特許第6831678号(P6831678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6831678ロボット及びその運転方法、並びに塗布システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831678
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】ロボット及びその運転方法、並びに塗布システム
(51)【国際特許分類】
   A23P 20/18 20160101AFI20210208BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20210208BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20210208BHJP
【FI】
   A23P20/18
   B25J13/08 A
   A23L35/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-230788(P2016-230788)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-85951(P2018-85951A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 賢二
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 修平
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−194989(JP,U)
【文献】 特開2013−086229(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155575(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/125017(WO,A2)
【文献】 中国実用新案第203913291(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23P 10/00−30/40
A23L 35/00
B25J 13/00−13/08
A21C 9/04
A23G 1/00− 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に入った食品に液体を塗布するロボットであって、
前記容器又は前記食品を撮影する撮像部と、
前記液体を吐出する吐出部を移動させる第1アームと、
前記食品上に吐出された液体を展延する展延部を移動させる第2アームと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記撮像部により撮影された前記容器又は前記食品の位置及び傾きに基づいて前記吐出部が移動するように前記第1アームを動作させ、前記展延部が移動するように前記第2アームを動作させる、ロボット。
【請求項2】
前記液体を吐出する際の前記第1アームによる前記吐出部の移動方向と、前記液体を展延する際の前記第2アームによる前記展延部の移動方向とが異なる、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記撮像部は前記第1アームに設けられている、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかのロボットと、
前記容器を搬送する搬送部と、を備えている、塗布システム。
【請求項5】
前記搬送部による搬送方向において前記撮像部は前記吐出部よりも上流側になり、前記吐出部は前記展延部よりも上流側になるように前記ロボットは前記搬送部に対して配置されている、請求項に記載の塗布システム。
【請求項6】
容器又は食品を撮影する撮像部と、
液体を吐出する吐出部を移動させる第1アームと、
前記食品上に吐出された液体を展延する展延部を移動させる第2アームと、を備えるロボットの運転方法であって、
前記撮像部により撮影された前記容器又は前記食品の位置及び傾きに基づいて前記吐出部が移動するように前記第1アームを動作させ、前記展延部が移動するように前記第2アームを動作させる、ロボットの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット及びその運転方法、並びに塗布システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品に液体を塗布する装置として、例えば、特許文献1の刷毛塗り装置が知られている。この刷毛塗り装置は塗布用ブラシ及び拡散用ブラシを備えている。これらのブラシは、食品を搬送するコンベアよりも上方に固定されており、コンベアの搬送方向に直交する方向においてコンベアの幅とほぼ等しい幅に延びている。コンベアにより搬送されている食品に塗布用ブラシによって調味料を塗布し、拡散用ブラシによって調味料を延ばしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−196772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の刷毛塗り装置では、食品に塗布された液体を延ばすためには、コンベアの幅とほぼ等しい幅の特殊な拡散用ブラシを用いなければならず、未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、食品に液体を容易に塗布することができる、ロボット及びその運転方法、並びに塗布システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係るロボットは、容器に入った食品に液体を塗布するロボットであって、前記容器又は前記食品を撮影する撮像部と、前記液体を吐出する吐出部を移動させる第1アームと、前記食品上に吐出された液体を展延する展延部を移動させる第2アームと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記撮像部により撮影された前記容器又は前記食品の位置及び傾きに基づいて前記吐出部が移動するように前記第1アームを動作させ、前記展延部が移動するように前記第2アームを動作させる。
【0007】
この構成によれば、容器又は食品の位置及び傾きに応じて吐出部及び展延部が移動することができる。このため、特殊なブラシを用いなくても、食品上に吐出された液体を延ばして、食品に液体を容易に塗布することができる。また、吐出部による吐出動作と、展延部による展延動作とを同時に行え、食品上の液体が垂れたり乾いたりする前に液体を均一かつ効率的に塗布することができる。
【0008】
このロボットでは、前記液体を吐出する際の前記第1アームによる前記吐出部の移動方向と、前記液体を展延する際の前記第2アームによる前記展延部の移動方向とが異なってもよい。この構成によれば、吐出された液体の線条体が延びる方向と異なる方向に展延部を移動させることにより、より均一に液体を拡げることができる。
【0009】
また、ロボットでは、前記液体を展延する際の前記展延部の移動方向に直交する方向において前記展延部の長さが前記食品の長さよりも短くてもよい。この構成によれば、通常、用いられている刷毛等の展延部は、展延部の移動方向に対する直交方向において展延部の長さが食品の長さよりも短い。このような展延部であっても、容器又は食品の位置及び傾きに応じて展延部が移動することにより、食品に液体を容易に塗布することができる。
【0010】
さらに、ロボットでは、前記撮像部は前記第1アームに設けられていてもよい。この構成によれば、ロボットに吐出部、展延部及び撮像部が設けられていることにより、別途、撮像部を用意する必要がない。
【0011】
本発明に係る塗布システムは、上記いずれかのロボットと、前記容器を搬送する搬送部と、を備えている。この構成によれば、搬送部により搬送された容器内の食品に対して、順次、ロボットは液体を吐出して、それを延ばすことができる。複数の食品に液体を容易且つ効率的に塗布することができる。
【0012】
塗布システムでは、前記搬送部による搬送方向において前記撮像部は前記吐出部よりも上流側になり、前記吐出部は前記展延部よりも上流側になるように前記ロボットは前記搬送部に対して配置されていてもよい。この構成によれば、搬送部により搬送されてくる食品を、順次、撮影、吐出及び展延することができ、食品に液体を効率的に塗布することができる。
【0013】
本発明に係るロボットの運転方法は、容器又は食品を撮影する撮像部と、液体を吐出する吐出部を移動させる第1アームと、前記食品上に吐出された液体を展延する展延部を移動させる第2アームと、を備えるロボットの運転方法であって、前記撮像部により撮影された前記容器又は前記食品の位置及び傾きに基づいて前記吐出部が移動するように前記第1アームを動作させ、前記展延部が移動するように前記第2アームを動作させる。この方法によれば、容器又は食品の位置及び傾きに応じて展延部が移動することができるため、特殊なブラシを用いなくても、食品上に吐出された液体を延ばして、食品に液体を容易に塗布することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のロボット及びその運転方法、並びに塗布システムによれば、食品に液体を容易に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係るロボットの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示すロボットの制御装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図3図3は、図1に示すロボットにより容器を撮影し、食品上の液体を延ばしている状態を示す図である。
図4図4は、図1に示すロボットにより食品に液体を吐出し、食品上の液体を延ばしている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するための構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0017】
(実施の形態1)
[ロボットの構成]
本実施の形態1に係るロボット100は、図1に示すように、容器に入った食品に液体を塗布するロボットであって、撮像部10、第1アーム20、第2アーム30及び制御装置40を備えている。ロボット100には、例えば、水平多関節型ロボットが用いられる。ただし、ロボット100は、これに限定されず、垂直多関節型ロボット等のロボットであってもよい。
【0018】
ロボット100は台車11を備え、台車11の下面には車輪12及び固定部13が設けられている。ロボット100は、車輪12により移動可能で、固定部13により床に固定されるように構成されている。この台車11内には、制御装置40が収納されている。
【0019】
また、台車11の上面には基軸14が固定されている。基軸14には、当該基軸14の軸心を通る回転軸線L1周りに回動可能に第1アーム20及び第2アーム30が設けられている。第1アーム20と第2アーム30とが上下に高低差を有するように設けられている。なお、第1アーム20及び第2アーム30は、独立して動作したり、互いに関連して動作したりすることができるように構成されている。
【0020】
第1アーム20は、第1アーム部21、第1リスト部22、第1ハンド部23及び第1装着部24を有している。第2アーム30は、第2アーム部31、第2リスト部32、第2ハンド部33及び第2装着部34を有している。なお、ここでは、第1アーム20及び第2アーム30は、第1ハンド部23、第2ハンド部33を除いて、実質的に同じ構成とする形態を採用したが、これに限定されない。例えば、各アーム部21、31及び各リスト部22、32が、第1アーム20と第2アーム30とで異なる構成である形態を採用してもよい。
【0021】
第1アーム部21は略直方体状の第1aリンク21a及び第1bリンク21bで構成され、第2アーム部31は略直方体状の第2aリンク31a及び第2bリンク31bで構成されている。各リンク21a、31aは、その基端部に回転関節J1が設けられていて、先端部に回転関節J2が設けられている。各リンク21a、31aは、その基端部が回転関節J1を介して基軸14と連結されていて、回転関節J1により回転軸線L1周りに回動することができる。
【0022】
各リンク21b、31bは、その基端部が各リンク21a、31aの先端部と回転関節J2を介して連結されていて、回転関節J2によって回転軸線L2周りに回動することができる。各リンク21b、31bは、その先端部に直動関節J3が設けられている。
【0023】
各リスト部22、32は、各リンク21b、31bの先端部に直動関節J3を介して連結されていて、各リンク21b、31bに対し昇降移動可能である。各リスト部22、32の下端部には回転関節J4が設けられていて、回転関節J4の下端部には各装着部24、34が設けられている。
【0024】
各装着部24、34は、各ハンド部23、33を着脱可能に構成されている。例えば、各装着部24、34は、その間隔が調整可能に構成されている、一対の棒部材を有している。各装着部24、34は、当該一対の棒部材で各ハンド部23、33を挟み込むことにより、各ハンド部23、33を各リスト部22、32に装着することができる。これにより、各ハンド部23、33は、回転関節J4によって回転軸線L3周りに回動することができる。なお、棒部材は先端部分が折れ曲がっていてもよい。
【0025】
第1ハンド部23は、第1アーム20の先端に設けられており、第1装着部24により脱着可能に装着された第1把持部25及び撮像部10により構成されている。第2ハンド部33は、第2アーム30の先端に設けられており、第2装着部34により脱着可能に装着された第2把持部35により構成されている。なお、第1ハンド部23及び第2ハンド部33の詳細については後述する。
【0026】
なお、第1アーム20及び第2アーム30の各関節J1〜J4には、それぞれ、各関節が連結する2つの部材を相対的に回転又は昇降させるアクチュエータの一例としての駆動モータ(図示せず)が設けられている。駆動モータは、例えば、制御装置40によってサーボ制御されるサーボモータであってもよい。また、各関節J1〜関節J4には、それぞれ、駆動モータの回転位置を検出する回転センサ(図示せず)と、駆動モータの回転を制御する電流を検出する電流センサ(図示せず)と、が設けられている。回転センサは、例えば、エンコーダであってもよい。
【0027】
次に、制御装置40について、図2を参照しながら説明する。制御装置40は、CPU等の演算部40aと、ROM、RAM等の記憶部40bと、サーボ制御部40cとを備え、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えたロボットコントローラである。なお、制御装置40は、集中制御する単独の制御装置40によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御装置40によって構成されていてもよい。また、本実施の形態1においては、記憶部40bが制御装置40内に配置されている形態を採用したが、これに限定されず、記憶部40bが制御装置40と別体に設けられている形態を採用してもよい。
【0028】
記憶部40bには、ロボットコントローラとしての基本プログラム、各種固定データ等の情報が記憶されている。演算部40aは、記憶部40bに記憶された基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、ロボット100の各種動作を制御する。すなわち、演算部40aは、ロボット100の制御指令を生成し、これをサーボ制御部40cに出力する。サーボ制御部40cは、演算部40aにより生成された制御指令に基づいて、ロボット100の各アーム20、30の関節J1〜J4に対応するサーボモータの駆動を制御するように構成されている。例えば、制御装置40は、撮像部10により撮影された容器又は食品の位置及び傾きに基づいて吐出部26が移動するように第1アーム20を動作させ、展延部36が移動するように第2アーム30を動作させる。
【0029】
次に、第1アーム20の第1ハンド部23について、図3及び図4を参照しながら説明する。第1ハンド部23は撮像部10及び第1把持部25により構成され、撮像部10と第1把持部25とは所定の角度で第1装着部24(図1)を介して第1リスト部22に接続されている。第2ハンド部33は第2把持部35により構成されており、第2装着部34(図1)を介して第1リスト部32に接続されている。
【0030】
撮像部10は、容器15又は食品16を撮影する装置であって、例えば、ビジョンカメラなどのカメラが用いられる。撮像部10は、その光軸が第1アーム20の第1リスト部22の昇降方向(上下方向)に一致し、下方を向くように配置されている。撮像部10は撮影した画像を制御装置40に出力し、制御装置40は画像を解析して撮影対象の位置及び形状等を判定する。
【0031】
第1把持部25は、液体を吐出する吐出部26を把持する部分であって、例えば、一対の挟持部分を有している。一対の挟持部分は、互いの間隔が変化するようにアクチュエータ等の駆動部(図示せず)により駆動し、互いの間隔が狭くなることにより吐出部26の取付部分を挟持する。挟持部分は、例えば板状体であって、一対の挟持部分が互いに対向する挟持部分の辺は吐出部26の取付部分に当接するように取付部分の表面に沿って湾曲していてもよい。
【0032】
吐出部26は、収容した液体を吐出するディスペンサーであって、液体に圧力が付与されるようにアクチュエータ等の駆動部(図示せず)が接続されている。例えば、吐出部26がシリンダ及びピストンにより形成されており、ピストンが移動することにより液体が吐出する。また、吐出部26には、第1把持部25により把持される取付部分が設けられている。この取付部分が第1把持部25により把持されることにより、吐出口が下方を向くように吐出部26は第1アーム20に取り付けられる。
【0033】
この撮像部10及び吐出部26は、回転関節J1、J2、J4(図1)により第1アーム20の各部が各回転軸線L1、L2、L3(図1)周りを回動することにより、左右及び前後方向に移動することができる。また、撮像部10及び吐出部26は、直動関節J3(図1)により第1アーム20の第1リスト部22が第1bリンク21bに対し昇降移動することにより、上下方向に移動することができる。このように第1アーム20は撮像部10及び吐出部26を移動させることができる。
【0034】
第2把持部35は、食品16上に吐出された液体を展延する展延部36を把持する部分であって、例えば、一対の挟持部分を有している。一対の挟持部分は、互いの間隔が変化するようにアクチュエータ等の駆動部(図示せず)により駆動し、互いの間隔が狭くなることにより展延部36の取付部分を挟持する。挟持部分は、例えば板状体であって、一対の挟持部分が互いに対向する挟持部分の辺は、展延部36の取付部分に当接するように取付部分の表面に沿って湾曲していてもよい。
【0035】
展延部36は、食品16上の液体を拡げて延ばすものであって、例えば、刷毛、ローラ、コテ、ヘラ等が挙げられる。食品16の塗布面に平行な方向(水平方向)では、液体を展延する際の展延部36の移動方向に直交する方向における展延部36の長さが食品16の長さよりも短い。また、展延部36には、第2把持部35により把持される取付部分が設けられている。この取付部分が第2把持部35により把持されることにより展延部36の下端部が水平方向になるように展延部36は第2アーム30に取り付けられる。
【0036】
この展延部36は、回転関節J1、J2、J4(図1)による第2アーム30の各部が各回転軸線L1、L2、L3(図1)周りを回動することにより、左右及び前後方向に移動することができる。また、展延部36は、直動関節J3(図1)による第2アーム30の第2リスト部32が第2bリンク31bに対し昇降移動することにより、上下方向に移動することができる。このように第2アーム30は展延部36を移動させることができる。
【0037】
[塗布システムの構成]
次に、塗布システム200の構成について、図3及び図4を参照しながら説明する。塗布システム200は、ロボット100及び搬送部201により構成されている。搬送部201は、ロボット100の前に配置されており、例えば容器15を搬送するベルトコンベアであって、容器15を載置する載置面を有する。搬送部201は、その載置面が各リスト部22、32の昇降方向(上下方向)に直交する方向(水平方向)であって、載置面上の容器15が第1ハンド部23側から第2ハンド部33側へ移動するように配置されている。
【0038】
よって、ロボット100の第1ハンド部23が第2ハンド部33よりも搬送部201による搬送方向の上流側に設けられる。また、搬送方向において撮像部10は第1把持部25の吐出部26よりも上流側に配置され、吐出部26は第2把持部35の展延部36よりも上流側に配置されている。なお、搬送部201に代えて、容器15を載置する作業台等がロボット100の前に配置されていてもよい。
【0039】
搬送部201の載置面には、容器15が前後方向に並んで2列、配列されており、各列には複数の容器15が左右方向に並べられている。容器15は、上面が開口した形状であって、底及び、底から立ち上がる4つの側壁を有している。容器15の中は対角線で区切られており、その一方側にはご飯が詰められており、他方側にはハンバーグ(食品)16及び卵が配置されている。食品16は、その長手方向が搬送部201の搬送方向に対して斜め方向であって、容器15の対角線に平行になるように配置されている。なお、搬送部201の載置面には容器15が前後方向に並んで1列又は複数(3列以上)、配列されていてもよい。
【0040】
[ロボットの動作方法]
次に、本実施の形態1に係るロボット100の動作方法について、図3及び図4を参照しながら説明する。この動作方法は制御装置40により実行される。ここでは、弁当箱(容器)15に入ったハンバーグ(食品)16にソース(液体)を塗布する場合について説明する。
【0041】
ただし、容器15は、その上面が開口したものであれば、弁当箱に限定されない。食品16は、固体であればハンバーグに限定されず、例えばオムライスやお好み焼き等が挙げられる。液体は、吐出され展延されるものであればソースに限定されず、例えば粘性体及び流動体等の調味料が挙げられる。
【0042】
まず、図3に示すように、例えば作業員により食品16を収納した容器15が搬送部201の載置面に載置されてロボット100の前に搬送されてくる。載置される際や搬送される間に容器15は搬送部201の搬送方向に対して傾いたり、容器15の位置が所定の位置からずれたりする。
【0043】
このため、容器15の位置及び傾きを取得するために、第1アーム20は撮像部10を容器15上に移動させる。そして、搬送速度に基づいた所定時間毎、又は、搬送されている容器15の位置を検出するセンサ(図示せず)による検出信号等の所定タイミングに、撮像部10は容器15を撮影しこの画像を制御装置40に出力する。そして、制御装置40は画像を処理して、載置面に平行な方向における容器15の位置及び傾きの位置情報を取得する。
【0044】
この際、前後方向に延びる容器15の側壁と左右方向に延びる容器15の側壁との位置情報から、前後方向及び左右方向における容器15の位置及び傾きを取得することができる。このような容器15の形状及び色等が一定であるため、より正確かつより簡単に容器15の位置及び傾きの位置情報を取得することができる。
【0045】
また、撮像部10は、前後方向に並ぶ2つの容器15を同時に撮影するようにしてもよい。ここで、2つの容器15の全てではなく、図3の一点鎖線Lの撮影範囲に示すように、2つの容器15のそれぞれの一部を撮影するようにしてもよい。例えば、後側(ロボット100に近い側)の容器15については左右方向に延びる2つの側壁のうちの前側の側壁と、前後方向に延びる2つの側壁のうちの上流側(又は下流側)の側壁とを撮影するように設定する。また、前側(ロボット100から遠い側)の容器15については左右方向に延びる2つの側壁のうちの後側の側壁と、前後方向に延びる2つの側壁のうちの上流側(又は下流側)の側壁とを撮影する。このように、前後方向に延びる1つの側壁と左右方向に延びる1つの側壁との位置情報から、前後方向及び左右方向における容器15の位置及び傾きの位置情報を取得することができる。
【0046】
これにより、広範な範囲を撮影する特殊な撮像部10は必要がなく、コストの上昇を抑制することができる。また、焦点距離を長くするために撮像部10を吐出部26から離す必要がなく、製品の大型化が抑制される。さらに、前後方向に並ぶ容器15のそれぞれを撮影する必要がなく、動作時間の短縮化が図られる。
【0047】
続いて、第1アーム20は、撮像部10に代えて吐出部26を容器15上に移動させる。それから、吐出部26の吐出口から液体を吐出させながら、第1アーム20は容器15の位置情報に基づいて容器15内の食品16上で吐出部26を移動させる。
【0048】
例えば、容器15内における食品16の位置及び容器15に対する食品16の傾きは予め定められているため、容器15の位置及び傾きに基づいて食品16の位置及び傾きを求める。そして、液体を吐出する際の吐出部26の移動方向及び移動位置は、食品16のサイズ及び傾き等に応じて予め定められているため、食品16の位置及び傾きに基づいて吐出部26の移動位置及び移動方向を補正する。この移動位置の開始位置に吐出部26を配置し、吐出部26の吐出口から液体を吐出させながら、移動方向A1(図4)及び移動位置に基づいて吐出部26を移動させる。これにより、食品16上の所望の位置に液体を供給することができる。
【0049】
ここでは、長手方向における食品16の一方端近傍に吐出部26を配置してから、液体を吐出させながら長手方向に沿って吐出部26を移動させて、食品16の他方端近傍で吐出を停止する。そして、液体を吐出させずに吐出部26を搬送部201の下流側に移動させ、液体を吐出しながら、先の移動方向と平行になるように食品16の他方端近傍から一方端近傍へ吐出部26を移動させて吐出を停止する。これを複数回繰り返すことにより、食品16の塗布面に複数本の液体の線条体17が形成される。
【0050】
また、第2アーム30は、容器15の位置情報に基づいて展延部36を移動させる。ここで、容器15の位置及び傾きに基づいた食品16の位置及び傾きから、食品16の所定位置上に展延部36を配置する。そして、展延部36を下方に移動させて、展延部36の下端部を食品16に接触させる。
【0051】
液体を延ばす際の展延部36の移動方向及び移動位置は、食品16のサイズ及び傾き等に応じて予め定められているため、食品16の位置及び傾きに基づいて展延部36の移動位置及び移動方向を補正する。この移動位置及び移動方向A2(図4)に基づいて展延部36を移動させる。この際、食品16の傾きに基づいて展延部36の下端部の長手方向を展延部36の移動方向に対して直交する方向になるように展延部36を向ける。
【0052】
これにより、液体を食品16の塗布面において、より均一に延ばし広げることができる。また、食品16に対する液体の吐出動作と、先に吐出されている他の食品16上の液体の展延動作とを同時に行うことができるため、液体が食品16から垂れたり乾いたりしないうちに液体を引き延ばすことができる。なお、この吐出動作と展延動作とが並行して行われていれば、吐出動作と展延動作とが同じタイミングで開始して終了する場合だけでない。例えば、吐出動作の開始タイミングと展延動作の開始タイミングとがずれていてもよく、また、吐出動作の終了タイミングと展延動作の終了タイミングとがずれていてもよい。また、吐出動作と展延動作とが別々に行われていてもよい。
【0053】
この液体を吐出する際の第1アーム20による吐出部26の移動方向A1(図4)と、液体を展延する際の第2アーム30による展延部36の移動方向A2(図4)とが異なるようにしてもよい。例えば、食品16の長手方向に沿って吐出部26を移動させることにより、長手方向に延びる液体の線条体17が食品16上に形成される。これに対して、食品16の長手方向に対して直交する方向に展延部36を移動させることにより、長手方向に延びる液体の線条体17を長手方向に直交する方向に延ばす。これにより、より均一かつより効率的に液体を食品16に塗布することができる。
【0054】
このようにして、食品16上の液体を展延した後、第2アーム30は展延部36を容器15の側壁の高さよりも高い位置まで上昇させて、他の容器15の食品16の位置へ移動させる。これにより、食品16の高さが容器15の側壁の高さより低い場合であっても、展延部36が容器15の側壁に触れず、展延部36に付着していた液体により側壁を汚すことなく、展延部36を移動させることができる。
【0055】
このように構成されたロボット100では、制御装置40は、撮像部10により撮影された容器15の位置及び傾きに基づいて吐出部26が移動するように第1アーム20を動作させ、展延部36が移動するように第2アーム30を動作させている。これによれば、容器15の位置及び傾きに基づいた容器15内の食品16の位置及び傾きに応じて、吐出部26及び展延部36が移動することができる。このため、特殊なブラシを用いなくても、食品16上に吐出された液体を延ばして、食品16に液体を容易に塗布することができる。また、吐出部26による吐出と、展延部36による展延とを同時に行え、食品16上の液体が垂れたり乾いたりする前に液体を均一に塗布することができる。
【0056】
また、このロボット100では、液体を吐出する際の第1アーム20による吐出部26の移動方向と、液体を展延する際の第2アーム30による展延部36の移動方向とが異なっている。これによれば、吐出された液体の線条体17が延びる方向と異なる方向に展延部36を移動させることにより、より効率的かつより均一に液体を拡げることができる。
【0057】
さらに、このロボット100では、展延時の展延部36の移動方向A2(図4)に直交する方向において展延部36の長さ(幅)が食品16の長さよりも短い。これによれば、通常、用いられている刷毛等の展延部36は、展延部36の移動方向に対する直交方向において展延部36の長さが食品16の長さよりも短い。このような展延部36であっても、容器15の位置及び傾きに応じて展延部36が移動することにより、食品16に液体を容易に塗布することができる。
【0058】
また、このロボット100では、撮像部10は第1アーム20に設けられていている。これによれば、ロボット100に吐出部26、展延部36及び撮像部10が設けられていることにより、別途、撮像部10を用意する必要がない。
【0059】
さらに、塗布システム200は、ロボット100と、容器15を搬送する搬送部201と、を備えている。これによれば、搬送部201により搬送された容器15内の食品16に対して、順次、ロボット100は液体を吐出して、それを延ばすことができる。複数の食品16に液体を容易且つ効率的に塗布することができる。
【0060】
また、この塗布システム200では、搬送部201による搬送方向において撮像部10は吐出部26よりも上流側になり、吐出部26は展延部36よりも上流側になるようにロボット100は搬送部201に対して配置されている。これによれば、搬送部201により搬送されてくる食品16を、順次、撮影、吐出及び展延することができ、食品16に液体を効率的に塗布することができる。
【0061】
[変形例1]
なお、上記構成では、撮像部10により容器15を撮影し、その容器15の位置及び傾きに基づいて吐出部26及び展延部36を移動させた。これに対して、撮像部10により食品16を撮影し、その食品16の位置及び傾きに基づいて吐出部26及び展延部36を移動させてもよい。
【0062】
具体的には、撮像部10は容器15内の食品16を撮影しこの画像を制御装置40に出力して、制御装置40は画像の処理により食品16の位置及び傾きの位置情報を取得する。この位置情報に基づいて吐出部26の所定移動位置及び所定移動方向を補正して、この補正した移動位置及び移動方向に従って吐出部26を移動させながら、吐出部26の吐出口から液体を吐出させる。これにより、食品16上に液体が供給されて、液体の線条体17が形成される。
【0063】
また、食品16の位置及び傾きの位置情報に基づいて展延部36の所定移動位置及び所定移動方向を補正する。そして、この補正した移動位置及び移動方向に従って展延部36を移動させる。これにより、液体の線条体17が均一に引き延ばされる。
【0064】
このように、食品16の位置及び傾きに基づいて吐出部26及び展延部36が移動させることにより、食品16の位置及び傾きに合わせてより正確に吐出部26及び展延部36が移動させることができる。よって、食品16上において所望の範囲に食品16をより均一に塗布することができる。
【0065】
なお、上記全ての実施の形態において撮像部10は第1ハンド部23に設けられていたが、第2ハンド部33又はロボット100以外の位置に設けられていてもよい。
【0066】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良又は他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のロボット及びその運転方法、並びに塗布システムは、食品に液体を容易に塗布することができるため、産業ロボットの分野において有用である。
【符号の説明】
【0068】
10 :撮像部
15 :容器
16 :食品
20 :第1アーム
26 :吐出部
30 :第2アーム
36 :展延部
40 :制御装置
100 :ロボット
200 :塗布システム
201 :搬送部
図1
図2
図3
図4