(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6831884
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】電子管ユニット及び電子管用ソケット
(51)【国際特許分類】
H01J 40/16 20060101AFI20210208BHJP
H01J 40/06 20060101ALI20210208BHJP
H01J 40/12 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
H01J40/16
H01J40/06
H01J40/12
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-164351(P2019-164351)
(22)【出願日】2019年9月10日
【審査請求日】2020年11月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】下井 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大石 保生
(72)【発明者】
【氏名】河野 泰行
(72)【発明者】
【氏名】南雲 健
【審査官】
大門 清
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0308737(US,A1)
【文献】
特表2009−503441(JP,A)
【文献】
特開2009−259728(JP,A)
【文献】
特開平08−233944(JP,A)
【文献】
特開平05−196739(JP,A)
【文献】
特開2011−185955(JP,A)
【文献】
特開2008−122111(JP,A)
【文献】
特表2011−528116(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2018/0364371(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0323682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 40/00
H01J 43/00
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の入射に応じて光電子を放出する光電面と、前記光電子に基づく信号を生成する陽極とを筐体の内部空間に収容してなる電子管と、
前記電子管への補正光を出力する光源を有する補正光源部と、を備えた電子管ユニットであって、
前記筐体は、前記光電面側に位置する光入射窓部と、前記陽極側に位置する信号出力部と、前記光入射窓部と前記信号出力部とを繋ぐ壁部と、を備え、
前記補正光源部は、前記筐体における前記光入射窓部よりも前記信号出力部側に配置され、
前記補正光源部からの前記補正光は、前記内部空間よりも外側の領域に設けられた導光路によって前記光電面に導光され、
前記筐体の前記壁部の少なくとも一部は、前記信号出力部側から前記光入射窓部側に向かって連続して延びる透光部となっており、
前記導光路は、前記透光部によって構成され、
前記補正光源部は、前記光源と前記透光部とを光学的に結合する光結合部を有しており、
前記光結合部は、前記信号出力部と対向する貫通孔を有する環状部材であり、
前記貫通孔の内壁面は、孔用遮光性部材によって覆われている電子管ユニット。
【請求項2】
前記光結合部は、光拡散性部材によって構成され、前記壁部における前記信号出力部側の端部と対向している請求項1記載の電子管ユニット。
【請求項3】
光の入射に応じて光電子を放出する光電面と、前記光電子に基づく信号を生成する陽極とを筐体の内部空間に収容してなる電子管と、
前記電子管への補正光を出力する光源を有する補正光源部と、を備えた電子管ユニットであって、
前記筐体は、前記光電面側に位置する光入射窓部と、前記陽極側に位置する信号出力部と、前記光入射窓部と前記信号出力部とを繋ぐ壁部と、を備え、
前記補正光源部は、前記筐体における前記光入射窓部よりも前記信号出力部側に配置され、
前記補正光源部からの前記補正光は、前記内部空間よりも外側の領域に設けられた導光路によって前記光電面に導光され、
前記導光路の外側は、導光路用遮光性部材で覆われており、
前記導光路用遮光性部材は、前記導光路を覆う第1の遮光性部材と、前記第1の遮光性部材よりも高い遮光性を有し、前記第1の遮光性部材を覆う第2の遮光性部材とによって構成されている電子管ユニット。
【請求項4】
前記筐体の前記壁部の少なくとも一部は、前記信号出力部側から前記光入射窓部側に向かって連続して延びる透光部となっており、
前記導光路は、前記透光部によって構成されている請求項3記載の電子管ユニット。
【請求項5】
前記透光部は、前記光入射窓部と光学的に結合されている請求項4記載の電子管ユニット。
【請求項6】
前記透光部は、前記補正光源部の前記光源と対向している請求項4又は5記載の電子管ユニット。
【請求項7】
前記筐体の前記壁部の全体が前記透光部となっている請求項4〜6のいずれか一項記載の電子管ユニット。
【請求項8】
前記補正光源部は、前記光源と前記透光部とを光学的に結合する光結合部を有している請求項4〜7のいずれか一項記載の電子管ユニット。
【請求項9】
前記光結合部は、光拡散性部材によって構成され、前記壁部における前記信号出力部側の端部と対向している請求項8記載の電子管ユニット。
【請求項10】
前記光結合部は、前記信号出力部と対向する貫通孔を有する環状部材であり、
前記貫通孔の内壁面は、孔用遮光性部材によって覆われている請求項8又は9記載の電子管ユニット。
【請求項11】
前記光電面及び前記陽極への供給電力を分圧する分圧部を更に備え、
前記補正光源部及び前記分圧部は、前記光結合部と一体化され、前記電子管に対して着脱自在に嵌合している請求項8〜10のいずれか一項記載の電子管ユニット。
【請求項12】
前記補正光源部は、前記光源から出力した前記補正光の光量を減衰させる減光部材を有している請求項3〜11のいずれか一項記載の電子管ユニット。
【請求項13】
前記信号出力部は、前記第1の遮光性部材よりも低い遮光性を有する信号出力部用遮光性部材を備えている請求項3〜12のいずれか一項記載の電子管ユニット。
【請求項14】
光の入射に応じて光電子を放出する光電面と、前記光電子に基づく信号を生成する陽極とを筐体の内部空間に収容してなる電子管に着脱自在に嵌合し、前記電子管への補正光を出力する光源を有する補正光源部を備えた電子管用ソケットであって、
前記電子管の前記光電面及び前記陽極への供給電力を分圧する分圧部を備え、
前記電子管に嵌合した状態において、前記補正光源部からの前記補正光が前記内部空間よりも外側の領域に設けられた導光路によって前記光電面に導光され、
前記補正光源部は、前記光源と光学的に結合する光結合部を有しており、
前記光結合部は、貫通孔を有する環状部材であり、
前記貫通孔の内壁面は、孔用遮光性部材によって覆われている電子管用ソケット。
【請求項15】
前記光結合部は、光拡散性部材によって構成されている請求項14記載の電子管用ソケット。
【請求項16】
前記補正光源部は、前記光源から出力した前記補正光の光量を減衰させる減光部材を有している請求項14又は15記載の電子管用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子管ユニット及び電子管用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
光電面を備えた電子管(光電子増倍管、光電管、HPD(Hybrid Photo−Detector)など)では、様々な要因により感度の変動(感度ドリフト)が生じることがある。これまで、感度ドリフトは、主に陽極から出力された信号が入力される回路における信号処理で対処されていることが多く、複雑な信号処理を要する場合があった。
【0003】
これに対し、特許文献1に記載のイオン化放射の測定のための検出器では、光電子増倍管のソケットに補正用光源が設けられている。この従来の検出器では、補正用光源から出力した補正光を光電子増倍管の内部空間を通過させて光電面に導光している。そして、補正光の検出によって光電子増倍管から出力された光源誘起パルスを用いて光電子増倍管の感度を安定化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4843036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の検出器では、特許文献1の
図2に示されるように、光電子増倍管の内部空間を補正光が通過するため、光電子増倍管内の内部構造物(陽極や電子増倍部など)に補正光が当たってしまい、補正光を安定して光電面に導光することが難しいと考えられる。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、補正光を安定して光電面に導光できる電子管ユニット及び電子管用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る電子管ユニットは、光の入射に応じて光電子を放出する光電面と、光電子に基づく信号を生成する陽極とを筐体の内部空間に収容してなる電子管と、電子管への補正光を出力する光源を有する補正光源部と、を備えた電子管ユニットであって、筐体は、光電面側に位置する光入射窓部と、陽極側に位置する信号出力部と、光入射窓部と信号出力部とを繋ぐ壁部と、を備え、補正光源部は、筐体における光入射窓部よりも信号出力部側に配置され、補正光源部からの補正光は、内部空間よりも外側の領域に設けられた導光路によって光電面に導光される。
【0008】
この電子管ユニットでは、補正光源部からの補正光が内部空間よりも外側の領域に設けられた導光路によって光電面に導光される。したがって、この電子管ユニットでは、電子管内の内部構造物(陽極など)に補正光が当たってしまうことを回避でき、補正光を安定して光電面に導光できる。これにより、電子管の感度ドリフトの補正を精度良く実施することができる。
【0009】
筐体の壁部の少なくとも一部は、信号出力部側から光入射窓部側に向かって連続して延びる透光部となっており、導光路は、透光部によって構成されていてもよい。この場合、筐体の壁部の少なくとも一部を透光部による導波路とすることで、電子管ユニットの大型化を避けることができる。
【0010】
透光部は、光入射窓部と光学的に結合されていてもよい。この場合、光電面側に位置する光入射窓部に補正光を導光できるので、補正光を一層安定して光電面に導光できる。
【0011】
透光部は、補正光源部の光源と対向していてもよい。この場合、光源から出力する補正光を透光部に一層安定して導光できる。
【0012】
筐体の壁部の全体が透光部となっていてもよい。この場合、補正光が壁部の全体で拡散し、補正光を十分に均一な状態で光電面に導光できる。
【0013】
補正光源部は、光源と透光部とを光学的に結合する光結合部を有していてもよい。光結合部の採用により、補正光源部における光源の配置の自由度を高めることができる。
【0014】
光結合部は、光拡散性部材によって構成され、壁部における信号出力部側の端部と対向していてもよい。光結合部に光拡散性を持たせることにより、補正光を一層十分に均一な状態で光電面に導光できる。また、光結合部が壁部における信号出力部側の端部と対向することで、光結合部と透光部との間の補正光のロスを抑えることができる。
【0015】
光結合部は、信号出力部と対向する貫通孔を有する環状部材であり、貫通孔の内壁面は、孔用遮光性部材によって覆われていてもよい。この場合、信号出力部を透過して補正光が電子管の内部空間に入り込むことを抑制できる。
【0016】
光電面及び陽極への供給電力を分圧する分圧部を更に備え、補正光源部及び分圧部は、光結合部と一体化され、電子管に対して着脱自在に嵌合していてもよい。この場合、光結合部に電子管の駆動及び制御に関わる構成が一体化されているので、電子管ユニットの取り扱いが容易となる。
【0017】
補正光源部は、光源から出力した補正光の光量を減衰させる減光部材を有していてもよい。この場合、過剰な光量の補正光が光電面に入力されることを抑制できる。したがって、光電面の保護が図られる。
【0018】
導光路の外側は、導光路用遮光性部材で覆われていてもよい。この場合、ノイズ光が導光路に入射することを抑制できる。
【0019】
導光路用遮光性部材は、導光路を覆う第1の遮光性部材と、第1の遮光性部材よりも高い遮光性を有し、第1の遮光性部材を覆う第2の遮光性部材とによって構成されていてもよい。この場合、ノイズ光が導光路に入射することをより確実に抑制できる。
【0020】
信号出力部は、第1の遮光性部材よりも低い遮光性を有する信号出力部用遮光性部材を備えていてもよい。この場合、信号出力部を透過してノイズ光が電子管の内部空間に入り込むことを抑制できる。
【0021】
本開示の一側面に係る電子管用ソケットは、光の入射に応じて光電子を放出する光電面と、光電子に基づく信号を生成する陽極とを筐体の内部空間に収容してなる電子管に着脱自在に嵌合し、電子管への補正光を出力する光源を有する補正光源部を備えた電子管用ソケットであって、電子管の光電面及び陽極への供給電力を分圧する分圧部を備え、電子管に嵌合した状態において、補正光源部からの補正光が内部空間よりも外側の領域に設けられた導光路によって光電面に導光される。
【0022】
この電子管用ソケットを装着した電子管では、補正光源部からの補正光が内部空間よりも外側の領域に設けられた導光路によって光電面に導光される。したがって、電子管内の内部構造物(陽極など)に補正光が当たってしまうことを回避でき、補正光を安定して光電面に導光できる。これにより、電子管の感度ドリフトの補正を精度良く実施することができる。また、このソケットは、電子管に対して着脱自在となっている。したがって、電子管及び補正光源部の交換が容易となる。ソケットに分圧部が一体化されていることで電子管の駆動も容易となる。
【0023】
補正光源部は、光源と光学的に結合する光結合部を有していてもよい。光結合部の採用により、補正光源部における光源の配置の自由度を高めることができる。
【0024】
光結合部は、光拡散性部材によって構成されていてもよい。光結合部に光拡散性を持たせることにより、補正光を一層十分に均一な状態で光電面に導光できる。
【0025】
光結合部は、貫通孔を有する環状部材であり、貫通孔の内壁面は、孔用遮光性部材によって覆われていてもよい。この場合、導光路以外の箇所から補正光が電子管内に入り込むことを抑制できる。
【0026】
補正光源部は、光源から出力した補正光の光量を減衰させる減光部材を有していてもよい。この場合、過剰な光量の補正光が光電面に入力されることを抑制できる。したがって、光電面の保護が図られる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、補正光を安定して光電面に導光できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】光電子増倍管ユニットの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した光電子増倍管ユニットの断面図である。
【
図3】光電子増倍管の内部構成を示す概略的な断面図である。
【
図4】光電子増倍管に装着されたソケットを厚さ方向から見た図である。
【
図5】補正光源部の光源の周囲の構成を示す要部拡大図である。
【
図6】補正光の導光経路を示す概略的な断面図である。
【
図8】補正光源部の光源の周囲の構成の別例を示す要部拡大図である。
【
図10】光電子増倍管ユニットの変形例を示す平面図である。
【
図11】
図10に示した光電子増倍管ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る電子管ユニット及び電子管用ソケットの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0030】
本実施形態では、電子管ユニットの一形態として光電子増倍管ユニットを例示する。
図1は、光電子増倍管ユニットの一実施形態を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示した光電子増倍管ユニットの断面図である。
図1及び
図2に示すように、光電子増倍管ユニット(電子管ユニット)1は、バルブ(筐体)12の内部空間Sに増倍部23を収容してなる光電子増倍管(電子管)11をケース(導波路用遮光性部材/第2の遮光性部材)2内に配置することによって構成されている。
【0031】
ケース2は、例えばパーマロイなどの磁性材料である合金材料によって形成された磁気シールドケースである。ケース2は、光電子増倍管11をその内部空間に収容できるように、光電子増倍管11よりも僅かに大径の円筒状をなしている。ケース2の表面には、遮光処理がなされていてもよい。遮光処理としては、例えば黒色を呈する樹脂や塗料によるコーティングが挙げられる。ケース2の先端側は、光電子増倍管11の光入射窓部13の光入射面13a(後述する)を露出させるように開放しており、ケース2の基端面2aは、閉塞している。光電子増倍管11は、バルブ12の先端位置(光入射窓部13の光入射面13a)とケース2の先端位置とを揃えた状態でケース2内に収容されている。ケース2の基端面2aには、光電子増倍管11からの出力信号の出力に用いられる信号出力コネクタ3、及び光電子増倍管11への電圧の供給に用いられる電圧供給コネクタ4などが取り付けられている。これらのコネクタは、図示しない配線部によって光電子増倍管11と電気的に接続されている。
【0032】
ケース2の内壁面と光電子増倍管11(より具体的には後述する遮光性部材16)の外壁面との間には、複数のスペーサKが設けられている。スペーサKは、ケース2内で光電子増倍管11を位置決めし、がたつきを抑制する。また、スペーサKは、ケース2の内壁面と光電子増倍管11の外壁面との間の空間内をノイズ光が進行することを抑制する遮光機能も備えている。なお、ノイズ光には、光電子増倍管ユニット1の外部からのノイズ光が含まれ得る。また、ノイズ光には、光電子増倍管ユニット1の内部での発光(例えば後述する補正光Lの意図しない漏れ光や各種電気素子における放電発光等)に基づくノイズ光が含まれ得る。
【0033】
図3は、光電子増倍管11の内部構成を示す概略的な断面図である。光電子増倍管11は、バルブ12の先端側から光を入射させるヘッドオン型の光電子増倍管である。バルブ12は、両端が閉塞した円筒形のガラスバルブである。バルブ12の先端側は、光が入射する光入射窓部13となっている。光入射窓部13は、光入射面13aを構成する光入射窓Wを備えている。バルブ12の基端側は、光の入射に応じて光電子増倍管11から出力される信号の取り出し側となる信号出力部14となっている。信号出力部14の中央部分からは、バルブ12の内部空間を真空排気する際に用いる排気管Tが突出している。また、信号出力部14における排気管Tの周囲からは、光電子に基づく信号(光電子が増倍部23で二次電子増倍された結果の電子群による出力信号)を生成する陽極24からの信号を外部に出力するための複数の端子26が突出している。バルブ12の周面は、光入射窓部13と信号出力部14とを繋ぐ側壁部(壁部)15となっている。
【0034】
バルブ12の外面側には、遮光性部材(導波路用遮光性部材/第1の遮光性部材)16が設けられている(
図6参照)。遮光性部材16は、例えば黒色を呈する熱収縮性チューブによって構成され、バルブ12の外面側に密着している。本実施形態では、遮光性部材16は、光入射窓部13(特に光入射面13a)及び信号出力部14における排気管Tや端子26の突出領域を除き、バルブ12における側壁部15の全面と信号出力部14の縁部とを覆うように設けられている。遮光性部材16は、遮光性のほか、電気絶縁性を有していることが好ましい。
【0035】
図3に示すように、バルブ12の内部空間Sには、光電面21、集束電極22、増倍部23、陽極24が配置されている。光電面21は、光入射窓Wの内側に設けられている。光電面21は、光の入射に応じて光電子を放出する光電子放出材料によって形成されている。光電子放出材料としては、例えばSb(アンチモン)とアルカリ金属(Cs:セシウム、K:カリウム、Rb:ルビジウムなど)が挙げられる。光電子放出材料は、Te(テルル)と上記アルカリ金属であってもよい。集束電極22は、光入射窓Wに対向する位置に配置されている。集束電極22の中央には、開口22aが形成されている。この開口22aは、光電面21で発生した光電子の増倍部23への入口となる。
【0036】
増倍部23は、
図3の例では、複数段のボックス・アンド・グリッド型のダイノード25によって構成されている。これらのダイノード25は、半円筒形の面を分割した形状をなしている。半円筒形の面の内面は、二次電子面となると共に、分割面の一方が電子の入射面となっており、分割面の他方が電子の出射面となっている。入射面には、導電性部材によるメッシュ(不図示)が設けられている。このメッシュにより、電子がダイノード25の奥により確実に誘導される。各段のダイノード25では、二次電子面への衝突によって二次電子が放出される。二次電子は、次段のダイノード25に入射することで順次増倍され、最終段の板状のダイノード25の前面に配置されたメッシュ状の陽極24によって捕集される。
【0037】
光電子増倍管11において、バルブ12の信号出力部14側には、
図2に示すように、ソケット30が設けられている。ソケット30は、バルブ12の信号出力部14側に着脱自在に嵌合するソケット本体部31に、分圧部33、複数の貫通電極32、及び後述する補正光源部42を一体化した構成を有している。ソケット30は、ケース2内において基端面2aと光電子増倍管11との間に形成された空間に配置されている。
【0038】
ソケット本体部31は、所定の光拡散性を有する光拡散性部材によって環状に形成されている。光拡散性部材としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの所定の透光性を有する樹脂材料が挙げられる。ソケット本体部31の中央部分には、当該ソケット本体部31を厚さ方向に貫通する貫通孔31aが設けられている。貫通孔31aは、例えばバルブ12の信号出力部14から突出する排気管Tを収容する。貫通孔31aには、光電子増倍管11とソケット30との接続を補助するための接続部材34が封止されている。
【0039】
接続部材34は、例えばシリコーン樹脂などの遮光性や電気絶縁性に優れた樹脂材料によって形成され、貫通孔31aの内壁、信号出力部14、及び排気管Tにそれぞれ密着している。接続部材34は、ノイズ光が貫通孔31aを介して信号出力部14を透過し、光電子増倍管11の内部空間Sに入り込むことを抑制する。また、接続部材34は、貫通孔31aを介しての放電などを抑制する。
【0040】
ソケット本体部31における信号出力部14との対向面である一方面31Aには、複数の端子26と対向する位置に複数の孔部31cがそれぞれ設けられている。孔部31c内には、端子26と電気的に接続される貫通電極32の基端側(端子26側)が埋設されている。端子26を孔部31cに差し込み、孔部31c内で端子26を貫通電極32と嵌合することで、端子26と貫通電極32とが電気的に接続されると共に、ソケット30が光電子増倍管11に対して着脱自在に固定される。
図3では、簡単化のため、孔部31c内での貫通電極32と端子26との接続状態を1組のみ図示している。
【0041】
貫通孔31aの内壁面には、遮光性部材(孔用遮光性部材)35が設けられている。遮光性部材35は、例えばシリコーン樹脂によって形成され、貫通孔31aの内壁面の全面を覆うように設けられている。また、ソケット本体部31の外周面には、フランジ31bが設けられている。フランジ31bにより、光電子増倍管11にソケット30を着脱する際の作業性が向上し、着脱時にソケット本体部31の周囲の貫通電極32や分圧部33などに触れずに作業することが可能となる。また、ケース2内での光電子増倍管11のがたつきを抑えることができる。
【0042】
分圧部33は、光電面21及び陽極24への供給電力を分圧する部分である。分圧部33は、電圧供給コネクタ4から供給される電圧を分圧する複数の抵抗素子などを基板上に備えた分圧回路である。より具体的には、分圧部33は、分圧した電圧を光電面21、陽極24、集束電極22、及び増倍部23の各段のダイノード25に供給する。複数の貫通電極32の先端側は、ソケット本体部31における一方面31Aと反対側の他方面31Bから突出し、基板36を貫通して分圧部33とそれぞれ電気的に接続されている。これらの貫通電極32は、ピン形状をなしており、
図4に示すように、ソケット本体部31の厚さ方向から見て一定の位相角をもって環状に配置されている。貫通電極32の基端側は、バルブ12の信号出力部14から突出する端子26とソケット本体部31の孔部31c内で接続され、当該端子26を介して光電面21、陽極24、集束電極22、及び増倍部23の各段のダイノード25に電気的に接続されている。
【0043】
上述した光電子増倍管ユニット1には、光電子増倍管11の感度ドリフトを補正するための補正機構が設けられている。以下、この補正機構について詳細に説明する。
【0044】
補正機構は、補正光L(
図6参照)を出力する光源44を有する補正光源部42と、補正光Lを光電面21に導光する導光路43とを含んで構成されている。補正光源部42は、光入射窓部13(特に光入射面13a)よりも信号出力部14側に設けられている。光源44は、例えば半導体発光素子であるLEDによって構成されている。光源44の配置にあたり、本実施形態では、
図4に示すように、ソケット本体部31において、管状に配置された貫通電極32の配置領域の一箇所に貫通電極32が配置されない空き領域が設けられており、当該空き領域に光源44が挿入されている。
【0045】
空き領域には、
図5に示すように、光源44の形状に応じた有底の凹部45が設けられ、光源44は、補正光Lの出射端が凹部45の底部を向くようにして凹部45内に埋設されている。凹部45の底部には、光源44における補正光Lの出射端と対向するように減光部材46が配置されている。減光部材46は、例えばエポキシ樹脂によって形成され、凹部45の底部を覆うように配置されている。減光部材46は、光源44から出力した補正光Lの光量を一定の度合いで減衰させる。
【0046】
また、光源44は、ソケット本体部31の他方面31B上に配置された基板36に固定されている。基板36には、光源44の駆動回路が設けられていてもよい。基板36は、光源44や貫通電極32が挿通する貫通孔を除いて他方面31Bを覆っている。そして、基板36の周縁は、ケース2の内壁面にまで至るため、基板36は、分圧部33側からのノイズ光を遮光する効果を奏する。
【0047】
導光路43は、バルブ12に形成された透光部47によって構成されている。本実施形態では、バルブ12の全体が透光性部材から形成され、より具体的にはガラスバルブである。このため、バルブ12の全体が補正光Lに対する透光性を有する(すなわち、補正光Lの伝達が可能な)透光部47となっている。したがって、バルブ12の側壁部15の全体が信号出力部14から光入射窓部13側に向かって連続して延びる透光部47となっている。本実施形態では、信号出力部14及び光入射窓部13の少なくとも一部も透光部47を構成している。信号出力部14から入射した補正光Lは、信号出力部14内、側壁部15内、及び光入射窓部13内で反射を繰り返すことで、光入射窓部13に設けられた光電面21まで伝達される。換言すれば、バルブ12の側壁部15を主体とする透光部47は、光入射窓部13と信号出力部14とに光学的に結合されている。また、透光部47(本実施形態では、特に信号出力部14)は、補正光源部42の光源44と対向した状態となっている。
【0048】
光源44と導光路43との間に位置するソケット本体部31は、光源44と透光部47とを光学的に結合する光結合部48となっている。光結合部48としてのソケット本体部31は、上述したように、一定の光拡散性を有する光拡散性部材によって構成されている。ソケット本体部31の一方面31Aがバルブ12の信号出力部14と面接触して密着するようにソケット30が光電子増倍管11に嵌合することで、光源44と透光部47とを十分な光伝達効率をもって光学的に結合させることができる。本実施形態では、ソケット本体部31は、バルブ12の側壁部15における信号出力部14側の端部とも対向している。したがって、光源44と透光部47との間の光伝達効率の更なる向上が図られる。
【0049】
ソケット本体部31には、上述したように、補正光源部42の光源44が埋設されており、かつ複数の貫通電極32及び分圧部33が固定されている。すなわち、本実施形態では、補正光源部42及び分圧部33は、光結合部48であるソケット本体部31と一体化され、ソケット30として光電子増倍管11に着脱自在に嵌合している。ソケット30を光電子増倍管11に嵌合した状態において、光結合部48であるソケット本体部31と透光部47とが光学的に結合し、補正光源部42からの補正光Lは、内部空間Sよりも外側の領域に設けられた導光路43によって光電面21に導光される。ソケット30を光電子増倍管11から脱抜する場合には、例えばソケット本体部31のフランジを把持し、バルブ12の信号出力部14から突出する端子26をソケット本体部31(貫通電極32)から取り外せばよい。これにより、複数の貫通電極32、分圧部33、及び補正光源部42は、ソケット本体部31と共に光電子増倍管11から取り外すことができる。
【0050】
図6は、補正光の導光経路を示す概略的な断面図である。
図6に示すように、光源44から出力された補正光Lは、凹部45の底部に配置された減光部材46によって一定の光量の減衰を受けた後、ソケット本体部31内に入射する。ソケット本体部31内に入射した補正光Lは、ソケット本体部31が光拡散性部材によって構成されていることによりソケット本体部31内で拡散し、特定の指向性のない均一化された状態で、透光部47であるバルブ12を構成する透光性部材内に入射する。透光部47内に入射した補正光Lは、透光部47内で反射を繰り返し、更に拡散しながら進行する。具体的には、補正光Lは、透光部47としての信号出力部14、側壁部15、及び光入射窓部13を経て光電面21に入射する。
【0051】
光電子増倍管ユニット1には、補正機構と共に、補正光Lを適切に光電面21に導光するための遮光機構が設けられている。遮光機構は、ソケット本体部31における貫通孔31aの内壁面に設けられた遮光性部材(孔用遮光性部材)35と、バルブ12の外面側を覆う遮光性部材(導波路用遮光性部材/第1の遮光性部材)16と、光電子増倍管11を収容するケース(導波路用遮光性部材/第2の遮光性部材)2とによって構成されている。
【0052】
遮光性部材35は、ソケット本体部31における貫通孔31aの内壁面を覆うように設けられている。この遮光性部材35は、信号出力部14を透過して補正光Lが光電子増倍管11内に入り込むことを抑制する。本実施形態では、遮光性部材35は、特に、補正光Lが信号出力部14に設けられた排気管などを透過して内部空間Sに入射することを抑制する。遮光性部材16は、バルブ12における信号出力部14の縁部と側壁部15の全面とを覆うように設けられている。ケース2は、遮光性部材16よりも高い遮光性を有し、遮光性部材16を覆うように当該遮光性部材16の外側に配置されている。遮光性部材16及びケース2は、いずれも導光路43の外側に位置し、ノイズ光が導光路43に入射することを抑制する。
【0053】
図7は、補正機構の一例を示すブロック図である。
図7の例では、光源制御回路101と、I/V変換部102と、マイコンモジュール103と、高圧電源104とが光電子増倍管ユニット1に対する外部回路として接続されている。光電子増倍管ユニット1は、これらの全て又は一部を含めて構成されていてもよい。光源制御回路101は、光源44であるLEDの駆動を制御する回路である。光源制御回路101は、光源44から出力される補正光Lの光量を検出する光センサ105からの検出信号に基づいて、光源44をフィードバック制御する。
【0054】
補正機構は、光源44を駆動させた後、補正光Lの入射によって光電子増倍管11から出力される電流をI/V変換部102で電圧に変換し、この電圧値を初期値としてマイコンモジュール103のEEPROMに記憶させる。光源の駆動のタイミングは、マイコンモジュール103によって制御する。光電子増倍管11の感度ドリフトを補正する場合、光源44を駆動させた後、補正光Lの入射によって光電子増倍管11から出力される電流をI/V変換部102で電圧に変換し、マイコンモジュール103に入力する。そして、このマイコンモジュール103に入力される電圧値がEEPROMに記憶されている初期値と一致するように高圧電源104のコントロール電圧を調整し、光電子増倍管11に印加される電圧を制御する。
【0055】
以上説明したように、光電子増倍管ユニット1では、補正光源部42からの補正光Lが内部空間Sよりも外側の領域に設けられた導光路43によって光電面21に導光される。したがって、この光電子増倍管ユニット1では、光電子増倍管11内の内部構造物(増倍部23や陽極24など)に補正光Lが当たってしまうことを回避でき、補正光Lを安定して光電面21に導光できる。これにより、光電子増倍管11の感度ドリフトの補正を精度良く実施することができる。
【0056】
光電子増倍管ユニット1では、バルブ12の側壁部15の少なくとも一部が信号出力部14側から光入射窓部13側に向かって連続して延びる透光部47となっており、導光路43が透光部47によって構成されている。このように、バルブ12の側壁部15の少なくとも一部を透光部47による導光路43とすることで、光電子増倍管ユニット1の大型化を避けることができる。
【0057】
光電子増倍管ユニット1では、バルブ12の側壁部15の全体が透光部47となっている。これにより、透光部47が光入射窓部13と光学的に結合されていると共に、透光部47が補正光源部42の光源44と対向した状態となっている。これにより、補正光Lを一層安定して光電面21に導光できる。また、補正光Lが側壁部15の全体で拡散し、補正光Lを十分に均一な状態で光電面21に導光できる。
【0058】
光電子増倍管ユニット1では、補正光源部42が光源44と透光部47とを光学的に結合する光結合部48を有している。本実施形態では、光電子増倍管11に着脱自在に固定されるソケット30を構成するソケット本体部31が光結合部48であり、光結合部48の採用により、補正光源部42における光源44の配置の自由度を高めることができる。
【0059】
光電子増倍管ユニット1では、光結合部48が光拡散性部材によって構成され、側壁部15における信号出力部14側の端部と対向している。光結合部48に光拡散性を持たせることにより、補正光Lを一層十分に均一な状態で光電面21に導光できる。また、光結合部48が側壁部15における信号出力部14側の端部と対向することで、光結合部48と透光部47との間の補正光Lのロスを抑えることができる。
【0060】
光電子増倍管ユニット1では、光結合部48が信号出力部14と対向する貫通孔31aを有する環状部材であり、貫通孔31aの内壁面が遮光性部材35によって覆われている。これにより、信号出力部14を透過して補正光Lが光電子増倍管11の内部空間Sに入り込むことを抑制できる。
【0061】
光電子増倍管ユニット1では、補正光源部42が、光源44から出力した補正光Lの光量を減衰させる減光部材46を有している。これにより、過剰な光量の補正光Lが光電面21に入力されることを抑制できる。したがって、光電面21の保護が図られる。
【0062】
光電子増倍管ユニット1は、光電面21及び陽極24への供給電力を分圧する分圧部33を備えている。そして、補正光源部42及び分圧部33は、光結合部48であるソケット本体部31と一体化され、ソケット30として光電子増倍管11に対して着脱自在に嵌合している。このような構成によれば、光結合部48であるソケット本体部31に光電子増倍管11の駆動及び制御に関わる構成が一体化されるので、光電子増倍管ユニット1の取り扱いが容易となる。また、光電子増倍管11に対するソケット30の着脱が容易となるため、光電子増倍管11、補正光源部42、及び分圧部33の交換が容易となる。
【0063】
光電子増倍管ユニット1では、導光路43の外側が遮光性部材16及び遮光性部材16よりも高い遮光性を有するケース2で覆われている。これにより、ノイズ光が導光路43に入射することを抑制できる。また、遮光性部材16は、補正光Lが透光部47の外部に透過することを抑制する。これにより、当該透過光がノイズ光として影響を及ぼすことが抑制されると共に、補正光Lの光量が所望の値に保たれる。
【0064】
本開示は、上記実施形態に限られるものではなく、種々の変形を適用し得る。例えば上記実施形態では、光源44から出力した補正光Lがソケット本体部31内を通る構成となっているが、
図8に示すように、ソケット本体部31内に導波路(光結合部)50を配置し、導波路50によって補正光Lを透光部47に導光してもよい。この場合、導波路50が光拡散性を有する部材によって構成されていてもよい。
【0065】
また、
図8の形態では、バルブ12の信号出力部14を覆うように、遮光性部材16よりも低い遮光性を有する遮光性部材(信号出力部用遮光性部材)17が設けられている。遮光性部材17は、例えばシリコーン樹脂によって形成され、電気絶縁性も兼ね備えている。この遮光性部材17により、ノイズ光が信号出力部14を透過して光電子増倍管11の内部空間Sに入り込むことを抑制できる。
【0066】
遮光性部材17は、バルブ12の外面側に設けられた遮光性部材16よりも低い遮光性を有するため、ある程度の光透過性を有する。つまり、遮光性部材17は、減光的な作用を備えるため、過剰な光量の補正光Lが光電面21に入力されることを抑制する。したがって、光電面21の保護が図られる。なお、
図8の形態では、遮光性部材17と減光部材46の双方が設けられているが、必要な光量に応じて遮光性部材17及び減光部材46の一方のみが設けられていてもよい。遮光性部材17は、信号出力部14に別部材として設ける態様に限られず、信号出力部14を構成する材料に遮光性材料を混入させることによって形成する態様としてもよい。
【0067】
図9は、補正機構の別例を示すブロック図である。
図9の例では、高圧電源104に代えて昇圧回路106が設けられており、この昇圧回路106と、光源制御回路101と、I/V変換部102と、マイコンモジュール103とがケース2内に配置され、ユニット化されている。これらの全て又は一部は、光電子増倍管ユニット1とは別体に構成されていてもよい。昇圧回路106には、例えばCW回路(コッククロフト・ウォルトン回路)が用いられる。この補正機構で光電子増倍管11の感度ドリフトを補正する場合、光源44を駆動させた後、補正光Lの入射によって光電子増倍管11から出力される電流をI/V変換部102で電圧に変換し、マイコンモジュール103に入力する。そして、このマイコンモジュール103に入力される電圧値がEEPROMに記憶されている初期値と一致するように昇圧回路106のコントロール電圧を調整し、光電子増倍管11に印加される電圧を制御する。
【0068】
図10は、光電子増倍管ユニットの変形例を示す平面図である。また、
図11は、その側面図である。
図10及び
図11に示す光電子増倍管ユニット61は、扁平な直方体形状をなすチップ状の光電子増倍管63をケース(導波路用遮光性部材)62内に収容して構成されている。なお、
図10では、ケース62の略半分部分を切欠いて内部を示している。
【0069】
ケース2は、例えばABS樹脂などの電気絶縁性及び遮光性を有する材料によって形成されている。光電子増倍管63と分圧部64とは、ケース2内の一方側に上下2段に配置されている。ケース2の天面側には、光を入射させる開口部としての貫通孔66が光電子増倍管63の光電面65と対向する位置に設けられている。また、補正光源部67は、ケース2内の他方側に配置されている。光電子増倍管63及び分圧部64と補正光源部の光源74との間は、減光フィルタ(減光部材)68によって仕切られた状態となっている。
【0070】
光電子増倍管63の筐体69は、例えばシリコン基板を基材とする底部フレーム及び側壁フレームと、例えばガラス基板を基材とする面板フレーム(壁部)70とを結合することによって構成されている。筐体69の壁部のうち、面板フレーム70によって構成される壁部は、光電面65側に位置する光入射窓部71に相当する部分を有し、信号出力部72側から光入射窓部71側に向かって連続して延びる透光部73を構成している。この透光部73は、補正光Lを光電面21に導光する導光路75を形成している。
【0071】
筐体69の壁部のうち、減光フィルタ68に面する壁部は、光電子増倍管63の陽極(不図示)側に位置する信号出力部72となっている。光電面65は、信号出力部72と反対側の壁部寄りの位置で、面板フレーム70と対向するように筐体69の内部空間Sに配置されている。内部空間Sにおける光電面65、増倍部、陽極等の機能は、光電子増倍管11と同様である。光電子増倍管63では、
図10及び
図11における面板フレーム70の長手方向に沿って、紙面左側から紙面右側に向かって光電面65、増倍部、陽極が順に配置され、増倍部による二次電子増倍が行われる。
【0072】
この光電子増倍管ユニット61では、光源44から出力した補正光Lは、減光フィルタ68によって一定の減衰を受けた後、減光フィルタ68に面する信号出力部72を通って面板フレーム70内に入射する。補正光Lの一部は、信号出力部72を通らずに面板フレーム70内に直接的に入射してもよい。面板フレーム70内に入射した補正光Lは、透光部73である面板フレーム70内で反射を繰り返し、拡散しながら光電面21に入射する。このような構成を有する光電子増倍管ユニット1においても、補正光源部42からの補正光Lが内部空間Sよりも外側の領域に設けられた導光路75によって光電面65に導光される。したがって、光電子増倍管ユニット61においても、光電子増倍管63内の内部構造物(増倍部や陽極など)に補正光Lが当たってしまうことを回避でき、補正光Lを安定して光電面65に導光できる。これにより、光電子増倍管63の感度ドリフトの補正を精度良く実施することができる。
【0073】
上記実施形態では、いずれも光電子増倍管の筐体を構成する透光部をもって導光路としているが、光電子増倍管とは別個に導光路を設けてもよい。例えば光電子増倍管に沿うように配置した透光性部材を導光路としてもよい。この場合、当該透光性部材を遮光部材で覆うことが好ましい。また、補正光源部は、ソケットと一体化せずに別体として設けてもよく、ソケットを介することなく、直接導光路に補正光を入射する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1,61…光電子増倍管ユニット(電子管ユニット)、2…ケース(導波路用遮光性部材/第2の遮光性部材)、11,63…光電子増倍管(電子管)、12…バルブ(筐体)、13,71…光入射窓部、14,72…信号出力部、15…側壁部(壁部)、16…遮光性部材(導波路用遮光性部材/第1の遮光性部材)、17…遮光性部材(信号出力部用遮光性部材)、21,65…光電面、23…増倍部、24…陽極、30…ソケット、31…ソケット本体部、31a…貫通孔、33,64…分圧部、35…遮光性部材(孔用遮光性部材)、42,67…補正光源部、43,75…導光路、44,74…光源、46…減光部材、47,73…透光部、48…光結合部、50…導波路(光結合部)、62…ケース(導波路用遮光性部材)、68…減光フィルタ(減光部材)、69…筐体、70…面板フレーム(壁部)、L…補正光、S…内部空間。
【要約】
【課題】補正光を安定して光電面に導光できる電子管ユニット及び電子管用ソケットを提供する。
【解決手段】光電子増倍管ユニット1は、光の入射に応じて光電子を放出する光電面21と、光電子に基づく信号を生成する陽極24とをバルブ12の内部空間Sに収容してなる光電子増倍管11と、光電子増倍管11への補正光Lを出力する光源44を有する補正光源部42とを備え、バルブ12は、光電面21側に位置する光入射窓部13と、陽極24側に位置する信号出力部14と、光入射窓部13と信号出力部14とを繋ぐ側壁部15と、を備え、補正光源部42は、光入射窓部13よりも信号出力部14側に配置され、補正光源部42からの補正光Lは、内部空間Sよりも外側の領域に設けられた導光路43によって光電面21に導光される。
【選択図】
図6