(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(光軸が互いに交差する一対の撮像素子を設ける例)
2.第2の実施の形態(レンズが1つの光学系に光軸が互いに交差する一対の撮像素子を設ける例)
3.第3の実施の形態(光軸が互いに交差する一対の撮像素子を設けたカメラモジュールを装置の外部に配置する例)
【0016】
<1.第1の実施の形態>
[電子装置の構成例]
図1は、第1の実施の形態における電子装置100の外観図の一例である。この電子装置100としては、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの、撮像機能を持つモバイル機器が想定される。電子装置100のディスプレイが設けられた正面には、一定の間隔を空けて標準レンズ121および122が配置される。なお、電子装置100の正面でなく、ディスプレイの設けられていない背面に標準レンズ121および122を配置してもよい。
【0017】
標準レンズ121および122は、光を集光して撮像素子に導くレンズである。これらのレンズの画角は、一定値(例えば、60度)以下である。
【0018】
なお、標準レンズ121および122は、特許請求の範囲に記載の撮像レンズの一例である。また、電子装置100は、特許請求の範囲に記載の撮像装置の一例である。
【0019】
図2は、第1の実施の形態における電子装置100の一構成例を示すブロック図である。この電子装置100は、カメラモジュール110および演算処理部150を備える。このカメラモジュール110は、標準レンズ121および122と、撮像素子131および132と、同期制御部140とを備える。
【0020】
撮像素子131は、標準レンズ121からの光を光電変換して画像データを撮像するものである。撮像素子132は、標準レンズ122からの光を光電変換して画像データを撮像するものである。これらの撮像素子は、受光面に二次元格子状に配列された複数の光電変換素子を含む。また、これらの撮像素子131および132は、それぞれの受光面に垂直な光軸が互いに交差するように配置される。ただし、
図2においては、記載の便宜上、実装と異なり、それぞれの光軸を平行としている。
【0021】
ここで、標準レンズ121および撮像素子131は、電子装置100の背面から見て、右側に配置され、標準レンズ122および撮像素子132は左側に配置される。撮像素子131は、撮像した画像データを右側画像データとして演算処理部150に信号線118を介して供給する。一方、撮像素子132は、撮像した画像データを左側画像データとして演算処理部150に信号線119を介して供給する。これらの右側画像データおよび左側画像データのそれぞれは、二次元格子状に配列された複数の画素を含む。
【0022】
同期制御部140は、撮像素子131および132の撮像動作を同期させるものである。例えば、ジェスチャ認識を行うためのアプリケーションが実行されると、同期制御部140は、一定の周波数の垂直同期信号の生成を開始する。同期制御部140は、その垂直同期信号を撮像素子131および132に信号線148および149を介して送信する。そして、撮像素子131および132は、その共通の垂直同期信号に同期して撮像を行う。
【0023】
なお、同期制御部140をカメラモジュール110の内部に配置しているが、その外部に配置してもよい。また、静止した物体の撮像しか想定されない場合には、同期制御部140を設けない構成とすることもできる。なお、標準レンズ121および122と、撮像素子131および132とを同一のカメラモジュールに配置しているが、これらを複数のモジュールに分散して配置してもよい。例えば、標準レンズ121および撮像素子131を右側カメラモジュールに配置し、標準レンズ122および撮像素子132を左側カメラモジュールに配置してもよい。
【0024】
演算処理部150は、左側画像データおよび右側画像データに基づいて所定の演算処理を行うものである。この演算処理は、左側画像データと右側画像データとの像ずれ量から距離を測定する処理を含む。
【0025】
なお、電子装置100は、二次元格子状に光電変換素子が配列された撮像素子131および132で得られたデータに基づいて測距しているが、直線状に光電変換素子が配置された一対の撮像素子で得られたデータに基づいて測距してもよい。このように光電変換素子が直線状に配置された撮像素子は、リニアイメージセンサとも呼ばれる。一対のリニアイメージセンサを設ける場合には、撮像素子131および132を設けなくてもよいし、それらをリニアイメージセンサと別途に設けてもよい。
【0026】
[演算処理部の構成例]
図3は、第1の実施の形態における演算処理部150の一構成例を示すブロック図である。この演算処理部150は、特徴点抽出部151、像ずれ量取得部152、測距部153およびUI(User Interface)処理部154を備える。
【0027】
特徴点抽出部151は、左側画像データおよび右側画像データのそれぞれにおいて、特徴点を抽出するものである。ここで、特徴点は、エッジの交点(コーナー)など、色彩や輝度が大きく変化する部分を意味する。
【0028】
特徴点を抽出するアルゴリズムとして、例えば、「金澤 靖、他1名、"解説 コンピュータビジョンのための画像の特徴点の抽出"、電子情報通信学会誌Vol.87,No.12,2004」に記載のものが用いられる。このアルゴリズムでは、一階微分とガウス平滑化の組合せによりHarris作用素が特徴点として抽出される。または、輝度値の各方向の分散を直接に評価するMoravec作用素が特徴点として抽出される。あるいは、円形マスクを用いてマスク中の任意の閾値以上の画素数をカウントするSUSAN(Smallest Univalue Segment Assimilating Nucleus)オペレータにより特徴点が抽出される。なお、特徴点を抽出することができるものであれば、上述とは異なるアルゴリズムを用いてもよい。
【0029】
特徴点抽出部151は、左側画像データおよび右側画像データのそれぞれについて、画像内の特徴点の座標と特徴点を識別する識別情報とを特徴点ごとに含む特徴点情報を生成し、像ずれ量取得部152およびUI処理部154に供給する。
【0030】
像ずれ量取得部152は、特徴点情報に基づいて、左側画像データと右側画像データとの像ずれ量を取得するものである。この像ずれ量取得部152は、例えば、左側画像データにおける特徴点の少なくとも1つについて、その特徴点に対応する右側画像データ内の特徴点を求める。
【0031】
対応する特徴点を求める(言い換えれば、マッチングをする)際に、像ずれ量取得部152は、例えば、特徴点を中心とする一定形状(円など)の領域の特徴量を特徴点ごとに求め、それらの特徴量の類似度が一定値より高い特徴点同士を対応付ける。特徴量として、例えば、輝度勾配の方向を示すベクトルが求められる。なお、像ずれ量取得部152は、この方式以外のアルゴリズムにより、マッチングを行ってもよい。
【0032】
そして、像ずれ量取得部152は、対応する特徴点のペアごとに、対応する特徴点の間の距離(ユークリッド距離など)を像ずれ量Zとして算出し、測距部153に供給する。
【0033】
測距部153は、特徴点ごとに、像ずれ量Zから距離Dを測定するものである。測距部153は、測定した距離DをUI処理部154に供給する。なお、像ずれ量取得部152は、特徴点についてのみ距離Dを算出しているが、画素の全てについて距離Dを算出してもよい。
【0034】
UI処理部154は、特徴点毎の座標と距離Dとに基づいてユーザインターフェースに関する入力処理を行うものである。例えば、UI処理部154は、特徴点毎の座標と距離Dとから人体の形状を認識し、その形状、または、その形状の時間的変化をジェスチャとして検知する。UI処理部154は、検知したジェスチャに対応する入力処理を実行する。例えば、「右手を左右に振る」というジェスチャについて、画面を移動(スワイプ)させるというスワイプ処理を予め対応付けておき、UI処理部154は、そのジェスチャの認識時にスワイプ処理を行う。なお、UI処理部154は、特許請求の範囲に記載の処理部の一例である。
【0035】
なお、演算処理部150は、マッチングした特徴点から像ずれ量Zを求めているが、別の手法により像ずれ量Zを求めてもよい。像ずれ量取得部152は、例えば、フーリエ変換を用いる位相限定相関(POC: Phase Only Correlation)法を用いて、像ずれ量Zを求めてもよい。このPOC法を用いる場合には、測距において特徴点の抽出が不要となる。
【0036】
また、演算処理部150は、距離DをUI処理に用いているが、他の処理に用いてもよい。例えば、AF(Auto Focus)処理や、デプスマップの生成処理に用いてもよい。
【0037】
[光学系の構成例]
図4は、第1の実施の形態における光学系の一構成例を示す上面図である。この光学系は、標準レンズ121および122と、撮像素子131および132と、鏡筒101および102を備える。鏡筒101の中に、標準レンズ121および撮像素子131が配置され、鏡筒102の中に、標準レンズ122および撮像素子132が配置される。同図は、この光学系を、電子装置100のディスプレイの面に平行な所定の方向から見た上面図である。
【0038】
標準レンズ121は、そのレンズ面が撮像素子131の受光面と略平行になるように配置される。また、標準レンズ122は、そのレンズ面が撮像素子132の受光面と略平行になるように配置される。
【0039】
また、撮像素子131および132は、それぞれの受光面に垂直な光軸が互いに交差するように配置される。例えば、鏡筒101の底面と撮像素子131の受光面とが所定の角度をなすように撮像素子131が配置され、鏡筒102の底面と撮像素子132の受光面とが所定の角度をなすように撮像素子132が配置される。
【0040】
また、撮像素子131および132のそれぞれの代表点(例えば、受光面の中心)の位置は、ディスプレイの表面に垂直な方向(以下、「奥行き方向」と称する。)において等位であることが望ましい。
【0041】
また、奥行き方向に垂直な方向における、撮像素子131および132のそれぞれの代表点の距離を基線長B_crossとする。この基線長B_crossの間隔で配置された撮像素子131および132のそれぞれから、ある対象物500を見たときの角度は、左側の撮像素子132と右側の撮像素子131との間で異なり、この角度の差は視差と呼ばれる。この視差により像ずれ量Zが生じる。この像ずれ量Z(視差)は、標準レンズ121および122から奥行き方向における所定の対象物500までの距離Dに応じて変化する。このため、像ずれ量Zから距離Dを求めることができる。一般に、基線長Bの一対の撮像素子から得られた像ずれ量Zと距離Dとの間には、次の式に示す関係式が成立する。
D=f×B/Z ・・・式1
上式において、fは、標準レンズ121および122の焦点距離を示す。また、距離D、焦点距離fおよび基線長Bの単位は、例えば、メートル(m)である。
【0042】
図5は、第1の実施の形態におけるレンズの傾きと視差との間の関係について説明するための図である。同図におけるaは、それぞれの光軸が平行になるように撮像素子131および132を配置した比較例の光学系の上面図である。この構成で、奥行き方向に垂直な方向における、撮像素子131の中心座標X1と撮像素子132の中心座標X2との間の距離を基線長B_paraとする。この基線長B_paraは、基線長B_crossより長いものとする。また、ある対象物500と撮像素子131の中心とを結ぶ直線に対して受光面のなす角度(言い換えれば、撮像素子131から対象物を見た際の角度)をR_paraとする。
【0043】
図5におけるbは、撮像素子131を傾斜させた場合の光学系の上面図である。奥行き方向に垂直な方向に対して、撮像素子131の受光面を傾斜角R_tiltだけ傾斜させた構成を想定する。そして、傾斜させた撮像素子131を撮像素子132の方へ平行移動し、ある位置X3で撮像素子131から対象物500を見た角度がR_paraになったものとする。この位置X3では、撮像素子131から対象物500を見た角度が傾斜前と同じであるため、撮像素子131には、同図におけるaと同じ像が結像される。
【0044】
図6は、第1の実施の形態における視差から距離を算出する方法について説明するための図である。
図5におけるbの状態で撮像素子132をさらに撮像素子131と逆方向に傾斜角R_tiltだけ傾斜させ、撮像素子131と同じ距離だけ逆方向に平行移動させた構成を想定する。この位置X4では、撮像素子132から対象物500を見た角度が傾斜前と同じになるため、撮像素子132には、
図5の傾斜前と同じ像が結像される。この傾斜後のX3とX4との間の距離を基線長B_crossとする。この基線長B_crossが基線長B_paraよりも短くなるにも関わらず、撮像素子131および132には傾斜前と同じ像が結像されるため、像ずれ量Zは傾斜前と同じである。像ずれ量Zが同一であるため、撮像素子131および132を傾斜させない場合と、それらを傾斜させた場合とで測距精度は同等である。
【0045】
このように、撮像素子131および132を傾斜させて光軸を交差させると、測距精度を低下させずに、基線長を短くすることができる。これにより、電子装置100を小型化することができる。また、仮に、基線長B_crossのままで光軸が平行になるように撮像素子131および132を配置すると、像ずれ量Zが小さくなり測距精度が低下する。すなわち、撮像素子131および132の光軸を交差させると、光軸が平行な場合と比較して、基線長を変えずに像ずれ量ZをB_para/B_cross倍にすることができる。これにより、測距精度を向上させることができる。このように、電子装置100の小型化と、測距精度の向上とを両立することができる。
【0046】
基線長B_paraは、傾斜角R_tiltおよび基線長B_crossから三角関数を用いて算出することができる。測距部153は、予め算出しておいた基線長B_paraを式1に適用した次の式を用いて距離Dを算出する。
D=f×B_para/Z ・・・式2
【0047】
図7は、第1の実施の形態における左側画像データおよび右側画像データの一例を示す図である。同図におけるaは、左側画像データ510の一例であり、同図におけるbは右側画像データ520の一例である。これらの画像データにおける黒丸は、特徴点を示す。
【0048】
特徴点抽出部151は、左側画像データ510において、特徴点511などを抽出し、右側画像データ520において特徴点521などを抽出する。そして、像ずれ量取得部152は、特徴点のマッチングを行う。例えば、左側画像データの特徴点511について、右側画像データの特徴点521が対応付けられたものとする。像ずれ量取得部152は、これらの対応する一対の特徴点の間の距離を像ずれ量Zとして取得する。
【0049】
図8は、第1の実施の形態における距離誤差について説明するための図である。同図におけるaは、光軸を平行にして一対の撮像素子を配置した比較例における距離誤差の一例を示す図である。同図において、放射線状の実線は、撮像素子に入射される光の光路を示す。それぞれの光路と、受光面とのなす角度は、互いにdRずつ異なるものとする。また、白丸501および502は、測距対象の物体を示す。白丸501を測距する際に、撮像素子の一方から見た際の角度±dR程度の視差の変化では、像ずれ量Zに変化がほとんど生じないとすると、この±dRに対応する距離誤差が生じる。例えば、角度+dRに対応する黒丸503から角度−dRに対応する黒丸504までの距離誤差dD_para1が生じる。また、白丸502についても、距離誤差dD_para2が生じる。
【0050】
図8におけるbは、光軸が交差する撮像素子131および132を配置した光学系における距離誤差の一例を示す図である。白丸501および502の位置は、同図におけるaと同じであるものとする。光軸を交差させると、同図におけるbに例示するように、角度+dRに対応する黒丸503と角度−dRに対応する黒丸504との距離が近くなるため、白丸501を測距時の距離誤差はdD_para1からdD_cross1に低下する。また、白丸502を測距時の距離誤差もdD_para2からdD_cross2に低下する。このように、光軸を交差させることで、交差させない構成と比較して測距精度が向上する。
【0051】
[電子装置の動作例]
図9は、第1の実施の形態における電子装置100の動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、例えば、ユーザインターフェース処理を行うための所定のアプリケーションが実行されたときに開始する。
【0052】
電子装置100は、左側画像データおよび右側画像データを撮像し(ステップS901)、それらの画像データにおいて特徴点の抽出を行う(ステップS902)。電子装置100は、特徴点のマッチングを行い、対応する一対の特徴点の間の距離を像ずれ量Zとして取得する(ステップS903)。そして、電子装置100は、像ずれ量Zから式2を用いて距離Dを測定する(ステップS904)。電子装置100は、求めた距離Dと、特徴点の座標とに基づいてユーザインターフェース処理を行う(ステップS905)。ステップS905の後に、電子装置100は、ステップS901以降を繰り返し実行する。
【0053】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、光軸が互いに交差するように撮像素子131および132を配置したため、光軸が平行になるように配置した構成と比較して像ずれ量を大きくすることができる。これにより、測距精度を向上させることができる。また、測距精度を低下させずに、基線長を小さくすることができるため、装置を小型化することができる。
【0054】
[第1の変形例]
上述の第1の実施の形態では、鏡筒101および102の底面に対して、撮像素子131および132の両方を傾斜させていた。しかし、傾斜させて配置するには、鏡筒と撮像素子との間に、傾斜した撮像素子を支持する支持部材などを設ける必要があり、部品点数が増大するおそれがある。また、傾斜させて配置する際に、位置ずれが生じるおそれがある。この第1の実施の形態の第1の変形例の電子装置100は、光学系の部品点数の増大や位置ずれを抑制する点において第1の実施の形態と異なる。
【0055】
図10は、第1の実施の形態の第1の変形例における光学系の一構成例を示す上面図である。この第1の変形例の光学系は、標準レンズ122のレンズ面と撮像素子132の受光面とが、鏡筒102の底面に平行になるように、標準レンズ122および撮像素子132が配置される点において第1の実施の形態と異なる。これにより、撮像素子132については支持部材が不要となるため、光学系の部品点数の増大を抑制することができる。また、撮像素子132の位置ずれの発生を抑制することができる。さらに、鏡筒102の底面に平行に配置した撮像素子132を、動画や静止画を撮像する際のメインカメラに兼用することができる。例えば、測距せずに動画や静止画を撮像する際には、撮像素子132のみを用いればよい。
【0056】
このように、本技術の第1の実施の形態の第1の変形例によれば、一対の撮像素子の一方の受光面を鏡筒102の底面に平行になるように配置したため、光学系の部品点数の増大や位置ずれを抑制することができる。
【0057】
[第2の変形例]
上述の第1の実施の形態では、撮像素子131および132を傾斜させて、像ずれ量Zを相対的に大きくしていたが、距離Dが遠いと、像ずれ量Zを増大させても測距精度が不十分になるおそれがある。ここで、画角が比較的大きな広角レンズでは、画像データの周辺部分などで、実際の形状と比較して像が歪む現象(歪曲収差)が生じることが知られている。この歪曲収差による同一物体についての歪み量は、左側画像データと右側画像データとで異なることがある。これは、立体的な物体を異なる角度から見ると、その形状が変化するためである。この歪み量は、物体までの距離が近いほど大きくなるため、歪み量から距離を測定することができる。像ずれ量Zがほとんどなくとも、物体が立体的であれば、視差により左側画像データと右側画像データとで歪み量に差が生じることがあるため、この歪み量(視差)を考慮することにより、測距精度を向上させることができる。この第1の実施の形態の第2の変形例の電子装置100は、歪み量を用いて測距精度を向上させた点において第1の実施の形態と異なる。
【0058】
図11は、第1の実施の形態の第2の変形例における電子装置100の一構成例を示すブロック図である。この第2の変形例の電子装置100は、標準レンズ121および122の代わりに広角レンズ123および124を備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0059】
広角レンズ123および124は、画角が一定値(例えば、60度)より大きなレンズである。
【0060】
図12は、第1の実施の形態の第2の変形例における演算処理部150の一構成例を示すブロック図である。この第2の変形例の演算処理部150は、歪み量取得部155をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0061】
歪み量取得部155は、左側画像データおよび右側画像データの一方に対する他方の歪み量を取得するものである。この歪み量取得部155は、像ずれ量取得部152から、特徴点の対応関係を含む特徴点情報を受け取り、撮像素子131および132から左側画像データおよび右側画像データを受け取る。そして、歪み量取得部155は、対応する一対の特徴点の一方を中心とする一定形状(円など)の領域と、他方を中心とする一定形状の領域との差を歪み量Sとして求める。領域同士の差は、例えば、対応する画素値の差分の絶対値の総和(SAD:Sum of Absolute Difference)や、画素値の差分の二乗和(SSD:um of Squared Difference)により表される。歪み量取得部155は、特徴点ごとに歪み量Sを求め、測距部153に供給する。
【0062】
なお、特徴点のマッチングは、歪み量取得部155で行い、像ずれ量取得部152に特徴点の対応関係を通知してもよい。または、マッチングを行う回路やプログラムを歪み量取得部155または像ずれ量取得部152から分離し、その回路等を歪み量取得部155および像ずれ量取得部152で共有してもよい。
【0063】
また、第2の変形例の測距部153は、像ずれ量Zと歪み量Sとから距離Dを測定する。測距部153は、例えば、歪み量Sが大きいほど近い距離Dsを出力する所定の関数により距離Dsを求め、像ずれ量Zから式2により距離をDzとして求める。そして、距離Dsと距離Dzとの差異が一定の許容値を超える場合には、距離Dsを選択して距離DとしてUI処理部154に供給する。一方、距離Dsと距離Dzとの差異が許容値以内である場合には、測距部153は、それらの平均や重み付け加算値などを距離DとしてUI処理部154に供給する。
【0064】
なお、測距部153は、像ずれ量Zと歪み量Sとから距離Dを測定しているが、歪み量Sのみから距離Dを測定することもできる。
【0065】
図13は、第1の実施の形態の第2の変形例における左側画像データおよび右側画像データの一例を示す図である。同図におけるaは、第2の変形例における左側画像データ530の一例であり、同図におけるbは、第2の変形例における右側画像データ540の一例である。これらの画像データにおける黒丸は、特徴点を示す。同図におけるaおよびbに例示するように、一対の画像データのそれぞれについて歪みが生じており、その歪み量は、それぞれの画像データにおいて異なる。
【0066】
特徴点抽出部151は、左側画像データ530において、特徴点531などを抽出し、右側画像データ540において特徴点541などを抽出する。そして、像ずれ量取得部152は、特徴点のマッチングを行う。例えば、左側画像データの特徴点531について、右側画像データの特徴点541が対応付けられたものとする。
【0067】
また、歪み量取得部155は、特徴点531の周囲の領域532と、対応する特徴点541の周囲の領域542との間の差を歪み量Sとして取得する。この歪み量Sから距離が求められる。
【0068】
このように、本技術の第1の実施の形態の第2の変形例によれば、電子装置100は、一対の画像の一方に対する他方の歪み量から距離を測定するため、測距精度を向上させることができる。
【0069】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、撮像素子131および132のそれぞれに、標準レンズを設ける必要があったため、一眼の構成と比較して光学系の部品点数が増大してしまう。この第2の実施の形態の電子装置100は、光学系の部品点数の増大を抑制する点において第1の実施の形態と異なる。
【0070】
図14は、第2の実施の形態における光学系の一構成例を示す上面図である。この第2の実施の形態の光学系は、鏡筒102および標準レンズ122を設けない点において第1の実施の形態と異なる。
【0071】
また、第2の実施の形態では、鏡筒101内に標準レンズ121と撮像素子131および132とが設けられる。そして、標準レンズ121は、撮像素子131および132に共有され、それらの撮像素子は、いずれも標準レンズ121からの光を受光する。標準レンズ121は、そのレンズ面が鏡筒101の底面と平行になるように配置され、撮像素子131および132は、その受光面が鏡筒101の底面に対して傾斜するように配置される。
【0072】
なお、標準レンズ121と撮像素子131および132とを同一のカメラモジュール110に配置しているが、別々のモジュールやユニットに配置してもよい。例えば、標準レンズ121をレンズユニットに配置し、撮像素子131および132をカメラモジュールやカメラユニットに配置してもよい。
【0073】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、標準レンズを1枚のみとしたため、標準レンズを2枚設ける構成と比較して光学系の部品点数を削減することができる。
【0074】
[変形例]
上述の第2の実施の形態では、鏡筒101の底面に対して、撮像素子131および132の両方を傾斜させていた。しかし、傾斜させて配置するには、鏡筒101と撮像素子131等との間に支持部材などを設ける必要があり、部品点数が増大するおそれがある。また、傾斜させて配置する際に、位置ずれが生じるおそれがある。この第1の実施の形態の第1の変形例の電子装置100は、光学系の部品点数の増大や位置ずれを抑制する点において第1の実施の形態と異なる。
【0075】
図15は、第2の実施の形態の変形例における光学系の一構成例を示す上面図である。この変形例の光学系は、撮像素子132の受光面が、鏡筒101の底面に平行になるように、撮像素子132が配置される点において第2の実施の形態と異なる。これにより、撮像素子132については支持部材が不要となるため、光学系の部品点数の増大を抑制することができる。また、撮像素子132の位置ずれの発生を抑制することができる。さらに、鏡筒101の底面に平行に配置した撮像素子132を、動画や静止画を撮像する際のメインカメラに兼用することができる。例えば、測距せずに動画や静止画を撮像する際には、撮像素子132のみを用いればよい。
【0076】
このように、本技術の第2の実施の形態の変形例によれば、一対の撮像素子の一方の受光面を鏡筒101の底面に平行になるように配置したため、光学系の部品点数の増大や位置ずれを抑制することができる。
【0077】
<3.第3の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、カメラモジュール110および演算処理部150を、同一の装置(電子装置100)に配置していたが、これらを別々の装置に分散して配置することもできる。この第3の実施の形態のシステムは、カメラモジュールを演算処理部とは別の装置に配置した点において第1の実施の形態と異なる。なお、情報処理システムは、特許請求の範囲に記載の撮像システムの一例である。
【0078】
図16は、第3の実施の形態における情報処理システムの外観図の一例である。この情報処理システムは、カメラユニット200と情報処理装置300とを含む。情報処理装置300としては、例えば、ノート型やデスクトップ型のパーソナルコンピュータが想定される。
【0079】
図17は、第3の実施の形態における情報処理システムの一構成例を示すブロック図である。カメラユニット200にはカメラモジュール210が配置され、情報処理装置300には演算処理部310が配置される。
【0080】
図18は、第3の実施の形態におけるカメラモジュール210の一構成例を示すブロック図である。このカメラモジュール210は、標準レンズ221および222と、撮像素子231および232と、同期制御部240とを含む。標準レンズ221および222と、撮像素子231および232と、同期制御部240との構成は、第1の実施の形態における標準レンズ121および122と、撮像素子131および132と、同期制御部140と同様である。
【0081】
図19は、第3の実施の形態における演算処理部310の一構成例を示すブロック図である。この演算処理部310は、特徴点抽出部311、像ずれ量取得部312、測距部313およびUI処理部314を備える。これらの特徴点抽出部311、像ずれ量取得部312、測距部313およびUI処理部314の構成は、第1の実施の形態における特徴点抽出部151、像ずれ量取得部152、測距部153およびUI処理部154と同様である。特徴点抽出部311、像ずれ量取得部312、測距部313およびUI処理部314のそれぞれの機能は、例えば、プログラムにより実現される。これにより、光軸が交差する一対の撮像素子131および132を備えない情報処理装置300であっても、カメラユニット200を取り付け、プログラムを実装すれば、高精度で測距することができるようになる。なお、特徴点抽出部311、像ずれ量取得部312、測距部313およびUI処理部314の少なくとも一部をプログラムで無く、回路により実現してもよい。
【0082】
このように、本技術の第3の実施の形態によれば、カメラモジュール210を情報処理装置300の外部のカメラユニット200に配置したため、光軸が交差する一対の撮像素子を内蔵していない情報処理装置300において測距精度を向上させることができる。また、測距精度を低下させずに基線長を短くすることができるため、カメラユニット200のサイズを小型にすることができる。
【0083】
[変形例]
上述の第3の実施の形態では、情報処理装置300が距離を測定する処理を行っていたが、その処理の分、情報処理装置300の処理負荷が増大してしまう。この第3の実施の形態の変形例の情報処理システムは、情報処理装置300の処理負荷を軽減した点において第3の実施の形態と異なる。
【0084】
図20は、第3の実施の形態の変形例における情報処理システムの一構成例を示すブロック図である。この変形例のカメラユニット200は、特徴点抽出部251、像ずれ量取得部252および測距部253をさらに備える点において第3の実施の形態と異なる。これらの特徴点抽出部251、像ずれ量取得部252および測距部253の構成は、第1の実施の形態における特徴点抽出部151、像ずれ量取得部152および測距部153と同様である。
【0085】
また、変形例の情報処理装置300は、特徴点抽出部311、像ずれ量取得部312および測距部313を備えない点において第3の実施の形態と異なる。
【0086】
上述のように、カメラユニット200側に、特徴点抽出部251、像ずれ量取得部252および測距部253を配置したため、情報処理装置300は、距離を測定する処理を行う必要がなくなる。これにより、情報処理装置300の処理負荷を軽減することができる。
【0087】
なお、カメラユニット200側に、特徴点抽出部251、像ずれ量取得部252および測距部253を配置する構成としているが、これらの一部のみをカメラユニット200に配置し、残りを情報処理装置300に配置する構成であってもよい。
【0088】
このように、本技術の第3の実施の形態によれば、カメラユニット200に特徴点抽出部251、像ずれ量取得部252および測距部253を配置したため、情報処理装置300が距離を測定する必要がなくなり、その処理負荷を軽減することができる。
【0089】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0090】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0091】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【0092】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)それぞれの受光面に垂直な軸が互いに交差する一対の撮像素子と、
前記一対の撮像素子により撮像された一対の画像から得られた視差に基づいて対象物までの距離を測定する測距部と
を具備する撮像装置。
(2)光を集光して前記一対の撮像素子に導く撮像レンズをさらに具備する
前記(1)記載の撮像装置。
(3)一対の撮像レンズをさらに具備し、
前記一対の撮像レンズの一方は、光を集光して前記一対の撮像素子の一方に導き、
前記一対の撮像レンズの他方は、光を集光して前記一対の撮像素子の他方に導く
前記(1)記載の撮像装置。
(4)鏡筒をさらに具備し、
前記一対の撮像素子の一方の前記受光面は、前記鏡筒の底面に平行である
前記(1)から(3)のいずれかに記載の撮像装置。
(5)前記測距部は、前記一対の画像の一方と他方との間の像ずれ量から前記距離を測定する
前記(1)から(4)のいずれかに記載の撮像装置。
(6)前記測距部は、前記一対の画像の一方の他方に対する歪み量から前記距離を測定する
前記(1)から(5)のいずれかに記載の撮像装置。
(7)それぞれの受光面に垂直な軸が互いに交差する一対の撮像素子と、
前記一対の撮像素子により撮像された一対の画像から得られた視差に基づいて対象物までの距離を測定する測距部と、
前記測定された距離と前記一対の画像とに基づいて前記対象物の形状を認識する処理を行う処理部と
を具備する撮像システム。