(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS K7113に準拠した引張試験において、25℃及び引張速度200mm/分で引っ張った際の50Nの応力負荷時の引張伸びが、125mm以上である、請求項1又は2に記載のガラス板貼り合わせ用樹脂膜。
JIS K7113に準拠した引張試験において、引張速度200mm/分で破断するまで引っ張った際の破断エネルギーが、4.8J以上20.5J以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス板貼り合わせ用樹脂膜。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るガラス板貼り合わせ用樹脂膜(本明細書において、「樹脂膜」と略記することがある)は、ガラス板に貼り合わされて用いられる。
【0023】
本発明に係る樹脂膜は、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む。本発明に係る樹脂膜では、JIS K7113に準拠した引張試験において、25℃及び50Nの応力負荷後の引張伸びが、120mm以上である。
【0024】
本発明では、上記の構成が備えられているので、樹脂膜がガラス板に貼り合わされたときに、得られるガラス板含有積層体の衝撃時の破損を抑えることができる。例えば、ガラス板含有積層体に、物質が衝突したとしても、ガラス板含有積層体は破損し難い。本発明では、頭部傷害値(HIC)を効果的に低くすることができる。本発明では、乗員及び歩行者が合わせガラスに衝突しても、乗員及び歩行者がダメージを受けにくい。
【0025】
ガラス板含有積層体の損傷をより一層抑える観点からは、上記引張伸びは好ましくは125mm以上、より好ましくは135mm以上、である。上記引張伸びは好ましくは250mm以下、より好ましくは160mm以下である。
【0026】
なお、上記引張伸びの測定は以下の手順に従って行う。樹脂膜を形成するための樹脂組成物を単層で押し出すことにより、平均厚さが0.76mmの単層の樹脂膜を作製する。得られた樹脂膜を25℃相対湿度30%の条件で2時間静置する。その後、JIS K7113「プラスチックの引張試験方法」に準拠し、
図3に示すダンベル型(SDK−100)に型取りし、テンシロン試験機により引張試験を実施する。引張試験は25℃相対湿度30%の条件で実施し、引張速度は200mm/分とし、破断するまで引張試験を実施する。得られた測定結果において、50Nの荷重がかかった時の伸び量を評価する。
【0027】
以下、本発明に係る樹脂膜に用いることができる各材料を詳細に説明する。
【0028】
(熱可塑性樹脂)
上記樹脂膜に含まれている熱可塑性樹脂は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂を用いることが可能である。上記熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0030】
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、ガラス板、合わせガラス部材又は他の樹脂膜に対する本発明に係る樹脂膜の接着力がより一層高くなる。
【0031】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%の範囲内である。
【0032】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、好ましくは3500以下、より好ましくは3000以下、更に好ましくは2500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、樹脂膜の成形が容易になる。
【0033】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0034】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3又は4であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、樹脂膜のガラス転移温度が充分に低くなる。
【0035】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、樹脂膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、樹脂膜の柔軟性が高くなり、樹脂膜の取扱いが容易になる。
【0037】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0038】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、樹脂膜及びガラス板含有積層体の耐湿性が高くなる。
【0039】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0040】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0041】
上記アセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
【0042】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396−92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。
【0043】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記ポリビニルアルコールと上記アルデヒドとを混合する混合工程、及び、上記混合工程によって得られる樹脂を熟成させる熟成工程とを含む工程によって得られることが好ましい。
【0044】
上記ポリビニルアセタール樹脂を得る工程は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを混合する混合工程と、上記混合工程により得られる樹脂を熟成させる熟成工程とを含むことが好ましい。
【0045】
上記熟成工程としては、特に限定されないが、例えば、上記混合工程によって得られる樹脂に酸を添加する添加工程、熟成温度まで加熱する加熱工程、熟成温度で保持する保持工程、及び、冷却する冷却工程(一部の工程は省略してもよい)をこの順で有する工程などが挙げられる。
【0046】
引張伸びを良好にする観点からは、例えば、ポリビニルアセタール樹脂を合成する際に、上記保持工程において、熟成時間を調整することにより、隣接する水酸基が存在する割合を減らすことが好ましい。具体的には、上記保持工程において、熟成時間を短くすることで隣接する水酸基が存在する割合を減らすことができる。別法として、上記保持工程を設けずに、上記加熱工程後、直ちに冷却することで、隣接する水酸基が存在する割合を減らすことができる。上記加熱工程後に直ちに冷却する場合には、加熱後に熟成温度±5℃に90分以上保持せずに、冷却を開始する。上記加熱工程後に直ちに冷却する場合、加熱後に熟成温度±5℃に60分以上保持せずに冷却を開始することが好ましく、15分以上保持せずに冷却を開始することがより好ましい。
【0047】
他にも、上記熟成温度を調整することにより、隣接する水酸基が存在する割合を減らすことができる。上記熟成温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以下であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂に混合する酸は、塩酸又は硝酸であることが好ましい。
【0048】
(可塑剤)
樹脂膜の接着力をより一層高める観点から、上記樹脂膜は、可塑剤を含む。樹脂膜に含まれている熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、樹脂膜は、可塑剤を含むことが特に好ましい。
【0049】
上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0051】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0052】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0053】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。
【0054】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0055】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0057】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6〜10の有機基であることが好ましい。
【0058】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)又はトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートを含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0059】
上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の含有量は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下、更に好ましくは45重量部以下、更に好ましくは40重量部以下である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、樹脂膜の透明性がより一層高くなる。
【0060】
ガラス板含有積層体の損傷をより一層抑える観点からは、上記可塑剤が、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含み、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートの含有量が20重量部以上、40重量部以下であることが好ましい。
【0061】
(他の成分)
上記樹脂膜は、必要に応じて、紫外線遮蔽剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、耐湿剤、接着力調整剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
(樹脂膜の他の詳細)
HICをより一層効果的に低くし、合わせガラスの耐貫通性を効果的に高める観点からは、上記樹脂膜のガラス転移温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下である。
【0063】
本発明に係る樹脂膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに遮熱性を充分に高める観点からは、樹脂膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。樹脂膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。樹脂膜の厚みが上記上限以下であると、樹脂膜の透明性がより一層良好になる。
【0064】
上記樹脂膜の製造方法は特に限定されない。該樹脂膜の製造方法として、従来公知の方法を用いることができる。例えば、配合成分を混練し、樹脂膜を成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0065】
なかでも、上記樹脂膜の製造方法は、上記熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を得る工程と、上記ポリビニルアセタール樹脂と、上記可塑剤とを配合した組成物を成形して、ガラス板貼り合わせ用樹脂膜を得る工程とを備えることが好ましい。さらに、上記ポリビニルアセタール樹脂を得る工程は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを混合する混合工程と、上記混合工程により得られる樹脂を熟成させる熟成工程とを含むことが好ましい。また、上記熟成工程は、上記混合工程により得られる上記樹脂を熟成温度まで加熱する加熱工程と、上記加熱工程後に直ちに冷却する冷却工程とを含むことが好ましい。
【0066】
上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。
【0067】
本発明に係る樹脂膜は、単独で合わせガラスに用いられてもよく、他の樹脂膜とともに合わせガラスに用いられてもよい。本発明に係る樹脂膜は、他の樹脂膜に積層された状態で、多層樹脂膜として用いることができる。
【0068】
(ガラス板含有積層体)
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス板貼り付け用樹脂膜を用いたガラス板含有積層体の一例を示す断面図である。
【0069】
図1に示すガラス板含有積層体1は、樹脂膜2と、第1の合わせガラス部材21(第1のガラス板)と、第2の合わせガラス部材22(第2のガラス板であってもよい)とを備える。樹脂膜2は単層の樹脂膜である。樹脂膜2は、ガラス板含有積層体を得るために用いられる。樹脂膜2は、ガラス板に貼り合わされて用いられる樹脂膜である。ガラス板含有積層体1は、合わせガラスである。
【0070】
樹脂膜2は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。樹脂膜2の第1の表面2a(一方の表面)に、第1の合わせガラス部材21が積層されている。樹脂膜2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2b(他方の表面)に、第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0071】
図2は、本発明の一実施形態に係るガラス板貼り付け用樹脂膜を用いたガラス板含有積層体の変形例を示す断面図である。
【0072】
図2に示すガラス板含有積層体11は、樹脂膜12と、第1の合わせガラス部材21(第1のガラス板)と、第2の合わせガラス部材22とを備える。樹脂膜12は、多層の樹脂膜である。樹脂膜12は、ガラス板含有積層体を得るために用いられる。樹脂膜12は、ガラス板に貼り合わされて用いられる樹脂膜である。ガラス板含有積層体11は、合わせガラスである。
【0073】
樹脂膜12は、第1の層13(樹脂膜)、第2の層14(樹脂膜)及び第3の層15(樹脂膜)の3つの樹脂膜がこの順で積層された構造を有する。本実施形態では、第2の層14は、遮音層である。第2の層14として、本発明の一実施形態に係る樹脂膜が用いられている。第2の層14は、第1,第3の層13,15を介して、第1,第2の合わせガラス部材21,22に貼り合されている。第1,第3の層13,15は、保護層である。第1,第3の層13,15も、本発明の実施形態に係る樹脂膜であってもよい。
【0074】
樹脂膜12は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。第2の層14(樹脂膜)が、第1,第3の層13,15を介して、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されている。第1の層13の外側の表面13aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。第2の層15の外側の表面15aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0075】
このように、本発明に係るガラス板含有積層体は、第1のガラス板と、本発明に係る樹脂膜とを備えていればよい。上記樹脂膜は、上記第1の合わせガラス部材(第1のガラス板)と上記第2の合わせガラス部材との間に配置されていることが好ましい。上記ガラス板含有積層体は、樹脂膜として、本発明に係るガラス板貼り付け用樹脂膜のみを備えていてもよく、本発明に係るガラス板貼り付け用樹脂膜と他の樹脂膜とを備えていてもよい。上記ガラス板含有積層体は、本発明に係るガラス板貼り付け用樹脂膜を少なくとも含む。
【0076】
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に樹脂膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に樹脂膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第2の合わせガラス部材がガラス板又はPETフィルムであることが好ましい。
【0077】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0078】
上記合わせガラス部材の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0079】
上記ガラス板含有積層体の製造方法は特に限定されない。上記第1のガラス板に、上記樹脂膜を貼り合わせることにより、ガラス板含有積層体を得ることができる。さらに、例えば、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、樹脂膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、第1の合わせガラス部材と樹脂膜との間及び授記第2の合わせガラス部材と樹脂膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、ガラス板含有積層体である合わせガラスを得ることができる。
【0080】
上記樹脂膜及び上記ガラス板含有積層体は、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記樹脂膜及び上記ガラス板含有積層体は、これらの用途以外にも使用できる。上記樹脂膜及び上記ガラス板含有積層体は、車両用又は建築用の樹脂膜及びガラス板含有積層体であることが好ましく、車両用の樹脂膜及びガラス板含有積層体であることがより好ましい。上記樹脂膜及び上記ガラス板含有積層体は、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
【0081】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0082】
以下の実施例及び比較例で用いたポリビニルブチラール(PVB)樹脂に関しては、ブチラール化度(アセタール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396−92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0083】
(合成例1)
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3400mlと、ポリビニルアルコール(平均重合度1700、けん化度99モル%)300gとを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に、触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.45重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド30gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド137gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.6重量%となるように添加し、60℃に加熱し、60℃に達した時点で溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂(1)を得た。
【0084】
(合成例2)
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3400mlと、ポリビニルアルコール(平均重合度1700、けん化度99モル%)300gとを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.45重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド30gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド154gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.6重量%となるように添加し、55℃に加熱し、55℃に達した時点で溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂(2)を得た。
【0085】
(合成例3)
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3400mlと、ポリビニルアルコール(平均重合度1700、けん化度99モル%)300gとを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.45重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド30gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド137gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.6重量%となるように添加し、55℃に加熱し、55℃に達した時点で溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂(3)を得た。
【0086】
(合成例4)
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3400mlと、ポリビニルアルコール(平均重合度1700、けん化度99モル%)300gとを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.45重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド30gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド137gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.6重量%となるように添加し、50℃に加熱し、50℃に達した時点で溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂(4)を得た。
【0087】
(合成例5)
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700mlと、ポリビニルアルコール(平均重合度1700、けん化度99モル%)300gとを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.4重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド23gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド140gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.6重量%となるように添加し、65℃に加熱し、65℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂(A)を得た。
【0088】
(合成例6)
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、ポリビニルアルコール(平均重合度2300、けん化度87.5モル%)300gとを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35重量%塩酸を、塩酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド14.2gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド170gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、35重量%塩酸を、塩酸濃度が3.9重量%となるように添加し、45℃に加熱し、45℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂(B)を得た。
【0089】
(実施例1)
樹脂膜の作製:
ポリビニルブチラール樹脂(1)100重量部に、可塑剤であるトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、組成物を得た。
【0090】
得られた組成物を押出機により押出して、単層の樹脂膜(平均厚み760μm)を得た。
【0091】
合わせガラスの作製:
得られた樹脂膜を、縦110cm×横110cmに切り出した。次に、2枚のクリアガラス(縦110cm×横110cm×厚み2.5mm)の間に樹脂膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、合わせガラスを得た。
【0092】
(実施例2〜4及び比較例1,2)
組成物の配合成分の種類及び配合量を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂膜及び合わせガラスを得た。
【0093】
(評価)
(1)ガラス転移温度
実施例及び比較例で得られた平均厚さが0.76mmの樹脂膜を25℃及び相対湿度30%の条件で2時間静置した。その後、TAINSTRUMENTS社製のARES−G2を用いて、粘弾性を測定した。治具として、直径8mmのパラレルプレートを用いた。3℃/分の降温速度で100℃から−10℃まで温度を低下させる条件、及び周波数1Hz及び歪1%の条件で測定を行った。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。
【0094】
(2)引張伸び
実施例及び比較例で得られた平均厚さが0.76mmの樹脂膜を25℃相対湿度30%の条件で2時間静置した。その後、JIS K7113「プラスチックの引張試験方法」に準拠し、
図3に示すダンベル型(SDK−100)に型取りし、テンシロン試験機により引張試験を実施した。引張試験は25℃相対湿度30%条件で実施し、引張速度は200mm/分とし、破断するまで引張試験を実施した。得られた測定結果において、50Nの荷重がかかった時の伸び量を評価した。
【0095】
(3)破断エネルギー
平均厚さが0.76mmの樹脂膜を25℃相対湿度30%の条件で2時間静置した。その後、JIS K7113「プラスチックの引張試験方法」に準拠し、
図3に示すダンベル型(SDK−100)に型取りし、テンシロン試験機により引張試験をを行い、応力歪曲線を作成した。引張試験は25℃相対湿度30%条件で実施し、引張速度は200mm/分とし、破断するまで引張試験を実施した。得られた応力歪曲線とx軸とに囲まれた範囲の面積により破断エネルギーを求めた。
【0096】
(4)HIC
合わせガラスを縦50cm、横110cmに切断し、サンプル2を作製した。
図4及び
図5に示した構造を有するHIC測定装置を用いてサンプルのHICを測定した。図に示すようにHIC装置は、合わせガラスの外周部分を固定するような構造を有している。頭部インパクターは、金属製のコアに半球状の樹脂製ヘッドスキンが取り付けられている。その中に3軸方向の加速度センサーが備え付けられている。頭部インパクターは、NCAP等自動車の認証試験の「歩行者保護性能試験」にて使用される人体の頭部を模したダミーである。図の装置より、合わせガラス中央に35km/hの速度で、頭部インパクターを射出して、合わせガラスに衝突させた。
【0097】
HICは、下記の式により算出される。式中のaはインパクトヘッドの合成加速度を表し、t2−t1は、時間間隔15msとする。具体的な試験方法は、国土交通省発行の「道路運送車両の保安基準:細目告示別添99 歩行者頭部保護の技術基準」に記載された内容で実施した。HICを下記の基準で判定した。
【0099】
[HIC]の判定基準」
○○:HICが200以下
○:HICが200を超え、350以下
×:HICが350を超える