(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の第1積層体を積層して複層積層体とする工程において、隣り合う前記第1積層体の長さ方向が互いに直交するように前記第1積層体を積層する請求項1に記載の光制御パネルの製造方法。
厚さ方向の引張弾性率が長さ方向の引張弾性率より大である前記光透過部と、厚さ方向の引張弾性率が長さ方向の引張弾性率より小である前記光透過部とが交互に並ぶ請求項5に記載の光制御パネル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<光学結像装置>
図1は、実施形態の光学結像装置を模式的に示す分解斜視図である。
図2は、光学結像装置10を模式的に示す斜視図である。
図1および
図2に示すように、光学結像装置10は、向かい合う一対の光制御パネル1,1と、光制御パネル1,1の外面側にそれぞれ設けられた透明保護層6,6とを備えている。以下、2つの光制御パネル1,1をそれぞれ第1の光制御パネル1A、第2の光制御パネル1Bという。
光制御パネル1,1(1A,1B)は、接着層7を介して固定されている。光制御パネル1,1(1A,1B)と透明保護層6,6とは、接着層8,8を介して固定されている。
【0010】
[光制御パネル]
図3および
図4に示すように、光制御パネル1は、複数の光透過部2と、複数の反射層3とを備えている。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を採用することがある。X方向は複数の光透過部2の並び方向である。Y方向は光制御パネル1の第1主面1aに沿う面内においてX方向と直交する方向である。Z方向は、X方向およびY方向に直交する方向であり、光制御パネル1の厚み方向である。光制御パネル1における平面視とは、光制御パネル1の厚み方向(Z方向)から見ることをいう。
複数の光透過部2と、複数の反射層3とは、X方向に交互に配置されている。
【0011】
[光透過部]
光透過部2は、XZ断面が矩形であってY方向に延在する形状とされている。複数の光透過部2は、長さ方向を揃えて幅方向(X方向)に並べられている。光透過部2は、可視光が透過可能とされた透明層である。光透過部2は、可視光が全波長範囲において透過可能であることが好ましい。
【0012】
光透過部2の第1主面2aおよびその反対面である第2主面2bはXY平面に沿う面である。第1主面2aは光制御パネル1の第1主面1aに含まれる面である。第2主面2bは、光制御パネル1の第1主面1aの反対面である第2主面1bに含まれる面である。光透過部2の側面2cは、隣り合う光透過部2に対向する面であり、YZ平面に沿う面である。
【0013】
光制御パネル1の反射層3の間隔は、ほぼ光透過部2の並び方向(X方向)の寸法に相当し、その寸法(例えば
図4における光透過部2の幅W1)は0.2〜0.5mmが好ましい。複数の光透過部2の幅W1は、互いに等しいことが好ましい。
【0014】
光透過部2の表面硬度は鉛筆硬度で2H以上が好ましい。表面硬度が鉛筆硬度で2H以上であると、作業工程上で傷がつくなどの不具合が生じにくくなる。
また、光透過部2には前述の鉛筆硬度の他にも、全光線透過率が高いこと、ヘイズ値(曇価)が低いことが望まれる。それにより光制御パネルに用いた際に、高精細な反射像が得られる。全光線透過率は好ましくは90%以上であり、さらに好ましく91%以上である。ヘイズ値は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
【0015】
高精細な画像を得る点では「アッベ数」および「平滑性」も重要な特性となる。アッベ数は屈折率の波長依存性を示す数値であり、光透過部2のアッベ数が低すぎると像が不鮮明になる可能性がある。光透過部2のアッベ数は好ましくは40以上であり、さらに好ましくは50以上である。
【0016】
平滑性は特に金属膜4を製膜した面(
図4における側面2c)で重要であり、平滑性が低すぎると像がぼやけたように見え、質感を損なう可能性がある。平滑性は算術平均粗さ「Ra」で表した場合に、好ましくは10nm未満、さらに好ましくは5nm未満、特に好ましいのは2nm未満である。
さらに、ハンドリング性の点で、光透過部2の比重は低い方が好ましい。
【0017】
[アリルエステル樹脂]
光透過部2は、アリルエステル樹脂組成物の硬化物で形成されている。アリルエステル樹脂は熱硬化性樹脂の1種である。アリルエステル樹脂組成物の硬化物で形成された光透過部2は、透明性に優れ、表面硬度および強度も高い。
一般的に、「アリルエステル樹脂」というと硬化する前のプレポリマー(オリゴマーや添加剤、モノマーを含む)を指す場合とその硬化物を示す場合の二通りの場合があるが、本明細書中では「アリルエステル樹脂」は硬化物を示し、「アリルエステル樹脂組成物」は硬化前のプレポリマーを示すものとする。
【0018】
[アリルエステル樹脂組成物]
アリルエステル樹脂組成物は、アリル基またはメタリル基(以降、あわせて(メタ)アリル基と言う場合がある。)とエステル構造を有する化合物を主な硬化成分として含有する組成物である。
【0019】
(メタ)アリル基とエステル構造を有する化合物は、[1](メタ)アリル基及び水酸基を含む化合物(ここではアリルアルコールと総称する)とカルボキシル基を含む化合物とのエステル化反応、[2](メタ)アリル基及びカルボキシル基を含む化合物と水酸基を含む化合物とのエステル化反応、または[3]アリルアルコールとジカルボン酸からなるエステル化合物と多価アルコールとのエステル交換反応により得ることができる。カルボキシル基を含む化合物がジカルボン酸とジオールとのポリエステルオリゴマーである場合には、末端のみアリルアルコールとのエステルとすることもできる。
【0020】
(メタ)アリルアルコールとジカルボン酸からなるエステル化合物の具体例としては、下記一般式(1)
【化3】
(R
1、R
2は、それぞれ独立してアリル基またはメタリル基のいずれかの基を表し、A
1はジカルボン酸に由来する、脂環式構造及び芳香環構造の少なくともいずれか一方を有する1種以上の有機残基を表す。)
で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が挙げられる。この化合物は後述のアリルエステルオリゴマーの原料となるほか、反応性希釈剤(反応性モノマー)としてアリルエステル樹脂組成物に含まれてもよい。一般式(1)中のA
1は後述の一般式(2)、一般式(3)におけるA
2、A
3と同様のものが好ましい。
【0021】
アリルエステル樹脂組成物の主な硬化成分である(メタ)アリル基とエステル構造を有する化合物としては、アリル基及びメタリル基の少なくともいずれか一方を末端基とし、多価アルコールとジカルボン酸とから形成されたエステル構造を有するアリルエステル化合物(以下、これを「アリルエステルオリゴマー」と記載することがある。)であることが好ましい。
また、その他の成分として、後述する硬化剤、反応性モノマー、添加剤、その他ラジカル反応性の樹脂成分等を含有してもよい。
【0022】
[アリルエステルオリゴマー]
アリルエステルオリゴマーとしては、下記一般式(2)で表される基を末端基として有し、かつ下記一般式(3)で表される構造を構成単位として有する化合物が好ましい。
【0023】
【化4】
(式中、R
3はアリル基またはメタリル基を表し、A
2はジカルボン酸に由来する、脂環式構造及び芳香環構造の少なくともいずれか一方を有する1種以上の有機残基を表す。)
【0024】
【化5】
(式中、A
3はジカルボン酸に由来する、脂環式構造及び芳香環構造の少なくともいずれか一方を有する1種以上の有機残基を表し、Xは多価アルコールから誘導された1種以上の有機残基を表す。ただし、Xはエステル結合によって、さらに前記一般式(2)を末端基とし、前記一般式(3)を構成単位とする分岐構造を有することができる。)
【0025】
アリルエステルオリゴマーにおいて、前記一般式(2)で示される末端基の数は少なくとも2個以上であるが、前記一般式(3)のXが分岐構造を有する場合には3個以上となる。この場合、各末端基のR
3も複数個存在することになるが、これらの各R
3は必ずしも同じ種類でなくてもよく、ある末端はアリル基、他の末端はメタリル基という構造であっても構わない。
【0026】
また、全てのR
3がアリル基またはメタリル基でなければならないということはなく、硬化性を損なわない範囲で、その一部がメチル基またはエチル基等の非重合性基であってもよい。
【0027】
A
2で示される構造についても同様に、各末端基で異なっていてもよい。例えば、ある末端のA
2はベンゼン環、他方はシクロヘキサン環という構造であってもよい。
一般式(2)におけるA
2はジカルボン酸に由来する、脂環式構造及び芳香環構造の少なくともいずれか一方を有する1種以上の有機残基である。ジカルボン酸に由来する部分はA
2に隣接するカルボニル構造で示されている。従って、A
2の部分はベンゼン骨格やシクロヘキサン骨格を示す。
【0028】
A
2構造を誘導するジカルボン酸としては特に制限はないが、原料の入手しやすさの点からは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−m,m’−ジカルボン酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、p−フェニレンジ酢酸、p−カルボキシフェニル酢酸、メチルテレフタル酸、テトラクロルフタル酸が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が特に好ましい。
【0029】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水エンディック酸、無水クロレンド酸等の(反応時において)非環状のジカルボン酸を使用してもよい。
【0030】
一般式(3)で示される構造単位は、アリルエステルオリゴマー中に少なくとも1つは必要であるが、この構造が繰り返されることによりアリルエステルオリゴマー全体の分子量がある程度大きくなった方が適切な粘度が得られるので作業性が向上し、硬化物の靭性も向上するので好ましい。しかし、分子量が大きくなりすぎると架橋点間分子量が大きくなりすぎるため、Tgが低下し、耐熱性が低下するおそれもある。用途に応じて適切な分子量に調整することが大切である。
【0031】
アリルエステルオリゴマーの重量平均分子量は500〜200,000が好ましく、1,000〜100,000がさらに好ましい。
また、一般式(3)におけるA
3はジカルボン酸に由来する、脂環式構造及び芳香環構造の少なくともいずれか一方を有する1種以上の有機残基であり、その定義及び好ましい化合物の例は一般式(2)におけるA
2と同様である。
【0032】
一般式(3)中のXは、多価アルコールから誘導された1種以上の有機残基を表す。
多価アルコールとは2個以上の水酸基を有する化合物であり、X自体は、多価アルコールの水酸基以外の骨格部分を示す。
また、多価アルコール中の水酸基は少なくとも2個が結合していればよいため、原料となる多価アルコールが3価以上、すなわち、水酸基が3個以上のときは、未反応の水酸基が残っていてもよい。
【0033】
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、イソシアヌル酸のエチレンオキシド3モル付加体、ペンタエリスリトール、トリシクロデカンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのエチレンオキシド3モル付加体、D−ソルビトール及び水素化ビスフェノールA等が挙げられる。これらの化合物の製造方法としては特に制限はないが、例えば特公平6−74239号公報に挙げられる方法で製造することができる。
【0034】
アリルエステルオリゴマー中の一般式(3)で示される構造単位としては、同一の構造単位が繰り返されていてもよいが、異なる構造単位が含まれていてもよい。つまり、アリルエステルオリゴマーは共重合タイプであってもよい。この場合、1つのアリルエステルオリゴマーには数種類のXが存在することになる。例えば、Xの1つがプロピレングリコール由来の残基、もう1つのXがトリメチロールプロパン由来の残基であるというような構造でもよい。この場合、アリルエステルオリゴマーはトリメチロールプロパン残基の部分で枝分かれすることになる。A
3も同様にいくつかの種類が存在してもよい。以下にR
3がアリル基、A
2,A
3がイソフタル酸由来の残基、Xがプロピレングリコールとトリメチロールプロパンの場合の構造式を示す。
【0036】
[硬化剤]
アリルエステル樹脂組成物には硬化剤を使用してもよい。使用できる硬化剤としては特に制限はなく、一般に重合性樹脂の硬化剤として用いられているものを用いることができる。中でも、アリル基の重合開始の点からラジカル重合開始剤を添加することが望ましい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、光重合開始剤、アゾ化合物等が挙げられる。
【0037】
有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル等の公知のものが使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキサイド、p−メチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート及び2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキシン−3等が挙げられる。
【0038】
また、上記の光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらのラジカル重合開始剤は1種を単独で、または2種以上を混合または組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これらの硬化剤の配合量には特に制限はないが、アリルエステル樹脂組成物100質量部に対し、0.1〜10質量部配合することが好ましく、0.5〜5質量部配合することがより好ましい。硬化剤の配合量が0.1質量部より少ないと充分な硬化速度が得ることが困難であり、また配合量が10質量部を超えると、最終的な硬化物がもろくなり、機械強度が低下する場合がある。
【0040】
[反応性モノマー]
アリルエステル樹脂組成物には、硬化反応速度のコントロール、粘度調整(作業性の改善)、架橋密度の向上、機能付加等を目的として、反応性モノマー(反応性希釈剤)を加えることもできる。
これらの反応性モノマーとしては特に制限はなく、種々のものが使用できるが、アリルエステルオリゴマーと反応させるためにはビニル基、アリル基等のラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有するモノマーが好ましい。例えば、不飽和脂肪酸エステル、芳香族ビニル化合物、飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体、架橋性多官能モノマー等が挙げられる。中でも、架橋性多官能性モノマーを使用すれば、硬化物の架橋密度を制御することもできる。これら反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示す。
【0041】
不飽和脂肪酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、シアノフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート及びビフェニル(メタ)アクリレート等のアクリル酸芳香族エステル;
フルオロメチル(メタ)アクリレート及びクロロメチル(メタ)アクリレート等のハロアルキル(メタ)アクリレート;
さらに、グリシジル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、及びα−シアノアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0042】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン及びビニルトルエン等を挙げることができる。
飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び安息香酸ビニル等を挙げることができる。
【0043】
架橋性多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、オリゴエステルジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−ω−(メタ)アクリロイロキシピリエトキシ)フェニル)プロパン等のジ(メタ)アクリレート;
フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジメタリル、テレフタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,5−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,4−キシレンジカルボン酸アリル及び4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸ジアリル類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル及びジビニルベンゼン等の二官能の架橋性モノマー;トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストーリルトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート及びジアリルクロレンデート等の三官能の架橋性モノマー;
さらにペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等の四官能以上の架橋性基を有するモノマーが挙げられる。
【0044】
上記の反応性モノマーは、1種単独で、または2種以上を混合または組み合わせて用いることができる。これらの反応性モノマーの樹脂成分の使用量には特に制限はないが、アリルエステルオリゴマー100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、2〜500質量部であることがより好ましく、5〜100質量部であることが特に好ましい。反応性モノマーの使用量が1質量部未満であると、粘度低下効果が小さく、作業性が悪化したり、また、反応性モノマーとして単官能性モノマーを使用した場合には、架橋密度が低くなり硬度が不十分になることがあるため好ましくない。また、使用量が1000質量部を超えるとアリルエステル樹脂自体の優れた透明性や機械強度が低下する場合があり好ましくない。
【0045】
[ラジカル反応性の樹脂組成物]
アリルエステル樹脂組成物は、諸物性を改良する目的でラジカル反応性の樹脂成分を含んでいてもよい。これら樹脂成分としては不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
【0046】
不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと不飽和多塩基酸(及び必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物を、必要に応じてスチレン等の重合性不飽和化合物に溶解したもので、例えば「ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社,1988年発行,第16頁〜第18頁及び第29頁〜第37頁などに記載されている樹脂を挙げることができる。この不飽和ポリエステル樹脂は、公知の方法で製造することができる。
【0047】
ビニルエステル樹脂はエポキシ(メタ)アクリレートとも呼ばれ、一般にエポキシ樹脂に代表されるエポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸などの重合性不飽和基を有するカルボキシル化合物のカルボキシル基との開環反応により生成する重合性不飽和基を有する樹脂、またはカルボキシル基を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレート等の分子内にエポキシ基を持つ重合性不飽和化合物のエポキシ基との開環反応により生成する重合性不飽和基を有する樹脂を指す。詳しくは「ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社,1988年発行,第336頁〜第357頁などに記載されており、その製造は、公知の方法により行うことができる。
【0048】
ビニルエステル樹脂の原料となるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ビスフェノールFアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、ノボラック型ポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
上記のラジカル反応性の樹脂成分は、1種単独で、または2種以上を混合または組み合わせて用いることができる。
【0049】
これらのラジカル反応性の樹脂成分の使用量には特に制限はないが、アリルエステルオリゴマー100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、2〜500質量部であることがより好ましく、5〜100質量部であることが特に好ましい。
反応性モノマーの使用量が1質量部未満であると、ラジカル反応性の樹脂成分由来の機械強度向上などの効果が小さく、作業性が悪化したり、成形性が悪化したりするため好ましくない。また、使用量が1000質量部を超えるとアリルエステル樹脂自体の耐熱性が現れない場合があり好ましくない。
【0050】
[添加剤]
アリルエステル樹脂組成物には、硬度、強度、成形性、耐久性、耐水性を改良する目的で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、離型剤、滑剤、撥水剤、難燃剤、低収縮剤、架橋助剤などの添加剤を必要に応じて添加することができる。
酸化防止剤としては、特に制限はなく、一般に用いられているものを用いることができる。中でも、ラジカル連鎖禁止剤であるフェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。フェノール系酸化防止剤としては2,6−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2‘−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)及び1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
【0051】
滑剤としては、特に制限はなく、一般に用いられているものを用いることができる。中でも、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪族炭化水素系滑剤などが好ましく、金属石鹸系滑剤が特に好ましい。金属石鹸系滑剤としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらは複合体として用いられても良い。
【0052】
紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、一般に用いられているものを用いることができる。中でも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が好ましく、特に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0053】
しかし、これらの添加剤は上述した具体例に制限されるものではなく、本発明の目的、または効果を阻害しない範囲であらゆるものを添加することができる。
【0054】
[アリルエステル樹脂組成物の硬化物]
アリルエステル樹脂組成物を、例えば光照射及び加熱の少なくともいずれか一方により硬化させることによって、透明性、耐熱性に優れたフィルムあるいはシートを得ることができる。
なお、フィルムは、通常、膜厚が250μm未満のものを指し、シートは厚みが250μm以上のものを指す。
【0055】
樹脂組成物からフィルムあるいはシートを作製するにあたっては、一定の表面硬度が得られれば、どのような硬化方法を選択してもよい。一定以上の表面硬度を得るには、樹脂組成物をフィルム形状に塗工した後、光硬化及び熱硬化手法、もしくは熱硬化手法のみをとるのが好ましい。
【0056】
樹脂組成物を硬化させる際の条件等には特に制限はないが、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムなどの透明プラスチックフィルム、金属シート、もしくはガラス板上に塗工し流延させた後、光硬化及び熱硬化、もしくは熱硬化を実施するのが好適である。
【0057】
光硬化の場合、紫外線照射法が一般的であり、例えば紫外線ランプを使用して紫外線を発生させて照射することができる。紫外線ランプには、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、パルス型キセノンランプ、キセノン/水銀混合ランプ、低圧殺菌ランプ、無電極ランプ、LEDランプ等があり、いずれも使用することができる。これらの紫外線ランプの中でも、メタルハライドランプもしくは高圧水銀ランプが好ましい。照射条件はそれぞれのランプ条件によって異なるが、照射露光量が20〜5000mJ/cm
2程度が好ましい。また、紫外線ランプには楕円型、放物線型、拡散型等の反射板を取り付け、冷却対策として熱線カットフィルター等を装着するのが好ましい。また、硬化促進のために、予め30〜80℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
【0058】
熱硬化の場合、加熱方法は特に限定されないが、熱風オーブン、遠赤外線オーブン等の均一性に優れた加熱方法がよい。硬化温度は約100〜200℃、好ましくは120〜180℃である。硬化時間は、硬化方法により異なるが、熱風オーブンであれば0.5分〜5時間、遠赤外線オーブンであれば0.5〜60分間が好ましい。
【0059】
また、光重合開始剤を用いた紫外線硬化や、有機過酸化物やアゾ化合物を用いた熱硬化は、ラジカル反応であるため酸素による反応阻害を受けやすい。硬化反応時の酸素阻害を防止するため、硬化性組成物は、透明プラスチックフィルム、金属シート、もしくはガラス板等のベースシート、ベースフィルム上へ塗工、流延後、光硬化を実施する前に、硬化性組成物上へ透明カバーフィルムを施し、流延された硬化性組成物表面の酸素濃度を1%以下にすることが好ましい。透明カバーフィルムは、表面に空孔がなく、酸素透過率の小さいもので、かつ紫外線硬化や熱硬化時に発生する熱に耐えられるものを使用する必要がある。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、アセテート樹脂、アクリル樹脂、フッ化ビニル、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、シクロオレフィンポリマー(ノルボルネン樹脂)等のフィルムであり、これらを単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0060】
ただし、硬化後の硬化物との剥離が可能でなければならないため、これらのベースシート、ベースフィルム、透明カバーフィルムの表面にシリコーン樹脂塗布、フッ素樹脂塗布等の易剥離処理が施されていてもよい。
【0061】
アリルエステル樹脂組成物は液状であることから、公知の塗布装置を用いて所定の形状や形態となるように塗布、塗工等を行うことができる。塗布方式としては、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート、スピナーコート等が挙げられる。なお、塗布、塗工、成形時のアリルエステル樹脂組成物の好ましい粘度範囲としては常温で100〜100,000mPa・sの範囲である。
【0062】
[反射層]
反射層3は、例えば金属膜4,4と、金属膜4,4の間に設けられた接着層5とを有する。金属膜4を構成する金属の種類に特に限定はないが、可視光の反射率が高いものが望ましい。
反射像の元映像の色調を正確に反映するためには、金属膜4を構成する金属は、無彩色(例えば銀色)の金属であることが望ましい。使用できる金属としては、アルミニウム、銀、金、チタン、ニッケル、銅,錫、インジウム、クロム、これらの合金が挙げられる。これらの中でもアルミニウム、銀、クロムが好ましい。
【0063】
金属膜4は、隣り合う光透過部2,2の間に、光透過部2の側面2cに沿って光透過部2の長さ方向に延在する帯状に形成されている。金属膜4は、光透過部2の側面2cの全体を覆う形状であることが好ましい。金属膜4は、例えば側面2cに接して形成されている。金属膜4は、例えば光透過部2の主面2a,2bに対して垂直に形成されている。
金属膜4の、少なくとも光透過部2側の面は、光透過部2を通る可視光が反射する光反射面4aである。光反射面4aは、例えば光透過部2の主面2a,2bに対して垂直な面である。
【0064】
接着層5は、例えば粘着剤、接着剤等からなる。接着層5の素材は特に限定されない。粘着剤としてはゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等が挙げられる。接着剤としてはフェノール樹脂、酢酸ビニル系、クロロプレンゴム系等の溶剤系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、シリコーンゴム系等の硬化反応タイプ、スチレンブタジエンゴム系等の熱溶融タイプが挙げられる。
接着層5は、光硬化性(例えば紫外線硬化性)の樹脂からなる接着剤であることが好ましい。接着層5は、金属膜4の全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0065】
光制御パネル1,1(1A,1B)は、平面視において少なくとも一部が重なり、重なり領域において反射層3,3(3A,3B)が交差するように配置される。
図1に示す光制御パネル1A,1Bは、平面視において全域が重なるように配置され、反射層3A,3Bは直交している。
【0066】
光制御パネル1の厚さは、そのサイズ(例えばX方向およびY方向の寸法)に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0.5〜10mmが好ましい。
【0067】
[透明保護層]
透明保護層6,6は、フィルム状またはシート状に形成され、可視光(例えば波長380nm〜750nm)が透過可能とされている。透明保護層6は、可視光が全波長範囲において透過可能であることが好ましい。
図1および
図2では、透明保護層6,6は、それぞれ第1の光制御パネル1Aの上面側および第2の光制御パネル1Bの下面側に設けられている。第1の光制御パネル1Aの上面側の透明保護層6を第1の透明保護層6Aといい、第2の光制御パネル1Bの下面側の透明保護層6を第2の透明保護層6Bという。透明保護層は、透明保護部ともいう。
【0068】
透明保護層6は、例えばアリルエステル樹脂組成物の硬化物からなる。透明保護層6の構成材料はガラスなどでもよい。
透明保護層6の厚さは、0.05〜1mm(好ましくは0.1〜0.5mm)が好適である。透明保護層6の厚さを0.05mm以上とすることによって、透明保護層6の強度を高めることができる。透明保護層6の厚さを1mm以下とすることによって、透明保護層6の透明度を高めることができる。
【0069】
接着層7,8は、例えば粘着剤、接着剤等からなる。接着層7,8の素材は無色透明であれば特に限定されない。粘着剤としてはゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等が挙げられる。接着剤としてはフェノール樹脂、酢酸ビニル系、クロロプレンゴム系等の溶剤系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、シリコーンゴム系等の硬化反応タイプ、スチレンブタジエンゴム系等の熱溶融タイプが挙げられる。
接着層7,8は、光硬化性(例えば紫外線硬化性)の樹脂からなる接着剤であることが好ましい。
【0070】
図2に示すように、光学結像装置10では、光学結像装置10の一方側(
図2における下方側)からの光L1,L2は、第2の透明保護層6Bを透過して第2の光制御パネル1Bに入射し、反射層3Bの光反射面4aで反射する。反射層3Bの光反射面4aからの反射光RB1,RB2は第1の光制御パネル1Aに入射し、反射層3Aの光反射面4aで反射する。反射層3Aの光反射面4aからの反射光RA1,RA2は、第1の透明保護層6Aを透過し、光学結像装置10の他方側(
図2における上方側)に、立体像20を表示する。
【0071】
<光学結像装置の製造方法>
次に、光学結像装置10を製造する方法の一例を説明する。
[透明基材の作製]
図5および
図6に示すように、アリルエステル樹脂組成物を、PETフィルムなどの帯状の長尺ベースフィルム上に流延し、例えば光照射、加熱等により硬化させることによって、アリルエステル樹脂からなるシート状の透明基材12を作製する。透明基材12は可視光が透過可能である。
透明基材12は、長尺の帯状とされている。D1は透明基材12の長さ方向である。D2は透明基材12の幅方向であり、透明基材12に沿う面内において長さ方向D1に直交する方向である。透明基材12は、硬化反応時あるいは搬送される際に長さ方向D1に張力が加えられるため、温度変化時の膨張量または収縮量などの物性が長さ方向D1と幅方向D2とで異なる場合がある。
【0072】
[金属膜の形成]
図7に示すように、透明基材12を長さ方向D1に搬送しつつ、透明基材12の両面に、それぞれ金属膜14を形成する。透明基材12の両面にそれぞれ金属膜14を形成した積層体を帯状積層体16という。
透明基材12を長さ方向D1に搬送するには、ロールトゥーロール方式を採用することができる。ロールトゥーロール方式を採用することにより、生産性を高めることができる。
【0073】
透明基材12の表面に金属膜14を形成する方法は特に限定されないが、転写法、ドライコーティング法、ウェットコーティング法が挙げられる。転写法としては金属箔を接着剤により透明基材12に貼り付ける方法がある。ドライコーティング法としては真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等が挙げられる。ウェットコーティング法としては湿式めっき法等が挙げられる。透明基材12の表面に均一に薄く金属膜14を形成するには真空蒸着法やスパッタリング法などの乾式の方法が好ましい。金属膜14は、透明基材12の一方の面に形成した後、他方の面に形成してもよいし、透明基材12の両面に同時に形成してもよい。
【0074】
[第1積層体の作製]
図8に示すように、帯状積層体16の一方の表面に、接着剤等を塗布することにより接着層15を形成する。帯状積層体16に接着層15を形成した積層体を接着層付き帯状積層体17という。なお、接着層付き帯状積層体は、接着剤等を帯状積層体16の両方の表面に塗布することによって、接着層15が帯状積層体16の両面に形成された態様でもよい(図示せず。)。透明基材12の両表面には、接着剤等を薄く塗布してもよい(図示せず)。
図9に示すように、接着層付き帯状積層体17を、所定の長さに裁断して複数の第1積層体18を得る。第1積層体18は、例えば長さ方向D3(長さ方向D1に沿う方向)の寸法と、幅方向D4(幅方向D2に沿う方向)の寸法とが等しい矩形(すなわち正方形)であることが好ましい。複数の第1積層体18は互いに同じ長さであることが好ましい。
なお、金属膜の形成と接着層の形成は、帯状の透明基材を所定のサイズ(正方形など)に切り出した後、枚葉毎に行ってもよい。
【0075】
[複層積層体の作製]
図10および
図11に示すように、複数の第1積層体18を積層させる。第1積層体18は、接着層15が下方側に隣り合う第1積層体18の金属膜14に当接するように重ねられる。なお、最も下層側の第1積層体18としては接着層15が形成されていないものを使用する。
必要に応じてプレス機等により加圧、加熱することによって、
図11に示すように、透明基材12と反射層13とが交互に積層された構造を有するブロック状の複層積層体19を得る。反射層13は、金属膜14,14と、金属膜14,14の間に設けられた接着層15とを有する。
【0076】
図10に示すように、複層積層体19を構成する複数の第1積層体18は、少なくとも1つの第1積層体18の長さ方向D3と、他の第1積層体18のうち少なくとも1つの長さ方向D3とが異なるように配置される。
図10および
図11に示す複層積層体19では、複数の第1積層体18は、厚さ方向に隣り合う第1積層体18,18の長さ方向D3が、平面視において直交するように積層される。すなわち、複層積層体19では、
図10に示すように、長さ方向D3を第1の方向A1に向けた第1積層体18(18A)と、長さ方向D3を第2の方向A2に向けた第1積層体18(18B)とが交互に積層されている。
ここでいう平面視とは、第1積層体18の厚さ方向から見ることをいう。第1の方向A1と第2の方向A2とは互いに直交する。第1積層体18は第1の方向A1および第2の方向A2がなす面に平行である。
【0077】
前述のように、
図5および
図6に示す透明基材12は、搬送される際の張力を原因として物性が長さ方向D1と幅方向D2とで異なることがある。そのため、複層積層体19において複数の第1積層体18を長さ方向D3を揃えて配置すると、長さ方向D3と幅方向D4との物性の差異が拡大され、複層積層体19に歪みが生じることが考えられる。
これに対し、この製造方法では、複数の第1積層体18の長さ方向D3が互いに異なることにより、長さ方向D3と幅方向D4との物性の差異を小さくし、複層積層体19に生じる歪みを抑制できる。
【0078】
[光制御パネルの作製]
図12および
図13に示すように、複層積層体19を、切断箇所21において、透明基材12に対して交差する面(例えば透明基材12に対して垂直な面)に沿って切断し、一部を板状に切り出すことによって、
図3に示す光制御パネル1を得る。複層積層体19の透明基材12は、光制御パネル1の光透過部2となる。反射層13は反射層3となる。金属膜14および接着層15はそれぞれ金属膜4、接着層5となる。
切断加工には鋸盤法、ワイヤーソー法、コンターマシン法、シャーリング法、旋盤法、ルータ加工、ガス切断法、レーザー切断法、プラズマ切断法、ウォータージェット切断法等の加工方法を採用することができる。
【0079】
前述のように、透明基材12は、搬送される際の張力を原因として物性が長さ方向D1(長さ方向D3)と幅方向D2(幅方向D4)とで異なることがある。その場合、光制御パネル1では、光透過部2の厚さ方向(
図3のZ方向)と長さ方向(
図3のY方向)の引張弾性率(JIS K 7161に準拠)は異なる。
複層積層体19は、少なくとも1つの第1積層体18の長さ方向D3と、他の第1積層体18のうち少なくとも1つの長さ方向D3とが異なるため、光制御パネル1では、少なくとも1つの光透過部2における厚さ方向と長さ方向の引張弾性率の大小関係は、他の光透過部2のうち少なくとも1つにおける厚さ方向と長さ方向の引張弾性率の大小関係とは逆である。
【0080】
図11に示す複層積層体19は、長さ方向D3を第1の方向A1に向けた第1積層体18(18A)と、長さ方向D3を第2の方向A2に向けた第1積層体18(18B)とが交互に積層されているため、光制御パネル1では、隣り合う光透過部2,2の厚さ方向(
図3のZ方向)と長さ方向(
図3のY方向)の引張弾性率(JIS K 7161に準拠)の大小関係は逆である。すなわち、光制御パネル1では、厚さ方向の引張弾性率が長さ方向の引張弾性率より大である光透過部2と、厚さ方向の引張弾性率が長さ方向の引張弾性率より小である光透過部2とが交互に並んでいる。
【0081】
[光制御パネルの設置]
図1および
図2に示すように、光制御パネル1,1(1A,1B)は、平面視において少なくとも一部が重なり、重なり領域において反射層3,3(3A,3B)が交差するように向い合せて配置される。
図1および
図2に示す光制御パネル1A,1Bは、平面視において全域が重なるように配置され、反射層3A,3Bは直交している。
光制御パネル1,1(1A,1B)のうち一方の表面に、接着剤等を塗布することにより接着層7を形成する。接着層7によって光制御パネル1,1(1A,1B)を接着させる。
【0082】
[透明保護層の設置]
光制御パネル1,1(1A,1B)の外面、または透明保護層6の表面に、透明な接着剤等を塗布することにより接着層8,8を形成する。接着層8,8によって光制御パネル1,1(1A,1B)と透明保護層6(6A,6B)とを接着する。なお、透明保護層の設置は前記光制御パネルの設置の前に実施してもよい。すなわち、各光制御パネル1A,1Bのそれぞれに透明保護層6(6A,6B)を接着した後に、光制御パネル1A,1Bを、反射層3A,3Bを直交させて接着してもよい。
以上の工程により、
図1および
図2に示す光学結像装置10を得る。
【0083】
ここに示す製造方法によれば、複層積層体19の作製にあたり、複数の第1積層体18は、少なくとも1つの第1積層体18の長さ方向D3と、他の第1積層体18のうち少なくとも1つの長さ方向D3とが異なるように配置される。
前述のように、透明基材12は搬送時の張力を原因として長さ方向D1と幅方向D2とで物性が異なることがあるが、この製造方法によれば、一部の第1積層体18の長さ方向D3が互いに異なることにより、物性の差異が拡大されるのを回避し、複層積層体19に生じる歪みを抑制できる。そのため、歪みの少ない光制御パネル1が得られる。よって、光学結像装置10において、結像品質を高めることができる。
【0084】
また、複層積層体19を作製するにあたり、隣り合う第1積層体18の長さ方向D3が互いに直交するように第1積層体18を積層することにより、長さ方向D3と幅方向D4の物性の差異を小さくできるため、前述の歪みをさらに低減し、光学結像装置10における結像品質をさらに高めることができる。
【0085】
光制御パネル1では、少なくとも1つ光透過部2における厚さ方向と長さ方向の引張弾性率の大小関係は、他の光透過部2のうち少なくとも1つにおける厚さ方向と長さ方向の引張弾性率の大小関係とは逆である。そのため、光制御パネル1に生じる歪みを小さくし、光学結像装置10において結像品質を高めることができる。
光制御パネル1では、厚さ方向の引張弾性率が長さ方向の引張弾性率より大である光透過部2と、厚さ方向の引張弾性率が長さ方向の引張弾性率より小である光透過部2とが交互に並ぶため、前述の歪みをさらに低減し、光学結像装置10における結像品質をさらに高めることができる。
【0086】
実施形態の光学結像装置およびその製造方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
図4に示す光制御パネル1では、反射層3は金属膜4と接着層5とからなるが、反射層は金属膜のみで構成されていてもよい。
光透過部は、少なくとも一部がアリルエステル樹脂組成物の硬化物で構成されていてもよい。
前述の製造方法では、透明基材12の両面にそれぞれ金属膜14を形成したが、光制御パネル1において隣り合う光透過部2の間に反射層3を形成できれば、金属膜14を透明基材12の一方の面のみに形成してもよい。すなわち、接着層15を無色透明なものとすれば、金属膜14は透明基材12の片面にのみ形成し、
図9において、各第1積層体18の上側の金属膜14を不要とすることができる。ただし、この場合であっても
図10における最上面と最下面の透明基材12には両面に金属膜14が必要である。
また、前述の製造方法では、複層積層体19を構成する第1積層体18のうち一部の第1積層体18と他の一部の第1積層体18とは、平面視において長さ方向D3が互いに直交するが、一部の第1積層体18と他の一部の第1積層体18の長さ方向D3は交差する方向であればよい。
「アリル基及びメタリル基の少なくともいずれか一方」は、アリル基及びメタリル基のいずれか一方または両方を意味する。「光照射及び加熱の少なくともいずれか一方」は、光照射及び加熱のいずれか一方または両方を意味する。「脂環式構造及び芳香環構造の少なくともいずれか一方」は、脂環式構造及び芳香環構造のいずれか一方または両方を意味する。
【実施例】
【0087】
以下、合成例、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載により限定されるものではない。フィルム、シートの全光線透過率、鉛筆硬度等は、以下の方法により測定できる。
【0088】
[全光線透過率]
全光線透過率は、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH5000を使用し、JIS K−7361−1に準拠して測定した。
【0089】
[Haze]
Haze値は、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH5000を使用し、JIS K−7136に準拠して測定した。
【0090】
[アッベ数]
アタゴ株式会社製、多波長アッベ屈折率計DR−M4を用い、C線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)の屈折率を測定し、以下計算式からD線におけるアッベ数を算出した。
νD=(nD−1)/(nF−nC)
【0091】
[鉛筆硬度]
鉛筆硬度は安田精機工業社製電動鉛筆引っかき硬度試験機No.553−Mを使用し、JIS K5600−5−4に準拠し測定した。
【0092】
[比重]
比重はアルファミラージュ製株式会社製電子比重計を用いて水中置換法にて測定した。測定試料の大きさは50mm×50mm×所定の厚さmm、測定温度は23℃とした。
【0093】
[算術平均粗さ(Ra)]
算術平均粗さ(Ra)は株式会社日立ハイテク社製走査型プローブ顕微鏡Nanocuteを用いて測定した。
【0094】
[弾性率]
弾性率は島津製作所製引張試験機AG−Iを使用し、JIS K7161−1に準拠し測定した。
【0095】
合成例1:
蒸留装置の付いた2リットルの三つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル1625g、トリメチロールプロパン247g、ジオクチル錫オキサイド4.1gを仕込み、窒素気流下、180℃で生成するアリルアルコールを系外に留去しながら加熱した。留去したアリルアルコールが約260gになったところで、反応系内を徐々に、4時間かけて6.6kPaまで減圧し、アリルアルコールの留出速度を速めた。留出がほとんどなくなったところで、圧力を0.5kPaとし、1時間反応させた後、室温まで冷却しアリルエステルオリゴマーAを得た。
【0096】
製造例1(透明基材A):
合成例1で作製したアリルエステルオリゴマーA100質量部に対し、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社製、「M−309」)10質量部、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社製、「イルガキュア(登録商標)TPO」)0.5質量部、パーヘキシル(登録商標)I(日油株式会社)を1質量部加え十分撹拌しアリルエステル樹脂組成物Bを得た。この組成物BをPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、硬化後の厚さが0.3mmとなるように塗布した。塗工液表面をPET製カバーフィルムで覆い、紫外線照射装置(メタルハライドランプ)を用いて200mW/cm
2、800mJ/cm
2の条件で紫外線を照射した後、150℃に設定した加熱炉に10分間投入した。加熱炉から取り出し、ベースフィルム及びカバーフィルムを剥がし、厚さ0.3mmの透明基材Aを得た。
【0097】
製造例2:
透明基材Aの両面に真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着し、表面抵抗値1.1Ω/□を有するアルミニウム膜(金属膜)を有する厚さ0.3mmの基材Bを得た。この基材Bのアルミニウム蒸着面の、波長380〜780nmの領域の平均反射率は91%であった。
【0098】
<実施例1>
基材Bを10cm×10cmの大きさに炭酸ガスレーザーによってシート状に切断加工した。アロンアルファ株式会社製接着剤EX4000を用いて、得られたシートを、厚さ方向に隣り合うシートの長さ方向が平面視において直交するように(
図10参照)交互に35枚重ねて貼り合わせ、積層品(複層積層体)を作製した。この積層品を、ダイヤモンドワイヤーソーを用いて1mmの厚みとなるように切断し、0.3mm間隔で金属膜層(反射層)を有する約10cm×約10cmの光制御パネルを得た。
この光制御パネルを二枚作製し、片面にデクセリアルズ株式会社製UV硬化型樹脂SVR1120を接着剤として塗布した。二枚の光制御パネルを、金属膜層(反射層)が平面視において直交するように重ね、紫外線照射装置(メタルハライドランプ)を用いて200mW/cm
2、5000mJ/cm
2の条件で紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ、光学結像装置Cとした。
光学結像装置Cについて、結像品質を確認した。
【0099】
<比較例1>
基材Bを10cm×10cmの大きさに炭酸ガスレーザーによってシート状に切断加工した。アロンアルファ株式会社製接着剤EX4000を用いて、得られたシートを長さ方向が同一となるように35枚重ねて貼り合わせ、積層品(複層積層体)を作製した。この積層品を、ダイヤモンドワイヤーソーを用いて1mmの厚みとなるように切断し、0.3mm間隔で金属膜層(反射層)を有する約10cm×約10cm光制御パネルを得た。
この光制御パネルを二枚作製し、片面にデクセリアルズ株式会社製UV硬化型樹脂SVR1120を接着剤として塗布した。二枚の光制御パネルを、金属膜層(反射層)が平面視において直交するように重ね、紫外線照射装置(メタルハライドランプ)を用いて200mW/cm
2、5000mJ/cm
2の条件で紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ、光学結像装置Dとした。
光学結像装置Dについて、結像品質を確認した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
表1に示すように、実施例1は、比較例1に比べて結像品質が優れていることが確認された。