【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例を図に従って説明する。
図1及び
図2において、温風暖房装置1の筐体3は、後述するマイクロ波発振器7から出力されるマイクロ波を反射して外部への漏洩を規制可能なステンレス板、アルミニウム板若しくスチール板等の金属板を長方体形状に折曲し、該筐体3内の空気流方向中間部には取付け板5が内部を区画するように取り付けられる。該取付け板5には後述するマイクロ波発振器7のマイクロ波出力部7aを挿通して空気流方向下手側に突出させる透孔5aが形成される。また、取付け板5の図示する後方側端側には空気を流通させる開口5bが形成される。
【0012】
なお、マイクロ波出力部7aから出力されるマイクロ波が開口5bを介して後述する電動ファン11側へ伝播して筐体3外へ漏洩するのを防止するため、開口5bに後述する第1及び第2シールド体13,23と同様に多数の孔が設けられた金属製のシールドを設ける構成としてもよい。
【0013】
上記取付け板5の空気流方向上手側にはマグネトロン管型またはソリッドステート型で、2.45GHz以上のISM周波数のマイクロ波を発振出力するマイクロ波発振器7が、そのマイクロ波出力部(アンテナ)7aが透孔5aを挿通して図示左側へ突出するように取り付けられる。
【0014】
図は従来公知のマグネトロン管型のマイクロ波発振器7を示し、該マイクロ波発振器7はマグネトロン管7eの陰極が接続されるボックス状のフィルターケース7bと、マグネトロン管7eの陰極及び陽極側にそれぞれ設けられた磁石の磁気回路を形成し、両側面が開口した枠形状のヨーク7cと、該ヨーク7c内におけるマグネトロン管7eの陽極外周面に軸線直交方向へ延出し、相互間に間隙を設けて積層される多数の冷却フィン7d等とから構成される。該マイクロ波発振器7は従来公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0015】
筐体3の空気流上手側には集塵フィルター9が筐体3の図示右端の開口を覆い、着脱可能に設けられ、該集塵フィルター9の図示左側に応じた筐体3内には電動ファン11が設けられる。該電動ファン9の図示左側に応じた筐体3内には第1シールド体13が、各端縁が筐体3の内面に密着して隙間のない状態で取り付けられる。
【0016】
該第1シールド体13はマイクロ波を反射可能なステンレス、アルミニウム、スチール等の金属板、金属シートにマイクロ波発振器7から出力されるマイクロ波の1/4波長より小さい内径の孔が多数形成され、電動ファン11の駆動に伴って筐体3内に流入された空気を通過させると共にマイクロ波発振器7から出力されるマイクロ波が筐体3外へ漏洩するのを規制する。
【0017】
上記第1シールド体13の空気流方向下手側にはマイクロ波発振器7の少なくとも冷却フィン7dを通過して上記開口5bへ延びる空気流路15が設けられる。該空気流路15は第1シールド体13の孔を通過した空気をヨーク7c内の冷却フィン7dに通過させた後に開口5bから後述するマイクロ波吸収発熱体21側へ流出させるように案内する。そして空気は冷却フィン7dを通過する際に放熱されるマグネトロン管7eの熱により予熱される。なお、空気流路15は上記冷却フィン7dの他にフィルターケース7bを含めて空気を案内する構成であってもよい。
【0018】
上記取付け板5の空気流方向下手側に応じた筐体3の内面には発泡ウレタン樹脂等の断熱材19が適宜の厚さで取り付けられる。そして上記取付け板5の図示左側に応じた筐体3内にはマイクロ波吸収発熱体21が空間全体に亘って取り付けられる。該マイクロ波吸収発熱体21は担持材をセラミックス材とし、これに酸化スラグ、フェライト、パーマロイ等の電磁波吸収材が混合され、多数の貫通孔21aを設けて焼成することにより形成される。
【0019】
マイクロ波吸収発熱体21における電磁波吸収材の含有量としては20〜90wt/%の範囲で適宜に設定すればよく、例えば含有量を20wt/%として場合には約100〜110度前後、40wt/%として場合には約130〜160度前後、60wt/%とした場合には210〜270度前後、80wt/%とした場合には280〜340度前後、90wt/%とした場合には300〜430度前後に発熱する。
【0020】
該マイクロ波吸収発熱体21はマイクロ波発振器7のマイクロ波出力部7aから出力されるマイクロ波を、混合された電磁波吸収材により吸収する際に熱エネルギーへ変換し、その熱エネルギーにより坦持体としてのセラミックスを加熱して貫通孔21a内を通過する空気を加熱することにより温風化する。
【0021】
筐体3の空気流方向下手側には第2シールド体23が、各端縁が筐体3の内面に密着して図示左端開口を覆うように取り付けられる。第2シールド体23は第1シールド体13と同様にマイクロ波を反射可能なステンレス、アルミニウム、スチール等の金属板、金属シートにマイクロ波発振器7から出力されるマイクロ波の1/4波長より小さい内径の孔が多数形成され、マイクロ波吸収発熱体21の貫通孔21aを通過して加熱された温風を筐体3外へ放出可能にさせると共にマイクロ波吸収発熱体21を透過したマイクロ波が筐体3外へ漏洩するのを規制する。
【0022】
また、上記集塵フィルター9の近傍にはサーミスタ、熱電対、IC温度センサ等の温度センサ25が取り付けられ、該温度センサ25は温風暖房装置1に流入される空気の温度を検知し、該温度センサ25からの検知信号に基づいてマイクロ波発振器7をONーOFF制御することにより室内を所望の温度に保たせる。
【0023】
なお、筐体3の外面には操作盤が設けられ、該操作盤には制御手段が内蔵されると共に電源スイッチ、温度設定ボタン、設定温度表示部、温度表示部(いずれも図示せず)等が設けられる。制御手段は電源スイッチがON操作された状態で温度設定ボタンにより所望の温度が設定されると、上記温度センサ25からの検知信号に基づいてマイクロ波発振器7をON−OFF制御して室内の温度を一定に保つ。
【0024】
また、筐体3の空気流方向下手側の端部(温風吹き出し口)には角度調整可能なルーバ−27が設けられ、送出される温風の吹き出し角度が可変される。
【0025】
上記のように構成された温風暖房装置1の作用を説明する。
電源スイッチがON操作されると、電動ファン11を駆動して集塵フィルター9を介して空気を筐体3内に流入させた後に第シールド体13の孔を通過させる。そして空気は空気流路15により冷却フィン7d間を通過した後に開口5aを介してマイクロ波吸収発熱体21側の筐体3内へ案内される。
【0026】
そしてマイクロ波吸収発熱体21側の筐体3内へ送出された空気は該マイクロ波吸収発熱体21の貫通孔21a内を通過した後に第2シールド体23の孔を通過して筐体外へ送出される。
【0027】
上記のように筐体3内に流入された空気がマイクロ波吸収発熱体21の貫通孔21aを通過する際に、マイクロ波発振器7のマイクロ波出力部7aからマイクロ波がマイクロ波吸収発熱体21側へ出力されると、マイクロ波はマイクロ波吸収発熱体21に対して直接、または筐体3の内面に反射しながら到達し、そのマイクロ波材に吸収されて変換される熱エネルギーにマイクロ波吸収発熱体21が加熱されることにより空気が加熱されて温風に生成される。(
図3参照)
【0028】
また、マイクロ波発振器7のマグネトロン管7eはマイクロ波の発振出力時に高温化し、その熱が冷却フィン7dを介して放熱される。このため、筐体3内に流入された空気が冷却フィン7d間を通過する際に、冷却フィン7dから放熱されるマグネトロン管7eの熱により予熱され、マイクロ波吸収発熱体21に導入される空気を短時間で、かつ少ない消費電力で昇温し、温風を効率的に生成させる。(
図4参照)
【0029】
なお、冷却フィン7d間に対して空気を通過させることによりマグネトロン管7eを効率的に冷却し、マイクロ波出力を安定化させると共にマグネトロン管7eの寿命を長くすることができる。
【0030】
そして温風暖房装置1による暖房により室内温度、従って筐体3内に流入される空気温度が予め設定された温度に達して温度センサ25から検知信号が出力されると、制御手段は温度センサ25からの検知信号に基づいてマイクロ波発振器7をOFF制御してマイクロ波の発振出力を停止し、マイクロ波吸収発熱体21による空気の加熱を中断させる。
【0031】
このとき、マイクロ波吸収発熱体21における電磁波吸収材の担持材がセラミックスであるため、その蓄熱作用による余熱により貫通孔21aを通過する空気の加熱を持続させることができ、急激な温度低下を回避し、次に電源がONされるまでの間隔を長くすると共に設定温度までに回復する際の消費電力を低減することができる。(
図5参照)
【0032】
なお、
図5に示す例は温風の吐出口における温度変化を示し、その際の設定条件は以下の通りである。
吐出口初期温度:17.7℃
マグネトロン出力:670W
消費電力:938W
消費電力(送風機電力32Wを含む):267W/h
吐出風量:約8m/s
【0033】
本実施例は、筐体3内に流入した空気をマイクロ波発振器7の冷却フィン7d間を通過させて予熱することによりマイクロ波吸収発熱体21の貫通孔21a内を通過する空気を短時間で、かつ少ない消費電力で効率的に昇温させて暖房することができる。
【0034】
また、マイクロ波吸収発熱体21における電磁波吸収材の坦持体をセラミックス材とすることによりマイクロ波発振器7の発振停止時にマイクロ波吸収発熱体21が急激に温度低下するのを防止して加熱状態を持続することができ、貫通孔21a内を通過する空気を有効に昇温させると共にマイクロ波発振器7の発振間隔を長くして電力の消費を低減することができる。
【0035】
上記説明は、マグネトロン管型のマイクロ波発振器7により説明したが、マイクロ波発振器7をソリッドステート型とした場合であっても、マイクロ波の発振出力により半導体素子が高温化するため、半導体素子を収容する金属製シールドボックスの外面に多数の冷却フィンを設け、冷却フィン間に対して流入された空気を通過させることにより予熱し、マイクロ波吸収発熱体21の貫通孔21a内を通過する空気を効率的に昇温させる構成としてもよい。
【0036】
上記説明は、空気流路15内に少なくとも冷却フィン7dが位置するようにマイクロ波発振器7を取り付けて流入される空気の一部を予熱する構成としたが、流入される空気の全体が冷却フィン7dを通過するように空気流路15を構成してもよい。
【0037】
上記説明は、筐体3においてマイクロ波発振器7、集塵フィルター9、電動ファン11、マイクロ波吸収発熱体21等を直列状(同一軸線状)に配置して温風暖房装置1を構成したが、本発明においてはこれらを同一軸線上に配置する必要はなく、例えば集塵フィルター9、電動ファン11を下部に配置すると共にマイクロ波発振器7、マイクロ波吸収発熱体21を上部に配置した構成であってもよい。