特許第6831735号(P6831735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831735
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20210208BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20210208BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 J
   !H01M8/10
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-67752(P2017-67752)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-170197(P2018-170197A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】秋田 達也
(72)【発明者】
【氏名】桝本 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】指原 和秀
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/080958(WO,A1)
【文献】 特開2003−243007(JP,A)
【文献】 特開2006−210118(JP,A)
【文献】 特開2007−087779(JP,A)
【文献】 特開2006−054184(JP,A)
【文献】 特表2003−515912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルが積層されたセルスタックと、前記セルスタックに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段と、前記セルスタックに空気を供給するための空気供給手段と、前記セルスタックを通して冷却水を循環するための冷却水循環手段と、を備えており、
前記セルスタックには、前記燃料ガス供給手段に関連して燃料ガスが流入する燃料ガス流入口及び燃料ガスが流出する燃料ガス流出口が上下に設けられ、前記セルスタックの前記燃料ガス流入口及び前記燃料ガス流出口には燃料ガス流入管及び燃料ガス流出管が接続され、前記セルスタックには、前記空気供給手段に関連して空気が流入する空気流入口及び空気が流出する空気流出口が上下に設けられ、前記セルスタックの前記空気流入口及び前記空気流出口には空気流入管及び空気流出管が接続され、また前記セルスタックには、前記冷却水循環手段に関連して冷却水が流入する冷却水流入口及び冷却水が流出する冷却水流出口が上下に設けられ、前記セルスタックの前記冷却水流入口及び前記冷却水流出口には冷却水流入管及び冷却水流出管が接続され、更に前記セルスタックは上下反転可能に構成されており、
前記セルスタックに燃料ガスの部分的欠乏による局所的な劣化が生じた場合、前記セルスタックが上下に反転され、上下反転された状態において、前記セルスタックの前記燃料ガス流入口及び前記燃料ガス流出口に前記燃料ガス流出管及び前記燃料ガス流入管が接続され、前記セルスタックの前記空気流入口及び前記空気流出口に前記空気流出管及び前記空気流入管が接続され、また前記セルスタックの前記冷却水流入口及び前記冷却水流出口に前記冷却水流出管及び前記冷却水流出入管が接続されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
複数の燃料電池セルが積層されたセルスタックと、前記セルスタックに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段と、前記セルスタックに空気を供給するための空気供給手段と、前記セルスタックを通して冷却水を循環するための冷却水循環手段と、を備えており、
前記セルスタックには、前記燃料ガス供給手段に関連して燃料ガスが流入する燃料ガス流入口及び燃料ガスが流出する燃料ガス流出口が左右に設けられ、前記セルスタックの前記燃料ガス流入口及び前記燃料ガス流出口には燃料ガス流入管及び燃料ガス流出管が接続され、前記セルスタックには、前記空気供給手段に関連して空気が流入する空気流入口及び空気が流出する空気流出口が左右に設けられ、前記セルスタックの前記空気流入口及び前記空気流出口には空気流入管及び空気流出管が接続され、また前記セルスタックには、前記冷却水循環手段に関連して冷却水が流入する冷却水流入口及び冷却水が流出する冷却水流出口が左右に設けられ、前記セルスタックの前記冷却水流入口及び前記冷却水流出口には冷却水流入管及び冷却水流出管が接続され、更に前記セルスタックは左右反転可能に構成されており、
前記セルスタックに燃料ガスの部分的欠乏による局所的な劣化が生じた場合、前記セルスタックが左右に反転され、左右反転された状態において、前記セルスタックの前記燃料ガス流入口及び前記燃料ガス流出口に前記燃料ガス流出管及び前記燃料ガス流入管が接続され、前記セルスタックの前記空気流入口及び前記空気流出口に前記空気流出管及び前記空気流入管が接続され、また前記セルスタックの前記冷却水流入口及び前記冷却水流出口に前記冷却水流出管及び前記冷却水流入管が接続されることを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料電池セルを積層したセルスタックを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、燃料極と酸素極との間に介在される電解質膜として固体高分子電解質膜を用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池システムは、複数の燃料電池セルが積層されたセルスタックを備え、このセルスタックの燃料極側に例えば水蒸気改質された改質燃料ガスが送給され、その酸素極側に空気が供給され、このセルスタックの燃料極側及び空気極側における酸化及び還元により発電が行われる。
【0003】
また、セルスタックに関連して、セルスタックからの排熱を温水として貯湯するための貯湯装置が設けられている。セルスタックの冷却水循環流路には熱交換器が配設され、また貯湯装置は、温水を貯える貯湯タンクと、この貯湯タンク内の水を熱交換器を通して貯湯タンク内に戻す循環流路とを備え、セルスタック及び冷却水循環流路を通して流れる冷却水と貯湯タンクから循環流路を通して流れる水とが熱交換器で熱交換され、熱交換にて加温された温水が貯湯タンクに貯えられる。
【0004】
このような燃料電池システムでは、セルスタックへの燃料ガスの供給に関連して、またセルスタックを通しての冷却水に関連して、次のような問題が生じるおそれがある。第1に、燃料ガスには水分が含まれており、この燃料ガスがセルスタックの燃料極側に供給された際に、燃料ガス中の水分が結露してセルスタックの燃料ガス流路を塞ぐおそれがある。この水分による燃料ガス流路の一部閉塞が生じると、セルスタックへの燃料ガスの供給不足が生じ、この燃料ガスの供給不足に起因してセルスタックの一部(例えば、改質燃料ガスの流入部近傍など)に局部的劣化が進行するおそれがある。
【0005】
第2に、セルスタックを冷却する冷却水には、循環流路を通しての循環中に空気が混入することがあり、混入空気を含む冷却水がセルスタックを通して流れる際に、空気が滞留しセルスタックの一部(例えば、冷却水の流入部近傍、流出部近傍など)に冷却水の循環不良が発生して局部的に温度上昇が生じ、この温度上昇に起因してセルスタックの局部的劣化が進行するおそれがある。
【0006】
そこで、燃料電池システムのセルスタックを複数のセルユニットから構成したものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この燃料電池システムでは、セルスタックに局部的劣化が生じると、劣化したセルユニットが新しいものと交換され、このように交換することにより、セルスタックが元の状態に戻って発電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−196764号公報
【特許文献2】特開2003−109645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の燃料電池システムでは、劣化したセルユニットの一部を交換する構成であり、それ故に、その交換作業が煩雑であるという問題がある。加えて、セルスタックと別個に、このセルスタックの一部を構成するセルユニット(交換用のもの)を製作して交換用として保管しなければならず、またこのセルスタックを複数種のセルユニットから構成した場合に、これら複数種のセルユニットを保管しなければならない。
【0009】
本発明の目的は、燃料ガスの供給に関連して発生するセルスタックの局部的劣化を分散させて長期にわたって稼働運転することができる燃料電池システムを提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、冷却水の循環に関連して発生するセルスタックの局部的劣化を分散させて長期にわたって稼働運転することができる燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムは、複数の燃料電池セルが積層されたセルスタックと、前記セルスタックに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段と、前記セルスタックに空気を供給するための空気供給手段と、前記セルスタックを通して冷却水を循環するための冷却水循環手段と、を備えており、
前記セルスタックには、前記燃料ガス供給手段に関連して燃料ガスが流入する燃料ガス流入口及び燃料ガスが流出する燃料ガス流出口が上下に設けられ、前記セルスタックの前記燃料ガス流入口及び前記燃料ガス流出口には燃料ガス流入管及び燃料ガス流出管が接続され、前記セルスタックには、前記空気供給手段に関連して空気が流入する空気流入口及び空気が流出する空気流出口が上下に設けられ、前記セルスタックの前記空気流入口及び前記空気流出口には空気流入管及び空気流出管が接続され、また前記セルスタックには、前記冷却水循環手段に関連して冷却水が流入する冷却水流入口及び冷却水が流出する冷却水流出口が上下に設けられ、前記セルスタックの前記冷却水流入口及び前記冷却水流出口には冷却水流入管及び冷却水流出管が接続され、更に前記セルスタックは上下反転可能に構成されており、
前記セルスタックに燃料ガスの部分的欠乏による局所的な劣化が生じた場合、前記セルスタックが上下に反転され、上下反転された状態において、前記セルスタックの前記燃料ガス流入口及び前記燃料ガス流出口に前記燃料ガス流出管及び前記燃料ガス流入管が接続され、前記セルスタックの前記空気流入口及び前記空気流出口に前記空気流出管及び前記空気流入管が接続され、また前記セルスタックの前記冷却水流入口及び前記冷却水流出口に前記冷却水流出管及び前記冷却水流出入管が接続されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の燃料電池システムは、複数の燃料電池セルが積層されたセルスタックと、前記セルスタックに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段と、前記セルスタックに空気を供給するための空気供給手段と、前記セルスタックを通して冷却水を循環するための冷却水循環手段と、を備えており、
前記セルスタックには、前記燃料ガス供給手段に関連して燃料ガスが流入する燃料ガス流入口及び燃料ガスが流出する燃料ガス流出口が左右に設けられ、前記セルスタックの前記燃料ガス流入口及び前記燃料ガス流出口には燃料ガス流入管及び燃料ガス流出管が接続され、前記セルスタックには、前記空気供給手段に関連して空気が流入する空気流入口及び空気が流出する空気流出口が左右に設けられ、前記セルスタックの前記空気流入口及び前記空気流出口には空気流入管及び空気流出管が接続され、また前記セルスタックには、前記冷却水循環手段に関連して冷却水が流入する冷却水流入口及び冷却水が流出する冷却水流出口が左右に設けられ、前記セルスタックの前記冷却水流入口及び前記冷却水流出口には冷却水流入管及び冷却水流出管が接続され、更に前記セルスタックは左右反転可能に構成されており、
前記セルスタックに燃料ガスの部分的欠乏による局所的な劣化が生じた場合、前記セルスタックが左右に反転され、左右反転された状態において、前記セルスタックの前記燃料ガス流入口及び前記燃料ガス流出口に前記燃料ガス流出管及び前記燃料ガス流入管が接続され、前記セルスタックの前記空気流入口及び前記空気流出口に前記空気流出管及び前記空気流入管が接続され、また前記セルスタックの前記冷却水流入口及び前記冷却水流出口に前記冷却水流出管及び前記冷却水流入管が接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムによれば、燃料ガス供給手段に関連してセルスタックには燃料ガス流入口及び燃料ガス流出口が上下に設けられ、空気供給手段に関連してセルスタックには空気流入口及び空気流出口が上下に設けられ、また冷却水循環手段に関連してセルスタックには冷却水流入口及び冷却水流出口が上下に設けられ、セルスタックが上下反転可能に構成されている。そして、セルスタックに燃料ガスの部分的欠乏による局所的な劣化が生じた場合、セルスタックが上下に反転され、燃料ガス流入管が燃料ガス流入口から燃料ガス流出口に、燃料ガス流出管が燃料ガス流出口から燃料ガス流入口に接続され、また空気流入管が空気流入口から空気流出口に、空気流出管が空気流出口から空気流入口に接続され、また冷却水流入管が冷却水流入口から冷却水流出口に、冷却水流出管が冷却水流出口から冷却水流入口に接続され、このように接続状態が切り替えられるので、燃料ガスがセルスタックの部分的劣化の少ない燃料ガス流出側から流入されるとともに、空気がセルスタックの空気流出側から流入され、また冷却水がセルスタックの冷却水流出側から流入され、これによって、燃料ガスの供給に関連してセルスタックに生じる局部的劣化を分散させてセルスタックの劣化の均一化を図ることができ、その結果、システムの長期にわたる稼働運転が可能となる。
また、セルスタックは上下反転可能に構成されているので、セルスタックを上下反転させることにより、燃料ガス流入管及び燃料ガス流出管を燃料ガス流出口及び燃料ガス流入口に、空気流入管及び空気流出管を空気流出口及び空気流入口に、また冷却水流入管及び冷却水流出管を冷却水流出口及び冷却水流入口にそれぞれ容易に且つ誤接続なく接続することができる。
【0022】
また、本発明の請求項2に記載の燃料電池システムによれば、セルスタックの燃料ガス流入口及び燃料ガス流出口が左右に設けられ、セルスタックの空気流入口及び空気流出口が左右に設けられ、またセルスタックの冷却水流入口及び冷却水流出口が左右に設けられ、このセルスタックが左右反転可能に構成されている。そして、セルスタックに燃料ガスの部分的欠乏による局所的な劣化が生じた場合、セルスタックが左右に反転され、燃料ガス流入管が燃料ガス流入口から燃料ガス流出口に、燃料ガス流出管が燃料ガス流出口から燃料ガス流入口に接続され、また空気流入管が空気流入口から空気流出口に、空気流出管が空気流出口から空気流入口に接続され、また冷却水流入管が冷却水流入口から冷却水流出口に、冷却水流出管が冷却水流出口から冷却水流入口に接続され、このように接続状態が切り替えられるので、燃料ガスがセルスタックの部分的劣化の少ない燃料ガス流出側から流入されるとともに、空気がセルスタックの空気流出側から流入され、また冷却水がセルスタックの冷却水流出側から流入され、これによって、燃料ガスの供給に関連してセルスタックに生じる局部的劣化を分散させてセルスタックの劣化の均一化を図ることができる。
また、セルスタックは左右反転可能に構成されているので、セルスタックを左右反転させることにより、燃料ガス流入管及び燃料ガス流出管を燃料ガス流出口及び燃料ガス流入口に、空気流入管及び空気流出管を空気流出口及び空気流入口に、また冷却水流入管及び冷却水流出管を冷却水流出口及び冷却水流入口にそれぞれ容易に且つ誤接続なく接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に従う燃料電池システムの一実施形態を簡略的に示す簡略図。
図2図2(a)は、図1の燃料電池システムの燃料電池セルを分解して示す分解斜視図、図2(b)は、この燃料電池システムのセルスタックの一部を分解して示す分解斜視図。
図3図1の燃料電池システムのスタックユニットを示す正面図。
図4図3のスタックユニットにおいて燃料ガス導入管の接続状態の切替えを説明するための斜視図。
図5図4に示す燃料ガス導入管の接続状態の切替えを説明するための側面図。
図6】スタックユニットの第1の変形形態を示す正面図。
図7図5のスタックユニットを上下反転させた状態を示す正面図。
図8】スタックユニットの第2の変形形態を左上方から見た斜視図。
図9図7のセルスタックを左右反転させた状態を右上方から見た斜視図。
図10】燃料ガスの供給を切り替えるガス流路切替手段を第1ガス流路切替状態で示す簡略断面図。
図11図10のガス流路切替手段を第2ガス流路切替状態で示す断面図。
図12】ガス流路切替手段の変形形態を第1ガス流路切替状態で示す簡略断面図。
図13図12のガス流路切替手段を第2ガス流路切替状態で示す簡略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う燃料電池システムの一実施形態について説明する。まず、図1図5を参照して、図示の燃料電池システムの一実施形態について説明する。図1及び図2において、この燃料電池システムは、発電を行うためのセルスタック2を備え、このセルスタック2は、複数の燃料電池セル4を所定方向(図2において左右方向)に積層して形成される。燃料電池セル4は、電解質膜として例えば固体高分子電解質膜6を用い、この固体高分子電解質膜6の片側(図1及び図2において左側)に燃料極8が設けられ、その他側(図1及び図2において右側)に空気極10(酸素極)が設けられている。また、燃料電池セル4の燃料極8側には、ガス流路12を通して流れる燃料ガスをこの燃料極8に導入する燃料極セパレータ(図示せず)が設けられ、また燃料電池セル4の空気極10側には、空気流路14(酸化材流路)を流れる空気を空気極10に導入する空気極セパレータ(図示せず)が設けられている。このようなセルスタック2の構成は、固体高分子形燃料電池に用いられるものと同様の構成である。
【0033】
このセルスタック2の燃料極8の導入側は、燃料ガス流路16を介して改質器18に接続され、この改質器18は、原燃料ガス流路20を介して燃料ガス供給源22(例えば、埋設管、燃料ガスタンクなどから構成される)に接続される。原燃料ガス流路20にはガスブロア24が配設され、このガスブロア24により原燃料ガスが燃料ガス供給源22から原燃料ガス流路20を通して改質器18に供給され、原燃料ガス流路20、燃料ガス供給源22及びガスブロア24が、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段を構成する。また、燃料ガス流路16にはガス加湿器26が設けられている。
【0034】
このように構成されているので、燃料ガス供給源22からの原燃料ガスは、原燃料ガス流路20を通して改質器18に供給され、この改質器18にて改質された燃料ガス(「改質燃料ガス」とも称する)がガス加湿器26にて加湿された後に燃料ガス流路16を通してセルスタック2(複数の燃料電池セル4)の燃料極8側に送給される。
【0035】
セルスタック2の空気極10側は空気送給流路28を介して空気加湿器30に接続され、この空気加湿器30は、空気供給流路32を介して空気ブロア34に接続されている。このように構成されているので、空気ブロア34からの空気は、空気供給流路32を通して空気加湿器30に供給され、この空気加湿器30にて加湿された後に空気送給流路28を通してセルスタック2(複数の燃料電池セル4)の空気極10側に送給され、空気ブロア34及び空気供給流路32が、セルスタック2に空気を供給するための空気供給手段を構成する。
【0036】
セルスタック2(複数の燃料電池セル4)においては、燃料極8側における燃料ガスの酸化及び空気極10側における空気(酸素)の還元により発電が行われ、この発電により発生した発電電力は、出力ケーブル(図示せず)を介して例えばインバータ(図示せず)に出力される。
【0037】
セルスタック2の燃料極8側から排出された燃料ガス(「排燃料ガス」とも称する)は、排燃料ガス流路36を通して燃焼器38に送給され、その空気極10側から排出された排気ガスは、排気ガス排出流路39を通して外部に排出される。この燃焼器38は改質器18に付設され、空気供給流路32は燃焼空気流路40を通して燃焼器38に接続されている。また、燃焼器38には燃焼ガス排出流路42が接続され、この燃焼ガス排出流路42が排気ガス排出流路39に接続されている。
【0038】
このように構成されているので、セルスタック2からの排燃料ガスは、排燃料ガス流路36を通して燃焼器38に送給され、またこの燃焼器38には空気供給流路32を流れる空気の一部が燃焼空気流路40を通して燃焼器38に送給され、この燃焼器38にて排燃料ガスが燃焼される。この燃焼器38の燃焼による熱でもって改質器18が加熱され、燃焼により発生した熱は、改質器18での改質反応に利用される。この燃焼器38での燃焼排気ガスは、燃焼ガス排出流路42及び排気ガス排出流路39を通して外部に排出される。
【0039】
この実施形態では、セルスタック2からの排燃料ガスと空気ブロア34からの空気とが予め混合された後に燃焼器38に供給して燃焼させているが、排燃料ガスと空気とを別々に燃焼器38に供給して燃焼させるようにしてもよい。
【0040】
このセルスタック2には、更に、セルスタック2を冷却するための冷却水循環手段52が設けられている。図示の冷却水循環手段52は、セルスタック2を通して冷却水を循環する冷却水循環流路54を備え、この冷却水循環流路54に冷却水循環ポンプ56及び熱交換器58が配設されている。このように構成されているので、冷却水循環ポンプ56が作動すると、セルスタック2及び熱交換器58を通して冷却水が循環される。
【0041】
また、セルスタック2を流れる冷却水の熱を温水として回収するための貯湯装置58が設けられている。図示の貯湯装置58は、温水を貯えるための貯湯タンク60と、冷却水の熱を回収するために冷却水循環流路54に配設された熱交換器62と、貯湯タンク60内の水を熱交換器62を通して循環するための貯湯循環流路64とを備え、貯湯循環流路64(この形態では、熱交換器62より上流側部位)に貯湯循環ポンプ66が配設されている。
【0042】
このように構成されているので、貯湯循環ポンプ66が作動すると、貯湯タンク60の底部からの水が貯湯循環流路64の上流側部64aを通して熱交換器62に流れ、この熱交換器62において冷却水循環流路54を通して循環される冷却水との間で熱交換され、熱交換により加温された温水が貯湯循環流路64の下流側部64bを通して貯湯タンク60内の上端部に貯えられる。尚、この貯湯タンク60の底部には、貯湯タンク60内に水を供給するための水供給流路68が接続され、その上端部には、貯湯タンク60内の温水を出湯するための温水出湯流路70が接続されている。
【0043】
この燃料電池システムのセルスタック2に関連して、次のように構成されている。セルスタック2はスタックユニット72として構成され、このスタックユニット72のユニットハウジング73内にセルスタック2が収容されている。このユニットハウジング73の正面は、図3に示すように構成され、ユニットハウジング73の正面上端部に空気流入接続部74、冷却水流入接続部76及び燃料ガス流入接続部78が、図3において左から右に向けてこの順に配設されている。この空気流入接続部74には、空気送給流路28の下流側部を規定する空気流入管(図示せず)が接続され、この空気流入接続部74から流入した空気が空気流入口80を通してセルスタック2(複数の燃料電池セル4)の空気極10側に流れる。冷却水流入接続部76には、冷却水循環流路54の流入側部54aを規定する冷却水流入管(図示せず)が接続され、この冷却水流入接続部76から流入した冷却水が冷却水流入口82を通してセルスタック2の冷却流路(図示せず)に流れる。また、燃料ガス流入接続部78には、燃料ガス流路16の下流側部を規定する燃料ガス流入管85(図4及び図5参照)が接続され、燃料ガス流入接続部78から流入した燃料ガスが燃料ガス流入口84を通してセルスタック2の燃料極8側に流れる。
【0044】
このユニットハウジング73の正面下端部に燃料ガス流出接続部86、冷却水流出接続部88及び空気流出接続部84が、図3において左から右に向けてこの順に配設されている。燃料ガス流出接続部86には、排燃料ガス流路36の上流側部を規定する燃料ガス流出管(図示せず)が接続され、セルスタック2の燃料極8側から燃料ガス流出口92を通して流出した燃料ガス(排燃料ガス)は、燃料ガス流出接続部86を通して燃料ガス流出管に流出される。冷却水流出接続部88には、冷却水循環流路54の流出側部54bを規定する冷却水流出管(図示せず)が接続され、セルスタック2の冷却水流路から冷却水流出口94を通して流出した冷却水は、冷却水流出接続部88及び冷却水流出管を通して流出される。また、空気流出接続部90には、排気ガス排出流路39の上流側部を規定する燃料ガス流出管(図示せず)が接続され、セルスタック2の空気極10側から空気流出口96を通して流出した空気は、空気流出接続部90を通して排気ガスとして排気ガス排出流路39に流出する。尚、このユニットハウジング73の上壁には、セルスタック2からの発電電力を出力するための一対の出力端子100が設けられ、これらの出力端子100に出力ケーブル102が電気的に接続されている(図3においては、一方の出力端子及び出力ケーブルのみを示す)。
【0045】
燃料電池システムのセルスタック2においては、セルスタック2の燃料極8側に供給される燃料ガスが不足すると、セルスタック2に部分的劣化が生じ、この劣化により発電効率が低下する。このようなことから、この燃料電池システムでは、次のように構成してセルスタック2の劣化進行を抑えている。
【0046】
主として図3図5を参照して、燃料ガスの供給不良によるセルスタック2の部分的劣化は、セルスタック2の燃料極8の流入部及びその近傍に発生し易く、そのために、この燃料ガスに関連する連通状態(接続状態)を反転可能に構成されている。この実施形態では、ユニットハウジング73の燃料ガス流入接続部78に図4及び図5に一点鎖線で示すように接続されていた(換言すると、燃料ガス流入口84に連通されていた)燃料ガス流入管85が、この燃料ガス流入接続部78から外され、例えば矢印103で示すように回して移動された後に、図4及び図5に実線で示すようにユニットハウジング73の燃料ガス流出接続部86に接続される(換言すると、燃料ガス流出口92に連通される)。また、図示していないが、ユニットハウジング73の燃料ガス流出接続部86に接続されていた(換言すると、燃料ガス流出口92に連通されていた)燃料ガス流出管(図示せず)が、燃料ガス流入管85と略同様に、この燃料ガス流出接続部86から外された後に、ユニットハウジング73の燃料ガス流入接続部78に接続される(換言すると、燃料ガス流入口84に連通される)。
【0047】
このように燃料ガス流入管85及び燃料ガス流出管(図示せず)の連通状態(接続状態)を反転させると、燃料ガス流路16を通して供給される燃料ガスは、燃料ガス流出接続部86(燃料ガス流出口92)からセルスタック2の燃料極8側に流れ、またセルスタック2の燃料極8側を流れた燃料ガスは、燃料ガス流入接続部74(燃料ガス流入口80)を通して燃料ガス流入管85から排燃料ガス流路36に流れる。従って、このように反転させた状態では、セルスタック2の劣化状態の少ない燃料ガス流出口86側から燃料ガスがその燃料極8側に送給され、これによって、セルスタック2の劣化進行を抑えることができる。
【0048】
このような燃料ガスに関連する連通状態(接続状態)の反転は、セルスタック2の発電出力の低下などに基づいてセルスタック2の部分的劣化を検知したとき、或いは設計寿命の半分程度の期間を稼働運転したときにセルスタック2に部分的劣化が生じたとして行うようにすることができる。
【0049】
セルスタック2の部分的劣化は、セルスタック2を冷却するための冷却水の部分的循環不良によっても生じ、そのために、この冷却水の部分的循環不良に対しては、次のように構成してセルスタック2の劣化進行を抑えることができる。
【0050】
冷却水の循環不良によるセルスタック2の部分的劣化は、このセルスタック2の冷却水の流入部及びその近傍に発生し易く、そのために、この冷却水に関連する連通状態(接続状態)を反転可能に構成するようにしてもよい。この場合、ユニットハウジング73の冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)に連通されていた冷却水流入管(図示せず)が、この冷却水流入接続部76から外され、下方に移動させた後に、ユニットハウジング73の冷却水流出接続部88に接続される(換言すると、冷却水流出口94に連通される)。また、図示していないが、ユニットハウジング73の冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)に連通されていた冷却水流出管が、冷却水流入管と略同様に、この冷却水流出接続部88から外された後に、ユニットハウジング73の冷却水流入接続部76に接続される(換言すると、冷却水流入口82に連通される)。
【0051】
このように冷却水流入管(図示せず)及び冷却水流出管(図示せず)の連通状態(接続状態)を反転させると、冷却水循環流路54の流入側部54aからの冷却水は、冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)を通してセルスタック2の冷却水流路に流れ、またセルスタック2の冷却水流路を流れた冷却水は、冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)及び冷却水流入管を通して冷却水循環流路54の下流側部54bに流れる。従って、このように反転させた状態では、セルスタック2の劣化状態の少ない冷却水流出口94側から冷却水がセルスタック2の冷却水流路に送給され、これによって、セルスタック2の劣化進行を抑えることができる。
【0052】
このような燃料ガスに関連する連通状態(接続状態)の反転は、燃料ガスの供給不足による部分的劣化と同様に、セルスタック2の発電出力の低下などに基づいてセルスタック2の部分的劣化を検知したとき、或いは設計寿命の半分程度の期間を稼働運転したときにセルスタック2に部分的劣化が生じたとして行うようにすることができる。
【0053】
燃料電池システムのセルスタック2は、例えば、図6及び図7に示すように構成することによって、燃料ガスに関連する連通状態(接続状態)の反転、また冷却水に関連する連通状態(接続状態)の反転を容易に行うことができる。尚、以下の実施形態において、上述した実施形態と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図6及び図7を参照して、第1の変形形態のセルスタック2Aを収容するユニットハウジング72Aにおいては、ユニットハウジング73の正面上端部には、上述した実施形態と同様に、空気流入接続部74(空気流入口80)、冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)及び燃料ガス流入接続部78(燃料ガス流入口84)が、図6において左から右に向けてこの順に配設されている。上述した実施形態と同様に、空気流入接続部74(空気流入口80)には空気流入管(図示せず)が接続され、冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)には、冷却水流入管(図示せず)が接続され、また燃料ガス流入接続部78(燃料ガス流入口84)には、燃料ガス流入管(図示せず)が接続される。
【0055】
また、このユニットハウジング73の下端部には、燃料ガス流出接続部86(燃料ガス流出口92)、冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)及び空気流出接続部90(空気流出口96)が、図3において左から右に向けてこの順に配設されている。上述した実施形態と同様に、燃料ガス流出接続部86(燃料ガス流出口92)には燃料ガス流出管(図示せず)が接続され、冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)には、冷却水流出管(図示せず)が接続され、また空気流出接続部90(空気流出口96)には、空気流出管(図示せず)が接続される。
【0056】
この第1の変形形態では、スタックユニット72(即ち、セルスタック2A)が上下反転可能に構成されており、このことに関連して、スタックユニット72のユニットハウジング93の前面に一対の出力端子100a,100bが設けられ、一対の端子100a,110bに出力ケーブル102a,102bが電気的に接続されている。
【0057】
この第1の変形形態のセルスタック2Aを上下反転させると、図7に示す状態になる。上下反転する前の状態を示す図6と上下反転した後の状態を示す図7とを対比することによって容易に理解される如く、上下反転前の燃料ガス流入接続部78(燃料ガス流入口84)、冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)及び空気流入接続部74(空気流入口80)の位置に、上下反転後の燃料ガス流出接続部86(燃料ガス流出口92)、冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)及び空気流出接続部90(空気流出口96)が位置するとともに、上下反転前の燃料ガス流出接続部86(燃料ガス流出口92)、冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)及び空気流出接続部90(空気流出口96)の位置に、上下反転後の燃料ガス流入接続部78(燃料ガス流入口84)、冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)及び空気流入接続部74(空気流入口80)が位置するようになる。
【0058】
このように上下反転可能に構成し、上下反転した状態においては図7に示す上述した配置となるために、この上下反転後に、空気流入管(図示せず)を空気流出接続部90に、冷却水流入管(図示せず)を冷却水流出接続部88に、燃料ガス流入管(図示せず)を燃料ガス流出接続部86に、また燃料ガス流出管(図示せず)を燃料ガス流入接続部78に、冷却水流出管(図示せず)を冷却水流入接続部76に、空気流出管(図示せず)を空気流入接続部74に容易に接続することができる。
【0059】
上述の第1の変形形態のセルスタックにおいては、上下反転可能に構成しているが、上下反転に代えて、左右反転可能に構成するようにしてもよい。第2の変形形態のセルスタックを示す図8及び図9において、第2の変形形態のセルスタック(図示せず)を収容するユニットハウジング72Bにおいては、ユニットハウジング73Bの正面上端部には、図8に示すように、空気流入接続部74(空気流入口80)、冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)及び燃料ガス流入接続部78(燃料ガス流入口84)が、図8において左から右に向けてこの順に配設されている。上述した実施形態と同様に、空気流入接続部74(空気流入口80)には空気流入管(図示せず)が接続され、冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)には、冷却水流入管(図示せず)が接続され、また燃料ガス流入接続部78(燃料ガス流入口84)には、燃料ガス流入管(図示せず)が接続される。
【0060】
また、このユニットハウジング73Bの背面上端部には、図9に示すように、燃料ガス流出接続部86(燃料ガス流出口92)、冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)及び空気流出接続部90(空気流出口96)が、図9において左下から右上に向けてこの順に配設されている。燃料ガス流出接続部86(燃料ガス流出口92)には燃料ガス流出管(図示せず)が接続され、冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)には、冷却水流出管(図示せず)が接続され、また空気流出接続部90(空気流出口96)には、空気流出管(図示せず)が接続される。
【0061】
この第2の変形形態では、スタックユニット72B(即ち、セルスタック)が左右反転可能(換言すると、横方向に180度反転可能)に構成されており、このことに関連して、スタックユニット72Bのユニットハウジング73Bの上面に一対の出力端子100a,100bが設けられ、一対の端子100a,100bに出力ケーブル(図示せず)が電気的に接続されている。
【0062】
この第2の変形形態のスタックユニット72B(セルスタック)を左右反転させると、図8及び図9から理解されるように、左右反転前の燃料ガス流入接続部78(燃料ガス流入口84)、冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)及び空気流入接続部74(空気流入口80)の位置に、左右反転後の燃料ガス流出接続部86(燃料ガス流出口92)、冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)及び空気流出接続部90(空気流出口96)が位置するとともに、左右反転前の燃料ガス流出接続部86(燃料ガス流出口92)、冷却水流出接続部88(冷却水流出口94)及び空気流出接続部90(空気流出口96)の位置に、左右反転後の燃料ガス流入接続部78(燃料ガス流入口84)、冷却水流入接続部76(冷却水流入口82)及び空気流入接続部74(空気流入口80)が位置するようになる。
【0063】
このように左右反転可能に構成し、左右反転した状態においては上述した配置となるために、この左右反転後に、空気流入管(図示せず)を空気流出接続部90に、冷却水流入管(図示せず)を冷却水流出接続部88に、燃料ガス流入管(図示せず)を燃料ガス流出接続部86に、また燃料ガス流出管(図示せず)を燃料ガス流入接続部78に、冷却水流出管(図示せず)を冷却水流入接続部76に、空気流出管(図示せず)を空気流入接続部74に容易に接続することができる。
【0064】
上述した実施形態では、セルスタックに部分的劣化が生じたときに燃料ガス(冷却水)に関連する燃料ガス流入管及び燃料ガス流出管(冷却水流入管及び冷却水流出管)の接続を替えての連通状態を切り替えているが、燃料ガス流入管及び燃料ガス流出管(冷却水流入管及び冷却水流出管)の経路上にガス流路切替手段(冷却水流路切替手段)を設け、このガス流路切替手段(冷却水流路切替手段)の切替えによって、セルスタックの燃料ガス流入口及び燃料ガス流出口(冷却水流入口及び燃料ガス流出口)への連通状態を切り替えるようにすることもできる。
【0065】
図10及び図11は、燃料ガス流入管及び燃料ガス流出管の経路上に配設されるガス流路切替手段の第1の実施形態を示すが、冷却水流入管及び冷却水流出管の経路上にもこのガス流路切替手段と同様の構成の冷却水流路切替手段を配設することができる。
【0066】
図10及び図11において、図示のガス流路切替手段130(冷却水流路切替手段132)は、第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)と第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ138)を備え、例えば、第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)が燃料ガス流入管132(冷却水流入管126)の経路上に配設され、第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)が燃料ガス流出管124(冷却水流出管128)の経路上に配設される。
【0067】
第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)は、第1主流路142と、この第1主流路142から分岐する一対の第1分岐流路144,146とを備え、第1主流路142と一方(スタックユニット72Cに近い方)の第1分岐流路144との接続部に第1弁部材148が配設されている。また、第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)は、第2主流路152と、この第2主流路152から分岐する一対の分岐流路154,156とを備え、第2主流路154と一方(スタックユニット72Cに近い方)の第2分岐流路154との接続部に第2弁部材158が配設されている。更に、第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)の一方の第1分岐流路144と第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)の他方の第2分岐流路156とが第1分岐接続流路160を介して接続され、また第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)の他方の第1分岐流路46と第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)の一方の第2分岐流路154とが第2分岐接続流路162を介して接続されている。
【0068】
ガス流路切替手段130(冷却水流路切替手段132)は、図10に示す第1ガス流路切替状態(第1冷却水流路切替状態)と図11に示す第2ガス流路切替状態(第2冷却水流路切替状態)とに選択的に切り替えられる。例えば、スタックユニット72Cの設置初期においては、ガス流路切替手段130(冷却水流路切替手段132)は、第1ガス流路切替状態(第1冷却水流路切替状態)に保持される。この切替状態においては、図10に示すように、第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)の第1弁部材148は、第1主流路142を連通状態に保持するとともに、一方の第1分岐流路144を閉塞状態に保持し、また第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)の第2弁部材158は、第2主流路152を連通状態に保持するとともに、一方の第2分岐流路154を閉塞状態に保持する。
【0069】
この第1ガス流路切替状態(第1冷却水流路切替状態)においては、第1及び第2分岐接続流路160,162が閉塞状態に保持され、ガスブロア24(冷却水循環ポンプ56)からの燃料ガス(冷却水)は、図10に矢印で示すように、第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)の第1主流路142を通り、燃料ガス流入管122(冷却水流入管126)及びスタックユニット72Cの燃料ガス流入接続部78(冷却水流入接続部76)を通してセルスタックの燃料ガス流入口(図示せず)(冷却水流入口)に送給される。また、セルスタックの燃料ガス流出口(図示せず)(冷却水流出口)からの燃料ガス(冷却水)は、スタックユニット72Cの燃料ガス流出接続部86(冷却水流出接続部88)及び燃料ガス流出管124(冷却水流出接続管128)を通り、更に第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)の第2主流路152を通して下流側に送給される。
【0070】
また、セルスタック(図示せず)に部分的劣化が生じたときには、ガス流路切替手段130(冷却水流路切替手段132)は、第2ガス流路切替状態(第2冷却水流路切替状態)に切り替えられる。この切替状態においては、図11に示すように、第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)の第1弁部材148は、第1主流路142を閉塞して一方の分岐流路144を連通状態に保持し、また第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)の第2弁部材158は、第2主流路152を閉塞して一方の第2分岐流路154を連通状態に保持する。
【0071】
従って、この第2ガス流路切替状態(第2冷却水流路切替状態)においては、第1及び第2分岐接続流路160,162が連通状態に保持され、ガスブロア24(冷却水循環ポンプ56)からの燃料ガス(冷却水)は、図11に矢印で示すように、第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)の他方の第1分岐流路146、第2分岐接続流路162及び第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)の一方の第2分岐流路154を通り、燃料ガス流出管124(冷却水流出管128)及び燃料ガス流出接続部86(冷却水流出接続部88)を通してスタックユニット72C内のセルスタックの燃料ガス流出口(図示せず)(冷却水流出口)に供給され、この燃料ガス流出口(冷却水流出口)を通してセルスタックの燃料極側(冷却水流路)に送給される。
【0072】
このとき、セルスタックの燃料極側(冷却水流路)を流れた燃料ガス(冷却水)は、その燃料ガス流入口(冷却水流入口)から流出される。そして、この燃料ガス流入口(図示せず)(冷却水流入口)からの燃料ガス(冷却水)は、燃料ガス流入接続部78(冷却水流入接続部76)及び燃料ガス流入接続管122(冷却水流入接続管126)を通り、更に第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)の一方の第1分岐流路144、第1分岐接続流路160及び第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)の他方の第2分岐流路156を通して下流側に送給される。
【0073】
このように第1及び第2ガスバルブ134,138(第1及び第2冷却水バルブ136,140)を備えたガス流路切替手段130(冷却水流路切替手段132)を用い、このガス流路切替手段130(冷却水流路切替手段132)の連通状態を切り替えることにより、燃料ガス流入管122(冷却水流入管126)及び燃料ガス流出管124(冷却水流出管128)の管接続を入れ替えることなく、燃料ガス(冷却水)の供給を反対側の流出側から行うことができる。
【0074】
この実施形態においては、燃料ガス及び冷却水の双方の供給切替えを行うためにガス流路切替手段130及び冷却水流路切替手段132を設けているが、燃料ガス及び冷却水のいずれか一方の供給切替え行うようにしてもよく、この場合、燃料ガス(又は冷却水)の切替えのためにガス流路切替手段130(又は冷却水切替手段132)が設けられる。
【0075】
また、この実施形態においては、ガス流路切替手段130(冷却水切替手段132)の第1ガスバルブ134(第1冷却水バルブ136)の第1弁部材148を第1主流路142と一方の第1分岐流路144との接続部に配設しているが、この第1弁部材148を第1主流路142と他方の第1分岐流路146との接続部に配設するようにしてもよい。また、第2ガスバルブ138(第2冷却水バルブ140)についても、第2弁部材158を第2主流路152と一方の第2分岐流路154との接続部に配設しているが、この第2弁部材158を第2主流路152と他方の第2分岐流路156との接続部に配設するようにしてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態では、ガス流路切替手段(冷却水流路切替手段)を第1及び第2ガスバルブ(第1及び第2冷却水バルブ)から構成しているが、このような構成に代えて、このガス流路切替手段(冷却水流路切替手段)を図12及び図13に示すように構成することもできる。
【0077】
図12及び図13において、図示のガス流路切替手段130D(冷却水流路切替手段132D)は、燃料ガス流入管122(冷却液流入管126)に関連して配設された第1及び第2ガス電磁弁172,174(第1及び第2冷却水電磁弁176,178)及び燃料ガス流出管124(冷却水流出管128)に関連して配設された第3及び第4ガス電磁弁180,182(第3及び第4冷却水電磁弁184,186)を備え、第1ガス電磁弁172(第1冷却水電磁弁176)が燃料ガス流入管122(冷却水流入管126)の経路上、例えば燃料ガス流路16(冷却水循環流路の上流側部54a)に配設され、第3ガス電磁弁180(第3冷却水電磁弁184)が燃料ガス流出管124(冷却水流出管128)の経路上、例えば排燃料ガス流路36(冷却水循環流路の下流側部54b)に配設されている。
【0078】
また、例えば、燃料ガス流路16(冷却水循環流路の上流側部54a)における第1ガス電磁弁172(第1冷却水電磁弁174)の配設部位より上流側の部位と排燃料ガス流路36(冷却水循環流路の下流側部54b)における第3ガス電磁弁180(第3冷却水電磁弁184)の配設部位より下流側の部位との間が、第1接続流路188を介して接続され、この第1接続流路188に第3ガス電磁弁174(第3冷却水電磁弁178)が配設されている。更に、例えば、燃料ガス流路16(冷却水循環流路の上流側部54a)における第1ガス電磁弁172(第1冷却水電磁弁174)の配設部位より下流側の部位と排燃料ガス流路36(冷却水循環流路の下流側部54b)における第3ガス電磁弁180(第3冷却水電磁弁184)の配設部位より上流側の部位との間が、第2接続流路190を介して接続され、この第2接続流路180に第4ガス電磁弁182(第4冷却水電磁弁186)が配設されている。尚、図12及び図13において、複数の電磁弁のうち白色で示したのが開状態のもので、黒色で示したのが閉状態のものである。
【0079】
このガス流路切替手段130D(冷却水流路切替手段132D)は、図12に示す第1ガス流路切替状態(第1冷却水流路切替状態)と図13に示す第2ガス流路切替状態(第2冷却水流路切替状態)とに選択的に切り替えられる。例えば、スタックユニット72Dの設置初期においては、ガス流路切替手段130D(冷却水流路切替手段132D)は、第1ガス流路切替状態(第1冷却水流路切替状態)に保持される。この切替状態においては、図12に示すように、第1及び第3ガス電磁弁172,180(第1及び第3冷却水電磁弁176,180)が開状態に保持され、第2及び第4ガス電磁弁174,182(第2及び第4冷却水電磁弁178,186)が閉状態に保持される。
【0080】
従って、この第1ガス流路切替状態(第1冷却水流路切替状態)においては、第1及び第2接続流路188,190が閉塞状態に保持され、ガスブロア24(冷却水循環ポンプ56)からの燃料ガス(冷却水)は、図12に矢印で示すように、第1ガス電磁弁172(第1冷却水電磁弁176)を通り、燃料ガス流入管122(冷却水流入管126)及び燃料ガス流入接続部78(冷却水流入接続部76)を通してスタックユニット72Dのセルスタックの燃料ガス流入口(図示せず)(冷却水流入口)に送給される。また、セルスタックの燃料ガス流出口(図示せず)(冷却水流出口)からの燃料ガス(冷却水)は、燃料ガス流出接続部86(冷却水流出接続部88)及び燃料ガス流出管124(冷却水流出接続管128)を通り、更に第3ガス電磁弁180(第3冷却水電磁弁184を通して下流側に送給される。
【0081】
また、セルスタック(図示せず)に部分的劣化が生じたときには、ガス流路切替手段130D(冷却水流路切替手段132D)は、第2ガス流路切替状態(第2冷却水流路切替状態)に切り替えられる。この切替状態においては、図13に示すように、第2及び第4ガス電磁弁174,182(第2及び第4冷却水電磁弁178,186)が開状態に保持され、第1及び第3ガス電磁弁172,180(第2及び第4冷却水電磁弁176,184)が閉状態に保持される。
【0082】
従って、この第2ガス流路切替状態(第2冷却水流路切替状態)においては、第1及び第2接続流路188,190が連通状態に保持され、ガスブロア24(冷却水循環ポンプ56)からの燃料ガス(冷却水)は、図13に矢印で示すように、第4ガス電磁弁182(第4冷却水電磁弁186)及び第2接続流路190を通り、燃料ガス流出管124(冷却水流出管128)及び燃料ガス流出接続部86(冷却水流出接続部88)を通してスタックユニット72Dのセルスタックの燃料ガス流出口(図示せず)(冷却水流出口)に送給され、この燃料ガス流出口(冷却水流出口)を通してセルスタックの燃料極側(冷却水流路)に送給される。
【0083】
このとき、セルスタックの燃料極側(冷却水流路)を流れた燃料ガス(冷却水)は、その燃料ガス流入口(冷却水流入口)から流出される。そして、スタックユニット72Dの燃料ガス流入口(図示せず)(冷却水流入口)からの燃料ガス(冷却水)は、燃料ガス流入接続部78(冷却水流入接続部76)及び燃料ガス流入接続管122(冷却水流入接続管126)を通り、更に第2ガス電磁弁174(第2冷却水電磁弁178)及び第1接続流路188を通して下流側に送給される。
【0084】
このように第1〜第4ガス電磁弁172,174,180,182(第1〜第4冷却水電磁弁176,178,184,186)を備えたガス流路切替手段130D(冷却水流路切替手段132D)を用い、このガス流路切替手段130D(冷却水流路切替手段132D)の連通状態を切り替えることにより、上述したと同様に、燃料ガス(冷却水)の供給を反対側の流出側から行うことができる。
【0085】
この実施形態においても、燃料ガス及び冷却水の双方の供給切替えを行うためにガス流路切替手段130D及び冷却水流路切替手段132Dを設けているが、燃料ガス及び冷却水のいずれか一方の供給切替え行うようにしてもよい。
【0086】
以上、本発明に従う燃料電池システムの一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【符号の説明】
【0087】
2 セルスタック
24 ガスブロア
52 冷却水循環手段
54 冷却水循環流路
58 貯湯装置
72,72A,72B,72C,72D スタックユニット
73,73A,73B,73C,73D ユニットハウジング
74 空気流入接続部
76 冷却水流入接続部
78 燃料ガス流入接続部
85 燃料ガス流入管
86 燃料ガス流出接続部
88 冷却水流出接続部
90 空気流出接続部
130、130D ガス流路切替手段
132,132D 冷却水流路切替手段
134,138 ガスバルブ
136,140 冷却水バルブ
172,174,180,182 ガス電磁弁
176,178,184,186 冷却水電磁弁










図1
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