(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832223
(24)【登録日】2021年2月3日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】積層造形によって印刷された部分における層間接着性の向上
(51)【国際特許分類】
B29C 64/295 20170101AFI20210215BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20210215BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20210215BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20210215BHJP
B29C 64/205 20170101ALI20210215BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20210215BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20210215BHJP
【FI】
B29C64/295
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/118
B29C64/205
B29C64/236
B29C64/241
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-90132(P2017-90132)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-206011(P2017-206011A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2020年4月2日
(31)【優先権主張番号】15/156,366
(32)【優先日】2016年5月17日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジェイ・ニストロム
(72)【発明者】
【氏名】バリー・ピー・マンデル
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィット・エイ・マンテル
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ・マクコンビル
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−345359(JP,A)
【文献】
特表2017−528340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/295
B29C 64/118
B29C 64/205
B29C 64/236
B29C 64/241
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦面を画定するプラットフォームと、
材料アプリケータ及び前記プラットフォームが少なくとも第1の方向及び第2の方向において互いに対して移動するように構成された材料アプリケータであって、前記第1の方向及び前記第2の方向のそれぞれが前記平坦面に平行であり前記第1の方向及び前記第2の方向は、共通線に沿って互いに反対でなく、前記プラットフォーム上に放出された材料で物体の層を形成するために材料を放出するようにさらに構成されている材料アプリケータと、
複数の加熱素子を有するヒータであって、第1のいくつかの前記加熱素子は、前記第1の方向に沿って前記ヒータの周囲に配置され、第2のいくつかの前記加熱素子は、前記第2の方向に沿って前記ヒータの周囲に配置され、前記複数の加熱素子は、前記材料アプリケータとともに移動するように構成されるヒータと、
前記複数の加熱素子に動作可能に接続されコントローラであって、前記コントローラは、前記材料アプリケータ及び前記プラットフォームが前記第1の方向において互いに対して移動するときに、前記第2の方向に整列された前記第2のいくつかの加熱素子ではなく、前記第1の方向に沿って整列された前記第1のいくつかの加熱素子を動作させるように構成され、および
前記材料アプリケータ及び前記プラットフォームが前記第2の方向において互いに対して移動するときに、前記第1の方向に整列された前記第1のいくつかの加熱素子ではなく、前記第2の方向に沿って整列された前記第2のいくつかの加熱素子を動作させるように構成され、
前記前記材料アプリケータが前記第1の方向及び前記第2の方向に移動するとき、前記材料アプリケータによって形成された以前に形成された層の一部を加熱し、
前記ヒータの前記第1のいくつかの加熱素子及び前記第2のいくつかの加熱素子が、前記以前に形成された層の前記一部を前記第1のいくつかの加熱素子又は前記第2のいくつかの加熱素子によって加熱し、前記以前に形成された層の加熱された前記一部に接着した後、前記材料アプリケータによって放出される前記材料の遷移温度よりも高い温度まで前記以前に形成された層の前記一部を加熱し、他の材料が前記材料アプリケータによって前記以前に形成された層上に放出可能にされるようにさらに構成され、
前記コントローラは、前記以前に形成された層の前記一部の温度を、前記以前に形成された層の前記一部が以前に加熱されてからの経過時間を用いて測定し、前記ヒータの前記第1のいくつかの加熱素子又は前記第2のいくつかの加熱素子が、前記以前に形成された層の前記一部を加熱する電力を、前記以前に形成された層の前記一部の測定された前記温度を参照して調整するようにさらに構成されたコントローラと、
を備える、3次元物体印刷システム。
【請求項2】
前記材料アプリケータに動作可能に接続されたアクチュエータであって、前記平坦面に対して直交する軸まわりの前記材料アプリケータの回転方向を維持しながら、前記第1の方向及び前記第2の方向に前記材料アプリケータを移動させるように構成されたアクチュエータをさらに備える、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記アクチュエータに動作可能に接続された前記コントローラであって、前記第1の方向及び前記第2の方向に前記材料アプリケータを移動させるように前記アクチュエータを選択的に動作させるようにさらに構成された前記コントローラをさらに備える、請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記プラットフォームに動作可能に接続されたアクチュエータであって、前記平坦面に対して直交する軸まわりの前記材料アプリケータの回転方向を維持しながら、前記第1の方向及び前記第2の方向に前記プラットフォームを移動させるように構成されたアクチュエータをさらに備える、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記アクチュエータに動作可能に接続された前記コントローラであって、前記第1の方向及び前記第2の方向に前記プラットフォームを移動させるように前記アクチュエータを選択的に動作させるようにさらに構成された前記コントローラをさらに備える、請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記材料アプリケータが、前記材料アプリケータから放出された前記材料を押し出すように構成されるノズルをさらに含む、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記ヒータが、前記材料アプリケータを取り囲んでいる前記層の領域を加熱するように構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記コントローラが、前記ヒータの前記第1のいくつかの加熱素子又は前記ヒータの前記第2のいくつかの加熱素子が、前記材料アプリケータが移動する速度を参照して、前記以前に形成された層の前記一部を加熱する電力を調整するようにさらに構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記コントローラが、前記以前に形成された層の前記一部の前記温度を、温度測定装置を用いて測定するようにさらに構成された、請求項1に記載の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文書に開示されたシステム及び方法は、3次元物体を製造するプリンタに関し、より具体的には、そのようなプリンタによって印刷された部分における層間接着性を向上させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル積層造形としても知られるディジタル3次元製造は、ディジタルデータモデルから実質的に任意の形状の3次元立体物体を形成するプロセスである。3次元印刷は、切削又は穿孔などの減法プロセスによってワークピースから材料を除去することに主に依存する従来の物体形成技術とは区別される。例えば、溶融フィラメント製造(FFF)印刷は、異なる形状の基材上に材料の連続層を形成するように1つ以上の材料アプリケータがポリマーフィラメントを押し出す積層プロセスである。いくつかの実施形態において、ポリマーフィラメントは、金属粒子若しくは繊維などのフィラーを含むか、又は、ポリマーフィラメントは、ポリマーによってコーティングされた金属ワイヤを含む。
【0003】
ポリマーフィラメントは、典型的には、層についての材料を供給するために、コイルから巻き戻されて材料アプリケータに供給される。以下にさらに詳細に記載されるように、材料アプリケータにおいて、フィラメントは、材料の柔軟性を増大させる温度まで加熱され、制御された速度でプラットフォーム上にノズルを介して材料が選択的に押し出されるのを可能とする。基材は、典型的には、プラットフォーム上に支持され、1つ以上の材料アプリケータは、物体を形成する層を生成するためにプラットフォームに対する1つ以上の材料アプリケータの制御された移動のために1つ以上のアクチュエータに動作可能に接続されている。材料アプリケータは、典型的には、基材上に材料を堆積させる前にx−、y−及びz−方向座標においてノズルを配置するように数値制御機構を介してプラットフォームに対して上下及び左右に移動される。代替実施形態において、プラットフォームは、材料アプリケータに対して移動される。
【0004】
FFF印刷システム10によって3次元物体を製造するための1つのプロセスが
図6A〜
図6Dに示されている。
図6Aに示されるように、印刷動作中において、高さHだけz−次元において部材18の垂直上方の少なくとも1つの材料アプリケータ14において間隔をあけるように少なくとも1つの材料アプリケータ14が部材18に対して配置される。少なくとも1つの材料アプリケータ14は、部材18に対してx−次元に駆動されることから、少なくとも1つの材料アプリケータ14は、部材18上において(
図6Bに示される)長さLを有する材料26の層22を堆積させる。
【0005】
材料26は、少なくとも1つの材料アプリケータ14の溶融装置42によって加熱されたフィラメント38として少なくとも1つの材料アプリケータ14に供給される。上述したように、溶融装置42は、フィラメント材料26のポリマーの柔軟性を増大させる温度までフィラメント38を加熱する。典型的には、フィラメント材料26のポリマーは、「遷移温度」と以下において称される特定の温度よりも高い温度で柔軟な材料である熱可塑性であり、遷移温度未満で固体として作用する。さらにまた、いくつかの熱可塑性樹脂は、遷移温度未満でさえも材料が「固化」するか又は結晶構造を形成するのを防止するアモルファス結晶構造を有する。
【0006】
溶融装置42が遷移温度よりも高くフィラメント材料26の熱可塑性ポリマーを加熱すると、材料26の分子間力が弱まり、材料26は、より柔軟且つ低粘度となる。この高温において、材料26は、選択的に押出可能であり、以下において「押出可能」であるとして又は「押出可能状態」でと称される。溶融装置42は、材料26が完全に液体になって動かされる温度までフィラメント38を加熱しない。代わりに、溶融装置42は、材料26が柔らかくて可鍛性であるが完全に液体ではない遷移温度よりも高い温度までフィラメント38を加熱する。溶融装置42によって加熱された後、押出可能材料26は、少なくとも1つの材料アプリケータ14のノズル46によって部材18上に堆積される。ノズル46によって堆積された後、材料26は、層22がより柔軟でなく且つより高粘度となって固体として作用するように遷移温度未満の温度まで部材18上で冷却される。
【0007】
図6Bに示されるように、材料26の層22が部材18上に堆積された後、少なくとも1つの材料アプリケータ14は、層22よりも上方の高さHにおいて少なくとも1つの材料アプリケータ14を再配置するように部材18に対してz−次元に駆動される。z−次元において少なくとも1つの材料アプリケータ14を再配置すると、x−次元における後続経路中において少なくとも1つの材料アプリケータ14が層22に接触するのを防止するように、部材18の上の層22の厚さTを収容する。z−次元において再配置した後、少なくとも1つの材料アプリケータ14は、層22の上部に物体34の他の層30を堆積させるようにx−次元に再度駆動される。少なくとも1つの材料アプリケータ14は、前の経路と同じ方向又は反対の方向に部材18を通過させるようにx−次元に駆動されることができる。少なくとも1つの材料アプリケータ14が同じ方向に駆動される場合、少なくとも1つの材料アプリケータ14はまた、さらなる層30を堆積させる前にx−次元において再配置される。
【0008】
図6C及び
図6Dに示されるように、少なくとも1つの材料アプリケータ14はまた、x−次元に関して上述したのと同様にしてy−次元に駆動される。したがって、少なくとも1つの材料アプリケータ14はまた、部材18上の物体34の幅Wを画定するように材料26を堆積させる。少なくとも1つの材料アプリケータ14は、(
図6Cに示される)y−次元において幅Wを有する各層によって層状に部材18上に材料26を堆積させることによって、又は(
図6Dに示される)y−次元において幅Wを構成するようにx−次元において部材18上に複数の層を堆積させることによって物体34の幅Wを画定することができる。いくつかの印刷システムにおいて、少なくとも1つの材料アプリケータ14は、x−次元及びy−次元の双方の成分を有する方向に駆動されることができる。3次元物体印刷プロセスは積層プロセスであることから、材料26は、物体34に反復的に積層され、物体34の厚さTは、プロセスを通して増大する。このプロセスは、物体34を形成するために必要な回数だけ繰り返されることができる。
【0009】
FFF印刷システムによる3次元物体の製造において生じる1つの問題は、物体を通して一貫性のない材料強度の可能性である。より具体的には、物体は、z−次元に沿った高さにおいて一貫性のない材料強度を有することがある。この一貫性のなさは、物体を形成する材料の層間における弱い結合に起因して生じることがあり、物体を通して低く且つ一貫性のない層間強度をもたらす。層間のより強い接着性を有する層を造形する印刷システムが有益であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
3次元物体印刷システムは、プラットフォームと、材料アプリケータと、ヒータとを含む。プラットフォームは平坦面を画定し、材料アプリケータ及びプラットフォームは、少なくとも第1の方向及び第2の方向において互いに対して移動するように構成されている。第1の方向及び第2の方向は、平坦面に平行である。材料アプリケータは、プラットフォーム上に物体の層を形成するために材料を放出するように構成されている。ヒータは、材料アプリケータに結合され、材料アプリケータが第1及び第2の方向に移動するとき、材料アプリケータが層の一部上に材料を放出する前に層の一部を加熱するように構成されている。ヒータは、プラットフォーム上に物体を形成する材料の遷移温度よりも高い温度まで層を加熱するように構成されている。
【0011】
3次元印刷システムにおいて物体を印刷する方法は、材料アプリケータの反対側に配置されたプラットフォーム上に物体の層を形成するように材料アプリケータから材料を放出することを含む。本方法は、さらに、少なくとも第1の方向及び第2の方向において材料アプリケータを移動させることを含む。第1の方向及び第2の方向は、プラットフォームの平坦面に平行である。本方法はまた、材料アプリケータが第1の方向に移動しているとき、プラットフォーム上に物体を形成する材料の遷移温度よりも高い温度まで材料アプリケータの前の層の第1の部分を加熱することを含む。本方法はまた、材料アプリケータが第2の方向に移動しているとき、プラットフォーム上に物体を形成する材料の遷移温度よりも高い温度まで材料アプリケータの前の層の第2の部分を加熱することを含む。
【0012】
3次元物体プリンタ及び物体の一貫性のない層間強度を是正するためにプリンタによって物体を形成する方法の上述した態様及び他の特徴は、添付図面に関連して以下の説明において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、材料アプリケータ及びヒータを含む印刷システムの側面図を示している。
【
図2】
図2は、温度測定装置を含む
図1Aの印刷システムの平面図を示している。
【
図3】
図3は、
図1Aの印刷システムによって使用するためのヒータの他の代替実施形態の平面図を示している。
【
図4】
図4は、
図1Aの印刷システムによって使用するためのヒータの他の代替実施形態の平面図を示している。
【
図5A】
図5Aは、
図1Aの印刷システムによって使用するためのヒータの他の代替実施形態の平面図を示している。
【
図6A】
図6Aは、物体を形成するためのプロセスの第1の部分を実行する前の従来技術の3次元物体プリンタの平面図を示している。
【
図6B】
図6Bは、物体を形成するためのプロセスの第1の部分が完了した後の
図6Aの従来技術の3次元物体プリンタの平面図を示している。
【
図6C】
図6Cは、物体を形成するためのプロセスの第2の部分が完了した後の
図6Aの従来技術の3次元物体プリンタの側面図を示している。
【
図6D】
図6Dは、物体を形成するためのプロセスの第3の部分が完了した後の
図6Aの従来技術の3次元物体プリンタの側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願明細書に開示されたシステム及び方法についての環境並びにシステム及び方法についての詳細の一般的な理解のために図面が参照される。図面において、同様の参照符号は、同様の要素を指定するために全体を通して使用されている。
【0015】
3次元物体印刷システム100が
図1A及び
図1Bに示されている。印刷システム100は、上述し且つ
図6A〜
図6Dに示された印刷システム10の動作と同様に動作する。従来技術の印刷システム10と同様に、印刷システム100は、平坦面108を有する基材又は部材104と、平坦面108及びその後に形成された層上に材料116を堆積させるように構成された少なくとも1つの材料アプリケータ112とを含む。しかしながら、印刷システム100は、印刷システム100がまた、材料アプリケータ112に接続され且つ平坦面108及びその後に形成された層上に以前に堆積された材料116を加熱するように構成されたヒータ120を含む点で、従来技術の印刷システム10とは異なる。
【0016】
図1Aに示されるように、印刷システム100は、さらに、コントローラ118及びアクチュエータ122を含み、材料アプリケータ112は、少なくとも1つの溶融装置128及び少なくとも1つのノズル132を含む。アクチュエータ122は、材料アプリケータ112及びヒータ120に動作可能に接続されている。コントローラ118は、部材104に対して材料アプリケータ112を選択的に移動させ、溶融装置128内の材料116を選択的に加熱し、ノズル132から材料116を選択的に放出し、ヒータ120を選択的に加熱するように、アクチュエータ122を動作させるためにアクチュエータ122に動作可能に接続されている。アクチュエータ122は、同じコントローラ又は異なるコントローラに動作可能に接続された複数のアクチュエータとして具現化されることができることに留意されたい。例えば、アクチュエータ122は、部材104に対して材料アプリケータ112を選択的に移動させるように構成された1つのアクチュエータ、溶融装置128内の材料116を選択的に加熱するように構成された1つのアクチュエータ、ノズル132から材料116を選択的に放出するように構成された1つのアクチュエータ、及びヒータ120を選択的に加熱するように構成された他のアクチュエータを含むことができる。
【0017】
図1Aに示されるように、印刷システム10と同様に、印刷システム100はまた、FFF印刷システムである。溶融装置128は、材料116のフィラメント130を受け取り、アクチュエータ122は、材料116をその押出可能状態にするために材料116の遷移温度よりも高い温度までフィラメント130を選択的に加熱する。押出可能材料116は、部材104に対向するオリフィス134を有するノズル132に送達される。アクチュエータ122は、物体136を造形するために、部材104の平坦面108又は以前に形成された層上にオリフィス134を介して材料116を選択的に放出する。この物体の造形を可能とするために、アクチュエータ122はまた、物体136又は部材104に接触することなく物体136及び部材104の上方をノズル132及び材料アプリケータ112が通過するのを可能とする部材104の上方の位置に材料アプリケータ112を配置する。
【0018】
代替実施形態において、印刷システム100は、他の種類の積層印刷システムとすることができる。例えば、ノズル132は、印刷ヘッドなどの他の材料放出素子に置き換えることができ、溶融装置128は、ソースから材料116を受け取り、その押出可能状態まで材料を加熱し、押出可能材料を印刷ヘッドに送達するように構成された他の溶融要素に置き換えることができる。印刷ヘッドは、ノズル132のように、部材104の平坦面108上に押出可能材料116を堆積させるように構成されたエジェクタを含むことができる。
【0019】
図1A及び
図1Bに示されるように、印刷システム10におけるように、印刷システム100の材料アプリケータ112は、x−次元、y−次元及びz−次元に移動可能である。同様に、(
図1Aに示される)z−次元は、部材104の平坦面108に対して垂直であり、(
図1A及び
図1Bに示される)x−次元は、部材104の平坦面108に平行であり、(
図1Bに示される)y−次元は、部材104の平坦面108に平行である。
【0020】
コントローラ118は、x−、y−及びz−次元に材料アプリケータ112を選択的に移動させるように且つ材料アプリケータ112のノズル132から材料116を選択的に放出するように、(
図1Aに示される)アクチュエータ122を動作させるように構成されている。材料アプリケータ112は、x−及びy−次元において少なくとも第1の方向及び第2の方向に移動可能であり、第1の方向及び第2の方向のそれぞれは、平坦面108に平行である。第1の方向及び第2の方向は、共通線に沿って反対方向とすることができる。例えば、
図1Bに示されるように、材料アプリケータ112は、x−次元における共通線に沿って右方向及び左方向又は前後に移動可能である。しかしながら、第1の方向及び第2の方向はまた、共通線に沿って反対でない方向とすることもできる。例えば、
図1Bに示されるように、材料アプリケータ112は、x−次元における方向において左方向及び右方向に、並びに、y−次元における方向において上方向及び下方向に移動可能である。これらの方向は、共通線に沿って反対ではない。さらにまた、いくつかの実施形態において、材料アプリケータ112はまた、x−次元及びy−次元の双方の成分を有する方向にも移動可能である。例えば、
図1Bに示されるように、材料アプリケータ112は、上方向又は下方向の成分を有し且つ左方向又は右方向の成分を有する斜めに移動可能である。
【0021】
アクチュエータ122は、材料アプリケータ112の向きを変えることなく第1及び第2の方向に材料アプリケータ112を移動させる。換言すれば、材料アプリケータ112は、z−次元に延在する材料アプリケータ112の(
図1Bに示される)長手方向軸140まわりに回転しない。しかしながら、代替実施形態において、材料アプリケータ112は、長手方向軸140まわりに回転可能であってもよい。
【0022】
ヒータ120は、ヒータ120が、材料アプリケータ112、溶融装置128、ノズル132へと供給されるフィラメント130、又はノズル132から押し出される押出可能材料116と干渉しないように、材料アプリケータ112に接続されている。ヒータ120は、さらに、部材104の平坦面108に向かって熱を導くように配置されている。したがって、物体136が部材104上に存在しているとき、ヒータ120は、物体136の最上層144に向かって熱を導く。材料アプリケータ112のように、ヒータ120はまた、材料116の遷移温度よりも高い温度まで材料116を加熱するように構成されている。それゆえに、ヒータ120は、物体136の最上層144上の材料116の分子間結合を弱める。
【0023】
コントローラ118は、その遷移温度よりも高く材料116を加熱するためにヒータ120を選択的に加熱するようにアクチュエータ122を動作させる。より具体的には、ヒータ120は、柔軟性を増加させ、材料116の粘度を低下させるが、完全に液体になる温度まで材料116を加熱しない。材料116は、完全に液体になって動く温度まで加熱されないことから、物体136は、ヒータ120からの熱によって大幅に歪み又は変形されない。
【0024】
少なくとも1つの実施形態において、コントローラ118は、材料アプリケータ112の移動速度に基づいてヒータ120の電力を調整するようにアクチュエータ122を動作させる。したがって、材料アプリケータ112がよりゆっくり移動する場合、ヒータ120の電力は、最上層144の過熱を防止するために、よりゆっくりと物体136の最上層144を加熱するように調整される。対照的に、材料アプリケータ112がより迅速に移動する場合、ヒータ120の電力は、材料116の遷移温度よりも高い温度まで最上層144を十分に加熱するために、より迅速に物体136の最上層144を加熱するように調整される。
【0025】
同様に、コントローラ118は、材料アプリケータ112の移動の持続時間に基づいてヒータ120の電力を調整するようにアクチュエータ122を動作させるように構成されることができる。したがって、材料アプリケータ112が小さな移動を行い、物体136の小領域上に残っている場合、ヒータ120の電力は、最上層144の小領域の過熱を防止するために、よりゆっくりと物体136の最上層144を加熱するように調整される。対照的に、材料アプリケータ112が大きな移動を行い、物体136の大領域上を移動する場合、ヒータ120の電力は、材料116の遷移温度よりも高い温度まで最上層144の大領域を十分に加熱するために、より迅速に物体136の最上層144を加熱するように調整される。
【0026】
さらに、コントローラ118は、ヒータ120が材料116の領域を最後に加熱してからの経過時間に基づいてヒータ120の電力を調整するようにアクチュエータ122を動作させるように構成されることができる。ヒータ120が物体136の領域を最近加熱した場合、その領域内の材料116は、依然として遷移温度よりも高いことがあり、追加の加熱から恩恵を受けないことがある又は過熱になることがある。したがって、コントローラ118は、どの程度最近物体136の領域が加熱されたかを判定し、より最近加熱された領域に少ない熱を導くようにヒータ120の電力を調整するように、印刷される物体136のモデルからデータを取得するように構成されることができる。材料アプリケータ112が最近加熱された領域に移動した場合、ヒータ120の電力は、最上層144の最近加熱された領域の過熱を防止するために、よりゆっくりと物体136の最上層144を加熱するように調整される。対照的に、材料アプリケータ112が最近加熱されていない領域に移動した場合、ヒータ120の電力は、材料116の遷移温度よりも高い温度まで最上層144の少ない最近加熱された領域を十分に加熱するために、より迅速に物体136の最上層144を加熱するように調整される。
【0027】
追加的に又は代替的に、印刷システム100は、例えば、
図2に示されるように、コントローラ118に動作可能に接続された赤外線熱電対150などの温度測定装置を含むことができる。そのような実施形態において、コントローラ118は、赤外線熱電対150から受信した物体136の測定された温度に基づいてヒータ120の電力を調整するようにアクチュエータ122を動作させるように構成されている。赤外線熱電対150は、同じコントローラ又は異なるコントローラに動作可能に接続された複数の赤外線熱電対として具現化されることができることに留意されたい。赤外線熱電対150は、ヒータ120及び材料アプリケータ112の位置の前の位置において物体136の温度を測定するために常にヒータ120の前となるように配置されている。赤外線熱電対150は、物体136の領域の表面における温度を測定し、温度測定情報をコントローラ118に送信する。コントローラ118は、赤外線熱電対150から受信した温度測定情報に基づいてヒータ120の電力を調整するように構成されている。
【0028】
例えば、コントローラ118が遷移温度以上である物体136の領域の表面における温度を示す赤外線熱電対150から温度測定情報を受信した場合、その領域内の材料116は、追加の加熱からの恩恵を受けないことがあるか又は過熱になることがある。したがって、ヒータ120の電力は、その物体136の領域に向かって熱を導かないように調整される。コントローラ118が遷移温度未満である物体136の領域の表面における温度を示す赤外線熱電対150から温度測定情報を受信した場合、ヒータ120の電力は、材料116の遷移温度までその物体136の領域の表面の温度を上昇させるようにその物体136の領域に向かって十分な熱を導くように調整される。様々な実施形態において、コントローラ118は、ヒータ120の電力を調整するために経過時間及び物体モデルデータから独立して又はそれと併用して赤外線熱電対150からの温度測定情報を使用することができる。
【0029】
図1A及び
図1Bにおいて、ヒータ120は、材料アプリケータ112が第1の方向及び第2の方向の双方に移動するときに常に材料アプリケータ112の前となるように材料アプリケータ112に接続されている。例えば、材料アプリケータ112が部材104に対して
図1Aにおける矢印Aによって示される移動方向に移動するとき、ヒータ120は、常に移動方向において材料アプリケータ112のノズル132の前方に配置される。
【0030】
したがって、ヒータ120は、材料アプリケータ112が最上層144の上の他の層148に塗布する前に物体136の最上層144を加熱するように構成されている。最上層144は、ノズル132を介して押し出される前にヒータ120によって遷移温度よりも高く加熱され且つ次層148が溶融装置128によって遷移温度よりも高く加熱されることから、双方とも分子間結合を弱めた材料116から構成される。材料116の弱められた分子間結合は、最上層144及び次層148の材料116が接触によって混在するのを可能とする。具体的には、最上層144と次層148との間の界面における材料116のポリマーのポリマー鎖は、再配置して互いに相互作用する。材料116がその遷移温度未満に冷却されると、最上層144及びさらなる層148からなる混在した材料116は、物体136の層間強度を向上させる。
【0031】
上述したように、第1の方向及び第2の方向に材料アプリケータ112を移動させる場合、アクチュエータ122は、長手方向軸140に対して材料アプリケータ112の回転位置を維持する。したがって、ノズル132の前方においてその位置を維持するために、ヒータ120は、材料アプリケータ112まわりに回転されるか又は材料アプリケータ112を囲むように配置される。
図1A及び
図1Bに示される実施形態において、ヒータ120は、(
図1Aに示される)リフレクタ156内の熱線152を含む。リフレクタ156は、部材104の平坦面108に向かって熱線152によって生成された熱を導くように構成されている。
【0032】
ヒータ120は、材料アプリケータ112を取り囲み、熱線152及びリフレクタ156は、平坦面108に平行に配置されている。それゆえに、材料アプリケータ112が平坦面108に平行な第1の方向に移動する場合、熱線152及びリフレクタ156は、ノズル132の前方に配置される。さらに、材料アプリケータ112が平坦面108に平行な第2の方向に移動する場合、熱線152及びリフレクタ156は、依然としてノズル132の前方に配置される。ヒータ120は、材料アプリケータ112を取り囲んでいることから、材料アプリケータ112が平坦面108に平行に移動する方向がいずれであっても、ヒータ120は、材料アプリケータ112を導くように配置される。この実施形態において、熱線152及びリフレクタ156はまた、ノズル132の背後に配置されている。
【0033】
図1Bに示されるように、平坦面108に平行な面内の平面図から、材料アプリケータ112は、周囲160を画定している。示された実施形態において、周囲160は円形である。しかしながら、代替実施形態において、周囲160は、他の形状を有してもよい。
図1A及び
図1Bに示される実施形態において、ヒータ120は、略円筒形状であり、材料アプリケータ112の長手方向軸140と同軸である中心軸162を画定する。それゆえに、ヒータ120は、材料アプリケータ112まわりに同心円状に配置される。
図1Bに示されるように、平面図から、ヒータ120は、材料アプリケータ112を完全に囲んでいる。他の実施形態において、ヒータ120は、他の形状を有することができ、材料アプリケータ112を完全に囲むように配置されることができるが、長手方向軸140と同軸に位置しない中心軸162を有することができる。
【0034】
図3は、印刷システム100によって使用するためのヒータ120’の代替実施形態の平面図を示している。ヒータ120’は、
図1A及び
図1Bに示され且つ上述したヒータ120に対して構造及び機能において略類似している。しかしながら、ヒータ120’は、熱線及びリフレクタを含んでいない。代わりに、ヒータ120’は、材料アプリケータ112まわりに配置された別個の加熱素子164を含む。この実施形態において、アクチュエータ122は、材料アプリケータ112の移動方向に基づいて別個の加熱素子164を選択的に加熱するように構成されている。
図3に示されるように、材料アプリケータ112がx−次元において矢印Aによって示される方向に移動する場合、アクチュエータ122は、方向Aに沿って配置された加熱素子164のみを選択的に動作させる。それゆえに、アクチュエータ122によって加熱される加熱素子164は、ノズル132の前後において材料116の最上層144を加熱する。この実施形態において、ヒータ120’は、移動方向においてノズル132の前後に配置されないヒータ120の部分から熱を放射するようにエネルギを消費しない。
【0035】
図4は、印刷システム100によって使用するためのヒータ120’’の他の代替実施形態の平面図を示している。ヒータ120’’は、
図1A及び
図1Bに示され且つ上述したヒータ120に対して構造及び機能において略類似している。しかしながら、ヒータ120’’は、熱線及びリフレクタを含んでいない。代わりに、ヒータ120’’は、材料アプリケータ112まわりに回転可能な単一の加熱素子168を含む。ヒータ120’’はまた、材料アプリケータの移動方向に基づいて単一の加熱素子168を選択的に回転させるように構成されたモータ172を含む。この実施形態において、アクチュエータ122は、モータ172が単一の加熱素子168を選択的に回転させるのを可能とするようにモータ172に動作可能に接続されている。
図4に示されるように、材料アプリケータ112がx−次元及びy−次元において矢印Bによって示される方向に移動する場合、モータ172は、(破線によって示される)初期位置から方向Bと並ぶ位置まで単一の加熱素子168を回転させる。それゆえに、単一の加熱素子168は、ノズル132の前方において材料116の最上層144を加熱するように選択的に配置される。この実施形態において、ヒータ120’’は、移動方向Bにおいて単一の加熱素子168からの熱を放射するようにエネルギを消費するのみである。
【0036】
図5A及び
図5Bは、それぞれ、印刷システム100によって使用するためのヒータ120’’’の他の代替実施形態の平面図及び側面図を示している。ヒータ120’’’は、
図1A及び
図1Bに示され且つ上述したヒータ120に対して構造及び機能において略類似している。しかしながら、ヒータ120’’’は、熱線及びリフレクタを含んでいない。代わりに、ヒータ120’’’は、(それぞれ
図5Aに示される)加熱素子174と、ファン又はブロワ176などの加圧空気源と、ダクト180と、熱分配器184とを含む。この実施形態において、
図5Aに示されるように、アクチュエータ122は、加熱素子174及びファン又はブロワ176に動作可能に接続されており、加熱素子174を加熱してファン又はブロワ176を作動させるように構成されている。ダクト180は、加熱素子174及び熱分配器184に接続されており、ファン又はブロワ176は、ダクト180内に及びダクト180を介して熱分配器184へと加熱素子174によって生成された熱風を吹き付けるように作動される。そして、熱風は、材料116の最上層144を加熱するように材料アプリケータ112まわりに熱分配器184から放出される。示される実施形態において、熱分配器184は、略円筒形状であり、材料アプリケータ112を囲んでいる。
図1A及び
図1Bに示されるヒータ120の実施形態と同様に、ヒータ120’’’は、材料アプリケータ112まわりの円内のあらゆる方向に熱を放射することから、材料アプリケータ112が平坦面108に平行な任意の方向に移動される場合、ヒータ120’’’は、ノズル132の前後において材料116の最上層144を加熱する。ヒータ120’’’のさらなる利点は、加熱素子174によって生成される熱風がまた、物体136の最上層144から水分を運び去ることができ、最上層144に対する(
図5Bに示される)さらなる層148の接着性にさらに役立つことができるということである。
【0037】
ヒータ120、120’、 120’’及び120’’’は、 印刷システム100によって使用されることができるヒータの例としてのみ与えられる。さらに代替実施形態は、他の種類のヒータと、本願明細書においては具体的に記載されない他の方法で部材104の平坦面108に向かって熱を放射するためのヒータの配置とを含むことができる。例えば、代替実施形態において、印刷システム100は、熱放射金属フィラメントを使用する他のヒータ、セラミック加熱素子及び/又は材料116を加熱するための空気加熱流を含むことができる。さらに、印刷システム100は、他の要素を使用する他のヒータ及び/又は材料116を加熱する手順を含むことができる。
【0038】
全ての実施形態において、ヒータは、材料アプリケータ112が第1の方向に移動し且つ第2の方向に移動する場合、最上層144の上の材料アプリケータ112のノズル132から押し出されるさらなる層148の材料116が最上層144の加熱された材料116と混在するのを可能とするように、材料の遷移温度よりも高い温度まで材料アプリケータ112の前の最上層144を加熱するように構成されている。