(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高分子フィルムが少なくとも1の開口部を有し、該開口部の長さが0.5〜7mmであり、該開口部の長さのうち少なくとも0.5mmにわたって幅が10μm未満である部分が存在する、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明は、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(以下、「特定化合物」ともいう)が、少なくとも一方の表面に0.002〜0.5g/m
2存在する高分子フィルムを含んでなる包装容器を用いて、食品を包装する工程、
を有する、食品中の細菌の増殖を抑制する方法である。
【0010】
(包装容器を用いて食品を包装する工程)
本発明の食品中の細菌の増殖を抑制する方法は、特定化合物が少なくとも一方の表面に0.002〜0.5g/m
2存在する高分子フィルムを含んでなる包装容器を用いて、食品を包装する工程を有する。
すなわち、本発明の方法において用いられる包装容器は、特定化合物が少なくとも一方の表面に特定量存在する高分子フィルムを含んでなるものである。
ここで「高分子フィルムを含んでなる」とは、包装容器の全部が高分子フィルムで構成されている場合、及び蓋材または収納部等包装容器の一部が高分子フィルムで構成されている場合、の双方を含む趣旨である。
従って、上記包装容器は、全部又は収納部等の主要部が可撓性の高分子フィルムで構成された可撓性の包装容器、いわゆる包装袋であってもよく、可撓性の高分子フィルムとコーティング紙等のそれ以外の可撓性の部材を組み合わせた可撓性の包装容器であってもよく、あるいは可撓性の高分子フィルムと剛直な部材とを組み合わせた包装容器、例えば、蓋材としての高分子フィルムと、トレー、カップ等の剛直な部材とを組み合わせた形態のものであってもよい。
【0011】
包装容器がいわゆる包装袋である実施形態においては、例えば、2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の高分子フィルムを折り重ねた状態で、3辺または2辺を熱シールにより融着させる等して包装袋を形成することができる。残る1辺は、青果物等の食品(内容物)を包装袋内に配置した後、同様に熱シールにより融着させるなどして封止することができ、これにより食品が包装される。
なお、このような包装袋は、その平面視での形状は円形、三角形、四角形、四角形以上の多角形でもよいが、加工性や取扱いの容易さの観点から長方形をなすことが好ましい。
【0012】
青果物等の呼吸をする内容物(食品)を包装する場合には、高分子フィルムに小孔、スリット等の開口部を設けることで、小孔、スリットがない場合に比べて最低限の酸素流入を確保し、大気中におけるよりは呼吸が抑制された環境を実現しながら、ある程度の呼吸を維持して、当該食品を良好な状態で保存することができる。
開口部の形状には特に限定は無いが、異物の侵入の防止等の観点から、スリット状であることが好ましい。
特に好ましくは、当該高分子フィルムは、少なくとも1の開口部を有し、該開口部は長さ0.5〜7mmである1以上のスリット状の形状の部分を有することが好ましい。すなわち、該開口部の長さのうち少なくとも0.5mmにわたって幅が10μm未満である部分が存在することが好ましい。外部からの異物等の侵入を防止する観点からは、該開口部の長さの全てにわたって幅が10μm未満であることが好ましい。開口部は異物等の侵入防止、生産性、ハンドリング性の観点から1以上、5以下のスリット状の形状の部分から構成されていることが好ましく、1以上、3以下のスリット状の形状から構成されていることがより好ましく、1または2のスリット状の形状から構成されていることがさらに好ましい。
【0013】
開口部が1つのスリット状の形状の部分から構成されている場合であって、2以上の開口部が設けられる場合には、スリット状の形状の部分の長さ方向が例えば互いに垂直なるように等任意の角度で設けることができるが、ハンドリング性等の観点からスリット状の形状の部分の長さ方向が互いに略平行になるように設けることが好ましい。
また、開口部が2以上のスリット状の形状の部分を組み合わせて構成されている場合には、各々のスリット状の形状の部分を例えば、2つのスリット状の形状の部分を「十」や「X」のように互いに交差させるように設けてもよいし、3以上のスリット状の形状の部分を互いに一点で交差させるように設けてもよい。また、例えば、「T」のようにスリット状の形状の部分どうしを交差させずに互いに異なった長さ方向で、連続するように設けてもよい。この様なスリット状の形状の開口部を有することで、上記高分子フィルムを含んでなる包装容器は、20℃、40%RHでの酸素透過度が、青果物等の内容物の鮮度保持に適した範囲、例えば500から50000cc/m
2/day/atmの範囲内、より好ましくは1000から5000cc/m
2/day/atmの範囲内となる一方で、外部からの異物、例えば微細な無機物、花粉、雑菌等や雑菌等を含んだ浮遊物が包装容器内に侵入することを効果的に抑制することが可能となる。さらに、開口部を形成するスリット状の形状の部分の幅を好ましくは10μm未満とすることで、最大径10μm以上の空気中の異物等の侵入を防止することができる。
【0014】
また、Cladasporium、Eurotium、Aspergillus、Penicillium等のかび類の増殖の防止、特にリステリア菌(Asp.restriclus)の増殖の防止の観点から、包装された食品を二酸化炭素濃度が10%以上の環境に保持することが好ましく、より好ましくは、30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらにより好ましくは75%以上、最も好ましくは95%以上である。かかる二酸化炭素濃度で保持することにより、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレート等の化合物(すなわち、後述の特定化合物)の細菌の抑止効果と相乗的に働き、食品中の前記かび類の増殖を効果的に抑止することができる。
この様な二酸化炭素濃度を実現するため、上記高分子フィルムを含んでなる包装容器は、二酸化炭素透過度が2500から250000ml/m
2・MPaであることが好ましい。二酸化炭素透過度は、より好ましくは4000から100000ml/m
2・MPaである。
【0015】
上記スリット状の開口部を形成するスリット状の形状の連続する略直線部分の最大の長さは、通気性を確保する観点から、典型的には0.5〜7mmであり、好ましくは0.7〜7mmであり、より好ましくは0.8〜5mmであり、さらに好ましくは1.0〜3.0mmであり、特に好ましくは1.0〜2.0mmである。一方、上記スリット状の開口部の幅は、前記外部からの異物の侵入を防止する観点から、10μm未満であることが好ましく、より好ましくは7μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは3μm以下である。
【0016】
(高分子フィルム)
本発明の方法に用いる包装容器を構成する高分子フィルムは、その少なくとも一方の表面に、特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在する高分子フィルムである。
特定化合物がその少なくとも一方の表面に上記の量存在している限り、高分子フィルムの材質には特に制限は無く、従来の青果物包装用のフィルムに用いられる高分子を適宜使用して、フィルムを形成することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロン(ポリアミド)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリ乳酸等を挙げることができる。また、例えば、セロハン等の天然高分子を用いることもできる。更にこれらのうちのいずれかの材質を単独で用いても良く、これらの複数をブレンドして、及び/又はラミネートして用いてもよい。
【0017】
加工の容易さやコストの観点からは、上記高分子フィルムの材質は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。該熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル・1−ペンテンなどのポリオレフィンが挙げられる。また、該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、該熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が剛性、透明性に優れるため好ましい。また、該熱可塑性樹脂としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体が軽量でフィルム加工性に優れるためより好ましく、柔軟性、透明性の観点からプロピレン系重合体がさらに好ましい。
【0018】
(プロピレン系重合体)
前記プロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレン単独重合体(ホモPPとも呼ばれている)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(ランダムPPとも呼ばれている)、プロピレン単独重合体と、低結晶性または非晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物(ブロックPPとも呼ばれている)などのプロピレンを主成分とする結晶性の重合体が挙げられる。また、プロピレン系重合体は、分子量が異なるプロピレン単独重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン又は炭素数4から10のα−オレフィンとのランダム共重合体との混合物であってもよい。
【0019】
前記プロピレン系重合体としては、具体的には、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体などのプロピレンを主要モノマーとし、これとエチレン及び炭素数4から10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0020】
前記プロピレン系重合体の密度は、0.890〜0.930g/cm
3であることが好ましく、0.900〜0.920g/cm
3であることがより好ましい。また、前記プロピレン系重合体のMFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)は、0.5〜60g/10分が好ましく、0.5〜10g/10分がより好ましく、1〜5g/10分がさらに好ましい。
【0021】
(延伸ポリプロピレンフィルム)
プロピレン系重合体を持ち多高分子フィルムとしては、延伸ポリプロピレンフィルムが特に好適である。延伸ポリプロピレンフィルムは少なくとも一方向に延伸されたフィルムから構成されていてもよいし、延伸ポリプロピレンフィルム自体が少なくとも一方向に延伸されていてもよい。また、延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、例えば逐次、あるいは同時二軸延伸することにより容易に製造することも可能である。本発明の延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、通常、縦方向に5〜8倍延伸し、続いて横方向にテンター機構を用いて8〜10倍延伸し、フィルムの厚さを最終的に20〜40μmとする方法、あるいは、縦方向及び横方向に夫々5〜10倍(面倍率で25〜100倍)延伸することにより製造することができる。
【0022】
(エチレン系重合体)
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらの共重合体中のα−オレフィンの割合は、1〜15モル%であることが好ましい。
【0023】
また、前記エチレン系重合体としては、ポリエチレンの名称で製造・販売されているエチレンの重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、LLDPEがより好ましい。LLDPEは、エチレンと、少量のプロピレン、ブテン−1、ヘプテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1等との共重合体である。また、前記エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体であってもよく、LLDPE等のエチレンを主体とする重合体であってもよい。
【0024】
前記エチレン系重合体の密度は0.910〜0.940g/cm
3が好ましく、0.920〜0.930g/cm
3がより好ましい。該密度が0.910g/cm
3以上であることにより、ヒートシール性が向上する。また、該密度が0.940g/cm
3以下であることにより、加工性および透明性が向上する
【0025】
なお、ブレンド、及び/又はラミネートは、上記の高分子のうちのいずれか同士のブレンド、及び/又はラミネートであってもよく、また上記の高分子のうちのいずれかと、高分子以外の材料とのブレンド、及び/又はラミネートであってもよい。すなわち、高分子フィルムは、高分子以外の素材、例えば耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の他、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類を含んでいてもよいし、高分子フィルムと金属箔、紙、不織布等とのラミネートであってもよい。
【0026】
<ポリエチレン系フィルム>
本発明で好適に用いられるポリエチレン系フィルムは、前記エチレン系重合体を含むフィルムである。本発明のポリエチレン系フィルムは種々の公知の成型方法を用いることができるが、エクストルーダーによる押出によるキャスト成型が、生産効率の観点から好ましい。
【0027】
本発明の包装容器を構成する高分子フィルムがポリエチレン系フィルムである場合、内容物と接触する面(通常は包装容器の内側の面)から厚さ方向に向けて、該ポリエチレン(エチレン系重合体)の密度が大きくなることが好ましい。すなわち、エチレン系重合体を含む高分子フィルムにおいて、内容物と接触する面から、内容物と接触する面とは反対側の面に向けて、該エチレン系重合体の樹脂密度が大きくなることが好ましい。このような樹脂密度の勾配を有することにより、高分子フィルム内に存在する特定化合物が内容物と接触する面側にブリードアウトしやすくなり、高分子フィルム内の特定化合物の含有量を少なくしても内容物と接触する表面に存在する特定化合物の量を本発明の範囲内とすることができ、高い抗菌性が得られる。エチレン系重合体の密度は、厚さ方向に向けて連続的に大きくなっていってもよく、段階的に大きくなっていってもよい。例えば、高分子持フィルムが3層からなる場合には、表面層に含まれるエチレン系重合体の密度よりも、中間層及び裏面層に含まれるエチレン系重合体の密度が高いことが好ましい。また、表面層及び中間層に含まれるエチレン系重合体の密度よりも、裏面層に含まれるエチレン系重合体の密度が高くてもよい。また、表面層、中間層、裏面層の順序で含まれるエチレン系重合体の密度が高くなっていてもよい。また、少なくとも、表面層に含まれるエチレン系重合体の密度よりも、中間層に含まれるエチレン系重合体の密度が高いことが好ましい。
【0028】
<延伸フィルム>
ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びポリL乳酸、ポリD乳酸、またはポリL乳酸とポリD乳酸を精密に配位したステレオコンプレックス晶ポリ乳酸からなる一軸あるいは二軸延伸フィルムである。
【0029】
<延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体>
本発明の延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体は上記ポリエチレン系フィルムの層と延伸フィルムの層を積層して得られる。ポリエチレン系フィルムは一方向または二方向に延伸されていてもよいが、包装袋の機械的強度の安定性の観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
予め作製された延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとを接着剤により貼着させるドライラミネーションを行うが、ここで接着剤を塗布する延伸フィルム表面にはコロナ処理をしておくことが接着安定性の観点から好ましい。具体的には、コロナ処理後のフィルム表面の表面張力が接着安定性の観点から、35mN/m以上が好ましく、40mN/m以上がより好ましい。
【0030】
また、これらの高分子フィルムは、延伸加工や印刷が施されていてもよく、銀、銅のような無機系抗菌剤や、キチン、キトサン、アリルイソチオシアネートのような有機系抗菌剤が塗布されたものであってもよいし、これらがフィルム中に練り込まれているものであってもよい。
【0031】
透明性、可撓性、コスト等の観点からは、従来当該技術分野において広く用いられていた延伸ポリプロピレンフィルム、又は延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を高分子フィルムとして用いることが特に好ましい。これらのフィルムは一般にヒートシール性に優れるので、包装容器の製造において生産性が良好である。
この場合、延伸プロピレンフィルム単体で用いる場合は、その厚さが10〜100μmであることが好ましく、延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を用いる場合には、前者の厚さが10〜50μm、後者の厚さが10〜120μmであることが好ましい。
【0032】
なお、ヒートシールに必ずしも適さない高分子フィルムを用いる場合には、該高分子フィルムの全部又は一部にシーラント層をラミネートあるいはコーティングすることで形成すればよい。例えば、アクリル樹脂をコーティングしたセロハンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)ポリスチレンとEVAをラミネートしたフィルムが挙げられ、これらを好適な高分子フィルムとして用いることができる。
【0033】
本発明で用いる包装容器を構成する高分子フィルムは、カットレタスのような断面がポリフェノールの酸化で褐変する内容物では酸素濃度1%以下の環境を実現する観点から、JISK7126に従って測定した酸素透過度が、2000ml/m
2・MPa以下であることが好ましい。酸素透過度は、1800ml/m
2・MPa以下であることがより好ましく、1500ml/m
2・MPa以下であることが特に好ましい。
呼吸量の多い青果物等の呼吸をする内容物(食品)を保存する場合には、窒息雰囲気としないため酸素濃度10%以下、1%以上の環境を実現するある程度の呼吸を維持することが鮮度保持の観点から好ましいため、酸素透過度は、1000〜4000ml/m
2・MPaであることが好ましく、1600〜3000ml/m
2・MPaであることがより好ましい。尤も、酸素透過度がこれらの数値を下回ったとしても、高分子フィルムに小孔、スリット等の開口部を設けることで、呼吸を維持することが可能である。
一方、燻製魚介類等の呼吸をしない内容物(食品)を保存する場合には、外部からの酸素等の侵入を遮断し、低酸素濃度を維持する観点から、酸素透過度は低いほど好ましい。
高分子フィルムの酸素透過度は、JISK7126に記載の方法に従って測定することが可能であり、または内部に窒素を封入して酸素濃度の変化から測定する方法により測定することができる。
さらに、上述の好ましい二酸化炭素濃度を実現するため、上記高分子フィルムの二酸化炭素透過度は、10000ml/m
2・MPa以下であることが好ましい。
高分子フィルムの酸素透過度、二酸化炭素透過度は、高分子フィルムを構成する高分子の種類、分子量、及び極性、高分子フィルムの厚み、製造条件、とりわけ延伸条件、気孔率、並びにコーティングの有無、種類及び厚み等を適宜設定することで調整することができる。
【0034】
(特定化合物)
本発明で用いる包装容器を構成する高分子フィルムの表面には、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(特定化合物)が特定量存在する。
特定化合物としては、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノラウレートを単独で用いてもよく、これらの混合物を用いてもよい。パルミチルジエタノールアミンは、炭素数16の長鎖アルキル基であるパルミチル基を有するアルキルジエタノールアミンである。ステアリルジエタノールアミンは、炭素数18のステアリル基を有するアルキルジエタノールアミンである。グリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とグリセリンとのモノエステルである。ジグリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とジグリセリンとのモノエステルである。
ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、ミリスチルジエタノールアミンやラウリルジエタノールアミンに比べて融点が比較的高い。このため、高分子フィルムを例えば溶融成形する際、特に高分子フィルムが延伸フィルムである場合の熱固定において、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは比較的揮発しにくい。また、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、抗菌性、および鮮度保持性に優れる。さらに、高分子フィルムに接触する被包装物への移行が比較的遅く、安全性に優れており、加えてその性能を持続することができる。
(アルキルジエタノールアミン;長鎖アルキル基の部分の炭素数;融点)
ステアリルジエタノールアミン;18個;51℃
パルミチルジエタノールアミン;16個;28℃
ミリスチルジエタノールアミン;14個;22〜23℃
ラウリルジエタノールアミン;12個;常温で液体
【0035】
本発明において用いられる特定化合物は、個々に、類似化合物を含有していてもよい。パルミチルジエタノールアミン(炭素数16)は、例えば少量のミリスチルジエタノールアミン(炭素数14)や、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)等の炭素数12〜20のアルキル基を有するアルキルジエタノールアミンを含んでもよい。また、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)は、例えば炭素数16〜20のアルキル基を有するアルキルジエタノール等を少量含んでもよい。また、特定化合物は、これらのパルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの類似化合物のアミンの一部が脂肪族カルボン酸とエステルを形成した化合物を少量含んでもよい。さらに、グリセリンモノラウレートは、例えば炭素数が10、14等である高級直鎖脂肪族カルボン酸とグリセリンとのモノエステル等を少量含んでもよい。また、ジグリセリンモノラウレートは、炭素数が10、14等である高級脂肪族カルボン酸とジグリセリンとのモノエステル等を少量含んでもよい。また、前記(ジ)グリセリンモノエステルは、(ジ)グリセリンジエステル、(ジ)グリセリントリエステルなどの類似化合物、さらにはグリセリン部分がジグリセリン、ジグリセリン部分がトリグリセリンである類似化合物を少量含んでもよい。これら特定化合物の類似化合物は、一般に特定化合物の合成、分離などの工程において、同時に合成されたり、分離が困難であったりする。また、当該類似化合物は、特定化合物100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよく、含まれないことが好ましい。
さらに、本発明で用いる包装容器を構成する高分子フィルムは、後述するように特定化合物以外にも、必要に応じて帯電防止剤、防曇剤(但し、特定化合物を除く。)滑材などの他の添加剤を含むことができる。これら他の添加剤と、前記類似化合物との合計は、特定化合物100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよく、30質量部以下含まれてもよい。
【0036】
本発明で用いる包装容器を構成する高分子フィルムにおいては、そのいずれの表面に特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在していてもよいが、食品(内容物)と接する面に、特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在していることが好ましい。高分子フィルムは、コロナ処理を行ったポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド等の1軸または2軸延伸フィルムであっても良い、延伸フィルム層Cとの積層前の状態で、反ラミ面表面に特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在することが好ましく、0.004〜0.4g/m
2存在することがより好ましく、0.01〜0.3g/m
2存在することがさらに好ましく、0.02〜0.2g/m
2存在することが最も好ましい。
高分子フィルムの食品と接する面に特定化合物を前記の量を存在させる方法としては、例えば、表面に特定化合物を噴霧したり、表面に特定化合物を含む溶液、懸濁液等を塗布したりするコート法が挙げられる。また、高分子フィルムまたはそれ以外の層に特定化合物を含有させることにより、高分子フィルムの食品と接する面に特定化合物をブリードアウトさせることにより特定化合物を0.002〜0.5g/m
2存在させてもよい。なお、高分子フィルム中の特定化合物の総含有量は、特定化合物を表面に前記範囲の量ブリードアウトさせることができる観点から、0.001〜3質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.1〜2質量%がさらに好ましい。
【0037】
(高分子フィルムの表面における特定化合物の定量方法)
高分子フィルムの表面における特定化合物の量は、コート法により表面に特定化合物を付与する場合は、特定化合物のコート量から算出した値である。また、特定化合物が高分子フィルム、及び/又はそれ以外の層に配合されている場合には、高分子フィルムの表面における特定化合物の量は、高分子フィルムの表面を、ジクロロメタンを用いて洗浄し、洗浄液を回収し、濃縮して定容した後、シリル化し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を用いて定量した値である。
【0038】
<他の添加剤>
本発明において用いられる高分子フィルム、またはそれを構成する各層のいずれかには、本発明の目的を損なわない範囲で、耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の添加剤を添加することができる。また、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類を添加してもよい。
【0039】
耐熱安定剤としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系酸化防止剤、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、置換ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系酸化防止剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
帯電防止剤としては、例えば、アルキルアミンおよびその誘導体、高級アルコール、ピリジン誘導体、硫酸化油、石鹸類、オレフィンの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル類、脂肪酸エチルスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、琥珀酸エステルスルフォン酸塩、リン酸エステル塩、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトルのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0040】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、高級アルコール、流動パラフィン等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
防曇剤としては、特定化合物を除き、例えば、高級脂肪族アルコール類、グリセリン脂肪酸類、ジグリセリン脂肪酸類、これらのモノ又はジグリセリン脂肪酸の酸エステル類、高級脂肪族アミン類、高級脂肪酸エステル類、これらの混合物等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0041】
(食品)
本発明の食品中の細菌の増殖を抑制する方法は、嫌気性菌及び/又は好気性菌の増殖が好ましくない食品の保存に広く適用することが可能であり、食品の種類には特に限定がないが、低酸素濃度で保存することが好ましい各種食品の保存に好適に使用することができる。
例えば、青果物等の呼吸を行う食品については、低酸素濃度で呼吸が抑制されることにより長期間の保存が可能となるため、低酸素濃度における嫌気性菌の増殖を抑制することが、特に有益である。
この実施形態において包装容器に収納され鮮度保持される青果物には特に制限は無いが、例えばバナナ、マンゴー、ウメ、リンゴ、イチゴ、ミカン、ブドウ、和梨、西洋梨のような果実類、ダイコン、ニンジン、ナガイモ、ゴボウのような根菜類、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、エダマメ、オクラのような果菜類、緑豆モヤシ、大豆モヤシ、トウミョウのような芽物類、シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、マツタケのような菌茸類(キノコ類)、ブロッコリー、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、キャベツ、レタス、アスパラガスのような葉茎菜類、キク、ユリ、カーネーション等の花卉または苗が挙げることができる。
【0042】
この実施形態において包装容器に収納され鮮度保持される青果物の形態にも特に制限は無いが、酸素濃度を制御し、これにより青果物の呼吸を制御しながら、雑菌等の増殖を抑制することにより鮮度を保持するという本実施形態の作用からは、水分を多く含有し、かつ実質的に呼吸を行っている形態の青果物の鮮度保持に特に有効である。
従って、青果物は収穫されたままのものであってもよく、外葉等を除去したいわゆる前処理済みのものであってもよく、カット済みのいわゆるカット野菜であってもよい。また、青果物は、洗浄、冷却、脱水等の処理のいずれか又は全てを行ったものであってもよく、またこれらの処理のいずれも行わないものであってもよい。
【0043】
また、呼吸を行わない食品であっても、低酸素濃度での保存を行うことが好ましい食品、例えば、燻製魚介類、ナチュラルチーズ、牛乳、パテ、アイスクリーム、サラミ等にも、本発明を広く適用することができる。特に非加熱で飲食に供される食品は、包装への収納前に完全に殺菌することができず、包装から取り出した後にも加熱殺菌を行わないため、本発明を適用することに高い実用的価値がある。
また、本発明の食品中の細菌の増殖を抑制する方法は、包装から取り出した後に加熱を要さずに飲食に供される、いわゆる調理済み(RTE)食品の保存にも好適に適用される。
【0044】
(包装された食品を、低酸素濃度の環境に保持する工程)
本発明の食品中の細菌の増殖を抑制する方法は、包装容器を用いて食品を包装する工程に続いて、カットレタスのような断面がポリフェノールの酸化で褐変する内容物では該包装された食品を酸素濃度1%以下の環境に保持する工程、を有することが好ましい。
酸素濃度1%以下の環境に保持することで、食品の劣化に繋がる、好気性菌の増殖、酸化等を有効に抑制することができる。また、呼吸量の多い青果物等の呼吸をする内容物(食品)を保存する場合には、窒息雰囲気としないため酸素濃度を1.0〜10%にして呼吸を抑制することで、より長期間にわたって良好な状態で食品を保存することができる。
従来の技術においては、この様な低酸素濃度の環境で、リステリア菌等の嫌気性菌が増殖し易いという問題があった。本発明においては、少なくとも一方の表面に特定化合物が0.002〜0.5g /m
2存在する高分子フィルムを含んでなる包装容器を用いることで、低酸素環境においても嫌気性菌の増殖を有効に抑制することができる。
例えば、本発明の好ましい態様においては、包装された食品中のリステリア菌の菌数が、1×10
5CFU/g以下に維持される。包装された食品中のリステリア菌の菌数は、1×10
4CFU/g以下であることがより好ましく、1×10
3CFU/g以下であることが特に好ましい。
【0045】
食品が包装された包装容器の内部を低酸素濃度にする方法には特に制限はなく、食品包装の技術分野で好適に用いられている方法を適宜使用することができる。例えば、食品包装内部の空気を脱気し若しくは窒素等の不活性ガス置換すること、脱酸素剤を使用すること等により、所望の低酸素濃度を実現することができる。また、呼吸等の作用で酸素を消費する食品の場合には、包装容器を単に密閉することでも、経時的に酸素濃度が低下し、低酸素濃度を実現することができる。
【0046】
本態様の食品中の細菌の増殖を抑制する方法における、包装された食品を低酸素濃度の環境に保持する工程は、食品の鮮度を保つ等の観点から、20℃以下の温度で実施することが好ましく、5℃以下の温度で実施することがより好ましく、0℃以下の温度で実施することがさらに好ましい。
特に、リステリア菌は冷温でも活性が高く、競合する他の菌との相対的な関係においては、低温で増殖し易い。このため、本発明の方法は、低温での食品の保存においてリステリア菌の増殖を抑制する目的で、特に好適に適用することができる。
【0047】
本発明の食品中の細菌の増殖を抑制する方法を実施することにより、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、少なくとも一方の表面に0.002〜0.5g/m
2存在する高分子フィルムを含んでなる包装容器中に食品を収納してなる包装体であって、該包装体内の酸素濃度が1%以下等の低酸素濃度であり、該食品中のリステリア菌の菌数が、1×10
3CFU/g以下である、上記包装体がもたらされる。
また、Cladasporium、Eurotium、Aspergillus、Penicillium等のかび類の増殖の防止、特にリステリア菌(Asp.restriclus)の増殖の防止の観点から、包装された食品を二酸化炭素濃度が10%以上の環境に保持することが好ましく、より好ましくは、30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらにより好ましくは75%以上、最も好ましくは95%以上である。かかる二酸化炭素濃度で保持することにより、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレート等の化合物(すなわち、後述の特定化合物)の細菌の抑止効果と相乗的に働き、食品中の前記かび類の増殖を効果的に抑止することができる。
この態様においては、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、少なくとも一方の表面に0.002〜0.5g/m
2存在する高分子フィルムを含んでなる包装容器中に食品を収納してなり、前記包装体内の二酸化炭素酸素濃度10%以上である包装体がもたらされる。
【0048】
本実施形態の(食品の鮮度保持用の)包装体は、包装容器中に食品のみが収納されていてもよいし、更にそれ以外の部材が収納されていてもよい。
例えば、食品に加えて、吸湿剤、及び/又は抗菌剤が包装容器中に収納されていてもよい。
吸湿剤には特に限定は無く、吸湿効果または調湿効果を有する公知又は市販の材料を使用することができる。吸湿剤として好適に用いられるものとしては、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、無水硫酸マグネシウム、ゼオライト、合成ゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、及び、焼ミョウバン、又はこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、食品への影響や食品の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない活性炭を用いることが特に好ましい。活性炭は粉末状、粒状どちらでも何ら差し支えなく、原料はヤシ殻、おがくず、木炭、竹炭、褐炭、泥炭、ほね、石油ピッチなどどんなものでも差し支えない。また活性炭は不織布、セロファン、紙などなどで使用単位毎に包装してあることが望ましいが、活性炭自体が繊維状になったものでも差し支えない。活性炭の包材としては、合成樹脂からなる不織布のように、ヒートシール性を有するものが好ましいが、水蒸気透過性を有しかつ活性炭がこぼれないもので有れば、紙、天然繊維などでも何ら問題ない。
【0049】
抗菌剤には特に限定は無く、抗菌作用を有する物質を適宜使用することができるが、食品への影響や食品の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない天然性抗菌剤を好ましく使用することができる。より具体的には、天然性抗菌剤であるキトサン、アリルイソチオシアネート、ヒノキチオール、リモネン等を、包装容器内に収納することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0051】
以下の実施例/比較例において、各条件、特性の評価は以下の方法で行った。
(高分子フィルム表面の特定化合物の存在量)
高分子フィルムの表面を、ジクロロメタンを用いて洗浄し、洗浄液を回収し、濃縮して定容した後、シリル化し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を用いて定量した。
(高分子フィルムの酸素透過度)
JISK7126に記載の測定方法に従って測定した。
(ポリエチレンフィルムAの製造)
ポリエチレンフィルムAとして、下記の条件に従い、裏面層/中間層/表面層の3層構成を有するポリエチレンフィルムA1、及びA2を製造した。
(1)中間層
中間層の材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、密度:0.940g/cm
3、MFR:4.0g/10分、融点:117.3℃)を用いた。
(2)表面層及び裏面層
表面層及び裏面層の材料には、前記の直鎖状低密度ポリエチレンに対して、シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm))及びエルカ酸アミド(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753)をそれぞれ1000ppm添加した材料を用いた。
(3)添加剤
各層に、下記抗菌成分が表1に示す量で含まれるように、下記抗菌成分をマスターバッチに配合した。
(a)ステアリルジエタノールアミン(C18DEA) 理研ビタミン株式会社製
(4)ポリエチレンフィルムA1、A2の製造
前記各材料を用いて、裏面層/中間層/表面層の3層キャストフィルムを層厚み比1/3/1、全体厚み30、50μmで、ポリエチレンフィルムA1、及びA2を製造した。
ポリエチレンフィルムAの製造は、押出機のダイス温度:200℃、チル温度:50℃で行った。得られたポリエチレンフィルムAの裏面層側をコロナ処理した。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。
表1に示す様に、ポリエチレンフィルムA1は、中間層及び裏面層(シール層)にステアリルジエタノールアミン(C18DEA)を800ppm含むものであり、ポリエチレンフィルムA2は、いずれの層にもステアリルジエタノールアミン(C18DEA)を含まないものであった。
【表1】
【0052】
(5)OPPフィルムの製造
以下のプロピレン系重合体の原料を用いて3層の延伸OPPフィルム(表面層/中間層/裏面層)を作成した。
材料には、プロピレン単独重合体(融点(Tm)=160℃、MFR=3g/10分(株式会社プライムポリマー社製))を用いた。
前記材料を用いて単層で二軸延伸機で連続成形し、厚み20μmの延伸フィルムを製造した。更に、コロナ面の濡れ指数が38dynとなるように、裏面層の表面に対しコロナ処理を行った。
延伸温度
縦延伸:100℃
横延伸:165℃
ヒートセット温度:165℃
ヒートセット時間:10秒
(6)ラミフィルムの作製
ポリエチレンフィルムA1(30μm)と上記(5)のOPPフィルム(20μm)を下記接着剤を用いて貼りあわせラミフィルムを得た。
・接着剤
ウレタン系アルコール型ドライラミネート用接着剤 東洋インキ製 AD−393/CAT−EP1
・溶剤
メタノール
・配合比
AD393/EP−1/メタノール=15/1/11(固形分濃度:30%)
・加工条件
接着剤塗布量:2g/m
2(固形分0.2g/m
2)
オーブン乾燥条件:60℃×20秒
(6)袋の作製
ポリエチレンA1(50μm)、OPPフィルム(20μm)//ポリエチレンA1(50μm)、ポリエチレンA2(50μm)のフィルムを用い、シール層を内面にしてインパルスシーラーを用い、内寸120mm×120mmの袋を各3枚作製した。
(菌数)
リステリアモ ノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)JCM 7671をブレインハートインフュージョン(BHI)Broth培地により35℃、24時間培養後、遠心分離処理により培地を除去し、1/500 BHI Broth培地を用いて2回洗浄・希釈して調製した菌懸濁液を用いて、寒天培地平板混釈法に従って菌数を評価した。
【0053】
(実施例1、2、比較例1)
上記でポリエチレンA1(50μm)、OPPフィルム(20μm)//ポリエチレンA1(50μm)、ポリエチレンA2(50μm)のフィルムから作製した3種の袋(n=3)に菌懸濁液を5mLずつ注加し、菌液と容器の接触面積がそれぞれ200cm
2を超えるようにして押し広げ、35℃にて24時間静置した。菌液を回収し、滅菌リン酸緩衝生理食塩水を用いて段階希釈後,BHI寒天培地を用いた混釈培養により(35℃、48時間)、生菌数を測定した。接種菌数は、菌懸濁液について、同様にBHI寒天培地を用いた混釈培養により測定した。
【表2】
【0054】
実施例1〜2、及び比較例の包装フィルム袋の結果を表2に示す。
中間層及び裏面層(シール層)にステアリルジエタノールアミン(C18DEA)を用いた実施例1及び2のフィルムを用いた袋は食中毒の原因となり得るリステリア菌の死滅が確認され、本フィルムが病原菌の増殖を抑え、食品の品質を良好な状態で保つことができることが明らかになった。