特許第6831818号(P6831818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831818
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20210208BHJP
【FI】
   H02M7/48 MZHV
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-160819(P2018-160819)
(22)【出願日】2018年8月29日
(65)【公開番号】特開2020-36447(P2020-36447A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年3月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野畠 公平
【審査官】 土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−163714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正側直流母線と出力ノードとの間に設けられた正側スイッチング素子と、
負側直流母線と前記出力ノードとの間に設けられた負側スイッチング素子と、
前記正側スイッチング素子をオンオフさせる正側ゲート駆動回路と、
前記負側スイッチング素子をオンオフさせる負側ゲート駆動回路と、
前記正側スイッチング素子および前記負側スイッチング素子のオンオフを指示するゲート信号を前記正側ゲート駆動回路および前記負側ゲート駆動回路に送信するゲート信号制御部と、
を備え、
前記ゲート信号制御部は、前記正側直流母線と前記負側直流母線との間に挿入されたコンデンサのプリチャージ中に、前記正側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第1のゲート信号を前記正側ゲート駆動回路に送信し、前記負側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第2のゲート信号を、前記第1のゲート信号の送信タイミングと異ならせて前記負側ゲート駆動回路に送信し、前記プリチャージ中に前記第1のゲート信号の送信と前記第2のゲート信号の送信とを交互に複数回繰り返す電力変換装置。
【請求項2】
前記ゲート信号制御部は、
前記プリチャージの開始の際に前記出力ノードに接続されるモータジェネレータが回転していた場合、前記第1のゲート信号および前記第2のゲート信号の送信を行わず、
前記プリチャージの開始の際に前記モータジェネレータが停止していた場合、前記第1のゲート信号および前記第2のゲート信号の送信を行う請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
正側直流母線と出力ノードとの間に設けられた正側スイッチング素子と、
負側直流母線と前記出力ノードとの間に設けられた負側スイッチング素子と、
前記正側スイッチング素子をオンオフさせる正側ゲート駆動回路と、
前記負側スイッチング素子をオンオフさせる負側ゲート駆動回路と、
前記正側スイッチング素子および前記負側スイッチング素子のオンオフを指示するゲート信号を前記正側ゲート駆動回路および前記負側ゲート駆動回路に送信するゲート信号制御部と、
を備え、
前記ゲート信号制御部は、
前記正側直流母線と前記負側直流母線との間に挿入されたコンデンサのプリチャージ中に、前記正側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第1のゲート信号を前記正側ゲート駆動回路に送信し、前記負側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第2のゲート信号を、前記第1のゲート信号の送信タイミングと異ならせて前記負側ゲート駆動回路に送信し、
前記プリチャージの開始の際に前記出力ノードに接続されるモータジェネレータが回転していた場合、前記第1のゲート信号および前記第2のゲート信号の送信を行わず、
前記プリチャージの開始の際に前記モータジェネレータが停止していた場合、前記第1のゲート信号および前記第2のゲート信号の送信を行う電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート駆動回路によってスイッチング素子がオンオフされる電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置では、2個のスイッチング素子が直列接続され、その直列接続されたスイッチング素子が、正側直流母線と負側直流母線との間に挿入されている。出力ノードは、直列接続されたスイッチング素子間に接続される。正側直流母線はバッテリの正極に接続され、負側直流母線はバッテリの負極に接続される。また、正側直流母線と負側直流母線との間(直流母線間)には、コンデンサが挿入されている。
【0003】
バッテリとコンデンサ(電力変換装置)との間には、メインリレーが設けられている。メインリレーがオフ状態のとき、感電防止のためコンデンサは放電される。メインリレーをオンする場合、放電されたコンデンサのプリチャージ(充電)が行われる。コンデンサのプリチャージ中には、電力変換装置の動作が停止される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−24633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電力変換装置には、ゲート駆動回路およびゲート信号制御部が設けられている。ゲート駆動回路は、スイッチング素子毎に設けられている。ゲート信号制御部は、スイッチング素子のオンオフを指示するゲート信号をゲート駆動回路に送信する。ゲート駆動回路は、ゲート信号にしたがってスイッチング素子をオンオフさせる。
【0006】
また、ゲート駆動回路には、ゲート信号制御部側とスイッチング素子側との絶縁を行うために、絶縁トランスが設けられることがある。絶縁トランスは、一次側の直流分を二次側に伝えないため、パルス状のゲート信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのみを二次側に伝える。このため、絶縁トランスが設けられるゲート駆動回路には、絶縁トランスの二次側にラッチ回路が設けられる。ラッチ回路は、立ち上がりエッジが入力されると、出力をハイ状態(例えば、「オン」状態)に維持させ、立ち下がりエッジが入力されると、出力をロー状態(例えば、「オフ」状態)に維持させる。
【0007】
ここで、例えば、人間が電力変換装置に触れるなどして、ゲート駆動回路に静電気が印加されることがある。この場合、ゲート駆動回路は、正常なゲート信号に反して誤動作し、ラッチ回路によって、スイッチング素子を「オン」させる出力信号を出し続けてしまうことがある。
【0008】
例えば、メインリレーが「オフ」状態であるときに、正側スイッチング素子と負側スイッチング素子との両方が、静電気による誤動作で「オン」すると、直流母線間が短絡してしまい、スイッチング素子を「オン」させる出力信号が出続けることで、直流母線間の短絡状態が継続されてしまう。
【0009】
直流母線間が短絡状態であるときにプリチャージが行われると、短絡したスイッチング素子を通じて電荷が直流母線間を移動してしまい、コンデンサに電荷が蓄えられなくなる。これにより、プリチャージが所定時間内に終了せず、タイムアウトによりプリチャージ異常が検出されてしまう。
【0010】
このように、静電気によってスイッチング素子を「オン」させてしまった場合、スイッチング素子自体は故障していないため、ゲート駆動回路の出力信号を正常な状態に戻すことができれば、スイッチング素子を「オフ」状態に復帰させることが可能である。
【0011】
しかし、プリチャージの実行を制御する車両制御部は、プリチャージ異常が検出されたときに、その異常が、スイッチング素子の短絡故障に起因するものか、静電気による誤動作に起因するものかを区別することができない。このため、車両制御部は、プリチャージ異常が検出されたときには、実際の短絡要因に拘らず、電力変換装置が故障したものとして対応してしまう。その結果、スイッチング素子の復帰が可能な異常であったとしても、無駄に電力変換装置の交換修理が行われることがある。
【0012】
そこで、本発明は、静電気によってゲート駆動回路が誤動作したときに、ゲート駆動回路の出力信号を正常な状態に復帰させることが可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の電力変換装置は、正側直流母線と出力ノードとの間に設けられた正側スイッチング素子と、負側直流母線と出力ノードとの間に設けられた負側スイッチング素子と、正側スイッチング素子をオンオフさせる正側ゲート駆動回路と、負側スイッチング素子をオンオフさせる負側ゲート駆動回路と、正側スイッチング素子および負側スイッチング素子のオンオフを指示するゲート信号を正側ゲート駆動回路および負側ゲート駆動回路に送信するゲート信号制御部と、を備え、ゲート信号制御部は、正側直流母線と負側直流母線との間に挿入されたコンデンサのプリチャージ中に、正側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第1のゲート信号を正側ゲート駆動回路に送信し、負側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第2のゲート信号を、第1のゲート信号の送信タイミングと異ならせて負側ゲート駆動回路に送信し、前記プリチャージ中に前記第1のゲート信号の送信と前記第2のゲート信号の送信とを交互に複数回繰り返す
【0015】
また、ゲート信号制御部は、プリチャージの開始の際に出力ノードに接続されるモータジェネレータが回転していた場合、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信を行わず、プリチャージの開始の際にモータジェネレータが停止していた場合、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信を行ってもよい
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の電力変換装置は、正側直流母線と出力ノードとの間に設けられた正側スイッチング素子と、負側直流母線と出力ノードとの間に設けられた負側スイッチング素子と、正側スイッチング素子をオンオフさせる正側ゲート駆動回路と、負側スイッチング素子をオンオフさせる負側ゲート駆動回路と、正側スイッチング素子および負側スイッチング素子のオンオフを指示するゲート信号を正側ゲート駆動回路および負側ゲート駆動回路に送信するゲート信号制御部と、を備え、ゲート信号制御部は、正側直流母線と負側直流母線との間に挿入されたコンデンサのプリチャージ中に、正側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第1のゲート信号を正側ゲート駆動回路に送信し、負側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第2のゲート信号を、第1のゲート信号の送信タイミングと異ならせて負側ゲート駆動回路に送信し、プリチャージの開始の際に出力ノードに接続されるモータジェネレータが回転していた場合、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信を行わず、プリチャージの開始の際にモータジェネレータが停止していた場合、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信を行ってもよい
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、静電気によってゲート駆動回路が誤動作したときに、ゲート駆動回路の出力信号を正常な状態に復帰させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の電力変換装置が適用される車両の構成を示す概略図である。
図2】本実施形態の電力変換装置の構成を示す概略図である。
図3】ゲート駆動回路の構成を示す概略図である。
図4】静電気が印加された場合における電力変換装置の動作を説明するタイムチャートである。
図5】ゲート信号制御部の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態の一態様について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態の電力変換装置10が適用される車両1の構成を示す概略図である。ここでは、本実施形態に関連する構成を説明し、関連性の低い構成の説明は省略する。
【0021】
車両1は、電力変換装置(インバータ)10、モータジェネレータ12、メインリレー14、バッテリ16、スタートスイッチ18、車両制御部20を含んで構成される。車両1は、モータジェネレータ12を駆動源とした電気自動車である。なお、車両1は、駆動源としてモータジェネレータ12と並行してエンジンが設けられたハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0022】
モータジェネレータ12は、電力変換装置10およびメインリレー14を介してバッテリ16に接続されている。バッテリ16は、リチウムイオン電池等の二次電池である。電力変換装置10は、車両1の加速時などにおいて、バッテリ16から供給される直流電力を所望の交流電力に変換してモータジェネレータ12に供給する。このとき、モータジェネレータ12は、主に、電動機として機能し、電力変換装置10から供給される交流電力にしたがって車両1を駆動させる。また、車両1の減速時などにおいて、バッテリ16は、モータジェネレータ12で発電されて電力変換装置10で直流電力に変換された電力を充電(蓄電)する。
【0023】
メインリレー14は、電力変換装置10と、バッテリ16との間の接続を切り替える。メインリレー14は、例えば、電磁接触器(コンタクタ)などである。また、スタートスイッチ18は、搭乗者によるREADY−ON操作およびREADY−OFF操作を受け付ける。
【0024】
車両制御部20は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。車両制御部20は、主に車両1の駆動に関する制御を行う。例えば、車両制御部20は、電力変換装置10を制御することでモータジェネレータ12の回転を制御する。また、車両制御部20は、スタートスイッチ18からの指示に応じて、メインリレー14の開閉を制御する。
【0025】
図2は、本実施形態の電力変換装置10の構成を示す概略図である。電力変換装置10は、スイッチング素子30a、30b、30c、30d、30e、30f、正側直流母線32p、負側直流母線32n、還流ダイオード34a、34b、34c、34d、34e、34f、コンデンサ38、ゲート駆動回路40a、40b、40c、40d、40e、40f、ゲート信号制御部50を含んで構成される。
【0026】
以下、スイッチング素子30a、30b、30c、30d、30e、30fを総称してスイッチング素子30と呼ぶことがある。また、スイッチング素子30のうち、スイッチング素子30a、30c、30eを、正側スイッチング素子と呼び、スイッチング素子30b、30d、30fを、負側スイッチング素子と呼ぶことがある。また、ゲート駆動回路40a、40b、40c、40d、40e、40fを総称してゲート駆動回路40と呼ぶことがある。また、ゲート駆動回路40のうち、ゲート駆動回路40a、40c、40eを、正側ゲート駆動回路と呼ぶことがあり、ゲート駆動回路40b、40d、40fを、負側ゲート駆動回路と呼ぶことがある。また、正側直流母線32pと負側直流母線32nとの間のことを、直流母線間と呼ぶことがある。
【0027】
スイッチング素子30は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子30aのコレクタCは、正側直流母線32pに接続されている。スイッチング素子30aのエミッタEは、スイッチング素子30bのコレクタCに接続されている。スイッチング素子30bのエミッタEは、負側直流母線32nに接続されている。
【0028】
スイッチング素子30cのコレクタCは、正側直流母線32pに接続されている。スイッチング素子30cのエミッタEは、スイッチング素子30dのコレクタCに接続されている。スイッチング素子30dのエミッタEは、負側直流母線32nに接続されている。
【0029】
スイッチング素子30eのコレクタCは、正側直流母線32pに接続されている。スイッチング素子30eのエミッタEは、スイッチング素子30fのコレクタCに接続されている。スイッチング素子30fのエミッタEは、負側直流母線32nに接続されている。
【0030】
つまり、直列接続された2個のスイッチング素子30a、30b、直列接続された2個のスイッチング素子30c、30d、および、直列接続された2個のスイッチング素子30e、30fは、正側直流母線32pと負側直流母線32nとの間に並列に挿入されている。
【0031】
還流ダイオード34aのカソードKは、スイッチング素子30aのコレクタCに接続されており、還流ダイオード34aのアノードAは、スイッチング素子30aのエミッタEに接続されている。つまり、還流ダイオード34aは、スイッチング素子30aに逆並列接続されている。同様に、還流ダイオード34b、34c、34d、34e、34fは、スイッチング素子30b、30c、30d、30e、30fにそれぞれ逆並列接続されている。
【0032】
スイッチング素子30aのエミッタEとスイッチング素子30bのコレクタCとの接続ノードは、U相の出力ノード36uとして機能する。同様に、スイッチング素子30cのエミッタEとスイッチング素子30dのコレクタCとの接続ノードは、V相の出力ノード36vとして機能し、スイッチング素子30eのエミッタEとスイッチング素子30fのコレクタCとの接続ノードは、W相の出力ノード36wとして機能する。各出力ノード36u、36v、36wには、モータジェネレータ(MG)12が接続されている。
【0033】
ゲート駆動回路40aは、スイッチング素子30aのゲートGに接続されており、スイッチング素子30aをオンオフさせる。同様に、ゲート駆動回路40bは、スイッチング素子30bのゲートGに接続されており、スイッチング素子30bをオンオフさせる。ゲート駆動回路40cは、スイッチング素子30cのゲートGに接続されており、スイッチング素子30cをオンオフさせる。ゲート駆動回路40dは、スイッチング素子30dのゲートGに接続されており、スイッチング素子30dをオンオフさせる。ゲート駆動回路40eは、スイッチング素子30eのゲートGに接続されており、スイッチング素子30eをオンオフさせる。ゲート駆動回路40fは、スイッチング素子30fのゲートGに接続されており、スイッチング素子30fをオンオフさせる。
【0034】
ゲート信号制御部50は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。ゲート信号制御部50は、車両制御部20の制御の下、スイッチング素子30のオンオフを指示するゲート信号を生成し、生成されたゲート信号をゲート駆動回路40に送信する。ゲート信号は、例えば、パルス状の信号である。
【0035】
メインリレー14は、メインスイッチ14a、14b、14cおよび抵抗器14dを含んで構成される。メインスイッチ14aは、一方の接点がバッテリ16の正極に接続されており、他方の接点が正側直流母線32pに接続されている。メインスイッチ14bは、一方の接点がバッテリ16の負極に接続されており、他方の接点が負側直流母線32nに接続されている。メインスイッチ14cは、一方の接点がメインスイッチ14aのバッテリ16側の接点に接続されており、他方の接点が抵抗器14dを介してメインスイッチ14aの電力変換装置10側の接点に接続されている。
【0036】
コンデンサ38は、メインリレー14と電力変換装置10との間において、直流母線間に挿入されている。コンデンサ38は、直流母線間の電圧を平滑にさせる。
【0037】
ここで、車両1がREADY−OFF(IG−OFF)のとき、メインスイッチ14a、14b、14cは、すべて「オフ(開)」となっており、コンデンサ38は、放電されている。搭乗者によってREADY−ON操作が行われると、スタートスイッチ18から車両制御部20に、コンデンサ38のプリチャージ(充電)の開始指示が送信される。車両制御部20は、プリチャージの開始指示を受信すると、コンデンサ38のプリチャージを開始する。具体的には、車両制御部20は、メインスイッチ14b、14cを「オン(閉)」させる。これにより、コンデンサ38は、抵抗器14dを通じて徐々に充電される。
【0038】
車両制御部20は、所定時間内にコンデンサ38の電圧が所定電圧以上となったか否かを判定する。所定時間は、例えば、数秒程度であり、コンデンサ38の容量と抵抗器14dの抵抗値とによって定まる時定数に基づいて設定される。所定電圧は、バッテリ16の電圧と同程度(例えば、バッテリ16の電圧の95%など)に設定される。
【0039】
車両制御部20は、所定時間内にコンデンサ38の電圧が所定電圧以上となると、メインスイッチ14cを「オフ」させて、コンデンサ38のプリチャージを終了させる。その後、車両制御部20は、メインスイッチ14aを「オン」させて、電力変換装置10をバッテリ16に接続させる。これにより、車両1は、READY−ON(IG−ON)となる。一方、車両制御部20は、所定時間内にコンデンサ38の電圧が所定電圧以上とならない場合、プリチャージ異常が生じたと判定する。
【0040】
また、車両制御部20は、プリチャージの開始指示を受信すると、プリチャージ信号を「オン」としてゲート信号制御部50に送信する。車両制御部20は、プリチャージの間、プリチャージ信号「オン」の送信を継続し、プリチャージが終了すると、プリチャージ信号を「オフ」としてゲート信号制御部50に送信する。
【0041】
図3は、ゲート駆動回路40の構成を示す概略図である。ゲート駆動回路40は、絶縁トランス60およびラッチ回路62を含んで構成される。
【0042】
絶縁トランス60の一次側は、ゲート信号制御部50に接続されており、絶縁トランス60の二次側は、ラッチ回路62に接続されている。ラッチ回路62は、スイッチング素子30に接続されている。
【0043】
絶縁トランス60は、一次側と二次側とを絶縁する。また、絶縁トランス60は、一次側の直流分を二次側に伝えないため、パルス状のゲート信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのみを二次側に伝える。
【0044】
ラッチ回路62は、立ち上がりエッジが入力されると、出力をハイ状態(例えば、オン状態)に維持させ、立ち下がりエッジが入力されると、出力をロー状態(例えば、オフ状態)に維持させる。これにより、ラッチ回路62は、入力される立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジに基づいたパルス状の出力信号をスイッチング素子30に出力する。
【0045】
なお、ゲート駆動回路40は、スイッチング素子30の電流が過電流であるか否かを判定することでスイッチング素子30を通じた直流母線間の短絡を検出する短絡検出部を含んで構成されてもよい。短絡検出部は、短絡があったことを検出してから所定時間の間、短絡信号「オン」をゲート信号制御部50に送信し続けてもよい。
【0046】
ところで、電力変換装置10は、例えば、バッテリ16やDC/DCコンバータなどとともに、金属製のケースに収容される。このケースは、例えば、車両1の荷室の下などに設置される。このケースは、プラスチックなどの非金属材料で覆われるようにして荷室の下に設置されるが、構造上、ケースの一部(金属部分)が露出してしまう。
【0047】
例えば、人間が車両1のリアゲートを開けて荷室に手を伸ばしたときなどにおいて、電力変換装置10が収容されているケースにおける露出した金属部分に人間が触れるおそれがある。その金属部分に人間が触れると、静電気がケース印加され、ケースを通じて電力変換装置10のゲート駆動回路40に静電気が伝わることがある。
【0048】
この場合、ゲート駆動回路40は、正常なゲート信号に反して誤動作し、ラッチ回路62によって、スイッチング素子30を「オン」させる出力信号を出し続けてしまうことがある。
【0049】
例えば、正側スイッチング素子と負側スイッチング素子の両方が、静電気による誤動作で「オン」すると、直流母線間が短絡してしまい、スイッチング素子30を「オン」させる出力信号が出続けることで、直流母線間の短絡状態が継続されてしまう。
【0050】
直流母線間が短絡状態であるときにコンデンサ38のプリチャージが行われると、短絡したスイッチング素子30を通じて電荷が直流母線間を移動してしまい、コンデンサ38に電荷が蓄えられなくなる。これにより、プリチャージが所定時間内に終了せず、タイムアウトによりプリチャージ異常が検出されてしまう。
【0051】
また、プリチャージ中には、スイッチング素子30が抵抗器14dに直列接続される。これにより、プリチャージ中に直流母線間が短絡していたとしても、短絡したスイッチング素子30には、高電圧が印加されず、過電流が流れない。このため、プリチャージ中には、ゲート駆動回路40において、直流母線間の短絡を検出することができない。
【0052】
静電気によってスイッチング素子を「オン」させてしまった場合、スイッチング素子自体は故障していないため、ゲート駆動回路の出力信号を正常な状態に戻すことができれば、スイッチング素子を「オフ」状態に復帰させることが可能である。
【0053】
そこで、ゲート信号制御部50は、コンデンサ38のプリチャージの開始指示に応じて、正側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第1のゲート信号を正側ゲート駆動回路に送信し、負側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第2のゲート信号を負側ゲート駆動回路に送信する。電力変換装置10では、第1のゲート信号における立ち下がりエッジ、および、第2のゲート信号における立ち下がりエッジにより、ゲート駆動回路40の出力信号を正常な状態に復帰させ、プリチャージを正常に行わせる。
【0054】
図4は、静電気が印加された場合における電力変換装置10の動作を説明するタイムチャートである。例えば、時刻T10において、車両1がREADY−OFFとなっており、コンデンサ38が、放電されているとする。そして、時刻T10において、静電気によって、一点鎖線の丸印A1で示すように、U相のゲート駆動回路40a、40bの出力信号が、ゲート信号に反してそれぞれ「オン」となったとする。
【0055】
これにより、U相のスイッチング素子30a、30bが「オン」となり、U相のスイッチング素子30a、30bを通じて直流母線間が短絡する。しかし、この時点では、電力変換装置10がバッテリ16から切り離されているため、直流母線間が短絡したとしても、U相のスイッチング素子30a、30bを通じた電荷の移動は生じない。
【0056】
また、時刻T10以後、U相のゲート駆動回路40a、40bは、ラッチ回路62によって、出力信号「オン」を出し続ける。このため、U相のスイッチング素子30a、30bが「オン」状態で維持され、U相のスイッチング素子30a、30bを通じた直流母線間の短絡状態が維持される。
【0057】
その後の時刻T11において、搭乗者によってREADY−ON操作が行われ、車両制御部20は、スタートスイッチ18からプリチャージの開始指示を受信したとする。このとき、車両制御部20は、メインスイッチ14b、14cを「オン」させてコンデンサ38のプリチャージを開始するとともに、プリチャージ信号「オン」をゲート信号制御部50に送信する。
【0058】
時刻T11では、U相のスイッチング素子30a、30bを通じて直流母線間が短絡しているため、バッテリ16から供給される電荷は、U相のスイッチング素子30a、30bを通じて直流母線間を移動してしまい、コンデンサ38には電荷が蓄えられない。このため、時刻T11では、コンデンサ38の電圧が0Vに維持される。
【0059】
時刻T11よりも後の時刻T12において、ゲート信号制御部50は、プリチャージ信号「オン」を受信したとする。ゲート信号制御部50は、プリチャージ信号が「オン」となったことにより、プリチャージの開始指示があったことを把握することができる。このとき、ゲート信号制御部50は、U相正側のゲート駆動回路40a、V相正側のゲート駆動回路40c、W相正側のゲート駆動回路40eにゲート信号「オン」を送信する。そして、ゲート信号制御部50は、時刻T12の直ぐ後の時刻T13において、U相正側のゲート駆動回路40a、V相正側のゲート駆動回路40c、W相正側のゲート駆動回路40eにゲート信号「オフ」を送信する。
【0060】
つまり、ゲート信号制御部50は、時刻T12から時刻T13にかけて第1のゲート信号を送信する。なお、このときのゲート信号の「オン」と「オフ」との間の時間間隔は、例えば、ゲート駆動回路40がゲート信号をパルスとして適切に認識可能となる最短時間に設定されてもよい。
【0061】
時刻T13において、U相正側のゲート駆動回路40aに送信されるゲート信号が「オン」から「オフ」に変わるため、U相正側のゲート駆動回路40aには、立ち下がりエッジが入力される。これにより、U相正側のラッチ回路62の出力がハイ状態からロー状態に切り替わり、一点鎖線の丸印A2に示すようにU相正側のゲート駆動回路40aの出力信号は、「オフ」となる。その結果、静電気によって誤動作されたU相正側のゲート駆動回路40aに対応するスイッチング素子30aは、「オフ」状態に復帰する。
【0062】
時刻T13において、U相正側のスイッチング素子30aが「オフ」状態に復帰するため、直流母線間は、短絡から復帰することとなる。このため、時刻T13以後、コンデンサ38に電荷が蓄えられるようになり、コンデンサ38の電圧が上昇していく。つまり、時刻T13以後、プリチャージが正常に行われるようになる。
【0063】
その後の時刻T14において、ゲート信号制御部50は、U相負側のゲート駆動回路40b、V相負側のゲート駆動回路40d、W相負側のゲート駆動回路40fにゲート信号「オン」を送信する。そして、ゲート信号制御部50は、時刻T14の直ぐ後の時刻T15において、U相負側のゲート駆動回路40b、V相負側のゲート駆動回路40d、W相負側のゲート駆動回路40fにゲート信号「オフ」を送信する。
【0064】
つまり、ゲート信号制御部50は、時刻T14から時刻T15にかけて第2のゲート信号を送信する。なお、このときのゲート信号の「オン」と「オフ」との間の時間間隔は、例えば、ゲート駆動回路40がゲート信号をパルスとして適切に認識可能となる最短時間に設定されてもよい。
【0065】
時刻T15において、U相負側のゲート駆動回路40bに送信されるゲート信号が「オン」から「オフ」に変わるため、U相負側のゲート駆動回路40bには、立ち下がりエッジが入力される。これにより、U相負側のラッチ回路62の出力がハイ状態からロー状態に切り替わり、一点鎖線の丸印A3に示すようにU相負側のゲート駆動回路40bの出力信号は、「オフ」となる。その結果、静電気によって誤動作されたU相負側のゲート駆動回路40bに対応するスイッチング素子30bは、「オフ」状態に復帰する。
【0066】
このように、電力変換装置10では、第1のゲート信号によって正側ゲート駆動回路を正常な状態にさせ、第2のゲート信号によって負側ゲート駆動回路を正常な状態にさせている。ゲート信号制御部50は、例えば、1ms(1ミリ秒)の間に、第1のゲート信号の送信と第2のゲート信号の送信とを行う。
【0067】
ところで、プリチャージ中に新たに静電気による誤動作が生じて、新たに直流母線間が短絡すると、コンデンサ38に途中まで蓄えられた電荷が、短絡した相のスイッチング素子30を通じて放電されてしまう。そうすると、プリチャージが所定時間内に終了しないことがある。
【0068】
そこで、ゲート信号制御部50は、プリチャージ信号が「オン」となっている間(プリチャージ中)、第1のゲート信号の送信および第2のゲート信号の送信を交互に複数回繰り返す。
【0069】
これにより、電力変換装置10では、プリチャージ中に新たに静電気による誤動作が生じたとしても、第1のゲート信号および第2のゲート信号によって、スイッチング素子30を早急に「オフ」状態に復帰させることができ、プリチャージを所定時間内に終了させることが可能となる。
【0070】
そして、車両制御部20は、所定時間の経過時にコンデンサ38の電圧が所定電圧以上となっていた場合、プリチャージを終了するとともに、プリチャージ信号「オフ」をゲート信号制御部50に送信する。
【0071】
ゲート信号制御部50は、プリチャージ信号「オフ」を受信すると、第1のゲート信号の送信および第2のゲート信号の送信を終了する。
【0072】
なお、図4では、U相のスイッチング素子30a、30bを通じて直流母線間が短絡した場合を説明したが、V相およびW相において短絡したとしても、同様に復帰させることができる。また、図4では、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信が、3回繰り返されているように示されているが、繰り返し回数は、3回に限らない。
【0073】
また、第1のゲート信号の送信と第2のゲート信号の送信との間隔は、直流母線間の短絡が検知されたときに送信される短絡信号「オン」の継続時間よりも短くてもよい。これは、プリチャージ中に直流母線間が短絡した場合、ゲート駆動回路40が直流母線間の短絡を検知できず、ゲート駆動回路40から短絡信号「オン」が送信されないからである。
【0074】
また、例えば、正側スイッチング素子および負側スイッチング素子の双方が短絡故障して直流母線間が短絡した場合、スイッチング素子30を復帰させることができないため、電力変換装置10では、プリチャージ異常が検出される。また、正側スイッチング素子が短絡故障した場合、電力変換装置10では、第2のゲート信号が送信されたときに直流母線間が短絡するため、プリチャージが進行せず、プリチャージ異常が検出される。また、負側スイッチング素子が短絡故障した場合、電力変換装置10では、第1のゲート信号が送信されたときに直流母線間が短絡するため、プリチャージが進行せず、プリチャージ異常が検出される。したがって、電力変換装置10では、スイッチング素子30の短絡故障があることをプリチャージ異常によって推測することができる。
【0075】
図5は、ゲート信号制御部50の動作を説明するフローチャートである。ゲート信号制御部50は、例えば、所定の制御周期で、プリチャージ信号が「オン」であるか否かを判定する(S100)。プリチャージ信号が「オン」ではない場合(S100におけるNO)、ゲート信号制御部50は、一連の処理を終了する。
【0076】
一方、プリチャージ信号が「オン」である場合(S100におけるYES)、ゲート信号制御部50は、モータジェネレータ12が回転中であるか否かを判定する(S110)。なお、モータジェネレータ12の回転は、モータジェネレータ12の回転軸に設けられるエンコーダで検出されてもよいし、モータジェネレータ12と電力変換装置10との間の電流に基づいて検出されてもよい。
【0077】
ここで、車両1が走行中(減速中)にREADY−OFF操作が行われ、車両1が停止する前に再びREADY−ON操作が行われることがある。この場合、READY−OFF操作でコンデンサ38が放電されるため、READY−ON操作されたときに、コンデンサ38のプリチャージが再び行われる。また、車両1の減速中は、モータジェネレータ12が発電機として回転する。
【0078】
このように、モータジェネレータ12が回転中であり、かつ、プリチャージ中である場合に、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信が行われると、モータジェネレータ12で誘起された電圧が電力変換装置10を通じて直流母線間に過剰に印加され、コンデンサ38やバッテリ16が損傷するおそれがある。
【0079】
そこで、モータジェネレータ12が回転中である場合(S110におけるYES)、ゲート信号制御部50は、第1のゲート信号の送信および第2のゲート信号の送信を行わず、一連の処理を終了する。
【0080】
一方、モータジェネレータが回転中ではない場合(S110におけるNO)、ゲート信号制御部50は、第1のゲート信号を送信する(S120)。その後、ゲート信号制御部50は、第2のゲート信号を送信し(S130)、ステップS100以降の処理を繰り返す。これにより、プリチャージ中に第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信が繰り返されることとなる。
【0081】
以上のように、本実施形態の電力変換装置10は、コンデンサ38のプリチャージの開始指示に応じて、正側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第1のゲート信号を正側ゲート駆動回路に送信し、負側スイッチング素子を一旦オンさせた後にオフさせる第2のゲート信号を負側ゲート駆動回路に送信する。
【0082】
したがって、本実施形態の電力変換装置10によれば、静電気によってゲート駆動回路40が誤動作したときに、ゲート駆動回路40の出力信号を正常な状態に復帰させることができる。その結果、本実施形態の電力変換装置10では、スイッチング素子30を「オフ」状態に復帰させ、コンデンサ38のプリチャージを正常に完了させることが可能となる。
【0083】
また、例えば、正側ゲート駆動回路および負側ゲート駆動回路の一方側のみが、静電気によって誤動作することがある。この場合、直流母線間が短絡しないため、プリチャージは正常に行われることとなる。ここで、第1のゲート信号および第2のゲート信号を送信しないとすれば、誤動作したゲート駆動回路40の出力信号は、プリチャージの完了後も「オン」状態に維持されてしまう。そうすると、電力変換装置10を通常動作させたときに、直流母線間の短絡が生じることとなる。
【0084】
本実施形態の電力変換装置10では、正側ゲート駆動回路および負側ゲート駆動回路の一方側のみが、静電気によって誤動作したとしても、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信によって、誤動作したゲート駆動回路40の出力信号を正常な状態に復帰させることができる。このため、本実施形態の電力変換装置10では、電力変換装置10を通常動作させた際の直流母線間の短絡を、未然に防止することができる。
【0085】
また、ゲート信号制御部50は、第1のゲート信号および第2のゲート信号を、送信タイミングを異ならせて送信している。このため、本実施形態の電力変換装置10では、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信タイミングが重なることによる直流母線間の短絡を回避することができる。
【0086】
また、ゲート信号制御部50は、プリチャージ中に、第1のゲート信号の送信と、第2のゲート信号の送信とを、交互に複数回繰り返している。このため、本実施形態の電力変換装置10では、プリチャージ中に静電気によってゲート駆動回路40が誤動作したとしても、ゲート駆動回路40の出力信号を正常な状態に復帰させることができる。
【0087】
また、ゲート信号制御部50は、プリチャージの開始の際にモータジェネレータ12が回転していた場合、第1のゲート信号の送信および第2のゲート信号の送信を行わず、プリチャージの開始の際に、モータジェネレータ12が停止していた場合、第1のゲート信号の送信および第2のゲート信号の送信を行う。このため、本実施形態の電力変換装置10では、電力変換装置10が適用される車両1において、コンデンサ38やバッテリ16が損傷することを防止できる。
【0088】
また、本実施形態の車両1において、電力変換装置10が収容されるケースにおける金属部分などに、非金属製のシートなどの絶縁材を設けてもよい。この態様によれば、電力変換装置10への静電気の印加を抑制することができる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば、上記実施形態のゲート信号制御部50は、プリチャージ中に、第1のゲート信号の送信と第2のゲート信号の送信とを交互に複数回繰り返していた。しかし、ゲート信号制御部50は、第1のゲート信号の送信および第2のゲート信号の送信を、複数回繰り返さず、プリチャージの開始時に1回のみ行ってもよい。
【0091】
また、上記実施形態のゲート信号制御部50は、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信を、プリチャージの開始から終了まで行っていた。しかし、ゲート信号制御部50は、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信を、プリチャージ中の所定区間のみ行ってもよい。例えば、ゲート信号制御部50は、プリチャージ信号「オン」を受信してから所定時間経過後に、所定時間分だけ、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信を行ってもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、プリチャージが開始されてから(メインスイッチ14b、14cが「オン」されてから)、第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信を行っていた。しかし、車両制御部20は、READY−ON操作(プリチャージ開始指示)に応じて、プリチャージ信号「オン」をゲート信号制御部50に送信し、ゲート信号制御部50が第1のゲート信号および第2のゲート信号の送信を少なくとも1回ずつ行った後に、メインスイッチ14b、14cを「オン」させてプリチャージを開始してもよい。
【0093】
また、上記実施形態のゲート信号制御部50は、第1のゲート信号を送信した後に第2のゲート信号を送信していた。しかし、ゲート信号制御部50は、第2のゲート信号を送信した後に第1のゲート信号を送信してもよい。この態様においても、静電気によってゲート駆動回路40が誤動作したときに、ゲート駆動回路40の出力信号を正常な状態に復帰させることができる。
【0094】
また、上記実施形態のゲート信号制御部50は、第1のゲート信号および第2のゲート信号を、送信タイミングを異ならせて送信していた。しかし、ゲート信号制御部50は、第1のゲート信号と第2のゲート信号とを並行して送信してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、ゲート駆動回路によってスイッチング素子がオンオフされる電力変換装置に利用できる。
【符号の説明】
【0096】
1 車両
10 電力変換装置(インバータ)
12 モータジェネレータ
30、30a、30b、30c、30d、30e、30f スイッチング素子
32p 正側直流母線
32n 負側直流母線
36u、36v、36w 出力ノード
38 コンデンサ
40、40a、40b、40c、40d、40e、40f ゲート駆動回路
50 ゲート信号制御部
図1
図2
図3
図4
図5