特許第6832002号(P6832002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832002
(24)【登録日】2021年2月3日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ハンダ移送装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/06 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   B23K3/06 L
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-11551(P2017-11551)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2018-118282(P2018-118282A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014834
【氏名又は名称】株式会社ジャパンユニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】垣迫 卓馬
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0179680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状ハンダを導入するためのハンダ導入口と、線状ハンダを導出するためのハンダ導出口と、ハンダ導入口とハンダ導出口とを直線的に結ぶハンダ移送路と、ハンダ移送路に沿って線状ハンダを移送する移送機構とを有するハンダ移送装置において、
ハンダ移送装置は、ボディと、ボディのカバー取付面に着脱自在に取り付けられたカバーとを有し、
ボディには、ハンダ移送路を形成する移送路形成溝がカバー取付面に開口するように形成され、移送路形成溝は、一定の溝幅を有する溝本体部と、カバー取付面に開口する外広がり状をしたハンダ挿入口とを有しており、
カバーには、移送路形成溝内に嵌合して先端が溝本体部の溝底に近接する位置まで延びる移送路形成壁が形成され、この移送路形成壁と溝本体部の溝底との間にハンダ移送路が画定されており
ボディは、移送路形成溝を介して対向面同士が相対する第1溝形成部材と第2溝形成部材とを有し、第1溝形成部材の対向面には、溝本体部の一方の溝壁を形成する平坦面と、ハンダ挿入口の一方の口壁を形成する第1傾斜面とが形成され、第2溝形成部材の対向面には、溝本体部の他方の溝壁を形成する凹段面と、ハンダ挿入口の他方の口壁を形成する第2傾斜面とが形成され、第1溝形成部材の平坦面と第2溝形成部材の凹段面との間に溝本体部が形成されると共に、第1溝形成部材の第1傾斜面と第2溝形成部材の第2傾斜面との間にハンダ挿入口が形成されている、
ことを特徴とするハンダ移送装置。
【請求項2】
カバーの端部に、ハンダ導入口が開口するボディの第1端面を覆うガイドプレートが設けられ、ガイドプレートには、線状ハンダをハンダ導入口に導くハンダガイド部が形成され、ハンダガイド部は、ハンダ導入口に臨むU字状のガイド溝と、ガイド溝の両溝壁に連なる外広がり状をしたガイド壁とからなることを特徴とする請求項1に記載のハンダ移送装置。
【請求項3】
移送機構は、ハンダ移送路を介して相対する移送部駆動ローラー及び移送部従動ローラーを有し、移送部駆動ローラーのローラー軸はボディの外部に突出し、ローラー軸によって移送路駆動ローラーが回転操作可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハンダ移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品をプリント基板にハンダ付けする場合などに、ボビンから引き出された線状ハンダをハンダ付け部位に向けて移送する、ハンダ移送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばハンダ付けロボットで半導体チップ等の電子部品をプリント基板にハンダ付けする場合、ハンダ移送装置が使用される。このハンダ移送装置は、特許文献1に開示されているように、ボビンから引き出された線状ハンダを、ボディに形成されたハンダ移送路内に挿通して、ハンダ移送路の途中に配設された駆動ローラーと従動ローラーとの間に挟持させ、駆動ローラーを駆動、回転させることにより、線状ハンダを、ハンダ供給ノズルを通じてハンダ付け部位に移送するように構成されている。
【0003】
ところが、従来のハンダ移送装置は、ハンダ移送路が、ボディを貫通する孔により形成されていて、この孔からなるハンダ移送路の内部に線状ハンダを挿通するように構成されているため、線状ハンダとして線径が1mm以上のものを使用する場合には、この線状ハンダがある程度の剛性を備えているためハンダ移送路内への挿通が比較的容易であるが、線径が1mm未満、特に0.15−0.3mmというような極細の線状ハンダを使用する場合には、線状ハンダが非常に柔軟で腰が弱いため、ハンダ移送路内への挿通が非常に難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−216426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、線径の小さい線状ハンダを使用する場合でも、ハンダ移送路内への線状ハンダの挿通を簡単且つ確実に行うことができる、使用性に勝れたハンダ移送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明においては、線状ハンダを導入するためのハンダ導入口と、線状ハンダを導出するためのハンダ導出口と、ハンダ導入口とハンダ導出口とを直線的に結ぶハンダ移送路と、ハンダ移送路に沿って線状ハンダを移送する移送機構とを有するハンダ移送装置が、ボディと、ボディのカバー取付面に着脱自在に取り付けられたカバーとを有していて、ボディに、ハンダ移送路を形成する移送路形成溝がカバー取付面に開口するように形成され、移送路形成溝は、一定の溝幅を有する溝本体部と、カバー取付面に開口する外広がり状をしたハンダ挿入口とを有し、カバーは、移送路形成溝内に嵌合して先端が溝本体部の溝底に近接する位置まで延びる移送路形成壁が形成され、この移送路形成壁と溝本体部の溝底との間にハンダ移送路が画定され、ボディは、移送路形成溝を介して対向面同士が相対する第1溝形成部材と第2溝形成部材とを有し、第1溝形成部材の対向面には、溝本体部の一方の溝壁を形成する平坦面と、ハンダ挿入口の一方の口壁を形成する第1傾斜面とが形成され、第2溝形成部材の対向面には、溝本体部の他方の溝壁を形成する凹段面と、ハンダ挿入口の他方の口壁を形成する第2傾斜面とが形成され、第1溝形成部材の平坦面と第2溝形成部材の凹段面との間に溝本体部が形成されると共に、第1溝形成部材の第1傾斜面と第2溝形成部材の第2傾斜面との間にハンダ挿入口が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明において好ましくは、カバーの端部に、ハンダ導入口が開口するボディの第1端面を覆うガイドプレートが設けられ、ガイドプレートには、線状ハンダをハンダ導入口に導くガイド部が形成され、ガイド部は、ハンダ導入口に臨むU字状のガイド溝と、ガイド溝の両溝壁に連なる外広がり状をしたガイド壁とからなることである。
【0010】
また、本発明において、移送機構は、ハンダ移送路を介して相対する移送部駆動ローラー及び移送部従動ローラーを有し、移送部駆動ローラーのローラー軸はボディの外部に突出し、ローラー軸によって移送路駆動ローラーが回転操作可能であることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のはんだ移送装置は、ハンダ移送路が、ボディに形成された移送路形成溝と、カバーに形成された移送路形成壁とによって画定されるため、線状ハンダをハンダ移送路内に挿通させるときは、カバーを取り外した状態で移送路形成溝内に線状ハンダを開口を通じて収容し、そのあとカバーを取り付けて移送路形成壁を移送路形成溝内に嵌合させることにより、移送路形成溝と移送路形成壁とによって画定されるハンダ移送路内に線状ハンダが挿通された状態になる。このため、線径の小さい線状ハンダであっても、ハンダ移送路内に簡単且つ確実に挿通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るハンダ移送装置の第1実施形態を示す側面図である。
図2図1のハンダ移送装置の背面図である。
図3図1のハンダ移送装置を右斜め上から見た斜視図である。
図4図1のハンダ移送装置を左斜め上から見た斜視図である。
図5図1のV−V線に沿った拡大断面図である。
図6図1のVI−V線Iに沿った拡大断面図である。
図7図3のハンダ移送装置を一部の部品を分離して示す分解斜視図である。
図8】カバーを斜め下方から見た斜視図である。
図9図2の要部拡大図である。
図10図1のX−X線に沿った部分拡大断面図である。
図11図10においてカバーを取り外した状態の断面図である。
図12】線状ハンダをハンダ挿通孔内に挿通する工程を説明するための図で、ハンダ供給ニードルとカバーとを取り外した状態の平面図である。
図13】本発明に係るハンダ移送装置の第2実施形態を示す斜視図である。
図14図13の分解図である。
図15】第2実施形態のハンダ移送装置におけるカバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図12は本発明に係るハンダ移送装置の第1実施形態を示すもので、このハンダ移送装置100Aは、例えばハンダ付けロボットに組み付けられ、半導体チップ等の電子部品をプリント基板上に自動的にハンダ付けする場合などに、各ハンダ付け部位に向けて線状ハンダを自動的に供給するために使用されるものであり、特に、線径が0.15−0.3mmというような極細の線状ハンダを使用する場合に適するものである。
【0014】
図1図7に示すように、ハンダ移送装置100Aは、装置本体1と、装置本体1の一側に配設されたボビン支持部2と、装置本体1の他側に設けられたノズル部3とを有している。ボビン支持部2は、線状ハンダ5が巻かれたボビン4を支持するための部位であり、ノズル部3は、ハンダ供給ノズル6を通じて線状ハンダ5をハンダ付け部位に供給するための部位である。
なお、以下の説明では、装置本体1について、ノズル部3が設けられている側を正面、ボビン支持部2が設けられている側を背面とし、また、上下及び左右とは、正面側から見た場合の方向を言う。
【0015】
装置本体1は、図5から明らかなように、ボビン4から引き出された線状ハンダ5を導入するためのハンダ導入口10と、ノズル部3に向けて線状ハンダ5を導出するためのハンダ導出口11と、ハンダ導入口10とハンダ導出口11とを直線的に結ぶハンダ移送路12と、ハンダ移送路12に沿って線状ハンダ5を移送する移送機構13と、線状ハンダ5の移送を電気信号に変換して検出する検出機構14とを有している。ハンダ導入口10は、装置本体1のボビン支持部2側(背面側)を向く第1端面15aに設けられ、ハンダ導出口11は、装置本体1のノズル部3が取り付けられた側(前面側)を向く第2端面15bに設けられている。
【0016】
移送機構13は、図6及び図7からも分かるように、ハンダ移送路12を介して相対する位置に、互いに平行する軸線L1及びL2を中心に回転自在なるように配設された移送部駆動ローラー13a及び移送部従動ローラー13bを有している。移送部駆動ローラー13aは、装置本体1の内部に配設された駆動モーター16に接続され、移送部従動ローラー13bは、移送部駆動ローラー13aに追従して従動回転するように配設され、移送部駆動ローラー13aが駆動モーター16で駆動、回転されることにより、両ローラー13a,13b間に挟持された線状ハンダ5がハンダ移送路12に沿って移送されるように構成されている。駆動モーター16は、駆動パルスによって回転が正、逆方向に制御されるパルスモーターである。
【0017】
また、検出機構14は、ハンダ移送路12を介して相対する位置に、互いに平行し且つ軸線L1,L2とも平行する軸線L3及びL4を中心に回転自在なるように配設された検出部駆動ローラー14a及び検出部従動ローラー14bを有し、線状ハンダ5の移送に追従して両ローラー14a,14bが回転するように構成されている。検出部駆動ローラー14aには、装置本体1の内部に配設されたエンコーダ(不図示)が接続され、検出部駆動ローラー14aが回転すると、線状ハンダ5の移送量がエンコーダで電気信号(パルス信号)に変換されて検出され、その検出信号が制御装置(不図示)にフィードバックされて駆動モーター16の制御等に使用されるようになっている。
【0018】
装置本体1の構成について更に詳細に説明すると、この装置本体1は、ボディ20と、ボディ20の上面のカバー取付面21に着脱自在に取り付けられたカバー22とを有している。また、ボディ20は、ベース部23と、ベース部23の上部に設けられたローラー支持部24と、ローラー支持部24の上部に設けられた溝形成部25とを有している。
【0019】
ベース部23は、装置本体1の基礎となる部分であって、中空の箱形をなし、その内部に駆動モーター16及びエンコーダが収容されると共に、その一端からボビン支持部2が延出している。
【0020】
ローラー支持部24は、ベース部23に固定された固定プレート24aと、固定プレート24aの上面に一対のガイドレール28(図6及び図12参照)を介してハンダ移送路12と直交する方向に変位自在なるように配設された可動プレート24bとを有し、固定プレート24aに、移送機構13の移送部駆動ローラー13aが支持軸13dを介して支持されると共に、検出機構14の検出部駆動ローラー14aが支持軸(不図示)を介して支持され、可動プレート24bに、移送機構13の移送部従動ローラー13bが支持軸13eを介して支持されると共に、検出機構14の検出部従動ローラー14bが支持軸(不図示)を介して支持されている。
【0021】
また、可動プレート24bは、クランプ螺子29を締め込んだり緩めたりすることにより、移送機構13の相対するローラー13a,13b間及び検出機構14の相対するローラー14a,14b間にそれぞれ線状ハンダ5を挟持する挟持位置と、移送機構13の相対するローラー13a,13b及び検出機構14の相対するローラー14a,14bがそれぞれ相互に離間して線状ハンダ5を解放する解放位置とに、変位するように構成されている。
【0022】
即ち、クランプ螺子29を締め込んで可動プレート24bを挟持位置に変位させると、図5及び図6に示すように、移送機構13の移送部従動ローラー13bが移送部駆動ローラー13aに近接する位置に変位すると共に、検出機構14の検出部従動ローラー14bが検出部駆動ローラー14aに近接する位置に変位し、移送機構13及び検出機構14の相対するローラー間に線状ハンダ5がそれぞれ挟持される。この場合、可動プレート24bの挟持位置は、相対するローラー間のハンダ挟持間隔が線状ハンダ5の線径に適合するように、不図示のストッパ機構によって厳密に設定される。
【0023】
また、クランプ螺子29を緩めて可動プレート24bを解放位置に後退させると、図6の鎖線位置及び図12の実線位置に示すように、移送機構13の移送部従動ローラー13bが移送部駆動ローラー13aから離間する位置に変位すると共に、検出機構14の検出部従動ローラー14bが検出部駆動ローラー14aから離間する位置に変位し、線状ハンダ5の挟持状態は解除される。そして、この状態で、後述するように、線状ハンダ5をハンダ移送路12内に挿入する作業が行われる。
【0024】
溝形成部25は、カバー22と協働してハンダ移送路12を形成する部分であって、図7から明らかなように、ハンダ移送路12を介してボディ20の左側と右側とに、対向面である側面同士が相対するように配置された第1溝形成部材25a及び第2溝形成部材25bを有し、結合螺子30で相互に結合されたこれら第1溝形成部材25aと第2溝形成部材25bとの間に、ハンダ移送路12を形成する移送路形成溝31が、ボディ20の上面であるカバー取付面21に開口するように形成されている。この移送路形成溝31は、図10及び図11に示すように、Y字形の断面形状を有するもので、一定の溝幅を有する溝底側の溝本体部31aと、カバー取付面21に外広がり状に開口するハンダ挿入口31bとを有し、移送路形成溝31の深さDの方向は、各ローラー13a,13b,14a,14bの軸線L1,L2,L3,L4と平行する方向である。
【0025】
移送路形成溝31は次のようにして形成されている。即ち、第1溝形成部材25aの対向面に、溝本体部31aの左右の溝壁のうち一方の溝壁を形成する平坦面32と、ハンダ挿入口31bの左右の口壁のうち一方の口壁を形成する第1傾斜面33とが形成され、第2溝形成部材25bの対向面に、溝本体部31aの他方の溝壁を形成する凹段面34と、ハンダ挿入口31bの他方の口壁を形成する第2傾斜面35とが形成されていて、第1溝形成部材25aと第2溝形成部材25bとを結合螺子30で相互に結合することにより、第1溝形成部材25aの平坦面32と第2溝形成部材25bの凹段面34との間に溝本体部31aが形成されると共に、第1溝形成部材25aの第1傾斜面33と第2溝形成部材25bの第2傾斜面35との間にハンダ挿入口31bが形成されている。第1傾斜面33と第2傾斜面35とは、移送路形成溝31を左右に2分割する仮想平面に対して互いに等しい角度で逆向きに傾斜する面である。
【0026】
溝本体部31aの溝幅W1は、線状ハンダ5の線径より僅かに大きく形成されている。
また、ハンダ挿入口31bの開口幅W2は、溝本体部31aの溝幅W1の5−15倍程度とし、ハンダ挿入口31bの深さD2は、溝本体部31aの深さD1の1/2−1倍程度とすることが望ましく、図示した実施形態では、ハンダ挿入口31bの開口幅W2が溝本体部31aの溝幅W1の約10倍に形成され、ハンダ挿入口31bの深さD2は、溝本体部31aの深さD1と同等か又はそれより僅かに小さく形成されている。これにより、線状ハンダ5をハンダ挿入口31bを通じて溝本体部31a内へ挿入する作業が容易になるだけでなく、後述するようにカバー22をボディ20に取り付ける際の溝本体部31a内への移送路形成壁46の嵌入を、ハンダ挿入口31bを通じて円滑且つ確実に行うことができる。
【0027】
また、図5及び図12から明らかなように、第1溝形成部材25aには、移送部駆動ローラー13aが嵌合する円形の逃げ孔36aと、検出部駆動ローラー14aが嵌合する円形の逃げ孔37aとが形成され、第2溝形成部材25bには、移送部従動ローラー13bが嵌合する長孔状の逃げ孔36bと、検出部従動ローラー14bが嵌合する長孔状の逃げ孔37bとが形成され、相対する逃げ孔36aと36b及び37aと37bとは、互いに連通している。
【0028】
カバー22は、図8から明らかなように、ハンダ移送路12を介して相対するように配置された第1カバー部材22aと第2カバー部材22bとを、カバー結合螺子40で一体に結合することにより形成され、カバー取付螺子41をカバー取付面21の螺子孔43に螺着することにより、ボディ20に着脱自在に取り付けられている。
カバー22の内面には、先細りの円錐状をなす2つの位置決めピン44が形成され、この位置決めピン44がカバー取付面21の円錐孔状をした位置決め孔45内に嵌合することにより、ボディ20に対するカバー22の位置決めが行われている。
【0029】
また、カバー22の内面には、図11からも分かるように、第1カバー部材22aと第2カバー部材22bとの接合部に沿って延びる薄板状の移送路形成壁46が形成され、カバー22をボディ20に取り付けたとき、図10に示すように、この移送路形成壁46が移送路形成溝31内に嵌合し、その先端が移送路形成溝31の溝底に近接する位置まで延びることにより、この移送路形成壁46の先端と移送路形成溝31の溝底との間にハンダ移送路12が画定されるようになっている。従って、移送路形成壁46の、移送路形成溝31内に嵌合する部分の高さH1は、移送路形成溝31の深さDよりも、ハンダ移送路12の上下幅S分だけ小さく形成されている。
移送路形成壁46の中間位置に形成された2つの切れ目46aは、移送機構13及び検出機構14の各ローラーから逃げるための切れ目である。
【0030】
なお、図示した実施形態では、移送路形成壁46が第2カバー部材22bと一体に形成されているが、この移送路形成壁46は、第1カバー部材22aと一体に形成することもでき、あるいは、独立する部材に形成してカバー22に一体に連結することもできる。
【0031】
また、第1カバー部材22aには、軸導出孔47が形成されていて、この軸導出孔47から、移送機構13の移送部駆動ローラー13aのローラー軸13cが外部に突出しており、このローラー軸13cを指で回転させることにより、移送部駆動ローラー13aと移送部従動ローラー13bとの間に挟持された線状ハンダ5を前進させたり後退させたりすることができるようになっている。
移送機構13及び検出機構14のその他のローラー及びローラー軸は、カバー22で覆い隠されている。
【0032】
カバー22の一端には、ボディ20のハンダ導入口10が開口する第1端面15aの一部を覆うガイドプレート48が取り付けられ、このガイドプレート48に、ボビン4からの線状ハンダ5をハンダ導入口10に導くハンダガイド49が形成されている。このハンダガイド49は、図9に示すように、ハンダ導入口10に臨むU字状のガイド溝49aと、ガイド溝49aの両溝壁に連なる外広がり状をしたガイド壁49b,49bとを有し、ガイド壁49bの壁面は、外に凸形をした曲面をなしている。
【0033】
このようなガイドプレート48を設けることにより、ハンダ付け時に、ボビン4から引き出されてハンダ導入口10に導入される線状ハンダ5の導入角度が、引き出し位置の変化によって変化しても、ガイド壁49bとガイド溝49aとによって線状ハンダ5はハンダ導入口10に確実に導かれることになる。
【0034】
また、ボビン支持部2は、装置本体1のベース部23から延出する支持プレート53を有し、支持プレート53の先端に、ボビン4を回転自在に支持するボビン支持軸54が、ハンダ移送路12と直交し且つ移送路形成溝31の深さの方向と平行をなす姿勢で片持ち状に支持され、ボビン支持軸54の先端部に、ボビン4の脱落を防止するカラー55が着脱自在に取り付けられている。
【0035】
一方、ノズル部3は、ハンダ供給ノズル6と、このハンダ供給ノズル6の基端部に設けられた四角いブロック形をした取付部57とを有していて、この取付部57を、ボディ20における溝形成部25の第2端面15bに形成されたノズル取付部20aに、ノズル固定螺子59で固定することにより、装置本体1に取り付けられている。ハンダ供給ノズル6は、ハンダ移送路12と同軸状に延びている。
【0036】
上記構成を有するハンダ移送装置100Aにおいて、ボビン4から引き出された線状ハンダ5を装置本体1のハンダ移送路12内に挿通する作業は、次のようにして行われる。
【0037】
先ず、図7に示すように、ノズル部3をボディ20から取り外すと共に、カバー取付螺子41を緩めてカバー22をボディ20から取り外し(図11参照)、そのあと、図12に示すように、クランプ螺子29を緩めて可動プレート24bを解放位置に後退させることにより、移送機構13の移送部従動ローラー13bを移送部駆動ローラー13aから離間させると共に、検出機構14の検出部従動ローラー14bを検出部駆動ローラー14aから離間させる。
【0038】
次に、ボビン4に巻かれた線状ハンダ5を、先端がボディ20の第2端面15bを通り過ぎる長さ引き出し、引き出した線状ハンダ5を、移送路形成溝31の内部に、ボディ20の上方からハンダ挿入口31bを通じて移送路形成溝31の全長にわたって収容し、図11に示すように溝本体部31aの溝底に接触する位置まで押し込む。
【0039】
続いて、カバー22をカバー取付螺子41でボディ20のカバー取付面21に取り付けると、移送路形成壁46が移送路形成溝31内に嵌合し、図10に示すように、移送路形成壁46の先端が移送路形成溝31の溝底に近接する位置まで達することにより、この移送路形成壁46の先端と移送路形成溝31の溝底との間にハンダ移送路12が画定され、その中に線状ハンダ5が収容された状態になる。
【0040】
その際、カバー22の移送路形成壁46の高さH1は、図8から分かるように、位置決めピン44の高さH2及びガイドプレート48の高さH3より低く形成されているため、カバー22をボディ20に取り付けるとき、位置決めピン44及びガイドプレート48によってボディ20に対するカバー22の位置決めがなされたあとに、移送路形成壁46が移送路形成溝31内に嵌合することになる。このため、移送路形成溝31に先広がり状のハンダ挿入口31bが形成されていることと相俟って、移送路形成溝31に対する移送路形成壁46の嵌合は、円滑且つ正確に行われ、嵌合の不具合による移送路形成壁46の変形や移送路形成溝31の損傷等が防止される。この効果は、カバー22をボディ20から取り外す場合においても同様である。
【0041】
次に、クランプ螺子29を締め込んで可動プレート24bを挟持位置に変位させてその位置に固定することにより、図5に示し且つ図12に鎖線で示すように、移送機構13の移送部従動ローラー13bが移送部駆動ローラー13aに近接すると共に、検出機構14の検出部従動ローラー14bが検出部駆動ローラー14aに近接して、相対するローラー間に線状ハンダ5が挟持され、ハンダ移送路12に対する線状ハンダ5の挿通作業が完了する。これにより、線径が0.15−0.3mmというような極細の線状ハンダ5であっても、ハンダ移送路12内に簡単且つ確実に挿通させることができる。
【0042】
そのあと、カバー22から突出する移送部駆動ローラー13aのローラー軸13cを指で回転させて移送部駆動ローラー13aを回転させることにより、線状ハンダ5を後退させて線状ハンダ5の先端をハンダ導出口11から突出する直前の位置まで戻し、その状態で、図1図5に示すようにノズル部3をボディ20に取り付ければ、ハンダ移送装置100Aは使用可能な状態になる。
【0043】
ハンダ移送装置100Aの使用時に、移送機構13の移送部駆動ローラー13aが駆動モーター16によって必要角度駆動、回転されると、線状ハンダ5が、ノズル部3を通じてハンダ付け部位に向けて必要量ずつ供給される。このとき、線状ハンダ5の移送に連動して検出部駆動ローラー14aと検出部従動ローラー14bとが回転し、線状ハンダ5の移送量がエンコーダで電気信号に変換され、その検出信号が制御装置にフィードバックされることにより、駆動モーター16の制御等に使用される。
【0044】
図13図15はハンダ移送装置の第2実施形態を示すもので、この第2実施形態のハンダ移送装置100Bが第1実施形態のハンダ移送装置100Aと相違する主要な点は、ハンダ移送装置100Aにおいては、移送路形成溝31のハンダ挿入口31bがボディ20の上面に開口し、また、全てのローラー13a,13b,14a,14bがボディ20に設けられているのに対し、第2実施形態のハンダ移送装置Bにおいては、移送路形成溝31のハンダ挿入口31bがボディ20の側面に開口し、また、移送部駆動ローラー13a及び検出部駆動ローラー14aがボディ20に設けられ、移送部従動ローラー13b及び検出部従動ローラー14bがカバー22に設けられている点である。更に、第2実施形態のハンダ移送装置Bは、ボビン支持部2のボビン支持軸54が横向きに設けられている点でも、第1実施形態のハンダ移送装置100Aと相違している。
【0045】
以下、この第2実施形態のハンダ移送装置100Bについて、第1実施形態のハンダ移送装置100Aと相違する主要な構成について説明する。
【0046】
先ず、ボディ20においては、溝形成部25を構成する第1溝形成部材25aと第2溝形成部材25bとが、上下に重なった状態に配設され、上方の第1溝形成部材25aの下面(対向面)と下方の第2溝形成部材25bの上面(対向面)との間に、移送路形成溝31が横向きに形成され、この移送路形成溝31のハンダ挿入口31bがボディ20の右側面に開口している。従って、移送路形成溝31の深さの方向は水平方向であり、ボディ20の右側面はカバー取付面21である。
【0047】
また、ボディ20には、ハンダ移送路12の一側(カバー取付面21の反対側)に、移送部駆動ローラー13a及び検出部駆動ローラー14aが、軸線L1及びL2を上下方向に向けた姿勢で、上方の第1溝形成部材25aと下方の第2溝形成部材25bとに跨るような配置、換言すれば、ローラー13a,14aの側面の上下幅のほぼ中央位置を移送路形成溝31が横切るような配置で、回転自在なるように取り付けられると共に、ハンダ移送路12の他側(カバー取付面21側)に、カバー2に取り付けられた移送部従動ローラー13b及び検出部従動ローラー14bが嵌合する凹部61,62が、カバー取付面21側から、移送部駆動ローラー13a及び検出部駆動ローラー14aに向けて切り込まれた状態に形成されている。
従って、移送路形成溝31の深さの方向と、移送部駆動ローラー13aの軸線L1及び検出部駆動ローラー14aの軸線L2とは、互いに直交している。
【0048】
一方、カバー22は、図15から分かるように、上下に配設された第1カバー部材22a及び第2カバー部材22bと、ボディ20の上面の一部を覆う第3カバー部材22cとを、カバー結合螺子40で一体に結合することにより形成されていて、第1カバー部材22aと第2カバー部材22bとの境目の位置に移送路形成壁46が形成されると共に、第3カバー部材22cに、移送部従動ローラー13b及び検出部従動ローラー14bが、支持軸13e及び14eにより、それぞれ回転自在なるように支持されている。移送路形成壁46と、移送部従動ローラー13b及び検出部従動ローラー14bとの位置関係は、移送部従動ローラー13b及び検出部従動ローラー14bの側面の上下幅のほぼ中央に、移送路形成壁46が位置するような関係である。
【0049】
そして、図14に示すようにカバー22をボディ20から取り外した状態で移送路形成溝31内に線状ハンダを挿入したあと、図13に示すように、カバー22を不図示の螺子でボディ20の側面のカバー取付面21に取り付けると、図10及び図11で説明した場合と同様に、移送路形成壁46が移送路形成溝31内に嵌合し、この移送路形成壁46の先端と移送路形成溝31の溝底との間にハンダ移送路12が画定されてその中に線状ハンダ5が収容された状態になる。また、移送部従動ローラー13b及び検出部従動ローラー14bが凹部61,62内に嵌合し、移送部駆動ローラー13aと移送部従動ローラー13bとの間、及び、検出部駆動ローラー14aと検出部従動ローラー14bとの間に、それぞれ線状ハンダ5が挟持される。
【0050】
第2実施形態のハンダ移送装置100Bの前記以外の構成及び作用については、第1実施形態のハンダ移送装置100Aと実質的に同じであるから、両者の主要な同一構成部分に第1実施形態に付した符号と同一の符号を付してその説明は省略する。
【0051】
本発明のハンダ移送装置100A,100Bは、移送路形成溝31の深さDの方向を鉛直に向けた姿勢でも、水平に向けた姿勢でも、使用することができる。
また、ハンダ移送装置100A,100Bは、装置本体1にハンダ供給ノズル6を直接取り付けた構成に限らず、別の場所に設置したハンダ供給ノズル6に、装置本体1とハンダ供給ノズル6とを結ぶチューブを通じて線状ハンダを供給する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0052】
5 線状ハンダ
10 ハンダ導入口
11 ハンダ導出口
12 ハンダ移送路
13 移送機構
13a 移送部駆動ローラー
13b 移送部従動ローラー
13c ローラー軸
15a 第1端面
20 ボディ
21 カバー取付面
22 カバー
25a 第1溝形成部材
25b 第2溝形成部材
31 移送路形成溝
31a 溝本体部
31b ハンダ挿入口
32 平坦面
33 第1傾斜面
34 凹段面
35 第2傾斜面
46 移送路形成壁
47 軸導出孔
48 ガイドプレート
49 ハンダガイド部
49a ガイド溝
49b ガイド壁
100A,100B ハンダ移送装置
図1
図2
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