(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位相算出部は、前記判定部により前記エッジ検出部が検出したエッジが正常ではないと判定されてから、次に前記エッジが正常であると判定されるまで、前記補正値に基づいて前記交流電力の位相を算出することを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
前記判定部は、前記エッジ検出部が前記エッジを検出したときのカウンタ値が予め設定された閾値未満である場合には、当該エッジが正常ではないと判定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインバータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インバータは、同期信号にノイズが乗ってしまった場合には、そのノイズを同期信号の立ち下がりエッジとして誤検出する場合がある。その場合、インバータは、誤った周期に基づいて算出された位相で交流電圧を出力することになり、商用交流電圧に同期させることができない場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、同期信号にノイズが乗ってしまった場合であっても、出力する交流電圧を、商用交流電圧と同期させることができるインバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換部と、外部からの供給される同期信号のエッジを検出するエッジ検出部と、前記エッジ検出部によりエッジが検出されることでカウンタ値をリセットするカウンタと、前記エッジ検出部が検出したエッジが正常か否かを判定する判定部と、前記カウンタのカウンタ値に基づいて前記交流電力の位相を算出する位相算出部と、前記位相算出部により算出された位相の交流電力を前記DC/AC変換部から出力させる出力電圧制御部と、を備え、前記位相算出部は、前記判定部により前記エッジ検出部が検出したエッジが正常ではないと判定された場合には、
前記DC/AC変換部の出力制御の処理周期で前記カウンタから前記カウンタ値を取得した前記カウンタのカウント値のうち、エッジが正常でないと判定されたときより出力制御の処理周期で1回前に取得したカウンタ値である前回のカウント値に、
前記出力制御の処理周期におけるクロック信号のカウント値である所定値を
、前記出力制御の処理周期である一定周期ごとに加算した補正値に基づいて前記交流電力の位相を算出することを特徴とするインバータである。
【0007】
本発明の一態様は、上述のインバータであって、前記位相算出部は、前記判定部により前記エッジ検出部が検出したエッジが正常ではないと判定されてから、次に前記エッジが正常であると判定されるまで、前記補正値に基づいて前記交流電力の位相を算出する。
【0008】
本発明の一態様は、上述のインバータであって、前記一定周期は、前記DC/AC変換部の出力制御の処理周期であり、前記所定値は、前記処理周期におけるクロック信号のカウント値である。
【0009】
本発明の一態様は、上述のインバータであって、前記位相算出部は、前記エッジが正常であると判定された場合には、前記カウンタ
のカウント値に対して前記エッジが正常であると判定されたときのカウンタ値である正常カウンタ値で除算した値に基づいて前記交流電力の位相を算出し、前記エッジが正常ではないと判定された場合には、前記補正値に対して前記正常カウンタ値で除算した値に基づいて前記交流電力の位相を算出する。
【0010】
本発明の一態様は、上述のインバータであって、前記判定部は、前記エッジ検出部が前記エッジを検出したときのカウンタ値が予め設定された閾値未満である場合には、当該エッジが正常ではないと判定する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、同期信号にノイズが乗ってしまった場合であっても、出力する交流電圧を、商用交流電圧と同期させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る電源装置を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電源装置Aの一例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、電源装置Aは、開閉スイッチ1、半導体スイッチ2、及び出力スイッチ3、制御部4、及びインバータ部5を備える。
【0014】
電源装置Aは、直流電源100(外部)から供給される直流電力をインバータ部5が変換した交流電力と、商用電源200(外部)から供給される交流電力とを切り替えて出力可能な電源装置である。ここで、商用電源200は、例えば、100V(ボルト)の交流電源である。
【0015】
なお、以下の説明において、商用電源200から供給された交流電力を、電源装置Aの出力線に供給することをバイパス給電と称し、インバータ部5で変換した交流電力を電源装置Aの出力線に供給することをインバータ給電と称する。また、商用電源200から交流電力が供給される電源供給線をバイパス給電線L1と称し、電源装置Aの出力線である交流出力の出力線を交流出力線L3と称する。
【0016】
開閉スイッチ1は、例えば、リレースイッチや開閉器などの機械的に接点を開閉するスイッチである。開閉スイッチ1は、商用電源200から交流電力が供給されるバイパス給電線L1と交流出力線L3との間に接続されている。
開閉スイッチ1は、制御部4から供給される制御信号に基づいて、オフ状態(非導通状態)とオン状態(導通状態)とが切り替えられる。なお、開閉スイッチ1は、機械的に接点を開閉するため、制御信号により、オフ状態又はオン状態に制御された際に、実際に制御された状態になるまでに遅延時間(タイムラグ)が生じる。
【0017】
半導体スイッチ2は、例えば、サイリスタやトライアックなどのスイッチであり、開閉スイッチ1と並列に接続されている。すなわち、半導体スイッチ2は、バイパス給電線L1と交流出力線L3との間に接続されている。半導体スイッチ2は、制御部4から供給される制御信号に基づいて、オフ状態とオン状態とが切り替えられる。
【0018】
半導体スイッチ2は、制御信号によってオン状態に制御された際に、開閉スイッチ1よりも遅延時間(タイムラグ)が短いため、交流出力線L3への給電が途切れないように、開閉スイッチ1と並列に接続されている。また、半導体スイッチ2は、制御信号によってオフ状態に制御された際には、オフ状態になるまでに、交流電流が0(ゼロ)になるまでの期間(交流電流が反転するまでの期間)の遅延時間(タイムラグ)が生じるものとする。すなわち、半導体スイッチ2は、オフ状態に制御された際に、オフ状態になるまでに所定の時間を要し、オフ状態になったか否かを示す状態信号が出力されないスイッチである。
【0019】
出力スイッチ3は、例えば、リレースイッチや開閉器などの機械的に接点を開閉するスイッチである。出力スイッチ3は、インバータ部5の出力線L2と交流出力線L3との間に接続されている。出力スイッチ3は、制御部4から供給される制御信号に基づいて、オフ状態とオン状態とが切り替えられる。
【0020】
制御部4は、例えば、インバータ部5の動作を制御するとともに、バイパス給電とインバータ給電との切り替えを制御する。具体的には、制御部4は、開閉スイッチ1、及び半導体スイッチ2のそれぞれのオン状態とオフ状態との切り替えを制御する。また、制御部4は、出力スイッチ3のオン状態とオフ状態との切り替えを制御する。
【0021】
制御部4は、例えば、CPUなどを含むプロセッサであり、電源装置Aを統括的に制御する。制御部4は、例えば、バイパス給電からインバータ給電に切り替える際に、開閉スイッチ1及び半導体スイッチ2をオフ状態にし、半導体スイッチ2の両端の電圧差が所定の閾値以上(例えば、数V程度以上)になった場合に、インバータ給電を開始させる。
【0022】
また、制御部4は、バイパス給電からインバータ給電に切り替える際には、インバータ部5からの交流電源と商用電源200からの交流電力との位相を同期させるために、同期信号をインバータ部5に送信する。具体的には、制御部4は、商用電源200から供給された交流電圧を検出し、その検出した交流電圧に同期した同期信号を生成する。そして、制御部4は、生成した同期信号をインバータ部5に送信する。なお、制御部4は、インバータ部5と、有線又は無線で通信することで同期信号を送信する。例えば、制御部4は、インバータ部5とCAN(Controller Area Network)によって通信される。
【0023】
インバータ部5は、制御部4から受信した同期信号に基づいて、直流電源100から供給された直流電力を交流電力に変換する。そして、インバータ部5は、その変換した交流電力を出力線L2に出力する。
【0024】
以下に、本発明の一実施形態に係るインバータ部5の構成について、説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るインバータ部5の概略構成の一例を示す図である。
【0025】
インバータ部5は、DC/AC変換部51、交流フィルタ部52、出力リレー53、及びインバータ制御部54を備える。
【0026】
DC/AC変換部51は、直流電源100から供給された直流電圧Vdcを、例えば、100V、50Hz(ヘルツ)(又は60Hz)の交流電圧Vacに変換する。DC/AC変換部51は、不図示のスイッチング素子を備え、出力電圧制御部545からの制御により、スイッチング素子をスイッチングすることにより、直流電圧(直流電力)を交流電圧(交流電力)に変換する。
【0027】
交流フィルタ部52は、例えば、LCフィルタであり、DC/AC変換部51が変換した交流電圧からリップルを除去する。
【0028】
出力リレー53は、DC/AC変換部51の出力と出力線L2との間に接続される。
出力リレー53は、例えば、リレースイッチであり、交流フィルタ部52の出力と、交流電圧Vacの出力線L2との間に接続されている。出力リレー53は、インバータ制御部54から供給される制御信号に基づいて、オフ状態とオン状態とが切り替えられる。
【0029】
インバータ制御部54は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、インバータ部5を統括的に制御する。
インバータ制御部54は、制御部4から受信した同期信号に基づいて、直流電源100から供給された直流電力を交流電力に変換する。これにより、インバータ制御部54は、DC/AC変換部51から出力する交流電圧を、商用電源から供給される交流電圧と同期させることができる。
【0030】
以下に、本発明の一実施形態に係るインバータ制御部54の交流電圧の同期方法について、以下に説明する。
図3は、DC/AC変換部51から出力する交流電圧を、商用電源200から供給される交流電圧と同期させるために必要な、インバータ制御部54の機能ブロックの一例を示す図である。
【0031】
図3に示すように、インバータ制御部54は、エッジ検出部541、カウンタ542、判定部543、位相算出部544、及び出力電圧制御部545を備える。
【0032】
エッジ検出部541は、制御部4から同期信号を受信する。エッジ検出部541は、受信した同期信号のエッジを検出する。本実施形態では、上記エッジは立ち下がりエッジである場合について説明するが、本発明はこれに限定されず、立ち上がりエッジでもよい。
【0033】
カウンタ542は、例えば、マイコンのシステムクロックの周期でカウントアップする。具体的には、カウンタ542は、エッジ検出部541により、同期信号の立ち下がりエッジが検出されることでカウンタ値をリセットする。そして、カウンタ542は、次の立ち下りエッジまで、自装置のクロック信号をカウントアップする。
【0034】
判定部543は、エッジ検出部541が検出した立ち下がりエッジが正常か否かを判定する。例えば、判定部543は、エッジ検出部541が立ち下がりエッジを検出したときのカウンタ値が予め設定された閾値未満である場合には、当該立ち下がりエッジが正常ではないと判定する。この立ち下がりエッジが正常でない場合とは、その立ち下がりエッジがノイズである場合である。すなわち、エッジ検出部541が検出した立ち下がりエッジが正常であると判定された場合には、当該立ち下がりエッジは同期信号の立ち下がりエッジである。一方、エッジ検出部541が検出した立ち下がりエッジが正常ではないと判定された場合には、当該立ち下がりエッジは同期信号の立ち下がりエッジではなく、ノイズの立ち下がりエッジである。
【0035】
位相算出部544は、カウンタ542のカウンタ値に基づいて交流電力の位相を算出する。ここで、位相算出部544は、判定部543によりエッジ検出部541が検出した立ち下がりエッジが正常ではないと判定された場合には、前回のカウント値に所定値を一定周期ごとに加算した補正値に基づいて交流電力の位相を算出する。
【0036】
出力電圧制御部545は、位相算出部544により算出された位相の交流電力をDC/AC変換部51から出力させる。例えば、出力電圧制御部545は、位相算出部544により算出された位相に基づいて、DC/AC変換部51のスイッチングを制御する。
【0037】
次に、位相算出部544における交流電圧の位相の算出方法について、図面を用いて具体的に説明する。
【0038】
まず、判定部543によりエッジ検出部541が検出した立ち下がりエッジが正常であると判定される場合における、交流電圧の位相の算出方法について、説明する。
図4は、立ち下がりエッジが正常であると判定された場合のタイミングチャートである。
【0039】
位相算出部544は、立ち下がりエッジが正常であると判定された場合には、現在のカウンタ値に対して、正常カウンタ値で除算した値に基づいて、交流電力の位相を算出する。ここで、正常カウンタ値とは、立ち下がりエッジが正常であると判定されたときのカウンタ値であって、例えば、正常であると判定された前回の立ち下りエッジ時のカウンタ値である。ここで、位相をωt、カウント値をTcnt、正常カウンタ値をTprd(n)とすると、位相ωtは以下の式で表される。
【0040】
ωt=Tcnt/Tprd(n)×2π …(1)
【0041】
したがって、出力電圧制御部545は、位相算出部544で算出された位相ωtを用いて、インバータ出力の振幅値とsin(ωt)とを乗算することでDC/AC変換部51への駆動信号を生成して、DC/AC変換部51のスイッチング素子に出力する。これにより、インバータ部5は、出力する交流電圧を、商用交流電圧と同期させることができる。
【0042】
次に、判定部543によりエッジ検出部541が検出した立ち下がりエッジが正常ではないと判定された場合における、交流電圧の位相の算出方法について、説明する。
図5は、立ち下がりエッジが正常ではないと判定された場合のタイミングチャートである。
図6は、本発明の一実施形態に係る補正値について説明する図である。
【0043】
インバータ部5は、同期信号にノイズが乗った場合、ノイズを立ち下がりエッジと誤検出し、誤った位相でDC/AC変換部51の出力を制御する可能性がある。したがって、位相算出部544は、同期信号にノイズが乗ってしまった場合、すなわち、立ち下がりエッジが正常ではないと判定された場合には、現在のカウンタ値Tcntを用いずに、ノイズ処理を行った補正値Tcnt´を使用することで誤動作を抑制する。
【0044】
具体的には、
図5に示すように、位相算出部544は、時刻T1で立ち下がりエッジが正常ではない(異常)と判定された場合には、前回のカウント値Tcntに所定値ΔTを一定周期ごとに加算した補正値Tcnt´を生成する。ここで、一定周期とは、DC/AC変換部51の出力制御の処理周期である。また、所定値ΔTとは、処理周期におけるクロック信号のカウント値である。例えば、クロック信号の周波数が100MHzであり、処理周期が50μsである場合には、所定値ΔTは5000カウント(50μs/10ns)となる。例えば、前回のカウント値Tcntとは、DC/AC変換部51の前回の出力制御の処理時におけるカウント値である。
【0045】
位相算出部544は、判定部543によりエッジ検出部541が検出した立ち下がりエッジが正常ではないと判定されてから(時刻T1)、次に立ち下がりエッジが正常であると判定されるまで(時刻T2)、補正値Tcnt´に基づいて交流電力の位相ωtを算出する。
すなわち、
図6に示すように、位相算出部544は、立ち下がりエッジが正常ではないと判定されてから正常と判定されるまでの間、前回の補正値Tcnt´に所定値ΔTを処理周期ごとに加算して、新たな補正値Tcnt´を算出する。この補正値Tcnt´は、以下の式で表される。
Tcnt´(n)=Tcnt´(n−1)+ΔT …(2)
【0046】
なお、立ち下がりエッジの正常判定時にTcnt´(n)がTprd値を超えたら、Tcnt´(n)を0にする。また、Tcnt´>Tprd(前回正常値)の場合、Tcnt´(n)=Tcnt´(n−1)−Tprd(前回正常値)となる。
【0047】
位相算出部544は、算出した補正値Tcnt´を用いて、以下に示す式で位相ωtを算出する。
ωt=Tcnt´/Tprd(n)×2π …(3)
【0048】
ただし、判定部543によりエッジ検出部541が検出した立ち下がりエッジが正常ではないと判定された場合には、Tprd(n)の更新は行わず、前回において、立ち下がりエッジが正常であると判定されたTprd(n)を継続して使用する。これにより、インバータ部5は、同期信号にノイズが乗ってしまった場合であっても、出力する交流電圧を、商用交流電圧と同期させることができる。
【0049】
上述したように、本発明の一実施形態に係るインバータ部5は、同期信号のエッジが正常ではないと判定された場合には、前回のカウント値に所定値を一定周期ごとに加算した補正値に基づいて交流電力の位相を算出する。これにより、インバータ部5は、同期信号にノイズが乗ってしまった場合であっても、同期信号の周期を正確に算出することができる。そのため、インバータ部5は、同期信号にノイズが乗ってしまった場合であっても、出力する交流電圧を、商用交流電圧と同期させることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0051】
(1)例えば、上記の実施形態において、電源装置Aは、1つのインバータ部5を備える例を説明したが、これに限定されるものではない。電源装置Aは、複数のインバータ部5を備え、各インバータ部5が並列に接続される構成であってもよい。これにより、電源装置Aは、インバータ供給可能な交流電力を増大させることができる。
【0052】
(2)上記実施形態の電源装置Aは、バイパス給電として、100Vの商用電源を直接供給する例を説明したが、200Vなどの交流電圧をバイパス給電として供給してもよい。
【0053】
(3)上記実施形態のインバータ部5において、DC/AC変換部51は、直流電源100から供給された直流電圧Vdcを交流電圧Vacに変換する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、直流電源100とDC/AC変換部51との間に、DC/DC変換部、及び直流フィルタ部(例えば、LCフィルタ)を設けてもよい。
例えば、DC/DC変換部は、直流電源100から供給されたVdcを所定の直流電圧に変換する。そして、直流フィルタ部は、DC/DC変換部が変換した直流電圧からリップルを除去する。DC/AC変換部51は、直流フィルタ部で除去された直流電圧を交流電圧Vacに変換する。