(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1木材の前記くさび面及び前記第2木材の前記くさび面にはそれぞれ凹状のくさび面が形成され、前記凹状のくさび面には嵌合部材が嵌め込まれている、請求項1に記載の木材の接合構造。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
(建物)
図1(A)には、格子状の木造架構20が外周面に形成された建物10が示されており、
図1(B)には、地盤面GLに対して傾斜した格子状の木造架構22が外周面に形成された建物12が示されている。本発明の第1実施形態に係る木材の接合構造は、木造架構20、22における継手部20A、22Aに適用される。
【0017】
なお、木造架構20、22はそれぞれ建物10、12の外周面に形成されており、図示しないスラブの荷重を支える構造部材とされているが、本実施形態に係る木材の接合構造が適用される架構はこれに限らない。例えば建物の内部に形成された架構でもよいし、スラブ等の荷重を支えない化粧架構でもよい。すなわち、本実施形態に係る木材の接合構造は、建物の屋内外及び構造強度の要否に関わらず様々な架構に用いることができる。
【0018】
(接合構造)
図2(A)には、未接合状態の第1木材32、第2木材34及びボルト90が示されている。第1木材32の端面は三角凸状のくさび面32Aとされ、第2木材34の端面は三角凹状のくさび面34Aとされている。第1木材32、第2木材34の軸方向に対して傾斜したくさび面32Aとくさび面34Aとは、第1木材32と第2木材34とを突き合わせた状態で互いに係合する形状とされている。なお、本発明におけるくさび面とは、凸状あるいは凹状に形成され、材軸方向に対して傾斜した傾斜面のことをいう。
【0019】
第1木材32、第2木材34の内部には、一方の端部がくさび面32A、34Aに開口するボルト孔32B、34Bが設けられている。ボルト孔32B、34Bは、それぞれ第1木材32、第2木材34の軸方向に沿って形成され、また、第1木材32と第2木材34を突き合わせた状態で互いに軸線が略一致する。
【0020】
ボルト孔32B、34Bの他方の端部は、第1木材32、第2木材34に形成された貫通孔32C、34Cに開口している。なお、貫通孔32C、34Cは第1木材32、第2木材34を正面視で手前から奥に向かって貫通しているが、これを非貫通の座掘りとしてもよい。
【0021】
図2(B)に示すように、第1木材32と第2木材34とを接合するためには、ボルト90をボルト孔32B、34Bに通し、くさび面32A、34Aを突き合わせ、貫通孔32C、34Cから突出したボルト90の端部に、ナット92を螺合する。これにより、くさび面32A、34Aが互いに圧着されてくさび接合構造が形成され、第1木材32と第2木材34と接合される。
【0022】
本実施形態において、第1木材32、第2木材34としては、繊維方向が軸方向と略一致するように配置されたLVL(単板積層材)が使用されている。これにより、軸力に対する強度が高くなっている。なお、第1木材32、第2木材34としては、LVLに代えて集成材、CLT、合板、無垢材などの木材を用いたり、木材と金属、樹脂、コンクリートなどの複合材を用いることができる。
【0023】
(作用・効果)
第1実施形態の木材の接合構造では、
図2(B)に示すように、第1木材32と第2木材34の接合部J1に軸力N(第1木材32及び第2木材34に沿った方向の力)が作用したとき、圧縮力に対してはくさび面32A、34Aが互いに食い込んで、引張力に対してはボルト90が引張り力を負担して、軸力Nに抵抗することができる。また、接合部J1に曲げモーメントMが作用したとき、くさび面32A、34Aが互いに圧迫されて、曲げモーメントMに抵抗することができる。
【0024】
第1木材32と第2木材34とは、ボルト90で締結されているので、接合部J1に軸力Nや曲げモーメントMが作用しても、第1木材32と第2木材34の接合状態が維持される。さらに、ボルト90は、第1木材32、第2木材34の軸方向に沿って埋設されているので、接合部J1に作用する軸力Nに対して効果的に抵抗することができる。
【0025】
なお、ボルト90の径や本数は任意に選択することができる。ボルト90の径を太くしたり、本数を増やすことで、第1木材32と第2木材34との接合強度を高めることができる。
【0026】
[第2実施形態]
第1実施形態の木材の接合構造においては、接合部J1に第1木材32、第2木材34の軸方向に沿ったボルト90が埋設されている(
図2(B)参照)が、第2実施形態の木材の接合構造では、
図3(A)に示すように、第1木材32、第2木材34の接合部J2に、第1木材32、第2木材34の軸方向に対して交差するボルト94が埋設されている。またボルト94は、くさび面32A、34Aに対して略直交するように、接合部J2に埋設されている。
【0027】
接合部J2に曲げモーメントMが作用した際には、くさび面32A、34Aは、圧縮側面32AC、34ACでは互いに押圧して圧縮力Cに抵抗する。一方、引張側面32AT、34ATは互いに引張力Tを受けるが、引張力Tに抵抗するボルト94が引張力を受ける方向に沿って配置されているため、接合部J2に作用する曲げモーメントMに対して効果的に抵抗することができる。
【0028】
また、本実施形態では、ボルト94を通すためのボルト孔34Dが、第2木材34の外側面に開口している。これにより、第1木材32、第2木材34のくさび面32A、34Aを突き合わせた後、第2木材34の外側面側からボルト94を挿入することができる。このため、作業効率が高い。
【0029】
なお、本実施形態では、ボルト94の両端部はそれぞれ貫通孔32C、34Cでナット92と螺合されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図3(B)に示すように、第1木材32の外側面から第2木材34の外側面へボルト94を貫通させ、それぞれの外側面においてナット92と螺合してもよい。こうすることで、ボルト94とナット92とを螺合し易くできる。
【0030】
その他の構成及び作用・効果は
図2(A)に示した第1実施形態における木材の接合構造と等しいので、説明は省略する。以下に示す各実施形態についても同様の構成及び作用・効果については、適宜説明は省略する。なお、第1、第2実施形態はそれぞれ組み合わせて用いてもよい。すなわち、第1木材32、第2木材34の軸方向に沿ったボルト90(
図2(B)参照)と、第1木材32、第2木材34の軸方向に対して交差するボルト94(
図3(A)、(B))参照とを組み合わせて用いることができる。
【0031】
[第3実施形態]
第3実施形態の木材の接合構造は、
図1(A)、(B)に示した木造架構20、22における継手部20A、22Aに適用される。
【0032】
(接合構造)
図4(A)には、未接合状態の第1木材36、第2木材38、嵌合部材40及びボルト90が示されている。第3実施形態の木材の接合構造では、第1木材36の端面36Aには、三角凹状のくさび面36AHが形成されている。また、第2木材38の端面38Aには、三角凹状のくさび面38AHが形成されている。
【0033】
図4(B)に示すように、第1木材36と第2木材38とを突き合わせた状態で、端面36A、38Aにおけるくさび面36AH、38AHには嵌合部材40が嵌め込まれ、端面36A、38Aにおけるくさび面36AH、38AH以外の部分は互いに当接している。
【0034】
嵌合部材40にはボルト孔40Bが設けられており、ボルト孔40Bは嵌合部材40を貫通している。ボルト孔40Bは、第1木材36と第2木材38を突き合わせ、嵌合部材40を嵌め込んだ状態で、第1木材36、第2木材38に設けられたボルト孔36B、38Bと軸線が略一致している。
【0035】
これにより、第1木材36、第2木材38及び嵌合部材40を貫通するようにボルト90を配置することができる。このボルト90によりくさび面36AH、38AHと嵌合部材40が互いに圧着されてくさび接合構造が形成され、第1木材36と第2木材38とが接合される。
【0036】
(作用・効果)
第3実施形態の木材の接合構造では、
図4(B)に示すように、第1木材36、38の端面36A、38Aにくさび面36AH、38AHが形成され、このくさび面36AH、38AHには嵌合部材40が嵌め込まれている。
【0037】
このため、第1木材36と第2木材38の接合部J3に軸力Nが作用したとき、圧縮力に対してはくさび面36AH、38AHに嵌合部材40が食い込んで、引張力に対してはボルト90が引張り力を負担して、軸力Nに抵抗することができる。
【0038】
また、接合部J3に曲げモーメントMが作用したとき、くさび面36AH、38AHが嵌合部材40に圧迫されて、曲げモーメントMに抵抗することができる。
【0039】
嵌合部材40は、第1木材36、第2木材38よりも高強度の木材とされている。これにより、嵌合部材40が低強度とされている場合と比較して、接合部J3に作用する軸力Nや曲げモーメントMに対する抵抗力を高めることができる。
【0040】
なお、嵌合部材40の材質としては、木材に限定されず、樹脂、金属、樹脂と木材を混錬凝結させた合成木などを任意に用いることができる。また、
図4(A)に示すように、嵌合部材40は立方体(正面視で四角形)とされているが、円柱形(正面視で円形)など任意の形状とすることができる。さらに、
図1(A)、(B)に示す木造架構20、22から、建物10、12の内側に向かって嵌合部材40を延設することで、建物10、12の内梁を形成することができる。
【0041】
なお、本実施形態において嵌合部材40にはボルト孔40Bが設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図4(C)に示すように、嵌合部材40にはボルト孔を形成しなくてもよい。この場合、ボルト90は、第1木材36、第2木材38の軸方向に沿って複数本埋設する。このようにすることで、嵌合部材40の強度低下を抑制できる。また、ボルト90の本数を増やすことで、第1木材36と第2木材38との接合強度を高めることができる。
【0042】
また、例えば
図4(D)に示すように、第1木材36、第2木材38には、第1木材36、第2木材38の軸方向に対して交差するボルト94を埋設してもよい。
図4(D)においては、くさび面36AH、38AHに対して略直交するように、ボルト94が第1木材36、第2木材38に埋設されている。このようにすることで、
図2(C)に示した木材の接合構造と同様、ボルト94は、接合部J3に作用する曲げモーメントMに対して効果的に抵抗することができる。
【0043】
[第4実施形態]
第4実施形態の木材の接合構造は、
図1(A)、(B)に示した木造架構20、22における仕口部20B、22Bに適用される。
【0044】
(接合構造)
図5(A)には、未接合状態の第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48及びボルト90が示されている。第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48の端面はそれぞれ、三角凸状のくさび面42A、44A、46A、48Aとされている。
【0045】
図5(B)に示すように、第1木材42、第2木材44、第3木材46及び第4木材48を突き合わせた状態では、第1木材42と第2木材44とが同軸上に配置され、第3木材46と第4木材48とが同軸上に配置される。このとき、くさび面42Aはくさび面46A及びくさび面48Aで形成される凹部に係合し、くさび面44Aも同様に、くさび面46A及びくさび面48Aで形成される凹部に係合する。また、くさび面46Aはくさび面42A及びくさび面44Aで形成される凹部に係合し、くさび面48Aも同様に、くさび面42A及びくさび面44Aで形成される凹部に係合する。
【0046】
第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48にはそれぞれ、一方の端部がくさび面42A、44A、46A、48Aに開口するボルト孔42B、44B、46B、48Bが設けられている。ボルト孔42B、44B、46B、48Bは、それぞれ第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48の軸方向に沿って形成され、また、第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48を突き合わせた状態では、ボルト孔42B、44Bの軸線が略一致し、ボルト孔46B、48Bの軸線が略一致する。
【0047】
図5(A)に示すように、ボルト孔42B、44B、46B、48Bの他方の端部は、第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48に形成された貫通孔42C、44C、46C、48Cに開口している。これにより、
図5(B)に示すように、第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48をボルト90を用いて接合することができる。このとき、ナット92でボルト90の両端を締めこむことにより、くさび面42A、44A、46A、48Aが圧着されてくさび接合構造が形成され、第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48が接合される。
【0048】
(作用・効果)
第4実施形態の木材の接合構造では、
図5(B)に示すように、第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48の接合部J4に軸力N1(第1木材42及び第2木材44に沿った方向の力)が作用したとき、圧縮力に対してはくさび面42Aがくさび面46A及びくさび面48Aで形成される凹部に食い込み、くさび面44Aも同様に、くさび面46A及びくさび面48Aで形成される凹部に食い込む。そして、引張力に対してはボルト90が引張り力を負担して、軸力N1に抵抗することができる。
【0049】
また、接合部J4に軸力N2(第3木材46及び第4木材48に沿った方向の力)が作用したとき、圧縮力に対してはくさび面46Aがくさび面42A及びくさび面44Aで形成される凹部に食い込み、くさび面48Aも同様に、くさび面42A及びくさび面44Aで形成される凹部に食い込む。そして、引張力に対してはボルト90が引張り力を負担して、軸力N2に抵抗することができる。
【0050】
ボルト90は、第1木材42の軸方向及び第3木材46の軸方向に沿って埋設されているため、接合部J4に作用する軸力N1、N2に対して効果的に抵抗することができる。
【0051】
また、接合部J4に曲げモーメントMが作用したとき、くさび面42A、44A、46A、48Aが互いに圧迫されて、曲げモーメントMに抵抗することができる。
【0052】
[第5実施形態]
第4実施形態の木材の接合構造においては、第1木材42の軸方向及び第3木材46の軸方向に沿ったボルト90が接合部J4に埋設されているが、第5実施形態の木材の接合構造では、
図6(A)、(B)に示すように、第1木材42の軸方向及び第3木材46の軸方向に対して交差するボルト94が、第1木材42、第2木材44、第3木材46及び第4木材48の接合部J5に埋設されている。
【0053】
またボルト94は、各くさび面42A、44A、46A及び48Aに対して略直交するように、接合部J5に埋設されている。
【0054】
これにより、接合部J5に作用する曲げモーメントMに対して効果的に抵抗することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、ボルト孔42D、44D、46D、48Dが、それぞれ第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48の外側面から、貫通孔42C、44C、46C、48Cを通って、くさび面42A、44A、46A、48Aへ貫通している。また、貫通孔42C、44C、46C、48Cから、ボルト孔42D、44D、46D、48Dと直交する方向へ、ボルト孔42E、44E、46E、48Eが形成されている。
【0056】
これにより、第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48のくさび面42A、44A、46A、48Aを突き合わせた後、第1木材42、第2木材44、第3木材46、第4木材48の外側面側からボルト94を挿入することができる。
【0057】
[第6実施形態]
第6実施形態の木材の接合構造では、
図7(A)、(B)に示すように、第1木材42の軸方向及び第3木材46の軸方向に沿ってボルト90を埋設し、第1木材42の軸方向及び第3木材46の軸方向に対して交差してボルト94を埋設している。また、ボルト90、94を埋設するため、第1木材42に上述したボルト孔42B、42D、42Eをそれぞれ形成し、同様に、第2木材44にボルト孔44B、44D、44Eを形成し、第3木材46にボルト孔46B、46D、46Eを形成し、第4木材48にボルト孔48B、48D、48Eを形成している。
【0058】
これにより、第1木材42、第2木材44、第3木材46及び第4木材48の接合部J6に作用する軸力N1、N2に対してボルト90が抵抗し、曲げモーメントMに対してボルト94が抵抗することができる。
【0059】
[第7実施形態]
第7実施形態の木材の接合構造は、
図1(A)、(B)に示した木造架構20、22における仕口部20B、22Bに適用される。
【0060】
(接合構造)
図8(A)には、未接合状態の第1木材52、第2木材54、第3木材56、第4木材58、嵌合部材60及びボルト90が示されている。第7実施形態の木材の接合構造では、第1木材52、第2木材54、第3木材56、第4木材58の端面はそれぞれ、三角凸状のくさび面52A、54A、56A、58Aとされている。さらに、くさび面52A、54A、56A、58Aの先端部には、三角凹状のくさび面52AH、54AH、56AH、58AHが形成されている。
【0061】
また、
図8(B)に示すように、第1木材52、第2木材54、第3木材56及び第4木材58を突き合わせた状態では、第1木材52と第2木材54とが嵌合部材60を挟んで同軸上に配置され、第3木材56と第4木材58とが嵌合部材60を挟んで同軸上に配置される。このとき、くさび面52A、54A、56A、58Aにおけるくさび面52AH、54AH、56AH、58AH(
図8(A)参照)に、嵌合部材60が嵌め込まれている。
【0062】
図8(A)に示すように、嵌合部材60にはボルト孔60B、60Cが設けられている。嵌合部材60をくさび面52AH、54AH、56AH、58AHに嵌め込んだ状態で第1木材52、第2木材54、第3木材56、第4木材58を突き合わせると、ボルト孔60Bは第1木材52、第2木材54に設けられたボルト孔52B、54Bと軸線が略一致する。また、ボルト孔60Cは第3木材56、第4木材58に設けられたボルト孔56B、58Bと軸線が略一致する。
【0063】
これにより、第1木材52、第2木材54及び嵌合部材60を貫通するようにボルト90を配置することができる。また、第3木材56、第4木材58及び嵌合部材60を貫通するようにボルト90を配置することができる。このボルト90により、くさび面52AH、54AH、56AH、58AHと嵌合部材60とが互いに圧着されてくさび接合構造が形成され、第1木材52、第2木材54、第3木材56及び第4木材58が接合される。
【0064】
(作用・効果)
第7実施形態の木材の接合構造では、
図8(B)に示すように、第1木材52、第2木材54、第3木材56、第4木材58のくさび面52A、54A、56A、58Aに三角凹状のくさび面52AH、54AH、56AH、58AHが形成され、このくさび面52AH、54AH、56AH、58AHには嵌合部材60が嵌め込まれている。
【0065】
このため、第1木材52、第2木材54、第3木材56及び第4木材58の接合部J7に軸力N1や軸力N2が作用したとき、圧縮力に対してはくさび面52Aと、くさび面56A及びくさび面58Aとが押圧し合い、また、くさび面54Aと、くさび面56A及びくさび面58Aとが押圧し合い、さらに、くさび面52AH、54AH、56AH及び58AHに嵌合部材60が食い込んで、引張力に対してはボルト90が引張り力を負担して、軸力N1、N2に抵抗することができる。
【0066】
また、接合部J7に曲げモーメントMが作用したとき、くさび面52AH、54AH、56AH及び58AHが嵌合部材60に圧迫されて、曲げモーメントMに抵抗することができる。
【0067】
[第8実施形態]
第7実施形態の木材の接合構造においては、第1木材52の軸方向及び第3木材56の軸方向に沿ったボルト90が埋設されているが、第8実施形態の木材の接合構造においては、
図9(A)、(B)に示すように、第1木材52の軸方向及び第3木材56の軸方向と交差するボルト94が、第1木材52、第2木材54、第3木材56及び第4木材58の接合部J8に埋設されている。また、ボルト94は、各くさび面52A、54A、56A及び58Aに対して略直交するように埋設されている。
【0068】
これによりボルト94は、接合部J8に作用する曲げモーメントMに対して効果的に抵抗することができる。また、嵌合部材60にボルト孔を設ける必要がないので、嵌合部材60の強度低下を抑制できる。
【0069】
[第9実施形態]
第9実施形態の木材の接合構造においては、
図10(A)、(B)に示すように、第1木材52の軸方向及び第3木材56の軸方向に沿ってボルト90を埋設し、第1木材52の軸方向及び第3木材56の軸方向に対して交差してボルト94を埋設している。
【0070】
これにより、第1木材52、第2木材54、第3木材56及び第4木材58の接合部J9に作用する軸力N1、N2に対してボルト90が抵抗し、曲げモーメントMに対してボルト94が抵抗することができる。
【0071】
なお、第7〜第9実施形態において、嵌合部材60は立方体(正面視で四角形)とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図11(A)、(B)に示す嵌合部材62のように、円柱形(正面視で円形)など任意の形状とすることができる。
【0072】
[第10実施形態]
第10実施形態の木材の接合構造は、
図1(A)、(B)に示した木造架構20、22における仕口部20B、22Bに適用される。
【0073】
(接合構造)
図12(A)には、未接合状態の第1木材72、第2木材74、第3木材76、嵌合部材64及びボルト90が示されている。第10実施形態の木材の接合構造では、第1木材72の端面72A、第2木材74の端面74A、第3木材76の上下面(第1木材72及び第2木材74と対向する面)76Aに、三角凹状のくさび面72AH、74AH、76AHが形成されている。
【0074】
図12(B)に示すように、第1木材72、第2木材74及び第3木材76が接合された状態では、第3木材76が通し材とされ、第1木材72及び第2木材74の端面72A、74Aが第3木材76の上下面76Aに突き合わせられている。この状態で、第1木材72と第2木材74とは、第3木材76及び嵌合部材64を挟んで同軸上に配置される。このとき、くさび面72AH、74AH、76AH(
図12(A)参照)に、嵌合部材64が嵌め込まれている。
【0075】
図12(A)に示すように、第1木材72、第2木材74にはそれぞれ、一方の端部が端面72A、74Aに開口するボルト孔72B、74Bが設けられている。また、第3木材76には、上下面76Aに開口するボルト孔76Bが設けられている。ボルト孔72B、74B、76Bは、それぞれ第1木材72、第2木材74の軸方向に沿って形成され、また、第3木材76の軸方向に略直交するように形成されている。また、第1木材72、第2木材74の端面72A、74Aを第3木材76の上下面76Aに突き合わせた状態では、ボルト孔72B、74B、76Bの軸線が略一致する。
【0076】
これにより、第1木材72、第2木材74、第3木材76を貫通するようにボルト90を配置することができる。このボルト90により、くさび面72AH、74AH、76AHと嵌合部材64とが互いに圧着されてくさび接合構造が形成され、第1木材72、第2木材74、第3木材76が接合される。
【0077】
(作用・効果)
第10実施形態の木材の接合構造では、
図12(B)に示すように、第3木材76が通し材とされ、第1木材72及び第2木材74が第3木材76の上下面に突き合わせられている。このため、第3木材76に沿った方向にボルト90を設ける必要がない。このため、第3木材76が分割されている場合と比較して、部品点数を削減することができる。
【0078】
[第11実施形態]
図13には、接合部が直交ではないX字状に交差した偏平格子状の木造架構24が外周面に形成された建物14が示されている。第11実施形態に係る木材の接合構造は、木造架構24における継手部24Aに適用される。
【0079】
図14には、木造架構24の一部が斜視図で示されている。木造架構24を構成する最小単位の構成である積層体86を実線で示し、その他の部分を2点鎖線で示している。木造架構24は、建物14の内側(矢印IN側)から外側(矢印OUT側)に複数の板材を重ねた層状構成とされており、表面側の仕口部材82が内側の仕口部材84を挟み込んで配置されている。仕口部材82と仕口部材84の重ね合わせ部にはくさび孔68が貫通しており、くさび孔68に打ち込まれたくさび部材66と、ボルト96とによって仕口部材82と仕口部材84とが接合されている。なお、ボルト96は、
図15(A)、(B)に示すように多数使用されるが、
図14においては、構成を分かり易くするため、本数を省略している。
【0080】
図15(A)、(B)は、それぞれ
図13に示した木造架構24の一部を立面視で示しており、
図15(A)は仕口部材82の全体を含む部分を、
図15(B)は仕口部材84の全体を含む部分を立面視で示している。
【0081】
図15(A)に示すように、仕口部材82は、中央部に菱形のくさび孔68が形成された通し部材82Aと、通し部材82Aに接着された2つの分割部材82Bと、を備えており、2つの分割部材82Bは互いに同一線上に配置されている。これにより、仕口部材82は、立面視でX字状とされている。また、通し部材82Aの端面82AE間の長さL1は、2つの分割部材82Bの端面82BE間の長さL2よりも長く形成されている。
【0082】
図15(B)に示すように、仕口部材84は、中央部に菱形のくさび孔68が形成された通し部材84Aと、通し部材84Aに接着された2つの分割部材84Bと、を備えており、2つの分割部材84Bは互いに同一線上に配置されている。これにより、仕口部材84は、立面視でX字状とされている。
【0083】
仕口部材82の通し部材82Aと分割部材82Bとは、接着剤を用いる代わりに接合面を合い欠きして互いに係止させてもよい。また、合い欠きと接着剤を併用することもできる。さらに、接合強度を大きくするために、通し部材82Aと分割部材82Bをボルト接合してもよい。仕口部材84の通し部材84Aと分割部材84Bについても同様である。
【0084】
図13に示した木造架構24を構築するためには、まず、
図14に示したように、仕口部材82で仕口部材84を挟んだ積層体86を形成する。同様に、仕口部材84で仕口部材82を挟んだ積層体88(
図16参照)を形成する。
【0085】
積層体86を形成するためには、
図16に示すように、外側の仕口部材82と内側の仕口部材84とを、仕口部材82、84それぞれのくさび孔68が略一致するように配置し、くさび孔68にくさび部材66を打込んで、2枚の仕口部材82と1枚の仕口部材84とを一体化させる。また、積層体88を形成するためには、外側の仕口部材84と内側の仕口部材82とを重ね合わせて、くさび孔68にくさび部材66を打込んで、2枚の仕口部材84と1枚の仕口部材82とを一体化させる。
【0086】
次に、積層体86と積層体88とを接合する。積層体86と積層体88とを接合するためには、
図17で示すように、仕口部材82の分割部材82Bの端面82BEと、通し部材84Aの端面84AEとが当接するように、積層体86と積層体88とを組み合わせる。同様に、分割部材84Bの端面84BEと、通し部材82Aの端面82AEとが当接するように、積層体86と積層体88とを組み合わせる。このとき、積層体86における通し部材84Aは、積層体88における通し部材84Aに挟まれて配置され、積層体88における通し部材82Aは、積層体86における通し部材82Aに挟まれて配置される。
【0087】
その後、
図15(A)、(B)に示すように、くさび部材66の周囲及び仕口部材82、84の接合部AJ、BJの周囲を、ボルト96で固定する。このボルト96により、仕口部材82、84が互いに圧着されてくさび接合構造が形成され、仕口部材82、84が接合されて木造架構24が構築される。
【0088】
なお、本実施形態において、くさび部材66によって接合される仕口部材82、84は、それぞれ本発明における第1木材、第2木材の一例である。
【0089】
(作用・効果)
第11実施形態の木材の接合構造では、接合部をX字状とすることで、仕口部材82あるいは仕口部材84に傾斜した床材を支持させたり(例えば映画館や劇場などに用いることができる)、階段を支持させたりすることができる。また、傾斜角度を浅くすることで、仕口部材82あるいは仕口部材84に沿ってスロープや自走式駐車場の車路を形成することができる。
【0090】
また、第11実施形態の木材の接合構造では、例えば
図16に示すように、仕口部材82、84の接合部J11(軸線L方向の接合部。以下同じ。)に、仕口部材82の通し部材82Aに沿った軸力N1が作用したとき、仕口部材82のくさび孔68へくさび部材66が食い込んで、くさび部材66から仕口部材84へ軸力N1が伝達される。このため、仕口部材82と仕口部材84の接合状態が維持される。
【0091】
同様に、接合部J11に、仕口部材84の通し部材84Aに沿った軸力N2が作用したとき、仕口部材84のくさび孔68へ、くさび部材66が食い込んで、くさび部材66から、仕口部材82へ、軸力N2が伝達される。このため、仕口部材82と仕口部材84の接合状態が維持される。
【0092】
また、接合部J11に、仕口部材82の通し部材82Aからの曲げモーメントM1が作用したとき、仕口部材82のくさび孔68へ、くさび部材66が食い込んで、くさび部材66から、仕口部材84へ、曲げモーメントM1が伝達される。このため、仕口部材82と仕口部材84の接合状態が維持される。
【0093】
同様に、接合部J11に、仕口部材84の通し部材84Aからの曲げモーメントM2が作用したとき、仕口部材84のくさび孔68へ、くさび部材66が食い込んで、くさび部材66から、仕口部材82へ、曲げモーメントM2が伝達される。このため、仕口部材82と仕口部材84の接合状態が維持される。
【0094】
また、接合部J11をボルト96で締結することで、仕口部材82、84の接合状態が維持される。なお、本実施形態において仕口部材82、84はボルト96で締結されているが、ボルト96は、ラグスクリューや長ビスなどを用いることができる。
【0095】
また、本実施形態においては仕口部材82、84が互いに当接して重ね合わされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図18(A)に示すように、仕口部材82と仕口部材84との間に隙間を設け、この隙間にスペーサー98を挟んでもよい。
【0096】
これにより、例えば
図18(B)に示すように、仕口部材82と仕口部材84との間でスペーサー98がない隙間に、仕口部材82における通し部材82A及び分割部材82Bと交差する交差部材100を通すことができる。交差部材100は例えば木造架構24の柱とすることで、木造架構24を補強することができる。