特許第6831521号(P6831521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831521
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】分析素子及び分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
   G01N27/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-24709(P2018-24709)
(22)【出願日】2018年2月15日
(65)【公開番号】特開2019-138861(P2019-138861A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年8月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「半導体技術を用いた高感度・高精度化学物質検出デバイス・システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518437671
【氏名又は名称】アイポア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】王 萍
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 浩史
(72)【発明者】
【氏名】中村 直文
(72)【発明者】
【氏名】三木 弘子
(72)【発明者】
【氏名】西垣 亨彦
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−529296(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/187588(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/149756(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0377830(US,A1)
【文献】 特表2017−515131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/10
G01N 27/14−27/24
G01N 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
第1孔を有する第1膜であって、前記第1膜の少なくとも一部は前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1膜は、前記第1電極及び前記第2電極から離れた、前記第1膜と、
第2孔を有する第2膜であって、前記第2膜の少なくとも一部は前記第1膜と前記第2電極との間に設けられ、前記第2膜は、前記第1膜及び前記第2電極から離れた、前記第2膜と、
を備え、
前記第1膜は、複数の前記第1孔を含み、
前記第2膜は、複数の前記第2孔を含み、
前記複数の第1孔の密度は、前複数の第2孔の密度よりも高く、
分析対象の粒を含む液体中の前記粒が前記第1孔及び前記第2孔を通過することに対応する電流のパルス信号を測定することで、前記分析対象を分析可能な、分析素子。
【請求項2】
前記第1膜の第1厚さは、前記第2膜の第2厚さよりも厚い、請求項1記載の分析素子。
【請求項3】
前記第1膜の第1厚さは、前記第2膜の第2厚さの1.5倍以上10倍以下である、請求項1記載の分析素子。
【請求項4】
前記第1膜と交差する第1方向において、前記第1孔の少なくとも一部は、前記第2孔と重なる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の分析素子。
【請求項5】
前記第1膜と交差する第1方向に沿う、前記第1膜と前記第2膜との間の距離は、前記第1膜に沿う第2方向に沿う前記第1孔の幅の1.2倍以上10倍以下である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の分析素子。
【請求項6】
前記第1膜に沿う方向に沿う前記第1孔の幅は、
前記第1膜に沿う前記方向に沿う前記第2孔の幅の0.8倍以上1.2倍以下である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の分析素子。
【請求項7】
前記第1膜に沿う方向に沿う前記第1孔の幅は、10nm以上10μm以下であり、
前記第1膜に沿う前記方向に沿う前記第2孔の幅は、10nm以上10μm以下である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の分析素子。
【請求項8】
第1部材と、
第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられた第1膜であって、前記第1膜は、第1孔が設けられた第1部分領域と、第2孔が設けられた第2部分領域と、前記第1部分領域と前記第2部分領域との間の第3部分領域と、を含み、前記第1膜は、前記第1部材の少なくとも一部及び前記第2部材の少なくとも一部から離れた、前記第1膜と、
前記第1部材と前記第1部分領域との間に設けられ、前記第1部分領域から離れた第1電極と、
前記第1部材と前記第2部分領域との間に設けられ、前記第2部分領域から離れた第2電極と、
前記第1部材と前記第3部分領域との間に設けられた第1壁部と、
第2壁部と、
第3壁部と、
備え、
前記第1膜は、第4部分領域及び第5部分領域をさらに含み、
前記第3部分領域は、前記第1部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第3孔が前記第3部分領域に設けられ、
前記第4部分領域は、前記第3部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、
前記第5部分領域は、前記第4部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第4孔が前記第5部分領域に設けられ、
前記第2壁部は、前記第2部材と前記第4部分領域との間に設けられ、
前記第3壁部は、前記第1部材と前記第5部分領域との間に設けられ、
前記第2部材から前記第1部材への第1方向において前記第1壁部と前記第3部分領域とが重なる領域は、前記第1孔と前記第3孔との間にあり、
前記第1方向において前記第2壁部と前記第4部分領域とが重なる領域は、前記第3孔と前記第4孔との間にあり、
前記第1方向において前記第3壁部と前記第5部分領域とが重なる領域は、前記第4孔と前記第2孔との間にあ
分析対象の粒を含む液体中の前記粒が前記第1孔及び前記第2孔を通過することに対応する電流のパルス信号を測定することで、前記分析対象を分析可能な、分析素子。
【請求項9】
第1部材と、
第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられた第1膜であって、前記第1膜は、第1孔が設けられた第1部分領域と、第2孔が設けられた第2部分領域と、第3孔が設けられ前記第1部分領域と前記第2部分領域との間の第3部分領域と、前記第3部分領域と前記第2部分領域との間の第4部分領域と、を含み、前記第1膜は、前記第1部材の少なくとも一部及び前記第2部材の少なくとも一部から離れた、前記第1膜と、
前記第1部材と前記第1部分領域との間に設けられ、前記第1部分領域から離れた第1電極と、
前記第1部材と前記第2部分領域との間に設けられ、前記第2部分領域から離れた第2電極と、
前記第1部材と前記第3部分領域との間に設けられた第1壁部と、
前記第2部材と前記第4部分領域との間に設けられた第2壁部と、
を備え、
前記第2部材から前記第1部材への第1方向において前記第1壁部と前記第3部分領域とが重なる領域は、前記第1孔と前記第3孔との間にあり、
前記第1方向において前記第2壁部と前記第4部分領域とが重なる領域は、前記第3孔と前記第2孔との間にあり、
分析対象の粒を含む液体中の前記粒が前記第1孔、前記第2孔及び前記第3孔を通過することに対応する電流のパルス信号を測定することで、前記分析対象を分析可能な、分析素子。
【請求項10】
第3壁部及び第4壁部をさらに備え、
前記第1膜は、第4部分領域〜第6部分領域をさらに含み、
前記第4部分領域は、前記第1部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第3孔が前記第4部分領域に設けられ、
前記第5部分領域は、前記第4部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第4孔が前記第5部分領域に設けられ、
前記第6部分領域は、前記第5部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第5孔が前記第5部分領域に設けられ、
前記第3壁部は、前記第2部材と前記第4部分領域との間に設けられ、
前記第4壁部は、前記第1部材と前記第5部分領域との間に設けられ、
前記第1方向において前記第1壁部と前記第3部分領域とが重なる領域は、前記第1孔と前記第3孔との間にあり、
前記第1方向において前記第3壁部と前記第4部分領域とが重なる領域は、前記第3孔と前記第4孔との間にあり、
前記第1方向において前記第4壁部と前記第5部分領域とが重なる領域は、前記第4孔と前記第5孔との間にあり、
前記第1方向において前記第2壁部と前記第6部分領域とが重なる領域は、前記第5孔と前記第2孔との間にある、請求項記載の分析素子。
【請求項11】
第1電極と、
第2電極と、
第1孔を有する第1膜であって、前記第1膜の少なくとも一部は前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1膜は、前記第1電極及び前記第2電極から離れた、前記第1膜と、
第2孔を有する第2膜であって、前記第2膜の少なくとも一部は前記第1膜と前記第2電極との間に設けられ、前記第2膜は、前記第1膜及び前記第2電極から離れた、前記第2膜と、
を含む分析素子と、
前記第1電極及び前記第2電極と電気的に接続された処理部と、
を備え、
前記処理部は、前記第1電極及び前記第2電極から得られる第1パルス信号及び第2パルス信号の間の時間間隔に基づいて、分析対象物を分析し、
前記分析対象物は、液体と、前記液体中の粒と、を含み、
前記第1パルス信号は、前記粒の前記第1孔の通過に対応し、
前記第2パルス信号は、前記粒の前記第2孔の通過に対応した、分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、分析素子及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、分析対象の粒(細胞など)を含む液体(検体液)に流れる電流を測定することで、分析対象を分析する分析素子がある。分析素子において、分析精度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−192479号公報
【特許文献2】特表2017−515131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、分析精度を向上できる分析素子及び分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、分析素子は、第1電極、第2電極、第1膜及び第2膜を含む。前記第1膜は、第1孔を有する。前記第1膜の少なくとも一部は前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる。前記第1膜は、前記第1電極及び前記第2電極から離れる。前記第2膜は、第2孔を有する。前記第2膜の少なくとも一部は前記第1膜と前記第2電極との間に設けられる。前記第2膜は、前記第1膜及び前記第2電極から離れる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る分析素子を例示する模式的斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る分析素子及び分析装置における特性を例示する模式図である。
図4図4は、第1実施形態に係る分析素子を例示する模式的断面図である。
図5図5(a)〜図5(c)は、第1実施形態に係る分析素子を例示する模式的断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式的断面図である。
図7図7は、第1実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式的断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図9図9は、第2実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図10図10は、第3実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図11図11は、第3実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図12図12(a)〜図12(d)は、実施形態に係る分析素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図13図13(a)及び図13(b)は、実施形態に係る分析素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図2は、第1実施形態に係る分析素子を例示する模式的斜視図である。
図1に示すように、実施形態に係る分析素子110は、第1電極21、第2電極22、第1膜31及び第2膜32を含む。
【0009】
第1膜31の少なくとも一部は、第1電極21と第2電極22との間に設けられる。第1膜31は、第1電極21及び第2電極22から離れている。第1膜31は、第1孔h1を有する。
【0010】
第2膜32の少なくとも一部は、第1膜31と第2電極22との間に設けられる。第2膜32は、第1膜31及び第2電極22から離れている。第2膜32は、第2孔h2を有する。第1孔h1及び第2孔h2は、例えば、ポアである。
【0011】
この例では、第1部材11及び第2部材12がさらに設けられている。第1部材11と第2部材12との間に、第1電極21及び第2電極22が設けられる。
【0012】
第1膜31と交差する方向を第1方向とする。例えば、第1方向は、第1膜31の膜面に対して垂直である。
【0013】
第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0014】
第1膜31は、例えば、X−Y平面に沿う。第2膜32は、例えば、X−Y平面に沿う。第2膜32は、例えば、第1膜31に対して平行である。
【0015】
図2において、第1電極21は省略されている。図2に示すように、例えば、分析素子110に、枠部82、83、84が設けられる。枠部82は、枠部83と枠部84との間に設けられる。枠部82に分析対象物51(検体液)が導入される。一方、枠部83に、例えば、洗浄用液体55が導入される。枠部84は、例えばドレインとして機能する。
【0016】
第1膜31と第1電極21との間の空間、第2膜32と第2電極22との間の空間、及び、第1膜31と第2膜32との間の空間に、分析対象物51が導入される。分析対象物51は、液体51L及び粒52を含む。粒52は、液体51L中に設けられる。液体51Lは、例えば、検体液である。粒52は、例えば、ウイルスなどの検査対象である。粒52の例は、後述する。分析素子110は、例えば、分析用マイクロチップである。第2膜32と第2電極22との間の空間、及び、第1膜31と第2膜32との間の空間には、粒52を含まない液体51Lが導入されても良い。
【0017】
図1に示すように、分析装置210は、分析素子110及び処理部70を含む。処理部70は、第1電極21及び第2電極22と電気的に接続される。例えば、処理部70は、電流検出部71及び電源72を含む。電源72により、第1電極21と第2電極22との間に電圧が印加される。第1電極21と第2電極22との間に、分析対象物51を介して電流が流れる。この電流は、例えば、イオン電流である。粒52は、第1孔h1及び第2孔h2を通過する。通過は、例えば、電気泳動に基づく。例えば、粒52は、例第1孔h1を通過した後に、第2孔h2を通過する。以下、電流の例について説明する。
【0018】
図3は、第1実施形態に係る分析素子及び分析装置における特性を例示する模式図である。
図3の横軸は時間tmである。図2の縦軸は、電流Isである。電流Isは、第1電極21と第2電極22との間に流れる電流である。
【0019】
図2に示すように、電流Isにおいて、第1パルス信号S1及び第2パルス信号S2が生じる。第1パルス信号S1は、粒52の、第1孔h1の通過に対応する。第2パルス信号S2は、粒52の、第2孔h2の通過に対応する。第1パルス信号S1は、第1強度p1を有する。第2パルス信号S2は、第2強度p2を有する。これらのパルス信号の強度は、例えば、粒52の特性(例えば粒52のサイズd52:図1参照)などに依存する。
【0020】
例えば、粒52が孔を通過する前の第1状態においては、孔を通過して流れる電流経路の断面積は大きい。一方、粒52が孔を通過している時の第2状態においては、孔を通過して流れる電流経路の断面積は、粒52と孔との間の空間の断面積になる。このため、第2状態における断面積は、第1状態における断面積よりも小さくなる。電流Isの大きさは、実質的に断面積に依存する。このため、電流Isの変化(パルス信号の強度)から、粒52のサイズに関する情報が得られる。
【0021】
例えば、第1パルス信号S1と第2パルス信号S2との間の時間間隔wd(時間の長さ)は、粒52が、第1孔h1を通過した時刻から第2孔h2に到達した時刻までの間の時間に実質的に対応する。時間間隔は、粒52の速度に依存する。従って、時間間隔wdは、例えば、粒52の電気的特性(例えば電荷の量)などに関する情報が得られる。
【0022】
例えば、第1パルス信号S1は、第1パルス幅w1を有する。第2パルス信号S2は、第2パルス幅w2を有する。これらのパルス幅は、粒の速度に依存する。これらのパルス幅に基づいて、粒52の電気的特性(例えば電荷の量)などに関する情報を得ても良い。例えば、時間間隔wd、第1パルス幅w1及び第2パルス幅w2に基づいて、粒52の特性に関する種々の情報を得ても良い。
【0023】
さらに、第1h1及び第2孔h2を用いることで、粒52に関するより正確な情報が得られる。例えば、粒52が球状でない場合がある。この場合、粒52が孔を通過する時の粒52の姿勢が、パルス信号に影響する。複数の孔を用いることで、粒52が孔を通過する時の粒52の姿勢を制御できる。以下、この例について説明する。
【0024】
図4は、第1実施形態に係る分析素子を例示する模式的断面図である。
図4に示すように、粒52は、異方性形状を有している。粒52は、例えば、第1電極21と第1膜31との間の空間(分析対象物51)を、種々の姿勢で、第1孔h1に向けて移動する。粒52が第1孔h1を通過するときに、粒52の長軸は、Z軸方向から傾いている場合がある。このとき、第1孔h1を通過する際に、粒52の姿勢が制御される。例えば、粒52の長軸は、Z軸方向に近づく。このため、粒52が第2孔h2を通過する際には、粒52の長軸は、Z軸方向に沿うようになる。このような場合においては、粒52が第1孔h1を通過したときに得られる第1パルス信号S1に比べて、粒52が第2孔h2を通過したときに得られる第2パルス信号S2において、より正確な情報が得られる。例えば、第2パルス信号S2の信号強度(第2強度p2)の分布ばらつきを低減できる。例えば、検出感度の分解能を向上できる。
【0025】
このように、実施形態においては、分析精度を向上できる分析素子及び分析装置を提供することができる。
【0026】
図1に示すように、実施形態において、例えば、第1孔h1は、実質的に第2孔h2と重なる。例えば、第1方向(Z軸方向であり、第1膜31と交差する方向)において、第1孔h1の少なくとも一部は、第2孔h2と重なることが好ましい。例えば、第1孔h1の面積の50%以上の領域は、第2孔h2と重なることが好ましい。例えば、第1孔h1の面積の80%以上の領域は、第2孔h2と重なることが好ましい。
【0027】
図1に示すように、例えば、第1孔h1は、第1幅d1(サイズ)を有する。第1幅d1は、第1膜31に沿う方向(X−Y平面内の1つの方向であり、例えば、X軸方向)に沿う第1孔h1の幅である。例えば、第2孔h2は、第2幅d2(サイズ)を有する。第2幅d2は、第1膜31に沿う上記の方向(例えば、X軸方向)に沿う、第2孔h2の幅である。これらの幅は、例えば、径である。
【0028】
実施形態に係る1つの例において、第1幅d1は、実質的に第2幅d2と同じである。例えば、第1幅d1は、第2幅d2の0.8倍以上1.2倍以下である。
【0029】
実施形態に係る1つの例において、第1幅d1は、例えば、10nm以上10μm以下である。第2幅d2は、例えば、10nm以上10μm以下である、分析対象物51に応じて、これらの幅を適宜変更しても良い。
【0030】
図1に示すように、第1方向(第1膜31と交差する方向であり、例えば、Z軸方向)に沿う、第1膜31と第2膜32との間の距離を距離Dz12とする。実施形態に係る1つの例において、距離Dz12は、例えば、第1幅d1(第1膜31に沿う第2方向に沿う第1孔h2の幅)の1.2倍以上10倍以下である。距離Dz12は、例えば、第2幅d2の1.2倍以上10倍以下である。
【0031】
距離Dz12は、粒52のサイズ(例えば最大長さ)よりも長い。
【0032】
図1に示すように、第1膜31の厚さを第1厚さt1とする。第2膜32の厚さを第2厚さt2とする。これらの厚さは、Z軸方向に沿う長さである。第1厚さt1は、例えば、10nm以上10μm以下である。第2厚さt2は、例えば、10nm以上10μm以下である。適切な厚さと、適切な開口率により、これらの膜において、実用的な強度が得られる。
【0033】
図1に例示する分析素子110においては、第1厚さt1は、第2厚さt2と実質的に同じである。後述するように、これらの厚さが互いに異なっても良い。
【0034】
図5(a)〜図5(c)は、第1実施形態に係る分析素子を例示する模式的断面図である。
図5(a)に示す分析素子110aのように、第1電極21及び第2電極22は、第1孔h1及び第2孔h2と重なるように、選択的に設けられても良い。
【0035】
図5(b)に示す分析素子110bのように、第1電極21の一部が第2電極22と重ならなくても良い。第2電極22の一部が第1電極21と重ならなくても良い。
【0036】
図5(c)に示す分析素子110cのように、第1電極21と第2電極22とが互いに重ならなくても良い。分析対象物51を介して、電流が第1電極21と第2電極22との間を流れる。
【0037】
図6は、第1実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式的断面図である。
図6に示すように、本実施形態に係る分析素子111(及び分析装置211)においては、第1膜31の第1厚さt1は、第2膜32の第2厚さt2とは異なる。この例では、第1厚さt1は、第2厚さt2よりも厚い。分析素子111におけるこれ以外の構成は、分析素子110の構成と同様である。
【0038】
電流Isのパルス信号の幅は、膜の厚さに関係する。膜が薄いと、パルス信号の時間間隔(パルス幅)が短くなる。分析素子111においては、第1パルス幅w1よりも第2パルス幅w2は短くなる。例えば、第2パルス信号S2の第2強度p2は、第1パルス信号S1の第1強度p1よりも高くなる。第2パルス信号S2において、より安定した波形が得られる。このような第2パルス信号S2を用いて分析することにより、分析精度をより向上できる分析素子及び分析装置が提供できる。
【0039】
例えば、第1膜31の第1厚さt1は、第2膜32の第2厚さt2の1.5倍以上である。このような第2パルス信号S2を用いることで、分析精度の向上がより明確となる。例えば、第1厚さt1は第2厚さt2の10倍以下である。例えば、第2厚さt2が過度に薄いと、例えば、第2膜32の強度が過度に低下する。
【0040】
図7は、第1実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式的断面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る分析素子112(及び分析装置212)においては、第1膜31は、複数の第1孔h1を含む。この例では、第2膜32も、複数の第2孔h2を含む。分析素子112において、第2孔h2の数は、1でも良い。分析素子112におけるこれ以外の構成は、分析素子110の構成と同様である。
【0041】
分析素子112においては、複数の第1孔h1の1つの幅d1は、複数の第2孔h2の1つの幅d2よりも大きい。
【0042】
例えば、第1膜31は、フィルタとして機能する。フィルタにより、分析対象物51中に存在する異物58が、第1膜31と第2膜32との間の領域に流出することが抑制できる。
【0043】
第1膜31の複数の第1孔h1は、例えば、メッシュ状である。例えば、異物58(及び分析対象の粒52よりも大きい粒)が第2膜32へ向かって進むことが抑制できる。例えば、異物58の影響を抑制して、分析対象の粒52に関する情報が、より高い精度で得られる。分析素子112においては、分析用の第2膜32と、フィルタ用の第1膜31と、が、「組み」として設けられる。これにより、高効率のフィルタリング機能が得られる。
【0044】
例えば、第1孔h1の第1幅d1(第1膜31に沿う方向に沿う、複数の第1孔h1の1つの幅)は、第2幅d2(上記の方向に沿う第2孔h2の幅)の1.2倍以上5倍以下である。このようなサイズにより、適正なフィルタリング効果が得やすくなる。
【0045】
この例において、第1膜31に複数の第1孔h1が設けられ、第2膜32には、1つの第2孔h2が設けられても良い。第1膜31に複数の第1孔h1が設けられ、第2膜32に複数の第2孔h2が設けられる場合、例えば、複数の第1孔h1の密度は、複数の第2孔h2の密度よりも高くても良い。
【0046】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図8に示すように、実施形態に係る分析素子120は、第1部材11、第2部材12、第1膜31、第1電極21、第2電極22及び第1壁部41を含む。分析装置220は、分析素子120及び処理部70を含む。
【0047】
第2部材12は、第1部材11から離れる。
【0048】
第1膜31は、第1部材11と第2部材12との間に設けられる。第1膜31は、第1部材11の少なくとも一部、及び、第2部材12の少なくとも一部から離れる。
【0049】
第2部材12から第1部材11への方向を第1方向とする。第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0050】
第1膜31の膜面は、例えば、Z軸方向と交差する。第1膜31は、X−Y平面に沿って広がる。
【0051】
第1膜31は、第1〜第3部分領域r1〜r3を含む。第1部分領域r1に、第1孔h1が設けられる。第2部分領域r2に、第2孔h2が設けられる。第3部分領域r3は、第1部分領域r1と第2部分領域r2との間に設けられる。
【0052】
第1電極21は、第1部材11と第1部分領域r1との間に設けられる。第1電極21は、第1部分領域r1から離れる。この例では、第1電極21は、第1部材11に固定されている。
【0053】
第2電極22は、第1部材11と第2部分領域r2との間に設けられる。第2電極22は、第2部分領域r2から離れる。この例では、第2電極22は、第1部材11に固定されている。
【0054】
第1壁部41は、第1部材11と第3部分領域r3との間に設けられる。例えば、第1壁部41は、第1部材11及び第3部分領域r3と接する。第1壁部41は、第1電極21が設けられる空間と、第2電極22が設けられる空間と、を分離する。
【0055】
例えば、第1方向(第2部材12から第1部材12への方向であり、Z軸方向)において第1壁部41と第3部分領域r3とが重なる領域は、第1孔h1と第3孔h2との間にある。
【0056】
これにより、第1電極21が設けられる空間は、第2電極22が設けられる空間と、分離される。第1孔h1が設けられる空間は、第2孔h2が設けられる空間と、分離される。
【0057】
これらの空間に、分析対象物51が導入される。処理部70により第1電極21と第2電極22との間に電圧が印加される。これにより、分析対象物51中の粒52が上記の空間を移動する。
【0058】
例えば、粒52は、第1孔h1を通過した後、第1膜31と第2部材12との間の空間に移動する。この後、粒52は、この空間から、第2孔h2を通って、第1膜31と第1部材11との間の空間に移動する。第1孔h1の通過に対応する第1パルス信号S1、及び、第2孔h2の通過に対応する第2パルス信号S2(図3参照)が得られる。
【0059】
例えば、第1パルス信号S1と第2パルス信号S2との間の時間間隔wd(図3参照)により、粒52の電気的特性(例えば電荷の量)などに関する情報が得られる。例えば、時間間隔wd、第1パルス幅w1及び第2パルス幅w2に基づいて、粒52の特性に関する種々の情報を得ても良い。
【0060】
本実施形態においても、分析精度を向上できる分析素子及び分析装置が提供できる。
【0061】
図9は、第2実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図9に示すように、実施形態に係る分析素子121は、第1部材11、第2部材12、第1膜31、第1電極21、第2電極22及び第1壁部41に加えて、第2壁部42及び第3壁部43をさらに含む。分析装置221は、分析素子121及び処理部70を含む。
【0062】
分析素子121においては、第1膜31は、第1〜第3部分領域r1〜r3に加えて、第4部分領域r4及び第5部分領域r5をさらに含む。
【0063】
第3部分領域r3は、第1部分領域r1と第2部分領域r2との間に設けられる。第3孔h3が、第3部分領域r3に設けられる。第4部分領域r4は、第3部分領域r3と第2部分領域r2との間に設けられる。第5部分領域r5は、第4部分領域r4と第2部分領域r2との間に設けられる。第4孔h4が、第5部分領域r5に設けられる。
【0064】
第2壁部42は、第2部材12と第4部分領域r4との間に設けられる。第3壁部43は、第1部材11と第5部分領域r5との間に設けられる。例えば、第2壁部42は、第2部材12及び第4部分領域r4と接する。例えば、第3壁部43は、第1部材11及び第5部分領域r5と接する。
【0065】
第1方向(第2部材12から第1部材11への方向であり、Z軸方向)において第1壁部41と第3部分領域r3とが重なる領域は、第1孔h1と第3孔h3との間にある。
【0066】
第1方向において第2壁部42と第4部分領域r4とが重なる領域は、第3孔h3と第4孔h4との間にある。
【0067】
第1方向において第3壁部43と第5部分領域r5とが重なる領域は、第4孔h4と第2孔h2との間にある。
【0068】
分析素子121においては、複数の壁部により、第1部材11と第2部材12との間の複数の空間が、互いに分離される。例えば、粒52は、第1孔h1を通過した後、第3孔h3を通過する。粒52は、第3孔h3を通過した後、第4孔h4を通過する。粒52は、第4孔h4を通過した後、第2孔h2を通過する。これらの複数の孔に応じて、複数のパルス信号が得られる。例えば、複数のパルス信号の間の時間間隔に基づいて、粒52の電気的特性(例えば電荷の量)などに関する情報が得られる。例えば、時間間隔及びパルス幅に基づいて、粒52の特性に関する種々の情報を得ても良い。
【0069】
このように、本実施形態において、第1孔h1と第2孔h2との間に、さらに複数の孔を設けても良い。複数の孔の数は、偶数である。複数の孔に応じて、複数の壁部が設けられる。
【0070】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図10に示すように、実施形態に係る分析素子130は、第1部材11、第2部材12、第1膜31、第1電極21、第2電極22、第1壁部41及び第2壁部42を含む。分析装置230は、分析素子130及び処理部70を含む。
【0071】
第1膜31は、第1部材11と第2部材12との間に設けられる。第1膜31は、第1部材11の少なくとも一部、及び、第2部材12の少なくとも一部から離れる。第1膜31は、第1〜第4部分領域r1〜r4を含む。第1部分領域r1には、第1孔h1が設けられる。第2部分領域r2には、第2孔h2が設けられる。第3部分領域r3は、第1部分領域r1と第2部分領域r2との間に設けられる。第3部分領域r3には、第3孔h3が設けられる。第4部分領域r4は、第3部分領域r3と第2部分領域r3との間に設けられる。
【0072】
第1電極21は、第1部材11と第1部分領域r1との間に設けられる。第1電極21は、第1部分領域r1から離れる。この例では、第1電極21は、第1部材11に固定される。
【0073】
第2電極22は、第1部材11と第2部分領域r2との間に設けられる。第2電極22は、第2部分領域r2から離れる。この例では、第2電極22は、第2部材12に固定される。
【0074】
第1壁部41は、第1部材11と第3部分領域r3との間に設けられる。第2壁部42は、第2部材12と第4部分領域r4との間に設けられる。例えば、第1壁部41は、第1部材11及び第3部分領域r3と接する。例えば、第2壁部42は、第2部材12及び第4部分領域r4と接する。
【0075】
第1方向(第2部材12から第1部材11への方向であり、Z軸方向)において第1壁部41と第3部分領域r3とが重なる領域は、第1孔h1と第3孔h3との間にある。
【0076】
第1方向において第2壁部42と第4部分領域r4とが重なる領域は、第3孔h3と第2孔h2との間にある。
【0077】
例えば、第1電極21が設けられる空間と、第2電極22が設けられる空間と、が上記の壁部により分離される。
【0078】
粒52は、第1孔h1を通過した後、第1膜31と第2部材12との間の空間に移動する。この後、粒52は、この空間から、第3孔h2を通って、第1膜31と第1部材11との間の空間に移動する。この後、粒52は、この空間から、第2孔h2を通って、第1膜31と第2部材12との間の空間に移動する。第1孔h1〜第3孔h3の通過に対応する複数のパルス信号が得られる。
【0079】
例えば、複数のパルス信号の間の時間間隔により、粒52の電気的特性(例えば電荷の量)などに関する情報が得られる。例えば、時間間隔、及び、複数のパルス幅に基づいて、粒52の特性に関する種々の情報を得ても良い。
【0080】
本実施形態においても、分析精度を向上できる分析素子及び分析装置が提供できる。
【0081】
図11は、第3実施形態に係る分析素子及び分析装置を例示する模式図である。
図11に示すように、実施形態に係る分析素子131は、第1部材11、第2部材12、第1膜31、第1電極21、第2電極22、第1壁部41及び第2壁部42に加えて、第3壁部43及び第4壁部44をさらに含む。分析装置231は、分析素子131及び処理部70を含む。
【0082】
分析素子131においては、第1膜31は、第1〜第3部分領域r1〜r3に加えて、第4〜第6部分領域r4〜r6をさらに含む。
【0083】
第4部分領域r4は、第1部分領域r1と第2部分領域r2との間に設けられる。第3孔h3が、第4部分領域r4に設けられる。
【0084】
第5部分領域r5は、第4部分領域r4と第2部分領域r2との間に設けられる。第4孔h4が、第5部分領域r5に設けられる。
【0085】
第6部分領域r6は、第5部分領域r5と第2部分領域r2との間に設けられる。第5孔h5が、第5部分領域r5に設けられる。
【0086】
第3壁部43は、第2部材12と第4部分領域r4との間に設けられる。第4壁部44は、第1部材11と第5部分領域r5との間に設けられる。例えば、第3壁部43は、第2部材12及び第4部分領域r4と接する。例えば、第4壁部44は、第1部材11及び第5部分領域r5と接する。
【0087】
第1方向(Z軸方向)において第1壁部41と第3部分領域r3とが重なる領域は、第1孔h1と第3孔h3との間にある。第1方向において第3壁部43と第4部分領域r4とが重なる領域は、第3孔h3と第4孔h4との間にある。第1方向において第4壁部44と第5部分領域r5とが重なる領域は、第4孔h4と第5孔h5との間にある。第1方向において第2壁部42と第部分領域rとが重なる領域は、第5孔h5と第2孔h2との間にある。
【0088】
分析素子131においても、複数の壁部により、第1部材11と第2部材12との間の複数の空間が、互いに分離される。例えば、粒52は、第1孔h1を通過した後、第3孔h3を通過する。粒52は、第3孔h3を通過した後、第4孔h4を通過する。粒52は、第4孔h4を通過した後、第5孔h5を通過する。粒52は、第5孔h5を通過した後、第2孔h2を通過する。これらの複数の孔に応じて、複数のパルス信号が得られる。例えば、複数のパルス信号の間の時間間隔に基づいて、粒52の電気的特性(例えば電荷の量)などに関する情報が得られる。例えば、時間間隔及びパルス幅に基づいて、粒52の特性に関する種々の情報を得ても良い。
【0089】
このように、本実施形態において、第1孔h1と第2孔h2との間に、さらに複数の孔が設けられても良い。複数の孔の数は、奇数である。複数の孔に応じて、複数の壁部が設けられる。
【0090】
(第4実施形態)
第4実施形態は、分析装置に係る。分析装置は、上記の実施形態に係る任意の分析素子(及びその変形)と、処理部70と、を含む。既に説明したように、処理部70は、第1電極21及び第2電極22と電気的に接続される。
【0091】
処理部70は、例えば、第1電極21及び第2電極22から得られる第1パルス信号S1及び第2パルス信号S2の間の時間間隔wdに基づいて、分析対象物51を分析する。分析対象物51は、第1電極21と第1膜31との間、及び、第2電極22と第1膜31との間に導入される。例えば、分析対象物51は、液体51Lと、液体51L中の粒52と、を含む。第1パルス信号S1は、粒52の第1孔h1の通過に対応する。第2パルス信号S2は、粒52の第2孔h2の通過に対応する。
【0092】
例えば、粒52の速度v1は、以下の第1式で表される。

v1=μ・E
=(Q/6πηr)・(V/L1) (1)

第1式において、「μ」は、移動度である。「E」は、電界である。「Q」は、イオン(粒52)の電荷である。「η」は、溶媒(液体51L)の粘度である。「r」は、イオンの半径である。「V」は、電圧である。「L1」は、複数の電極の間の距離である。
【0093】
処理部70は、例えば、第1式から、粒52の電荷に関する情報を導出する。
【0094】
処理部70は、さらに、粒52のサイズに関する情報を導出しても良い。例えば、イオン電流に関する抵抗Rは、以下の第2式で表される。

R=ρ(L2/πD)+ρ/4D (2)

第2式において、「ρ」は、分析対象物51の抵抗率である。L2は、膜(第1膜31または第2膜32)の厚さである。「D」は、孔(第1孔h1または第2孔h2など)の半径である。例えば、抵抗Rの変化(パルス信号の強度)から、粒52の通過による、孔の半径の減少に関する情報が得られる。その結果から、粒52の半径が得られる。その結果と、第1式と、を用いて、粒52の電荷に関する情報が導出されても良い。
【0095】
以下、分析素子に含まれる材料の例について説明する。
第1部材11、第2部材12、第1膜31及び第2膜32は、例えば、絶縁性である。第1部材11及び第2部材12の少なくともいずれかは、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、及び、酸化アルミニウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1膜31及び第2膜32の少なくともいずれかは、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、及び、酸化アルミニウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0096】
第1電極21及び第2電極22の少なくともいずれかは、例えば、銀、塩化銀、白金、金及びタングステンよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0097】
上記の壁部は、例えば、絶縁性である。上記の壁部の少なくともいずれかは、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、及び、酸化アルミニウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0098】
実施形態において、分析対象物51は、例えば、微粒子(例えばウィルスなど)を含む検体液である。液体51Lは、例えば、緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水など)などである。粒52は、例えば、ウィルス及び細菌よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。粒52は、PM0.1などの微粒子を含んでも良い。
【0099】
以下、分析素子の製造方法の例について説明する。
図12(a)〜図12(d)は、実施形態に係る分析素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図12(a)に示すように、基板10sの上に、第2電極22が設けられている。第2電極22の上に、第1層37a、第1絶縁層38a、第2層37b及び第2絶縁層38bをこの順で形成する。第1層37a及び第2層37bは、例えば、犠牲層である。
【0100】
図12(b)に示すように、第1層37a、第1絶縁層38a、第2層37b及び第2絶縁層38bを含む積層体に、孔H1を形成する。例えば、ドライエッチングまたはウエットエッチングにより、孔H1が形成される。
【0101】
図12(c)に示すように、第1層37a及び第2層37bを除去し、さらに、積層体の上に、第3層37c、第1電極21及び第3絶縁層38cをこの順で形成する。第3層37cは、例えば、犠牲層である。
【0102】
図12(d)に示すように、第3層37cを除去する。これにより、例えば、分析素子110が形成される。基板10sが、第2部材12となる。第3絶縁層38cが、第1部材11となる。
【0103】
以下、分析素子の製造方法の別の例について説明する。
図13(a)及び図13(b)は、実施形態に係る分析素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図13(a)に示すように、第1部材11、第1電極21及び第1膜31を含む構造体を形成する。第1部材11及び第1膜31は、支持体39Aにより支持される。一方、第2部材12、第2電極22及び第2膜32を含む構造体を形成する。第2部材12及び第2膜32は、支持体39Bにより支持される。これらの2つの構造体を対向させる。
【0104】
図13(b)に示すように、これらの構造体を互いに結合(例えば接着)する。この方法によっても、例えば、分析素子110が得られる。
【0105】
実施形態は、例えば、高感度の検査システムに関する。実施形態においては、例えば、高い判定精度で、粒(例えば、ウイルスなど)の識別が可能である。実施形態は、検査装置、または、検査方法に関しても良い。
【0106】
例えば、実施形態に係る検査においては、膜に設けられた孔(ポア)を、粒が通過する際に得られるイオン電流が用いられる。イオン電流は、例えば、粒のサイズに応じる。例えば、検査対象物が異物を含むと、検査対象の粒の検出精度が低くなる。サイズの他に、粒の他の物理量(電荷または形状)に関する情報を得ることで、より高い精度の検査が可能になる。
【0107】
実施形態によれば、例えば、粒のサイズ以外の物理量(電荷または形状など)による検査(識別)が可能になる。判定精度を向上できる。
【0108】
例えば、複数の孔のそれぞれの通過時間の差と、複数の孔の間の距離と、により、粒の速度に関する情報が得られる。例えば、粒がウイルスの場合、粒の電荷は、核酸またはタンパク質の電荷によって決まる。このため、粒の大きさと粒の電荷と、を用いて、ウイルスが識別できる。例えば、判定精度が向上できる。例えば、電荷の影響を考慮したイオン電流変化のピーク形状(強度、幅、または波形)の解析が可能となる。これにより、判定精度が向上できる。
【0109】
例えば、孔を通過する間のイオン電流の変化のピーク形状から、粒の形状に関する情報が得られる。例えば、球状の粒が2つの孔を通過する場合は、イオン電流変化は2つのピークとして観測される。一方、粒が、柱状で、粒の長軸の長さが2つの孔の間隔以上の長さの場合には、2つの孔の通過に伴うイオン電流変化は、2つのピークではなく、1つの大きなピークとして観測される。このように、ピーク形状は、粒の形状を反映する。このため、ピーク形状から、粒の形状に関する情報を得ることができる。
【0110】
実施形態に係る分析素子においては、例えば、検体液中の粒が、孔を通過する。2つの電極間に、粒の移動方向に沿って、複数の孔が設けられる。
【0111】
実施形態において、粒が孔を通過する際に生じる電気信号から、粒のサイズと、粒の、サイズ以外の物理量(例えば電荷または形状など)に関する情報が得られる。粒のサイズと、粒の、サイズ以外の物理量と、に関する情報から、所望の粒の識別が行われる。
【0112】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
第1電極と、
第2電極と、
第1孔を有する第1膜であって、前記第1膜の少なくとも一部は前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1膜は、前記第1電極及び前記第2電極から離れた、前記第1膜と、
第2孔を有する第2膜であって、前記第2膜の少なくとも一部は前記第1膜と前記第2電極との間に設けられ、前記第2膜は、前記第1膜及び前記第2電極から離れた、前記第2膜と、
を備えた分析素子。
(構成2)
前記第1膜の第1厚さは、前記第2膜の第2厚さよりも厚い、構成1記載の分析素子。
(構成3)
前記第1膜の第1厚さは、前記第2膜の第2厚さの1.5倍以上10倍以下である、構成1記載の分析素子。
(構成4)
前記第1膜と交差する第1方向において、前記第1孔の少なくとも一部は、前記第2孔と重なる、構成1〜3のいずれか1つに記載の分析素子。
(構成5)
前記第1膜と交差する第1方向に沿う、前記第1膜と前記第2膜との間の距離は、前記第1膜に沿う第2方向に沿う前記第1孔の幅の1.2倍以上10倍以下である、構成1〜4のいずれか1つに記載の分析素子。
(構成6)
前記第1膜に沿う方向に沿う前記第1孔の幅は、
前記第1膜に沿う前記方向に沿う前記第2孔の幅の0.8倍以上1.2倍以下である、構成1〜4のいずれか1つに記載の分析素子。
(構成7)
前記第1膜に沿う方向に沿う前記第1孔の幅は、10nm以上10μm以下であり、
前記第1膜に沿う前記方向に沿う前記第2孔の幅は、10nm以上10μm以下である、構成1〜4のいずれか1つに記載の分析素子。
(構成8)
前記第1膜は、複数の前記第1孔を含み、
前記第1膜に沿う方向に沿う、前記複数の第1孔の1つの幅は、前記方向に沿う前記第2孔の幅の1.2倍以上5倍以下である、構成1〜4のいずれか1つに記載の分析素子。
(構成9)
前記第1膜は、複数の前記第1孔を含み、
前記第2膜は、複数の前記第2孔を含み、
前記複数の第1孔の密度は、前複数の第2孔の密度よりも高い、構成1〜4のいずれか1つに記載の分析素子。
(構成10)
第1部材と、
第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられた第1膜であって、前記第1膜は、第1孔が設けられた第1部分領域と、第2孔が設けられた第2部分領域と、前記第1部分領域と前記第2部分領域との間の第3部分領域と、を含み、前記第1膜は、前記第1部材の少なくとも一部及び前記第2部材の少なくとも一部から離れた、前記第1膜と、
前記第1部材と前記第1部分領域との間に設けられ、前記第1部分領域から離れた第1電極と、
前記第1部材と前記第2部分領域との間に設けられ、前記第2部分領域から離れた第2電極と、
前記第1部材と前記第3部分領域との間に設けられた第1壁部と、
を備えた分析素子。
(構成11)
第2壁部及び第3壁部をさらに備え、
前記第1膜は、第4部分領域及び第5部分領域をさらに含み、
前記第3部分領域は、前記第1部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第3孔が前記第3部分領域に設けられ、
前記第4部分領域は、前記第3部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、
前記第5部分領域は、前記第4部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第4孔が前記第5部分領域に設けられ、
前記第2壁部は、前記第2部材と前記第4部分領域との間に設けられ、
前記第3壁部は、前記第1部材と前記第5部分領域との間に設けられ、
前記第2部材から前記第1部材への第1方向において前記第1壁部と前記第3部分領域とが重なる領域は、前記第1孔と前記第3孔との間にあり、
前記第1方向において前記第2壁部と前記第4部分領域とが重なる領域は、前記第3孔と前記第4孔との間にあり、
前記第1方向において前記第3壁部と前記第5部分領域とが重なる領域は、前記第4孔と前記第2孔との間にある、構成10記載の分析素子。
(構成12)
第1部材と、
第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられた第1膜であって、前記第1膜は、第1孔が設けられた第1部分領域と、第2孔が設けられた第2部分領域と、第3孔が設けられ前記第1部分領域と前記第2部分領域との間の第3部分領域と、前記第3部分領域と前記第2部分領域との間の第4部分領域と、を含み、前記第1膜は、前記第1部材の少なくとも一部及び前記第2部材の少なくとも一部から離れた、前記第1膜と、
前記第1部材と前記第1部分領域との間に設けられ、前記第1部分領域から離れた第1電極と、
前記第1部材と前記第2部分領域との間に設けられ、前記第2部分領域から離れた第2電極と、
前記第1部材と前記第3部分領域との間に設けられた第1壁部と、
前記第2部材と前記第4部分領域との間に設けられた第2壁部と、
を備え、
前記第2部材から前記第1部材への第1方向において前記第1壁部と前記第3部分領域とが重なる領域は、前記第1孔と前記第3孔との間にあり、
前記第1方向において前記第2壁部と前記第4部分領域とが重なる領域は、前記第3孔と前記第2孔との間にある、分析素子。
(構成13)
第3壁部及び第4壁部をさらに備え、
前記第1膜は、第4部分領域〜第6部分領域をさらに含み、
前記第4部分領域は、前記第1部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第3孔が前記第4部分領域に設けられ、
前記第5部分領域は、前記第4部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第4孔が前記第5部分領域に設けられ、
前記第6部分領域は、前記第5部分領域と前記第2部分領域との間に設けられ、第5孔が前記第5部分領域に設けられ、
前記第3壁部は、前記第2部材と前記第4部分領域との間に設けられ、
前記第4壁部は、前記第1部材と前記第5部分領域との間に設けられ、
前記第1方向において前記第1壁部と前記第3部分領域とが重なる領域は、前記第1孔と前記第3孔との間にあり、
前記第1方向において前記第3壁部と前記第4部分領域とが重なる領域は、前記第3孔と前記第4孔との間にあり、
前記第1方向において前記第4壁部と前記第5部分領域とが重なる領域は、前記第4孔と前記第5孔との間にあり、
前記第1方向において前記第2壁部と前記第5部分領域とが重なる領域は、前記第5孔と前記第2孔との間にある、構成12記載の分析素子。
(構成14)
構成1〜13のいずれか1つに記載の分析素子と、
前記第1電極及び前記第2電極と電気的に接続された処理部と、
を備え、
前記処理部は、前記第1電極及び前記第2電極から得られる第1パルス信号及び第2パルス信号の間の時間間隔に基づいて、分析対象物を分析する、分析装置。
(構成15)
前記分析対象物は、液体と、前記液体中の粒と、を含み、
前記第1パルス信号は、前記粒の前記第1孔の通過に対応し、
前記第2パルス信号は、前記粒の前記第2孔の通過に対応した、構成14記載の分析装置。
【0113】
実施形態によれば、分析精度を向上できる分析素子及び分析装置を提供できる。
【0114】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0115】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0116】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、分析素子に含まれる電極、部材、膜及び壁部、及び、分析装置に含まれる処理部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0117】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0118】
その他、本発明の実施の形態として上述した分析素子及び分析装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての分析素子及び分析装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0119】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
10s…基板、 11…第1部材、 12…第2部材、 21…第1電極、 22…第2電極、 31…第1膜、 32…第2膜、 37a〜37c…第1〜第3層、 38a〜38c…第1〜第3絶縁層、 39A、39B…支持体、 41〜44…第1〜第4壁部、 51…分析対象物、 51L…液体、 52…粒、 55…洗浄用液体、 58…異物、 70…処理部、 71…電流検出部、 82〜84…枠部、 110、110a〜110c、111、112、120、121、130、131…分析素子、 210、211、212、220、221、230、231…分析装置、 Dz12…距離、 H1…孔、 Is…電流、 S1、S2…第1、第2パルス信号、 d1、d2…第1、第2幅、 d52…サイズ、 h1〜h5…第1〜第5孔、 p1、p2…第1、第2強度、 r1〜r6…第1〜第6部分領域、 t1、t2…第1、第2厚さ、 tm…時間、 w1、w2…第1、第2パルス幅、 wd…時間間隔
図1
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