(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに表裏の関係にある第1面および第2面を有し、灌漑用液体を流通させるチューブの内壁面において、前記チューブの内外を連通する吐出口に対応する位置に接合され、前記チューブ内の前記灌漑用液体を前記吐出口から定量的に前記チューブ外に吐出するためのエミッタであって、
前記第1面に配置され、前記灌漑用液体を取り入れるための取水部と、
前記第2面に配置され、前記灌漑用液体を吐出するための吐出部と、
前記取水部および前記吐出部を繋ぎ、前記灌漑用液体を流通させるための流路と、
前記流路に配置されており、封水を収容するための封水収容部と、
を有する、エミッタ。
前記エミッタは、少なくとも、前記第1面および前記第2面を有するエミッタ本体と、前記第1面に接合されており、かつ前記凸条を有するカバーと、によって構成されており、
前記エミッタは、
前記第1面に配置され、前記カバーによって開口部を塞がれている逆流防止用凹部と、
前記逆流防止用凹部の内面に開口し、前記流路の上流側に連通している第1貫通孔と、
前記逆流防止用凹部の内面に開口し、前記吐出部に連通している第2貫通孔と、
をさらに有し、
前記凹条は、前記逆流防止用凹部の底面に配置されており、
前記凸条は、前記逆流防止用凹部側に突出するように前記カバーに配置されている、
請求項2に記載のエミッタ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[点滴灌漑用チューブおよびエミッタの構成]
図1A、Bは、本実施の形態に係る点滴灌漑用チューブ100の構成の一例を示す断面図である。
図1Aは、点滴灌漑用チューブ100の軸方向における断面図であり、
図1Bは、点滴灌漑用チューブ100の当該軸方向に垂直な方向における断面図である。点滴灌漑用チューブ100は、チューブ110およびエミッタ120を有する。
【0016】
チューブ110は、灌漑用液体を流すための管である。灌漑用液体は、例えば、ポンプを用いてチューブ110内に送られる。チューブ110の管壁には、チューブ110の軸方向において所定の間隔(例えば、200〜500mm)で灌漑用液体をチューブ110外に吐出するための複数の吐出口112が形成されている。吐出口112の開口部の直径は、灌漑用液体が通過することができれば特に限定されない。本実施の形態では、吐出口112の開口部の直径は、1.5mmである。チューブ110の内壁面の吐出口112に対応する位置には、エミッタ120がそれぞれ接合されている。チューブ110の軸方向に垂直な断面形状および断面積は、チューブ110の内部にエミッタ120を配置することができれば特に限定されない。
【0017】
チューブ110の材料は、特に限定されない。本実施の形態では、チューブ110の材料は、ポリエチレンである。
【0018】
灌漑用液体の例には、水、液体肥料、農薬およびこれらの混合液が含まれる。
【0019】
図2A〜Cは、本実施の形態に係るエミッタ120またはエミッタ本体121の構成を示す図である。
図2Aは、エミッタ本体121の平面図であり、
図2Bは、エミッタ120の平面図であり、
図2Cは、エミッタ120の底面図である。
図3は、本実施の形態に係るエミッタ120の構成を示す図である。
図3は、
図2Bに示されるA−A線における断面図である。
【0020】
図1Aに示されるように、エミッタ120は、吐出口112を覆うようにチューブ110の内壁面に接合されている。エミッタ120の形状は、チューブ110の内壁面に密着して、吐出口112を覆うことができれば特に限定されない。本実施の形態では、チューブ110の軸方向に垂直な方向の断面における、チューブ110の内壁面に接合するエミッタ120の裏面の形状は、チューブ110の内壁面に沿うように、チューブ110の内壁面に向かって凸の略円弧形状である。エミッタ120の平面視形状は、四隅がR面取りされた略矩形状である。エミッタ120の大きさは、特に限定されない。本実施の形態では、エミッタ120の長辺方向の長さは25mmであり、短辺方向の長さは8mmであり、高さは2.5mmである。
【0021】
本実施の形態に係るエミッタ120は、少なくとも、エミッタ本体121、フィルム122およびカバー123よって構成されている。エミッタ120の機能の詳細については後述する。
【0022】
エミッタ本体121(エミッタ120)は、互いに表裏の関係にある第1面1211および第2面1212を有する。本実施の形態では、第1面1211は、エミッタ120の表面側(灌漑用液体側)に位置し、第2面1212は、エミッタ120の裏面側(チューブ110側)に位置する。
【0023】
エミッタ本体121には、本実施の形態の効果を得られる範囲内において、凹部、溝、凸部および貫通孔が、適宜に形成されている。詳細については後述するが、本実施の形態では、エミッタ本体121の第1面1211には、少なくとも、取水用凹部153、流量減少用凹部161および逆流防止用凹部171が形成されている(
図2A参照)。また、エミッタ本体121の第2面1212には、少なくとも、第1接続溝131、第1減圧溝132、第2接続溝133、第2減圧溝134および吐出用凹部181が形成されている(
図2C参照)。
【0024】
エミッタ本体121は、可撓性を有する材料で形成されていてもよいし、剛性を有する材料で形成されていてもよい。エミッタ本体121の材料の例には、樹脂およびゴムが含まれる。当該樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。エミッタ本体121の可撓性は、弾性を有する樹脂材料の使用によって調整されうる。エミッタ本体121の可撓性の調整方法の例には、弾性を有する樹脂の選択や、硬質の樹脂材料に対する弾性を有する樹脂材料の混合比の調整などが含まれる。エミッタ本体121は、例えば、射出成形によって製造されうる。
【0025】
フィルム122は、エミッタ本体121の第1面1211の一部に接合されている。フィルム122は、流量減少用凹部161の開口部を塞ぐようにエミッタ本体121上に配置されている。すなわち、フィルム122は、当該開口部の外側の部分でエミッタ本体121に接合されている。フィルム122は、可撓性を有し、灌漑用液体の圧力により変形する。
【0026】
フィルム122の形状および大きさは、エミッタ本体121の形状および大きさや、エミッタ本体121に形成されている流量減少用凹部161の開口部の形状および大きさなどに応じて適宜設定されうる。フィルム122の厚みは、所望の可撓性に応じて適宜設定されうる。
【0027】
フィルム122は、可撓性を有する樹脂材料で形成されている。フィルム122の材料は、所望の可撓性に応じて適宜設定されうる。当該樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。フィルム122の可撓性も、弾性を有する樹脂材料の使用によって調整されうる。フィルム122の可撓性の調整方法の例は、エミッタ本体121の可撓性の調整方法と同じである。フィルム122は、例えば、射出成形によって製造されうる。
【0028】
エミッタ本体121およびフィルム122は、一体であってもよいし、別体であってもよい。たとえば、エミッタ本体121およびフィルム122は、それぞれヒンジ部を介して一体的に形成されていてもよい。ヒンジ部を軸にフィルム122を回動させ、フィルム122をエミッタ本体121の第1面1211に接合すればよい。エミッタ本体121およびフィルム122の接合方法は、特に限定されない。当該接合方法の例には、樹脂材料の溶着や、接着剤による接着などが含まれる。なお、上記ヒンジ部は、エミッタ本体121およびフィルム122を接合した後に切断されてもよい。
【0029】
カバー123は、エミッタ121本体の第1面1211の一部に接合されている。カバー123は、逆流防止用凹部171の開口部を塞ぐようにエミッタ本体121上に配置されている。すなわち、カバー123は、当該開口部の外側の部分でエミッタ本体121に接合されている。カバー123の形状および大きさは、エミッタ本体121の形状および大きさや、エミッタ本体121に形成されている逆流防止用凹部171の開口部の形状および大きさなどに応じて適宜設定されうる。
【0030】
カバー123の一方の面には、凸条124が形成されている。凸条124は、エミッタ本体121に形成されている逆流防止用凹部171側に突出するように配置されている。さらに、
図3に示されるように、凸条124は、カバー123において、逆流防止用凹部171の底面に配置されている凹条172に対応する位置に配置されている。具体的には、凸条124は、凹条172の内面から離間するように凹条172内に配置され、凹条172に沿って延在している。換言すると、凸条124は、灌漑用液体の流れ方向に対して横断する方向に沿って延在している。凸条124および凹条172の間には隙間が形成されている。当該隙間は、灌漑用液体が移動できる流路の一部を構成している。
【0031】
詳細については後述するが、凸条124および凹条172の間には、流路を途中で遮断するための液体(封水)が収容されうる。凸条124の位置、形状、大きさおよび数は、凸条124および凹条172の間に封水を収容することができれば特に限定されず、凹条172の形状および大きさに応じて適宜設定されうる。凸条124の形状の例には、円筒形状および角筒形状が含まれる。本実施の形態では、凸条124の形状は、円筒形状である。本実施の形態では、凸条124の数は、2つである。2つの凸条124は、同心円状に配置されている。
【0032】
カバー123は、可撓性を有する材料で形成されていてもよいし、剛性を有する材料で形成されていてもよい。カバー123の材料の例には、樹脂、ゴムおよび金属が含まれる。当該樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。カバー123の可撓性は、エミッタ本体121の可撓性の調整方法と同じである。カバー123は、例えば、射出成形によって製造されうる。灌漑用液体の圧力に起因するカバー123の変形を抑制して、凸条124および凹条172の間の隙間(流路の一部)の大きさを一定に保持する観点からは、カバー123は、剛性を有する材料で形成されていることが好ましい。本実施の形態では、カバー123は、剛性を有する材料で形成されている。
【0033】
本明細書中、「剛性を有する材料」とは、当該材料によって形成された部材が、灌漑用液体の圧力によって変形しない程度の剛性を有する材料を意味する。たとえば、カバー123が剛性を有する材料で形成されている場合、上記材料は、凸条124および凹条172の間隔が、灌漑用液体の圧力によって実質的に変化しない程度の剛性を有する材料を意味する。
【0034】
エミッタ本体121およびカバー123は、一体であってもよいし、別体であってもよい。エミッタ本体121およびカバー123の接合方法の例は、エミッタ本体121およびフィルム122の接合方法の例と同じである。
【0035】
フィルム122およびカバー123は、一体であってもよいし(後述の変形例1、2参照)、別体であってもよい。フィルム122およびカバー123が一体である場合、フィルム122およびカバー123は、いずれも可撓性を有する。本実施の形態では、フィルム122およびカバー123は、別体である。カバー123に剛性を付与する観点からは、フィルム122およびカバー123は、別体であることが好ましい。
【0036】
点滴灌漑用チューブ100は、エミッタ120の裏面をチューブ110の内壁面に接合することによって作製される。チューブ110とエミッタ120との接合方法は、特に限定されない。当該接合方法の例には、エミッタ120またはチューブ110を構成する樹脂材料の溶着や、接着剤による接着などが含まれる。なお、通常、吐出口112は、チューブ110とエミッタ120とを接合した後に形成されるが、接合前に形成されてもよい。
【0037】
エミッタ120は、取水部150、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143、第2減圧流路144、流量減少部160、逆流防止部170および吐出部180を有する。取水部150、流量減少部160および逆流防止部170は、エミッタ120の表面(エミッタ本体121の第1面1211)に配置されている。また、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143、第2減圧流路144および吐出部180は、エミッタ120の裏面(エミッタ本体121の第2面1212)に配置されている。
【0038】
エミッタ120およびチューブ110が互いに接合されることにより、取水部150、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143、第2減圧流路144、流量減少部160、逆流防止部170および吐出部180が形成される。また、エミッタ120において、取水部150と吐出部180とを繋ぐ流路も形成される。当該流路は、取水部150から吐出部180まで灌漑用液体を流通させる。
【0039】
取水部150は、灌漑用液体をエミッタ120内に取り入れる。取水部150は、エミッタ本体121の第1面1211の約半分の領域に配置されている(
図2A、B参照)。取水部150は、取水側スクリーン部151および取水用貫通孔152を有する。
【0040】
取水側スクリーン部151は、エミッタ120に取り入れられる灌漑用液体中の浮遊物がエミッタ120内に侵入することを防止する。取水側スクリーン部151は、チューブ110内に対して開口しており、取水用凹部153、複数のスリット154および複数のスクリーン用凸条部155を有する。
【0041】
取水用凹部153は、エミッタ本体121の第1面1211において、フィルム122が接合されていない領域に形成されている凹部である。取水用凹部153の深さは特に限定されず、エミッタ120の大きさに応じて適宜設定される。取水用凹部153の外周壁には複数のスリット154が形成されており、取水用凹部153の底面上には複数のスクリーン用凸条部155が形成されている。また、取水用凹部153の底面には取水用貫通孔152が形成されている。
【0042】
複数のスリット154は、取水用凹部153の内側面と、エミッタ本体121の外側面とを繋いでおり、エミッタ本体121の側面から灌漑用液体を取水用凹部153内に取り入れつつ、灌漑用液体中の浮遊物が取水用凹部153内に侵入することを防止する。スリット154の形状は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、スリット154の形状は、エミッタ本体121の外側面から取水用凹部153の内側面に向かうにつれて、幅が大きくなるように形成されている(
図2A、B参照)。このように、スリット154は、いわゆるウェッジワイヤー構造となるように構成されているため、取水用凹部153内に流入した灌漑用液体の圧力損失が抑制される。
【0043】
複数のスクリーン用凸条部155は、取水用凹部153の底面上に配置されている。スクリーン用凸条部155の配置および数は、取水用凹部153の開口部側から灌漑用液体を取り入れつつ、灌漑用液体中の浮遊物の侵入を防止することができれば特に限定されない。本実施の形態では、複数のスクリーン用凸条部155は、スクリーン用凸条部155の長軸方向がエミッタ120の短軸方向に沿うように配列されている。また、スクリーン用凸条部155は、エミッタ本体121の第1面1211から取水用凹部153の底面に向かうにつれて幅が小さくなるように形成されている。すなわち、スクリーン用凸条部155の配列方向において、隣接するスクリーン用凸条部155間の空間は、いわゆるウェッジワイヤー構造となっている。また、隣接するスクリーン用凸条部155間の間隔は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。このように、隣接するスクリーン用凸条部155間の空間は、いわゆるウェッジワイヤー構造となるように構成されているため、取水用凹部153内に流入した灌漑用液体の圧力損失が抑制される。
【0044】
取水用貫通孔152は、取水用凹部153の底面に形成されている。取水用貫通孔152の形状および数は、取水用凹部153の内部に取り込まれた灌漑用液体をエミッタ本体121内に取り込むことができれば特に限定されない。本実施の形態では、取水用貫通孔152は、取水用凹部153の底面において、エミッタ120の長軸方向に沿って形成された1つの長孔である。この長孔は、複数のスクリーン用凸条部155により部分的に覆われているため、第1面1211側から見た場合、取水用貫通孔152は、多数の貫通孔に分かれているように見える。
【0045】
チューブ110内を流れてきた灌漑用液体は、取水側スクリーン部151によって浮遊物が取水用凹部153内に侵入することが防止されつつ、エミッタ本体121内に取り込まれる。
【0046】
第1接続流路141(第1接続溝131)は、流路に配置されており、取水部150(取水用貫通孔152)と、第1減圧流路142(第1減圧溝132)とを接続する。第1接続流路141(第1接続溝131)は、エミッタ本体121の第2面1212の外縁部においてエミッタ120の長軸方向に沿って直線状に配置されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることで、第1接続溝131とチューブ110の内壁面とにより、第1接続流路141が形成される。取水部150から取り込まれた灌漑用液体は、第1接続流路141を通って、第1減圧流路142に流れる。
【0047】
第1減圧流路142(第1減圧溝132)は、流路において第1接続流路141の下流に配置されており、第1接続流路141(第1接続溝131)と第2接続流路143(第2接続溝133)とを接続する。第1減圧流路142は、取水部150から取り入れられた灌漑用液体の圧力を減圧させて、第2接続流路143に導く。第1減圧流路142(第1減圧溝132)は、エミッタ本体121の第2面1212の外縁部においてエミッタ120の長軸方向に沿って直線状に配置されている。本実施の形態では、第1減圧流路142の上流端は第1接続流路141に接続されており、第1減圧流路142の下流端は第2接続流路143の上流端に接続されている。
【0048】
第1減圧溝132の形状は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、第1減圧溝132の平面視形状は、ジグザグ形状である。第1減圧溝132には、内側面から突出する略三角柱形状の第1凸部1361が灌漑用液体の流れる方向に沿って交互に配置されている。第1凸部1361は、平面視したときに、先端が第1減圧溝132の中心軸を超えないように配置されている。チューブ110およびエミッタ120が互いに接合されることで、第1減圧溝132とチューブ110の内壁面により、第1減圧流路142が形成される。取水部150から取り込まれた灌漑用液体は、第1減圧流路142により減圧されて第2接続流路143(第2接続溝133)に導かれる。
【0049】
第2接続流路143(第2接続溝133)は、流路において第1減圧流路142の下流に配置されており、第1減圧流路142(第1減圧溝132)と、第2減圧流路144(第2減圧溝134)とを接続する。第2接続流路143は、エミッタ本体121の第2面1212の外縁部においてエミッタ120の短軸方向に沿って直線状に形成されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることで、第2接続溝133とチューブ110の内壁面とにより、第2接続流路143が形成される。取水部150から取り込まれ、第1接続流路141に導かれ、第1減圧流路142で減圧された灌漑用液体は、第2接続流路143を通って、第2減圧流路144に導かれる。
【0050】
第2減圧流路144(第2減圧溝134)は、流路において第2接続流路143の下流に配置されており、第2接続溝133(第2接続流路143)と、流量減少部160とを接続する。第2減圧流路144は、第2接続流路143から流入した灌漑用液体の圧力を減圧させて、流量減少部160に導く。第2減圧流路144(第2減圧溝134)は、エミッタ本体121の第2面1212の外縁部においてエミッタ120の長軸方向に沿って配置されている。第2減圧溝134の上流端は第2接続溝133の下流端に接続されており、第2減圧流路144の下流端は流量減少部160の第1接続用貫通孔164に接続されている。
【0051】
第2減圧溝134の形状は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、第2減圧溝134の平面視形状は、第1減圧溝132の形状と同様のジグザグ形状である。第2減圧溝134には、内側面から突出する略三角柱形状の第2凸部1362が灌漑用液体の流れる方向に沿って交互に配置されている。第2凸部1362は、平面視したときに、先端が第2減圧溝134の中心軸を超えないように配置されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることで、第2減圧溝134とチューブ110の内壁面により、第2減圧流路144が形成される。取水部150から取り込まれた灌漑用液体は、第1減圧流路142および第2減圧流路144により減圧されて、流量減少部160に導かれる。
【0052】
流量減少部160は、流路内において、逆流防止部170の上流であり、かつ第2減圧流路144の下流に配置されており、かつエミッタ120の表面側に配置されている。流量減少部160は、チューブ110内の灌漑用液体の圧力によるフィルム122の変形に応じて灌漑用液体の流量を減少させつつ、灌漑用液体を逆流防止部170に送る。
【0053】
流量減少部160の構成は、上記の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、流量減少部160は、流量減少用凹部161、弁座部162、連通溝163、第1接続用貫通孔164、第2接続用貫通孔165、およびダイヤフラム部166を有する。
【0054】
流量減少用凹部161は、エミッタ本体121の第1面1211に配置されている。流量減少用凹部161の平面視形状は、特に限定されず、例えば、略円形状である。流量減少用凹部161の深さは、特に限定されず、連通溝163の深さ以上であればよい。流量減少用凹部161の内面には、第1接続用貫通孔164および第2接続用貫通孔165が開口している。本実施の形態では、第1接続用貫通孔164および第2接続用貫通孔165は、流量減少用凹部161の底面に開口している。
【0055】
弁座部162は、流量減少用凹部161の底面に配置されている。本実施の形態では、弁座部162は、第2接続用貫通孔165の開口部を取り囲むように、ダイヤフラム部166に面して非接触に配置されている。弁座部162は、チューブ110を流れる灌漑用液体の圧力が設定値を超えた場合、ダイヤフラム部166が密着できるように構成されている。弁座部162にダイヤフラム部166が接触することによって、流量減少用凹部161から逆流防止部170に流れ込む灌漑用液体の流量を減少させる。
【0056】
弁座部162の形状は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、弁座部162は、円筒形状の凸部である。本実施の形態では、当該凸部の端面は、内側から外側に向かうにつれて流量減少用凹部161の底面からの高さが低くなっている。
【0057】
連通溝163は、流量減少用凹部161の内部と、弁座部162に囲まれている第2接続用貫通孔165とを連通している。連通溝163は、弁座部162の、ダイヤフラム部166が密着可能な面の一部に配置されている。
【0058】
第1接続用貫通孔164は、流量減少部160において流路の上流側に連通している。本実施の形態では、第1接続用貫通孔164は、第2減圧流路144(第2減圧溝134)に連通している。第1接続用貫通孔164は、流量減少用凹部161の内面に配置されている。第1接続用貫通孔164は、例えば、流量減少用凹部161の底面または側面に配置される。本実施の形態では、第1接続用貫通孔164は、流量減少用凹部161の底面において、弁座部162が配置されていない領域に配置されている。
【0059】
第2接続用貫通孔165は、流量減少部160において流路の下流側に連通している。本実施の形態では、第2接続用貫通孔165は、逆流防止部170に連通している。第2接続用貫通孔165は、流量減少用凹部161の内面に配置されている。第2接続用貫通孔165は、例えば、流量減少用凹部161の底面または側面に配置される。本実施の形態では、第2接続用貫通孔165は、流量減少用凹部161の底面の中央部分に配置されている。
【0060】
なお、第1接続用貫通孔164および第2接続用貫通孔165の位置は、本実施の形態の態様に限定されない。たとえば、第1接続用貫通孔164の代わりに第2接続用貫通孔165が、弁座部162の外側に配置されていてもよい。また、第2接続用貫通孔165の代わりに第1接続用貫通孔164が、弁座部162に取り囲まれるように配置されてもよい。
【0061】
ダイヤフラム部166は、フィルム122の一部である。ダイヤフラム部166は、流量減少用凹部161の内部とチューブ110の内部との連通を遮断するように、かつ流量減少用凹部161の開口部を塞ぐように配置されている。ダイヤフラム部166は、可撓性を有し、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じて、弁座部162に接触するように変形する。たとえば、ダイヤフラム部166は、チューブ110内を流れる灌漑用液体の圧力が設定値を超えた場合に流量減少用凹部161側に歪む。具体的には、ダイヤフラム部166は、灌漑用液体の圧力が高くなるにつれて、弁座部162に向かって変形し、やがて弁座部162に接触する。ダイヤフラム部166が弁座部162に密着している場合であっても、ダイヤフラム部166は、第1接続用貫通孔164、第2接続用貫通孔165および連通溝163を閉塞しないため、第1接続用貫通孔164からの灌漑用液体は、連通溝163および第2接続用貫通孔165を通って、逆流防止部170に送られうる。
【0062】
逆流防止部170は、流路内において、流量調整部160の下流であり、かつ吐出部180の上流に配置されており、かつエミッタ120の表面側に配置されている。逆流防止部170は、灌漑用液体を吐出部180に送るとともに、送液を停止したときに吐出部180から流路に逆流する流体が、逆流防止部170の上流へ流通するのを阻止する。
【0063】
吐出部180から流路内へ逆流する流体によって、エミッタ120からの吐出量を調整するための構成要素における流路内が汚染されたり、目詰まりが生じたりすることを抑制する観点から、逆流防止部170は、流路の下流側に配置されていることが好ましい。すなわち、逆流防止部170は、エミッタ120からの吐出量を調整するための構成要素の下流に配置されていることが好ましく、吐出部180に直接連通する位置に配置されていることがより好ましい。本実施の形態では、逆流防止部170は、流量調整部160の下流に配置されているため、流路内に逆流した上記流体が流量調整部160内に流れ込まない。
【0064】
逆流防止部170の構成は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、逆流防止部170は、逆流防止用凹部171、凹条172、第3接続用貫通孔173(特許請求の範囲では、「第1貫通孔」と称している)、第4接続用貫通孔174(特許請求の範囲では、「第2貫通孔」と称している)、封水収容部175および凸条124を有する。
【0065】
逆流防止用凹部171は、エミッタ本体121の第1面1211に配置されている。逆流防止用凹部171の平面視形状は、特に限定されず、例えば、略円形状である。逆流防止用凹部171の深さは、特に限定されない。逆流防止用凹部171の内面には、第3接続用貫通孔173、第4接続用貫通孔174および凹条172が開口している。本実施の形態では、第3接続用貫通孔173、第4接続用貫通孔174および凹条172は、逆流防止用凹部171の底面に開口している。
【0066】
凹条172は、流路の底面に開口し、かつ灌漑用液体の流れ方向に対して横断する方向に沿って延在している。凹条172は、逆流防止用凹部171の底面において、エミッタ本体121の第1面1211に向かって開口するように配置されている。すなわち、凹条172は、エミッタ本体121の第2面1212側に底部を有する。また、本実施の形態では、凹条172は、第4接続用貫通孔174の開口部を取り囲むように配置されている。前述のとおり、凹条172は、凸条124の外面と、逆流防止用凹部171の内面とが互いに離間するように配置されている。すなわち、凹条172は、凸条124との間に隙間が形成されるように配置されている。これにより、流量減少用凹部161から吐出部180に流れる灌漑用液体の流量を確保することができる。
【0067】
凹条172の位置、形状、大きさおよび数は、凸条124および凹条172の間に封水を収容することができれば特に限定されず、凸条124の形状および大きさに応じて適宜設定されうる。凹条172の形状の例には、円筒形状および角筒形状が含まれる。本実施の形態では、凹条172は、円筒形状の凹部である。本実施の形態では、凹条172の数は、2つである。2つの凹条172は、同心円状に配置されている。
【0068】
第3接続用貫通孔173は、逆流防止部170において流路の上流側に連通している。本実施の形態では、第3接続用貫通孔173は、流量減少部160に連通している。第3接続用貫通孔173は、逆流防止用凹部171の内面に配置されている。第3接続用貫通孔173は、例えば、逆流防止用凹部171の底面または側面に配置される。本実施の形態では、第3接続用貫通孔173は、逆流防止用凹部171の底面に配置されている。
【0069】
第4接続用貫通孔174は、逆流防止部170において流路の下流側に連通している。本実施の形態では、第4接続用貫通孔174は、吐出部180に連通している。第4接続用貫通孔174は、逆流防止用凹部171の内面に配置されている。第4接続用貫通孔174は、例えば、逆流防止用凹部171の底面または側面に配置される。本実施の形態では、第4接続用貫通孔174は、逆流防止用凹部171の底面の中央部分に配置されている。
【0070】
なお、第3接続用貫通孔173および第4接続用貫通孔174の位置は、本実施の形態の態様に限定されない。たとえば、第4接続用貫通孔174の代わりに第3接続用貫通孔173が、凹条172に取り囲まれるように配置されてもよい。
【0071】
凸条124は、カバー123の一部であり、凹条172の内面から離間するように凹条172内に配置されている。凸条124および凹条172の間隔(最短距離)は、灌漑用液体の吐出部180への流量を確保することができ、かつ十分な量の封水を収容することができればよい。上記間隔は、エミッタ120の大きさや、灌漑用液体の所期の流量などに応じて適宜変更されうる。
【0072】
封水収容部175は、封水を収容する。本実施の形態では、封水収容部175は、凹条172および凸条124により構成されている。前述のとおり、凸条124は、凹条172の内面から離間するように凹条172内に配置されている。これにより、液体(封水)は、凹条172および凸条124の間において、流路を途中で遮断するように収容される。
【0073】
吐出部180は、灌漑用液体をエミッタ120外に吐出する。吐出部180は、エミッタ本体121の第2面1212側において、チューブ110の吐出口112に面して配置されている。吐出部180は、エミッタ120内の灌漑用液体をチューブ110の吐出口112に送る。これにより、吐出部180は、灌漑用液体をエミッタ120の外部に吐出することができる。吐出部180の構成は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、吐出部180は、吐出用凹部181と、侵入防止部182とを有する。
【0074】
吐出用凹部181は、エミッタ本体121の第2面1212に配置されている。吐出用凹部181の平面視形状は、略矩形状である。吐出用凹部181の底面には、第4接続用貫通孔174および侵入防止部182が配置されている。
【0075】
侵入防止部182は、吐出口112からの異物の侵入を防止する。侵入防止部182は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、侵入防止部182は、隣接して配置された4つの凸部である。4つの凸部は、エミッタ120をチューブ110に接合した場合に、第4接続用貫通孔174および吐出口112の間に位置するように配置されている。
【0076】
[点滴灌漑用チューブの動作]
次に、点滴灌漑用チューブ100の動作について説明する。
【0077】
まず、チューブ110内に灌漑用液体が送液される。点滴灌漑用チューブ100へ送液される灌漑用液体の圧力は、簡易に点滴灌漑法を導入できるように、またチューブ110およびエミッタ120の破損を防止するため、0.1MPa以下であることが好ましい。チューブ110内の灌漑用液体は、取水部150からエミッタ120内に取り込まれる。具体的には、チューブ110内の灌漑用液体は、スリット154、またはスクリーン用凸条部155間の隙間から取水用凹部153に入り込み、取水用貫通孔152を通過する。このとき、取水部150は、取水側スクリーン部151(スリット154およびスクリーン用凸条部155間の隙間)を有しているため、灌漑用液体中の浮遊物を除去することができる。また、取水部150には、いわゆるウェッジワイヤー構造が形成されているため、取水部150へ流入した灌漑用液体の圧力損失は抑制される。
【0078】
取水部150から取り込まれた灌漑用液体は、第1接続流路141に到達する。第1接続流路141に到達した灌漑用液体は、第1減圧流路142を通過し、第2接続流路143に到達する。第2接続流路143に到達した灌漑用液体は、第2減圧流路144に流れ込む。第2減圧流路144に流れ込んだ灌漑用液体は、第1接続用貫通孔164を通って、流量減少部160に流れ込む。流量減少部160に流れ込んだ灌漑用液体は、第2接続用貫通孔165および第3接続用貫通孔173を通って逆流防止部170に流れ込む。逆流防止部170に流れ込んだ灌漑用液体は、第4接続用貫通孔174を通って吐出部180に流れ込む。吐出部180に流れ込んだ灌漑用液体は、チューブ110の吐出口112からチューブ110外に吐出される。
【0079】
(流量減少部の動作)
ここで、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じた流量減少部160の動作について説明する。
図4A〜Cは、流量減少部160の動作について説明するための断面模式図である。なお、
図4A〜Cは、
図2Bに示されるA−A線における部分拡大断面図である。
図4Aは、チューブ110に灌漑用液体が送液されていない場合における断面図であり、
図4Bは、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が第1圧力である場合における断面図であり、
図4Cは、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が第1圧力を超える第2圧力である場合における断面図である。
【0080】
流量減少部160では、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じて、ダイヤフラム部166が流量減少用凹部161側に歪むように変形することで、灌漑用液体の流量が制御される。なお、本実施の形態では、カバー123は、剛性材料により構成されているため、灌漑用液体の圧力によって変形しない。
【0081】
チューブ110内に灌漑用液体が送液される前は、フィルム122に灌漑用液体の圧力が加わらないため、ダイヤフラム部166は、変形していない(
図4A参照)。
【0082】
チューブ110内に灌漑用液体を流し始めると、ダイヤフラム部166が変形し始める(
図4B参照)。しかし、ダイヤフラム部166は、弁座部162に接触していない状態では、取水部150から取り入れられた灌漑用液体は、エミッタ120内の流路を通って、チューブ110の吐出口112から外部に吐出される。このように、チューブ110内への灌漑用液体の送液開始時や、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が所定の圧力より低い場合には、取水部150からエミッタ120内に取り入れられた灌漑用液体は、流路を通って外部に吐出される。
【0083】
チューブ110内の灌漑用液体の圧力がさらに高まると、ダイヤフラム部166は、弁座部162に向かってさらに変形する。通常は、灌漑用液体の圧力が高くなるにつれて、流路を流れる灌漑用液体の量が増大するはずであるが、本実施の形態に係るエミッタ120では、第1減圧流路142および第2減圧流路144で灌漑用液体の圧力を減少させるとともに、ダイヤフラム部166と弁座部162との間隔を狭めることで、流路を流れる灌漑用液体の量の過剰な増大を防止している(
図4B参照)。そして、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が所定値(第2圧力)以上である場合に、ダイヤフラム部166は、弁座部162に接触する(
図4C参照)。この場合であっても、ダイヤフラム部166は、第1接続用貫通孔164、第2接続用貫通孔165および連通溝163を閉塞しないため、取水部150から取り入れられた灌漑用液体は、連通溝163を通って、チューブ110の吐出口112から外部に吐出される。このように、流量減少部160は、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が第2圧力以上である場合、ダイヤフラム部166が弁座部162に接触することにより、流路を流れる灌漑用液体の液量の増大を抑制する。
【0084】
このように、流量減少部160は、チューブ110内の灌漑用液体の圧力によるフィルム122の変形に応じて、チューブ110の吐出口112から吐出される灌漑用液体の流量を調整する。このため、本実施の形態に係る点滴灌漑用チューブ100は、灌漑用液体の圧力が低圧および高圧のいずれの場合であっても、一定量の灌漑用液体をチューブ110外に吐出できる。
【0085】
(逆流防止部の機能)
ここで、逆流防止部170の機能について説明する。まず、比較のために、逆流防止部170を有しない比較用のエミッタについて説明する。前述のとおり、点滴灌漑用チューブが、高低差のある場所に配置されている場合、チューブ110内への灌漑用液体の送液を停止したとき、高い位置におけるエミッタから吐出される灌漑用液体の量と、低い位置におけるエミッタから吐出される灌漑用液体の量とに差が生じる。これにより、高低差に起因して、チューブ110内が陰圧となって、結果として、比較用のエミッタを有する点滴灌漑用チューブでは、チューブ外から細かい土を含んだ空気や水などの流体が、エミッタの流路に逆流する、いわゆるサイフォン現象が生じることがある。
【0086】
これに対して、本実施の形態に係るエミッタ120は、封水収容部175を含む逆流防止部170を有する。チューブ110内への灌漑用液体の送液を停止したとき、封水収容部175内には、灌漑用液体が封水として収容されている。これにより、エミッタ120においては、封水収容部175の上流側の流路と、封水収容部175の下流側の流路とが封水により遮断される。この結果として、チューブ110外に存在する、細かい土などを含んだ空気や水などの流体が、封水収容部175の上流へ流通することを阻止できる。
【0087】
(効果)
以上のとおり、本実施の形態に係るエミッタ120は、封水を収容するための封水収容部175を有する。これにより、エミッタ120では、サイフォン現象の発生を抑制できるとともに、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が低くても適切に灌漑用液体を吐出することができる。したがって、本実施の形態に係るエミッタ120を有する点滴灌漑用チューブ100によれば、高低差のある場所であっても、サイフォン現象に起因する流路の目詰まりの発生を抑制できるとともに、チューブ内の灌漑用液体の圧力が低い場合であっても、灌漑用液体を定量的に吐出できる。
【0088】
[変形例]
なお、上記実施の形態では、フィルム122およびカバー123が別体である態様について説明したが、本発明では、フィルムおよびカバーは、一体であってもよい。
【0089】
図5A、Bは、変形例1に係るカバーおよびフィルムの一体成形物125aの構成の一例を示す図である。
図5Aは、変形例1に係る一体成形物125aの底面図であり、
図5Bは、
図5AのB−B線における断面図である。
図6A、Bは、変形例2に係るカバーおよびフィルムの一体成形物125bの構成の一例を示す図である。
図6Aは、変形例2に係る一体成形物125bの底面図であり、
図6Bは、
図6AのB−B線における断面図である。
【0090】
図5A、Bおよび
図6A、Bに示されるように、一体成形物125a、125bは、互いに隣り合うように配置されている、凸条124およびダイヤフラム166を有する。また、一体成形物125a、125bの大きさおよび外観視形状は、エミッタ本体121の大きさに応じて適宜変更されうる。一体成形物125a外観視形状は、矩形状であってもよいし、一体成形物125bの外観視形状は、長円形状であってもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、封水収容部175を構成する凸条124および凹条172の形状が、それぞれ円筒形状である態様について説明したが、本発明に係る凸条124および凹条172の形状は、それぞれ直方体形状であってもよい。この場合、凹条172は、第4接続用貫通孔174の開口部を取り囲むように配置されておらず、凹条172の両端が逆流防止用凹部171の側壁面に接続されるように配置されている。たとえば、逆流防止用凹部171を平面視したときに、凹条172は、逆流防止用凹部171の底面に開口している、第3接続用貫通孔173の開口部と、第4接続用貫通孔174の開口部とを接続する仮想線分に対して直交する方向に沿うように配置されている。
【0092】
また、本発明に係るエミッタおよび点滴灌漑用チューブの構成は、上記実施の形態に係るエミッタ120および点滴灌漑用チューブ100に限定されず、例えば、エミッタは、第1減圧流路142、第2減圧流路144および流量調整部160を有していなくてもよい。この場合、エミッタは、少なくともエミッタ本体およびカバーによって構成される。
【0093】
また、上記実施の形態では、エミッタ120およびチューブ110が接合されることにより、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143および第2減圧流路144が形成されている態様について説明したが、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143および第2減圧流路144は、あらかじめエミッタ120内に流路として形成されていてもよい。