧Ppri_Dとして設定する位相補償オンオフ決定部133(設定部)と、を有する。
よって、前後振動が発生する領域で指示圧Ppri_D2を指示圧Ppri_Dとして設定することができる。このため、指示圧Ppri_Dの位相補償による変速比Ratioの安定性向上を必要に応じて図ることができ、前後振動の収束を図ることで、変速機4の前後振動を適切に改善できる。また、位相補償によって変速比Ratioの安定性を高めるため、変速比Ratioの制御応答性の向上も図ることができる。さらに、変速比Ratioの安定性を高める必要が無い場合に、実圧Ppri_Aの振動が発生することを防止できる。
また、センサ値フィルタ部140では、フィルタ処理を行うとともに、高次のローパスフィルタを構成する。よって、一次のローパスフィルタを用いると除去したい周波数以下の領域で僅かな遅れが発生することに対し、遅れを改善することができ、これにより指示圧Ppri_Dの位相を更に進めることができる。
【0075】
(2)位相補償オンオフ決定部133は、回転速度Npri及び入力トルクTsecに応じた動作点Mが、回転速度Npri及び入力トルクTsecに応じて設定された位相補償領域Rにある場合に、指示圧Ppri_D2(補償後目標変速制御値)を指示圧Ppri_D(目標変速制御値)として設定する。よって、回転速度Npri及び入力トルクTsecに応じた領域のうち、前後振動が発生する領域を位相補償領域Rとして変速比Ratioの安定性を高めることで、前後振動を適切に改善できる。
【0076】
(3)位相補償領域Rは、入力トルクTsecが所定トルクTsec1よりも小さい領域を含む。よって、位相補償領域Rを適切に設定できる。
【0077】
(4)位相補償領域Rは、入力トルクTsecが所定トルクTsec1以上、かつ、回転速度Npriが所定回転速度Npri1以上の領域R2をさらに含む。所定回転速度Npri1は、入力トルクTsecが大きくなるほど大きくなるように設定される。よって、位相補償領域Rを更に適切に設定できる。
【0078】
(5)位相補償オンオフ決定部133は、変速比Ratioが所定変速比Ratio1よりも大きい場合に、指示圧Ppri_D2を指示圧Ppri_Dとして設定する。これにより、変速比Ratioに応じて前後振動を適切に改善できる。
【0079】
(6)位相補償オンオフ決定部133は、変化率αが所定値よりも小さい場合に、指示圧Ppri_D2を指示圧Ppri_Dとして設定する。これにより、変化率αに応じて前後振動を適切に改善できる。
【0080】
(7)変速機4は、LUクラッチ2a付きのトルクコンバータ2を介して動力が入力される。そして、位相補償オンオフ決定部133は、さらにLUクラッチ2aが締結されている場合に、指示圧Ppri_D2を指示圧Ppri_Dとして設定する。これにより、LUクラッチ2aの締結状態に応じて前後振動を適切に改善できる。
【0081】
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例では、位相補償オンオフ決定部133が、回転速度Npri1、入力トルクTsec、変速比Ratio、及び変化率αの4つのパラメータすべてに応じて、指示圧Ppri_D2を指示圧Ppri_Dとして設定する場合について説明した。これに対し、上記4つのパラメータの少なくともいずれかのパラメータに応じて指示圧Ppri_D2を指示圧Ppri_Dとして設定するように構成してもよい。この場合でも、いずれかのパラメータとの関係で変速比Ratioの安定性を適切に高めることで、前後振動を適切に改善できる。また、位相補償領域Rそのものが、変速比Ratio、変化率α及びLUクラッチ2aの締結状態に応じて設定される場合について説明した。これに対し、例えば動作点Mが位相補償領域Rにあるか否かの判定に、変速比Ratio、変化率α、LUクラッチ2aの締結状態についての判定を含めずに、別の判定として行うように構成されてもよい。また、位相補償領域Rの内外判定を位相補償オンオフ決定部133で行う場合について説明したが、第1スイッチ部138や第2スイッチ部147で判定するように構成してもよい。また、実施例では、変速機コントローラ12内で上記制御が構成される例について示したが、複数のコントローラで実現してもよい。
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図7