【実施例】
【0028】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
<酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液の調整>
SUS製反応器に、無水酢酸銅(日本化学産業製)80gを加え、ここに、精製水700mLを加えた。反応器の温度を40℃に上げて撹拌しながら、酢酸銅を溶解させた。その後、この溶液を−15℃に冷却した。次に、反応器内の酢酸銅に対するヒドラジンの割合(モル)が1.2になるように、40重量%ヒドラジン溶液を調整し、これを、15分かけて上記反応器に加えた。添加完了後、反応器の温度を25℃に上げて、反応器内の撹拌を1時間継続した。
得られた反応液について、遠心分離機を用いた固液分離を行うことによって、酸化第一銅ナノ粒子を得た。
次に、得られた酸化第一銅ナノ粒子を、SUS製タンクに投入し、ここに、ジエチレングリコール100mLを加え、混合物に超音波分散することによって、酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液(コロイド分散液に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:10質量%)を得た。この分散液における酸化第一銅ナノ粒子の平均一次粒径は15nm、平均二次粒径は80nmであった。
【0030】
<コロイド分散液のセルロース繊維への塗布・乾燥>
セルロース繊維からなる不織布として、旭化成せんい(株)製ベンリーゼを用いた。ベンリーゼを10cm×10cmサイズに切り出し、これを、得られた酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液に浸漬させた。
酸化第一銅を付着させた後の不織布を、コロイド分散液中から引き上げ、エタノールで余剰の分散液を洗い流した。
洗浄後の不織布を真空乾燥機にて100℃まで加温して乾燥させ、エタノールを除去した。
こうして、抗菌シート(セルロース繊維に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:3質量%)を得た。
【0031】
(抗菌性の評価)
得られた抗菌シートの抗菌性を、JIS L 1902:2008「菌液吸収法」により、評価した。試験菌種には、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus、NBRC番号:12732)を用いた。
評価基準を下記に示す。
A:18時間培養後の生菌数の常用対数値が1.3未満
B:18時間培養後の生菌数の常用対数値が1.3以上、接種直後の値未満
C:18時間培養後の生菌数の常用対数値が接種直後の値以上のもの
実施例1の抗菌シート存在時には、接種直後の生菌数の常用対数値は3.7であったのに対し、18時間培養後の常用対数値は感度以下の<1.3にまで顕著に減少した。この結果から、実施例1の抗菌シートは高い抗菌性を備えることが見出された。結果を表1に示す。
【0032】
(抗かび性の評価)
得られた抗菌シートの抗かび性を、JIS Z 2911:2010「7.繊維製品の試験」を準用して、評価した。
試験菌種には、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger、NBRC番号:105649)、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum、NBRC番号:6352)、ケトミウム・グラボサム(Chaetomium globosum、NBRC番号:6347)、ミロテシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria、NBRC番号:6113)の4種を用いた。
評価基準を下記に示す。
A:試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない。
B:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、全面積の1/3を超えない。
C:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、全面積の1/3を超える。
湿式法2週間後のかび抵抗性、乾式法4週間後のかび抵抗性を併せて確認したが、いずれも、実施例1の抗菌シートの接種部分には菌糸の発育は認められなかった。この結果から、実施例1の抗菌シートは高い抗カビ性を備えることが確認された。結果を表1に示す。
【0033】
(安定性の評価)
得られた抗菌シートの安定性を、得られた抗菌シートの表面にスコッチテープを貼り付け、その後、テープを剥離したときの、テープへの酸化第一銅の付着の程度によって、評価した。
評価基準を下記に示す。
A:酸化第一銅の転写なし
B:酸化第一銅の一部が転写
C:酸化第一銅の全部が転写
実施例1の抗菌シートでは、テープに酸化第一銅の転写は確認されなかった。結果を表1に示す。
【0034】
また、この安定性の評価後の実施例1の抗菌シートについて、前述の通り、抗菌性の評価及び抗かび性の評価を行ったところ、スコッチテープの貼り付け及び剥離を行っていない抗菌シートの場合と同等の抗菌性及び抗かび性が維持されていた。
【0035】
【表1】
【0036】
(
参考例1)
<酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液の調整>
SUS製反応器に、無水酢酸銅(日本化学産業製)40gを加え、ここに、精製水700mLを加えた。反応器の温度を40℃に上げて撹拌しながら、酢酸銅を溶解させた。その後、この溶液を−15℃に冷却した。次に、反応器内の酢酸銅に対するヒドラジンの割合(モル)が0.2になるように、64重量%ヒドラジン溶液を調整し、これを、15分かけて上記反応器に加えた。添加完了後、反応器の温度を25℃に上げて、反応器内の撹拌を1時間継続した。
得られた反応液について、遠心分離機を用いた固液分離を行うことによって、酸化第一銅ナノ粒子を得た。
次に、得られた酸化第一銅ナノ粒子を、SUS製タンクに投入し、ここに、ジエチレングリコール100mLを加え、混合物に超音波分散することによって、酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液(コロイド分散液に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:10質量%)を得た。
参考例1におけるこの分散液には沈降成分が認められた。この分散液における酸化第一銅ナノ粒子の平均一次粒径は50nm、平均二次粒径は300nmであった。
【0037】
<コロイド分散液のセルロース繊維への塗布・乾燥>
分散液中の沈降成分を遍在させるため、撹拌子を用いて分散液を撹拌させながら、実施例1で使用のセルロース繊維からなる不織布(旭化成せんい(株)製ベンリーゼ)を、10cm×10cmサイズに切り出し、これを、得られた酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液に浸漬させた。
酸化第一銅を付着させた後の不織布を、コロイド分散液中から引き上げ、エタノールで余剰の分散液を洗い流した。
洗浄後の不織布を真空乾燥機にて100℃まで加温して乾燥させ、エタノールを除去した。
こうして、抗菌シート(セルロース繊維に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:5質量%)を得た。
【0038】
参考例1の抗菌シートについて、実施例1の抗菌シートの場合と同様に、抗菌性の評価、抗かび性の評価、安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
参考例1の抗菌シートは、実施例1の抗菌シートの場合と同様に、高い抗菌性及び抗かび性を示す一方で、スコッチテープテストにおいてテープへの若干の酸化第一銅の付着が見られた。
【0039】
(比較例1)
<酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液の調整>
SUS製反応器に、無水酢酸銅(日本化学産業製)10gを加え、ここに、精製水700mLを加えた。反応器の温度を40℃に上げて撹拌しながら、酢酸銅を溶解させた。その後、この溶液を−15℃に冷却した。次に、反応器内の酢酸銅に対するヒドラジンの割合(モル)が0.1になるように、20重量%ヒドラジン溶液を調整し、これを、15分かけて上記反応器に加えた。添加完了後、反応器の温度を25℃に上げて、反応器内の撹拌を1時間継続した。
得られた反応液について、遠心分離機を用いた固液分離を行うことによって、酸化第一銅ナノ粒子を得た。
次に、得られた酸化第一銅ナノ粒子を、SUS製タンクに投入し、ここに、ジエチレングリコール100mLを加え、混合物に超音波分散することによって、酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液(コロイド分散液に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:10質量%)を得た。比較例1におけるこの分散液には沈降成分が認められた。この分散液における酸化第一銅ナノ粒子の平均一次粒径は200nm、平均二次粒径は2000nmであった。
【0040】
<コロイド分散液のセルロース繊維への塗布・乾燥>
分散液中の沈降成分を遍在させるため、撹拌子を用いて分散液を撹拌させながら、実施例1で使用のセルロース繊維からなる不織布(旭化成せんい(株)製ベンリーゼ)を、10cm×10cmサイズに切り出し、これを、得られた酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液に浸漬させた。
酸化第一銅を付着させた後の不織布を、コロイド分散液中から引き上げ、エタノールで余剰の分散液を洗い流した。
洗浄後の不織布を真空乾燥機にて100℃まで加温して乾燥させ、エタノールを除去した。
こうして、抗菌シート(セルロース繊維に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:5質量%)を得た。
【0041】
比較例1の抗菌シートについて、実施例1の抗菌シートの場合と同様に、抗菌性の評価、抗かび性の評価、安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1の抗菌シートは、実施例1の抗菌シートの場合と同様に、高い抗菌性及び抗かび性を示す一方で、スコッチテープテストにおいてテープへの酸化第一銅の付着が見られた。
【0042】
そして、実施例1の抗菌シートの場合と同様に、安定性の評価後の比較例1の抗菌シートについて、前述の通り、抗菌性の評価及び抗かび性の評価を行ったところ、乾式法4週間後のかび抵抗性の評価において、菌糸の発育が認められた。
【0043】
(比較例2)
酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液の代わりに、銀ナノ粒子(和光純薬製)(銀ナノ粒子の平均一次粒径:10nm、平均二次粒径:100nm)のコロイド分散液を用いた
点以外は、実施例1の場合と同様にして、比較例2の抗菌シートを得た。
比較例2の抗菌シートについて、実施例1の抗菌シートの場合と同様に、抗菌性の評価、抗かび性の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2の抗菌シートは、乾式法4週間後のかび抵抗性の評価において、菌糸の全面積の1/3を超える程度にまでの発育が認められ、抗かび性が劣ることがわかった。