(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831808
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】1つ又は複数の充填物を有する缶詰食品製品
(51)【国際特許分類】
A23L 3/00 20060101AFI20210208BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20210208BHJP
A23K 20/163 20160101ALI20210208BHJP
A23K 40/30 20160101ALI20210208BHJP
A23K 50/45 20160101ALI20210208BHJP
A23K 50/48 20160101ALI20210208BHJP
A23L 29/20 20160101ALI20210208BHJP
【FI】
A23L3/00 101B
A23K10/20
A23K20/163
A23K40/30 Z
A23K50/45
A23K50/48
A23L29/20
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-50826(P2018-50826)
(22)【出願日】2018年3月19日
(62)【分割の表示】特願2015-514067(P2015-514067)の分割
【原出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2018-113977(P2018-113977A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年3月19日
【審判番号】不服2020-1920(P2020-1920/J1)
【審判請求日】2020年2月12日
(31)【優先権主張番号】61/649,578
(32)【優先日】2012年5月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ワテライン, アニー
(72)【発明者】
【氏名】コマレク, ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】シシアク, ローレント
(72)【発明者】
【氏名】フリスコート, ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】レイナー, ジーン, ルズ
(72)【発明者】
【氏名】デカード, マケル
(72)【発明者】
【氏名】レイナー, マイケル, ジー.
【合議体】
【審判長】
村上 騎見高
【審判官】
瀬良 聡機
【審判官】
井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−505863(JP,A)
【文献】
特表2005−536219(JP,A)
【文献】
特公昭55−16619(JP,B2)
【文献】
特表2002−500030(JP,A)
【文献】
特開昭48−18062(JP,A)
【文献】
特開昭51−18678(JP,A)
【文献】
特表2000−515379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L3/
A22C11/
A23B4/
A23L13/
A23L17/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の親水コロイド分散体と、前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる肉エマルジョンと、前記1つ又は複数の親水コロイド分散体及び前記肉エマルジョンを収容する缶と、を有する、缶詰食品製品であって、
前記親水コロイド分散体が、キサンタン、カルボキシメチルセルロース、コンニャク、グアー、アラビアガム、ローカストビーンガム、カッシア、アカシア、アルギネート、キャロブ、又はそれらの組合せからなる群から選択されるいずれかを含み、
前記肉エマルジョンが、前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を完全に包んでおり、
前記親水コロイド分散体が、卵を含む場合を除く、
缶詰食品製品。
【請求項2】
前記親水コロイド分散体が、寒天のにこごりである場合を除く、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記肉エマルジョンが、筋肉及びコラーゲンを含む、請求項1又は2に記載の製品。
【請求項4】
前記肉エマルジョンが、繊維状タンパク質及び少なくとも1種の多糖を含む、請求項1又は2に記載の製品。
【請求項5】
前記1つ又は複数の親水コロイド分散体及び前記肉エマルジョンの少なくとも一方が、嗜好性増強剤、着色料、保存料、原材料の目に見える小片、可溶化された栄養原材料、風味化合物、芳香化合物、カプセル化された風味料、及びカプセル化された栄養素からなる群から選択される要素を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
【請求項6】
前記1つ又は複数の親水コロイド分散体は、クリーム状又はソース様の外観を呈するゲル又は流動性ゾルの形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製品。
【請求項7】
缶詰されたコンパニオンアニマル用食品製品である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製品。
【請求項8】
缶詰食品製品を製造するための方法であって、
1つ又は複数の親水コロイド分散体を形成するステップ、
肉エマルジョンを形成するステップ、及び、
前記肉エマルジョンが前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を包むように、前記1つ又は複数の親水コロイド分散体及び前記肉エマルジョンを缶に充填するステップを含み、
前記親水コロイド分散体が、キサンタン、カルボキシメチルセルロース、コンニャク、グアー、アラビアガム、ローカストビーンガム、カッシア、アカシア、アルギネート、キャロブ、又はそれらの組合せからなる群から選択されるいずれかを含み、
前記肉エマルジョンが、前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を完全に包んでおり、
前記親水コロイド分散体が、卵を含む場合を除く、方法。
【請求項9】
前記親水コロイド分散体が、寒天のにこごりである場合を除く、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記缶を密封するステップをさらに含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記充填された缶をレトルト処理するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記充填された缶が、レトルト処理の前に逆さにされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記充填された缶が、121〜126℃の温度で25〜50分間レトルト処理される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記レトルト処理された缶を冷却するステップをさらに含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記レトルト処理された缶が、20℃〜35℃の温度に冷却される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数の親水コロイド分散体及び前記肉エマルジョンで前記缶を充填するステップが、前記肉エマルジョンの一部分を前記缶に送達するステップと、前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を前記肉エマルジョンの前記部分の上に加えるステップと、前記肉エマルジョンの残りの部分で前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を覆うステップとを含む、請求項8〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ又は複数の親水コロイド分散体及び前記肉エマルジョンで前記缶を充填するステップが、前記肉エマルジョンを前記缶に送達するステップと、前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を前記肉エマルジョン内に注入するステップとを含む、請求項8〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ又は複数の親水コロイド分散体及び前記肉エマルジョンで前記缶を充填するステップが、前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を第1の速度で、前記肉エマルジョンを第2の速度で共押出するステップと、前記第1の速度及び前記第2の速度を調整して、前記肉エマルジョンが前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を包むことを可能にするステップとを含む、請求項8〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記製品が、缶詰されたコンパニオンアニマル用食品製品である、請求項8〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
1つ又は複数の親水コロイド分散体と、
前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる肉エマルジョンとを含む、食品製品であって、
前記親水コロイド分散体が、キサンタン、カルボキシメチルセルロース、コンニャク、グアー、アラビアガム、ローカストビーンガム、カッシア、アカシア、アルギネート、キャロブ、又はそれらの組合せからなる群から選択されるいずれかを含む、
前記肉エマルジョンが、前記1つ又は複数の親水コロイド分散体を完全に包んでおり、
前記親水コロイド分散体が、卵を含む場合を除く、
食品製品。
【請求項21】
前記親水コロイド分散体が、寒天のにこごりである場合を除く、請求項20に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本出願は、2012年5月21日に出願された米国仮出願第61/649578号の優先権を主張し、同仮出願の開示は、本参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
[0002]本発明は、一般には、食品製品に関し、詳細には、異なる外観及び食感を有する1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる肉エマルジョンを含有する缶詰食品製品並びにそのような食品製品を製造するための方法に関する。
【0003】
[0003]缶詰食品製品には、多くの形態がある。このような製品は、食感及び外観が様々であるローフタイプの製品、特徴的な外観及び食感を有するミートローフ製品、又は典型的なふわふわな食感及び外観を有する空気を含んだムース製品とすることができる。これらの製品は、典型的に、生肉を粉砕し、これを水、塩、香辛料、硬化剤、ゲル化剤、及び必要であれば脂と混合して、生地を形成し、次いで生地を加熱することにより製造される。次いで、加熱した生地を缶などの容器に充填して、レトルト処理及び冷却後、ミートローフを形成する。ローフの食感及び外観の変化は、生地における粒径を変化させることにより、並びに生地中の結合剤のタイプ及び濃度を変化させることにより達成される。
【0004】
[0004]缶詰食品製品の別の通常の形態は、グレービー又はソースに漬けた肉又は肉類似物のチャンク(米国特許第4781939号、第6379738号、及び第6692787号)若しくはスライス(欧州特許出願公開第1565069号)である。他の変化形としては、肉又は肉類似物のチャンクの、ローフ(米国特許第6440485号)、アスピック、又はゲル形態が挙げられる。缶詰食品製品のイメージのさらなる変化形としては、チャンク及びローフ形態の明確な二層化(米国特許第6582740号)又はチャンク及びローフ形態の多層化(米国特許第6911224号)が挙げられる。他の変化形は、中心充填物を導入することにより製造され、ここで、中心充填物層は、色若しくは食感又は両方が異なるローフ生地であるか、又は中心充填物は、グレービーに漬けたチャンクである(欧州特許第1061815号)。この製品では、中心充填物は、蓋(上部)を取り外すと、また中(底部)を空けると目に見えるものであった。
【0005】
[0005]これらの缶詰食品製品は、それらの目的のためには十分である。しかしながら、ペットの飼い主及び世話人などの缶詰食品製品の消費者は、新規のさらに魅力的な缶詰食品製品の形態又は種類を絶えず求めている。したがって、消費者が切望している肉充填タイプの製品など、消費者に多様性及び魅力をもたらす新たな缶詰食品製品が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
[0006]したがって、本発明の一目的は、1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる肉エマルジョンを収容する缶を含む缶詰食品製品を提供することである。
【0007】
[0007]本発明の別の目的は、1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる肉エマルジョンを含む食品製品を提供することである。
【0008】
[0008]本発明の別の目的は、肉エマルジョンと比較して異なる外観及び食感を有する1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる肉エマルジョンを含有する食品製品を製造するための方法を提供することである。
【0009】
[0009]本発明のさらなる目的は、本発明の缶詰食品製品のマルチパックパッケージを提供することである。
【0010】
[0010]上記の又は他の目的のうちの1つ又は複数は、1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる肉エマルジョンを含む食品製品を提供することにより達成される。当該1つ又は複数の親水コロイド分散体は、上記肉エマルジョンと比較して、独特の食感及び独特の外観を有する。上記1つ又は複数の親水コロイド分散体及び上記肉エマルジョンの低混和性又は非混和性に起因して、本発明の食品製品は、2つの異なる別々の相(上記1つ又は複数の親水コロイド分散体に相当する内側相及び上記肉エマルジョンに相当する外側相)を有する。
【0011】
[0011]本発明の他の並びにさらなる目的、特徴、及び利点は、当業者には容易に明らかとなる。
【0012】
定義
[0012]用語「包まれた」とは、1つ又は複数の親水コロイド分散体が、肉エマルジョンに完全に又は実質的に包み込まれていることを意味し、ここで、1つ又は複数の親水コロイド分散体の25%未満が食品製品の表面に見えている場合、1つ又は複数の親水コロイド分散体は実質的に包み込まれている。
【0013】
[0013]用語「缶」とは、レトルト処理可能な硬質容器、例えば、金属又は金属合金の缶などの金属容器、プラスチック容器、ガラス容器、及びそれらの組合せを意味する。
【0014】
[0014]用語「缶詰」とは、食品製品が、缶に収容されていることを意味する。
【0015】
[0015]用語「コンパニオンアニマル」とは、ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット、フェレット、ハムスター、マウス、スナネズミ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ブタなどの家畜化された動物を意味する。
【0016】
[0016]本明細書で使用する場合、範囲は、範囲内のありとあらゆる値を列挙し記載する必要を避けるために、省略表現として本明細書で使用される。必要に応じて、範囲内の任意の適切な値を、上限値、下限値、又は範囲の末端値として選択することができる。
【0017】
[0017]本明細書で使用する場合、単語の単数形は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形を含み、逆もまた同様である。したがって、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という言及は、一般に、それぞれの用語の複数形を包括する。例えば、「食品組成物」又は「食品組成物を製造する方法」への言及は、複数のそのような「食品組成物」又は「方法」を含む。同様に、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいる(comprising)」は、排他的ではなく包括的に捉えられるべきである。同じように、用語「含む(include)」、「含んでいる(including)」、及び「又は」は、文脈上明らかに妨げられない限り、すべて包括的であると解釈されるべきである。
【0018】
[0018]用語「含んでいる(comprising)」又は「含んでいる(including)」は、用語「本質的にからなる」及び「からなる」が包含する実施形態を含むことが意図される。同様に、用語「本質的にからなる」は、用語「からなる」が包含する実施形態を含むことが意図される。
【0019】
[0019]本明細書で表されるすべてのパーセンテージは、別段に表されていない限り、食品組成物の全重量に対する重量によるものである。例えば、25重量%の量の原材料とは、原材料の量が、食品組成物の全重量の25%であることを意味する。したがって、食品組成物の全重量が100グラムである場合、25重量%に相当する原材料の実際の量は、25グラムとなる。
【0020】
[0020]本明細書で開示された製品及び方法並びに他の進歩は、本明細書に記載された特定の方法、手順、原材料、構成要素、及び試薬に限定されず、その理由は、当業者には理解されるように、これらの方法、手順、原材料、構成要素、及び試薬は変化し得るからである。さらに、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、開示された又は特許請求されたものの範囲を限定することは意図されず、現に限定するものではない。
【0021】
[0021]別段に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語、業界用語、並びに頭字語は、本発明の分野、又は用語が使用される分野の当業者により通常理解される意味を有する。本発明の実施において、本明細書に記載された組成物、方法、製造品、又は他の手段若しくは材料と同様又は同等のあらゆるものを使用することができるが、好ましい組成物、方法、製造品、又は他の手段若しくは材料が本明細書に記載されている。
【0022】
[0022]本明細書で引用又は参照された、すべての特許、特許出願、刊行物、技術論文及び/又は学術論文、並びに他の参考文献は、それらの文献の全体が、法律により許容される程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。それらの参考文献についての考察は、それらの参考文献においてなされた主張を要約することを意図するものにすぎない。そのような特許、特許出願、刊行物、若しくは参考文献のいずれも、又はそれらの文献のいずれの部分も、関連の技術、肝要な技術、又は先行技術であるとは承認されない。そのような特許、特許出願、刊行物、及び他の参考文献が、関連の技術、肝要な技術、又は先行技術であるという、あらゆる主張の正確性及び妥当性について異議を申し立てる権利は、明確に留保されている。
発明
【0023】
[0023]一態様では、本発明は、缶を含む食品製品を提供し、当該缶が、缶の内部の1つ又は複数の親水コロイド分散体と、上記1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる肉エマルジョンとを有する。一般に、肉エマルジョンは、1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる外側マトリックスを形成し、1つ又は複数の親水コロイド分散体及び肉エマルジョンは、比較すると、異なる外観、食感、又は他の識別特性を有する。一実施形態では、本発明は、1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいる外側マトリックスを形成するしっかりと固まった肉エマルジョンを含む食品製品を提供する。
【0024】
[0024]1つ又は複数の親水コロイド分散体及び肉エマルジョンは、食品製品の任意の適切な量を占める。様々な実施形態では、1つ又は複数の親水コロイド分散体は、食品製品の約20〜約80%、好ましくは約30〜約70%を占める。ある特定の実施形態では、1つ又は複数の親水コロイド分散体は、食品製品の約25〜約75%を占め、肉エマルジョンは、食品製品の残りの75〜25%を占める。
【0025】
[0025]好ましい実施形態では、1つ又は複数の親水コロイド分散体は、ゲル又は流動性ゾルの形態である。より好ましい実施形態では、1つ又は複数の親水コロイド分散体は、クリーム状又はソース様の外観を呈するゲル又は流動性ゾルの形態であり、食品製品の約25〜約75%を占める。
【0026】
[0026]1つ又は複数の親水コロイド分散体は、任意の適切な原材料、例えば、キサンタン、カルボキシメチルセルロース、コンニャク、グアー、寒天、アラビアガム、ローカストビーン(locus bear)ガム、カッシア、アカシア、アルギネート、キャロブ(carobe)、又はそれらの組合せを含む。
【0027】
[0027]肉エマルジョンは、任意の適切な原材料、例えば、繊維状タンパク質及び多糖を含む。適切な繊維状タンパク質としては、ミオシン、アクチン、アクトミオシン、コラーゲン、並びにそれらの混合物、例えば、ウシ属、ウマ科、ヒツジ類、鳥類、ブタ類、ヤギ類、ヒツジ類、及び魚類由来のタンパク質が挙げられる。適切な多糖の例としては、デンプン、ガム、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
[0028]他の実施形態では、肉エマルジョンは、ゲルの形態であり、筋肉及びコラーゲンを含む。得られる食品製品は、1つ又は複数の親水コロイド分散体を包んでいるしっかりと固まったタンパク質マトリックスである。1つ又は複数の親水コロイド分散体は、食品製品の約25〜約75%を占め、肉エマルジョンは、それに応じて、食品製品の残りの75〜25%を占める。
【0029】
[0029]1つ又は複数の親水コロイド分散体及び肉エマルジョンは、混和性がなく、又は混和性が低いため、食品製品が形成される際に混合しない2つの異なる相を形成する。したがって、食品製品は、2つの別々の相(1つ又は複数の親水コロイド分散体に相当する内側相及び肉エマルジョンに相当する外側相)から構成される。
【0030】
[0030]様々な実施形態では、1つ又は複数の親水コロイド分散体及び肉エマルジョンの少なくとも一方は、追加の原材料を含む。例えば、親水コロイド分散体及び/又は肉エマルジョンの1つ若しくは複数は、美的魅力又は栄養機能のため、本物又は模造の原材料の目に見える小片を含む。いくつかの実施形態では、1つ若しくは複数の親水コロイド分散体又は肉エマルジョンの少なくとも一方は、可溶化若しくは分散された栄養原材料、風味化合物若しくは芳香化合物、又はレトルト処理中に、口内で、若しくは消化管において放出されるカプセル化された風味料若しくは栄養素を含む。
【0031】
[0031]別の態様では、本発明は、食品製品を製造するための方法を提供する。本方法は、1つ又は複数の親水コロイド分散体を形成するステップ、肉エマルジョンを形成するステップ、肉エマルジョンが1つ又は複数の親水コロイド分散体を包むように、1つ又は複数の親水コロイド分散体及び肉エマルジョンを缶に充填するステップを含む。一実施形態では、食品製品を製造するための方法は、1つ又は複数の親水コロイド分散体を形成するステップと、肉エマルジョンを別個に形成するステップと、1つ又は複数の親水コロイド分散体を缶内にポンプで注入するステップと、肉エマルジョンが1つ又は複数の親水コロイド分散体を包むように、肉エマルジョンを缶内にポンプで注入するステップとを含む。好ましい実施形態では、本方法は、1つ又は複数の親水コロイド分散体及び肉エマルジョンが缶に充填された後、缶に蓋をするステップと、缶に封をする(缶を密封する)ステップと、缶をレトルト処理するステップとをさらに含む。一般に、缶をその後、室温に冷却する又は平衡化させる。得られる食品製品は、1つ又は複数の親水コロイド分散体を完全に又は実質的に包んでいる外側マトリックスを形成するしっかりと固まった肉エマルジョンである。
【0032】
[0032]缶は、任意の適切な温度で適切な時間にわたりレトルト処理される。例えば、缶は、約118〜128℃の温度で約20〜約60分間レトルト処理される。好ましい実施形態では、缶は、約121〜約126℃で約25〜約50分間レトルト処理される。
【0033】
[0033]缶は、任意の適切な温度に冷却される。例えば、缶は、20〜35℃の温度に冷却してもよい。一実施形態では、缶は、22〜26℃に冷却される。缶は、室温に平衡化するまで固まらせることにより冷却してもよく、又は、冷蔵若しくは他の適切な手段を使用して室温若しくは他の任意の温度に冷却してもよい。
【0034】
[0034]充填された缶は、レトルト処理の前に逆さにしてもよい。
【0035】
[0035]本発明の食品製品は、そのような食品製品を消費する任意の動物、例えば、ヒト、ネコ科、イヌ科、ウシ属、ウマ科、ヒツジ類、鳥類、ブタ類、ヤギ類、ヒツジ類などのための食品製品として有用である。好ましい実施形態では、食品製品は、コンパニオンアニマル用食品製品、例えば、イヌ又はネコ用のペットフードである。さらに好ましい実施形態では、食品製品は、イヌ又はネコ用の食品製品である。
【0036】
[0036]代替の実施形態では、食品製品を製造するための方法は、肉エマルジョンの半分を缶内にポンプで注入し、続いて1つ又は複数の親水コロイド分散体を肉エマルジョンの上にポンプで注入し、肉エマルジョンの残りの半分を、1つ又は複数の親水コロイド分散体を覆うように1つ又は複数の親水コロイド分散体の上にポンプで注入することにより缶を充填するステップを含む。本方法は、充填された缶に蓋をするステップと、充填された缶を密封するステップと、充填された缶をレトルト処理するステップと、レトルト処理された缶を冷却するステップとをさらに含んでもよい。
【0037】
[0037]食品製品を製造するための代替の方法は、肉エマルジョンを缶に送達するステップと、1つ又は複数の親水コロイド分散体を肉エマルジョン内に注入するステップとを含む。食品製品は、1つ又は複数の親水コロイド分散体を第1の速度で、肉エマルジョンを第2の速度で共押出するステップと、第1の速度及び第2の速度を調整して、肉エマルジョンが1つ又は複数の親水コロイド分散体を包むことを可能にするステップとにより製造することもできる。
【0038】
[0038]肉エマルジョン及び親水コロイド分散体並びにそのようなエマルジョン及び分散体を製造するための方法は、当業者には公知である。
【0039】
[0039]別の態様では、本発明は、本発明の缶詰食品製品を消費者に便利に提供するのに有用なマルチパックパッケージを提供する。マルチパックパッケージは、アレイ状に配置された、本発明の缶詰食品製品を収容する複数の缶と、缶をアレイ状に保持するための1つ又は複数の用具とを含む。いくつかの実施形態では、マルチパックパッケージは、パッケージの取り扱い及び輸送を容易にするためにパッケージに付けられた1つ又は複数の持ち手を有する。様々な実施形態では、用具は、紙、プラスチック、ポリマー、及びそれらの組合せから作製される箱である。他の実施形態では、用具は、各容器に付けられたプラスチックリングを連結したシステムである。さらに他の実施形態では、用具は、同様の材料のプラスチック包装、例えば、12個の缶をアレイ状に積み重ねてプラスチックに包装したものである。好ましい実施形態では、マルチパックパッケージは、パッケージ中の容器の中身を説明する1つ又は複数の表示、例えば、ラベル、パッケージ上の印刷、ステッカーなどをさらに含む。他の実施形態では、用具は、マルチパックパッケージを開けることなくパッケージの中身が見えるようにする1つ又は複数の窓部をさらに含む。いくつかの実施形態では、窓部は、用具の透明な部分である。他の実施形態では、窓部は、マルチパックパッケージを開けることなく容器が見えるようにする、用具の欠けている部分である。
【実施例】
【0040】
[0040]本発明は、以下の実施例によってさらに例示され得るが、これらの実施例は、例示目的のために含まれるにすぎず、特に別段に明示されていない限り、本発明の範囲を限定することは意図されないことが理解されよう。
【0041】
実施例1
[0041]肉エマルジョン(外側マトリックスケーシング)調製物のバッチ100Kgを、表1(a)に示す配合により作製した。冷凍状態の肉及び魚肉原材料を、10cm未満のチャンクに分解するように破砕した。次いで、これらのチャンクを肉挽き機で挽き、直径3.175mmの開口を有するダイプレートを通して押し出した。挽いた肉をRietzミキサーに移し、継続的に混合しながら、水及び残りのすべての原材料を加えつつ、この混合物の温度を、直接蒸気注入を使用して41.5℃まで上昇させた。さらに5分間混合を継続し、この時、混合物は均質となった。次いで、この混合物を、Kinematica乳化機により乳化させた。
【表1(a)】
【0042】
[0042]並行して、100Kgのデンプン/親水コロイドベースのエマルジョンを、表1(b)に示す配合を使用して、以下のように調製した。92.3kgの水を、蒸気ジャケット付きステンレス鋼製ベッセル内で、96℃に加熱した。次いで、高速/高Tekmar分散機をその水に挿入し、ブレードを水面からおよそ75%の深さにした。その他の原材料はすべて、プラスチック袋内で一緒に混合した。分散機を作動させながら、原材料の混合物を、分散機の高速回転により発生した渦にゆっくりと注ぎ入れた。
【表1(b)】
【0043】
[0043]固体がすべて完全に分散した後、1分間混合を継続した。分散体の温度は、缶への充填が完了するまで、90〜97℃に維持した。
【0044】
[0044]原材料を、85グラム缶内に、以下のように合わせた。32グラムの肉エマルジョンを、缶に量り入れた。この直後に、20グラムのデンプン/親水コロイド分散体を量り入れ、32グラムの肉エマルジョンを最後に加えた。次いで、缶に蓋をし、密封し、121℃で40分間レトルト処理し、室温(22〜26℃)に冷却した。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉エマルジョンに完全に包まれた親水コロイド分散体であった。
【0045】
実施例2
[0045]肉エマルジョンを、表1(a)に示す配合を使用して、実施例1のように作製した。デンプン/親水コロイド分散体を、実施例1のように、ただし表2に示す配合を使用して作製した。コンニャク/キサンタン親水コロイド分散体ブレンドは、実施例1の場合と比較して倍増させた。充填、缶詰め、及びレトルト処理の条件は、実施例1と同じであった。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉エマルジョンに完全に包まれた親水コロイド分散体であった。
【表2】
【0046】
実施例3
[0046]キサンタンベースの(親水コロイド)タブレットのバッチ2Kgの原材料を、表3に示す配合により量り分け、ドライブレンダーで1分間ブレンドして、乾燥粉末ミックスを形成した。次いで、粉末ミックスを、打錠機で50キロニュートンの力で圧縮することにより、タブレットに形成した。表4に示すように、3つの異なる寸法のタブレットを作製した。
【表3】
【表4】
【0047】
実施例4
[0047]カルボキシメチルセルロース(CMC)ベースの(親水コロイド)タブレットのバッチ2Kgの原材料を、表5に示す配合により量り分け、実施例3及び表4に示すようにタブレットに加工した。
【表5】
【0048】
実施例5
[0048]100Kgの肉エマルジョン調製物を、表6に示す配合により作製した。肉原材料を秤量し、肉挽き機で約20mmのサイズの小片に粗挽きした。継続的に混合しながら、乾燥原材料(ビタミンプレミックス、ミネラル、着色料、コーンスターチ、及びキャロブガム)を、挽いた肉と混合した。混合しながら、52〜55℃の間の温度及び76%(目標値74〜77%)の湿度に達するように、飲用水及び蒸気を加えた。さらに5分間混合を継続した。乳化ステップの前の混合の最後に、風味料ブレンドを加えた。次いで、その後のミックスを、6+3mmホールプレートを通して細挽きすることにより、均質な肉エマルジョンが得られた。
【表6】
【0049】
実施例6
[0049]実施例5の肉エマルジョン40gを缶に充填し、直径11mmのキサンタンベースのタブレットを中心に加え、続いてさらに40gの肉エマルジョンを加えた。次いで、缶に蓋をし、密封し、126℃で28分間レトルト処理した。レトルト処理プロセス中に、キサンタンベースのタブレットが吸水してゲルを形成し、肉エマルジョンがゲルの周りで硬く固まった。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉エマルジョンに完全に包まれた親水コロイド分散体であった。
【0050】
実施例7
[0050]直径11mmのCMCベースのタブレットを用いて、実施例6を繰り返した。レトルト処理プロセス中に、キサンタンベースのタブレットが吸水してゲルを形成し、肉エマルジョンがゲルの周りで硬く固まった。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉エマルジョンに完全に包まれた親水コロイド分散体であった。
【0051】
実施例8
[0051]4つのより小さな(直径7mm)キサンタンベースのタブレットを用いて、実施例6を繰り返した。レトルト処理プロセス中に、キサンタンベースのタブレットが吸水して4つのゲルスポットを形成し、肉エマルジョンが4つのゲルスポットの周りで硬く固まった。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉エマルジョンに完全に包まれた4つの親水コロイド分散体であった。
【0052】
実施例8
[0052]4つのより小さな(直径7mm)CMCベースのタブレットを用いて、実施例6を繰り返した。レトルト処理プロセス中に、CMCベースのタブレットが吸水して4つのゲルスポットを形成し、肉エマルジョンが4つのゲルスポットの周りで硬く固まった。缶を開け、中身を検査した。缶内の食品製品は、肉エマルジョンに完全に包まれた4つの親水コロイド分散体であった。
【0053】
[0053]本明細書では、本発明の典型的な好ましい実施形態を開示してきた。具体的な用語を用いたが、これらの具体的な用語は、一般的且つ説明的な意味で使用されるにすぎず、限定する目的では使用されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲において規定される。上記の教示を踏まえて、本発明の多くの改変及び変化が可能であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内において、本発明を、明確に記載されたのとは別の様式で実施してもよいことは理解されるはずである。