特許第6831781号(P6831781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6831781光スイッチ、およびクロストーク低減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831781
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】光スイッチ、およびクロストーク低減方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/35 20060101AFI20210208BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20210208BHJP
   H04Q 3/52 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   G02B6/35
   G02B26/08 A
   H04Q3/52 101B
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-522536(P2017-522536)
(86)(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公表番号】特表2017-536754(P2017-536754A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】GB2015053146
(87)【国際公開番号】WO2016063054
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2018年8月21日
(31)【優先権主張番号】1418719.9
(32)【優先日】2014年10月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517141236
【氏名又は名称】フーバー プラス スーナー ポラティス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ラムセス ピアーコ
【審査官】 河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−087130(JP,A)
【文献】 特開2002−262318(JP,A)
【文献】 特表平09−508218(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/011692(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08−26/10
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容量性負荷であるアクチュエータに印加される電圧信号をスイッチングする光スイッチであって、
複数のチャネルの動作を制御するコントローラを備え、
前記複数のチャネルのそれぞれが、個々の電気的ドライバー回路と、前記電気的ドライバー回路によって前記電圧信号が印加される前記アクチュエータと、を有し、
前記複数のチャネルは、同一の電源およびグラウンドを共有し、
前記コントローラが、前記複数のチャネルのうち第1のチャネルの電圧スイッチング出力がある期間に前記電圧スイッチング出力がない期間をインターリーブする動作を、出力電圧が所定のレベルから他のレベルにスイッチングしている間に行うことにより、前記電気的ドライバー回路を制御する光スイッチ。
【請求項2】
前記出力電圧がスイッチングされている間、1または複数の非スイッチング状態の電気的ドライバー回路が、比較的高いインピーダンスの状態にある請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項3】
前記非スイッチング状態の前記電気的ドライバー回路の電圧が、所定の電気的ドライバー回路のスイッチング中にリサンプリングされる請求項に記載の光スイッチ。
【請求項4】
スイッチングの期間がスイッチングのない期間であるリサンプリングの期間よりも長い請求項に記載の光スイッチ。
【請求項5】
いくつかの個々の前記電気的ドライバー回路が単一のチップに集積化されている請求項1からのいずれか一項に記載の光スイッチ。
【請求項6】
前記アクチュエータが圧電アクチュエータである請求項1からのいずれか一項に記載の光スイッチ。
【請求項7】
複数の容量性負荷であるアクチュエータに印加される電圧信号をスイッチングする光スイッチにおけるクロストーク低減方法であって、
複数のチャネルのそれぞれが、個々の電気的ドライバー回路と、前記電気的ドライバー回路によって前記電圧信号が印加される前記アクチュエータと、を有し、
前記複数のチャネルは、同一の電源およびグラウンドを共有し、
前記複数のチャネルのうち第1のチャネルの電圧スイッチング出力がある期間に前記電圧スイッチング出力がない期間をインターリーブする動作を、出力電圧が所定のレベルから他のレベルにスイッチングしている間に行うステップを含むクロストーク低減方法。
【請求項8】
前記出力電圧がスイッチングされている間、1または複数の非スイッチング状態の電気的ドライバー回路が、比較的高いインピーダンスの状態にある、請求項に記載のクロストーク低減方法。
【請求項9】
前記非スイッチング状態の前記電気的ドライバー回路の電圧が、所定の電気的ドライバー回路のスイッチング中にリサンプリングされる、請求項に記載のクロストーク低減方法。
【請求項10】
スイッチングの期間がスイッチングのない期間であるリサンプリングの期間よりも長い請求項に記載のクロストーク低減方法。
【請求項11】
いくつかの個々の前記電気的ドライバー回路が単一のチップに集積化されている請求項から10のいずれか一項に記載のクロストーク低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スイッチ、およびクロストーク低減方法に関する。
【0002】
また、本発明は、容量性負荷(好ましい実施形態では、ドライバー回路および容量性負荷の全体が「チャネル」と呼ばれる)に対する電気的ドライバーに関し、より詳細には、他のチャネルの電圧をスイッチングすることによって引き起こされる特定のチャネルの動的な電気的クロストーク電圧を低減させる技術に関する。
【背景技術】
【0003】
圧電アクチュエータは、正確な位置決めが必要とされる多種多様な分野で使用される。本出願人による以前の特許公報は、従来技術の構成の例を提供する。特に、以下の従来技術の文献、すなわち、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、および特許文献8が参考文献として知られている。
【0004】
電気的見地から、これらの従来技術のスイッチで用いられるアクチュエータは、主として容量性負荷であり、ドライバー回路によってアクチュエータに電圧信号を印加することによって制御される。いくつかの適用例、特に、光スイッチの分野では、制御する電圧信号を特定の時間フレーム内でスイッチングする圧電アクチュエータの大きなアレイが必要である。
【0005】
いくつかのドライバー回路が、グラウンドおよび正の電源線のいずれかまたは両方を共有することにより同一の電源を有する場合、駆動電圧間の電気的クロストークが重大な問題になることがある。特に、特定のドライバーにおいて電圧信号をスイッチングすることによって生成される動的な電気的クロストーク電圧が問題になる。それは、位置フィードバック・ループによる補償を実現するのが(圧電アクチュエータの場合に)非常に難しいからであり、その主な理由は位置フィードバック・ループの帯域幅の限界である。この問題は、単一のチップ上にいくつかのドライバーを集積化する場合により顕著になる。それは、典型的にプリント回路板(PCB)上のトレースよりも大きなインピーダンスを有するオンチップのグラウンドおよび電源線の性質によるものである。
【0006】
クロストークの原因は、電源/グラウンド給電線のインピーダンス、またはある場合にはドライバー回路に電力を供給するために使用される電圧源の出力インピーダンスである。チャネル電圧間の動的な電気的クロストークを低減させるための単純な方法は、給電のインピーダンスを低下させて電圧源の出力インピーダンスを低下させること、および/または電圧源により多くのデカップリングを追加することである。しかしながら、PCB上にドライバーを近接して配置し、あるいはチップ上にいくつかのドライバーを集積化することで、実現可能なインピーダンスに下限が生じてしまう。
【0007】
ドライバー間のクロストークに関して上述の問題があるため、チャネル間の電気的クロストークを低減させるためのシステムレベルの解決策が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7026745号明細書
【特許文献2】米国特許第7095915号明細書
【特許文献3】米国特許第7106925号明細書
【特許文献4】米国特許第7231126号明細書
【特許文献5】米国特許第7389016号明細書
【特許文献6】米国特許第7876981号明細書
【特許文献7】米国特許第7522789号明細書
【特許文献8】米国特許第8358929号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
クロストークを低減するための選択すべき解決策は、第1および第2の広い独立態様として提示される。
【0010】
第1の広い独立態様において、本発明は、複数のアクチュエータを備える光スイッチであって、複数のチャネルの動作を制御するコントローラを備え、前記複数のチャネルのそれぞれが少なくとも1つの電気的ドライバーと少なくとも1つのアクチュエータとを有し、前記コントローラが、1または複数の前記電気的ドライバーに対して電圧スイッチング出力がある期間に前記電圧スイッチング出力がない期間をインターリーブ(interleave)する動作を、出力電圧が所定のレベルから他のレベルにスイッチングしている間に行うことにより、前記複数のチャネルの動作を制御する光スイッチを提供する。
【0011】
この構成によって、隣接するチャネルの平均的なクロストークを著しく低下させることができるため、この構成は、特に有利である。
【0012】
第2の広い独立態様において、本発明は、複数のアクチュエータを備える光スイッチであって、複数のチャネルの動作を制御するコントローラを備え、前記複数のチャネルのそれぞれが少なくとも1つの電気的ドライバーと少なくとも1つのアクチュエータとを有し、前記コントローラが、第1のチャネルの少なくとも1つの前記電気的ドライバーに対して出力電圧を所定のレベルから他のレベルにスイッチングする動作を、少なくとも1つの他のチャネルの少なくとも1つの他の前記電気的ドライバーが比較的高いインピーダンス・モードにある間に行うことによって、前記複数のチャネルの動作を制御する光スイッチを提供する。
【0013】
この構成は、アグレッサーとも呼ばれる第1のチャネルによって引き起こされるクロストークから他のチャネルの電圧を隔離するため、この構成は、特に有利である。この構成は、実質的にクロストークを低減させる。
【0014】
従属態様において、前記スイッチは、直前の前記出力電圧の出力値をチャネル・キャパシタンス上にサンプリングすることによって比較的高いインピーダンス・モードにある複数の他の前記電気的ドライバーを備える。この構成は、起こり得るクロストークのプロファイルに対して影響を与えるため、特に有利である。
【0015】
従属態様において、1または複数の非スイッチング状態の前記電気的ドライバーが、所定の電気的ドライバーのスイッチング中に比較的高いインピーダンス・モードにある。
【0016】
従属態様において、1または複数の非スイッチング状態の前記電気的ドライバーの1つまたは複数の電圧が、所定の前記電気的ドライバーのスイッチング中にリサンプリングされる。
【0017】
従属態様において、スイッチングの期間は、リサンプリングの期間よりも長い。この構成は、スイッチング時間を著しく増加させずにクロストークを低減させる上で効率的である。
【0018】
従属態様において、いくつかの個々の前記電気的ドライバーが単一のチップに集積化されている。
【0019】
従属態様において、前記アクチュエータが圧電アクチュエータである。圧電アクチュエータは、ラミネート構造を有する細長いビームであるのが好ましい。ビームは、ビームの一方の端部で好ましくは支持され、ビームの端部を少なくとも2次元で変位させるために曲がるようになっている。ビームの端部の変位により、コリメーター等の光学素子の向きが駆動される。
【0020】
さらなる広い独立態様において、本発明は、複数のチャネルを備える光スイッチにおけるクロストーク低減方法であって、
それぞれのチャネルが少なくとも1つの電気的ドライバーと少なくとも1つのアクチュエータとを有し、1または複数の前記電気的ドライバーに対して電圧スイッチング出力がある期間に電圧スイッチング出力がない期間をインターリーブする動作を、出力電圧が所定のレベルから他のレベルにスイッチングしている間に行うステップを含むクロストーク低減方法を提供する。
【0021】
さらなる広い独立態様において、本発明は、複数のチャネルを備える光スイッチにおけるクロストーク低減方法であって、それぞれのチャネルが少なくとも1つの電気的ドライバーと少なくとも1つのアクチュエータとを有し、第1のチャネルの少なくとも1つの前記電気的ドライバーに対して出力電圧を所定のレベルから他のレベルにスイッチングする動作を、少なくとも1つの他のチャネルの少なくとも1つの他の前記電気的ドライバーが比較的高いインピーダンス・モードにある間に行うステップを含むクロストーク低減方法を提供する。
【0022】
従属態様において、前記他の電気的ドライバーが、直前の前記出力電圧の出力値をチャネル・キャパシタンス上にサンプリングすることにより比較的高いインピーダンス・モードにある。
【0023】
従属態様において、1または複数の非スイッチング状態の前記電気的ドライバーが、所定の前記電気的ドライバーのスイッチング中に比較的高いインピーダンス・モードにある。
【0024】
従属態様において、1または複数の非スイッチング状態の前記電気的ドライバーの1つまたは複数の電圧が、所定の前記電気的ドライバーのスイッチング中にリサンプリングされる。
【0025】
従属態様において、スイッチングの期間がリサンプリングの期間よりも長い。
【0026】
従属態様において、いくつかの個々の前記電気的ドライバーが単一のチップに集積化されている。
【0027】
さらなる独立態様において、本発明は、複数のチャネルの動作の制御方法であって、それぞれのチャネルが少なくとも1つの電気的ドライバーと少なくとも1つのアクチュエータとを有し、1または複数の前記電気的ドライバーに対して電圧スイッチング出力がある期間に前記電圧スイッチング出力がない期間をインターリーブする動作を、出力電圧が所定のレベルから他のレベルにスイッチングしている間に行うステップを含む制御方法を提供する。
【0028】
さらなる独立態様において、本発明は、複数のチャネルの動作の制御方法であって、それぞれのチャネルが少なくとも1つの電気的ドライバーと少なくとも1つのアクチュエータとを有し、少なくとも1つの前記電気的ドライバーに対して出力電圧を所定のレベルから他のレベルにスイッチングする動作を、他の前記電気的ドライバーが比較的高いインピーダンス・モードにある間に行うステップを含む制御方法を提供する。
【0029】
さらなる独立態様において、本発明は、複数のアクチュエータを備える光スイッチであって、複数のチャネルの動作を制御するコントローラを備え、前記複数のチャネルのそれぞれが少なくとも1つの電気的ドライバーと少なくとも1つのアクチュエータとを有し、前記コントローラが、1または複数の前記電気的ドライバーに対して電圧スイッチング出力がある期間に前記電圧スイッチング出力がない期間をインターリーブする動作を、出力電圧が所定のレベルから他のレベルにスイッチングしている間に行うことにより、前記複数のチャネルの動作を制御する光スイッチを提供する。
【0030】
さらなる独立態様において、本発明は、複数のアクチュエータを備える光スイッチであって、複数のチャネルの動作を制御するコントローラを備え、前記複数のチャネルのそれぞれが少なくとも1つの電気的ドライバーと少なくとも1つのアクチュエータとを有し、前記コントローラが、少なくとも1つの前記電気的ドライバーに対して出力電圧を所定のレベルから他のレベルにスイッチングする動作を、他の前記電気的ドライバーが比較的高いインピーダンス・モードにある間に行うことによって、前記複数のチャネルの動作を制御する光スイッチを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】いくつかのチャネルが同一の電源Vs+およびグラウンドを共有する構成を、チャネル0で発生するスイッチング事象に関連付けられた典型的な電圧と共に示す図である。
図2】単一のチャネルで測定された15個の「近隣の」チャネル電圧スイッチングによるクロストーク電圧を示す図である。スイッチング特性および結果として生じるクロストーク電圧は、通常のスイッチ、スタガード・スイッチ、および非スイッチング期間中に高インピーダンス(HI)モードを有するスタガード・スイッチングに対して示されている。
図3】単一のチャネルで測定された15個の「近隣の」チャネル電圧がHIモードを有するスタガード・スイッチングを使用してスイッチングする間の、クロストーク電圧を示す図である。スイッチング期間および非スイッチング期間が等しい場合の結果が、より短い非スイッチング(リサンプリング)期間を使用した結果と共に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明のある特定の実施形態は、容量性負荷に用いられるドライバー間の電気的クロストークを低減させる技術に関する(ドライバー回路は、容量性負荷と共に「チャネル」と呼ばれる)。より詳細には、本技術は、ある特定の実施形態において、他のドライバーの電圧スイッチング事象によって生成される、1または複数のドライバー信号に対する動的なクロストークを低減させることを目的としている。この技術の実施形態は、以下の部分を備える。
【0033】
(a)特定のドライバーの所定の電圧レベルから次の電圧レベルへの出力電圧のスイッチングは、いくつかの短い期間に分割される。この期間において、電圧出力は、全電圧の一部が電圧スイッチングの発生しない期間でインターリーブされてスイッチングする。このタイプのスイッチングは、「スタガード・スイッチング」と呼ばれ、平均的な動的な電気的クロストークを低下させることができる。
【0034】
(b)特定の出力ドライバー(アグレッサー)の出力電圧がスイッチングされる期間において、影響を受ける他のドライバーの出力が高インピーダンス・モードの状態にされ、これらの他のドライバーの直前値をチャネル・キャパシタンス上に有効にサンプリングする。このようにして、アグレッサーによって引き起こされるクロストークから他のチャネルの電圧を隔離する。
【0035】
(c)(a)および(b)で述べられたクロストーク低減方法は、スタガード・スイッチング・モードに統合されてもよく、その場合、非スイッチング・ドライバーは、ある特定のドライバーの電圧のスイッチング中に高インピーダンス・モードの状態にされる(出力が高インピーダンスによってグラウンド/電源から隔離される)。スイッチングのないインターリーブされた期間に、すべてのドライバーは、高インピーダンス・モードから脱した状態にされ、非スイッチング・ドライバーの電圧をリサンプリングすることになる。
【0036】
(d)(c)に記載された方法は、スイッチング期間およびリサンプリング期間の長さが等しい状態、またはスイッチング期間およびリサンプリング期間に差がある状態のいずれで行われてもよい。スイッチング時間よりも著しく短いリサンプリング期間を使用することによって、全体のスイッチング時間は、前述のクロストーク低減技法を全く用いないスイッチに対してわずかに増加する。
【0037】
容量性負荷に特定の電圧をかけるために使用される複数のドライバー回路が同一の電気的グラウンドまたは電源線を使用する場合、他のチャネルがそれらチャネルの電圧をスイッチングしているときに、特定のチャネル(ドライバー回路と容量性負荷の組合せ)で動的なクロストーク電圧が発生する場合がある。これは、電源/グラウンド線のインピーダンスがゼロでないことによって引き起こされる。その結果、ドライバーがその出力電圧をスイッチングするときに、電流が電源線から供給され、またはグラウンド線に吸収されて誤差電圧を生じる。1つのチップ上にいくつかのドライバーを集積化する場合、クロストークの量は、個々のドライバー回路のクロストークの量に対して大きくなる可能性がある。これは、典型的には、チップ上の電源/グラウンド線のインピーダンスの方が、プリント基板上の配線と比較して大きいためである。
【0038】
図1は、いくつかのチャネルが同一の電源Vs+およびグラウンドを共有する構成を示す。ある1つのチャネル(この場合、チャネル0)でのスイッチング事象は、同一の電源およびグラウンド線を共有する他のチャネルにおいてクロストーク電圧を引き起こす。典型的なスイッチングおよびクロストーク電圧波形が右に示されている。
【0039】
システムレベルの解決策は、スイッチング・ドライバーによって非スイッチング駆動電圧に引き起こされるクロストーク電圧を低下させることである。1つの解決策は、スイッチング時間をより短い期間に分割し、スイッチング期間が非スイッチング期間にインターリーブされているようにすることであり、スタガード・スイッチングと呼ばれる。これによって、非スイッチング・チャネルにおける平均的なクロストーク電圧を低下させることができる。
【0040】
第2の解決策は、別のドライバー(アグレッサー)のスイッチングが発生する時間中に、非スイッチング・ドライバーを高インピーダンス・モードの状態にすることである。これは、チャネルの負荷キャパシタンス上に正確な電圧を有効にサンプリングし、これによってチャネルをクロストーク電圧から隔離する。ドライバーあるいはドライバーと(寄生並列抵抗器によって生じる)負荷の両方の電流リークのために、チャネルの電圧が時間と共に低下する。チャネル電圧のこの低下は、アグレッサーのスイッチング時間と共に増加し、場合によっては大きくなりすぎることがある。これは、第3の解決策を使用することによって解決される。
【0041】
第3の解決策は、第1の解決策および第2の解決策を組み合わせることであり、このことは、第1の解決策の非スイッチング期間に、他の非スイッチング・チャネルが高インピーダンス・モードに設定されることを意味する。スイッチング期間に対して適切な時間を選択することによって、チャネル電圧の低下を制限することができる。通常のスイッチングと比較して、第1の解決策および第3の解決策を使用する結果が図2に示されている。
【0042】
図2は、チャネル0〜7およびチャネル9〜15の電圧が電源電圧からグラウンド・レール(ground rail)にスイッチングされ、一方、チャネル8の電圧がほぼ中間に保持されている16個の集積化されたチャネル・ドライバーを有するチップについて、時間(X軸)の関数において測定されたクロストーク(左のY軸)およびスイッチング電圧(右のY軸)を示す。3つの異なるスイッチング方法、すなわち、通常のスイッチング、スタガード・スイッチング、および非スイッチング・ドライバー(チャネル8)が他のチャネルのスイッチング中に高インピーダンス(HI)モードの状態にされているスタガード・スイッチングが使用されている。この測定では、スイッチング期間および非スイッチング期間の長さは等しい。通常のスイッチングは、最短のスイッチング時間を有するが、最も高い平均的なクロストークも有する。一方、それに比較すると、HIモードを有するスタガード・スイッチングの場合の平均的なクロストークは低い。
【0043】
図2において、HIモードを有するスタガード・スイッチに対して非スイッチング・チャネルの電圧の低下を観察することができる。この電圧の低下は、他のチャネルのスイッチング中に発生し、非スイッチング・チャネルのドライバー回路の出力における有限の抵抗によって引き起こされる。その場合、チャネル電圧Vdの低下は、次のように表わすことができる。すなわち、
【数1】
【0044】
ここで、Vsはチャネルでサンプリングされる電圧であり、tは非スイッチング・チャネルが高インピーダンス・モードの状態にされる間の時間であり、Rはチャネルで測定される抵抗率であり、Cは負荷のキャパシタンスである。短いスイッチング時間を選択することによって、電圧の低下を制限することができるが、スイッチングおよび非スイッチング期間にかかる時間が等しい場合、スイッチング時間は2倍になる。
【0045】
第4の解決策は、不均等なスイッチングおよび非スイッチング時間を用いた第3の解決策を使用することであり、それによって、通常のスイッチングと比較してスイッチング時間の増加を制限することができる。このスイッチング時間の低減は、非スイッチング(リサンプリング)時間をスイッチング時間よりも著しく小さくすることによって実現され、図3に示されている。
【0046】
図3は、16個の集積されたチャネル・ドライバーを有するチップについて、時間(X軸)に対して、測定されたクロストーク電圧(左のY軸)と、測定されたスイッチング電圧(右のY軸)を示したものである。ここで、チャネル・ドライバーの電圧は、チャネル0〜7およびチャネル9〜15が電源電圧からグラウンド・レールにスイッチングされ、チャネル8がほぼ中間に保持されている。HIモードを有するスタガード・スイッチングが2つの測定値に使用され、一方の測定値は、等しいスイッチング期間および非スイッチング期間を使用する結果を示し、もう一方は、より短い非スイッチング(リサンプリング)期間の場合の結果を表す。両方の場合で同様のクロストーク電圧を示すが、より短い非スイッチング期間の使用によって、著しく短いスイッチング時間(12msの代わりにほぼ8ms)とすることができる。
図1
図2
図3