(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の計測装置10を説明するための図である。
計測装置10は
図1(a)に示すように容器に入れた液体1を撮影する。液体1は、水分を含んでおり、溶液或いは水だけでなる液体等であって例えば量が数マイクロリットルから数十マイクロリットルである。液体1は、
図1(a)に示すように形が粒状である他、
図1(b)に示すように容器の底に薄く層状に広がったもの、また後述するように底から口へ向けて溜まったものでもよい。なお、
図1の二点鎖線は容器の底を表している。
【0014】
計測装置10は画像データから液体1の量(以下、液量)を計測する。画像データとして、近赤外線による静止画を利用する。
図1の(c)と(d)とは近赤外線の水に対する特性を説明するための概略図であり、
図1(c)では左側から右側へ深くなる凹部に水が溜まった状態を表していて、
図1(d)は(c)を上方から撮影した近赤外画像を模式的に表しており、濃淡が浅い箇所から深い箇所へ次第に濃くなって、明るさが変化する。
【0015】
計測装置10は、このような濃淡の階調で表した画像データの内、液体1の領域に表れる明るさを数値化して、液量を求める。
【0016】
(容器)
図2と
図3とは、容器の構成例としてマイクロプレート20を示す図である。各図で(a)はマイクロプレート20の正面図、(b)は平面図、(c)は(b)のA−A線又はB−B線に沿ったマイクロプレート20の断面図である。これらの図に示すマイクロプレート20を用いて、以下、実施形態を説明する。
【0017】
マイクロプレート20は、ポリカーボネートなどの樹脂を成型して透明に構成されており、上方に口を開けたウェル200が縦と横に並んで設けられている。それぞれのウェル200は同じ形に構成されていて、下方へ延びた筒状の側面部210と、最深部を構成する底部220と、を備えている。
【0018】
図2に示すマイクロプレート20は、ウェル200の口が円形に形成されており、底部220は半球面状に下方へ膨らんだU字底に形成されている。また、縦に8個、横に12個のウェル200が所定の間隔で並んで、計96個のウェル200を設けている。ウェル200の口のまわりは平らな面として形成されている。ウェル200がこの平坦部を介して隣のウェル200とつながって、プレート上面部21を構成する。プレート上面部21は、平面視で輪郭を矩形に形成されていて、プレート上面部21の周縁から下方へプレート側面部22が延び、プレート側面部22の下端側は横に突出した着地部23として構成されている。
【0019】
図3に示すマイクロプレート20は、ウェル200の口が矩形に形成されており、また底部220は平らに形成されている。このマイクロプレート20では、縦と横に延びた仕切り部でウェル200が形成されていて、各ウェル200は側面部210を兼ねた仕切りを介して隣接し、縦に12個、横に16個のウェル200が所定の間隔で並んで、計192個のウェル200を設けている。
【0020】
以下、
図2と
図3とに示すマイクロプレート20を区別する場合、
図2のマイクロプレート20を96ウェルのマイクロプレート20と呼び、
図3のマイクロプレート20を192ウェルのマイクロプレート20と呼ぶ。
【0021】
さらに192ウェルのマイクロプレート20は96ウェルのマイクロプレート20と比べるとウェル200の縦と横の寸法を小さく設定されている。また、この192ウェルのマイクロプレート20も、プレート上面部21の輪郭を矩形に形成され、その周縁から下方へ延びたプレート側面部22を備え、プレート側面部22の下端側が着地部23として外側に突出している。192ウェルのマイクロプレート20は、16列のウェル200の並びに沿った長辺側の寸法が、96ウェルのマイクロプレート20の短辺側の寸法とほぼ等しく形成されている。
【0022】
(計測装置)
図4は計測装置10を示すブロック図である。計測装置10は、液体1を撮影する撮像部11と、画像データから液量を計測する画像処理部12と、を備えている。
【0023】
(撮像部)
撮像部11は、液体1を入れたマイクロプレート20を上から撮影し、マイクロプレート20の平面画像を取得する。撮像部11は、近赤外のカメラで、マイクロプレート20に入れた液体1を濃淡の明暗度のある画像データとして、例えば256階調のグレースケールで取得する。撮像部11は、マイクロプレート20を写し、その際に、液体1の上からの画像として、液体1の全体が収まるよう、また液体1を入れたウェル200の輪郭を含めて撮影する。
【0024】
(画像処理部)
画像処理部12は、画像データから液体1の領域を特定する液領域抽出部12Aと、液体1の領域を数値に変える数値化部12Bと、この数値に基づいて液量を算出する換算部12Cと、を備えている。
【0025】
(液領域抽出部)
液領域抽出部12Aは、ウェル200の底部220にある液体1の形状を特定する。液領域抽出部12Aは、画像データから液体1の領域を規定する境界を検出する。96ウェルのマイクロプレート20では、例えば分注した量に比べてウェル200の容積や底面積が大きいと液体1が底部220で粒状の形を成して、
図5(a)に示すような液体1の像が底部220の一部を占めて表れる。なお、液体1の像は、256階調の全域或いはその一部の範囲(例えばNa〜Nb)の輝度値を利用して作成されている。液領域抽出部12Aは、
図5(b)に示すように、液体1の周縁を検出する。液領域抽出部12Aは、撮像部11からの画像データを2値化し境界を検出したり、パターン認識で境界を特定したり、画像データを走査して特定する。
【0026】
96ウェルのマイクロプレート20と比べてウェル200の縦と横の寸法が小さく設定された192ウェルのマイクロプレート20では、分注した液体1が底部220の全体に広がって或いは底部220から所望の高さまで溜まって画像データに表れると、この全体に広がった液体1の周縁とウェル200の側面部との間が薄く表れ、液体1の周縁を検出する。検出後、液体1の領域をラベリングする。
【0027】
なお、96ウェルのマイクロプレート20で、ウェル200が表面処理されて濡れ性を有して、液体1が底部220の全体に広がって薄くなる場合には、層状の液体1の周縁を検出する。
【0028】
(数値化部)
数値化部12Bは、濃淡で表れる液体1の領域の明るさを数値化する。例えばラベリングした領域の各画素の座標(x,y)の平均から、
図6(a)に示すように重心の座標(xc、yc)を求め、これを中心Cとして測定領域Rを特定する。測定領域Rは、中心Cから所定の範囲に含まれる複数の画素であり、例えば平面視したウェル200の底部220の形と相似した形の範囲内を対象とする。96ウェルのマイクロプレート20であれば、
図6(a)に一点鎖線で示す円が中心Cから10.5ピクセル離れた位置を表しており、この円より内側に設けられる、
図6(b)に示す画素が測定の対象として取り扱われる。また、192ウェルのマイクロプレート20であれば、3ピクセルの矩形の領域内の画素が測定の対象となる。測定領域内の画素の明るさ(輝度値)の平均を求め、これを測定した液体1の明るさ(輝度情報Iv)とする。
【0029】
(換算部)
換算部12Cは液体1の輝度情報Ivと計測用の参照情報13とから液量Vを求める。画像処理部12が、マイクロプレート20に分注する液体1に関連して、参照情報13を備えており、この参照情報13は、
換算用参照情報として、ウェル200に入れた液体1の輝度情報Ivから液量Vを換算するよう利用し、
図7に示す一次式f(x)として構成されている。この式は液量と含まれる薬などの成分とウェル200の形状に応じて作成されていて、例えば96ウェルのマイクロプレート20と192ウェルのマイクロプレート20とでは利用する参照情報13が異なる。
【0030】
個々のウェル200に分注した液体1に対して液量を換算するように参照情報13を用い、成分(薬)が同じでさらに同量の液体1を全てのウェル200に分注したマイクロプレート20を対象とする場合には共通の参照情報13を利用する。また、液体1に含まれる成分(薬)や量が異なる液体1を分注したウェル200には、他のウェル200とは異なる参照情報13を作成して液量を換算する。このような参照情報13が予め画像処理部12に保存されている。
【0031】
(液量の補正)
画像処理部12は、換算部12Cで得た液量Vを補正する補正部を備えてもよい。
補正部は、画像データを基に液量Vを修正する。先ず、画像データで液体1の領域に相当する各部の高さから平均の高さを求める。例えば、計測対象の液体1がウェル200の最深部から所定の高さまで溜まったもので、
図8(a)に示すように撮像部11に対向する液面が傾いて広がっているときには、傾斜した液面の平均の高さhavを輝度値の平均値
(第1補正用輝度情報)として求める。また、計測対象の液体1が粒状であるときも、撮像部11に対向する液体1の表面の平均の高さhavを求める。なお、
図8の(a)と(b)とに示す破線は平均の高さhavを表している。次に、平均した高さhavに応じた係数aを
、第1修正参照情報としての図8(c)に示す一次式g(x)から求め、これを換算部12Cで得た液量Vに掛けて、修正値Vaを求めることができる。これにより、高くなったり低くなったり、また広がる範囲等も様々に変わる液体1の形態に応じた、液量Vaを得ることができる。
【0032】
また、補正部は、液体でない領域(以下、非液体領域と呼ぶ。)を、真の液体の領域から離して、本来、求めるべき液体だけの量が求まるよう、液量Vを修正する。
図9で(a)はウェル200の平面画像の概略図であり、(b)は(a)を2値化した画像の概略図である。(b)には、液体1の領域内に、明るい空白の領域(以下、空白領域と呼ぶ。)が含まれている。
図9(a)で液体1と捉えられる領域の全体、つまり周縁より内側の面積S1と、
図9(b)で空白領域を除いた黒色で表れる液体1の領域の面積S2とを比較し、その差分
(S1−S2)が所定値以上であるか判断する。差分が大きいときは、空白領域を除いて、輝度値の平均を求める。この平均値を輝度情報(Iv)
、つまり第2補正用輝度情報として用いて計測用の参照情報
(第2修正参照情報)から液量Vを再度計算する。これにより気泡を含んだ液体1の液量Vを求めることができる。
【0033】
また、
図9で(c)はウェル200の平面画像の概略図であり、(d)は(c)を2値化した画像の概略図である。(d)は、所定の輝度値より大きい画素の領域(以下、濃厚領域と呼ぶ。)を除いて、2値化した画像を表している。
図9(c)で液体1と捉えられる領域の全体の面積S3と、
図9(d)で濃厚領域を除いた黒色で表れる液体1の領域の面積S4と比較して、その差分
(S3−S4)が所定値以上であるときには、濃厚領域を除いて、輝度値の平均を求める。この平均値を輝度情報(Iv)
、つまり第3補正用輝度情報として用いて参照情報
(第3修正参照情報)から液量Vを再度計算する。これにより、容器の影などが液体1と合わさった画像データに対応することができる。
【0034】
(ウェル領域)
画像処理部12は、液体1の領域を特定する前に、ウェル200の領域を特定してもよい。
ウェル領域抽出部が、画像データに表れるウェル200の口の輪郭を検出する。ウェル領域抽出部は、96ウェルのマイクロプレート20であれば円形の輪郭を特定し、196ウェルのマイクロプレート20であれば矩形の輪郭を特定する。ウェル領域抽出部は、画像データを2値化して境界を検出したり、パターン認識(マッチング)などで境界を検出したり、画像中のウェル200を特定する。画像データには、複数のウェル200が表れており、それらのウェル200を個々に特定する。画像中の個々のウェル200の領域をラベリングする。
【0035】
また、画像処理部12は、上記の液体1の領域やウェル200の領域の特定の前に、ノイズ除去などの前処理を行ってもよい。
【0036】
コンピューターなどの電子計算機が、ハードディスクなどに記録されたプログラムを実行することで画像処理部として機能し、撮像部から取得した画像データを一時的にメモリなどに保持して、或いは記憶装置に画像データを保存して、画像処理を行う。
【0037】
以上のように構成された計測装置10では、先ず撮像部11が、液体1を全てのウェル200に分注したマイクロプレート20を撮影して、マイクロプレート20の平面画像のデータ(静止画)を取得する。次に、画像処理部12が、画像データから全ウェル200内の液体1の形状を個々に特定する。その際に個々の液体1の領域の中心Cを求め、各ウェル200の測定領域Rを特定する。各測定領域Rの画素のそれぞれ輝度値の平均値を求め、各ウェル200の液量を換算式から算出する。
【0038】
第1実施形態の計測装置10によれば、近赤外画像を用いることで、従来のプレートリーダーによる計測と比べて分注した液体1を破壊せずに、つまり容器に分注した際と変わらぬ状態で、液量を計測できる。また、計測装置10は、従来のプレートリーダーが液体1を個別に計測することと比べて、画像を用いて全ての液体1(以下、全量と呼ぶ。)の計測を効率良く行うことができる。これにより、計測装置10は、複数の液体1を撮影した画像データを取り扱うことで、製造装置などに組み込んで使用することもできる。
【0039】
(第2実施形態)
図10は本発明の第2実施形態の計測装置10Aを示すブロック図である。
第2実施形態の計測装置10Aは、第1実施形態の計測装置10と比べて、画像処理部12が液量の適否を判断する判断部12Dを備えて、検査装置として構成されている。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付してそれらの説明は省略する。
【0040】
(判断部)
判断部12Dは、予め設定された閾値などの検査用情報14を用いて、例えば所定の量以上であるか、または所定の範囲に収まるかなど、判断する。判断部12Dは全てのウェル200の液体1に対して判断を行う。
【0041】
第2実施形態の計測装置10Aでは、撮像部11が、液体1を全てのウェル200に分注したマイクロプレート20を撮影し、マイクロプレート20の平面画像のデータ(静止画)を取得する。画像処理部12が画像データから全ウェル200内の液体1の形状を個々に特定する。その際、個々の液体1の領域の中心Cを求め、各ウェル200の測定領域Rを特定する。各測定領域Rの画素の輝度値の平均値を求め、各ウェル200の液量を換算式から算出する。さらに、計測装置10Aでは、それぞれのウェル200の液体1に対応した検査用情報14を用いて、各ウェル200に分注した液体1が適量であるか判断を行う。
【0042】
計測装置10Aによれば、マイクロプレート20を撮影した画像データを処理して、マイクロプレート20に分注された全ての液体1(全量)を検査し、撮影したマイクロプレート20の良否を判断することができる。
【0043】
(実施例1)
図11は本発明の実施例1の検査装置100を示す図である。
検査装置100は、前述の計測装置10Aに対応してマイクロプレート20の全量を検査する装置であって、検査対象として複数のマイクロプレート20を取扱い、良品と不良品のマイクロプレート20を自動で分けるように構成されている。以下の説明では、96ウェルのマイクロプレート20を取り扱う場合を前提に説明を進めるが、192ウェルのマイクロプレート20用に構成されてもよい。
【0044】
検査装置100は、検査対象の複数のマイクロプレート20を入れる検査前収容部111Aと、検査後で適量と判断されたマイクロプレート20を入れる良品収容部111Bと、適量でないと判断されたマイクロプレート20を入れる不良品収容部111Cと、検査前収容部111Aから良品収容部111B又は不良品収容部111Cへマイクロプレート20を搬送する搬送部120と、移動中のマイクロプレート20を照らす照明部130と、移動中のマイクロプレート20を撮影する撮像部140と、撮像部140や搬送部120を制御すると共に画像データを処理して液量の適否を判断する制御部150と、を備えている。
【0045】
(検査前収容部)
図12の(a)と(b)とは実施例1の検査前収容部111Aを示す断面図である。検査前収容部111Aはマイクロプレート20を積み重ねて収容することができるように構成されている。検査前収容部111Aは、上端と下端に口(以下、開口部115Aと呼ぶ。)を開けて筒型に形成されていて内側の空間に96ウェルのマイクロプレート20を入れることができる収容本体部115と、この収容本体部115の下端の開口部115Aに設けられた載置片116と、を備えている。
【0046】
収容本体部115はマイクロプレート20の上下方向の移動をガイドする。載置片116は、収容本体部115の中で積み重ねたマイクロプレート20の内、最も下に位置するマイクロプレート20を下から支える。載置片116は、プレート側面部22の内、短辺側の着地部23をそれぞれ支えるように、マイクロプレート20の長手方向に距離を置いて二つ設けられており、載置片116はそれぞれマイクロプレート20を載せる面を備えていて、収容本体部115の内側へ突出している。
【0047】
この載置片116はマイクロプレート20の短辺に沿った軸まわりに回転可能に設けられていて、
図12(a)に示すようにストッパー115Bに当たって水平に延びた状態に保持され、マイクロプレート20を上側の面に載せることができる。これにより、載置片116は、マイクロプレート20が開口部115Aの通過することを規制する。
図12(b)に示すように載置片116が回転して開口部115Aを大きく開けると、マイクロプレート20は検査前収容部111Aの外に出ることができる。
【0048】
(良品収容部と不良品収容部)
良品収容部111Bと不良品収容部111Cとは、検査前収容部111Aと同様に構成されており、収容本体部115と、下の開口部115A側に設けた一対の載置片116と、を備えている。開口部115Aの下方からマイクロプレート20を入れる際には、マイクロプレート20を外に出す上記操作と逆の操作を行う。先ず、載置片116が水平に倒れた状態から立ち上がった姿勢に変わり、マイクロプレート20が収容本体部115の内側へ入ることができる。そして、載置片116が、そのマイクロプレート20の下で水平に延びた状態に戻り、マイクロプレート20が載置片116に載る。これにより収容が完了する。
【0049】
検査前収容部111Aと良品収容部111Bと不良品収容部111Cとは、距離を置いて、横に並んでおり、以下の説明では、検査前収容部111Aと良品収容部111Bと不良品収容部111Cとをまとめて収容部110と呼ぶ場合がある。
【0050】
(搬送部)
図13は実施例1の搬送部120を示す部分斜視図である。搬送部120は、収容部110より下方へ離れた位置でマイクロプレート20を水平方向へ移動させる横スライド部121と、収容部110と横スライド部121との間でマイクロプレート20を上下方向へ移動させる昇降部122と、を備えている。
【0051】
(横スライド部)
横スライド部121は、マイクロプレート20のプレート側面部22の内、長辺側の着地部23をそれぞれ載せるレール部121A,121Bを備えている。各レール部121A,121Bは、検査前収容部111A側から良品収容部111B又は不良品収容部111C側へマイクロプレート20を搬送するよう直線状に延びており、外側を高く内側を低くした段差状の断面を有し、内側の平らな部位121Cにマイクロプレート20の着地部23を載せるように構成されている。
【0052】
さらに横スライド部121は、一方のレール部121A側からマイクロプレート20の進行方向と直交する横方向(レール部121Bが横に並ぶ方向)へ延びたアーム部121Dと、アーム部121Dの端部121Eを取り付けたベルト部121Fと、ベルト部121Fを回転する図示省略するモーター等の駆動部と、を備えている。ベルト部121Fの回転に伴ってアーム部121Dが移動し、その際マイクロプレート20の短辺側のプレート側面部22を押す。これにより、マイクロプレート20が下流側へ移動する。
【0053】
横スライド部121は、レール部121A,121Bの全長に亘って一組のアーム部121Dとベルト部121Fとでマイクロプレート20を押して横へスライド移動させる構成に限らず、レール部121A,121Bに沿った横スライドの範囲を分けて、アーム部121Dとベルト部121Fとを例えば二組備えてもよい。
【0054】
検査前収容部111Aと良品収容部111Bと不良品収容部111Cのそれぞれの下方で、二つのレール部121A,121Bは離れていて、それらの間が空間として例えば開口や穴121Gなどとして構成されている。なお、レール部121A,121Bは、その長手の途中部位等を連結してつながっていてもよい。
【0055】
(昇降部)
昇降部122は、二つのレール部121A,121Bの間(穴121G)を通って上下に移動するステージ122Aと、このステージ122Aを上端に取り付けたシャフト122Bと、シャフト122Bの長手方向を上下の方向に沿わせてその長手方向へ移動させるモーターなどの駆動部122Cと、を備えている。昇降部122は、検査前収容部111Aと良品収容部111Bと不良品収容部111Cのそれぞれの下方に設けられている。
【0056】
図14(a)から(c)は昇降部122によるマイクロプレート20のレール部121A,121Bから良品収容部111B又は不良品収容部111Cへの移動を説明するための図である。ステージ122Aが上面でマイクロプレート20の底面を支えるように構成されており、
図14(a)に示すようにステージ122Aがレール部121A,121Bの下に配置されている。
図14(b)に示すように、ステージ122Aは駆動部122Cによって上昇してマイクロプレート20の底面に当たり、ステージ122Aがさらに上昇することで、
図14(c)に示すようにマイクロプレート20がレール部121A,121Bから離れる。マイクロプレート20が上昇して良品収容部111B内又は不良品収容部111Cに収容された後、ステージ122Aを元の位置まで戻す。また、上記の収容動作と逆に、検査前収容部111Aからレール部121A,121Bへマイクロプレート20を移動させることができる。
【0057】
昇降部122は、好ましくはマイクロプレート20を収容部110の外に出したり中に入れたりする際に、載置片116を起こすように構成されている。
図15(a)は昇降部122を説明するための図であり、
図13で矢印Dの方向から見た図である。昇降部122は、上記の構成に加えて、載置片116を回転させるための爪部122Dと、爪部122Dを固定した爪取付部122Eと、爪取付部122Eより下方へ延びたシャフト122Fと、を備えている。なお、
図13では爪部122Dなどを省略している。
【0058】
爪部122Dは、収容部110の開口部115Aに設けた一対の載置片116にそれぞれ当たるように、距離を置いて一対設けられている。これらの爪部122Dは、好ましくは、ステージ122Aやステージ122Aに載せたマイクロプレート20より先に収容部110に当たるよう、これらより上方へ突き出ている。
【0059】
シャフト122Fは、上記の駆動部122Cによって上下動することができ、ステージ122A用のシャフト122Bと中心を合せてその外側に設けられている。また、シャフト122Bがシャフト122Fより上方へ移動して、ステージ122Aが爪部122Dより高い位置に保持されるように構成されている。ここで、
図15(b)は、昇降部122が検査前収容部111Aに侵入した状態を示す図であり、また検査前収容部111Aの下部を断面で表すと共にマイクロプレート20を一点鎖線で表している。この図に示すように、マイクロプレート20がステージ122Aに載り更に載置片116が爪部122Dによって立ち上がった状態でステージ122Aが下がるとマイクロプレート20を外に出すことができる。さらにマイクロプレート20をステージ122Aに載せた状態で下降させることで、マイクロプレート20がレール部121A,121Bに移ることができる。
【0060】
(照明部)
照明部130は、搬送部120の下方に設けられていて、レール部121A,121B上のマイクロプレート20へ向けて近赤外域の波長の光を出射する。本例では、赤外LEDバー131から出射された光をシンドリカルレンズ132と表面反射ミラー133とを介して、マイクロプレート20を下方から照らすように構成されている。
【0061】
(撮像部)
撮像部140は、前述の撮像部11に対応し、ラインセンサー141と、テレセントリックレンズ142と、を備えている。撮像部140は、搬送部120によって移動中のマイクロプレート20を撮影し、照明部130からの近赤外光でマイクロプレート20を透過した像を取得する。
【0062】
なお、撮像部140は、ラインセンサー141に代えて、2次元センサ等の他の撮像素子を用いたり、マイクロプレート20を分割して撮影してもよい。例えば、撮像部140と照明部130とを二組用いて、一方がマイクロプレート20の半分を撮影し、他方が残りを撮影して、それぞれの撮像部140で取得した画像から各液体1の領域をそれぞれ特定することもできる。また照明部130が横スライド部121の上方からマイクロプレート20を照らして、撮像部140が、反射した光を受けて、マイクロプレート20の像を取得するように構成してもよい。
【0063】
また、図中の符号143AはZステージ、143Bはθステージ、143Cはゴニオステージであり、焦点調整用に位置を変えることができ、撮像部140はゴニオステージ143Cから延びたアーム143Dに把持されている。
【0064】
(制御部)
制御部150は搬送部120、撮像部140、照明部130を制御する制御本体部151に加えて、撮像部140で取得した画像データを処理する画像処理部12を備えている。画像処理部12は、画像データからマイクロプレート20の全ての液体の量を計測する。画像処理部12は、256階調の白黒の濃淡で表された画像データから0.5〜50マイクロリットルの量を計測する。また、画像処理部12は、検査用情報14を基に分注した液体1が適量か判断する。さらに、制御本体部151は、全量の良否を判断した結果に基づいて、マイクロプレート20を所望の収容先へ移動させるよう、搬送部120を制御する。
【0065】
以上のように構成された検査装置100は、マイクロプレート20を検査前収容部111Aからレール部121A,121Bに移した後、マイクロプレート20をレール部121A,121B上でスライドさせる過程で撮像部140によってマイクロプレート20の画像データを作成する。画像処理部12が画像データから全量の検査を行う。検査結果が良好であれば、マイクロプレート20は良品収容部111Bの下方に配置された昇降部122によって持ち上げられて、良品収容部111Bに収められる。液量が適量でないマイクロプレート20は、不良品収容部111Cの下方に配置された昇降部122によって持ち上げられて、不良品収容部111Cに収められる。検査前収容部111A内の複数のマイクロプレート20が、順次、搬送部120によって搬送され、個々に検査されて良品と不良品とに自動で分けられる。
【0066】
検査装置100によれば複数のマイクロプレート20の全量の検査を自動で行える。
【0067】
(実施例2)
図16は本発明の実施例2の検査装置100Aを示す図である。検査装置100Aは、検査対象として96ウェルのマイクロプレート20と192ウェルのマイクロプレート20とを取り扱うことができるように構成されている。実施例1と同様の構成には同じ符号を付してそれらの説明は省略する。
【0068】
検査装置100Aは、ウェル200の数が異なるマイクロプレート20毎に、検査前収容部111Aと良品収容部111Bと不良品収容部111Cとを備えている。昇降部122が、前述の検査装置100と同様に、収容部111の下方にそれぞれ設けられている。192ウェルのマイクロプレート20の長辺側の寸法が96ウェルのマイクロプレート20の短辺側の寸法にほぼ等しいので、横スライド部121は、2タイプのマイクロプレート20をレール部121A,121Bにそれぞれ載せてスライドさせることができる。
【0069】
操作者が図示を省略するタッチパネルやスイッチなどの選択手段を操作して、2タイプのマイクロプレート20の何れかを選択することで、制御部150が、選択されたマイクロプレート20を検査するように各構成(搬送部120、撮像部140等)を制御する。
【0070】
制御部150は、実施例1と同様に、選択されたマイクロプレート20に関する参照情報13や検査用情報14を用いて、搬送部120による移動途中で各ウェル200の液量を計測し、さらに分注した量の適否を判断し、マイクロプレート20を良品収容部111Bと不良品収容部111Cとへ分けて収容する。
【0071】
検査装置100Aによれば、ウェルの数や形等が異なるマイクロプレート20を検査できる。
【0072】
上記した以外に、本発明は利用することができ、図示例のマイクロプレートの他、ウェル200の数、形、寸法、ウェル200の間隔など異なる形状に構成されたものを対象としたり、複数のウェルを備えたものに限らず、シャーレ等の底にある粒状の液体1やその底に溜まった液体1等を計測したり検査することもできる。
また、近赤外線に対して透過性を有する容器として、例えば自然光に曝されて変化する液体を対象とする場合には液量の計測や検査に使用する波長を除く光に対して遮光性に構成された容器を用いて、液量の計測や検査を行うこともできる。
計測対象の液体は、上記の容量に限らず、光源からの光量などを調整することで範囲を変えて計測することができ、例えば計測装置は、マイクロプレートでウェルの底から口までに及ぶ液量を計測の範囲として構成されたり、上限を100マイクロリットル,150マイクロリットル,200マイクロリットルなどと変えて構成されてもよい。
【0073】
搬送部も上記の構成にかぎるものではなく、横に移動するステージにマイクロプレートを載せて、その移動中を撮影して、計測や検査を行ってもよい。また、固定された台にマイクロプレートを載せて、撮影した画像データから、測定や検査を行うこともできる。