(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記ワークの種類に応じて、前記ワークを排出する際の前記プッシャの移動速度を設定し、前記ワークを排出する際、設定した前記移動速度にて前記プッシャを移動させる、
請求項3に記載のワーク後方排出装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るワーク後方排出装置を備えた工作機械について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械1は、円柱状の被加工物であるワークWの前面及び背面を加工する旋盤である。以下では、加工中のワークWの回転軸に沿った方向を「Z方向」といい、そのZ方向に直交する鉛直方向を「Y方向」といい、Y軸及びZ方向に直交する方向を「X方向」という。
【0016】
(工作機械1の構成)
図1に示すように、工作機械1は、工作機械1全体の台であるベッドSと、第1の主軸ユニット10と、第1の工具ユニット55を有する工具移動機構40と、第2の工具ユニット20と、第2の主軸ユニット70と、ワーク後方排出装置90と、ワーク受け箱80と、制御部300と、を備える。
【0017】
第1の主軸ユニット10は、ワークWを把持しつつ回転させる。具体的には、第1の主軸ユニット10は、第1の主軸11と、第1の主軸11を回転可能に支持する第1の主軸台12と、第1の主軸台12をZ方向に移動させる第1Z軸スライド機構15と、を備える。
【0018】
図1に示すように、第1の主軸11は、ワークWをその側周面から把持するチャック11aを備える。第1の主軸台12には、ワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。このワーク回転用モータは、第1の主軸11及び第1の主軸11に把持されるワークWを一体で軸回転させる。第1の主軸11には、そのチャック11aの反対側から図示しないバーフィーダを通じて加工前のワークWが供給される。
【0019】
図2に示すように、第1Z軸スライド機構15は、ベッドS上に位置する軸受部15aと、Z方向に伸び、軸受部15aに軸回転可能に支持されるボールねじ15bと、ボールねじ15bを回転させるZ軸モータ15cと、ボールねじ15bに螺合するZ軸ボールねじナット部15dと、を備える。Z軸ボールねじナット部15dには、第1の主軸台12が連結されている。
Z軸モータ15cが駆動することで、ボールねじ15bが回転し、これにより、Z軸ボールねじナット部15dは第1の主軸ユニット10とともにZ方向に移動する。従って、第1の主軸ユニット10は、ワークWを軸回転させながらZ方向に移動させることができる。
【0020】
工具移動機構40は、ワークWを加工するための工具群55aをX方向及びY方向に移動させるための機構である。具体的には、工具移動機構40は、
図1及び
図2に示すように、ベッドSに固定された固定台41と、固定台41に取り付けられたX軸移動部42と、X軸移動部42に取り付けられたY軸移動部43と、を備える。固定台41には、Z方向に貫通する空洞部41hが設けられている。第1の主軸ユニット10の第1の主軸11は、第1Z軸スライド機構15の駆動により空洞部41h内に進入することができる。
【0021】
図2に示すように、Y軸移動部43は、X軸移動部42に設けられる軸受部43aと、軸受部43aに軸回転可能に支持されるY方向に伸びるボールねじ43bと、ボールねじ43bを回転させるY軸モータ43cと、ボールねじ43bに螺合するY軸スライド部43dと、を備える。Y軸モータ43cが駆動することで、ボールねじ43bが回転し、これにより、Y軸スライド部43dはY方向に移動する。
【0022】
図1に示すように、X軸移動部42は、固定台41に設けられる軸受部42aと、軸受部42aに軸回転可能に支持されるX方向に延びるボールねじ42bと、ボールねじ42bを回転させるX軸モータ42cと、ボールねじ42bに螺合するX軸スライド部42dと、を備える。このX軸モータ42cが駆動することで、ボールねじ42bが回転し、これにより、X軸スライド部42dはY軸移動部43とともにX方向に移動する。
【0023】
図2に示すように、Y軸スライド部43dには、第1の工具ユニット55が固定されている。第1の工具ユニット55は、刃物台55bと、刃物台55bに保持される工具群55aと、を備える。工具群55aは、バイト又はドリルから構成されている。工具群55aは、X方向に沿い、かつ、その刃先が第1の主軸11に把持されるワークWの側周面に向かうように刃物台55bによって把持される。工具移動機構40により工具群55aを回転するワークWに接触させることで、ワークWは切削される。
【0024】
図4に示すように、第2の主軸ユニット70は、ワーク排出用パイプ78を含む第2の主軸71と、第2の主軸台72と、ワーク回転用モータ73と、2つの軸受77a,77bと、第2Z軸スライド機構175と、X軸スライド機構176と、を備える。
なお、「Z方向」において、ワーク排出用パイプ78がワーク受け箱80に向けて延びる方向を+Z方向と規定し、ワーク排出用パイプ78が第2の主軸71のチャック71aに向かって延びる方向を−Z方向と規定する。第2の主軸71の前方は−Z方向であり、第2の主軸71の後方は+Z方向である。
【0025】
第2Z軸スライド機構175及びX軸スライド機構176は、それぞれ上述した第1Z軸スライド機構15と同様に、主に、軸受部と、ボールねじと、モータと、ボールねじナット部とから構成されている。第2Z軸スライド機構175は、第2の主軸ユニット70をZ方向に移動させる。X軸スライド機構176は、第2Z軸スライド機構175及び第2の主軸ユニット70をX方向に移動させる。従って、第2Z軸スライド機構175及びX軸スライド機構176により、第2の主軸ユニット70をZ方向及びX方向に沿う水平方向に移動させることができる。よって、第2の主軸ユニット70は、第1の主軸ユニット10、第2の工具ユニット20及びワーク後方排出装置90のそれぞれに対向することができる。
【0026】
図4に示すように、第2の主軸台72は中空の略円筒状に形成されている。第2の主軸71は、略円筒状をなすとともに、2つの軸受77a,77bを介して第2の主軸台72に対して回転可能に第2の主軸台72内に収容されている。第2の主軸71の先端側は第2の主軸台72から露出している。
【0027】
第2の主軸71は、いわゆる背面主軸に相当する。詳しくは、第2の主軸71は、その前側に位置するワークWを側周面から把持するチャック71aと、ワークWを保持するガイド71cと、ガイド71cから後方(+Z方向)へ向かって延びるワーク排出用パイプ78と、を備える。ワーク排出用パイプ78は、その内部空間にワークW及びプッシャ98が通過するようにワークW及びプッシャ98の外径以上の内径を持つ円筒状をなす。
図4に示すように、第2の主軸71にワークWが把持された状態で、そのワークWの+Z方向の端部が、ワーク排出用パイプ78の−Z方向の端部内に位置している。また、ワーク排出用パイプ78における+Z方向の排出端部78oは、ワークWを排出する際、ワーク受け箱80の上方に位置する。
【0028】
ワーク回転用モータ73は、第2の主軸台72内における第2の主軸71の外周に位置する。このワーク回転用モータ73は、第2の主軸71及び第2の主軸71に把持されるワークWを一体で軸回転させる。
【0029】
図1に示すように、第2の工具ユニット20は、第2の主軸ユニット70により把持及び軸回転されるワークWを加工するために利用される。第2の工具ユニット20は、ベッドS上に固定された背面刃物台21と、背面刃物台21に保持される工具群22と、を備える。背面刃物台21は角柱状に形成されている。工具群22はバイト又はドリルから構成されている。工具群22は、背面刃物台21における+Z方向を向く後面に設けられている。工具群22の先端は+Z方向に向けて突出する。
なお、背面刃物台21は、工具群22の各工具を固定的に保持してもよいし、工具群22の各工具を軸回転させる図示しないモータを備えていてもよい。
【0030】
図1に示すように、ワーク後方排出装置90は、本例では、第1の主軸ユニット10及び第2の工具ユニット20の作業者Aに近いサイド(
図1の下方向のサイド)においてZ方向に延びるように配置される。
詳しくは、ワーク後方排出装置90は、
図3に示すように、一対のプーリ92a,92b及びベルト92cからなる変換機構92と、直線可動部93と、ホルダ94と、プッシャガイド部95と、ブラケット96と、プッシャスリーブ97と、プッシャ98と、
図1に示すように、動力源の一例であるサーボモータ91と、プッシャ検出センサ99と、を備える。
なお、制御部300におけるワーク後方排出装置90の制御に係る部分は、ワーク後方排出装置90の一部を構成してもよい。
【0031】
図3に示すように、各プーリ92a,92bは、例えば、平歯車から構成される。また、一対のプーリ92a,92bは、Z方向に沿って配列されている。一対のプーリ92a,92b間の距離は、ワークWの排出に必要となるプッシャ98の移動距離に応じて設定される。プーリ92aは第2の工具ユニット20から遠い位置に設けられ、プーリ92bは第2の工具ユニット20に近い位置に設けられている。
【0032】
ベルト92cは、その内周に各プーリ92a,92bに噛み合う歯が形成される円環状に形成されている。ベルト92cは、一対のプーリ92a,92b間に掛け渡され、一対のプーリ92a,92b間で回転力を伝達可能に構成されている。
【0033】
図3に示すように、直線可動部93は、プッシャ98及びベルト92cとともに一対のプーリ92a,92b間を直線的に移動する。詳しくは、直線可動部93は、ベルト92cに固定されるテーブル93aと、プッシャ98における−Z方向の端部を保持するホルダ93bと、を備える。テーブル93aは、一対のプーリ92a,92b間で平行に延びるベルト92cの2辺のうち上側の辺(ベッドSから遠い辺)の一部に固定されている。ホルダ93bは、テーブル93aの上側に固定されている。ホルダ93bには、+Z方向に向けて開口する挿入穴93cが形成されている。この挿入穴93cには、プッシャ98における−Z方向の端部が挿入されている。また、ホルダ93bの上面には、挿入穴93cに連通するねじ孔93dが形成され、そのねじ孔93dには図示しないねじが螺合されている。このねじは、その先端でプッシャ98の端部を挿入穴93c内に固定する。
【0034】
図4に示すように、プッシャスリーブ97は、Z方向に延びる貫通孔97aを有する略長方形柱状をなす。プッシャスリーブ97の上面には、貫通孔97aに連通するねじ孔97bが形成されている。プッシャスリーブ97は、ブラケット96を介して背面刃物台21に固定されている。プッシャスリーブ97の先端は、第2の主軸71のチャック71aと同一の高さに位置する。
図1に示すように、ブラケット96は、板状に形成され、背面刃物台21における作業者A側の側面21aに固定されている。
図1の平面視において、プッシャスリーブ97は、工具群22と並ぶように位置するとともに、ベルト92cよりもX方向において第1の主軸11に近い位置にある。
【0035】
図3に示すように、ホルダ94は、ベッドSの上面に固定される角柱状に形成され、高さはプッシャスリーブ97よりも低い。ホルダ94は、ベルト92cよりも+Z方向に位置している。ホルダ94には、Z方向に沿って延びる貫通孔94aが形成されている。ホルダ94の上面には、貫通孔94aに連通するねじ孔94bが形成されている。
図1に示すように、ホルダ94はプッシャスリーブ97よりもX方向における作業者A側(
図1中の下側)に位置する。
【0036】
図3に示すように、プッシャガイド部95は、その長手方向に沿って湾曲した円筒状に形成されている。プッシャガイド部95の−Z方向の端部は、ホルダ94の貫通孔94aに挿通されている。このプッシャガイド部95の端部は、ホルダ94の貫通孔94a内で、ねじ孔94bに挿通される図示しないねじにより固定されている。
プッシャガイド部95の+Z方向側の端部は、プッシャスリーブ97の貫通孔97aに挿通されている。このプッシャガイド部95の端部は、プッシャスリーブ97の貫通孔97a内で、ねじ孔97bに挿通される図示しないねじにより固定されている。
【0037】
詳しくは、
図1及び
図3に示すように、プッシャガイド部95は、プッシャスリーブ97とホルダ94との間を連結するとともに、プッシャガイド部95の内部にてプッシャ98をガイドする。本例では、プッシャガイド部95は、その両端側に形成される2つの直線部95a,95bと、2つの直線部95a,95b間を連結する連結部95cと、を備える。連結部95cは、
図3に示すように正面視において、+Z方向に向かうにつれてベッドSから離れる方向に延び、
図1に示すように平面視において+Z方向に向かうにつれて第2の工具ユニット20に接近する方向に延びる。連結部95cは、各直線部95a,95bとの接続部分において、プッシャ98をガイド可能な曲率を持つ湾曲部95dを有する。この曲率は、例えば、プッシャ98の可撓性等に応じて設定される。
【0038】
プッシャ98は、可撓性を有する棒状に形成されるフレキシブルシャフトである。プッシャ98は、例えば、鋼線を右巻き及び左巻きに交互に巻かれることで構成される。プッシャ98は、プッシャガイド部95内に挿通されることでガイドされる。
図3に示すように、プッシャ98の−Z方向の端部は直線可動部93に固定される。プッシャ98の先端(プッシャ98の+Z方向の端部)は、プッシャ98の移動に伴い、第2の主軸71により支持される加工完了後のワークWを後方(+Z方向)に押すように機能する。
【0039】
図3に示すように、直線可動部93が最もプッシャスリーブ97から離れて位置する場合、プッシャ98の先端はプッシャスリーブ97内に位置する。また、直線可動部93が最もプッシャスリーブ97に接近して位置する場合、
図5に示すように、プッシャ98の先端は、ワーク排出用パイプ78の排出端部78oに対応して位置する。
【0040】
図1に示すように、プッシャ検出センサ99は、プッシャスリーブ97の側面に設けられている。このプッシャスリーブ97の側面は、本例では、背面刃物台21と反対側の側面である。
詳しくは、プッシャ検出センサ99は、ニードル99aと、ニードル99aをその一端を中心に回転させる回転部99bと、を備える。回転部99bは、例えばモータにより構成され、制御部300による制御のもと、Z方向に沿う回転中心に沿ってニードル99aを回転させる。ニードル99aは、回転中において、プッシャスリーブ97の先端側におけるプッシャ98の進路を通過する。
【0041】
例えば、プッシャ98がプッシャスリーブ97の先端から第2の主軸ユニット70側に突出していない場合、ニードル99aの回転はプッシャ98に阻害されない。ニードル99aの回転中においては、回転部99bに流れる電流が閾値未満となる。一方、プッシャ98がプッシャスリーブ97の先端から第2の主軸ユニット70側に突出している場合、そのプッシャ98に回転中のニードル99aが接触する。これにより、ニードル99aの回転が停止し、回転部99bに流れる電流が閾値以上となる。制御部300は、回転部99bに流れる電流が閾値以上となるか否かを通じて、ニードル99aの回転又は停止、ひいては、プッシャ98がプッシャスリーブ97の先端から突出しているか否かを判別する。
【0042】
サーボモータ91は、制御部300による制御のもとで、プーリ92aを回転させることで、ベルト92c、直線可動部93、ひいてはプッシャ98を直線的に移動させる。これにより、
図3に示すように、プッシャ98の先端は、プッシャスリーブ97の先端に対応する第1の位置Paとワーク排出用パイプ78の排出端部78oに対応する第2の位置Pbとの間で移動する。
なお、
図5の例では、第2の位置Pbは、ワーク排出用パイプ78の排出端部78oの端面に一致する位置にあるが、第2の位置Pbは、プッシャ98の先端が到達したとき、ワークWを排出できる位置であれば、いずれの位置であってもよい。例えば、第2の位置Pbは、排出端部78oの端面よりも−Z方向に位置していてもよいし、排出端部78oの端面よりも+Z方向に位置していてもよい。
【0043】
制御部300は、工作機械1の各部の動作を制御するものであり、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、CPUによる処理の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等を備える。制御部300は、数値制御(NC(Numerical Control))によって、第1の主軸ユニット10をZ方向に移動させ、工具移動機構40をX方向及びY方向に移動させ、第2の主軸ユニット70をX方向及びZ方向に移動させ、ワーク後方排出装置90のプッシャ98をZ方向に移動させる。
【0044】
制御部300は、第1の位置Paから第2の位置Pbまでのプッシャ98の移動速度をワークWの種類に応じて変化させてもよい。例えば、作業者Aは、図示しない操作部への操作によりワークWの種類を設定する。ワークWの種類によって、ワークWの形状、寸法、材質等が異なる。制御部300は、設定されたワークWの種類に応じて、最も適したプッシャ98の移動速度を設定し、設定した移動速度でプッシャ98を移動させる。
例えば、制御部300は、ワークWが軽くなるほど、プッシャ98の移動速度を遅くする。これにより、ワークWを確実にワーク受け箱80内に収めることができる。
なお、プッシャ98を第2の位置Pbから第1の位置Paまで移動させる際の移動速度は、プッシャ98を第1の位置Paから第2の位置Pbまで移動させる際の移動速度と同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
(工作機械1の動作手順)
次に、工作機械1の動作手順について
図6のフローチャートを参照しつつ説明する。このフローチャートは、制御部300に記憶されるプログラムに基づき制御部300によって実行される。
【0046】
まず、第1の主軸ユニット10は、図示しないバーフィーダから供給されたワークWを加工する(ステップS101)。具体的には、制御部300は、ワークWを把持する第1の主軸11を軸回転させつつ、Y軸移動部43及びX軸移動部42を介して工具群55aをワークWの前面側に接触するように移動させる。これにより、ワークWの前面側が切削される。
【0047】
次に、第2の主軸ユニット70は、そのチャック71aが第1の主軸11のチャック11aにZ方向に対向する位置に移動し、第1の主軸ユニット10による加工が完了したワークWを第1の主軸ユニット10から受け取る(ステップS102)。そして、第2の主軸ユニット70は、第2Z軸スライド機構175及びX軸スライド機構176により、第2の主軸ユニット70が保持するワークWを第2の工具ユニット20の工具群22の何れかの工具に接触する位置まで移動させる。その後、第2の主軸ユニット70は、ワーク回転用モータ73の駆動を通じてワークWを把持する第2の主軸71を回転させることで、ワークWの背面側を加工する(ステップS103)。
【0048】
次に、第2の主軸ユニット70は、第2Z軸スライド機構175及びX軸スライド機構176により、ワーク後方排出装置90のプッシャスリーブ97に対向する位置まで移動する(ステップS104)。
図1を参照しつつ上述したように、プッシャスリーブ97は第2の工具ユニット20に固定されているため、ワークWの加工後の第2の主軸ユニット70の移動距離を低減させることができ、ひいてはワークWの製造に要する時間を短縮することができる。
【0049】
そして、ワーク後方排出装置90は、制御部300による制御のもとで、サーボモータ91が駆動することで、プッシャ98の先端を第1の位置Paから第2の位置Pbに移動させる(ステップS105)。この際、制御部300は、第2の主軸ユニット70のチャック71aを加工完了後のワークWを把持しない状態に切り替える。これにより、加工完了後のワークWは、プッシャ98により後方(+Z方向)に押し出され、ワーク排出用パイプ78の排出端部78oからワーク受け箱80に排出される。
最後に、ワーク後方排出装置90は、プッシャ98の先端を第2の位置Pbから第1の位置Paに戻し(ステップS106)、当該フローチャートに係る処理を終了する。
【0050】
上記フローチャートが繰り返し実行されることで、複数のワークWが連続的に加工される。なお、上記フローチャートに係る処理は、適宜、同時に行われてもよい。例えば、上記ステップS103〜S106の処理と同時に、次のワークWについて上記ステップS101の処理が行われてもよい。
【0051】
上記ステップS105,S106において、制御部300は、プッシャ検出センサ99の検出結果に基づき、本例では回転部99bに流れる電流が閾値以上となるか否かに基づき、プッシャ98の先端がプッシャスリーブ97から突出しているか否かを判別する。
例えば、制御部300は、ステップS105の処理の後、プッシャ検出センサ99の検出結果に基づきプッシャ98の先端がプッシャスリーブ97から突出していない旨判別したとき、図示しないディスプレイ又はスピーカーなどを通じて、異常が生じている旨警告を行ってもよい。また、制御部300は、ステップS106の処理の後、プッシャ検出センサ99の検出結果に基づきプッシャ98の先端がプッシャスリーブ97から突出している旨判別したとき、上記同様に警告を行ってもよい。
また、例えば、制御部300は、ステップS105の処理の後、プッシャ検出センサ99の検出結果に基づきプッシャ98の先端がプッシャスリーブ97から突出していることを条件に、次のステップS106の処理に移行してもよい。また、制御部300は、ステップS106の処理の後、プッシャ検出センサ99の検出結果に基づきプッシャ98の先端がプッシャスリーブ97から突出していないことを条件に、当該フローチャートに係る処理を終了してもよい。
【0052】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0053】
(1)ワーク後方排出装置90は、第2の主軸71の前方(−Z方向)にて第2の主軸71に支持されるワークWを後方(+Z方向)へ移動させることで、ワークWを第2の主軸71の外部へ排出する。ワーク後方排出装置90は、動力源の一例であるサーボモータ91と、サーボモータ91からの動力を受けて直線的に移動し、当該移動に伴いワークWを後方に押すことでワークWを第2の主軸71から排出するプッシャ98と、を備える。
この構成によれば、ワーク後方排出装置90によって、第2の主軸71から外部へワークWが排出される。よって、加工完了後のワークWが第2の主軸71に残ることがない。これにより、加工完了後のワークの品質の低下を抑制できる。具体的には、加工完了後のワークWが第2の主軸71とともに軸回転することがない。このため、加工完了後のワークWに傷がついたり、変形したりして品質に影響が出ることが防止される。また、ワークWを加工しているとき、加工中のワークWが加工完了後のワークWと接触することがなく、加工しているワークWの品質に影響がでることが抑制される。
また、上記構成によれば、第2の主軸71内において複数のワークWの端部同士が重なることがないため、複数のワークW間に作用するいわゆる楔効果によってワークWの排出が困難となることが抑制される。
また、上記構成によれば、加工完了後のワークWを即座に第2の主軸71から取り出すことができる。よって、ワークW毎における加工完了からワークWの排出までの時間のばらつきを低減することができる。また、1つのワークWを加工する場合でも、容易に第2の主軸71からワークWを取り出すことができる。
さらに、ワーク後方排出装置90は第2の主軸71の後方にワークWを排出できるため、ワークWの長さが長い場合でも、ワークWを円滑に排出することができる。
【0054】
(2)ワーク後方排出装置90は、プッシャ98が内在した状態でプッシャ98の移動を案内するプッシャガイド部95を備える。このプッシャガイド部95は長手方向に沿って湾曲する複数の湾曲部95dを有する。プッシャ98は、湾曲部95dに沿って湾曲する可撓性を有するフレキシブルシャフトである。
この構成によれば、プッシャ98及びサーボモータ91等、ひいてはワーク後方排出装置90の設置位置の自由度が高まる。
【0055】
(3)プッシャガイド部95の両端のうちプッシャ98がワークWを押す際に第2の主軸71に対向するプッシャガイド部95の端部は、工具群22を保持する背面刃物台21に固定される。
この構成によれば、ワークWの加工完了からワークWを排出するまでの第2の主軸ユニット70の移動距離を低減させることができ、ひいてはワークWの製造に要する時間を短縮することができる。
【0056】
(4)ワーク後方排出装置90は、サーボモータ91の回転運動を直線運動に変換し、直線運動をプッシャ98に伝達する変換機構92と、サーボモータ91を通じてプッシャ98の位置を制御する制御部300と、を備える。
この構成によれば、サーボモータ91を用いることで、プッシャ98を任意の位置に移動させることができる。また、ワークWの長さが違うものに対してセットアップの変更が容易となる。
【0057】
(5)制御部300は、ワークWの種類に応じて、ワークWを排出する際のプッシャ98の移動速度を設定し、ワークWを排出する際、設定した移動速度にてプッシャ98を移動させる。
この構成によれば、ワークWの種類に関わらず、ワークWを確実にワーク受け箱80内に収めることができる。
【0058】
(6)ワーク後方排出装置90は、プッシャ98の位置を検出するプッシャ検出センサ99を備える。この構成によれば、ワーク後方排出装置90は、プッシャ98が適切に動作しているか否かを確認することができ、例えば、プッシャ98が適切に動作していない場合には、工作機械1の動作を停止することやその旨を作業者Aに警告することができる。
【0059】
(7)工作機械1は、ワーク後方排出装置90と、第2の主軸71と、を備える。この構成によれば、上記(1)に記載のように、加工完了後のワークの品質の低下を抑制できる。
【0060】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0061】
上記実施形態では、工作機械1は、第1及び第2の主軸ユニット10,70を備えていたが、何れかのユニットを省略して、1つの主軸ユニットを備えていてもよい。この場合、ワーク後方排出装置90は、当該1つの主軸ユニットに支持されるワークWを排出する。
【0062】
上記実施形態においては、プッシャ98を移動させる動力源としてサーボモータ91が用いられていたが、サーボモータ以外のモータ、例えばステッピングモータが用いられていてもよい。
【0063】
上記実施形態においては、変換機構92は、一対のプーリ92a,92b及びベルト92cから構成されていたが、これに限らず、回転運動を直線運動に変換する公知の機構であれば適応可能である。例えば、変換機構92は、サーボモータ91により軸回転するボールねじと、このボールねじに螺合し、このボールねじの軸回転に伴い直線運動するボールねじナットと、を備えていてもよく、これらボールねじ及びボールねじナットにより回転運動を直線運動に変換してもよい。また、変換機構92は、ラック&ピニオン機構から構成されてもよい。
さらに、ワーク後方排出装置90は、サーボモータ91に代えて、油圧、空圧等の流体シリンダ又は磁気型アクチュエーターを用い、これらによりプッシャ98を直線運動させてもよい。この場合、回転運動を直線運動に変換する変換機構92は不要となる。
【0064】
上記実施形態におけるプッシャガイド部95の形状は適宜変更可能である。例えば、
図7に示すように、プッシャガイド部195は、第2の主軸ユニット70の側方に向けてU字状に形成されてもよい。この側方は、例えば、第2の主軸ユニット70の作業者A側の側方である。この場合、サーボモータ91等を第2の主軸ユニット70の側方に配置することができる。
【0065】
上記実施形態におけるプッシャ検出センサ99の構成は適宜変更可能である。例えば、プッシャ検出センサ99は、磁気センサ、光センサ、超音波センサ等であってもよい。また、プッシャ検出センサ99は、上記実施形態における位置に限らず、例えば、ワーク排出用パイプ78の内部に設けられていてもよい。また、プッシャ検出センサ99は、複数の位置に設けられていてもよい。
【0066】
上記実施形態においては、制御部300は、ワークWの種類に応じて、第1の位置Paから第2の位置Pbまでのプッシャ98の移動速度を調整していたが、ワークWの種類に関わらず移動速度を一定としてもよい。
また、制御部300は、第1の位置Paから第2の位置Pbまでのプッシャ98の移動中に移動速度を変化させてもよい。例えば、制御部300は、第2の位置Pbに近づくにつれてプッシャ98の移動速度を遅くしてもよい。これにより、ワークWを確実にワーク受け箱80内に収めることができる。同様に、制御部300は、第2の位置Pbから第1の位置Paまでのプッシャ98の移動速度を移動中に変えてもよい。
【0067】
上記実施形態においては、ワーク後方排出装置90は、工作機械1に予め組み込まれていたが、ワーク後方排出装置90は既存の工作機械に後付け可能に構成されてもよい。
【0068】
上記実施形態においては、ワーク後方排出装置90は、プッシャ98を介してワークWを排出することで、直接にワークWをワーク受け箱80に収容していた。しかし、工作機械1は、新たにワーク後方排出装置90から排出されたワークWを把持するロボットアームを備え、このロボットアームは、把持したワークWをワーク受け箱80に対応する位置まで移動させ、その位置でワークWを離してもよい。
【0069】
上記実施形態におけるワーク受け箱80に代えて、加工完了後のワークWを工作機械1の外部に搬送するベルトコンベアを設けてもよい。
【0070】
上記実施形態においては、プッシャガイド部95は湾曲していたが、直線状に形成されていてもよい。プッシャガイド部95が直線状に形成される場合、プッシャ98は剛体であってもよい。また、プッシャ98が剛体の場合、プッシャガイド部95は省略されてもよい。
また、上記実施形態においては、プッシャガイド部95は、
図3に示すように正面視においても湾曲していたが、この正面視において直線状に形成され、かつ
図1に示すように平面視において湾曲して形成されてもよい。この場合、ホルダ94は、プッシャガイド部95の端部をプッシャスリーブ97と同一の高さにて保持し、直線可動部93もプッシャスリーブ97と同一の高さになるようにサーボモータ91、一対のプーリ92a,92b及びベルト92cを配置する。同様に、プッシャガイド部95は、
図3に示すように正面視において湾曲し、平面視において直線状に形成されてもよい。
【0071】
上記実施形態においては、プッシャ98は、鋼線を右巻き及び左巻きに交互に巻かれることで構成されるフレキシブルシャフトであったが、フレキシブルシャフトは、この構成に限らず、例えば、可撓性を有する樹脂等であってもよい。
【0072】
上記実施形態においては、プッシャガイド部95の先端は、プッシャスリーブ97及びブラケット96を介して背面刃物台21に固定されていたが、プッシャスリーブ97及びブラケット96を介さず直接に背面刃物台21に固定されてもよい。
【0073】
上記実施形態においては、ワーク後方排出装置90は、ベッドSに対して固定されていたが、X方向、Y方向及びZ方向の少なくとも何れかに移動可能に構成されてもよい。この場合、第1Z軸スライド機構15、第2Z軸スライド機構175及びX軸スライド機構176と同様の構成が採用されてもよい。