(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数個のローラのすべてについて、該ローラの前記保持器の径方向外側の端面に、前記中間摺動部材が取り付けられており、前記ポケットのそれぞれに配置された前記2個以上のローラのうちで前記保持器の径方向に関して最も外側に配置されたローラの前記保持器の径方向外側にある端面と前記ポケットのうちの前記保持器の径方向外側にある内側面との間部分、および、前記2個以上のローラのうち、前記保持器の径方向に関して隣り合うローラのうちの一方のローラの前記保持器の径方向外側にある端面と、他方のローラの前記保持器の径方向内側にある端面との間部分のすべてに、前記中間摺動部材が、前記ローラの中心軸と同軸上に、配置されている、請求項3に記載のトロイダル無段変速機用押圧装置。
【背景技術】
【0002】
トロイダル無段変速機では、互いに同軸に配置されて相対回転する入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの間に挟持されている複数個のパワーローラとを備え、パワーローラを介して、入力側ディスクから出力側ディスクに動力を伝達するように構成されている。トロイダル無段変速機では、パワーローラの傾斜角度を変えることにより、入力側ディスクと出力側ディスクとの間の変速比を調節することが可能である。
【0003】
トロイダル無段変速機の運転時に、入力側ディスクの軸方向側面および出力側ディスクの軸方向側面と、パワーローラの周面との転がり接触部であるトラクション部には、トラクションオイルの油膜が形成される。入力側ディスクと出力側ディスクとの間での動力は、この油膜を介して伝達される。トロイダル無段変速機において、トラクションオイルの油膜を介しての動力伝達を確実に行えるように、入力側ディスクおよび出力側ディスクを互いに近づく方向に押圧するための押圧装置が設置される。
【0004】
特開平11−201251号公報には、トロイダル無段変速機用の押圧装置として、伝達トルクの大きさに比例した押圧力を機械的に発生するローディングカム式の押圧装置が開示されている。ローディングカム式の押圧装置は、円板状のカム板の軸方向側面に形成された第一のカム面と、第一のカム面と軸方向に対向するディスクの軸方向側面に形成された第二のカム面と、第一のカム面と第二のカム面との間に挟持された複数個のローラとを備える。ローラは、複数個ずつ径方向に直列に配置された状態で、保持器の円周方向複数箇所に形成された矩形状のポケットの内側に転動自在に保持されている。なお、ローラは、軸受鋼などの鋼材製であり、保持器は、浸炭窒化用鋼などの鋼材製である。
【0005】
ローディングカム式の押圧装置の作動時には、ローラが、第一のカム面および第二のカム面を構成する凸部に乗り上げることにより、第一のカム面と第二のカム面との間の軸方向間隔が拡がる。これにより、第二のカム面が形成された第一のディスク(たとえば、入力側ディスク)が、第一のディスクに対向する第二のディスク(たとえば、出力側ディスク)に向けて押圧されて、トラクション部の面圧が確保される。
【0006】
ローディングカム式の押圧装置では、伝達トルクの大きさと発生する押圧力との特性は、線型性すなわち比例関係を有することが望ましい。ただし、トロイダル無段変速機の運転時には、保持器の回転に伴ってローラに遠心力が作用するため、ローラの軸方向端面同士の摺接部、および、ポケットの径方向外側面とこのポケットの径方向外側面に対向するローラの軸方向端面との摺接部には、大きな摩擦力が生じやすい。このため、特開2006−38131号公報に記載されているように、摩擦力に基づくヒステリシスが生じ、トルクと発生押圧力との関係が線型ではなくなる。
【0007】
図17は、トルクと発生押圧力とのイメージ図を表している。
図17中の実線は、ヒステリシスが生じた場合のトルクと発生押圧力との関係を示しており、線分に沿って付した矢印X、Yは、トルクおよび押圧力の変化の方向を示しており、一点鎖線で示した線分αは、目標とする特性に相当する、トルクと押圧力との理論的関係(理論値)を示している。
図17から理解できるように、矢印Xで示すように、トルクを増大させる際には、理論値よりも発生する押圧力が小さくなるのに対し、矢印Yで示すように、トルクを減少させる際には、理論値よりも大きな押圧力を発生させることが可能になる。
【0008】
このため、ローディングカム式の押圧装置の寸法諸元を決定するにあたっては、必要な押圧力を常に確保できるように、ヒステリシスによる損失を考慮する必要がある。具体的には、トルクを増大させる際にも理論値以上の大きさの押圧力を発生させられるように、
図17中に破線で示したような特性が得られる寸法諸元に決定する必要がある。この結果、トルクを減少させる際に、所望の押圧力よりも高い押圧力が発生しやすくなる。押圧装置の発生押圧力が過大になることは、押圧装置だけでなく、押圧装置が組み込まれるトロイダル無段変速機全体の寸法や重量増大の原因になるため、好ましくない。したがって、ローディングカム式の押圧装置に関して、必要な押圧力を確保しつつ、過押圧を防止するためには、ヒステリシスを低減することが重要になる。
【0009】
これに対して、特開平01−299358号公報には、
図18に示すような、ローラ14の保持器13の径方向外側にある端面(
図18の上端面)の中心部に、ローラ14の端面の面積より大幅に狭い面積を有する当接部44を形成し、この当接部44を、ポケット25のうちの保持器13の径方向外側の内側面、あるいは、隣接するローラ14の保持器13の径方向内側の端面に当接させる構造が開示されている。この構造では、当接部44がローラ14の端面の面積よりも小さい面積を有しているため、遠心力による押圧力を原因として当接部44に発生する摩擦力を小さくさせることが可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特開平01−299358号公報に開示されたローラの構造では、ローディングカム式の押圧装置における、トルクと押圧力との間に生じるヒステリシスの低減を十分に図ることができていない。
【0012】
たとえば、特開平01−299358号公報の構造では、ローラ14の当接部44と、ポケット25のうちの保持器13の径方向外側の内側面、あるいは、隣接するローラ14の保持器13の径方向内側の端面との間が面接触となるため、ヒステリシスの低減を十分に図ることができない。
【0013】
本発明は、上述のような事情に鑑み、トルクと押圧力との間に生じるヒステリシスを低減できる構造を備えた、トロイダル無段変速機用押圧装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のトロイダル無段変速機用押圧装置は、カム板と、ディスクと、保持器と、複数個のローラとを備える。
【0015】
前記カム板は、軸方向片側に、円周方向に関する凹凸である第一のカム面を有する。
【0016】
前記ディスクは、パワーローラを挟持するように配置される入力側ディスクと出力側ディスクとのうちの一方のディスクであって、軸方向片側に、断面円弧形のトロイダル曲面を有し、軸方向他側に、第一のカム面に軸方向に対向し、円周方向に関する凹凸である第二のカム面を有する。
【0017】
前記保持器は、第一のカム面と第二のカム面との間に配置され、かつ、円周方向複数箇所にそれぞれの中心軸が放射方向に沿うように配置された矩形状のポケットを有する。
【0018】
前記複数個のローラは、前記ポケットのそれぞれの内側に2個以上ずつ、前記保持器の径方向に関して直列に配置された状態で転動自在に保持される。前記ローラが前記ポケットの内側に保持された状態では、前記ローラは、それぞれの中心軸が、放射方向に沿い、かつ、前記ポケットの中心軸と実質的に平行となるように配置される。
【0019】
本発明の押圧装置では、前記ポケットのそれぞれに配置された前記2個以上のローラのうちで前記保持器の径方向に関して最も外側に配置されたローラの前記保持器の径方向外側にある端面と前記ポケットのうちの前記保持器の径方向外側にある内側面との間部分、および、前記2個以上のローラのうち、前記保持器の径方向に関して隣り合うローラのうちの一方のローラの前記保持器の径方向外側にある端面と、他方のローラの前記保持器の径方向内側にある端面との間部分のうちの少なくとも1個所に、前記ローラとは別体に構成された中間摺動部材が、前記ローラの中心軸と同軸上に、配置されている。
【0020】
前記中間摺動部材と、前記ポケットの前記保持器の径方向外側にある内側面、前記ローラの前記保持器の径方向外側にある端面、または、前記ローラの前記径方向内側にある端面、あるいは、これらの面に取り付けられた別の中間摺動部材とが摺接する。前記中間摺動部材と、これらの面あるいは別の中間摺動部材との間の摺接部の接触面積は、前記中間摺動部材を設けずに、前記ローラの前記保持器の径方向外側の端面と前記ポケットの前記保持器の径方向外側にある内側面とを、あるいは、前記保持器の径方向に関して隣り合うローラのうちの一方のローラの前記保持器の径方向外側にある端面と他方のローラの前記保持器の径方向内側にある端面とを、直接摺接させた場合の摺接部の接触面積よりも小さい。
【0021】
前記中間摺動部材は、前記ローラとは別体として、前記ローラの一方の端面、すなわち、前記ローラの前記保持器の径方向外側の端面に取り付けることができる。あるいは、前記中間摺動部材は、前記ローラとは別体として、前記ローラの両方の端面、すなわち、前記ローラの前記保持器の径方向外側の端面および前記保持器の径方向内側の端面の両方に取り付けることができる。この場合は、隣接する2個のローラ同士の間で、前記中間摺動部材同士が摺接する。
【0022】
一方、前記中間摺動部材を、前記保持器の径方向に関して最も外側に配置されたローラの前記保持器の径方向外側にある端面と前記ポケットのうちの前記保持器の径方向外側にある内側面との間部分に配置する場合、前記中間摺動部材を前記ローラの前記保持器の径方向外側の端面に取り付ける代わりに、前記中間摺動部材を、前記保持器とは別体として、前記ポケットの前記内側面に取り付けることもできる。この場合も、前記ローラの前記保持器の径方向外側の端面および前記ポケットの前記内側面の両方に取り付けて、これらの中間摺動部材同士を摺接させることもできる。
【0023】
なお、前記中間摺動部材を、前記保持器の径方向に関して最も内側に配置されたローラの前記保持器の径方向内側にある端面と前記ポケットのうちの前記保持器の径方向内側にある内側面との間部分に配置することも可能である。この場合も、前記中間摺動部材を、前記ローラの前記保持器の径方向内側の端面、および/または、前記ポケットの前記保持器の径方向内側の内側面に取り付けることが可能である。
【0024】
好ましい態様としては、前記複数個のローラのすべてについて、これらのローラの一方の端面、すなわち、前記ローラの前記保持器の径方向外側の端面に、中間摺動部材を取り付けて、前記ポケットのそれぞれに配置された前記2個以上のローラのうちで前記保持器の径方向に関して最も外側に配置されたローラの前記保持器の径方向外側にある端面と前記ポケットのうちの前記保持器の径方向外側にある内側面との間部分、および、前記2個以上のローラのうち、前記保持器の径方向に関して隣り合うローラのうちの一方のローラの前記保持器の径方向外側にある端面と、他方のローラの前記保持器の径方向内側にある端面との間部分のすべてに、前記中間摺動部材が、前記ローラの中心軸と同軸上に、配置される。
【0025】
前記中間摺動部材は、前記中間摺動部材を設けた場合の前記摺接部の接触面積が、前記中間摺動部材を設けない場合の前記摺接部の接触面積よりも十分に小さくなる限り、その形状は任意である。たとえば、前記中間摺動部材のうち、前記摺接部に接触する先端面を、球状凸面あるいは円すい状凸面により構成することができる。あるいは、前記中間摺動部材の前記先端面を、前記ローラの端面よりも直径の小さい円形状の平坦面により構成することもできる。
【0026】
あるいは、前記中間摺動部材を、玉(球)により構成し、前記ポケットのそれぞれに配置された前記2個以上のローラのうちで前記保持器の径方向に関して最も外側に配置されたローラの前記保持器の径方向外側にある端面と前記ポケットのうちの前記保持器の径方向外側にある内側面との間部分、および、前記2個以上のローラのうち、前記保持器の径方向に関して隣り合うローラのうちの一方のローラの前記保持器の径方向外側にある端面と、他方のローラの前記保持器の径方向内側にある端面との間部分のうちの少なくとも1個所に、配置することも可能である。この場合、前記ローラの端面および/または前記保持器の前記ポケットの前記内側面のうち、該中間摺動部材と摺接する部分に、部分球状または円すい状の凹部(凹面)を形成することができる。
【0027】
本発明のトロイダル無段変速機用押圧装置を構成するローラにおいて、少なくとも前記保持器の径方向外側にある端面は、該端面と転動面を連続させるR部と、前記端面の径方向中央部に設けられた、前記中間摺動部材を取り付けるための取り付け部とを備え、前記端面のうち、前記保持器の径方向に関して最も外側に存在する面が、該ローラの中心軸に直交する方向に伸長する平坦面により構成されていることが好ましい。
【0028】
前記端面が前記保持器の径方向に関して最も外側に存在する面であり、前記取り付け部を、前記端面に形成された凹部により構成することができる。
【0029】
前記取り付け部が、前記端面に形成された凸部により構成することができ、この場合、前記凸部の先端面が前記保持器の径方向に関して最も外側に存在する面に相当する。
【0030】
本発明のトロイダル無段変速機用押圧装置において、前記中間摺動部材を構成する材料の硬さを、前記ローラを構成する材料の硬さよりも低くすることができる。前記ローラを軸受鋼で構成した場合、前記中間摺動部材を黄銅やアルミニウムなどにより構成することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のトロイダル無段変速機用押圧装置によれば、トルクと押圧力との間に生じるヒステリシスを低減することができる。すなわち、保持器の径方向に関して最も外側に配置されたローラの前記保持器の径方向外側にある端面と前記ポケットのうちの前記保持器の径方向外側にある内側面との間部分、および、前記2個以上のローラのうち、前記保持器の径方向に関して隣り合うローラのうちの一方のローラの前記保持器の径方向外側にある端面と、他方のローラの前記保持器の径方向内側にある端面との間部分のうちの少なくとも1個所に、前記ローラとは別体の中間摺動部材を配置し、該中間摺動部材と、前記ポケットの内側面または前記ローラの端面との摺接部の接触面積を、前記中間摺動部材を設けずに、前記ローラの端面と前記ポケットの内側面とを、あるいは、前記保持器の径方向に関して隣り合うローラの軸方向端面同士を直接摺接させた場合の摺接部の接触面積よりも小さくしている。このため、前記中間摺動部材と、前記ローラの軸方向端面または前記ポケットの径方向側面との摺接部で発生する摩擦トルクを、前記中間摺動部材を設けない場合に比べて小さくすることができる。したがって、本発明のトロイダル無段変速機用押圧装置によれば、トルクと押圧力との間に生じるヒステリシスを低減することができる。
【0032】
特に、本発明のトロイダル無段変速機用押圧装置では、中間摺動部材をローラとは別体に形成しているため、中間摺動部材の設計がローラ本体によって制約されることがない。このため、中間摺動部材の先端面を球状凸面により構成する場合に、この球状凸面の曲率半径を小さくすることが可能となり、従来のローラのように、端面に球状凸面を直接形成した場合と比較して、摺接部の接触面積を小さくできて、この摺接部を点接触により構成でき、ヒステリシスをより効果的に低減することが可能となる。
【0033】
また、中間摺動部材を別体とすることで、中間摺動部材を構成する材料と、ローラを構成する材料を異ならせることが可能となる。したがって、中間摺動部材を構成する材料の硬さを、ローラを構成する材料の硬さよりも低くすることができ、軸受鋼製のローラの端面同士が摺接していた場合と比較して、摩擦力を効果的に低減でき、もってヒステリシスをより効果的に低減することが可能となる。
【0034】
さらに、中間摺動部材を別体とすることで、ローラのうちの保持器の径方向外側にある端面について、中間摺動部材を取り付けるための構造を設けた場合でも、この端面のうち、保持器の径方向に関して最も外側に存在する面は、ローラの中心軸に直交する方向に伸長する平坦面により構成される、すなわち、隣接するローラのうちで、この端面と対向する端面と平行とすることができる。よって、複数個のローラに対して同時にそれらの転動面に研削加工を施す場合でも、これら複数個のローラを安定して載置することができ、ローラの転動面の加工精度を良好とすることが可能となる。これによっても、転動面での接触圧力の局所的な増大に伴うヒステリシスによる損失を低減させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[
参考例の第1例]
図1〜
図6は、本発明
に関する参考例の第1例を示している。トロイダル無段変速機1は、ダブルキャビティ型であり、1対の外側ディスク4a、4bと、内側ディスク6a、6bとを備え、これらの間にパワーローラ7が配置される2つのキャビティが形成される。1対の外側ディスク4a、4bは、入力軸2の軸方向両端部周囲に、ボールスプライン3を介して、互いに同軸にかつ同期した回転を可能に支持される。外側ディスク4a、4bは、互いに対向する軸方向内側に、断面円弧形の凹面であるトロイダル曲面を有する。ただし、本発明は、入力側ディスクと出力側ディスクとを、それぞれ1個ずつ備える、シングルキャビティ型のトロイダル無段変速機用の押圧装置に適用することもできる。
【0037】
入力軸2の軸方向中間部周囲には、歯車5が、入力軸2に対する相対回転を可能に支持されている。歯車5の中心部に設けた円筒部の両端部に、内側ディスク6a、6bがスプライン係合により歯車5と同期した回転を可能に支持されている。内側ディスク6a、6bは、外側ディスク4a、4bと軸方向に対向する軸方向外側面に、断面円弧形の凹面であるトロイダル曲面を有する。
【0038】
外側ディスク4a、4bの軸方向内側のトロイダル曲面と、内側ディスク6a、6bの軸方向外側のトロイダル曲面との間には、それぞれ複数個ずつのパワーローラ7が挟持される。パワーローラ7はそれぞれ、トラニオン8の内側面に、支持軸9および複数の転がり軸受を介して回転自在に支持されている。トラニオン8はそれぞれ、長さ方向(
図1の表裏方向)両端部に設けられた、図示しない枢軸を中心とする揺動変位が可能である。トラニオン8を揺動させる動作は、図示しないアクチュエータにより、トラニオン8を枢軸の軸方向に変位させることにより行われる。
【0039】
トロイダル無段変速機1の運転時には、動力源に繋がる駆動軸10により、ローディングカム式の押圧装置11を介して、外側ディスク4a、4bのうちの一方(
図1の左側)の外側ディスク4aを回転駆動することにより、入力軸2を回転駆動する。本
参考例では、1対の外側ディスク4a、4bが動力を入力する入力側ディスクに相当し、内側ディスク6a、6bが動力を出力する出力側ディスクに相当する。ただし、本発明は、内側ディスク6a、6bを入力側ディスクとし、1対の外側ディスク4a、4bを出力側ディスクとする構造に適用することもできる。
【0040】
押圧装置11は、カム板12と、1対の外側ディスク4a、4bのうちの外側ディスク4aと、保持器13と、複数個のローラ14aとにより構成される。
【0041】
カム板12は、断面クランク形で、全体を円輪状に構成されており、入力軸2の基端部(
図1の左端部)の周囲に支持されている。カム板12は、径方向外側部に設けられた円輪部15と、径方向内側部に設けられた円筒部16とを備える。円輪部15は、軸方向片側、すなわち軸方向内側(
図1および
図2の右側)に、第一のカム面に相当する、円周方向に関する凹凸である駆動側カム面17を有し、かつ、軸方向他側、すなわち軸方向外側(
図1および
図2の左側)の径方向内側部に、軸方向に突出する複数の突片18を有する。突片18を、駆動軸10の先端部に係合して、駆動軸10の回転をカム板12に伝達することを可能としている。
【0042】
円筒部16は、内周面に、アンギュラ型の外輪軌道19を有する。外輪軌道19と、入力軸2の基端部外周面に形成されたアンギュラ型の内輪軌道21と、外輪軌道19と内輪軌道21との間に転動自在に配置された複数個の玉22とにより、アンギュラ型の玉軸受20が構成される。アンギュラ型の玉軸受20により、カム板12が、入力軸2の基端部に回転自在に支持され、かつ、カム板12に作用するスラスト荷重が入力軸2により支承可能となっている。円筒部16は、円周方向複数箇所に、直径方向に貫通する状態で、潤滑油(トラクションオイル)を通過させるための油孔23を有する。油孔23は、たとえば円筒部16の円周方向等間隔の4箇所に設けることができる。油孔23は、入力軸2の内部を通じて玉軸受20に供給された潤滑油を、保持器13の内径側へと供給する。
【0043】
外側ディスク4aは、入力軸2の基端寄り部分の周囲に、ボールスプライン3を介して、入力軸2と同期した回転を可能に、かつ、入力軸2に対する軸方向の変位を可能に支持されている。外側ディスク4aは、上述のように、軸方向片側である軸方向内側に前記トロイダル曲面を有し、軸方向他側、すなわち駆動側カム面17と対向する軸方向外側(
図1および
図2の左側)に、第二のカム面に相当し、かつ、円周方向に関する凹凸である被駆動側カム面24を有する。
【0044】
保持器13は、浸炭窒化用鋼などの鋼材製であり、全体として円輪板状であり、駆動側カム面17と被駆動側カム面24との間に配置されている。保持器13は、径方向中間部の円周方向等間隔の4個所に、それぞれの中心軸が保持器13の放射方向に沿い、かつ、軸方向から見た開口部の形状が矩形状のポケット25を有する。ただし、ポケット25の数は任意であり、ポケット25を、保持器13の円周方向の2箇所以上に設けることができる。好ましくは、ポケット25は、保持器13の径方向中間部の円周方向等間隔の3箇所〜5箇所に設けられる。
【0045】
保持器13は、内周縁部および外周縁部に、軸方向に関して互いに逆向きに突出した突出部26a、26bを有する。突出部26aを駆動側カム面17に、突出部26bを被駆動側カム面24に、それぞれ係合させることにより、保持器13の軸方向に関する位置決めが図られている。保持器13の内周面を、カム板12を構成する円筒部16の外周面に近接対向させる、すなわち、保持器13の内周面を円筒部16の外周面に隙間嵌で外嵌することにより、保持器13の径方向に関する位置決めが図られている。
【0046】
複数個のローラ14aは、軸受鋼などの鋼材製であり、それぞれのローラ14aは、直径寸法に比べて軸方向寸法の短い短円柱状に構成されており、外周面である円筒面状の転動面と、軸方向両側に平坦面状の端面を備える。ローラ14aの転動面には、クラウニング処理が施されている。本
参考例では、ローラ14aは、3個ずつ、それぞれの中心軸が一致するように、径方向に直列に配置された状態で、保持器13の円周方向複数箇所に形成されたポケット25のそれぞれの内側に転動自在に保持されている。ポケット25の内側に配置されたローラ14aの中心軸は、放射方向に沿い、かつ、ポケット25の中心軸と実質的に平行であり、好ましくは実質的に一致する。保持器13に保持されたローラ14aは、それぞれの転動面を、駆動側カム面17および被駆動側カム面24に転がり接触させた状態で、駆動側カム面17と被駆動側カム面24との間に挟持される。
【0047】
ただし、それぞれのポケット25に配置されるローラ14aの数は任意であり、ローラ14aを、ポケット25のそれぞれの内側に、2個以上、好ましくは2個〜4個ずつ、径方向に直列に配置することもできる。本
参考例のように、ポケット25のそれぞれの内側にローラ14aを2個以上備えることにより、これらのローラ14aが、それぞれ独立して回転できるため、駆動側カム面17および被駆動側カム面24の内径側と外径側との速度差を吸収することが可能となる。
【0048】
本
参考例では、ローラ14aのそれぞれの軸方向両端面のうち、保持器13の径方向に関して外側の軸方向一端面(
図4の上端面)に、ローラ14aとは別体である中間摺動部材27が取り付けられている。中間摺動部材27は、全体が略円柱状に構成されており、ローラ14aよりも小さな直径を有している。中間摺動部材27は、軸方向一端面(
図4の上端面)の中央部に、中心軸O
27に直交する仮想平面上に存在する平坦面状でかつ円形の摺接面28を有し、軸方向一端面の外周縁部(摺接面28の径方向外側)に、断面円弧形の面取り部29を有する。
【0049】
中間摺動部材27の外径および摺接面28の直径は、摺接面28と摺接する、ポケット25の径方向外側の内側面31やローラ14aの軸方向他端面(
図4の下端面)に作用する面圧に起因して、径方向外側の内側面31やローラ14aの軸方向他端面に塑性変形が生じない点を考慮して決定する。中間摺動部材27は、ローラ14aと同様に、軸受鋼などの鋼材製とすることもできるが、ローラ14aに比べて大きな荷重が加わることはないため、好ましくは、中間摺動部材27は、アルミニウムや黄銅など、ローラ14aよりも剛性の低い材料製とすることができる。また、ローラ14aの転動面に比べて、中間摺動部材27の摺接面28には大きな荷重が加わることはないため、摺接面28の表面粗さを、ローラ14aの転動面の表面粗さよりも大きくすることもできる。これにより、ローラ14a同士の間では、異なる材質の材料が接触するようになるため、従来の当接部をローラと一体的に形成し、ローラ14同士の間で同質材料同士が接触する場合との比較では、摩擦力が低減され、ヒステリシスの低減効果が得られる。
【0050】
本
参考例では、ローラ14aの保持器13の径方向外側に配置される軸方向一端面の中央部には、中間摺動部材27の直径よりも小さい直径を有する凹部30が形成されている。中間摺動部材27は、軸方向他端部(
図4の下端部)を、ローラ14aの軸方向一端面の中央部に開口した凹部30の内側に挿入することにより、ローラ14aに対して取り付けられている。中間摺動部材27をローラ14aに取り付けた状態で、中間摺動部材27の軸方向一端部は、ローラ14aの軸方向一端面から突出し、かつ、中間摺動部材27の中心軸O
27とローラ14aの中心軸O
14とが実質的に一致する。なお、中間摺動部材27をローラ14aに取り付けるために、中間摺動部材27の軸方向他端部を凹部30に対し、圧入嵌合、ねじ止め、接着、溶接などにより固定することができる。
【0051】
中間摺動部材27が取り付けられたローラ14aは、2個以上ずつ、図示の例では3個ずつ、保持器13の径方向に関して直列に、それぞれの中心軸同士を一致させた状態で組み合わされて、ポケット25の内側に転動自在に保持される。これにより、中間摺動部材27が、保持器13の径方向に関して隣り合うローラ14aの軸方向端面同士の間部分、および、ポケット25の内側面のうちで保持器13の径方向に関して内側を向いた径方向外側の内側面31と、ポケット25の内側に配置されたローラ14aのうちで保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14aの軸方向一端面との間部分に配置される。ポケット25の内側に配置されたローラ14aのうち、保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14aに固定された中間摺動部材27の軸方向一端面を、ポケット25の径方向外側の内側面31に対し対向させる。ローラ14aのうち、最も外側に配置されたローラ14a以外のローラ14aに固定された中間摺動部材27の軸方向一端面を、このローラ14aに対して保持器13の径方向に関して外側に隣接配置された別のローラ14aの軸方向他端面に対向させる。
【0052】
本
参考例では、複数個のローラのすべてに、中間摺動部材27が取り付けられたローラ14aを用いて、中間摺動部材27を、保持器13の径方向に関して隣り合うローラ14aの軸方向端面同士の間部分、および、ポケット25の内側面のうちで保持器13の径方向に関して内側を向いた径方向外側の内側面31と、ポケット25の内側に配置されたローラ14aのうちで保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14aの軸方向一端面との間部分のすべてに配置している。ただし、本発明には、これらの箇所のうち、少なくとも一箇所にローラ14aを配置した構造も含まれる。特に、中間摺動部材27を、ポケット25の径方向外側の内側面31と、保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14aの保持器13の径方向外側にある軸方向一端面との間に、ローラ14aを配置することが重要であり、これにより、摩擦トルクを効果的に低減することができる。すなわち、ポケット25の内側面31と保持器13の径方向に関して最も外側のローラ14aの端面との摺接部で生じる摺動抵抗は、ローラ14aの軸方向端面同士の摺接部で生じる摺動抵抗よりも大きくなる。
【0053】
この理由は、第一に、ポケット25の内側面31と最も外側のローラ14aの軸方向端面との相対変位量(移動量)は、ローラ14aの軸方向端面同士の相対変位量に比べて大きくなるためである。第二に、ポケット25の内側面31と最も外側のローラ14aの軸方向端面との摺接部に作用する法線力には、保持器13の径方向に関して最も外側のローラ14a以外のローラ14aに作用する遠心力が加算されるため、他の摺接部における法線力よりも大きくなるためである。
【0054】
このように、中間摺動部材27を、ポケット25の内側面31と、ポケット26の内側に保持されたローラ14aのうちで保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14aの軸方向端面との間に配置することにより、ポケット25の内側面31と最も外側のローラ14aの軸方向端面との摺接部で生じる摺動抵抗を十分に低減できて、摩擦トルクを効果的に低減できる。さらに、当該摺接部にフレッチング摩耗が発生することを防止することができる。
【0055】
したがって、本発明では、中間摺動部材27を、ポケット25の内側面のうちで保持器13の径方向外側の内側面31と、ポケット25の内側に配置されたローラ14aのうちで保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14aの軸方向一端面との間部分に設置し、その他のローラについては従来のローラを適用することも可能である。また、中間摺動部材27を、保持器13の径方向に関して隣り合うローラ14aの軸方向端面同士の間部分にのみ配置した場合でも、その分、摩擦トルクの低減効果は得られる。
【0056】
トロイダル無段変速機1の運転時に、保持器13の回転に伴ってローラ14aに遠心力が作用すると、中間摺動部材27の軸方向一端面の摺接面28と、ポケット25の径方向外側の内側面31、および、径方向外側および径方向中間のローラ14aの軸方向他端面とがそれぞれ強く摺接する。
図5に示したように、摺接面28と、径方向外側の内側面31およびローラ14aの軸方向他端面との摺接部32の形状は、摺接面28と等しい直径を有する円形になる。本
参考例では、ローラ14aの転動面は、駆動側カム面17と被駆動側カム面24との間で挟持されるのに対し、中間摺動部材27の外周面は、駆動側カム面17および被駆動側カム面24に対し離隔した状態となる。
【0057】
ポケット25の内側に、ローラ14aおよび中間摺動部材27を組み込んだ状態では、ポケット25の中心軸とローラ14aの中心軸O
14および中間摺動部材27の中心軸O
27とは、実質的に一致する。本
参考例では、ローラ14aは、それぞれ独立して回転できるため、駆動側カム面17および被駆動側カム面24の内径側と外径側との速度差を吸収することが可能である。
【0058】
本
参考例のトロイダル無段変速機1の運転時に、駆動軸10によりカム板12を回転駆動することで、ローラ14aが、駆動側カム面17と被駆動側カム面24との間で強く挟持されると、カム板12の回転が、ローラ14aを介して外側ディスク4aに伝達される。この結果、入力軸2の軸方向両端部に支持された1対の外側ディスク4a、4bが、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転し、さらに、外側ディスク4a、4bの回転が、パワーローラ7を介して、内側ディスク6a、6bに伝わり、歯車5から取り出される。
【0059】
本
参考例の押圧装置11では、伝達するトルクと発生する押圧力との間に生じるヒステリシスを低減することができる。すなわち、本
参考例では、ローラ14aの軸方向一端面に中間摺動部材27が取り付けられており、中間摺動部材27の軸方向一端面に設けた、ローラ14aの軸方向一端面よりも小径の摺接面28を、ポケット25の径方向外側の内側面31、および、径方向外側および径方向中間のローラ14aの軸方向他端面に対し摺接させるようにしている。このため、摺接面28と、ポケット25の径方向外側の内側面31およびローラ14aの軸方向他端面との摺接部32の接触面積を、中間摺動部材27を設けずに、ポケット25の径方向外側の内側面31と最も外側に配置されたローラの軸方向一端面とを直接摺接させた場合の摺接部の接触面積、および、保持器13の径方向に関して隣り合うローラの軸方向端面同士を直接摺接させた場合の摺接部の接触面積よりも小さくすることができる。
【0060】
これにより、摺接部32に関して、ローラ14aの回転中心O
14から外周縁Z(摩擦力の作用点となる部分のうち最も回転中心O
14から遠い部分)までの距離Lを、中間摺動部材27を設けない場合の摺接部に関するローラ14aの回転中心O
14から外周縁Z´までの距離L´よりも短くできる。したがって、摺接部32で発生する摩擦トルクを、中間摺動部材27を設けない場合に比べて小さくすることができる。この結果、伝達するトルクと発生する押圧力との間に生じるヒステリシスを低減することができ、トルクと押圧力との関係を線型(比例関係)に近づけることが可能になる。
【0061】
特に、本
参考例では、摺動抵抗が大きくなりやすい、ポケット25の径方向外側面と最も外側のローラ14aの軸方向一端面との間に、中間摺動部材27が配置されているため、摺接部32で生じる摩擦トルクを効果的に低減することができる。
【0062】
図6に示すように、ローラの転動面に仕上げ加工を施す場合、一般的には、複数個のローラを軸方向に並べ、砥石やシューなどの工具46をこれらのローラの転動面に当接させて、まとめて仕上げ加工を施す。ローラは、直径寸法に比べて軸方向寸法が短いので、
図18に示した従来のローラ14のように、ローラ14の軸方向端面に当接部などの突起部を一体に設けると、ローラ14の中心軸同士が一致しにくくなり、これらのローラ14ががたついて、その転動面の加工精度が低下しやすくなる。これに対し、本
参考例では、中間摺動部材27をローラ14aとは別体に構成しているため、中間摺動部材27を取り付ける以前の状態で、ローラ14aの軸方向一端面をローラ14aの中心軸に直交する方向に伸長する平坦面により構成することができ、凹部30の存在は、複数個のローラ14aを積み重ねるに際して支障となることはない。よって、仕上げ加工時に、複数個のローラ14aの中心軸同士がずれることを有効に防止できるので、転動面の加工精度を十分に確保することができる。
【0063】
[
参考例の第2例]
図7および
図8は、
参考例の第1例の変形例である、本発明
に関する参考例の第2例を示している。本
参考例では、
参考例の第1例と同様に、ローラ14bの軸方向一端面(
図7および
図8の上端面)に、中間摺動部材27aを取り付けている。ただし、本
参考例では、中間摺動部材27aの形状が、
参考例の第1例と異なる。
【0064】
中間摺動部材27aは、ローラ14bの軸方向一端面に取り付けられる基部側は略円柱形状を有するが、先端側に球状凸面45が形成される。これにより、中間摺動部材27aは、相手面と面接触ではなく、その頂部を相手面に点接触させることができる。ここで、ヒステリシスを低減させる、すなわち摩擦を低減させるためには、この球状凸面45の曲率半径の値はできる限り小さい方が好ましい。しかしながら、
図8に点線で示すように、球状凸面をローラの軸方向位置端面に一体的に形成することを想定した場合、点線で示した球状凸面の曲率半径Rは、ローラの直径Dによって規制され、この球状凸面の曲率半径Rを直径Dの1/2以下にすることは難しく、製造コストが増大する可能性がある。
【0065】
一方、本
参考例では、中間摺動部材27aをローラ14bとは別体としているため、中間摺動部材27aの球状凸面45を先に加工した後において、中間摺動部材27aをローラ14bに組み付けることができるため、
図8に実線で示すように、球状凸面45の曲率半径rは、ローラ14bの直径Dによって規制されることはない。このように、本
参考例では、相手面と摺接する中間摺動部材27aの先端面をより小さな曲率半径rを有する球状凸面45により構成することが可能となり、ヒステリシス低減効果を飛躍的に向上させることが可能である。その他の構成および作用効果は、
参考例の第1例と同様である。
【0066】
[実施の形態の第
1例]
図9は、
参考例の第1例の変形例である、本発明の実施の形態の第
1例を示している。本例では、
参考例の第1例と同様に、ローラ14cの軸方向一端面(
図9の上端面)に、中間摺動部材27bを取り付けている。ただし、本例では、ローラ14cおよび中間摺動部材27bの形状、並びに、ローラ14cに対する中間摺動部材27bの取り付け態様が、
参考例の第1例と異なる。
【0067】
ローラ14cは、軸方向一端面の中央部に、軸方向に突出した凸部33を有する。凸部33の先端面は、ローラ14cの中心軸に直交する方向に伸長する、すなわち、ローラ14cの軸方向端面に平行である、平坦面となっている。中間摺動部材27bは、円板部34と、円板部34の軸方向一端面(
図9の上端面)の中央部に設けられた円柱状の軸部35とを備える。軸部35の直径は、
参考例の第1例の中間摺動部材27の直径と同様である。円板部34は、軸方向他端面(
図9の下端面)の中央部に、軸方向に凹んだ凹部36を有する。本例では、凹部36の内側に凸部33を挿入することで、ローラ14cの軸方向一端面の大部分を円板部34により覆うようにして、中間摺動部材27bをローラ14cに取り付けている。
【0068】
本例では、押圧装置11(
図1および
図2参照)の運転時に、中間摺動部材27bの軸部35に倒れ方向のモーメントが作用した場合にも、このモーメントを、ローラ14cの軸方向一端面により効果的に支承できる。このため、中間摺動部材27bの中心軸O
27とローラ14cの中心軸O
14とが不一致になることを有効に防止できる。
【0069】
本例でも、ローラ14cの軸方向一端面に形成された凸部33の先端面は平坦面により構成されているため、ローラ14cの転動面に仕上げ加工を施す際に、複数個のローラ14cを軸方向に並べることに関して、何ら支障が生じない。よって、仕上げ加工時に、複数個のローラ14cの中心軸同士がずれることを有効に防止できるので、転動面の加工精度を十分に確保することができる。その他の構成および作用効果は、
参考例の第1例と同様である。
【0070】
[
参考例の第
3例]
図10は、
参考例の第1例の変形例である、本発明
に関する参考例の第
3例を示している。本
参考例でも、
参考例の第1例と同様に、ローラ14aの軸方向一端面(
図10の上端面)に、中間摺動部材27cを取り付ける構成を採用している。ただし、本
参考例では、中間摺動部材27cの形状が、
参考例の第1例と異なる。
【0071】
中間摺動部材27cは、球状凸面である軸方向一端面および平坦面である軸方向他端面を有する部分球状部37と、部分球状部37の軸方向他端面の中央部に設けられた挿入軸部38とを備える。挿入軸部38は、ローラ14aの軸方向一端面に開口した凹部30の内側に挿入される。挿入軸部38を凹部30に挿入した状態で、摺接面である球状凸面の頂部が、ローラ14aの中心軸O
14上に位置する。
【0072】
本
参考例では、中間摺動部材27cと、ポケット25の径方向外側の内側面31またはローラ14aの軸方向他端面(
図10の下端面)との摺接状態を点接触にすることができる。このため、摺接部32aの接触面積を十分に小さくすることができ、摺接部32aに加わる摩擦トルクを十分に低減することができる。その他の構成および作用効果は、
参考例の第1例と同様である。
【0073】
[実施の形態の第
2例]
図11は、実施の形態の第
1例の変形例である、本発明の実施の形態の第
2例を示している。本例では、実施の形態の第
1例と同様に、ローラ14cは、軸方向一端面(
図11の上端面)の中央部に、軸方向に突出した凸部33を有し、かつ、中間摺動部材27dを構成する円板部34aは、軸方向他端面の中央部に、凸部33を挿入可能な凹部36aを有する。ただし、本例では、中間摺動部材27dを、円板部34aのみから構成し、かつ、円板部34aは、軸方向一端面に、摺接面である球状凸面を有する。
【0074】
本例では、中間摺動部材27dと、ポケット25の径方向外側の内側面31またはローラ14cの軸方向他端面との接触状態を点接触にすることができるため、実施の形態の第
1例と比べて、摺接部32bの接触面積を小さくすることができ、摺接部32bに加わる摩擦トルクを低減することができ、かつ、中間摺動部材27dに曲げ応力が集中しにくくすることができる。その他の構成および作用効果は、実施の形態の第1例
及び参考例の第1例〜第
3例と同様である。
【0075】
[
参考例の第
4例]
図12は、
参考例の第1例の変形例である、本発明
に関する参考例の第
4例を示している。本
参考例では、ポケット25の内側に配置された複数のローラ14a、14dのうち、保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14dには中間摺動部材を取り付けずに、このローラ14dの軸方向一端面(
図12の上端面)に対向するポケット25の径方向外側の内側面31に、中間摺動部材27eを取り付けている。
【0076】
中間摺動部材27eは、全体が略円柱状に構成されており、軸方向一端面を径方向外側の内側面31の円周方向中央部(ポケット25の中心軸と交わる部分)に固定している。中間摺動部材27eは、軸方向他端面の中央部に、円形状の摺接面28bを有し、かつ、外周縁部(摺接面28bの径方向外側)に、断面円弧形の面取り部29aを有する。
【0077】
本
参考例では、ポケット25の径方向外側の内側面31に、最も外側のローラ14dの軸方向一端面を直接摺接させた場合に生じる、摩耗に基づく凹部が形成されることを防止できる。中間摺動部材27dの取り付け対象を、ローラ14a、14dに比べて大型の保持器13にできるため、取り付け作業の作業効率を向上できる。
【0078】
なお、本
参考例を実施する場合には、ポケット25の内側に配置された複数のローラ14a、14dのうち、最も外側に配置されたローラ14d以外のローラ14aに取り付けられている中間摺動部材27の形状および取り付け態様は、図示のような
参考例の第1例と同様の構造に限らず、たとえば実施の形態の第
1例
及び参考例の第2例〜第
3例などの別の構造を採用することもできる。ポケット25の径方向外側の内側面31と最も外側のローラ14dの軸方向一端面との間に配置する中間摺動部材27eは、ポケット25の径方向外側の内側面31に対して一体に設けることもできる。この場合、部品点数を低減でき、組立作業工数を低減できる。その他の構成および作用効果は、
参考例の第1例と同様である。
【0079】
[
参考例の第
5例]
図13は、本発明
に関する参考例の第
5例を示している。本
参考例では、ローラ14eの軸方向両端面のうち、軸方向一端面(
図13の上端面)だけでなく、軸方向他端面(
図13の下端面)にも、中間摺動部材27fが取り付けられている。さらに、ポケット25の内側面のうち、径方向内方を向いた径方向外側の内側面31だけでなく、径方向外方を向いた径方向内側の内側面39にも、中間摺動部材27fが取り付けられている。本
参考例では、中間摺動部材27fのそれぞれの摺接面28cの直径を同じとしている。なお、図示の例では、中間摺動部材27fとして、
参考例の第1例および
実施の形態の第
2例に示した構造に比べて、直径が大きくかつ軸方向寸法の小さいものを使用した場合を示しているが、
参考例の第1例および
実施の形態の第
2例と同様のものを使用することもできる。
【0080】
本
参考例では、ポケット25の内側に配置されたローラ14eの軸方向端面同士の間部分に、それぞれの摺接面28cを対向させた状態で1対の中間摺動部材27fが配置される。また、ポケット25の径方向外側の内側面31と保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14eの軸方向一端面との間部分、および、ポケット25の径方向内側面39と保持器13の径方向に関して最も内側に配置されたローラ14eの軸方向他端面との間部分に、それぞれの摺接面28cを対向させた状態で1対の中間摺動部材27fが配置される。
【0081】
本
参考例では、ローラ14eの軸方向両端面、並びに、ポケット25の径方向外側の内側面31および径方向内側面39に、摺接に伴う摩耗に起因した凹みが形成されるのを防止できる。また、本
参考例では、中間摺動部材27f(摺接面28c)の直径が大きいが、中間摺動部材27fをアルミニウム、黄銅などのローラ14eの材質よりも硬さが低い材料を用いることで、ローラ同士を直接摺動させる場合との比較では、ヒステリシスの低減効果が十分に得られる。その他の構成および作用効果は、
参考例の第1例および第
4例と同様である。
【0082】
[実施の形態の第
3例]
図14は、本発明の実施の形態の第
3例を示している。本例では、ポケット25の内側に配置されたローラ14fの軸方向端面同士の間部分、および、ポケット25の径方向外側の内側面31と保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14fの軸方向一端面(
図14の上端面)との間部分に、それぞれが玉(球)である中間摺動部材27gが配置されている。
【0083】
ローラ14fは、軸方向両端面の中央部に、それぞれ軸方向に凹んだ、断面円弧形で部分球状の凹部40a、40bを有する。凹部40a、40bは、中間摺動部材(玉)27eの曲率半径よりも大きな曲率半径を有する。ポケット25は、径方向外側の内側面31の円周方向中央部に、径方向外方に凹んだ、断面円弧形で部分球状の凹部41を有する。凹部41は、凹部40a、40bの曲率半径と同じ曲率半径を有する。
【0084】
本例では、中間摺動部材27gは、中間摺動部材27gを挟んで保持器13の径方向に関する両側に配置された、凹部41の内面と凹部40aの内面、および、凹部40bの内面と凹部40aの内面に対して、それぞれの接触状態を点接触として摺接する。このため、摺接部32cの接触面積を十分に小さくすることができ、摺接部32cに加わる摩擦トルクを十分に低減することができる。その他の構成および作用効果は、
参考例の第1例と同様である。
【0085】
[実施の形態の第
4例]
図15は、実施の形態の第
3例の変形例である、本発明の実施の形態の第
4例を示している。本例では、実施の形態の第
3例と同様に、ポケット25の内側に配置されたローラ14gの軸方向端面同士の間部分、および、ポケット25の径方向外側の内側面31と保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14gの軸方向一端面(
図15の上端面)との間部分に、それぞれが玉である中間摺動部材27gが配置された構成を採用している。ただし、本例では、中間摺動部材27gと摺接する、ローラ14gの軸方向両端面、および、ポケット25の径方向外側の内側面31に、それぞれの断面形状が三角形状である、円すい状の凹部42a、42b、43が形成されている。
【0086】
本例では、中間摺動部材27gと凹部42a、42b、43との摺接状態をそれぞれ線接触にすることができるため、摺接部32dの接触面積を十分に小さくすることができる。その他の構成および作用効果は、
参考例の第1例および
実施の形態の第
3例と同様である。
【0087】
[実施の形態の第
5例]
図16は、実施の形態の第
3例の変形例である、本発明の実施の形態の第
5例を示している。本例では、実施の形態の第
3例と同様に、ポケット25の内側に配置されたローラ14gの軸方向端面同士の間部分、および、ポケット25の径方向外側の内側面31と保持器13の径方向に関して最も外側に配置されたローラ14gの軸方向一端面との間部分に、それぞれが玉である中間摺動部材27gが配置された構成を採用している。ただし、本例では、ポケット25の径方向外側の内側面31に、部分球状や部分円すい状などの凹部は形成せずに、
参考例の第
4例および第
5例と同様に、略円柱状の中間摺動部材27fが設けられている。
【0088】
本例では、ポケット25の径方向外側の内側面31に、摺接に伴う摩耗に起因した凹みが形成されることを防止できる。その他の構成および作用効果は、
参考例の第1例および
実施の形態の第
3例と同様である。