特許第6831843号(P6831843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6831843シリカベースのカプセル内における物質のカプセル化方法、及びそれにより得られる製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831843
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】シリカベースのカプセル内における物質のカプセル化方法、及びそれにより得られる製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/51 20060101AFI20210208BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20210208BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20210208BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20210208BHJP
   B01J 13/04 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   A61K9/51
   A61K9/50
   A61K47/32
   A61K47/34
   A61K8/11
   A61K8/89
   A61K8/06
   A61K8/81
   A61K8/84
   A61K8/31
   A61K8/37
   A61K8/35
   A61K8/33
   B01J13/04
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-524531(P2018-524531)
(86)(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公表番号】特表2018-526433(P2018-526433A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】EP2016001150
(87)【国際公開番号】WO2017016636
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年2月15日
(31)【優先権主張番号】15002261.4
(32)【優先日】2015年7月30日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518033336
【氏名又は名称】ディーダブリューアイ − ライプニッツ−インスティチュート フュア インタラクティブ マテリアーリエン エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ヨンリャン
(72)【発明者】
【氏名】メラー マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ズー シャオミン
【審査官】 飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/037202(WO,A1)
【文献】 特開2000−225332(JP,A)
【文献】 特開平11−221459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61K 8/00− 8/99
B01J 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性有機化合物が最大99%(w/w)充填される、PAOSオリゴマーに由来する縮合体を含むシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
(i)ポリアルコキシシロキサン(PAOS)、又は親水性基で部分的に置換される両親媒性PAOSと、(ii)疎水性有機液体とを含む、疎水性の水不溶性液体を、付加的な界面活性剤を用いることなく、また事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、剪断力の下、前記シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間、水溶液中に乳化する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記疎水性有機液体が、アルカン、アルケン、アルキン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物、ポリマーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PAOSを、種々の分子量及び種々の置換度のポリ(エチレングリコール)モノアルキルエーテルで置換することができる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
疎水性の水不溶性ポリマーが最大99%(w/w)充填されるシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
a)(i)ポリアルコキシシロキサン(PAOS)と、(ii)ラジカル重合性の疎水性有機モノマーと、(iii)開始剤とを含む、疎水性の水不溶性溶液を、剪断力の下、付加的な界面活性剤を用いることなく、また事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、水溶液中に乳化する工程と、
b)得られるエマルションを、重合を誘起させるより高い温度に、前記シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間加熱する工程と、
c)混合物を室温まで冷却させる工程と、
d)こうして得られたポリマー内包SiOカプセルを単離する工程と、
を含む、方法。
【請求項5】
工程a)における乳化温度で液体形態となり得るアルカン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物又はポリマーから選択されることが好ましい1種以上の非(共)重合性の疎水性有機化合物を、工程a)における反応系に更に添加して、疎水性有機化合物内包ポリマー内包SiOカプセルを得る、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
室温において結晶性で疎水性の水不溶性物質が最大99%(w/w)充填されるシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
a)(i)ポリアルコキシシロキサン(PAOS)と、(b)室温において結晶性の疎水性有機化合物とを含む、疎水性の水不溶性溶液を、剪断力の下、結晶性有機材料の融点を超える温度で、付加的な界面活性剤を用いることなく、また事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、水溶液中に乳化する工程と、
b)続いて、工程a)において得られるエマルションを、前記シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間、加熱する工程と、
c)混合物を室温まで冷却させる工程と、
d)こうして得られた結晶性の疎水性有機化合物内包SiOカプセルを単離する工程と、
を含む、方法。
【請求項7】
前記室温において結晶性の疎水性有機化合物が、アルカン、アルキルアルコールとアルキルカルボン酸とのエステル、又はそれらの混合物を含む蝋から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程a)における乳化温度で液体形態となり得るアルカン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物又はポリマーから選択されることが好ましい疎水性有機化合物を、工程a)における反応系に更に添加して、疎水性有機化合物内包有機固体内包SiOカプセルを得る、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
親水性の水溶性物質が最大95%(w/w)充填されるシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
a)親水性の水溶性物質を含有する水溶液を、剪断力の下、付加的な界面活性剤を用いることなく、また事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、(i)ポリアルコキシシロキサン(PAOS)と、(ii)ラジカル重合性の疎水性有機モノマーと、(iii)開始剤とを含む、疎水性の水不溶性溶液中に乳化する工程と、
b)工程a)の油中水型エマルションを、剪断力の下、付加的な界面活性剤を用いることなく、また事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、水溶液中に乳化する工程と、
c)前記エマルションを、重合を誘起させるより高い温度に、前記シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間加熱する工程と、
d)混合物を室温まで冷却させる工程と、
e)こうして得られたシリカベースのカプセルを単離する工程と、
を含む、方法。
【請求項10】
工程a)及び工程b)における乳化温度で液体形態となり得るアルカン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物又はポリマーから選択されることが好ましい1種以上の非重合性の疎水性有機化合物を、工程a)又は工程b)における反応系に更に添加して、それらを前記カプセルの有機相内に組み込む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
親水性の水溶性物質が最大95%(w/w)充填されるシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
a)親水性の水溶性物質を含有する水溶液を、剪断力の下、結晶性有機材料の融点を超える温度で、付加的な界面活性剤を用いることなく、また事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、(i)ポリアルコキシシロキサン(PAOS)と、(ii)室温で結晶化する溶融有機化合物とを含む、疎水性の水不溶性溶液中に乳化する工程と、
b)工程a)の油中水型エマルションを、前記結晶性有機材料の融点を超える温度で、付加的な界面活性剤を用いることなく、また事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、水溶液中に乳化する工程と、
c)続いて、工程b)において得られるエマルションを、前記シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間、加熱する工程と、
d)混合物を室温まで冷却させる工程と、
e)こうして得られたシリカベースのカプセルを単離する工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
工程a)及び工程b)における乳化温度で液体形態となり得るアルカン、アルケン、アルキン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物又はポリマーから選択されることが好ましい1種以上の疎水性有機化合物を、工程a)又は工程b)における反応系に更に添加して、それらを前記カプセルの有機相内に組み込む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ポリエトキシシロキサンをPAOSとして使用する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ラジカル重合性の疎水性有機モノマーが、スチレン、メチルスチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、アクリロニトリル又はそれらの混合物から選択される、請求項4、5、9又は10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
記開始剤が、
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイルを含む熱開始剤であるか、あるいは
光開始剤である、請求項4、5、9、10又は14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション法を介して疎水性物質又は親水性物質のいずれかをシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセル内に封入する方法に関する。より詳細には、本発明は、シリカ源としてだけでなく乳化剤としても作用するシリカ前駆体ポリマーであるポリアルコキシシロキサン(PAOS)、好ましくはポリアルキルアルコキシシロキサン(R−PAOS)を用いた最大99%(w/w)のペイロード(payload:最大充填量)を含有する0.01μm〜100μm、特に0.01μm〜10μmのシリカベースのマイクロカプセルを製造する方法に関する。機械的により安定なカプセルを得るために、PAOS又はR−PAOSの変換は、有機相の固化を伴う。疎水性物質をカプセル化するために、水中油型エマルションが形成される。親水性化合物をカプセル化するためには水中油中水型二重エマルションの形成が必要とされる。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、物質を取り込むのに有効なコアを形成する空間を取り囲む固体シェルからなる中空微粒子である。マイクロカプセル化は、有効物質の保護及び制御放出を実践する食品及び化粧品から薬学及び医学までの範囲の様々な分野における多数の用途に応用される。
【0003】
有機ポリマーは最も広範に使用されるシェル材料であり、有効物質をポリマーマイクロカプセル内にカプセル化する工業プロセスとしては、界面重合、押出、コアセルベーション、噴霧乾燥等が挙げられる(より詳細には非特許文献1を参照されたい)。
【0004】
シリカは、その化学的不活性、機械的安定性、生体適合性、光透過性及び容易な機能化に起因して、有機カプセル材料に取って代わることが期待されるものである。分子レベルにおける組成物及び微細構造の制御と、中程度のエネルギー条件及び低エネルギー条件下で材料を粒子、繊維及び薄膜へと成形する能力とを併せ持つゾル−ゲル法は、種々の物質をシリカシェル内にカプセル化する確立された方法である(より詳細には非特許文献2、非特許文献3を参照されたい)。実際のところ、ゾル−ゲル法の始めにドーパント分子を単に添加することにより、有機分子はシリカベースのマトリックスの内孔(inner porosity)に取り込まれる。テトラアルコキシシラン及びアルキルトリアルコキシシランのような低分子シランは、シリカベースのマトリックスへと縮合されるモノマーとして使用される。
【0005】
物質をシリカマイクロカプセル内に取り込むために、ゾル−ゲル法は一般的に、カプセル構造体を生成する軟質のテンプレートとして、ミニエマルション及びマイクロエマルションを含むエマルションと組み合わされる。この場合、シリカが油相と水相との界面に形成し、分散した水性相又は油相をカプセル化することができる。エマルションの安定化のために、通常、界面活性剤が添加される。例えば、特許文献1は、界面活性剤の存在下で水中油型エマルションとゾル−ゲル法とを組み合わせることによる、有機物質を含有するシリカカプセルの形成を記載している。シリカベースのマイクロカプセルを生成するための界面活性剤で安定化した油中水型エマルションの使用は、例えば非特許文献4に記載されている。ナノサイズのエマルション液滴及び続いてナノカプセルを形成するために、界面活性剤濃度は極めて高くなければならないが、それらの完全な除去は往々にして問題となる。固体粒子は、それらの界面活性に起因して、エマルションを安定させるのに従来の界面活性剤分子の代わりに使用することもできる(非特許文献5、非特許文献6)。これらのいわゆるピッケリングエマルションは、安定化用コロイド粒子を界面に固定することによって、コロイドサム(colloidosomes)と称される中空構造体を生成するのに使用することができる。水性相又は油相を封入するミクロサイズの全シリカコロイドサムは、油中水型又は水中油型ピッケリングエマルションの各々においてPAOSを用いてシリカナノ粒子を水−油界面に付着させることによって得られた(非特許文献7、非特許文献8)。特許文献2では、PAOSをシリカ前駆体として用いて水中油型エマルションにおけるシリカナノカプセルを製造する方法が開示されており、該エマルションは、PAOS、及びPAOSのシリカへの変換も触媒するシリカナノ粒子によって安定化される。シリカマイクロカプセルも、界面活性剤を用いることなく、乳化混合物中における二段階ゾル−ゲル法(酸で触媒される加水分解及び塩基で触媒される縮合)を用いることによってエマルションから生成することができる(非特許文献9)。この方法では、有効物質を含有するテトラエトキシシランから生成される水性シリカゾルが、疎水性液体中で乳化するため、親水性の水分散性物質に対してのみ適する。得られるシリカ粒子のサイズは主に10μmを超え、これは主に乳化中の撹拌速度に応じて決まる。さらに、これらの粒子の内部形態に関する利用可能な情報もない。物質はシリカマトリックス内にカプセル化され、すなわち、コア−シェル構造体は形成されていない可能性が高い。
【0006】
PAOSはこれまで、ゾル−ゲルシリカを生成するためのシリカ前駆体としてのみ使用されてきた。例えば、特許文献3は、重合性ビニルモノマーに由来するポリマー成分とシリカ成分とを含む、シリカを組み合わせたポリマー粒子を開示しており、該シリカ成分は、重合性ビニルモノマーに不活性なPAOSオリゴマーに由来する縮合体である。特許文献4は、コア材料とカプセル壁とを含有するマイクロカプセルを開示しており、該マイクロカプセルのカプセル壁は、ヒドロキシル基を含有するオルガノシランの加水分解縮合体から形成されるオルガノシリコーン樹脂(organosilicone resin)を含む。特許文献5は、ヒドロキシル基を含有するオルガノシランの加水分解縮合体から形成される膜壁を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,303,149号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2832691号
【特許文献3】国際公開第2007/037202号
【特許文献4】米国特許第6,337,089号
【特許文献5】特開2000−225332号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lakkis, J. M.,Encapsulation and Controlled Release Technologies in Food Systems. 1st ed.; Blackwell: Ames, 2007
【非特許文献2】Pagliaro, M., Silica-Based Materials for Advanced Chemical Applications, The Royal Society of Chemistry, Cambridge, 2009
【非特許文献3】Ciriminna, R.; Sciortino, M.; Alonzo, G.; de Schrijver, A.; Pagliaro, M., From Molecules to Systems: Sol-Gel Microencapsulation in Silica-Based Materials. Chem. Rev. 2011, 111, 765-789
【非特許文献4】Barbe, C. J.; Kong, L.; Finnie, K. S.; Calleja, S.; Hanna, J. V.; Drabarek, E.; Cassidy, D. T.; Blackford, M. G., Sol-Gel Matrices for Controlled Release: From Macro to Nano Using EmulsionPolymerization. J. Sol-Gel Sci. Technol. 2008, 46, 393-410
【非特許文献5】Pickering, S. U., J. Chem. Soc., Trans. 1907, 91, 2001-2021
【非特許文献6】Ramsden, W., Proc. R. Soc. Lond. 1903, 72, 156-164
【非特許文献7】Wang, H. L.; Zhu, X. M.; Tsarkova, L.; Pich, A.; Moeller, M., All-SillicaColloidosomes with a Particle-Bilayer Shell. ACS Nano 2011, 5, 3937-3942
【非特許文献8】Zhao, Y. L.; Li, Y. Q.; Demco, D. E.; Zhu, X. M.; Moeller, M., Microcapsulationof HydrophobicLiquids in Closed All-Sillica Colloidosomes. Langmuir 2014, 30, 4253-4261
【非特許文献9】Radin, S.; Chen, T.; Ducheyne, P., The Controlled Release of Drugs from Emulsified, Sol Gel Processed Silica Microspheres. Biomaterials 2009, 30, 850-858
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の基礎をなす課題は、シリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルの製造のための改良された単純方法を提供することである。
【0010】
この課題及びその他は、以下の開示から明らかとなり、添付の特許請求の範囲において特徴づけられる以下の実施の形態によって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の実施の形態において、本発明は、疎水性有機液体化合物が最大99%(w/w)充填されるシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
(i)PAOS、又は親水性基で部分的に置換される両親媒性PAOSと、(ii)疎水性有機液体とを含む、疎水性の水不溶性液体を、付加的な界面活性剤を用いることなく、またシリカナノ粒子のような任意の事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、剪断力の下、シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間、水溶液中に乳化する工程を含む、方法に関する。
【0012】
上記第1の実施の形態において使用され得る疎水性有機液体の例は、アルカン(実施例1を参照されたい)、アルケン、アルキン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物、ポリマー(実施例2を参照されたい)等である。
【0013】
上述した特許文献4及び特許文献5はともに、少なくとも1つの非加水分解性有機基を含有するオルガノシリコーン(シリコーン樹脂)からカプセルを製造する方法を開示しているが、本発明は無機SiOカプセルに関するものである。その上、樹脂前駆体は水中で合成及び分散されるものである。それとは異なり、本発明で使用されるPAOSは疎水性であり、有機相により施される。
【0014】
機械的により安定なカプセルを得るために、PAOS又はR−PAOSの変換は、有機相の固化を伴う。
【0015】
第2の実施の形態において、本発明は、疎水性の水不溶性ポリマーが最大99%(w/w)充填されるシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
a)(i)PAOSと、(ii)ラジカル重合性の疎水性有機モノマーと、(iii)開始剤とを含む、疎水性の水不溶性溶液を、剪断力の下、付加的な界面活性剤を用いることなく、またシリカナノ粒子のような任意の事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、水溶液中に乳化する工程と、
b)得られるエマルションを、重合を誘起させるより高い温度に、シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間加熱する工程と、
c)混合物を室温まで冷却させる工程と、
d)こうして得られたポリマー内包SiO(polymer@SiO2)カプセルを単離する工程と、
を含む、方法に関する。
【0016】
かかるコア−シェル粒子が、反射防止コーティングの製造のための重要成分として使用されてきたことから(国際公開第2008/028640号)、本実施の形態(第2の実施の形態)はコーティング産業にとって特に興味深いものとなり得る。
【0017】
この第2の実施の形態では、任意に、乳化温度で液体形態となり得る非(共)重合性の疎水性有機化合物を、工程a)に更に添加してもよい。スチレンをラジカル重合性の疎水性有機モノマーとして使用する場合、シリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを得ることができ、この際、非(共)重合性の疎水性有機化合物が、ポリスチレン内包SiOコア−シェルマイクロカプセル及びナノカプセル内にカプセル化される(実施例6を参照されたい)。非(共)重合性の疎水性化合物は、アルカン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物、ポリマー等から選択される。
【0018】
特許文献3は、重合性ビニルモノマーに由来するポリマー成分とシリカ成分とを含む、シリカを組み合わせたポリマー粒子を開示しているが、各製造方法には、エマルションを安定化させる事前形成された粒子が必要であることが記載されている。それとは異なり、本発明では、エマルションがPAOSのみによって安定化される。本発明によれば、シリカ前駆体ポリマーであるPAOSは、その水不溶性と同時に、油/水界面における加水分解により誘起される顕著な両親媒性に起因して単独のエマルション安定化剤として利用される。
【0019】
第3の実施の形態において、本発明は、室温において結晶性で疎水性の水不溶性物質が最大99%(w/w)充填されるシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
a)(i)PAOSと、(ii)室温において結晶性の疎水性有機化合物とを含む、疎水性の水不溶性混合物を、剪断力の下、結晶性有機材料の融点を超える温度で、付加的な界面活性剤を用いることなく、またシリカナノ粒子のような任意の事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、水溶液中に乳化する工程と、
b)続いて、工程a)において得られるエマルションを、シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間、加熱する工程と、
c)混合物を室温まで冷却させる工程と、
d)こうして得られた結晶性の疎水性有機化合物内包SiOカプセルを単離する工程と、
を含む、方法に関する。
【0020】
高温で溶融可能な、室温(すなわち約23℃)において結晶性の疎水性有機化合物(固体)としては、蝋、例えば、アルカン、アルキルアルコールとアルキルカルボン酸とのエステル、又はそれらの混合物が挙げられる。本実施の形態(第2の実施の形態)は、蝋が重要な化粧品成分として広く使用される化粧品産業にとって特に興味深いものである。この技法を用いて、疎水性蝋を親水性とすることができるため、配合の可能性が大いに広がり得る。さらに、蝋は有機系相転移材料であるため、マイクロカプセル化によってそれらの加工性、例えば、ポリマーマトリックスと複合材料を形成する能力、及び再利用性が改善される。例えば、ドコサン及びミリスチルミリステートをここでは挙げることができる(実施例8及び実施例9を参照されたい)。この場合、カプセル化反応は、固体の融点を超える温度で起こる。縮合反応が終わったら系を室温まで冷却させる。
【0021】
任意に、疎水性有機化合物、例えば、乳化温度で液体形態であるアルカン、アルケン、アルキン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物、例えばポリ(ジメチルシロキサン)PDMSのようなポリマー等を、工程a)に、すなわち、室温において結晶性の疎水性有機化合物(固体)との混合物の形態で更に添加してもよい(実施例10を参照されたい)。疎水性有機化合物はオーガニックフレグランス及びオーガニックフレーバーとし得ることから、本選択肢は化粧品産業にとって特に興味深いものである。
【0022】
任意に、PAOS及び室温において結晶性の疎水性有機化合物に加えてPDMS等のポリマーを工程a)に添加して、PDMS内包結晶性の疎水性有機化合物内包SiOカプセルをもたらすこともできる(実施例11を参照されたい)。PDMSは、例えば皮膚の保護用の化粧品において広く使用される。
【0023】
第4の実施の形態において、本発明は、親水性の水溶性物質が最大95%(w/w)充填されるシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
a)親水性の水溶性物質を含有する水溶液を、剪断力の下、付加的な界面活性剤を用いることなく、またシリカナノ粒子のような任意の事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、(i)PAOSと、(ii)ラジカル重合性の疎水性有機モノマーと、(iii)開始剤とを含む、疎水性の水不溶性溶液中に乳化する工程と、
b)工程a)の油中水型エマルションを、剪断力の下、付加的な界面活性剤を用いることなく、またシリカナノ粒子のような任意の事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、水溶液中に乳化する工程と、
c)工程b)のエマルションを、重合を誘起させるより高い温度に、シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間加熱する工程と、
d)混合物を室温まで冷却させる工程と、
e)こうして得られたシリカベースのカプセルを単離する工程と、
を含む、方法に関する。
【0024】
この第4の実施の形態では、親水性の水溶性物質を含有する水溶液を、純水、すなわち、HO自体(実施例13を参照されたい)、又は例えば過酸化物、塩、ビタミン、ペプチド、染料、炭水化物を含有する任意の水溶液(実施例14を参照されたい)等とすることもできる。
【0025】
任意に、乳化温度で液体形態となり得る非(共)重合性の疎水性有機化合物を、この第4の実施の形態の工程a)又は工程b)に更に添加してもよい。これにより、これらの物質は、カプセルのポリマー層内に組み込まれる。非(共)重合性の疎水性化合物は、アルカン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物又はポリマー等とすることができる。
【0026】
第5の実施の形態において、本発明は、親水性の水溶性物質が最大95%(w/w)充填されるシリカベースのマイクロカプセル及びナノカプセルを製造する方法であって、
a)親水性の水溶性物質を含有する水溶液を、剪断力の下、結晶性有機材料の融点を超える温度で、付加的な界面活性剤を用いることなく、またシリカナノ粒子のような事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、(i)PAOSと、(ii)室温で結晶化する溶融有機化合物とを含む、疎水性の水不溶性混合物中に乳化する工程と、
b)工程a)の油中水型エマルションを、結晶性有機材料の融点を超える温度で、付加的な界面活性剤を用いることなく、またシリカナノ粒子のような任意の事前形成された(ナノ)粒子も用いずに、水溶液中に乳化する工程と、
c)続いて、工程b)において得られるエマルションを、シリカベースのカプセルを形成するのに十分な時間、加熱する工程と、
d)混合物を室温まで冷却させる工程と、
e)こうして得られたシリカベースのカプセルを単離する工程と、
を含む、方法に関する。
【0027】
任意に、乳化温度で液体形態となり得る1種以上の疎水性有機化合物を、工程a)又は工程b)に更に添加してもよい。これにより、これらの物質は、カプセルの蝋層内に組み込まれる。疎水性化合物は、アルカン、アルケン、アルキン、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、芳香族化合物又はポリマー等とすることができる。
【0028】
本発明の方法は、シリカ前駆体ポリマーであるPAOS又はR−PAOSを、シリカ源として、同時にエマルションの安定化剤として用いて、いずれの付加的な界面活性剤も事前形成された(ナノ)粒子も用いることなく、有機相の(部分)固化を伴って、疎水性又は親水性いずれかの物質を封入する、機械的に安定な0.01μm〜100μmのシリカベースのマイクロカプセルを得ることができる。
【0029】
好ましくは、本発明は、直径が10μm未満、好ましくは0.6μm未満であり、サイズ変化が20%未満であり、最大100%のカプセル化効率及び最大99%(w/w)のペイロードを有するカプセルの製造を可能にする。疎水性物質のペイロードのカプセル化は、好ましくは疎水性有機相の固化プロセスを伴って、ポリアルコキシシロキサン(PAOS)、好ましくはポリアルキルアルコキシシロキサン(R−PAOS)をシリカ前駆体として活用するものである。第1の工程では、PAOS又はR−PAOSが、有効な乳化剤として、また有機微小液滴の周りにシリカシェルを形成するための供給源として作用する。或る特定の温度及び水性相の好適なpH値における得られる分散液系のエージングは、コア−シェル構造を安定化させる。固化プロセスは、重合、ガラス化又は結晶化によって引き起こされ得る。得られるマイクロカプセルは、水中に安定な形態で分散し、粉末形態で単離された後、水に再分散することができる。
【0030】
親水性化合物のカプセル化のために、それらの水溶液を初めにPAOS又はR−PAOSを含有する有機相中で乳化し、得られる水中油型エマルションをその後、水に分散させて、水中油中水型二重エマルションとする。エージング後、親水性化合物の水溶液が、シリカベースのカプセル内に取り込まれる。加えて、疎水性有機物質は同時に、カプセルの有機相内にカプセル化され得る。
【0031】
本発明の方法は、水溶液中におけるPAOS若しくはR−PAOSと、充填される疎水性物質と、好ましくは重合性若しくは結晶性の疎水性化合物とで構成される疎水性混合物の水中油型エマルション、又は、内部水性相に充填される水溶性物質及びPAOS若しくはR−PAOS、好ましくは重合性若しくは結晶性の疎水性化合物と、充填される任意に疎水性の物質とで構成される疎水性混合物を含有する水中油中水型エマルションの形成に基づくものである。機械的に安定なカプセルを得るために、シリカへのPAOS又はR−PAOSの変換に加えて、油相が重合又は結晶化によって(部分的に)固化することが好ましいとされる。
【0032】
通常、外側の連続的な水溶液のpHは、1〜12、より好ましくは3〜11、更に好ましくは4〜10の範囲をとる。
【0033】
PAOSは、テトラアルコキシシランの部分縮合体であり、ポリメトキシシロキサン、ポリエトキシシロキサン、ポリプロポキシシロキサン、ポリブトキシシロキサン等、又は混合アルコキシ基を有するものであってもよい。それらの幾つか、例えばシリカ含有率40%(w/w)のポリエトキシシロキサン(SE40)、シリカ含有率48%(w/w)のポリエトキシシロキサン(SE48)及びシリカ含有率53%(w/w)のポリメトキシシロキサン(ME53)は、市販されている。PAOSは、文献の手順に従って合成することもできる(Abe, Y.; Shimano, R.; Arimitsu, K.; Gunji, T.,Preparation and Properties of High MolecularWeight Polyethoxysiloxanes Stable to Self-Condensationby Acid-Catalyzed Hydrolytic Polycondensationof Tetraethoxysilane. J. Polym. Sci.,Part A: Polym. Chem. 2003, 41, 2250-2255、独国特許出願公開第10261289号、又はZhu, X. M.; Jaumann, M.; Peter, K.; Moeller, M.; Melian, C.; Adams-Buda, A.; Demco, D. E.; Bluemich, B.,One-Pot Synthesis of Hyperbranched Polyethoxysiloxanes. Macromolecules 2006, 39, 1701-1708)。PAOSは、2種以上のアルコキシ基を含有していてもよく、例えばWang, H.; Agrawal, G.; Tsarkova, L.; Zhu, X.M.; Moeller, M.,Self-Templating Amphiphilic Polymer Precursors for Fabricating Mesostructured Silica Particles: A Water-Based Facile and Universal Method. Adv. Mater. 2013, 25, 1017-1021に記載されるポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルで部分的に置換されるポリエトキシシロキサンであってもよい。
【0034】
R−PAOSは、テトラアルコキシシランと、アルキルトリアルコキシシラン及び/又はジアルキルジアルコキシシランとの共縮合によって調製される。
【0035】
本発明で使用されるPAOS又はR−PAOSは好ましくは、500〜20000の範囲の分子量及び40%(w/w)〜60%(w/w)の範囲のシリカ含有率を有する。
【0036】
種々の水中油型又は水中油中水型エマルションは、両親媒性PAOS若しくはR−PAOS、例えば親水性基で部分的に置換されるポリエトキシシロキサン、例えばポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、又は乳化プロセス中に部分的に加水分解されるPAOS若しくはR−PAOSのいずれかによって安定化される。
【0037】
両親媒性PAOS、すなわち親水性基で部分的に置換されるPAOSの置換度は、得られる分子の親水性−親油性バランス(HLB)が1〜16、より正確には2〜12、更に正確には3〜10の範囲をとるように調節されるものとする。HLB値は下記のように算出することができる。
HLB=20M/M
(式中、Mは分子の親水性部分の分子質量であり、Mは分子全体の分子質量である)
【0038】
エマルションは、装置、例えば超音波発生装置、マイクロフルイダイザ、(高圧)ホモジナイザ、撹拌器等を用いて適切な剪断力の下で生成される。
【0039】
カプセル化される物質は、任意の疎水性液体及び高温で疎水性液体中に溶ける任意の固体を含む広範な疎水性物質とすることができる。疎水性物質は、純粋な化合物であっても混合物であってもよい。封入される物質は、水溶性の液体又は固体である広範な親水性化合物とすることができ、純粋な化合物であっても混合物であってもよい。親水性化合物は水に溶解して水溶液を形成してから、カプセル化される。
【0040】
重合性の疎水性モノマーは、ラジカル重合することができる任意の疎水性モノマーである。これらのモノマーは、スチレン、メチルスチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、アクリロニトリル等又はそれらの混合物とすることができる。2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー、例えばジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレートをモノマー混合物に添加してもよい。
【0041】
ラジカル重合では、開始剤をモノマー混合物に添加する。開始剤は、油溶性のものでなければならず、熱開始剤、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル等;又はアセトフェノン、アニソイン、ベンゾインアルキルエーテル等のような光開始剤とすることができる。ラジカル重合を開始するために、エマルションを加熱又はUV光により照射する必要がある。
【0042】
本発明による方法では、1時間〜3日間加熱し続けてもよい。
【0043】
充填されたシリカカプセルは、遠心分離又は濾過及びその後の乾燥によって単離することができる。
【0044】
述べたように、最終生成物の粒径は、0.01μm〜100μm、より好ましくは0.01μm〜10μm、更に好ましくは0.01μm〜0.6μmの範囲に制御することができる。本方法により得られる粒子は良好な機械強度を有する。これらの粒子は、例えば超音波処理の下で高剪断力を保持して、カプセル化特性及び粒径分布を維持することができる。粒子は、有機コアを除去して中空シリカ粒子を得るように500℃を超える温度でか焼してもよい。これにより、シリカカプセルにおけるカプセル化された物質のペイロードは、0から最大99重量%となり、二重エマルションに関する場合には(第4及び第5の実施の形態を参照されたい)最大95重量%となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】実施例1で調製した乾燥させたヘキサン内包SiOナノカプセルのFE−SEM顕微鏡写真である。
図2】実施例1で調製した乾燥させたヘキサン内包SiOナノカプセルのTEM顕微鏡写真である。
図3】実施例2で調製したポリ(ジメチルシロキサン)内包SiOカプセルのFE−SEM顕微鏡写真である。
図4】実施例3で調製したポリスチレン内包SiOコア−シェルナノ粒子のFE−SEM顕微鏡写真である。差込み図はこれらの粒子のTEM画像である。
図5】実施例3においてか焼後に調製したシリカ中空ナノカプセルのTEM顕微鏡写真である。
図6】実施例4で調製したポリメチルメタクリレート内包SiOコア−シェルナノ粒子のFE−SEM顕微鏡写真である。
図7】実施例5で調製したポリ(メチルメタクリレート−co−スチレン)内包SiOコア−シェルナノ粒子のFE−SEM顕微鏡写真である。
図8】実施例6で調製したヘキサデカン内包ポリスチレン内包SiOナノカプセルのTEM画像である。
図9】実施例7で調製した酢酸ヘキシル内包ポリスチレン内包SiOナノカプセルのFE−SEM画像である。
図10】30℃で測定した酢酸ヘキシル内包ポリスチレン内包SiOナノカプセルの等温における重量損失を示す図である。
図11】実施例8で調製したドコサン内包SiOコア−シェルナノ粒子のFE−SEM顕微鏡写真である。
図12】実施例8で調製したドコサン内包SiOコア−シェルナノ粒子のTEM顕微鏡写真である。
図13】実施例9で調製したミリスチルミリステート内包SiOコア−シェル粒子のFE−SEM顕微鏡写真である。
図14】実施例11で調製したポリ(ジメチルシロキサン)内包ドコサン内包SiOコア−シェル粒子のFE−SEM顕微鏡写真である。
図15】実施例11で調製したポリ(ジメチルシロキサン)内包ドコサン内包SiOコア−シェル粒子のTEM顕微鏡写真である。
図16】実施例12で調製した水溶液内包SiO内包ポリスチレン内包SiOカプセルのTEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ここで本発明を以下の実施例を用いて説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
Zhu, X. M.; Jaumann, M.; Peter, K.; Moeller, M.; Melian, C.; Adams-Buda, A.; Demco, D. E.; Bluemich, B.,One-Pot Synthesis of Hyperbranched Polyethoxysiloxanes. Macromolecules 2006, 39, 1701-1708に従ってPAOSを合成すると、得られるポリエトキシシロキサンは、ポリスチレン標準物質により較正したGPCにより、49.2%(w/w)のシリカ含有率及び1740g/molのMnを有するものであった。他の化合物は全てSigma-Aldrichから入手した。
【0048】
実施例1
エトキシ基を7%、分子量350のポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルで置換した1.2gのポリエトキシシロキサンを、1.2gのn−ヘキサンに溶解させた。この溶液は水中にエマルションを自然に形成した。水溶液のpHを10に調節した後、ヘキサンを含有するシリカナノカプセルの水性分散液が得られた。
【0049】
実施例2
10cStの粘度を有する15.0gのポリジメチルシロキサン(PDMS)を、60℃に加熱したpH7の水に添加した。その後、15.0gのポリエトキシシロキサンを添加し、混合物を、60℃において5分間18000rpmで動作するUltra−Turraxにより乳化した。得られるエマルションを60℃で24時間撹拌した。乳白色の分散液を11000rpmで遠心分離した。得られた白色固体を水で数回濯いだ後、乾燥させた。電子顕微鏡データによると、得られるPDMS内包SiOコア−シェル粒子のサイズは約1μmであり、狭分散性のものであった。
【0050】
実施例3
0.03gのAIBN及び1.2gのポリエトキシシロキサンを1.2gのスチレンに溶解させた。この溶液を、音波処理によりpH7の30gの水中に乳化した。得られるエマルションをその後、窒素雰囲気下において70℃で24時間加熱した。その後、乳白色の分散液を11000rpmで遠心分離した。得られた白色固体を水で数回濯いだ後、乾燥させた。電子顕微鏡データによると、コア−シェルナノ粒子のサイズは約150nmであり、狭分散性のものであった。シリカシェルの厚みは約15nmであった。
【0051】
実施例4
0.02gのAIBN及び1.2gのポリエトキシシロキサンを1.2gのメチルメタクリレートに溶解させた。この溶液を、音波処理によりpH4の30gの水中に乳化した。得られるエマルションをその後、窒素雰囲気下において65℃で24時間加熱した。乳白色の分散液を11000rpmで遠心分離した。得られた白色固体を水で数回濯いだ後、乾燥させた。電子顕微鏡データによると、コア−シェルナノ粒子のサイズは約300nmであり、狭分散性のものであった。シリカシェルの厚みは約30nmであった。
【0052】
実施例5
合成経路は、1.2gのメチルメタクリレートの代わりに、0.4gのスチレンと0.8gのメチルメタクリレートとの混合物を使用した以外、実施例2に記載したものと同様のものとした。ポリ(メチルメタクリレート−co−スチレン)内包SiOコア−シェルナノ粒子が得られた。電子顕微鏡データによると、コア−シェルナノ粒子のサイズは約200nmであり、狭分散性のものであった。シリカシェルの厚みは約20nmであった。
【0053】
実施例6
合成経路は、1.2gのスチレンの代わりに、1.2gのスチレンと0.6gのヘキサデカンとの混合物を使用した以外、実施例1に記載したものと同様のものとした。その後、ヘキサデカンをポリスチレン内包SiOコア−シェルカプセル内にカプセル化した。電子顕微鏡データによると、カプセルのサイズは約100nmであった。
【0054】
実施例7
合成経路は、1.2gのスチレンの代わりに、1.2gのスチレンと0.6gの酢酸ヘキシルとの混合物を使用した以外、実施例1に記載したものと同様のものとした。その後、酢酸ヘキシルをポリスチレン内包SiOコア−シェルナノカプセル内にカプセル化した。電子顕微鏡データによると、コア−シェルナノカプセルのサイズは約150nmであった。
【0055】
実施例8
1.2gのドコサン粉末を、60℃においてpH7の30gの水中に添加した。ドコサンが完全に溶けたら、1.2gのポリエトキシシロキサンを添加した。その後、混合物を60℃における音波処理により乳化させた。得られる乳白色のエマルションを60℃で1日穏やかに撹拌した。得られた粒子は、11000rpmにおける遠心分離により単離し、水で3回濯いだ後、乾燥させた。電子顕微鏡データによると、コア−シェルナノ粒子及びナノカプセルのサイズは約480nmであり、狭分散性のものであった。シリカシェルの厚みは約20nmであった。
【0056】
実施例9
1.2gのミリスチルミリステートを、60℃においてpH7の30gの水中に添加した。ミリスチルミリステートが完全に溶けたら、1.2gのポリエトキシシロキサンを添加した。その後、混合物を、T25 digital ULTRA−TURRAX(商標)分散装置(IKA)を用いて60℃で乳化させた。得られる乳白色のエマルションを60℃で1日穏やかに撹拌した。得られる粒子は、11000rpmにおける遠心分離により単離し、水で3回濯いだ後、乾燥させた。電子顕微鏡データによると、コア−シェル粒子のサイズは4μm〜8μmの範囲であった。
【0057】
実施例10
合成経路は、1.2gのミリスチルミリステートの代わりに、ミリスチルミリステートと酢酸オクチルとの1.2gの混合物(重量比1:1)を使用した以外、実施例7に記載したものと同様のものとした。この混合物をその後、4μm〜8μmの範囲のサイズを有するSiOカプセル内にカプセル化した。
【0058】
実施例11
1.5gのドコサンを、60℃におけるpH7の30gの水中に添加した。ドコサンが完全に溶けたら、1.5gのポリエトキシシロキサン及び10cStの粘度を有する0.75gのPDMSを添加した。その後、混合物を60℃における音波処理により乳化させた。得られる乳白色のエマルションを60℃で1日穏やかに撹拌した。得られるカプセルは、11000rpmにおける遠心分離により単離し、脱イオン水で3回濯いだ後、乾燥させた。電子顕微鏡データによると、PDMS内包ドコサン内包SiOカプセルのサイズは約960nmであり、狭分散性のものであった。シリカシェルの厚みは20nmであった。
【0059】
実施例12
1.2gのポリエトキシシロキサン、1.2gのスチレン及び0.03gのAIBNを混合して、均一で透明な油相を形成した。その後、0.24gの純水を油相中に添加し、音波処理により乳化させた。得られる乳白色の油中水型エマルションをその後、音波処理を用いてpH7の30gの水中に乳化させた。得られた水中油中水型二重エマルションは、窒素雰囲気下において70℃で24時間加熱した。乳白色の分散液を11000rpmで遠心分離した。得られた白色固体を水で数回濯ぐと、水内包SiO内包ポリスチレン内包SiOカプセル粒子が得られた。電子顕微鏡データによると、ナノ粒子のサイズは約200nmであり、狭分散性のものであった。
【0060】
実施例13
合成経路は、カプセル化された純水0.24gをグルコースの5%(w/w)水溶液0.24gで置き換えた以外、実施例11に記載したものと同様のものとした。これにより、約200nmのグルコース溶液内包SiO内包ポリスチレン内包SiOカプセルが得られた。
【0061】
実施例14
6gのドコサン及び4gのポリエトキシシロキサンを混ぜ合わせ、60℃に加熱した。ドコサンが完全に溶けたら、グルコースの5%(w/w)水溶液2gを添加した。この系を60℃において音波処理により乳化させた。得られる油中水型エマルションは、T25 digital ULTRA−TURRAX(商標)分散装置(IKA)を用いて60℃でpH7の60gの水中に乳化させた。得られた水中油中水型二重エマルションは60℃で24時間加熱した。乳白色の分散液は室温まで冷却し、11000rpmで遠心分離した。得られた白色固体を水で数回濯ぐと、1μm〜5μmの範囲のサイズを有するグルコース溶液内包SiO内包ドコサン内包SiOカプセルが得られた。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16