(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
図1には、被験者判断装置100が示されている。
図2(A)には、手段的日常生活活動(IADL:Instrumental Activities of Daily Living)の第1の環境を仮想空間に表現した第1の画像が示されている。
図2(B)には、手段的日常生活活動の、第1の環境とは異なる第2の環境を仮想空間に表現した第2の画像が示されている。
図3には、被験者判断装置100のブロック図が示されている。
【0023】
図3に示すように、被験者判断装置100は、人工現実感(VR:Virtual Reality)技術を用いて被験者が手段的日常生活活動をするための環境(IADL環境)を仮想空間に表現した画像(
図2(A)又は
図2(B))を表示するディスプレイ12(
図1も参照)を備えている。被験者判断装置100は、ディスプレイ12の画面に置かれた被験者の身体的部位、例えば、手の指のディスプレイ12への接触/非接触の状態を計測するタッチセンサ14を備えている。タッチセンサ14は、ディスプレイ12の画面に重ね合わせて設けられている。タッチセンサ14は、静電容量方式のセンサであり、タッチセンサ14の面上の静電容量値を検出する。タッチセンサ14の面上の静電容量値を検出することで、タッチセンサ14に近いまたは接触している指を検出することができる。
【0024】
また、被験者判断装置100は、三脚上の雲台からの支柱に取り付けられ、ディスプレイ12の画面に置かれた被験者の指の3次元位置を計測する3次元モーションセンサ16(
図1も参照)を備えている。
【0025】
更に、被験者判断装置100は、ディスプレイ12により表示された環境で所定の動作をしようとした被験者の指のディスプレイ12への接触/非接触の状態又は当該指の3次元位置の状態から被験者の行動の特徴量を算出するコンピュータ10を備えている。コンピュータ10は、更に、算出された行動の特徴量と、被験者の脳機能の状態を判断するために予め定められた特徴量の判定値とから、被験者の脳機能の状態を判断する。
【0026】
コンピュータ10は、CPU20、ROM22、RAM24、及び入出力インタフェース(I/O)26を備えている。CPU20、ROM22、RAM24、及び入出力インタフェース(I/O)26は、バス28を介して相互に接続されている。
【0027】
ディスプレイ12は、本開示の技術の表示部の1例である。タッチセンサ14及び3次元モーションセンサ16は、本開示の技術の計測部の1例である。コンピュータ10のCPU20は、本開示の技術の特徴量算出部及び判断部の1例である。
【0028】
ROM22には、後述する健常者判断処理プログラム(
図4、
図8、
図9、
図11)及びしきい値学習処理プログラム(
図12)が記憶されている。健常者判断処理プログラム(
図4、
図8、
図9、
図11)及びしきい値学習処理プログラム(
図12)は、ROM22から読み出され、RAM24に展開されて、CPU20によって実行される。
【0029】
図4には、健常者判断処理の1例が示されている。
図4に示すように、ステップ402で、ディスプレイ12が、IADL環境を仮想空間に表現した画像(
図2参照)を表示し、手段的日常生活活動のタスク(例えば、ランチボックスの準備等)を被験者が実行する間、被験者の指が画面に接触した接触開始時及び画面から離れた接触終了時を、タッチセンサ14からの信号から検出する。
【0030】
ステップ404で、健常者判断処理で使用される変数n、TTl(n)、TTl(n+1)を1に初期化する。ステップ406で、被験者の指がディスプレイ12に接触している複数の状態の各々を識別する変数nを1インクリメントする。
【0031】
ステップ408で、第n−1回目の接触の終了時から第n回目の接触開始時までの間の時間Tnを算出する。
【0032】
図5には、手段的日常生活活動のタスクを被験者が実行する間の被験者の指が画面に接触した接触状態と画面から離れた非接触状態を示すグラフが示されている。
図6には、被験者の指がディスプレイ12に接触開始した時のタイミングに合わせてその前の接触の接触終了時からの時間間隔を示したグラフが示されている。
【0033】
本実施の形態で取り扱うデータは次の通りである。
【0035】
ステップ408では、上記データに基づいて、
図5及び
図6に示すように、n=1ではT(1)が、n=2ではT(2)が、n=3ではT(3)・・・が算出される。
【0036】
ステップ410で、TTl(n)←TTl(n)+Tnを計算する。
【0037】
ステップ412で、第n回目の接触の終了時から第n+1回目の接触開始時までの間の時間Tn+1を算出する。なお、ステップ412は、接触のタイミングが異なるだけで、具体的な計算は、ステップ408と同様である。
【0038】
ステップ414で、TTl(n+1)←TTl(n+1)+Tn+1を計算する。
【0039】
ステップ416で、変数nが、被験者の指がディスプレイ12に接触している複数の状態の総数Nであるか否かを判断する。
【0040】
ステップ416で、変数nが、被験者の指がディスプレイ12に接触している複数の状態の総数Nであると判断されなかった場合には、時間Tn及び時間Tn+1を算出していない接触している状態があるので、健常者判断処理はステップ406に戻る。
【0041】
一方、ステップ416で、変数nが、被験者の指がディスプレイ12に接触している複数の状態の総数Nであると判断された場合には、全ての接触している状態について時間Tn及び時間Tn+1を算出したので、健常者判断処理はステップ418に進む。
【0042】
ステップ418で、meanTTl(n)←TTl(n)/Nを計算する。meanTTl(n)は、第n−1回目の接触の終了時から第n回目の接触開始時までの間の時間Tnの平均値である。
【0043】
ステップ420で、meanTTl(n+1)←TTl(n+1)/Nを計算する。meanTTl(n+1)は、第n回目の接触の終了時から第n+1回目の接触開始時までの間の時間Tn+1の平均値である。
【0044】
ステップ422で、meanTTl(n)及びmeanTTl(n+1)に対応する点を、
図7に示すPoincare Plotグラフにプロットする。
【0045】
図7には、Poincare Plotグラフが示されている。Poincare Plotグラフの横軸は、meanTTl(n)であり、Poincare Plotグラフの縦軸は、meanTTl(n+1)である。
【0046】
ステップ424で、ステップ422でプロットされた点は、脳機能に障害がない健常者であることを示す判定値の範囲702内であるか否かを判断する。
【0047】
meanTTl(n)及びmeanTTl(n+1)は、前回の接触の終了時から今回の接触開始時までの間の時間に対応し、これは、ある動作をしてから次の動作を起こすまでの時間に対応する。よって、meanTTl(n)及びmeanTTl(n+1)がより大きいと、ある動作をしてから次の動作を起こすまでに時間がよりかかることを示す。これは、ある動作をしてから、次にどんな動作をすればよいのかを決定し実行に移すまでに時間がよりかかっていること、つまり被験者が次の動作をするのに迷っていることをより示すことになる。
【0048】
被験者が健常者であれば、meanTTl(n)及びmeanTTl(n+1)に対応する点は、値が小さい領域702に位置する。領域702は、脳機能に障害がない健常者であると判断できる判定値の範囲である。被験者の認知症の程度が重くなると、meanTTl(n)及びmeanTTl(n+1)に対応する点は、値が大きくなり、領域704の領域に位置する。領域704は、重い認知症であると判断できる判定値の範囲である。なお、領域702と領域704との間の領域は、軽度認知障害の領域である。
【0049】
ステップ424で、ステップ422でプロットされた点は、脳機能に障害がない健常者であることを示す判定値(しきい値)の範囲702内であると判断された場合には、ステップ426で、ディスプレイ12に、脳機能に障害がない健常者であることを示す情報を表示する。
【0050】
ステップ424で、ステップ422でプロットされた点は、健常者であることを示す判定値の範囲702内であると判断されなかった場合には、ステップ428で、ディスプレイ12に、脳機能に障害がない健常者でないことを示す情報を表示する。
【0051】
以上説明したように、本開示の技術では、手段的日常生活活動の環境を仮想空間に画像で表現する。当該画像上での被験者の指の状態(接触状態)から被験者の行動の特徴量(meanTTl(n)及びmeanTTl(n+1))を算出する。算出された行動の特徴量と、被験者が脳機能に障害がない健常者であるか否かを判断するために予め定められた特徴量の判定値の範囲702とから、被験者が健常者であるか否かを判断する。
【0052】
このように、従来の方法のように質問紙を用いた記憶を検査したり磁気共鳴機能画像法による脳画像を診断したりすることと比較すると、本開示の技術では、被験者が健常者であるか否かを迅速に判断することができる。
【0053】
また、被験者の指の動きを基準とした行動に即して判断しているので、被験者が健常者であるか否かをより精度よく判断することができる。
【0054】
なお、ステップ422でプロットされた点が、領域704に位置する場合には、認知症であることを示す情報を表示し、領域702でも領域704でもない位置に位置する場合には、軽度の認知症であることを示す情報を表示するようにしてもよい。これにより、認知症の程度に応じた情報を表示することができる。
【0055】
被験者が脳機能に障害がない健常者である範囲702、重い認知症の被験者の範囲704、軽度認知障害の患者の範囲(範囲702と範囲704との間の範囲)は、多数の被験者の実験結果から求めたり、後述する機械学習(
図12)で求めたりしてもよい。
【0056】
ところで、従来の被験者判断方法では、日常生活活動(ADL:Activities of Daily Living)において支障がある場合に、軽度認知障害の患者であると判断されている。なお、日常生活活動は、日常生活を営む上で、普通に行っている行為や行動のことである。具体的には、食事や排泄、整容、移動、入浴等の基本的な行動を指す。
【0057】
しかし、軽度認知障害の患者には、日常生活活動において支障はないが、日常生活活動よりも複雑で高次な動作である手段的日常生活活動において機能低下が見られる者がいることが分かってきている。
【0058】
よって、軽度認知障害の患者を特定する新たなスクリーニング指標として、行動指標に着目する必要性がある。しかし、従来、手段的日常生活活動において軽度認知障害の患者と脳機能に障害がない健常者を識別する有効な特徴量の選定、機能低下を検出する技術が確立されていなかった。
【0059】
しかし、本開示の技術では、手段的日常生活活動の環境を仮想空間に表現した画像上での被験者の指の状態から被験者が脳機能に障害がない健常者であるか否かを判断する。よって、本開示の技術は、健常者判断処理を、手段的日常生活活動において軽度認知障害の患者と健常者を識別する有効な特徴量の選定、機能低下を検出する技術として確立することができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
次に、本開示の技術の第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、以下、構成の説明を省略し、健常者判断処理を説明する。
【0061】
図8には、第2の実施の形態における健常者判断処理の1例が示されている。
【0062】
図8のステップ802で、ディスプレイ12が、IADL環境を仮想空間に表現した画像(
図2参照)を表示し、手段的日常生活活動のタスク(例えば、ランチボックスの準備等)を被験者が実行する間、被験者の指がスクリーンに接触した接触開始時、スクリーンから離れた接触終了時、接触回数T、及び、手段的日常生活活動のタスクを遂行するのに要したタスク遂行時間ATを、タッチセンサ14からの信号から検出する。
【0063】
ステップ804で、第2の実施の形態における健常者判断処理で使用する変数t、TTl(t)を0に初期化する。
【0064】
ステップ806で、被験者の指がディスプレイ12に接触している複数の状態の各々を識別する変数tを1インクリメントする。
【0065】
ステップ808で、第t−1回目の接触の終了時から第t回目の接触開始時までの間の時間Ttを算出する。
【0066】
ステップ810で、TTl(t)←TTl(t)+Tnを計算する。
【0067】
ステップ812で、被験者の指がディスプレイ12に接触している複数の状態の各々を識別する変数tが、被験者の指がディスプレイ12に接触している複数の状態の総数Tであるか否かを判断する。
【0068】
ステップ812で、変数tが総数Tであると判断されなかった場合には、TTl(t)が計算されていない接触の状態があるので、健常者判断処理は、ステップ806に戻る。
【0069】
一方、ステップ812で、変数tが総数Tであると判断された場合には、全ての接触の状態についてTTl(t)が計算されたので、健常者判断処理は、ステップ814に進む。
【0070】
ステップ814で、タスク遂行時間に占めるスクリーンの非接触時間の割合rOffを、rOff←(ΣTTl(t))/ATから、計算する。
【0071】
ステップ816で、タスク遂行時間に占めるスクリーンの非接触時間の割合rOffが、被験者が脳機能に障害がない健常者である場合の判定値であるしきい値Rth以下であるか否かを判断する。なお、しきい値Rthは、本開示の技術の「判定値」の1例である。
【0072】
タスク遂行時間に占めるスクリーンの非接触時間の割合rOffがより大きいことは、被験者が次の動作をするのに迷っていることをより示すことになる。被験者が健常者であれば、タスク遂行時間に占めるスクリーンの非接触時間の割合rOffは、所定値より小さい。この所定値がしきい値Rthである。
【0073】
ステップ816で、タスク遂行時間に占めるスクリーンの非接触時間の割合rOffが、被験者が脳機能に障害がない健常者である場合の判定値であるしきい値Rth以下であると判断された場合には、ステップ818で、脳機能に障害がない健常者であることを示す情報を、ディスプレイ12に表示する。
【0074】
ステップ816で、タスク遂行時間に占めるスクリーンの非接触時間の割合rOffが、被験者が健常者である場合の判定値であるしきい値Rth以下であると判断されなかった場合には、ステップ820で、脳機能に障害がない健常者でないことを示す情報を、ディスプレイ12に表示する。
【0075】
以上説明したように第2の実施の形態では、被験者の指の動きを基準とした行動に即して、被験者が脳機能に障害がない健常者であるか否かを判断している。よって、第2の実施の形態では、被験者が健常者であるか否かを迅速に判断することができる。また、第2の実施の形態では、被験者が健常者であるか否かをより精度よく判断することができる。
【0076】
なお、しきい値を、認知症の程度に応じて定め、タスク遂行時間に占めるスクリーンの非接触時間の割合rOffと認知症の程度に応じたしきい値とから、被験者の認知症の程度を判断し、認知症の程度に応じた情報を表示するようにしてもよい。
【0077】
第2の実施の形態でも、健常者判断処理を、手段的日常生活活動において軽度認知障害の患者と健常者を識別する有効な特徴量の選定、機能低下を検出する技術として確立することができる。
【0078】
被験者が脳機能に障害がない健常者である場合の判定値であるしきい値Rthは、多数の被験者の実験結果から求めたり、後述する機械学習(
図12)で求めたりしてもよい。
【0079】
(第3の実施の形態)
次に、本開示の技術の第3の実施の形態を説明する。第3の実施の形態の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、以下、構成の説明を省略し、健常者判断処理を説明する。
【0080】
図9には、第3の実施の形態における健常者判断処理の1例が示されている。
【0081】
図9のステップ902で、ディスプレイ12が、IADL環境を仮想空間に表現した画像(
図2参照)を表示し、手段的日常生活活動のタスク(例えば、ランチボックスの準備等)を被験者が実行する間、所定時間毎に、被験者の指の3次元位置を、3次元モーションセンサ16からの信号から検出する。
【0082】
ステップ904で、各位置の速度のノルムを計算する。
【0083】
ステップ906で、各位置の速度のノルムに基づいて、タスクの開始から終了までのデータを抽出する。
【0084】
図10には、手段的日常生活活動のタスクを実行する間、被験者の指の速度のノルムを示すグラフが示されている。手段的日常生活活動のタスクは複数の行動から成り立つ。各行動での指の速度のノルムは、当該行動が開始される時は0であり、当該行動を実行するに従って徐々に大きくなり、最大値になってから当該行動の終了に向けて、徐々に小さくなり、終了時は0となる。
図10に示すように、手段的日常生活活動のタスクを実行する間、被験者の指の動きは、連続した2点間到達運動の特徴を示す。
【0085】
ステップ908で、抽出したデータに基づいて、自己相関関数を計算する。
【0086】
ステップ910で、自己相関関数に基づいて、手段的日常生活活動のタスクを実行する際の被験者の指の動作の基本周波数fを計算する。
【0087】
ステップ912で、手段的日常生活活動のタスクを実行する際の被験者の指の動作の基本周波数fが、被験者が脳機能に障害がない健常者であると判断できる基本周波数のしきい値Fth以上か否かを判断する。なお、しきい値Fthは、本開示の技術の「判定値」の1例である。
【0088】
被験者が脳機能に障害がない健常者であれば、次の行動を迷わずに実行するので、行動に要する時間は短く、基本周波数は大きい。しかし、被験者の認知症が進むと、行動の内容を迷い、各行動が長くなり、行動に要する時間は長く、基本周波数は小さい。
【0089】
しきい値Fthは被験者が脳機能に障害がない健常者であると判断できる基本周波数のしきい値である。
【0090】
ステップ912で、手段的日常生活活動のタスクを実行する際の被験者の指の動作の基本周波数fが、被験者が健常者であると判断できる基本周波数のしきい値Fth以上と判断された場合には、ステップ914で、脳機能に障害がない健常者であることを示す情報を、ディスプレイ12に表示する。
【0091】
ステップ912で、手段的日常生活活動のタスクを実行する際の被験者の指の動作の基本周波数fが、被験者が健常者であると判断できる基本周波数のしきい値Fth以上と判断されなかった場合には、ステップ916で、脳機能に障害がない健常者でないことを示す情報を、ディスプレイ12に表示する。
【0092】
以上説明したように第3の実施の形態では、被験者の指を基準にした行動に即して、被験者が脳機能に障害がない健常者であるか否かを判断している。よって、第3の実施の形態では、被験者が健常者であるか否かを迅速に判断することができる。また、第3の実施の形態では、被験者が健常者であるか否かをより精度よく判断することができる。
【0093】
なお、しきい値を、認知症の程度に応じて定め、手段的日常生活活動のタスクを実行する際の被験者の指の動作の基本周波数fと認知症の程度に応じたしきい値とから、被験者の認知症の程度を判断し、認知症の程度に応じた情報を表示するようにしてもよい。
【0094】
第3の実施の形態でも、健常者判断処理を、手段的日常生活活動において軽度認知障害の患者と健常者を識別する有効な特徴量の選定、機能低下を検出する技術として確立することができる。
【0095】
被験者が健常者であると判断できる基本周波数のしきい値Fthは、多数の被験者の実験結果から求めたり、後述する機械学習(
図12)で求めたりしてもよい。
【0096】
(第4の実施の形態)
次に、本開示の技術の第4の実施の形態を説明する。第4の実施の形態の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、以下、構成の説明を省略し、健常者判断処理を説明する。
【0097】
図11には、第4の実施の形態における健常者判断処理の1例が示されている。
【0098】
図11のステップ1102で、ディスプレイ12が、IADL環境を仮想空間に表現した画像(
図2参照)を表示し、手段的日常生活活動のタスク(例えば、ランチボックスの準備等)を被験者が実行する間、所定時間毎に、被験者の指の3次元位置を、3次元モーションセンサ16からの信号から検出する。
【0099】
ステップ1104で、上記所定時間毎の各位置の速度のノルムを計算する。
【0100】
ステップ1106で、各位置の速度のノルムに基づいて、タスクの開始から終了までのデータを抽出する。
【0101】
ステップ1108で、抽出したデータと、自己回帰モデルとに基づいて、自己回帰モデルの自己回帰係数(10次元)k1〜k10を計算する。
【0103】
x(l)=Σ
mi=1a
m(i)・x(l−i)+ε
【0105】
x(l)は、あるタイミングの指の速度である。x(l−i)は、x(l)のタイミングより上記所定時間前の指の速度である。a
m(i)は、自己回帰係数(10次元)である。εは予測誤差である。
【0106】
ステップ1110で、自己回帰モデルの自己回帰係数k(k1〜k10)が、各次元のしきい値Kth(Kth1〜Kth10)以下か否かを判断する。なお、しきい値Kthは、本開示の技術の「判定値」の1例である。
【0107】
人は認知症が進むに従って、行動に不規則性が大きくなり、次の位置を予測するための自己回帰係数は大きくなる。被験者が脳機能に障害がない健常者であると判断できる自己回帰係数が予め定められ、これが、各次元の自己回帰係数のしきい値である。
【0108】
自己回帰モデルの自己回帰係数k1〜k10の半数以上が、各次元のしきい値Kth1〜Kth10より小さいと判断された場合に、ステップ1110の判定は肯定判定となる。この場合には、ステップ1112で、脳機能に障害がない健常者であることを示す情報を、ディスプレイ12に表示する。
【0109】
一方、自己回帰モデルの自己回帰係数k1〜k10の半数以上が、各次元のしきい値Kth1〜Kth10より小さいと判断されなかった場合に、ステップ1110の判定は否定判定となる。この場合には、ステップ1114で、脳機能に障害がない健常者でないことを示す情報を、ディスプレイ12に表示する。
【0110】
以上説明したように第4の実施の形態では、被験者の指を基準にした行動に即して、被験者が脳機能に障害がない健常者であるか否かを判断している。よって、第4の実施の形態では、被験者が健常者であるか否かを迅速に判断することができる。また、第4の実施の形態では、被験者が健常者であるか否かをより精度よく判断することができる。
【0111】
なお、しきい値を、認知症の程度に応じて定め、自己回帰モデルの自己回帰係数kと認知症の程度に応じたしきい値とから、被験者の認知症の程度を判断し、認知症の程度に応じた情報を表示するようにしてもよい。
【0112】
第4の実施の形態でも、健常者判断処理を、手段的日常生活活動において軽度認知障害の患者と健常者を識別する有効な特徴量の選定、機能低下を検出する技術として確立することができる。
【0113】
自己回帰モデルの自己回帰係数k1〜k10のしきい値Kth1〜Kth10は、多数の被験者の実験結果から求めたり、後述する機械学習(
図12)で求めたりしてもよい。
【0114】
次に、第1の実施の形態〜第4の実施の形態のしきい値を、正解データからの機械学習で求める処理を説明する。正解データからの機械学習で求める場合には、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の全ての健常者判断処理の結果を利用する。
【0115】
図12には、判定値学習処理の1例が示されている。
【0116】
図12のステップ1202で、判定値学習処理で使用する変数d、qを0に初期化する。
【0117】
ステップ1204で、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の各しきい値を識別する変数qを1インクリメントする。
【0118】
ステップ1206で、変数qで識別されるしきい値Thqに予め定めた値Δtqを加算することにより、しきい値Thqを変化させる。
【0119】
ステップ1208で、変数qがしきい値の総数Qに等しいか否かを判断する。
【0120】
ステップ1208で、変数qがしきい値の総数Qに等しいと判断されなかった場合には、変化させていないしきい値があるので、しきい値学習処理は、ステップ1204に戻る。
【0121】
ステップ1208で、変数qがしきい値の総数Qに等しいと判断された場合には、全てのしきい値を変化させたので、しきい値学習処理は、ステップ1210に進む。
【0122】
ステップ1210で、上記のように変化されたしきい値に基づいて、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の全ての健常者判断処理を実行する。
【0123】
具体的には、上記のように変化されたしきい値に基づいて、第1の実施の形態の健常者判断処理の
図4のステップ404〜424を実行する。上記のように変化されたしきい値に基づいて、第2の実施の形態の健常者判断処理の
図8のステップ804〜816を実行する。上記のように変化されたしきい値に基づいて、第3の実施の形態の健常者判断処理の
図9のステップ904〜912を実行する。上記のように変化されたしきい値に基づいて、第4の実施の形態の健常者判断処理の
図11のステップ1104〜1110を実行する。なお、各実施の形態の健常者判断処理では、既に実行して得られた指の状態(接触状態や3次元位置)のデータを用いる。
【0124】
しきい値を変化させて実施した各実施の形態の健常者判断処理での健常者であるか否かの判断結果と、別に実験して得た各患者の健常者か否かの実験結果のデータ(正解データ)とから、真陽性率と偽陽性率とを計算する。
【0125】
真陽性率は、脳機能に障害がない健常者である被験者が上記しきい値を用いた健常者判断処理で健常者であると正しく判断できた割合である。偽陽性率は、脳機能に障害がない健常者でない被験者が上記しきい値を用いた健常者判断処理で健常者であると誤って判断された割合である。
【0126】
ステップ1212で、計算された真陽性率及び偽陽性率に対応する点を、真陽性率及び偽陽性率グラフにプロットする。
図13には、真陽性率及び偽陽性率グラフが示されている。
【0127】
ステップ1214で、ステップ1204〜1212を実行した回数dが、所定回数Dに等しいか否か判断する。
【0128】
ステップ1214で、ステップ1204〜1212を実行した回数dが所定回数Dに等しいと判断されなかった場合には、ステップ1216で、ステップ1204〜1212を実行した回数dを1インクリメントして、しきい値学習処理は、ステップ1204に戻る。
【0129】
ステップ1214で、ステップ1204〜1212を実行した回数dが所定回数Dに等しいと判断された場合には、しきい値学習処理は、ステップ1218に進む。
【0130】
以上の処理(ステップ1204〜1212)を所定回数D実行すると、
図13に示すように真陽性率及び偽陽性率グラフが完成する。
【0131】
ステップ1218で、プロット結果に基づいて、各しきい値を決定する。
【0132】
真陽性率及び偽陽性率との関係から、理想のプロット点は、(偽陽性率、真陽性率)=(0,0.8)である。ステップ1218で、(偽陽性率、真陽性率)=(0,0.8)をプロットしたしきい値を、各しきい値として決定する。以後、各実施の形態での健常者判断処理のしきい値は、ステップ1218で決定されたしきい値が用いられる。
【0133】
(変形例)
以上説明した第1の実施の形態〜第4の実施の形態の各々では異なる特徴量量を、対応する判定値(しきい値)と比較して、被験者が脳機能に障害のない健常者であるか否かを判断している。本開示の技術は、これに限定されない。1つのタスクで、
図4のステップ402〜424、
図8のステップ802〜816、
図9のステップ902〜912、
図11のステップ1102〜1110の少なくとも2つを実行する。各実行の結果、全ての結果、過半数、又は少なくとも1つで、被験者が脳機能に障害のない健常者であると判断された場合に、被験者は脳機能に障害のない健常者であることを示す情報を、ディスプレイ12に表示する。そうでなければ、被験者は脳機能に障害がない健常者でないことを示す情報を、ディスプレイ12に表示する。
以上説明した各実施の形態では、タスクは、手段的日常生活活動のタスクとしている。本開示の技術は、これに限定されない。タスクは、手段的日常生活活動よりも複雑でなく低次な動作である日常生活活動のタスクでもよい。身体的部位としては、手の指の他に、各活動に応じて、足の指、頭、肩等であてもよい。
【0134】
以上説明した各実施の形態では、ディスプレイ12は、人工現実感技術を用いて被験者が手段的日常生活活動をするための環境を仮想空間に表現した画像を表示する。本開示の技術は、これに限定されない。ディスプレイ12は、被験者が手段的日常生活活動又は日常生活活動をするための環境を2次元に表現した画像を表示してもよい。
【0135】
以上説明した各実施の形態では、ROM22に、健常者判断処理プログラム(
図4、
図8、
図9、
図11)及びしきい値学習処理プログラム(
図12)が記憶されている。本開示の技術は、これに限定されない。例えば、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、又はUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの任意の可搬型の記憶媒体に先ずは健常者判断処理プログラム(
図4、
図8、
図9、
図11)及びしきい値学習処理プログラム(
図12)を記憶させておいてもよい。この場合、記憶媒体の健常者判断処理プログラム(
図4、
図8、
図9、
図11)及びしきい値学習処理プログラム(
図12)が被験者判断装置100にインストールされ、インストールされたプログラムがCPU20によって実行される。
【0136】
また、通信網(図示省略)を介して被験者判断装置100に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶部に健常者判断処理プログラム(
図4、
図8、
図9、
図11)及びしきい値学習処理プログラム(
図12)を記憶させておき、健常者判断処理プログラム(
図4、
図8、
図9、
図11)及びしきい値学習処理プログラム(
図12)が被験者判断装置100の要求に応じてダウンロードされるようにしてもよい。この場合、ダウンロードされた健常者判断処理プログラム(
図4、
図8、
図9、
図11)及びしきい値学習処理プログラム(
図12)がCPU20によって実行される。
【0137】
また、上記各実施の形態で説明した被験者判断処理及びしきい値学習処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。また、被験者判断処理及びしきい値学習処理に含まれる各処理は、FPGA又はASIC等のハードウェア構成のみで実現されてもよいし、コンピュータを利用したソフトウェア構成とハードウェア構成との組み合わせで実現されてもよい。
【0138】
以上、この発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0139】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。