【実施例】
【0017】
以下に、本発明の実施例を説明する。
[実施例1〜4及び比較例1〜5]
表1に示す実施例1〜4と表2に示す比較例1〜4は、それらに記載された成分をそれぞれの割合で混合し、インフレーション成形機によるインフレーション成形加工で、外層,中間層及び内層からなる三層構造のフィルム本体を、それぞれの厚みバランス(層比)と、フィルム本体の全体の厚みがそれぞれ設定寸法となるように加工した植物栽培用被覆材である。
外層,中間層及び内層の層比を1:3:1となし、フィルム本体の全体の厚みを0.1mmにしている。
実施例1〜3及び比較例1〜4の外層において、光安定剤を0.50重量%、酸化防止剤(抗酸化剤)を0.10重量%それぞれ配合したところが、共通の構成にしている。
実施例1〜3及び比較例1〜4の中間層において、保温剤を10.00重量%、光安定剤を0.50重量%、防曇剤を2.00重量%、酸化防止剤(抗酸化剤)を0.10重量%それぞれ配合したところが、共通の構成にしている。
実施例1〜3及び比較例1〜4の内層において、防曇剤を2.50重量%、光安定剤を0.50重量%、酸化防止剤(抗酸化剤)を0.10重量%、防霧剤を0.10重量%それぞれ配合したところが、共通の構成にしている。
【0018】
詳しく説明すると、実施例1では、外層においてメタロセン系LLDPEを99.35重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合し、中間層においてEVA(VA15%)を77.25重量%,近赤外線吸収剤(PEX ST−0049)を10.00重量%,防霧剤を0.10重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合し、内層においてEVA(VA5%)を96.75重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合している。それにより、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が20%、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が75%、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が75%にそれぞれ設定されている。
実施例2では、外層においてメタロセン系LLDPEを99.20重量%,紫外線吸収剤を0.20重量%それぞれ配合し、中間層においてEVA(VA15%)を83.10重量%,近赤外線吸収剤(PEX ST−0049)を4.00重量%,防霧剤を0.10重量%,紫外線吸収剤を0.20重量%それぞれ配合し、内層においてEVA(VA5%)を96.60重量%,紫外線吸収剤を0.20重量%それぞれ配合している。それにより、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が20%、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が85%、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が85%にそれぞれ設定されている。
実施例3では、外層においてメタロセン系LLDPEを99.35重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合し、中間層においてEVA(VA15%)を81.25重量%,近赤外線吸収剤(PEX ST−0049)を6.00重量%,防霧剤を0.10重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%配合し、内層においてEVA(VA5%)を96.75重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合している。それにより、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が40%、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が82%、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が82%にそれぞれ設定されている。
実施例4では、外層においてメタロセン系LLDPEを99.35重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合し、中間層においてEVA(VA15%)を83.35重量%,近赤外線吸収剤(PEX ST−0049)を4.00重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合して防霧剤は配合せず、内層においてEVA(VA5%)を96.75重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合している。それにより、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が45%、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が85%、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が86%にそれぞれ設定されている。
【0019】
一方、比較例1は、外層においてメタロセン系LLDPEを98.40重量%,紫外線吸収剤を1.00重量%それぞれ配合し、中間層においてEVA(VA15%)を84.30重量%,近赤外線吸収剤(PEX ST−0049)を2.00重量%,防霧剤を0.10重量%,紫外線吸収剤を1.00重量%それぞれ配合し、内層においてEVA(VA5%)を95.80重量%,紫外線吸収剤を1.00重量%それぞれ配合している。それにより、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が0%、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が88%、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が87%にそれぞれ設定されている。
比較例2は、外層においてメタロセン系LLDPEを99.35重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合し、中間層においてEVA(VA15%)を67.25重量%,近赤外線吸収剤(PEX ST−0049)を20.00重量%,防霧剤を0.10重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合し、内層においてEVA(VA5%)を96.75重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合している。それにより、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が20%、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が70%、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が65%にそれぞれ設定されている。
比較例3は、外層においてメタロセン系LLDPEを99.35重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合し、中間層においてEVA(VA15%)を62.25重量%,近赤外線吸収剤(PEX ST−0049)を25.00重量%,防霧剤を0.10重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合し、内層においてEVA(VA5%)を96.75重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合している。それにより、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が20%、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が65%、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が60%にそれぞれ設定されている。
比較例4は、外層においてメタロセン系LLDPEを99.35重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合し、中間層においてEVA(VA15%)を87.35重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合して近赤外線吸収剤及び防霧剤は配合せず、内層においてEVA(VA5%)を96.75重量%,紫外線吸収剤を0.05重量%それぞれ配合している。それにより、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が20%、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が92%、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が90%にそれぞれ設定されている。
比較例5は、フィルム本体として、汎用の農業用ポリオレフィン系特殊フィルム(全体の厚み0.1mm)を用い、その上に遮光ネットが配置されて農業用ポリオレフィン系特殊フィルムを常時覆っている。それにより、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が10%、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が10%、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が10%にそれぞれ設定されている。
【0020】
表1及び表2に示される評価結果(成長状態、高温障害の有無、花付き・花色又は収量、総合評価)は、以下の指標に基づくものである。
実施例1〜4及び比較例1〜5の植物栽培用被覆材を用い、植物として花卉と野菜の温室栽培を行った。
花卉としては、高温障害が発生し易いマメ科植物のスイートピーと、ラン科植物の胡蝶蘭で実験を行った。
野菜としては、高温障害が発生し易いバラ科植物のいちごで実験を行った。
栽培時期は、スイートピーが9月から翌年の6月、胡蝶蘭が10月から翌年の6月、スイートピーが9月から翌年の6月。それぞれ異なる場所にて栽培実験を行った。
また、胡蝶蘭の栽培については、必要に応じて日中の高温時に遮光ネットを併用した。
【0021】
「成長状態」は、実施例1〜4及び比較例1〜5の植物栽培用被覆材で栽培実験中の植物(スイートピー、胡蝶蘭、いちご)を観察し、3段階で評価した結果である。
「徒長や生育遅れが全く無い」を○、「一部の植物に僅かな徒長や生育遅れが見られるものの全体的には支障が無い」を△、「全体的に徒長や生育遅れが有る」を×と評価した。
「高温障害の有無」は、実施例1〜4及び比較例1〜5の植物栽培用被覆材で栽培実験中の植物(スイートピー、胡蝶蘭、いちご)を観察し、3段階で評価した結果である。
「生育不良,葉焼け,落葉,枯れ,病害が全く無い」を○、「一部の植物に僅かな生育不良,葉焼け,落葉,枯れ,病害が見られるものの全体的には支障が無い」を△、「全体的に生育不良,葉焼け,落葉,枯れ,病害が有る」を×と評価した。
「花付き・花色」は、実施例1〜4及び比較例1〜5の植物栽培用被覆材で栽培実験中の花卉(スイートピー、胡蝶蘭)を観察し、3段階で評価した結果である。
「花の付き具合や花の色合いに全く問題が無い」を○、「一部の花卉で花の付き具合や花の色合いに僅かな問題が見られるものの全体的には支障が無い」を△、「全体的に花の付き具合や花の色合いに問題が有る」を×と評価した。
「収量」は、実施例1〜4及び比較例1〜5の植物栽培用被覆材で栽培実験中の野菜(いちご)を観察し、3段階で評価した結果である。
「収量の低下が全く無い」を○、「一部の植物に僅かな収量の低下が見られるものの全体的には支障が無い」を△、「全体的に収量の低下が有る」を×と評価した。
「総合評価」とは、前述した「成長状態」「高温障害の有無」「花付き・花色」又は「収量」の評価結果から総合的な機能を3段階で評価した。
「最適」を○、「良」を△、「不向き」を×と評価した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
[評価結果]
実施例1〜4と比較例1〜5を比較すると、実施例1〜4は、成長状態、高温障害の有無、花付き・花色又は収量、総合評価のすべてにおいて良好な評価結果が得られている。
この評価結果から明らかなように、実施例1〜4は、温室内の温度上昇を抑えながら植物の徒長や光合成速度の低下を防止して健全に成長させることができる。
特に実施例3は、光線透過率が最適で良好な評価結果となった。
それよりも光線透過率が上下の実施例1,2,4は、実施例3に比べやや劣る評価結果となったものの、植物の生育に支障がなくて許容範囲内であった。
このような評価結果から、スイートピーなどの高温が苦手なマメ科植物を栽培しても、徒長や生育遅れが全く無く、高温障害が発生せず、花の付き具合や花の色合いに全く問題が無いことを見出した。
したがって、高温が苦手なスイートピーなどでも高温障害が生じることなく健全に成長させることができる。
【0025】
これに対して、比較例1〜5は、成長状態、高温障害の有無、花付き・花色又は収量、総合評価のいずれかで不良な評価結果になっている。
詳しく説明すると、比較例1は、波長325nmの紫外線で測定した平均透過率が20%未満の0%であるため、スイートピー及び胡蝶蘭の花付き・花色と、いちごの収量で不良な評価結果になった。
比較例2は、波長400〜700nmの可視光線で測定した平均透過率が75%未満の70%であるため、胡蝶蘭の花付き・花色と、いちごの収量で不良な評価結果になった。
比較例3は、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が70%未満の60%であるため、スイートピー及び胡蝶蘭の花付き・花色と、いちごの収量で不良な評価結果になった。
比較例4は、波長800nmの近赤外線で測定した平均透過率が85%よりも高い90%であるため、スイートピー及び胡蝶蘭の花付き・花色と、いちごの収量で不良な評価結果になった。
比較例5は、光線透過率が低過ぎるため、高温障害の有無の除いて不良な評価結果になった。