(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者の口腔内に装着される装着具又は前記装着具の前記患者の口腔外に位置する部分に、着脱可能に接続され、前記患者の口腔外又は前記患者に向かって延びるアーム部と、
前記アーム部の先端に設けられた先端部と、を備え、
前記アーム部は、少なくとも、前記患者の左右方向に対応する直線方向と、前記患者の上下方向の軸回りに対応する回転方向と、前記患者の前後方向の軸回りに対応する回転方向とに、前記先端部の位置及び向きを変更可能に変形可能であり、
前記先端部は、前歯部模型である
歯科用測定器具。
患者の口腔内に装着される装着具又は前記装着具の前記患者の口腔外に位置する部分に、着脱可能に接続され、前記患者の口腔外又は前記患者に向かって延びるアーム部と、
前記アーム部の先端に設けられた先端部と、を備え、
前記アーム部は、少なくとも、前記患者の左右方向に対応する直線方向と、前記患者の上下方向の軸回りに対応する回転方向と、前記患者の前後方向の軸回りに対応する回転方向とに、前記先端部の位置及び向きを変更可能に変形可能であり、
前記先端部は、前記患者の口腔外に配置され、前記患者の顔面に対して上下方向に交差する面状の光を発光する発光器を有し、
前記患者の顎の上下方向の軸回りの向きを測定するために、前記患者の顔面の正中線に対して前記光による投影線が重なるように、前記アーム部を変形して前記先端部の位置及び向きを調整する
歯科用測定器具。
患者の口腔内に装着される装着具と、前記装着具に接続され、前記装着具から前記患者の口腔外に向かって延びるアーム部と、前記アーム部の先端に設けられた先端部と、を備え、前記アーム部は、少なくとも、前記患者の左右方向に対応する直線方向と、前記患者の上下方向の軸回りに対応する回転方向と、前記患者の前後方向の軸回りに対応する回転方向とに、前記先端部の位置及び向きを変更可能に変形可能であり、前記先端部は、前歯部模型である、歯科用測定器具を用意するステップと、
前記装着具を前記患者の口腔内に装着するステップと、
前記アーム部を変形して前記先端部の位置及び向きを変更するステップと、
前記装着具を前記患者から取り外すステップと、
前記アーム部の変形前後の前記アーム部又は前記先端部の位置及び向きの差分を取得するステップと
を含む測定方法。
患者の口腔内に装着される装着具と、前記装着具に接続され、前記装着具から前記患者の口腔外に向かって延びるアーム部と、前記アーム部の先端に設けられた先端部と、を備え、前記アーム部は、少なくとも、前記患者の左右方向に対応する直線方向と、前記患者の上下方向の軸回りに対応する回転方向と、前記患者の前後方向の軸回りに対応する回転方向とに、前記先端部の位置及び向きを変更可能に変形可能であり、前記先端部は、前記患者の口腔外に配置され、前記患者の顔面に対して上下方向に交差する面状の光を発光する発光器を有する、歯科用測定器具を用意するステップと、
前記装着具を前記患者の口腔内に装着するステップと、
前記患者の顎の上下方向の軸回りの向きを測定するために、前記患者の顔面の正中線に対して前記光による投影線が重なるように、前記アーム部を変形して前記先端部の位置及び向きを調整するステップと、
前記装着具を前記患者から取り外すステップと、
前記アーム部の変形前後の前記アーム部又は前記先端部の位置及び向きの差分を取得するステップと
を含む測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マーキングの跡を術者が意図した位置に正確に付けることは難しく、適切な測定結果を得られないことも多い。また、フェイスボウ等の測定器具には、操作が複雑なものが多く、取り扱いの難しさや煩雑さから、適切な測定結果を得られないことも多い。また、測定器具を使った場合は、患者の顔のどの部分を対象として測るかで結果が異なるものである。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、補綴、矯正、咬合診断などを含む歯科治療において、患者の口腔内の顎の位置及び向きを、簡単かつ精度よく測定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題の少なくとも一部を解決する本発明の一態様は、歯科用測定器具であって、患者の口腔内に装着される装着具と、前記装着具に接続され、前記装着具から前記患者の口腔外に向かって延びるアーム部と、前記アーム部の先端に設けられた先端部と、を備え、前記アーム部は、前記先端部の位置及び向きを変更可能に変形可能である。
【0008】
上記の歯科用測定器具であって、前記アーム部は、前記先端部の位置及び向きを、少なくとも前記患者の左右方向に対応する直線方向と、前記患者の上下方向の軸回りに対応する回転方向と、前記患者の前後方向の軸回りに対応する回転方向とに、変更可能であってもよい。
【0009】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記アーム部は、前記装着具に対して着脱可能であってもよい。
【0010】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記先端部は、前記アーム部に対して着脱可能であってもよい。
【0011】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記装着具は、前記患者の上顎に装着されるトレーであってもよい。
【0012】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記先端部は、前歯部模型であってもよい。
【0013】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記前歯部模型は、他の前歯部模型と交換可能に前記アーム部に対して着脱可能であってもよい。
【0014】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記先端部は、前記患者の口腔外に配置され、平行な2本の棒状部材を有してもよい。
【0015】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記先端部は、前記患者の口腔外に配置され、1本の棒状部材を有し、前記棒状部材の表面にはその軸方向に沿って目標線が表示されていてもよい。
【0016】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記先端部は、前記患者の口腔外に配置され、1つ又は2つの面状の光を発光する発光器を有してもよい。
【0017】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記アーム部は、少なくとも1つの回転機構、又は、少なくとも1つの直動機構、又は、これらの組合せの機械構造を有してもよい。
【0018】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記回転機構又は前記直動機構を介して連結される2つの部材には、それらの相対的な位置関係を示す目盛が表示されていてもよい。
【0019】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記先端部の前記アーム部が接続される接続部に、前記機械構造が設けられていてもよい。
【0020】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記装着具の前記アーム部が接続される接続部に、前記機械構造が設けられていてもよい。
【0021】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、複数の前記先端部を備え、複数の前記先端部を互いに交換可能に前記アーム部に対して着脱可能であってもよい。
【0022】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記アーム部は、複数のアーム部材を互いに着脱可能に接続して構成され、前記アーム部材は、他のアーム部材と交換可能に、前記先端部又は前記装着具に対して着脱可能であってもよい。
【0023】
上記のいずれかの歯科用測定器具であって、前記アーム部は、針金を含むフレキシブルに変形可能かつ形状を保持可能な部材を含んでいてもよい。
【0024】
上記の課題の少なくとも一部を解決する本発明の他の態様は、歯科用測定器具を他の歯科用器具に適合させるためのアタッチメント器具であって、前記歯科用測定器具は、患者の口腔内に装着される装着具と、前記装着具に接続され、前記装着具から前記患者の口腔外に向かって延びるアーム部と、前記アーム部の先端に設けられた先端部と、を備え、前記アーム部は、前記先端部の位置及び向きを変更可能に変形可能であり、前記アタッチメント器具は、前記他の歯科用器具に接続され、前記他の歯科用器具から延びる支持部材と、前記支持部材の先端に支持され、前記歯科用測定器具を保持する保持部材と、を備える。
【0025】
上記のアタッチメント器具であって、前記支持部材は、前記保持部材の位置を変更可能に変形可能であってもよい。
【0026】
上記のいずれかのアタッチメント器具であって、前記他の歯科用器具は、前記歯科用測定器具の前記装着具を固定する咬合器であってもよい。
【0027】
上記のいずれかのアタッチメント器具であって、前記他の歯科用器具は、前記歯科用測定器具の前記装着具を固定する台座又は治具であってもよい。
【0028】
上記の課題の少なくとも一部を解決する本発明のさらに他の態様は、歯科用測定器具であって、患者の口腔内に装着される装着具又は前記装着具の前記患者の口腔外に位置する部分に、着脱可能に接続され、前記患者の口腔外又は前記患者に向かって延びるアーム部と、前記アーム部の先端に設けられた先端部と、を備え、前記アーム部は、前記先端部の位置及び向きを変更可能に変形可能である。
【0029】
上記の課題の少なくとも一部を解決する本発明のさらに他の態様は、測定方法であって、患者の口腔内に装着される装着具と、前記装着具に接続され、前記装着具から前記患者の口腔外に向かって延びるアーム部と、前記アーム部の先端に設けられた先端部と、を備え、前記アーム部は、前記先端部の位置及び向きを変更可能に変形可能である、歯科用測定器具を用意するステップと、前記装着具を前記患者の口腔内に装着するステップと、前記アーム部を変形して前記先端部の位置及び向きを変更するステップと、前記装着具を前記患者から取り外すステップと、前記アーム部の変形前後の前記アーム部又は前記先端部の位置及び向きの差分を取得するステップとを含む。
【0030】
上記の課題の少なくとも一部を解決する本発明のさらに他の態様は、歯科用測定器具であって、患者の口腔内に装着される装着具と、前記装着具に着脱可能な前歯部模型とを備える。
【0031】
上記の歯科用測定器具であって、前記前歯部模型及び前記装着具の少なくとも一方は、前記前歯部模型の位置及び向きの少なくとも一方を変更可能に保持する可動部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、歯科治療において、患者の口腔内の顎の位置及び向きを、簡単かつ精度よく測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の複数の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
本明細書では、説明の便宜上、測定器具におけるX方向、Y方向、及びZ方向は、それぞれ患者の左右方向、上下方向、及び前後方向に概ね対応する。また、測定器具におけるx回転、y回転、及びz回転は、それぞれ患者の左右方向軸回りの回転、上下方向軸回りの回転、及び前後方向軸回りの回転に概ね対応する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る測定器具1の概略構成例を示す図である。測定器具1は、患者の口腔内の上顎Aに対して装着され、患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向きを測定するための歯科用測定器具である。通常は、顔貌的な観点で、患者の顔の正中線を基準として、上顎Aの位置及び向きが測定される。なお、上顎とは、有歯顎(歯列+顎堤)と無歯顎(顎堤のみ)の両方の場合を含む。
【0037】
測定器具1は、主要な構成要素として、装着具10、アーム部20、及び先端部30を備える。装着具10は、上顎Aに装着される部材である。アーム部20は、装着具10に一定の位置及び向き(初期状態の位置及び向き)で接続されており、装着具10が上顎Aに装着された状態で、口腔外に向かって伸びる部材である。先端部30は、アーム部20の先端(装着具10と反対側)に一定の位置及び向きで設けられており、測定の際の目印となる部材である。
【0038】
アーム部20は、先端部30の位置及び向き(姿勢)を変更可能に、変形可能な構造を備える。先端部30は、装着具10が上顎Aに装着された状態で、口腔内に配置されてもよいし、口腔外に配置されてもよい。アーム部20を変形させることにより、先端部30の6軸(位置XYZ、向きxyz)のうち、少なくとも、位置X、向きy、及び向きzを初期状態から変更することができる。
【0039】
歯科医師等の測定者は、手を使って、例えば、装着具10を患者の上顎Aに装着する。それから、患者の顔を正面から視た場合に、顔貌的な観点で、先端部30の正中線が頭部Hの正中線に対して平行かつ重なる(正中する)ように、先端部30の位置及び向き(少なくともXyz)を調整する。調整後の先端部30の位置及び向き(すなわち患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向き)は、アーム部20の形状を介して測定器具1に保存(記憶)されている。なお、位置X、向きy、及び向きzは、患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向きのうち、特に重要な情報である。例えば従来のマーキングでは、向きyを示す跡を残すことはできないし、位置X及び向きzを示す跡を正確に付けることは難しい。
【0040】
アーム部20の調整前の基準(初期状態)の位置及び向きに対する調整後の位置及び向きの差分を測定し、数値化することで、保存されている位置及び向きを数値として表すことができる。数値化の手法としては、例えば、アーム部20の変形構造を構成する複数の部材のうち相対的に動く2つの部材に、それらの位置関係を示す目盛を表示(印刷、刻印、貼付などによる)しておく。これらの2つの部材の目盛のずれを目視やコンピュータプログラムによる画像処理により取得することができる。また例えば、アーム部20及び/又は先端部30の調整前後の位置及び向きを3Dスキャナーにより読み取り、コンピュータプログラムによる画像処理で読み取った前後の位置及び向きの差分を計算することができる。
【0041】
装着具10は、様々な態様を含み得る。装着具10は、例えば、上顎に対して装着されるトレー(プレートなどと呼ばれることもある)である。トレーは、印象採得により作製された個人用(カスタム)のトレーと、複数の患者に使用できる既製のトレーとを含む。さらに、トレーは、印象材や咬合採得材を介して装着されるものもあるし、それらを用いずに装着されるものもある。印象採得は、印象剤等を用いて行われてもよいし、口腔内を光学スキャンすることにより行われてもよい。
【0042】
図2は、装着具10の構成例を示す図であり、(A)は側面図を示し、(B)は斜視図を示す。本図は、個人用トレーの装着具10を示している。
【0043】
アーム部20の変形可能構造は、先端部30の位置及び向きを変更できれば特に限定されないが、例えば、回転機構(関節や回転軸など)、直動機構(スライド機構、伸縮機構など)等のさまざまな機械要素の組合せにより実現することができる。
【0044】
図3は、アーム部20の構成例を示す図であり、(A)は側面図を示し、(B)は背面図を示す。
図3に示すアーム部20は、先端部30をXYZ方向へ移動かつxyz回転させることができる。
【0045】
アーム部20は、部材20a、部材20c、部材20f、部材20g、部材20i、及び部材20jから構成される。
【0046】
部材20aは、装着具10に固定される。部材20aには、X方向に延びるガイド溝20bが形成されている。Y方向に延びる部材20cには、一端にガイド溝20bに保持される円板状の係合部材20dが設けられている。ガイド溝20bに係合部材20dが係合されることにより、部材20cはX方向に移動可能かつy回転可能である。
【0047】
部材20cの他端には、部材20fを保持する保持部材20eが設けられている。保持部材20eには、Z方向に延びる円柱状の空洞が形成されている。部材20fは、円筒状である。保持部材20eの空洞に部材20fが保持されることにより、部材20fはz回転可能である。
【0048】
部材20gは、球状であり、その表面には、突出した円柱状の係合部材20hが設けられている。部材20fには、係合部材20hを挿通するための貫通孔が設けられている。部材20fの貫通孔に係合部材20hを挿通した状態で、部材20fの空洞に部材20gが保持されることにより、部材20gはx回転可能である。なお、保持部材20eの壁には、部材20fを貫通した係合部材20hが露出するように、z軸回りに沿って長いガイド孔が形成されている。
【0049】
部材20gには、Z方向に延びる角柱状の空洞が形成されている。部材20iは、角柱状である。部材20gの空洞に部材20iが係合かつ保持されることにより、部材20iはZ方向に移動可能である。
【0050】
部材20iの一端には、部材20jが接続される。部材20iと部材20jには、Y方向に相対的に移動可能に係合する凹部と凸部(又は凸部と凹部)が形成されている。これにより、部材20jはY方向に移動可能である。なお、部材20jに対して、先端部30が固定される。
【0051】
なお、アーム部20を様々な形状に変更して各姿勢で静的に維持できるように、アーム部20を構成する各部材は互いに適度な摩擦で係合している。もちろん、少なくとも一部の部材同士の連結部分には、互いの相対的な動きを固定/解除できるように、ねじ機構のような固定部材を設けてもよい。
【0052】
アーム部20の少なくとも一部は、機械構造によらずに実現してもよい。
図4は、アーム部20の他の構成例を示す図である。アーム部20は、例えば針金のようにフレキシブルに変形可能かつ形状を保持可能な部材により形成されている。この場合は、先端部30の位置及び向きを
図3のような機械構造と比べて、より自由に変更することができる。機械構造とフレキシブルな部材を組み合わせてもよい。
【0053】
測定器具1は、上述したような構成に限定されない。
図5は、測定器具1の様々な構成例を示す図である。これらの構成例は1つ以上を組み合わせてもよい。
【0054】
図5の(A)に示すように、装着具10とアーム部20は着脱可能に構成されてもよい。着脱構造は、特に限定されないが、例えばオスメスの嵌め合い構造、オスメスのねじ、金属と磁石、磁石同士などとすることができる。このようにすれば、アーム部20に対して装着具10を(あるいは装着具10に対してアーム部20を)簡単に交換することができる。
【0055】
図5の(B)に示すように、アーム部20と先端部30は着脱可能に構成されてもよい。着脱構造は、特に限定されないが、例えばオスメスの嵌め合い構造、オスメスのねじ、金属と磁石、磁石同士などとすることができる。このようにすれば、先端部30に対してアーム部20を(あるいはアーム部20に対して先端部30を)簡単に交換することができる。
【0056】
図5の(C)に示すように、装着具10のアーム部20が接続される部分に、アーム部20の位置及び向きの少なくとも1つ(XYZxyzの少なくとも1つ)を変更可能な機械要素(可動部11)を設けてもよい。機械要素は、上述のとおり例えば回転機構(関節や回転軸など)、直動機構(スライド機構、伸縮機構など)等である。このようにすれば、アーム部20の軸数を減らして機械構造を単純化することができる。アーム部20を変形しない構造にしてもよい。なお、先端部30の位置及び向きを変更できることが重要であるため、可動部11をアーム部20の一部として理解してもよい。
【0057】
図5の(D)に示すように、先端部30のアーム部20が接続される部分に、アーム部20の位置及び向きの少なくとも1つ(XYZxyzの少なくとも1つ)を変更可能な機械要素(可動部31)を設けてもよい。機械要素は、上述のとおり例えば回転機構(関節や回転軸など)、直動機構(スライド機構、伸縮機構など)等である。このようにすれば、アーム部20の軸数を減らして機械構造を単純化することができる。アーム部20を変形しない構造にしてもよい。なお、先端部30の位置及び向きを変更できることが重要であるため、可動部31をアーム部20の一部として理解してもよい。
【0058】
図5の(E)に示すように、アーム部20は、2つのアーム部材21で構成され、これらは、互いに分離着脱可能であってもよい。もちろん、アーム部20は、3つ以上のアーム部材21で構成されてもよい。各アーム部材21は、他のアーム部材21とは異なる可動軸を有するように構成する。例えば、第1のアーム部材21は、Xyzを担当し、第2のアーム部材21は、xYZを担当する。いずれかのアーム部材21は、可動軸を有さないようにしてもよい。各アーム部材21は、装着具10又は先端部30に対して着脱可能であってもよい。各アーム部材21は、他のアーム部材21と交換可能であってもよい。
【0059】
図6は、本発明の一実施形態に係る測定器具1Aの概略構成例を示す図である。測定器具1Aは、基本的には上顎が無歯顎の患者に使用するものであるが、有歯顎(一部の歯が無い)患者にも使用できる。測定器具1Aは、装着具10としての個人用トレー10A、アーム部20、及び先端部30としての前歯部模型30Aを有する。
【0060】
図6の(A)に示すように、前歯部模型30Aは、アーム部20の先端に一定の位置及び向きで着脱可能である。着脱機構は、例えばオスメスの嵌め合い構造、オスメスのねじ、金属と磁石、磁石同士などとすることができる。
【0061】
図6の(B)に示すように、前歯部模型30Aは、例えば、前歯4本とその周囲の歯肉部分を含む。前歯部模型30Aは、例えば、歯の形状、色、大きさ、歯並び、歯肉の色等の特徴が異なる複数のものが用意され、交換することができる。もちろん、前歯部模型30Aは、図示した歯の数に限らず、歯肉部分を備えていなくてもよい。また、前歯部模型30Aは、前歯を歯肉部分から着脱可能に構成されていてもよく、前歯又は歯肉部分を他のものと交換できてもよい。着脱機構は、上述のとおりである。
【0062】
個人用トレー10Aは、事前に上顎Aを印象採得することにより作製される。アーム部20の付け根は、この個人用トレー10Aに一定の位置及び向きで、固定して接続される、あるいは着脱可能に接続される。測定者は、例えば、選んだ前歯部模型30Aをアーム部20の先端に装着し、個人用トレー10Aを患者の上顎Aに装着する。なお、個人用トレー10Aが上顎Aから外れないように、一時的に付着するか、手や器具で押さえ付けるなどすればよい。
【0063】
それから、測定者は、アーム部20を操作して変形させることにより、前歯部模型30Aの前歯の位置及び向きが患者の顔貌的に適切となるように調整する。前歯部模型30Aが患者の好みや患者の顔貌に合わない場合には、前歯部模型30Aを交換してもよい。
【0064】
その後、前歯の位置及び向きが決まったら、測定者は、患者の上顎Aから個人用トレー10Aを取り外す。このようにして、患者の上顎Aに対する前歯部模型30Aの位置及び向き(すなわち患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向き)が、アーム部20の形状を介して測定器具1Aに保存される。
【0065】
測定器具1Aに保存された位置及び向きを咬合器(歯科用器具)にトランスファーすることが予定されている場合などには、測定者は、測定器具1Aを上顎Aに装着した状態で、さらに、患者の顎関節に対する前歯の相対的位置を測定してもよい。
【0066】
図7は、前歯部模型30Aと顎関節の関係の一例を説明する図である。本図は、フランクフルト平面を基準とする咬合器を用いる場合を示している。P1は前方基準である眼窩下縁の点を示し、P2は後方基準点である外耳道上縁の点を示し、P3は前歯部模型30Aの前歯の先端点を示す。
【0067】
測定者は、線分P2P3の長さLを、例えば定規やメジャーなどを使って測定する。また、測定者は、線分P2P1(フランクフルト平面の一辺)に対する線分P2P3の角度αを、例えば分度器などを使って測定する。長さLと角度αは、咬合器にトランスファーされる値である。さらに、線分P2P1に対する前歯の傾き角度βを、例えば分度器などを使って測定してもよい。角度βも、咬合器にトランスファーされ得る値である。
【0068】
図8は、本発明の一実施形態に係る咬合器40とアタッチメント器具50の構成例を示す図であり、(A)は測定器具1Aを咬合器40に装着する前の状態、(B)は測定器具1Aを咬合器40に装着した後の状態を示す。
【0069】
咬合器40は、下顎に相当する下弓部40a、下顎頭に相当する関節部40b、及び上顎に相当する上弓部40cを備える。上弓部40cは、関節部40bを介して下弓部40aに対して開閉可能に接続されている。また、咬合器40は、上弓部40cに対して磁石などにより一定の位置及び向きで着脱自在な台座40d(例えばマウンティングプレートなどと呼ばれる)を備える。台座40dには、患者の上顎模型Cが付着用石膏等の固定材Gを介して付着固定される。上顎模型Cは、事前に上顎Aを印象採得することにより作製される。
【0070】
上弓部40cには、アタッチメント器具50を装着することができる。アタッチメント器具50は、測定器具1Aを咬合器40に装着して適合させるための器具である。アタッチメント器具50は、部材50a、部材50b、及び部材50cから構成される。部材50a及び部材50bは支持部材、部材50cは保持部材に相当する。
【0071】
部材50aは、Y方向に長い棒状であり、上弓部40cに対してY方向に移動可能に保持されている。部材50bは、Z方向に長い棒状であり、部材50aの下側にZ方向に移動可能に保持されている。部材50cは、部材50bの先端部にx回転可能に保持されている。部材50cは、測定器具1Aの前歯部模型30Aを一定の位置及び向きで着脱可能に保持することができる。着脱機構は、例えば前歯部模型30Aを挟むクリップ、前歯部模型30Aを保持するホルダー、金属と磁石、磁石同士などとすることができる。
【0072】
歯科技工士等の作業者は、上弓部40cに台座40dを装着しておく。また、作業者は、患者に対する測定を終えた測定器具1Aの個人用トレー10Aを、当該患者の上顎模型Cに装着し、さらに、前歯部模型30Aを、部材50cに装着する。
【0073】
それから、作業者は、関節部40bと前歯部模型30Aの前歯の先端点を結ぶ線分が測定した長さLに一致し、かつ、当該線分と上弓部40cが成す角度が測定した角度αに一致するように、アタッチメント器具50を変形させる(部材50aを上下移動させたり、部材50bを前後移動させたりする)。さらに、角度βを測定している場合には、前歯の傾き角度が測定した角度βと一致するように、アタッチメント器具50を変形させる(部材50cを回転させる)。
【0074】
上記のようにアタッチメント器具50を変形させた状態で、作業者は、上顎模型Cと台座40dの間に付着用石膏等の固定材Gを充填し、上顎模型Cを台座40dに固定する。上顎模型Cを固定した後は、アタッチメント器具50を前歯部模型30A及び咬合器40から取り外してもよい。
【0075】
このようにして、測定したL、α、及びβを、咬合器40にトランスファーすることができる。患者の上顎Aに対する前歯部模型30Aの位置及び向き(すなわち患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向き)は、測定器具1Aに保存されているため、この位置及び向きも、咬合器40上にトランスファーすることができる。
【0076】
その後、咬合器40に装着された個人用トレー10Aを使って蝋義歯を作製するためには、例えば、個人用トレー10Aに咬合堤(蝋堤)を設け、この咬合堤に人工前歯を埋め込む必要がある。このとき、人工前歯は、前歯部模型30Aと同じ位置及び向きで埋め込むことが望ましい。
【0077】
図9は、本発明の一実施形態に係る前歯部模型30Aを人工前歯Dに置換するためのアタッチメント器具60の構成例を示す図である。
【0078】
アーム部20の先端には、アタッチメント器具60を着脱可能に保持することができる。着脱機構は、例えば嵌め合い構造、金属と磁石、磁石同士などとすることができる。アーム部20に保持されたアタッチメント器具60は、アーム部20に装着された前歯部模型30Aの位置及び向きを維持したまま、前歯部模型30Aを保持することができる。図の例では、前歯部模型30Aを下から挟むように構成されている。すなわち、前歯部模型30Aに替えて同形状の人工前歯Dを保持した場合に、前歯部模型30Aと同じ位置及び向きで人工前歯Dを保持することができる。
【0079】
まず、作業者は、前歯部模型30Aをアーム部20から取り外し、アタッチメント器具60をアーム部20から取り外す(
図9の(A)、(B))。それから、作業者は、人工前歯Dをアタッチメント器具60に保持させ、アタッチメント器具60をアーム部20に装着する(
図9の(B)、(C))。このようにして、人工前歯Dは前歯部模型30Aと同じ位置及び向きでアーム部20に保持される。なお、アタッチメント器具60に印象材等の材料を充填してそこに前歯部模型30Aを保持して印象採得を行い、その型に人工前歯Dを嵌めてもよい。
【0080】
それから、作業者は、個人用トレー10Aに蝋堤Eを設け、人工前歯Dの根元部分を蝋堤Eに埋め込む(
図9の(D))。最後に、作業者は、個人用トレー10A及び蝋堤Eからアーム部20を取り除く(
図9の(E))。このようにして、個人用トレー10A、蝋堤E、及び人工前歯Dから成る蝋義歯が作製される。
【0081】
測定器具1Aは、咬合器40の台座40dに限られず、他の作業器具(歯科用器具)に装着することもできる。他の作業器具は、例えば、装着具10や装着具10を装着した上顎模型Cを、固定した状態で作業するための台座や治具である。上顎模型Cを固定する作業器具は、模型台などと呼ばれる。装着具10及び上顎模型Cは、作業器具に対して固定材Gや接着材を使って固定してもよい。
【0082】
図10は、本発明の一実施形態に係る作業器具Fとアタッチメント器具70の構成例を示す図であり、(A)は測定器具1Aを作業器具Fに装着する前の状態、(B)は測定器具1Aを作業器具Fに装着した後の状態を示す。
【0083】
アタッチメント器具70は、測定器具1Aを作業器具Fに装着して適合させるための器具である。アタッチメント器具70は、部材70a、及び部材70bから構成される。図の例では、部材70a、及び部材70bは、棒状の部材であり、互いに接続されている。部材70aは支持部材、部材70bは保持部材に相当する。
【0084】
部材70aは、作業器具Fを一定の位置及び向きで着脱可能に保持することができる。着脱機構は、例えば作業器具Fを挟むクリップ、作業器具Fを保持するホルダー、金属と磁石、磁石同士などとすることができる。
【0085】
部材70bは、前歯部模型30Aを一定の位置及び向きで着脱可能に保持することができる。着脱機構は、例えば前歯部模型30Aを挟むクリップ、前歯部模型30Aを保持するホルダー、金属と磁石、磁石同士などとすることができる。
【0086】
作業者は、部材70aに作業器具Fを装着しておく。また、作業者は、患者に対する測定を終えた測定器具1Aの個人用トレー10Aを、当該患者の上顎模型Cに装着し、さらに、前歯部模型30Aを、部材70bに装着する。
【0087】
それから、作業者は、上顎模型Cと作業器具Fの間に付着用石膏等の固定材Gを充填し、上顎模型Cを作業器具Fに固定する。最後に、アタッチメント器具70を作業器具F及び前歯部模型30Aから取り外す。
【0088】
このようにして、患者の上顎Aに対する前歯部模型30Aの位置及び向き(すなわち患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向き)は、測定器具1Aに保存されているため、この位置及び向きを、作業器具F上にトランスファーすることができる。
【0089】
図11は、作業器具Fの構成例を示す図である。
【0090】
図11の(A)に示す作業器具F1は、板状に形成されており、一方の面は平面であり、他方の面の中央部には、直線状に延びる凸部F11が形成されている。この作業器具F1は、例えば、凸部F11を備える面が上顎模型Cと対向するように部材70aに装着される。これにより、凸部F11を備える面の形状に対応する跡形が上顎模型C及び/又は固定材Gに形成される。形成された跡形は、上顎模型Cを再度作業器具F1又は別の作業器具F1に装着する際に、位置決め及び向き決めに利用することができる。なお、この跡形の位置及び向きには、患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向きがトランスファーされていると言える。
【0091】
図11の(B)に示す作業器具F2は、角柱状に形成されている。この作業器具F2は、例えば、部材70aに装着され、上顎模型C及び/又は固定材Gに埋め込まれる。なお、上顎模型C及び/又は固定材Gに埋め込まれた作業器具F2の位置及び向きには、患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向きがトランスファーされていると言える。
【0092】
図12は、本発明の一実施形態に係る測定器具1Bの概略構成例を示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。測定器具1Bは、上顎が有歯顎でも無歯顎でも使用できる。
【0093】
測定器具1Bは、装着具10、アーム部20、及び先端部30Bを有する。アーム部20の先端側は、測定器具1Bが患者に装着された状態で、口腔外の顔の前に位置する。
【0094】
図12の(A)、(B)に示すように、先端部30Bは、平行な2本の棒状部材31B及び32Bと、連結部材33Bとを備える。棒状部材32Bは、Z方向に延びるアーム部20に対してY方向に直交接続されている。連結部材33Bは、2本の棒状部材31Bと32BをZ方向に間隔を空けて連結している。棒状部材31Bは、Z方向に延びる連結部材33Bに対してY方向に直交接続されている。棒状部材31Bと棒状部材32Bは互いに平行であり、測定器具1BをZ方向から視た場合、棒状部材31Bと棒状部材32Bは互いに重なる。
【0095】
測定者は、例えば、装着具10を患者の上顎Aに装着し、患者の顔を正面から片目で視ながら、頭部Hの理想的な正中線を想像し、その正中線が先端部30Bによって隠されるように、先端部30Bの位置及び向きを調整する。このとき、棒状部材31Bの背後に棒状部材32B及び正中線が隠れるように調整する。
図12の(B1)は調整が完了した状態を示し、
図12の(B2)は調整が完了していない状態を示す。
【0096】
調整後の先端部30Bの位置及び向き(すなわち患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向き)は、アーム部20の形状を介して測定器具1Bに保存されている。上述したように、保存されている位置及び向きは数値として取得することができる。測定器具1Bによれば、精度よく先端部30Bを正中させることができる。特に、棒状部材31BのY方向の軸を使って位置X及び向きzを精度よく調整することができ、棒状部材31Bと棒状部材32Bの重なりを使って向きyを精度よく合わせることができる。
【0097】
図13は、本発明の一実施形態に係る測定器具1Cの概略構成例を示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。測定器具1Cは、上顎が有歯顎でも無歯顎でも使用できる。
【0098】
測定器具1Cは、装着具10、アーム部20、及び先端部としての棒状部材30Cを有する。アーム部20の先端側は、測定器具1Cが患者に装着された状態で、口腔外の顔の前に位置する。
【0099】
図13の(A)(B)に示すように、棒状部材30Cは、Z方向に延びるアーム部20に対してY方向に直交接続されている。また、棒状部材30Cのアーム部20と反対側の面の中央には、Y方向に延びる目標線31Cが表示されている。測定器具1CをZ方向から視た場合、目標線31Cは棒状部材30Cの中央に位置する。
【0100】
測定者は、例えば、装着具10を患者の上顎Aに装着し、患者の顔を正面から片目で視ながら、頭部Hの理想的な正中線を想像し、その正中線が棒状部材30Cによって隠されるように、棒状部材30Cの位置及び向きを調整する。このとき、棒状部材30Cの背後に正中線が隠れ、かつ、目標線31Cが棒状部材30Cの中央に見えるように調整する。
図13の(B1)は調整が完了した状態を示し、
図13の(B2)は調整が完了していない状態を示す。
【0101】
調整後の棒状部材30Cの位置及び向き(すなわち患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向き)は、アーム部20の形状を介して測定器具1Cに保存されている。上述したように、保存されている位置及び向きは数値として取得することができる。測定器具1Cによれば、精度よく先端部としての棒状部材30Cを正中させることができる。特に、棒状部材30CのY方向の軸を使って位置X及び向きzを精度よく調整することができ、棒状部材30Cに対する目標線31Cの位置を使って向きyを精度よく合わせることができる。
【0102】
図14は、本発明の一実施形態に係る測定器具1Dの概略構成例を示す図であり、(A)は側面図、(B)及び(C)は平面図である。測定器具1Dは、上顎が有歯顎でも無歯顎でも使用できる。
【0103】
測定器具1Dは、装着具10、アーム部20、及び先端部としての発光器30Dを有する。アーム部20の先端側は、測定器具1Dが患者に装着された状態で、口腔外の顔の前に位置する。
【0104】
図14に示すように、発光器30Dは、Z方向に延びるアーム部20に対して棒状の連結部材を介して接続されている。発光器30Dは、例えばレーザ発光器であり、YZ面上で面状の光L1を発光する。発光器30Dは、光L1に加え、XZ面上で面状の光L2を発光してもよい。
【0105】
測定者は、例えば、装着具10を患者の上顎Aに装着し、患者の顔を正面から視ながら、頭部Hの理想的な正中線を想像し、その正中線に光L1による投影線が重なるように、発光器30Dの位置及び向きを調整する。ここで、投影線は、顔の表面に沿って現れるため、向きyを精度よく調整することができる。光L1が頭部Hの真正面から当たって正中している場合(位置X、向きy、及び向きzの調整が完了している)、その投影線は、患者の顔面の中央で真っ直ぐな線として表れる(図中のL11)。一方、光L1が頭部Hの真正面から当たって正中していない場合(少なくとも向きyの調整が完了していない)、その投影線は、患者の顔面で曲線として表れる(図中のL12)。図中の投影線L12は、やや左方向に向かって光L1を投影した場合を示している。
【0106】
測定者は、さらに、頭部Hの基準平面(フランクフルト平面など)を想像し、その基準平面を側方から視た一辺に光L2による投影線が平行となるように、発光器30Dの向き(x)を調整してもよい(図中のL21)。
【0107】
なお、発光器30Dは、
図14の(B)に示すように、顔の正面に光を真っ直ぐ出射するように配置されるだけでなく、
図14の(C)に示すように、顔の正面から左右方向にずれた位置から光を斜めに出射するように配置してもよい。(C)のようにすれば、光L2による投影線を頭部Hの側面に対して鮮明に映すことができる。さらには、顔の側面から光を真っ直ぐに出射するように配置してもよい。このようにすれば、光L2による投影線を頭部Hの側面に対してさらに鮮明に映すことができる。
【0108】
調整後の発光器30Dの位置及び向き(すなわち患者の頭部Hに対する上顎Aの位置及び向き)は、アーム部20の形状を介して測定器具1Dに保存されている。上述したように、保存されている位置及び向きは数値として取得することができる。測定器具1Dによれば、より精度よく先端部としての発光器30Dを正中させることができる。特に、光L1のY方向の投影線を使って位置X及び向きz及び向きyを精度よく調整することができる。また、光L1の投影線は顔の表面に沿って現れるため、
図12や
図13に示した棒状部材のように顔から離れる場合と比べて、より精度よく調整を行うことができる。
【0109】
以上の本発明の複数の実施形態によれば、歯科治療において、患者の口腔内の顎の位置及び向きを、簡単かつ精度よく測定することができる。
【0110】
なお、
図8に示した実施形態では、トランスファーを行う際、アタッチメント器具に前歯部模型30Aが保持されるが、このような方法に限定されない。例えば、アタッチメント器具は、アーム部20の先端部分を一定の位置及び向きで着脱可能に保持することができるように構成される。作業者は、アーム部20から前歯部模型30Aを取り外した上で、アタッチメント器具にアーム部20の先端部分を装着する。この場合、α、L、及びβは、アーム部20の先端部分に関して測定して用いればよい。このような方法は、
図10に示した実施形態にも適用できる。また、その他の各実施形態(例えば
図12〜14)の測定器具に関してトランスファーを行う場合にも適用できる。
【0111】
また、上述の各実施形態では、装着具10は、例えばトレーであるが、これに限られない。装着具10は、例えばゴシックアーチをトレースするための既存の測定器具であってもよい。また、装着具10は、例えばトレーに既存の測定器具を組み合わせたものであってもよい。
【0112】
また、上述の各実施形態では、アーム部20の付け根は、口腔内に配置されているが、口腔外に配置されてもよい。例えば、装着具10の一部は口腔外に位置し、その部分にアーム部20が接続されていてもよい。また例えば、アーム部20の付け根は、装着具10としてのフェイスボウ等の既存の測定器具のうち口腔外に位置する部分に接続されてもよい。この場合、アーム部20は、患者の口腔内まで延びていてもよいし、患者の顔の正面辺りまで延びていてもよい。
【0113】
また、先端部30は、3Dスキャナーでスキャンした場合に画像処理において位置及び向きを区別し易いように構成してもよい。例えば、互いに直交する3軸が形状又は色により強調されるように構成する。
【0114】
また、上述の各実施形態の先端部30は、他の実施形態の先端部30と交換して使用してもよい。また、目盛を用いた数値化と3Dスキャナーを用いた数値化とを両方使ってもよい。また、一部の位置及び向き(例えばXyz)を測定器具1を使って測定し、残りの少なくとも一部の軸(例えばxYZ)を目視や定規を使って測定してもよい。
【0115】
また、他の実施形態では、アーム部20を省略し、先端部30を装着具10に対して接続してもよい。例えば、
図15に示す測定器具1Eは、装着具10としての個人用トレー10E、及び先端部30としての前歯部模型30Eを有する。前歯部模型30Eは、個人用トレー10Eの表面に一定の位置及び向きで着脱可能である。着脱機構は、例えばオスメスの嵌め合い構造、オスメスのねじ、金属と磁石、磁石同士などとすることができる。前歯部模型30E及び個人用トレー10Eの少なくとも一方は、前歯部模型30Eの位置及び向きを変更可能に保持する機械要素(可動部)を備えてもよい。前歯部模型30Eは、XYZxyzの1つ以上を変更できるのが好ましく、少なくとも向きzを回転させることができるのが好ましい。
【0116】
なお、本発明の実施形態に係る測定器具は、業務効率及びコストにおいて従来よりも有利である。従来は、例えば、フェイスボウなどの大きくて高価な測定器具を使う場合、患者それぞれに対してフェイスボウを用意する必要があるし、測定済のフェイスボウを歯科医院から歯科技工所まで郵送する必要がある。これは、コストと業務効率において不利である。
【0117】
一方で、本発明の実施形態に係る測定器具は、フェイスボウと比べて構造がシンプルであるため、複数台を低コストで用意することができる。また、歯科医院で使用した測定器具と同種の測定器具を歯科技工所においても用意しておき、測定結果の数値を歯科医院から歯科技工所にEメールや書面により送り、歯科技工所で当該数値に基づいて同種の測定器具において先端部の位置及び向きを再現することもできる。これにより業務効率を向上できる。また、測定器具から分離したアーム部のみを郵送するとしても、低コストで済ませることができる。
【0118】
本発明は、上記の複数の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、それらの態様を含むものである。ある実施形態の一部の構成要素を、他の実施形態に加えたり、他の実施形態の一部の構成要素と置換したりしてもよい。ある実施形態の構成要素のうち、一部の構成要素を省略することもできる。
【0119】
また、測定器具等の器具の各構成要素の配置、寸法、形状等の構成は、本発明の目的を達成できれば、上記に説明あるいは図示した例に限られない。また例えば、「直交」「垂直」、「水平」、「平行」などの構成要素の関係や形状を表す言葉を用いているが、言葉どおりの厳密な意味に限られず、その意味と実質的に同一な場合(すなわち、本発明の効果を発揮できる場合)も含むことができる。
【0120】
本発明は、測定器具に限らず、例えば測定方法、測定システムなど様々な態様で提供することができる。また、先端部とアーム部と装着具を有する器具を測定器具と呼ぶのに限らず、例えば先端部とアーム部とを有する器具を測定器具と呼んでもよい。