特許第6831791号(P6831791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831791
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】ロールインマーガリン
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20210208BHJP
   A21D 2/14 20060101ALI20210208BHJP
   A21D 13/16 20170101ALI20210208BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   A23D7/00 506
   A21D2/14
   A21D13/16
   A21D10/00
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-550270(P2017-550270)
(86)(22)【出願日】2016年11月1日
(86)【国際出願番号】JP2016082384
(87)【国際公開番号】WO2017082113
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-221626(P2015-221626)
(32)【優先日】2015年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雄士
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−050323(JP,A)
【文献】 特開2009−124970(JP,A)
【文献】 特開2013−188205(JP,A)
【文献】 特開2015−012829(JP,A)
【文献】 特開2014−068583(JP,A)
【文献】 特開2012−135231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次発酵後にロールインマーガリンを折り込んで成型した生地が冷凍された成型冷凍生地、又は、前記成型後にホイロで最終発酵をした後に冷凍されたホイロ後冷凍生地に用いられるロールインマーガリンであって、
ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、下記条件1)〜8)を全て満たす、冷凍生地用ロールインマーガリン。
1)トランス脂肪酸5重量%以下
2)SSSを6〜10重量%
3)S2Uを33〜45重量%
4)SSS+S2Uを39〜53重量%
5)SU2+UUUを23〜45重量%
6)SSU/SUS(重量比)1.8〜2.5
7)P/St(重量比)3〜10
8)パーム油又はパーム分別油のエステル交換油の分別液状部を60〜87重量%
S:C16以上の飽和脂肪酸、
U:C16以上の不飽和脂肪酸、
SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド、
S2U:Sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド、
SU2:Sが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド、
UUU:Uが3分子結合しているトリグリセリド、
SSU:1,2位又は2,3位にS、1又3位にUが結合しているトリグリセリド、
SUS:1,3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリド、
P:パルミチン酸、
St:ステアリン酸
【請求項2】
ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、乳脂肪を5〜35重量%、液油を2.5〜30重量含有し、ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、PPOを15.5〜21重量%含有する請求項1記載の冷凍生地用ロールインマーガリン。
PPO:1,2位又は2,3位にP、1又3位にOが結合しているトリグリセリド
O:オレイン酸
【請求項3】
ロールインマーガリンの油脂中、ラードを含まない請求項1又は2に記載の冷凍生地用ロールインマーガリン。
【請求項4】
エタノールを1〜20重量%含有する請求項1〜3何れかに記載の冷凍生地用ロールインマーガリン。
【請求項5】
生地全体中の水分含量が32〜39重量%である生地と共に使用する請求項1〜4何れかに記載の冷凍生地用ロールインマーガリン。
【請求項6】
一次発酵後にロールインマーガリンを折り込んで成型した生地が冷凍された成型冷凍生地、又は、前記成型後にホイロで最終発酵をした後に冷凍されたホイロ後冷凍生地である冷凍生地であって、
冷凍生地全体中、水分を24〜35重量%、及び、請求項1〜5何れかに記載のロールインマーガリンを15〜30重量%含有する冷凍生地。
【請求項7】
請求項6に記載の冷凍生地を焼成してなる層状膨化食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍生地用のロールインマーガリンに関する。
【背景技術】
【0002】
デニッシュやクロワッサンといった層状膨化食品は、薄く延ばした生地にロールインマーガリンを載せて折り畳み、更に伸展して折り畳んで複数の層を形成し、所定の形状に成型した後、必要に応じて発酵した後、焼成して製造されるものであり、製造に手間がかかる。しかし、成型後、焼成前の生地を一旦冷凍した冷凍生地を利用することで、作業を軽減でき、誰でも高品質のデニッシュやクロワッサンを作ることが可能になる。冷凍生地はスクラッチ製法の生地に比べて、氷結晶の生成を抑制するために生地中の水分含量を少なくする必要があるが、水分含量が少ないと生地が硬く、縮みやすくなるので、縮みに耐えうるようにロールインマーガリンを硬くする必要がある。しかし、ロールインマーガリンを硬くするために融点の高い油脂を用いると層状膨化食品の口溶けが悪くなるといった問題がある。一方、ロールインマーガリンで製造したデニッシュやクロワッサンは、昨今の乳原料不足によって乳脂肪の使用量が限られるため、バターだけで製造されたデニッシュやクロワッサンに比べて、浮きやジューシー感、バター風味の強さが劣っている。ここで、浮きとは、層状膨化食品の各層の間に生じる隙間のことをいい、層状膨化食品では浮きが大きいことが好まれる。
【0003】
口溶け悪化とバター風味不足の問題を解決するために、特許文献1では、乳脂肪と特定の油脂を特定比率(質量比)で含有する可塑性油中水型乳化油脂組成物が開示されている。しかし、可塑性油中水型乳化油脂組成物中、ステアリン酸の割合が多いため口溶け改善効果が十分でなく、対称型トリグリセリドが多く粗大結晶が出来やすいため前記組成物の可塑性が悪いといった問題がある。
【0004】
また、口溶け悪化と浮き不足の問題を解決するために、特許文献2では、特定のトリグリセリド組成や脂肪酸組成を有するロールインマーガリンが開示されているが、高融点成分が少ないため、水分含量の少ない生地と共に使用した場合に浮きが悪くなるといった問題がある。更に、特許文献3では、可塑性油中水型乳化物中、特定量のラウリン系ハードバター、パーム油起源の非選択的エステル交換油脂及び乳脂肪を含有し、特定温度におけるSFCが特定値であるロールイン用可塑性油中水型乳化物が開示されている。しかし、ラウリン系ハードバターを使用するため、低温での可塑性が悪く、伸展中に割れて浮きが悪くなるといった問題がある。
【0005】
また、浮き不足の問題を解決するために、特許文献4では、エタノールを含有するロールイン用油中水型乳化油脂組成物が開示されているが、該組成物中に乳脂肪を含まないため、バター風味の強さが十分ではなく、全実施例で部分水素添加油脂を使用して、トランス脂肪酸を含むことになり、健康志向に叶うものではない。更に、上記全ての先行文献において、各乳化物またはロールインマーガリンを、冷凍生地に用いることの記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−50323号公報
【特許文献2】国際公開第13/133138号公報
【特許文献3】特開2008−193974号公報
【特許文献4】特開平10−229820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水分含量の少ない生地と共に使用する低トランス脂肪酸のロールインマーガリンであって、これを用いて製造した層状膨化食品の浮き、ジューシー感及び口溶けが良好で、可塑性が良い冷凍生地用ロールインマーガリン、及び、該ロールインマーガリンを用いて製造した層状膨化食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、トランス脂肪酸が特定量以下で、SSS、S2U、SSS+S2U及びSU2+UUUを特定量含み、SSU/SUS(重量比)及びP/St(重量比)が特定値であるロールインマーガリンを用いた冷凍生地は、浮きとジューシー感が良好で、口溶けと可塑性が良い層状膨化食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
但し、SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド、S2U:Sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド、SU2:Sが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド、UUU:Uが3分子結合しているトリグリセリド、SSU:1,2位又は2,3位にS、1又3位にUが結合しているトリグリセリド、SUS:1,3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリド、P:パルミチン酸、St:ステアリン酸である。
【0010】
即ち、本発明の第一は、ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、下記条件1)〜7)を全て満たす、冷凍生地用ロールインマーガリンに関する。1)トランス脂肪酸5重量%以下、2)SSSを6〜10重量%、3)S2Uを33〜45重量%、4)SSS+S2Uを39〜53重量%、5)SU2+UUUを23〜45重量%、6)SSU/SUS(重量比)1.8〜2.5、7)P/St(重量比)3〜10。S:C16以上の飽和脂肪酸、U:C16以上の不飽和脂肪酸、SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド、S2U:Sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド、SU2:Sが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド、UUU:Uが3分子結合しているトリグリセリド、SSU:1,2位又は2,3位にS、1又3位にUが結合しているトリグリセリド、SUS:1,3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリド、P:パルミチン酸、St:ステアリン酸。好ましい実施態様は、ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、乳脂肪を5〜35重量%、液油を2.5〜30重量%、パーム系油脂を60〜87重量%含有し、ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、PPOを15.5〜21重量%含有する上記記載の冷凍生地用ロールインマーガリン(PPO:1,2位又は2,3位にP、1又3位にOが結合しているトリグリセリド、O:オレイン酸)に関する。より好ましくは、ロールインマーガリンの油脂中、ラードを含まない上記記載の冷凍生地用ロールインマーガリン、更に好ましくは、エタノールを1〜20重量%含有する上記記載の冷凍生地用ロールインマーガリン、特に好ましくは、生地全体中の水分含量が32〜39重量%である生地と共に使用する上記記載の冷凍生地用ロールインマーガリン、に関する。本発明の第二は、冷凍生地全体中、水分を24〜35重量%、及び、上記記載のロールインマーガリンを15〜30重量%含有する冷凍生地に関する。本発明の第三は、上記記載の冷凍生地を焼成してなる層状膨化食品に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従えば、水分含量の少ない生地と共に使用する低トランス脂肪酸のロールインマーガリンであって、これを用いて製造した層状膨化食品の浮き、ジューシー感及び口溶けが良好で、可塑性が良い冷凍生地用ロールインマーガリン、及び、該ロールインマーガリンを用いて製造した層状膨化食品を提供することができる。さらに、本発明の好適な態様によれば、該層状膨化食品のバター風味を強めることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0013】
本発明の冷凍生地用ロールインマーガリンを構成する油脂のトリグリセリド組成及び脂肪酸組成は、トランス脂肪酸含量が特定量以下で、SSS、S2U及びそれらの合計含有量、SU2とUUUの合計含有量が特定量であり、SSU/SUS(重量比)及びP/St(重量比)が特定値である。本発明において、Sは飽和脂肪酸のことであり、Uは不飽和脂肪酸のことである。
【0014】
本発明のロールインマーガリン中に含まれる油脂において、健康上の観点からトランス脂肪酸含量は、油脂全体中5重量%以下であって、3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。ここでトランス脂肪酸を実質的に含有しないとは、本発明のロールインマーガリンに、水素添加した油脂原料を配合しないことである。なお、油脂中のトランス脂肪酸含量は、AOCS Ce 1f−96に準じて測定できる。
【0015】
前記ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中には、SSSを6〜10重量%含有することが好ましく、6.5〜9.5重量%がより好ましく、7〜9重量%が更に好ましい。6重量%より少ないと、ロールインマーガリンが柔らかすぎて、生地とともに伸展させる際、生地中に練りこまれてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。10重量%より多いとロールインマーガリンの融点が高くなり、焼成後の層状膨化食品の口溶けが良くない場合がある。なおここで、SSSとは、Sが3分子結合しているトリグリセリドのことである。
【0016】
前記ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中には、S2Uを33〜45重量%含有することが好ましく、35〜44重量%がより好ましく、37〜43重量%が更に好ましい。33重量%より少ないと、ロールインマーガリンが柔らかすぎて、生地とともに伸展させる際、生地中に練りこまれてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。45重量%より多いと、ロールインマーガリンが硬すぎて、生地とともに伸展させる際、ロールインマーガリンが割れてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。なおここで、S2Uとは、Sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリドのことである。
【0017】
前記ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中には、SSSとS2Uを合計で39〜53重量%含有することが好ましく、41〜52重量%がより好ましく、43〜51重量%が更に好ましい。39重量%より少ないと、ロールインマーガリンが柔らかすぎて、生地とともに伸展させる際、生地中に練りこまれてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。53重量%より多いと、焼成後の層状膨化食品の口溶けが良くない場合や、ロールインマーガリンが硬すぎて、生地とともに伸展させる際、ロールインマーガリンが割れてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。
【0018】
前記ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中には、SU2とUUUを合計で23〜45重量%含有することが好ましく、24〜40重量%がより好ましく、25〜35重量%が更に好ましい。23重量%より少ないと、ジューシー感が劣る場合がある。45重量%より多いとロールインマーガリンが柔らかすぎて、生地とともに伸展させる際、生地中に練りこまれてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。なおここで、SU2とは、Sが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリドのことであり、UUUとは、Uが3分子結合しているトリグリセリドのことである。
【0019】
前記ロールインマーガリンに含まれる油脂中のSSU/SUS(重量比)は、1.8〜2.5であることが好ましく、1.9〜2.4がより好ましく、1.9〜2.2が更に好ましい。1.8未満では、粗大結晶が増え、ロールインマーガリンの可塑性が悪くなる場合がある。2.5を超える場合は、そのような油脂を得るための製造条件が煩雑になり、高コストになる場合がある。
【0020】
前記ロールインマーガリンに含まれる油脂中のP/St(重量比)は、3〜10であることが好ましく、3〜8がより好ましく、4〜6が更に好ましい。3未満では、ロールインマーガリンの融点が高くなり、焼成後の層状膨化食品の口溶けが悪くなる場合があり、10を超えると焼成後の層状膨化食品の浮きが出ない場合がある。なお、P/St(重量比)は、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法暫11−2003及び暫15−2003」に記載されたメチルエステル化法に準拠して分析できる。ここで、Pはパルミチン酸のことであり、Stはステアリン酸のことである。
【0021】
前記SSS、S2U、SU2、UUU及びP2Oの含有量は、ガスクロマトグラフ法により分析できる。分析条件は「JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)」記載の方法に準拠すればよい。また、SSU、SUSの各重量は、HPLCを用いて硝酸銀カラムにより分析でき、SSU/SUS重量比はそれらから算出できる。分析条件は「Journal of the American Oil Chemists Society,68,289-293,1991」記載の方法に準拠すればよい。
【0022】
本発明のロールインマーガリンには乳脂肪が配合されていることが好ましい。前記ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中には、乳脂肪を5〜35重量%含有することが好ましく、7.5〜30重量%がより好ましく、10〜25重量%が更に好ましく、10〜16重量%が特に好ましい。5重量%より少ないと、バター風味が弱い場合があり、35重量%より多いと焼成後の層状膨化食品の浮きが出ない場合がある。また、乳原料不足によって乳脂肪の使用量が限られる時は特に、本発明において乳脂肪の含有量が少ない程、本発明の効果を享受できる。前記乳脂肪としては、生乳、牛乳、特別牛乳等の乳や、バター、発酵バター、クリーム、発酵クリーム等の乳製品等に含まれる脂肪分であれば特に限定はない。
【0023】
本発明のロールインマーガリンには液油が配合されていることが好ましい。前記ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中には、液油を2.5〜30重量%含有することが好ましく、4〜25重量%がより好ましく、5〜20重量%が更に好ましい。2.5重量%より少ないと、バター風味を弱く感じ、ロールインマーガリンが硬すぎて、生地とともに伸展させる際、ロールインマーガリンが割れてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪く、ジューシー感が劣る場合がある。30重量%より多いとロールインマーガリンが柔らかすぎて、生地とともに伸展させる際、生地中に練りこまれてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。前記液油としては、20℃で液状の油であれば特に限定されず、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、サフラワー油等が挙げられる。
【0024】
前記ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、PPOを15.5〜21重量%含有することが好ましく、16.5〜21重量%がより好ましく、16.5〜20重量%が更に好ましい。16.5重量%より少ないと、バター風味を弱く感じる場合があり、21重量%より多いとそのようなトリグリセリドを得るための製造条件が煩雑になり、高コストになる場合がある。なおここで、PPOとは、1,2位又は2,3位にP、1又3位にOが結合しているトリグリセリドのことであり、Pはパルミチン酸のことであり、Oはオレイン酸のことである。
【0025】
前記PPOを含む油脂としては、PPOを含み、融点が20℃を超えれば特に限定されないが、コストの観点から、パーム油やパーム分別油をエステル交換した油脂、及び、当該エステル交換油の分別油等のパーム系油脂が好ましい。前記パーム油やパーム分別油をエステル交換した油脂としては、パームステアリンのエステル交換油等が挙げられ、エステル交換油の分別油としては、パームステアリンのエステル交換油の分別液状部等が挙げられる。特に、パームステアリンのエステル交換油の分別液状部を本発明のロールインマーガリンに配合すると、層状膨化食品に好ましい風味を付与することができ、好ましい。
【0026】
前記パーム系油脂の含有量は、ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中60〜87重量%が好ましい。そうすれば、PPOの量を容易に上記範囲内に調整することができる。
【0027】
上記においてPPOの含有量は以下のように算出できる。すなわち、ガスクロマトグラフ法によりP2O含有量を分析し、HPLCを用いた硝酸銀カラムでSSO、SOS含有量を分析してSSO/SOS比を算出できる。ここで、上記のような範囲でパーム系油脂を含む場合にはSが極めて少ないので、SSO/SOS比はPPO/POP比と同等として、PPO含有量を算出すれば良い。
【0028】
前記パーム油やパーム分別油のエステル交換油の分別液状部は、パーム油やパーム分別油をランダムエステル交換した後に、固体部を除去して得られる液状部のことである。得られた液状部のヨウ素価は35〜62が好ましく、37〜58がより好ましく、40〜55が更に好ましい。ヨウ素価が35未満であると、分別液状部に含まれる固体部が多くなるため、ロールインマーガリンが硬すぎて、生地とともに伸展させる際、ロールインマーガリンが割れてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合や、焼成後の層状膨化食品の口溶けが悪くなる場合がある。62を超えると、分別液状部に含まれる液状部が多くなるため、ロールインマーガリンが柔らかすぎて、生地とともに伸展させる際、生地中に練りこまれてしまい、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。
【0029】
前記エステル交換に供するパーム油やパーム分別油のヨウ素価は30〜58が好ましく、その範囲であれば、最終的に得られる分別液状部のヨウ素価を35〜62に調整し易い。前記エステル交換に供する油脂としては、例えば、そのままエステル交換に使用する場合、パーム油、パームステアリン、パーム中融点部、パームオレインが挙げられる。パームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームトップオレイン、パームハードステアリンなどヨウ素価が30未満、もしくは58を超えるパーム分別油や極度硬化油は、油脂同士を混合して混合油脂のヨウ素価を30〜58の範囲に調整した後、エステル交換に供することができるし、又これらのエステル交換油を混合して、ヨウ素価を30〜58に調整しても良い。なお、ヨウ素価は、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法2.3.4.1−1996」に準拠して測定できる。
【0030】
前記パーム油やパーム分別油のエステル交換は常法に従って行えばよい。エステル交換に用いる触媒としては、食品用途に用いられる触媒であれば種類を問わずに使用でき、例えばナトリウムメチラートやリパーゼ等が挙げられる。リパーゼは通常トリグリセリドのエステル交換に用いられるリパーゼなら特に種類は選ばないが、パーム油を原料に用いる場合には、対称型トリグリセリドSUSを減少させるため、1,3位だけでなく2位に対してもエステル交換活性を持つものが好ましい。具体的にはThermomyces属由来、Alcaligenes属由来のリパーゼなどが挙げられる。
【0031】
本発明のロールインマーガリンは、前記トリグリセリド組成及び脂肪酸組成を満たす範囲で、前記以外の油脂として、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、ラード、牛脂、魚油や、これらの分別油や極度硬化油、ローエルシン菜種極度硬化油、ハイエルシン菜種極度硬化油を含有することができ、更にこれらのエステル交換油又はこれらと液油とのエステル交換油を含有することができる。ハラルを考慮する場合は、本発明のロールインマーガリンは、ラードを含まないことが好ましい。
【0032】
焼成後の層状膨化食品の浮きを更に良くする目的で、前記ロールインマーガリン全体中には、エタノールを1〜20重量%含有することが好ましく、2〜15重量%がより好ましく、3〜10重量%が更に好ましい。エタノールを1重量%以上含有すると、焼成後の層状膨化食品の浮きをより良好なものとすることができる。しかし、20重量%より多いと焼成後の層状膨化食品が脆く、割れやすくなる場合がある。
【0033】
本発明のロールインマーガリンの製造方法を以下に例示する。油脂を溶解し、必要に応じて、乳化剤、着色料、香料及び酸化防止剤を混合し、60〜75℃になるまで攪拌しながら加熱し油相部を調製する。また、水に対して、必要に応じて、糖類、増粘剤、多糖類、乳製品、香料、塩分、ミネラル類及びその他食品成分を混合して水相部を調製する。前記油相部を温調しながら撹拌し、そこへ前記水相部を混合して予備乳化する。得られた予備乳化物を、撹拌しながら、パーフェクター、コンビネーター、ボテーター等を用いて、急冷捏和した後、成型ノズルからシート状に押し出し、ロールインマーガリンを得る。またロールインマーガリンにエタノールを加える場合は、乳化時に油相に添加しても良いし、水相に添加しても良いし、通常の乳化を行ってから、例えば急冷捏和工程で添加する等、後で添加しても良い。またエタノール、アルコール製剤、又は、それらと油脂を乳化液としたものを急冷捏和工程で添加することもできる。
【0034】
前記ロールインマーガリンは、シート状に成型されたものであることが好ましいが、チップ状でもよい。更に、ブロック状の塊のマーガリンをカットしてロールインマーガリンにしても良い。シート状にする場合、幅は50〜1000mmであることが好ましく、長さは50〜1000mmであることが好ましく、厚さは1〜50mmであることが好ましい。
【0035】
前記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、縮合リシノレン脂肪酸エステル等の合成乳化剤;大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、卵黄油等の合成乳化剤でない乳化剤など、油溶性の乳化剤が挙げることができる。
【0036】
前記着色料としては、β−カロテン、アナトー色素等を挙げることができる。また前記香料としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等を挙げることができる。
【0037】
前記酸化防止剤としては、トコフェロール、トコトリエノール、ローズマリー抽出物、茶抽出物、甘草抽出物等を挙げることができる。
【0038】
前記油溶性の乳化剤、着色料、香料、及び酸化防止剤等の任意成分は、ロールインマーガリン中、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが更に好ましい。
【0039】
前記糖類としては、果糖、ブドウ糖、砂糖、異性化液糖、水飴、ソルビトール、トレハロース等を挙げることができる。
【0040】
前記増粘剤としては、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、ペクチン、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、グルコマンナン等を挙げることができる。
【0041】
前記多糖類としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン等を挙げることができる。
【0042】
前記乳製品としては、発酵乳、脱脂粉乳、牛乳、加糖練乳、生クリーム、チーズ等を挙げることができる。
【0043】
前記香料としては、ミルクフレーバー等を挙げることができる。また前記塩分としては、食塩等を挙げることができる。
【0044】
前記ミネラル類としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン等を挙げることができる。
【0045】
前記その他食品成分としては、卵黄、全卵、カカオ原料、コーヒー、抹茶、緑茶、果汁、果肉、野菜ペースト、粉末野菜等を挙げることができる。
【0046】
前記水溶性の糖類、増粘剤、多糖類、乳製品、香料、塩分、ミネラル類等の任意成分は、ロールインマーガリン全体中、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることが更に好ましい。
【0047】
前記ロールインマーガリンは、層状膨化食品の冷凍生地に用いられると特に効果を享受できる。該冷凍生地を焼成して得られる層状膨化食品は、生地中の水分が少ないにも関わらず、浮きとジューシー感が良好で、口溶けが良い層状膨化食品となる。
【0048】
具体的に、前記ロールインマーガリンを折り込む前の生地全体中の水分含量は、32〜39重量%が好ましく、34〜39重量%がより好ましく、36〜39重量%が更に好ましい。32重量%より少ないと、生地の伸展性が悪化し、切れやすくなることにより作業性が悪くなることや、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。39重量%より多いと冷凍時に生成した氷結晶が、グルテンや酵母に損傷を起こし、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。
【0049】
また前記ロールインマーガリンを折り込んだ後の冷凍生地全体(ロールインマーガリンの重量を含む)中の水分含量(ロールインマーガリン中の水分を含む)は、24〜35重量%が好ましく、26〜33重量%がより好ましく、28〜31重量%が更に好ましい。24重量%より少ないと、生地の伸展性が悪化し、切れやすくなることにより作業性が悪くなることや、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。35重量%より多いと冷凍時に生成した氷結晶が、グルテンや酵母に損傷を起こし、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くなる場合がある。
【0050】
前記冷凍生地とは、成型冷凍生地又はホイロ後冷凍生地である。成型冷凍生地とは、生地の原材料を計量し、ミキシングし、一次発酵後にロールインマーガリンを折り込んで成型した生地を冷凍することで得られる生地のことである。ホイロ後冷凍生地とは、前記成型後にホイロで最終発酵をした後に冷凍することで得られる生地である。前記生地の原材料としては、小麦粉等の穀粉類、イースト、イーストフード、食塩、卵、乳製品、糖、ショートニング、酵素、乳化剤、酸化剤、還元剤、ビタミン、ミネラル、タンパク質、アミノ酸等を例示することができる。
【0051】
前記冷凍生地は、本発明のロールインマーガリンを、冷凍生地全体(ロールインマーガリンの重量を含む)中15〜30重量%含有することが好ましく、20〜28重量%がより好ましく、22〜26重量%が更に好ましい。15重量%より少ないと、生地に対するロールインマーガリンの割合が少なくなるため、焼成後の層状膨化食品の浮きが悪くジューシー感も劣った層状膨化食品となる場合がある。30重量%より多いと作業性が悪くなる場合がある。
【0052】
前記冷凍生地を、常法に従って焼成することで層状膨化食品が得られる。該層状膨化食品としては、例えば、デニッシュやクロワッサン等が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0054】
<ロールインマーガリンの可塑性の評価>
実施例11〜20、比較例8〜14のデニッシュの作製において、17℃で3時間温調した実施例1〜10、比較例1〜7のロールインマーガリンを、生地に折り込んだ際の可塑性を以下の基準で評価した。
5点:生地の中でロールインマーガリンが均一に伸び、可塑性が非常に良好である。
4点:ロールインマーガリンの伸び方にわずかに偏りが見られるが、可塑性は良好である。
3点:ロールインマーガリンの伸び方に少し偏りが見られるが、可塑性は良好である。
2点:ロールインマーガリンが均一に伸びていない部分が多く、可塑性が悪い。
1点:ロールインマーガリンが伸びず、生地にロールインマーガリンの塊が見られ、可塑性が非常に悪い。
【0055】
<デニッシュの浮きの評価>
実施例11〜20、比較例8〜14で作製したデニッシュを切断し、熟練した10名のパネラーに断面を察してもらい、以下の基準で評価した。
5点:非常に浮きが良く、各層の間に十分な隙間がある。
4点:浮きが良く、ほとんどの層の間に十分な隙間がある。
3点:浮きが良く、各層の間に十分な隙間のない部分がある。
2点:浮きが悪く、各層の間に十分な隙間のない部分が多い。
1点:非常に浮きが悪く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間がない。
【0056】
<デニッシュのジューシー感の評価>
実施例11〜20、比較例8〜14で作製したデニッシュを熟練した10名のパネラーに食べてもらい、以下の基準で評価し、その平均点を評価値とした。
5点:ジューシー感を非常に強く感じる。
4点:ジューシー感を強く感じる。
3点:ジューシー感を感じる。
2点:ジューシー感をあまり感じない。
1点:ジューシー感を感じない。
【0057】
<デニッシュの口溶けの評価>
実施例11〜20、比較例8〜14で作製したデニッシュを熟練した10名のパネラーに食べてもらい、以下の基準で評価し、その平均点を評価値とした。
5点:極めて口溶けが良好である。
4点:非常に口溶けが良好である。
3点:口溶けが良好である。
2点:やや口溶けが悪い。
1点:口溶けが悪い。
【0058】
<デニッシュのバター風味の評価>
実施例11〜20、比較例8〜14で作製したデニッシュを熟練した10名のパネラーに食べてもらい、以下の基準で評価し、その平均点を評価値とした。
5点:バター風味を非常に強く感じる。
4点:バター風味を強く感じる。
3点:バター風味を感じる。
2点:バター風味をあまり感じない。
1点:バター風味を感じない。
【0059】
(製造例1)パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部の作製
パームステアリン(ヨウ素価33)100重量部を500Paの減圧下で90℃に加熱し、0.2重量部のナトリウムメチラートを加えて30分攪拌してランダムエステル交換した。水洗した後、500Paの減圧下、90℃において2重量部の白土を加えて脱色した。脱色後の油脂を、70℃に加熱して完全に溶解し、44.5℃で攪拌しながら24時間晶析した。晶析後、3MPaでフィルタープレスして液状部を得た。得られた液状部を240℃、200Paの条件で1時間脱臭して、ヨウ素価43のパーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部を得た。
【0060】
(製造例2)パームステアリンのエステル交換油
パームステアリン(ヨウ素価33)100重量部を500Paの減圧下で90℃に加熱し、0.2重量部のナトリウムメチラートを加えて30分攪拌してランダムエステル交換した。水洗した後、500Paの減圧下、90℃において2重量部の白土を加えて脱色し、それからろ過して白土を除き、得られた油脂を減圧下、250℃で1時間脱臭して、パームステアリンのエステル交換油を得た。
【0061】
(製造例3)菜種油とローエルシン菜種極度硬化油のエステル交換油
パームステアリン100重量部を、菜種油60重量部及びローエルシン菜種極度硬化油40重量部に変えた以外は、製造例2と同様にして菜種油とローエルシン菜種極度硬化油のエステル交換油を得た。
【0062】
(実施例1)ロールインマーガリンの作製
表1に示す配合に従って、ロールインマーガリンを製造した。即ち、製造例1の油脂、菜種油、バター、バターフレーバー及びレシチンを70℃で加温し、撹拌・混合して油相を調製した。次に、牛乳、食塩及び水を60℃で加温し、撹拌・混合して水相を調製した。調製した油相に水相を混合して予備乳化を行った。得られた予備乳化物を、急冷捏和装置を用いて急冷して捏和し、レスティングチューブを通してシート状に成型することで、ロールインマーガリンを得た。表1では、前述した方法により測定した、各ロールインマーガリンを構成する油脂のトリグリセリド組成及び脂肪酸組成を記載した。
【0063】
【表1】
【0064】
(実施例2)ロールインマーガリンの作製
表1に示す配合に従って、バターを加えず、製造例1の油脂、菜種油及び水の量を変えた以外は、実施例1と同様にロールインマーガリンを得た。
【0065】
(実施例3)ロールインマーガリンの作製
表1の示す配合に従って、水の一部をアルコール製剤(エタノール含有量:52重量%)に変え、アルコール製剤を急冷捏和工程で添加した以外は、実施例1と同様にロールインマーガリンを得た。
【0066】
(実施例4及び5、比較例1)ロールインマーガリンの作製
表1に示す配合に従って、製造例1の油脂及び菜種油の量を変えた以外は、実施例1と同様にロールインマーガリンを得た。
【0067】
(比較例2)ロールインマーガリンの作製
表1に示す配合に従って、菜種油を加えず、製造例1の油脂の量を変えた以外は、実施例1と同様にロールインマーガリンを得た。
【0068】
(実施例6、比較例3)ロールインマーガリンの作製
表1に示す配合に従って、製造例2の油脂を加え、製造例1の油脂及び菜種油の量を変えた以外は、実施例1と同様にロールインマーガリンを得た。
【0069】
(実施例7、比較例4)ロールインマーガリンの作製
表2に示す配合に従って、パーム油を加え、製造例1の油脂及び菜種油の量を変えた以外は、実施例1と同様にロールインマーガリンを得た。
【0070】
【表2】
【0071】
(実施例8、比較例5)ロールインマーガリンの作製
表2に示す配合に従って、製造例3の油脂を加え、製造例1の油脂及び菜種油の量を変えた以外は、実施例1と同様にロールインマーガリンを得た。
【0072】
(実施例9及び10、比較例6及び7)ロールインマーガリンの作製
表2に示す配合に従って、製造例1の油脂、菜種油、バター及び水の量を変えた以外は、実施例1と同様にロールインマーガリンを得た。
【0073】
(実施例11〜20、比較例8〜14)デニッシュの作製
実施例1〜10、比較例1〜7で得られたロールインマーガリンを用いてデニッシュを作製した。即ち、表3に示す配合に従って、ロールインマーガリンとショートニングを除いた原料をミキサーにて低速3分間、中高速3分間ミキシングした後、ショートニングを混合し、更に低速3分間、中高速3分間ミキシングし、捏ね上げ温度を25℃とした。室温で30分間生地を発酵させた後、生地を1℃で10時間冷却した。この生地に17℃で3時間温調したロールインマーガリンを3つ折りで2回折り込み、1℃で5時間冷却後、4つ折りで1回折りたたみ、リバースシーターの厚みを6.0mmに調整して生地を伸ばした。生地を成型後、−30℃で30分間急速冷凍した後、−20℃に設定した冷凍庫で72時間冷凍保存して冷凍生地を得た。冷凍後、20℃、湿度60%で1時間解凍し、35℃、湿度75%のホイロで1時間最終発酵した後、190℃のオーブンで14分間焼成し、デニッシュを得た。デニッシュを作製する際のロールインマーガリンの可塑性及び得られたデニッシュの浮き、ジューシー感、口溶け、バター風味について評価し、その結果を表4にまとめた。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
実施例1及び3のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(実施例11及び13)は、デニッシュ作製時の可塑性が良好で、浮きが良く、ジューシー感を強く感じ、口溶けも非常に良好で、更にバター風味も強く感じた。
【0077】
実施例2のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(実施例12)は、デニッシュ作製時の可塑性は非常に良好で、浮きが良く、ジューシー感を感じ、口溶けも良好であったが、乳脂肪を含まないため、バター風味はあまり感じなかった。
【0078】
実施例4のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(実施例14)は、デニッシュ作製時の可塑性が良好で、浮きが良く、ジューシー感を強く感じ、口溶けも非常に良好で、更にバター風味も強く感じたが、比較例1のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(比較例8)は、浮きが悪く、デニッシュとしては問題があるものであった。
【0079】
実施例5のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(実施例15)は、デニッシュ作製時の可塑性が良好で、浮きが良く、ジューシー感を感じ、口溶けも良好で、更にバター風味も感じたが、比較例2のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(比較例9)は、ジューシー感をあまり感じず、口溶けもやや悪く、更にバター風味をあまり感じず、デニッシュとしては問題があるものであった。
【0080】
実施例6のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(実施例16)は、デニッシュ作製時の可塑性が良好で、浮きが良く、ジューシー感を強く感じ、口溶けも良好で、更にバター風味も感じたが、比較例3のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(比較例10)は、ジューシー感をあまり感じず、口溶けもやや悪く、更にバター風味をあまり感じず、デニッシュとしては問題があるものであった。
【0081】
実施例7のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(実施例17)は、デニッシュ作製時の可塑性が良好で、浮きが良く、ジューシー感を強く感じ、口溶けも非常に良好で、更にバター風味も強く感じたが、比較例4のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(比較例11)は、デニッシュ作製時の可塑性が悪く、浮きも悪く、デニッシュとしては問題があるものであった。
【0082】
実施例8のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(実施例18)は、デニッシュ作製時の可塑性が良好で、浮きが良く、ジューシー感を感じ、口溶けも良好で、更にバター風味も強く感じたが、比較例5のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(比較例12)は、ジューシー感をあまり感じず、口溶けもやや悪く、デニッシュとしては問題があるものであった。
【0083】
実施例9のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(実施例19)は、デニッシュ作製時の可塑性が良好で、浮きが良く、ジューシー感を強く感じ、口溶けも非常に良好で、更にバター風味も感じたが、比較例6のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(比較例13)は、ジューシー感をあまり感じず、口溶けもやや悪く、更にバター風味をあまり感じず、デニッシュとしては問題があるものであった。
【0084】
実施例10のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(実施例20)は、デニッシュ作製時の可塑性が良好で、浮きが良く、ジューシー感を強く感じ、口溶けも非常に良好で、更にバター風味も強く感じたが、比較例7のロールインマーガリンを水分含量が少ない生地と共に使用して作製したデニッシュ(比較例14)は、浮きが悪く、デニッシュとしては問題があるものであった。