(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特徴が、(1)隣接した改質領域間の平均距離、(2)改質領域の形状、(3)改質領域の寸法、及び(4)周縁部の平均厚さからなる群から選択される、請求項3に記載の物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
略語及び用語
以下に定義する用語については、異なる定義が「特許請求の範囲」又は本明細書中の他の箇所で与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
【0012】
用語「選択的な加熱」及び「局在加熱」とは、主フィルムの(すなわち、フィルムのx−y面における)選択部分の温度が、主フィルムの隣接部分の温度よりも高いレベルまで上昇するように、主フィルムを加熱するという意味である。このような加熱は、火炎衝突(flame impingement)(例えば、米国特許第7,037,100号に記載)、選択的有向赤外線放射(selective directed infrared radiation)等の手段によって実施され得る。
【0013】
用語「配向可能な」とは、ポリマー材料が、特定の温度(T
oつまり配向温度)よりも高く加熱され、かつ延伸されると、その内部のポリマーセグメントが変化(shifting)及び配向(orientation)を受け、次いでT
o未満に冷却されると、付与された配向の一部が、後に解放された際にも保持されるという意味である。特定のポリマーフィルムが配向され得る温度は、ある程度、フィルム内のポリマー材料のセグメントの分布及びフィルム中の構成成分分画のそれぞれの融点に応じて異なる。
【0014】
用語「ポリマー」は、ポリマー、オリゴマー、コポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーを使用して形成されるポリマー)、及びこれらの組み合わせ、並びに、例えば、共押出による混和ブレンド、又はエステル交換を含む反応において形成することができるポリマー、オリゴマー、若しくはコポリマーを指すのに使用される。特に指示がない限り、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーの両方が含まれる。
【0015】
用語「熱誘発弾性回復(thermally-induced elastic recovery)」は、部材又は本体の材料が、閾値温度(本明細書ではT
rつまり緩和温度と言う)まで加熱された際に、外部の機械的な構造を変化させる力(例えば、重力、エンボス加工、型成形等)を適用することなく、又は、物質の除去作用(例えば、機械的なエッチング、レーザー、燃焼、蒸発等による除去)を受けずに、自発的にその形状(shape)又は構造(configuration)を変える作用又は反応を指す。
【0016】
用語「火炎衝突(flame impingement)」は、火炎の形態の熱流束がフィルムの第1主面に向けられる、主フィルムを加熱するプロセスを指す。例示的な実施例が、米国特許第7,037,100号(Strobelら)に開示されている。
【0017】
火炎の特性は通常、燃料に対する酸化剤のモル比に相関する。完全燃焼に必要な、燃料に対する酸化剤の正確な比は、化学量論比として知られている。当量比は、化学量論的な酸化剤:燃料の比を実際の酸化剤:燃料比で除したものと定義される。「少燃料(fuel-lean)」炎、すなわち酸化炎では、化学量論量より多くの酸化剤が存在するため、火炎当量比は1未満である。「多燃料(fuel-rich)」炎では、化学量論より少ない酸化剤が燃焼混合物に存在し、したがって当量比は1より大きい。
【0018】
特に指示がない限り、本明細書及び「特許請求の範囲」で使用される成分、分子量等の特性、反応条件等の数量を表す全ての数字は、全ての例で用語「約」によって修飾されるものと理解することとする。したがって、そうでないとの指示がない限り、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」に記載の数値パラメータは、本発明の教示を利用する当業者が得たいと考える所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、各数値パラメータは、報告される有効桁数を考慮し、通常の四捨五入を適用することによって少なくとも解釈されるべきであるが、このことは、請求項がカバーする範囲について均等論の適用を制限しようとするものではない。本発明の広義の範囲を説明する数値範囲及びパラメータは近似値である場合でも、具体例に説明されている数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、いかなる数値も、それぞれの試験測定値で見出された標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を本質的に含んでいる。
【0019】
重量パーセント(Weight percent)、重量%(percent by weight)、重量%(% by weight)等は、その物質の重量を組成物の重量で割って100を掛けた値として物質の濃度を指す同義語である。
【0020】
端点によって数値範囲を列挙する場合、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。本明細書及び添付の「特許請求の範囲」では、特に内容が明示しない限り、単数形の「a」、「an」、及び「the」は複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物(a compound)」を含む組成物への言及は、2つ以上の化合物の混合物を包含する。本明細書及び添付の「特許請求の範囲」では、「又は」という用語は、特に内容が明示しない限り、「及び/又は」を含む意味で概ね用いられる。
【0021】
明確さのため、また、これにより過度に限定されるとの意図はなく、任意の2つの逐次的に積層された一群のシート又は細片に含まれるテープシート又は細片は、上側テープシートの接着剤層が、下側テープシートバッキングの前面又は第1面に付着している、上側テープシート及び下側テープシートとして言及される。
【0022】
本発明の主フィルム
図1は、本発明の例示的な主フィルムの一部を示す。フィルム10は好適な前駆体フィルム12(すなわち、熱誘発弾性回復が可能である配向フィルム)から作製され、(1)第1主面14及び反対側の第2主面16と、(2)ランド部18と、(3)それぞれが中央部22と、中央部を取り囲む周縁部24とを備える1つ以上の改質領域20と、を有し、改質領域20はランド部18によって取り囲まれている。
【0023】
図2は、本発明の主フィルムの改質領域の断面を示す。本発明に従い、ランド部18は、中央部22を取り囲む周縁部24から形成される、改質領域20を取り囲む。周縁部24の平均厚さ(寸法B)は、ランド部18の平均厚さ(寸法A)より大きく、一方、ランド部18の平均厚さは、中央部22(寸法C)の平均厚さよりも大きい。中央部22の厚さプロファイルは曲線状でもよい(すなわち、主面14及び主面16のうちの1つ又は両方が、図示のように平坦ではなく、中央部22全体にわたって曲線状であってもよい)が、寸法Cは中央部22全体にわたって0より大きい。本発明のフィルムの改質領域は、火炎衝突を介して形成される、以前から既知のフィルムに見出されるような貫通チャネルを有するのではなく、不透過性である。
【0024】
図1及び
図2は理想化されているものと理解され、例えば、フィルムの第2主面は平坦ではない場合がある。ある程度は前駆体フィルムの性質及び選択的な加熱の実施様式に応じて、改質領域が、その第2主面上に、フィルムの肥厚部及び突出部をいくつか備える場合がある。例えば、
図6に示したように、改質領域の中央部は、周囲にあるフィルムのランド部に対し、第2主面の方向に延在又は突出しているが、これは、フィルムのその部分が、火炎衝突及び選択的な加熱の実施に使用されるロール上で開口部の方向に垂れる傾向に、いくぶんかは起因している。
【0025】
前駆体フィルム
本発明の形状適合性のある手切れ性主フィルム及び物品の作製に有用な前駆体フィルムは、典型的には、半結晶性の構成成分を有する配向フィルムである。
【0026】
いくつかの一般的な実施形態において、これらのフィルムは配向ポリオレフィンポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等、又はこれらの組み合わせ)を含む。更に、熱誘発弾性回復が可能であるフィルムは、他の材料(例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド等)から作製することができる。
【0027】
おそらく、最も広く使用されている配向ポリマーバッキングフィルムは、二軸配向ポリプロピレン、すなわちBOPPである。BOPPフィルムベースの接着テープは、例えばカートン、ラベル及び箱のシールテープ(3M(登録商標)SCOTCH(登録商標)Box Sealing Tape 373(3M Co.,St.Paul Minnesota))として、広く使用されている。このようなテープは、良好な強度、耐水性、及び低価格のため、人気がある。他の典型的なテープは、3M(登録商標)Polyester Tape 850(3M Co)等の配向ポリエステルを使用している。BOPP及び二軸配向ポリエステル(BOPET)は、いずれも半結晶性ポリマーである。
【0028】
配向ポリマーフィルムの製造に使用されるプロセスは周知であり、典型的には、インフレートフィルムプロセス又はテンター延伸フィルムプロセスを用いて遂行される。経済性及び均一性の理由から、接着テープバッキング用のフィルムの製造にはテンター延伸プロセスが最も広く利用され、フィルムの厚さは、典型的には、約10マイクロメートル〜最大約75マイクロメートル又はそれを超える範囲である。テンター延伸は、逐次延伸プロセス又は同時延伸プロセスを使用して遂行することができるが、逐次延伸プロセスが、断然、最も一般的である。典型的な逐次プロセスにおいて、フィルムは、まずLOと呼ばれる長手方向に、次いでTDOと呼ばれる横方向に延伸することによって製造される。同時延伸プロセスにおいて、フィルムは同時にLO及びTDOの両方に延伸される。
【0029】
逐次テンター延伸は、ポリマー樹脂の溶融と、冷却したキャスティングロール上でのキャスティングの後、シートを最初の長手配向セクションに移送することで行われる。フィルムを、最大限に急冷されるように低温下でキャスティングすることが望ましく、これによって大型の結晶形態の成長を抑制し、最高の透明度及び強度のフィルムを製造する。
【0030】
長手配向(LO)は、通常、キャストシートを、異なる速度で駆動される一連の加熱された接触ロールに通し、フィルムの加熱及び長手方向への延伸の両方を行うことにより、遂行される。典型的なLO比は約4又は5:1倍である。LO工程に続き、部分的に延伸されたフィルムは、その後テンター延伸フレームに装着された一連のテンタークリップを使用して縁部に沿って固定され、テンターオーブンの中へと移送される。テンターオーブンは通常、最高でほぼ結晶融点温度の温度まで加熱され、これによりフィルムが十分に軟化し、約8:1〜約10:1の比までの横方向(TD)の延伸が可能となる。
【0031】
キャストシートの延伸を低すぎる温度で行うと、非常に強い力を必要とし、その結果、特にテンターオーブン中でフィルムが断裂又は破損してしまうことが多い。フィルムの延伸を、結晶融点を上回る高すぎる温度で行うと、保持される配向性が乏しいだけでなく、テンター延伸プロセス中に自重湾曲又は垂れによって起こるキャリパー欠陥を呈するフィルムが形成される。参考文献:R.A.Phillips & T.Nguyen,J.Appl.Polym.Sci.,v.80,2400−2415 2001)及びP.Dias et al.,J.Appl.Polym.Sci.,v.107,1730−1736(2008)。キャストシートの延伸は、弱い力での延伸が可能な温度で、しかしながら、フィルムが高度の分子配向を呈するようにポリマーの融点未満の温度で、行うことが望ましい。これは、使用中の強度及び寸法安定性にとって好ましい。
【0032】
本発明の主フィルムとしての使用に好適な前駆体フィルムは、熱誘発自己形成が可能であるべきである。好ましくは、前駆体フィルムは、ASTM D2732に従い評価されるとき、約1%以下、好ましくは約0.3%以下の収縮反応を呈する。
【0033】
添加物
本発明のテープのバッキング部材は、場合により、当該技術分野において既知の、1つ以上の添加物及び他の構成成分を含む。例えば、バッキング部材又はその構成成分部材は、充填剤、顔料及び他の着色剤、ブロッキング防止剤、潤滑剤、可塑剤、加工助剤、静電気防止剤、核形成剤(例えば、β核形成剤)、抗酸化剤及び熱安定化剤、紫外線安定化剤、並びに他の特性変性剤(例えば、所望の接着剤及び他の材料との相溶性を改善する作用剤又は接着特性を増大若しくは低下させる作用剤等)を含んでもよい。充填剤及び他の添加物は、好ましくは、本明細書に記載の好ましい実施形態によって得られる特性に悪影響を及ぼさないように選択された量で加えられる。
【0034】
有機充填剤の実例としては、有機染料及び樹脂、並びに、ナイロン繊維及びポリイミド繊維等の有機繊維が挙げられ、また、場合により架橋された、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ハロゲン化ポリマー、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー等の他のポリマーが挙げられる。無機充填剤の実例としては、顔料、ヒュームドシリカ及び他の形態の二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム又はケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、カオリン、タルク、ナトリウムケイ酸アルミニウム、カリウムケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、石膏、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、ガラスビーズ、ガラスバブル、鉱物繊維、粘度粒子、金属粒子等が挙げられる。
【0035】
いくつかの応用において、配向プロセス中に充填剤粒子の周囲に空隙が生じること、又は、混入された発泡剤を使用して空隙を形成すること、が有益である場合がある。有機充填剤及び無機充填剤はまた、ブロッキング防止剤としても有効に使用される場合がある。代替的に、又は追加的に、ポリジメチルシロキサンオイル、金属石鹸、ワックス、高級脂肪族エステル、及び高級脂肪族酸アミド(エルカミド、オレアミド、ステアルアミド、及びベヘンアミド等)等の潤滑剤を使用してもよい。
【0036】
バッキング部材は、脂肪族第三級アミン、グリセロールモノステアレート、アルカリ金属アルカンスルホネート、エトキシル化又はプロポキシル化ポリジオルガノシロキサン、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールエーテル、脂肪酸エステル、エタノールアミド、モノ及びジグリセリド、並びにエトキシル化脂肪族アミン等の、静電気防止剤を含んでもよい。有機核形成剤又は無機核形成剤もまた組み込んでよく、例えば、ジベンジルソルビトール又はその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、安息香酸ナトリウム等の安息香酸の金属塩、ビス(4−tert−ブチル−フェニル)リン酸ナトリウム、シリカ、タルク、並びにベントナイトがある。
【0037】
抗酸化剤及び熱安定剤を更に組み込むことができ、フェノールタイプ(例えば、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン)、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属のステアリン酸塩及び炭酸塩が挙げられる。難燃剤、紫外線安定剤、相溶化剤、抗菌剤(例えば、酸化亜鉛)、導電体、及び熱伝導体(例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及びニッケル粒子)等の他の添加物もまた、テープバッキング部材の形成に使用するポリマーにブレンドしてもよい。
【0038】
改質領域
図2に示すように、本発明のテープのバッキング部材の主層は、その第1面から第2面方向に延在し(すなわち、第1面から第2面までが薄くなるが)第2面に到達はしない中央部を有する、改質領域を有する。このような新規フィルムの構造は、新規であり、多くの驚くべき利点を提供する。
【0039】
本発明の驚くべき態様のいくつかは、火炎穿孔プロセスで使用される効果的な等量比及びその効果的な活用について理解することにより、より容易に達成され得る。
【0040】
多燃料炎において、フィルムが暴露される全体的な環境は、高濃度の水素原子、一酸化炭素、及び炭化水素フリーラジカルのため、本質的に主として還元性だが、若干の酸化種が火炎をなすガス中に依然として存在しているため、フィルムの酸化も若干は起こる。対照的に、当該技術分野において、より高い接着特性を付与するためのポリマーの表面処理に対して教示されるような、少燃料炎では、全体的な環境は、高濃度の酸素分子及びヒドロキシルラジカルのため、高度に酸化性である。
【0041】
本発明に従って選択的な加熱及び主フィルムの改質を実施するための火炎衝突は、商業的見地から望ましいフィルム速度でポリマーフィルムを改質及び選択的に加熱するために、相対的に高い火炎力(flame powers)を必要とする。例えば、約20〜100m/分を超える速度での選択的な加熱を可能とするには、クロスウェブバーナー(cross-web burner)の長さ1インチ当たり少なくとも約10,000Btu/時(1160ワット/cm)の火炎力が、典型的には望ましい。当該技術分野においてポリマーの火炎加工に最適とされる少燃料炎を使用すると、火炎力が高くフィルム速度が相対的に低いような条件では、ポリマー表面に著しい酸化が起こる。ポリマー表面が相対的に高度に酸化されると、その表面への接着は相対的に高くなる。したがって、少燃料炎を火炎衝突に使用すると、感圧接着剤が周縁に対しより強力に接着する傾向となる程度まで、得られる周縁が酸化され、テープの巻き出しの妨げとなり、場合によっては巻き出しが阻止されてしまう。本発明者らは、低火炎力の少燃料炎を使用することにより(例えば、約5000Btu/時−インチ未満の火炎力で)、ポリマー周縁表面の望まれない酸化を制限できることを見出した。しかしながら、このような低火炎力の火炎を使用した場合、商業的に実行可能なフィルム速度でフィルムを効果的に改質することは不可能である。
【0042】
驚くべきことに、多燃料炎を、約20m/分超のフィルム速度で所望の熱誘発自己形成を達成するのに十分な、選択的な加熱を可能とするのに十分に高い火炎力で、しかも、例えば、このような主フィルムによって作製された完成品のテープの円滑かつ容易な巻き出しを妨げる周縁の過剰な酸化を起こさずに、使用することができる。
【0043】
本明細書に記載の改質領域を有するバッキング部材(すなわち、隆起した周縁が、改質領域においてバッキングの第1主面から突出している)により、バッキングの第1面上に剥離コーティング又は介在する着脱可能な剥離ライナーを使用することなく、上層のテープ部分を接着剤から、又は、シートを下層部分から、剥離することが可能であることが判明した。このような周縁は、過剰な力を使わずに、バッキングを断裂することなく、又は接着剤の凝集破壊なしに、完成したテープが巻き出されるのを可能とするのに十分な高さを持つ。
【0044】
このようなコーティング又はライナーの必要性を排除することにより、剥離コーティングの使用に典型的に必要とされる、コーティング工程、乾燥炉、溶媒回収システム、又は放射線硬化プロセスが不要となるため、本発明により、テープの製造及び使用を著しく簡易なものとすることができる。溶媒の排除により、揮発性有機化合物が排除され、オーブンの稼動に必要なエネルギーもまた排除されるため、全体的なテープ製造プロセスがより効率化する。オーブンでの乾燥がないため、配向フィルム基材に対する熱損傷はより少なくなり、ウェブの取り扱い作業は簡略化され、非常に小さな空間を使用しての製造作業が可能となる。
【0045】
主フィルムの第1主面上の溶融ポリマーの周縁により、本発明に従ってこの主フィルムから作製されたテープは、円滑かつ容易な巻き出しが可能となる。周縁上の最高点は、穿孔フィルムの主面から最も離れて感圧接着剤を保持する場所(すなわち、穿孔とその周縁との間の第1面(face or side)の部分)であるため、周縁の最大の高さは、接着剤の剥離及びそれに続く巻き出しを可能にする、重要なパラメータであると考えられる。多燃料炎によって形成された改質領域の溶融周縁の最高点と接着剤との間の接着は、周縁と接着剤との間の接着面積が小さく、また、周縁の酸化の程度が低いため、制限される。
【0046】
改質領域の構造及び配列により、容易にまっすぐ、又は実質的に直線に引裂くことができ、それでもなお、接着テープのバッキング部材として使用するのに十分な引張強度を有する主フィルムが提供される。テープの引裂開始パラメータ及び引裂伝搬パラメータは、改質領域の構成及び形状を調節することにより、所望どおりに調節することができる。
【0047】
主フィルムは、典型的には、少なくとも1つの方向に手で引裂くことができ、また、2つの垂直方向に手切れ性となるように、形成することもできる。本発明の主フィルムは、本発明に従う改質領域を有するようには改質されていない類似のポリマーフィルムに比べ、相対的に低い引裂開始エネルギー及び比較的高い引裂伝搬エネルギーを有することができる。更に、本発明の主フィルムの改質領域により、本発明に従う改質を施されていない類似のポリマーフィルムに比べ、フィルムを実質的に直線に引裂くことが可能である。改質領域により、フィルムの引張強度を過度に弱めることなく、このような向上した引裂特性が可能となる。
【0048】
フィルムの特性(例えば、テンター比/大きさ(magnitude)、フィルムの厚さ等)並びに選択的な加熱のプロセスの条件及び装置(例えば、フィルム速度及び厚さ、配置、及び加熱領域の形状等)の調節により、改質領域の位置、間隔、及び形状を所望どおり調節することができる(例えば、引裂開始力及び引裂伝搬力、引裂の方向性、形状適合性等を最適化する)。例えば、改質領域は実質的に円形、楕円形、菱形、三角形、又はいくつかの他の形状であってもよく、また、秩序だった均等なアレイで、又は、不規則に(例えば、間隔若しくは相対位置又はその両方が異なる)配置されていてもよい。
【0049】
より容易な引裂が所望される、本発明のフィルムをバッキングとして備える接着テープのいくつかの実施形態において、ポリマーフィルムにおける改質領域は、典型的には、好ましくは非円形で、幅の少なくとも1.25倍、また、典型的には幅の少なくとも2倍の長さを有する。主フィルム全体にわたる異なる個々の改質領域はばらつきを呈してもよく、それぞれの中央部及び周囲の周縁部のサイズが若干異なってもよいが、典型的には、これらのそれぞれが長軸と短軸を有する。長軸は改質領域の長さに沿う線で、短軸は改質領域の幅に沿った線である(例えば、ヘリンボーンパターンを形成する)。一実施において、各改質領域の長軸に沿って延長した線は、隣接した第2の改質領域を貫通する。特定の実施において、各改質領域の長軸に沿って延長した線は、隣接した改質領域の短軸に沿って又は短軸と平行に、隣接した改質領域を貫通する。
【0050】
本発明に従って、改質領域は、フィルムの容易な引裂を促進するように、ダウンウェブ、すなわち長手方向(MD)に、またクロスウェブ、すなわち横方向(TD)に配置される。改質領域は、望ましい直線上の引裂特性をフィルムに付与しながらも、テープバッキングとして機能するには十分に頑健であり得るフィルムの引張強度を十分に保持しており、テープバッキングとして好都合に使用することができる。本発明によると、そうでない場合には望ましくない引裂特性及び引張特性、例えば、このようなシート及びテープが適用されたロール又は表面から剥離する際の(例えば、マスキングテープにおけるような)スリバリング(slivering)、過度に高い引裂開始力、過度に高い引裂伝搬力、ぎざぎざ又は非直線の引裂線となる傾向等を呈するようなポリマーフィルムをバッキングとして使用して、手切れ性シート及びテープを形成することができる。本発明のフィルムを使用して作製される接着テープは、スリバリング、分裂、及び予測不可能な破損を防止するための調節された引裂伝搬等の優れた引裂特性、並びに取り扱い及び適用を容易にするための均一なテクスチャー、及び接着剤のウェットアウトの視覚表示として機能することによって適切な粘着を視覚的に示す能力、を提供することができる。後者の性能パラメータは、本発明のフィルムがマスキングテープのバッキングとして使用される実施形態には、特に有益である。
【0051】
多くの実施形態において、中央部及び相補的な周囲の周縁部は、典型的には円、細長い楕円、長方形、又は他の形状で、各改質領域の長軸が隣接した改質領域と交差し、又は、隣接した改質領域の近くを通過し、最適な引裂特性を提供するように配置されている。
【0052】
本発明のテープの特徴は、バッキングの改質領域であって、それぞれが火炎衝突の際に形成された上昇した隆起又は周縁を有する。この上昇した隆起は、前駆体フィルムに付与された配向から弾性的に回復した改質領域内部由来のポリマー材料からなる。この周縁は、穿孔フィルムの引裂特性を向上すること、及び、フィルムを形状適合性のある材料により類似させる、繊細なテクスチャーを付与することが、以前に観察されている。上述のように、このような上昇した隆起又は周縁により、驚くべきことに、接着テープ構成体における剥離コーティング又はライナーの使用の必要性が排除されることが判明した。
【0053】
本明細書の
図4に関し、米国特許第7,037,100号で記述されているように、
「ポリマーフィルム14に形成された穿孔パターンには、本発明の布状フィルム及びテープバッキングの引裂特性及び引張特性に対して強い影響がある。ここで
図4に関しては、典型的な穿孔パターン28の拡大したレイアウトの一部を示しており、長手方向の配向が上下、横方向の配向が左右である。示した穿孔パターン28は、穿孔1a、1b、及び1cを有する第1列、穿孔2a、2b、及び2cを有する第2列、穿孔3a、3b、及び3cを有する第3列、穿孔4a、4b、及び4cを有する第4列、並びに穿孔5a、5b、及び5cを有する第5列として特定される、一連の穿孔の列を備える。典型的には、穿孔は、フィルムの表面のほとんど又は全てに沿って延在するパターンを形成し、したがって、
図4に示されたパターンは、1つのそのようなパターンの一部にすぎない。」
【0054】
米国特許第6,635,334号(Jacksonら)及び同第7,138,169号(Shiotaら)は、本発明の主フィルムの改質領域に使用され得、得られたテープの所望の、結果として生じる引裂特性、しわ特性、折りたたみ特性、及び他の物理的特性を達成し得る、多数のパターンを開示している。本発明に従い、このようなパターンを使用し、閉じた改質領域を形成することができる(すなわち、改質領域の中央部が、従来技術に開示された穿孔のようには、フィルムを完全には貫通していない)。
【0055】
いかなる理論による束縛も望むものではないが、改質領域の密度が、本発明のフィルム及びテープの形状適合性及び折りたたみ特性の両方、並びに引裂特性及び引張特性に寄与するものと考えられる。また、改質領域の密度を低下させる、あるいは、長手方向(MD)若しくはクロスウェブすなわち横方向(TD)のいずれか又は両方向に沿ってチャネルを提供し、伝搬引裂がどの改質領域にも遭遇しないように改質領域の分布を変化させると、その結果、最も好ましいパターンに比べ、形状適合性が低下し、また、このような改質のないチャネルの方向に沿って望ましい引裂特性及び引張特性が低下するものと考えられる。本発明のテープは、箱、容器、皮膚、自動車部品及びパネル、並びに他の材料に形状適合し、これによって感圧接着剤を部品又は基材と密着させることができ、したがって、テープと基材との間の接着を強めることができる。更に、本発明の接着テープは、同等の紙バッキングのマスキングテープに対して周知のように、典型的な吹き付け塗装作業に使用される場合、丸みのある塗料縁部を形成できるように、折り曲げることができる。
【0056】
また、各中央部の周囲の隆起した周縁部は、引裂の伝搬を弱める働きをし、その結果、手による引裂をより良好に調節し、(非穿孔フィルムの引裂伝搬力と比較して)引裂伝搬力を強める。しかしながら、引裂開始力は、前駆体フィルムの引裂開始力と比較して、特に最も好ましいパターンでは低下する。これは、改質領域の密度によって、このように構築された任意のフィルム又はテープの縁部が、改質領域を縁部又は縁部の極めて近くのいずれかに有することを保証するからである。驚くべきことに、本明細書に記載のように作製されるテープは、マスキングの用途で使用される場合、記載の改質領域及び差厚を有していても、非常にシャープかつ均一な塗装ラインをもたらすことができることが判明した。このようなフィルム及び得られるテープは、厚さ又はz軸寸法において優れた形状適合性を有することから、これらが接着される基材に対する接触が向上するものと考えられる。したがって、引裂開始のため、本発明のフィルム及びテープは、ノッチフィルムと同様に挙動するが、紙バッキングのマスキングテープが特に湿潤環境で使用される場合に問題となる、著しいスリバリングの発生はない。
【0057】
改質領域の形成
本発明の主フィルムは、本明細書に記載の、周縁及び凹部を有するが開口した中央部のない改質領域を提供する、様々なフィルム形成、配向、及び選択的な加熱法を使用して製造することができる。
【0058】
主フィルムを得るための本発明に従うフィルムの改質領域の形成は、
(A)(a)熱誘発弾性回復が可能であり、かつ(b)第1主面及び第2主面を有する、前駆体フィルムを提供することと、
(B)前駆体フィルムの少なくとも1つの目標領域を前駆体フィルムの緩和温度(T
r)より高い温度で選択的に加熱する一方で、目標領域内で前駆体部材の寸法の変化を引き起こすように、目標領域を取り囲む前駆体フィルムの一部の温度を前駆体フィルムのT
r未満の温度に維持し、その結果、目標領域におけるフィルム材料の一部が熱誘発弾性回復を受け、かつ周縁部によって取り囲まれた中央部を備える改質領域を形成し、周縁部の最大厚さが相対的により大きくなり、かつ中央部の相対的な厚さが低下するが、前駆体部材の第1主面と第2主面との間で完全に開口することはないことと、続いて、
(C)改質領域をT
r未満まで冷却することによって主フィルムを得ることと、によって実施され、主フィルムは、(1)第1主面及び第2主面と、(2)主フィルムが熱誘発弾性回復可能であるランド部と、(3)1つ以上の改質領域と、を有し、各改質領域は、主フィルムの第1主面から突出し、かつ中央部を取り囲む周縁部を備える。本発明の接着テープは、次に、主フィルムの第2主面に配設される(すなわち、バッキング部材が、本質的に主フィルムからなる場合)、又は、バッキング部材の第2主面に配設される(すなわち、バッキング部材が、主層と、主フィルムの第2主面に(例えば、押出によって)接合された、適宜用いられる第2層を備える場合)、標準的に粘着性である感圧接着剤を適用することによって作製される。
【0059】
改質領域のそれぞれが全面的に他と同一である、又は、完全に厳密に同一の形状、サイズ、若しくは開放性である、必要はない。火炎穿孔について当該技術分野において既知の多くの技術及び装置を、本発明において利用することができる。従来の火炎穿孔に使用される場合のように、本発明に従って改質領域を形成するのに使用される場合、このような技術及び装置により、サイズ及び形状の完全性において若干ばらつきのある主フィルムが得られる。これには、現在の発明に対する有害な効果はない。
【0060】
改質領域の形成を行うのに用いられる方法及びプロセス条件は、いくぶんかは所望の改質領域及びフィルムの性質に基づいて選択される。典型的には、このプロセスは、フィルムが所望の改質領域の形成から受ける以外の、熱による損傷の程度を最小化するように実施するのが好ましい。
【0061】
ウェブを、火炎衝突ステーションに、より高速で通すと、相対的により小さい改質領域が形成される。当業者によって理解されるとおり、使用される他の火炎衝突条件(火炎の強さ、バーナーとフィルムの距離、又はバッキングロールのパターン)を調節して、同様の改質領域サイズ及び間隔又は任意の所望の改質領域のアレイを得ることができる。
【0062】
所望の選択的な加熱を得るために使用されるバッキングロールの凹み(時としてくぼみ、ウェル、又はディンプルと呼ばれる)のパターンによって、その結果得られる改質領域のアレイ及び寸法が部分的に確定され、各改質領域はバッキングロールのディンプル又は凹みに対応する。場合によっては、改質領域は秩序だったアレイで配列される。場合によっては、改質領域は不規則に配列される。所望であれば、改質領域は実質的に類似の個々の構造であってもよく(すなわち、形状及び寸法が実質的に同一の凹みを有するバッキングロールを使用することによる)、又は改質領域は様々な個々の構造であってもよい(すなわち、形状、寸法、又は両方が適宜異なる凹みを有するバッキングロールを使用することによる)。
【0063】
所望であれば、テープは、主フィルムが複数の改質領域の第1のアレイを有する第1セグメントと、複数の改質領域の第2のアレイを有する第2セグメントと、を有し、第1のアレイが第2のアレイとは1つ以上の特徴において異なるように作製されてもよい。これは、対応する凹みのアレイを有するバッキングロールを使用して複数のセグメントを同時に形成すること、又は、それぞれの改質領域のセグメントを逐次的に形成すること、によって達成することができる。所望により、(1)隣接した改質領域間の平均距離、(2)改質領域の形状、(3)改質領域の寸法、及び(4)周縁部の平均厚さからなる群から選択される、1つ以上の特徴の違いを含む改質領域のそれぞれのアレイが形成されてもよい。
【0064】
火炎衝突は、例えば、米国特許第7,037,100号の実施例1について示されたプロセス仕様によって実施することができる。このような装置は通常、燃料及び酸化剤が燃焼前に十分に混合されている、予混合層流炎を使用する。しかしながら、米国特許第7,037,100号に記載のプロセスとは対照的に、本発明のいくつかの実施形態では、多燃料炎が使用される。得られるフィルムに所望の特性により、火炎衝突プロセスは、所望の表面特性を付与するように実施してもよい(例えば、剥離傾向の増加が所望の場合は、相対的に多燃料の混合物を使用し(例えば、剥離剤を低減又は排除して剥離を行う場合)、逆に、接着傾向の増加が所望の場合は、相対的に少燃料の混合物を使用する)。改質領域の形成中に炎に暴露されるフィルムの面には、中央部を取り囲む、弾性的に回復したポリマー材料の周縁部が形成される。模式的に理想的に
図2に示したが、改質領域の周縁部は、典型的には、フィルムの第1主面及び第2主面の両方から外側(すなわち、z軸)への、フィルムの突出部によって形成され得る(例えば、
図4に示したとおり)。これらの周縁は、一般的なテープのロール形態に巻かれた際、バッキング部材と接着剤の間の接触を最小化することにより、後に適用される接着剤の剥離面として効果的に作用し得ることが判明している。周縁表面が剥離性を呈することが重要な場合、改質領域の形成プロセスは、フィルムの第1主面の隆起した周縁又は周囲のランド部のいずれかにおいて、過度に酸化しない火炎状態を使用して、すなわち、火炎への暴露によって典型的に引き起こされる表面酸化がもつ、接着性を促進するという特性を最小化するような火炎状態を使用して、実施することが非常に重要である。火炎により引き起こされる表面酸化を完全に排除することはできないが、酸化は火炎当量比0.92〜0.96で最大化され、少なくとも約1.05の火炎当量比で最小化され、これは多燃料炎である[Stroud et al.,Progress in Energy and Combustion Science,34(6),696−713(2008)参照]。したがって、好ましくは当量比約1、また好ましくは少なくとも約1.05の多燃料炎を使用して火炎衝突を実施することが必要である。多燃料炎をポリマーの火炎穿孔に使用することは、火炎処理の技術分野における実質的に全ての推奨に反している。このようなバッキング部材を使用することによって得られる利点、例えば、テープのロール形態における巻き出しの改善が良好であること、塗料の浸透に対する抵抗性等は、この処理を選択したことによる驚くべき結果である。
【0065】
本発明の驚くべきかつ有利な態様は、改質領域が不透過性であること、すなわち、改質領域がフィルムを完全には貫通していないことである。
【0066】
配向ポリマーフィルムは、冷却した加工バッキングロールに巻かれて、火炎のような高熱流束に暴露され、2つの主面の選択的な加熱を引き起こせることが知られている(例えば、米国特許第7,037,100号等より)。フィルムセクションを、冷却されたバッキングロールの加工されたくぼみ全体に直接暴露することにより、そのフィルムセクションの非常に急速な加熱を引き起こし、フィルム配向の突然の制御されない解除又は緩和を起こし、その結果、この収縮によって生じた、緩和されたポリマー分子の集合を含む穿孔開口部の周辺に、会合した「周縁」材料によって形成される穿孔が生じるものと考えられる。このプロセスは熱誘発弾性回復と称する。本発明は、本明細書に記載のような前駆体フィルムを使用することにより、以前から既知のような穿孔を有する改質領域ではなく、閉じた中央部を有する改質領域を形成することができるという、驚くべき発見に関する。
【0067】
従来技術においては、結果として生じる改変によって、
図4に示すような、フィルムの厚さ全体を完全に貫通して延在する穿孔となる。
ここで、「a」=周縁の厚さ、
「b」=ランド部の厚さ、
「c」=穿孔である中央部の厚さ(すなわち、0に達する)である。
図5は、フィルムの熱誘発弾性回復によって形成された、開口した穿孔を示す、倍率80倍の走査型電子顕微鏡写真である。熱改質領域の周縁部、ランド部、及び中央部は、a、b、及びcと表示される。
【0068】
これらの従来技術の場合、選択的な加熱のプロセスにより、熱改質の結果、周縁セクション「a」がランド領域「b」と少なくとも同じ厚さとなり、穿孔領域「c」は0の厚さとなる。このようなフィルムの有用性は、穿孔の存在により限定され、塗装用のマスキングテープのバッキング又はマスキングシートとして直接使用することができず、また、溶媒又は水性コーティング等の液体コート剤を伴うコーティングプロセスでの使用の妨げとなる。
【0069】
本発明者らは、上記の選択的な加熱のプロセスに供され、手切れ性を提供するが、フィルムの厚さを貫通する穿孔がない熱誘発改質領域を形成する、一群のポリマーフィルムを発見した。このようなフィルムは、接着テープのバッキングとしての使用には非常に望ましい。この場合、熱誘発弾性回復のプロセスによって、
図6及び
図7に示すような、新しい種類のフィルム形状を得ることができる。
図6に示すように、本発明のフィルムにおいて、改質領域は、ランド部Bによって取り囲まれた周縁部Aによって取り囲まれた、中央部Cを備える。従来技術のフィルムとは異なり、中央部Cの厚さは0よりも大きい。
図7は、倍率80倍の改質領域の走査型電子顕微鏡写真である。
【0070】
本発明において、選択的な加熱の適用により、熱改質領域「c」が0よりも大きいが、依然としてフィルムの容易な手切れ性を提供するという、新規の結果を引き起こす。この実施形態において、改質領域の周縁部の厚さ「a」は、周囲のランド部の厚さ「b」に近づき、他の領域よりも厚い。中央部の厚さ「c」は、「a」及び「b」の両方よりも常に小さく、当該技術からは離れ、0よりも大きい。
【0071】
このようなフィルムは、塗装マスキング接着テープのバッキング又はシーティングとして使用することができ、また液体コーティングプロセスに使用することができる。本発明のフィルムは更に、良好な引裂特性、良好な強度、良好な形状適合性及び伸長、優れた耐水性、並びに接着剤被覆テープのロールとして使用された場合、低い巻き出しを呈する。更に、熱改質プロセスによって付与された構造により、フィルムの厚さ又はかさばりの相対的な増加、並びにこうして付与されたテクスチャーのため、取り扱いがより容易な接着テープ又はシートが得られる。
【0072】
理論に束縛されるものではないが、本発明のフィルムは、全体的な分子配向の程度がより低く、その結果、全体として最大延伸方向への弾性回復量又は収縮率が低下したフィルムが得られる。典型的な逐次配向ポリマーフィルムの場合、この方向はTD方向である。同時配向フィルムの場合、この方向は最も高い延伸度の方向、又は、均衡のとれたフィルムでは両方の主軸に沿った方向である。延伸プロセスによって形成される配向の熱誘発弾性回復は、従来技術の実施例におけるように、厚くなった周縁によって取り囲まれている、開口した穿孔の形成の背後にある推進力であり、本発明の場合、本発明のフィルムは、薄くなった中央部は形成できるものの、開口した中央部を形成できない程度の、ある臨界値未満の弾性回復ポテンシャルを有するものであると考えられている。
【0073】
選択的な加熱の結果としての所望の熱誘発弾性回復の効果は、
図3A及び
図3Bを参照することにより、一層よく理解することができる。
【0074】
図3Aは、本発明の前駆体フィルム12の断面の概略図である。第1面14に熱が加えられると、フィルム12は温度が上昇傾向となる。フィルム12の第2面16は、その表面に凹部又はくぼみのアレイを有するチルロール(図示せず)と接触する。フィルム12の、チルロールと接触した部分は、典型的にはいくぶん温まるが、下にあるチルロールがヒートシンクの役割をするため、温度上昇は限定される。対照的に、チルロールの表面の凹部の上に置かれているフィルム12の部分は、熱エネルギーを有効に伝導することができず、
図3Bの曲線で図示したような、相対的に大きな温度上昇を受ける。この温度上昇の結果、フィルム12の一部は、大きな温度上昇の領域において、熱誘発弾性回復の結果として改質を受ける。改質領域内では、中央部22及び周囲の周縁部24で構成される改質領域20において、熱の流速が大きな温度上昇をもたらす。中央部22内では、高温によってポリマーセグメントの配向の解除が起こり、ポリマー本体が薄くなり、かつ収縮する。周囲の周縁部24内では、ポリマー内の温度は、中央部に最も近い高い領域から、冷却されたランド部における、より低温までの範囲となり、周縁部内では、ポリマーが材料を中央部から収縮させ、周囲のランド部と比べ、相対的な厚さを増加させる。
【0075】
このような不透過性の改質領域を有するフィルムを形成する能力は、前駆体フィルムとして使用される配向フィルムの性質によるものと考えられる。
【0076】
いくつかの実施形態において、前駆体フィルムは逐次テンター延伸フィルムで、DMAを使用して横方向(TD)に測定した場合、約−2.0N/m
2未満の弾性回復を呈する。いくつかの実施形態において、本発明に従って使用される前駆体フィルムは、インストロンによって測定した場合、約2500MPa未満の横方向の初期引張弾性率を呈する。
【0077】
いくつかの実施形態において、不透過性の中央部を有する改質を生じさせるための所望の限定的な熱誘発弾性回復は、下記のうちの1つ以上を呈する配向フィルムから得られることが予想される。
【表1】
【0078】
表中のデータに関する注:TD方向の引張弾性率は、投入されたフィルム試験片の断面積を使用して算出した。ASTは自動収縮率試験(automated shrinkage test)である。
容易な手切れ性が所望される多くの実施形態に対し、得られる主フィルムが、非ノッチ引裂強度約100グラム重(g
f)/mil厚さ以下、より好ましくは約70g
f/mil厚さ以下、最も好ましくは約55g
f/mil厚さ(例えば、テープの横方向において)を呈することが時として好ましい。フィルムの引裂力が高すぎると、本発明のフィルムのいくつかの用途では許容される場合もあるが、フィルムを手で引裂くのが過度に困難となってしまうことがある。
【0079】
本発明における前駆体フィルムとして有用なフィルムの実例としては、ポリ塩化ビニル及びポリスチレン、アクリル系ポリマー等の、ポリオレフィン、ポリエステル、ガラス状ポリマーを含む、熱誘発弾性回復が可能である、任意のポリマーフィルムが挙げられる。好ましくは、ポリマーフィルムは少なくとも1つの主方向に配向されている(すなわち、LO又はTDO、つまり、長さ配向又は横方向配向)。このような配向フィルムは、強靱性と、選択的な熱加熱プロセスに一旦供された手切れの容易さとのバランスをもたらす。
【0080】
好ましいフィルムとしては、1つ以上の構成成分のポリオレフィン樹脂及び樹脂の組み合わせを含む、逐次的に又は同時に二軸配向された、ポリオレフィンが挙げられる。このようなフィルムは更に、2つ以上の層、好ましくは2、3、5、7以上の層を含んでもよい。逐次又は同時の二軸配向は、好ましくはテンター延伸プロセスを使用して実施されるが、更に、ローラー延伸、インフレートフィルム延伸、又はこれらの組み合わせ等によって実施してもよい。
【0081】
一実施形態において、ポリマーフィルムは、融点が延伸(stretching or drawing)温度未満の1つのポリマー樹脂を含む、ブレンド又は層を含んでもよい。このような、融点が低い構成成分は、任意の有用な濃度で組み込まれてもよいが、典型的には、全体の約5〜95重量%を占める。
【0082】
一実施形態において、ポリマーフィルムは、半結晶性の構成成分と非晶質の構成成分とのブレンドを任意の組み合わせで含んでもよい。構成成分材料は、ランダムコポリマー若しくはブロックコポリマーを含んでもよく、又は、1つ以上の材料の半結晶相若しくは非晶質相の物理的分散体を含んでもよい。
【0083】
一実施形態において、ポリマーフィルムは、少なくとも1つの主面層が、ベース層又はコア層と比較して融点がより高いポリマーである、多層フィルムを含んでもよい。このようなフィルムでは、選択的な熱加熱プロセスに暴露することにより、1つ又は両方の主面上に、例えば、テクスチャー、接着剤の剥離、液体不透過性等を提供する上で有用であり得る、望ましい構造体を形成することができる。
【0084】
一実施形態において、ポリマーフィルムは、少なくとも1つの主面層が、ベース層又はコア層と比較して融点がより低いポリマーである、多層フィルムを含んでもよい。このようなフィルムは、より柔らかい表面層を提供する上で利点があり得るが、それでもなお、良好な手切れ性及び液体不透過性を提供する。
【0085】
添加物、充填剤、顔料、染料、UV安定剤、及び核形成剤も、更に本発明の実施において有用であり得る。含有の相対的な割合及び方法は、当業者には周知である。このような一実施形態は、A.Schulman Co.(Akron OH)からのMF 502マットポリオレフィンマスターバッチである。
【0086】
一実施形態において、MPM 1114(Mayzo Co.(Suwanee,Georgia)より)としてホモポリマーポリプロピレンマスターバッチとして提供されたβ核形成剤が、PP 4792ポリプロピレン樹脂(ExxonMobil Co.(Houston,Texas))に組み込まれた。組み込み濃度は、PP 4792樹脂を基準として最大約2重量%であった。このような組み合わせで作製されたフィルムは、接着性マスキングテープのバッキングにとって望ましい、非常に良好な手切れ性及び不透明度を提供した。
【0087】
一実施形態において、PP 5571耐衝撃ポリプロピレン(Total Petrochemicals USA(Houston,Texas)より)を含むフィルムを逐次テンター延伸プロセスにおいて二軸配向し、良好な手切れ性を呈し、液体に対して不透過性であり、不透明なフィルムを製造した。
【0088】
一実施形態において、ExxonMobilのPP 9122ランダムプロピレンコポリマーを含む表面層と、PP 5571耐衝撃ポリプロピレンを含み、表面層よりも厚さが大きい第2ベース層と、を含む多層を備えるフィルムを、逐次テンター延伸プロセスにおいて二軸配向し、非常に良好な手切れ性、接着テープとして適用された場合に狭い半径を形成する能力と定義される、良好な形状適合性、良好な不透明度、及び液体不透過性を呈するフィルムを製造した。
【0089】
本発明のフィルムは、典型的には、ポリマーフィルム、特に配向ポリオレフィン及びそれらのブレンドを含む。用語「ポリオレフィン」は、これらに限定されるものではないが、エチレン、プロピレン、ブチレン等のポリマー、並びにこれらのランダムコポリマー及び/又はブロックコポリマー並びにブレンドとみなされ得る。場合により、このようなフィルムは2つ以上の層、例えば、2、3、5、7以上の数の層を構成し得る。こうして、程度の異なる熱誘発弾性回復が異なる層で発生することができ、新規かつ有用な特性を有するフィルムが製造される。ポリエステル、ポリスチレン、又は配向フィルムの形成が可能であるその他のポリマー等のポリマーから、その他のフィルムを製造することができる。非配向フィルムもまた、本明細書に記載の選択的な加熱のプロセスに暴露後、これらの厚さで手切れが可能であれば、企図され得る。ほとんどの場合、非配向性のキャストシートは、高引裂抵抗力を呈し、不規則又は非直線の引裂を生じさせる。
【0090】
本発明で有用なフィルムは、構成成分又は層の材料が、構成成分又は層の材料の融点にほぼ等しいかそれよりも高い温度で配向される、1つ以上の構成成分又は層を含んでもよい。このような延伸条件下では、構成成分材料は「温かい」又は「熱い」延伸を受け、フィルムには低度の配向が付与され、選択的な加熱のプロセスにおいて、厚さを貫通する穿孔が形成されるのに十分な弾性回復が制限されると考えられている。
【0091】
このような場合、延伸プロセスによってもたらされるポリマー分子の配向が、例えば非晶質の構成成分で生じ得るようにプロセスの最中に緩和されるか、又は、半結晶性であるが延伸プロセスの温度よりも低い溶融温度を有する配向ポリマー分子が、冷却の際に、より低い配向状態で再結晶し得る、と考えられている。上記のJ.Appl Polm Sciの参考文献を参照のこと。このようなフィルムはフィルムの厚さを完全に貫通する穿孔を呈することはないが、それでもなお驚くほど良好な手切れ性を呈する。
【0092】
配向ポリマーにおける弾性回復は、フィルムの収縮率を制御し、また配向された半結晶性のポリマーに存在する、非結晶又は非晶質の「連結鎖(tie chains)」に関連すると考えられている(I.M.Ward et al.,J.Appl.Polym.Sci.,v.41,1659(1990);“Structure and Properties of Oriented Polymers,”ed.by I.M.Ward,Chapman and Hall,London(1997)を参照のこと)。分子レベルでは、弾性回復は、ひずみを与えられた鎖を適切に保持する働きをしていた結晶性構成成分が溶融した結果、延伸プロセスにおいて伸長されたポリマー鎖が反跳することによって発生する。
【0093】
弾性回復はまた、フィルム製造プロセス条件、特にフィルムキャスティングの温度(すなわち、急冷又はキャスティング温度)及び延伸の温度にも関連すると考えられている。キャスティング温度は半結晶性ポリマー構造の開始形態を規定し、後続の延伸中に存在する連結鎖材料の体積に影響するものと考えられている。低いキャスティング温度では、結晶化は非常に急速で、多くのより小さい結晶及びより大きな体積の連結鎖を生成する。ポリマーの融点に近い、より高いキャスティング温度では、結晶化はそれ程急速ではなく、より少数の、より大きい微結晶及びより小さな体積の連結鎖を生成する。Capt,L.,et al.,“Morphology Development during Biaxial Stretching of Polypropylene Films”17th Polymer Processing Society Annual Meeting,2001を参照のこと。
【0094】
延伸された半結晶性ポリマー中に存在する、いわゆる張りつめた連結鎖は、熱に暴露された際の延伸ポリマーフィルムの弾性回復の原因であると考えられている(B.Alcock et al.“The effect of processing conditions on the mechanical properties and thermal stability of highly oriented PP tapes,”Europ.Polym.J.,45(2009):2878−2894を参照のこと)。
【0095】
同様に、他のブレンド材料及び/又は形状配列によっても、手切れ性はあるものの、開口した穿孔穴の形成に十分な弾性回復は不可能な、延伸フィルムを製造することができると考えられる。好適な材料の例としては、結晶含量の低いブロックポリプロピレンコポリマー若しくはランダムポリプロピレンコポリマー、ブレンドが延伸された際に不十分な弾性回復を呈するような、低い若しくはより低い融点の結晶構成成分を有する1つ以上の材料とのポリプロピレンのブレンド、又は1つ以上の層が開口した穿孔穴を形成しないように、延伸状態において不十分な弾性回復を呈する2層以上のフィルム、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。好適な材料の例としては、ENGAGE(商標)8401及び8402、AFFINITY(商標)820、並びにINFUSE(商標)9507(全てDow Chemical Co.(Midland,Michigan)より)、並びにVISTAMAXX(商標)6202(ExxonMobil Chemical Co.より)が挙げられる。
【0096】
他の実施例において、アイソタクチックポリプロピレン(等級5571としてTotal Petrochemicals USA(Houston,TX)より入手可能)中に分散されたエチレン−プロピレンゴム(EPR)からなる約15%の耐衝撃性改良剤を含む、ポリプロピレン耐衝撃コポリマーを使用して作製された二軸配向フィルムは、本発明の選択的な加熱のプロセスに暴露された際に開口した穿孔穴を生成せず、それでもなお厚くなった周縁を呈し、最も驚くべきことには、なお手切れが容易であることが見出されている。
【0097】
本発明のシートの構造(例えば、相対的に厚くなった周縁部を有する改質領域のアレイ等)により、多くの有用な利点を提供することができる。
【0098】
接着剤
バッキング部材の第2主面として被覆される接着剤は、当該技術分野において既知の任意の好適な接着剤とすることができる。好ましい接着剤は、標準的に粘着性である感圧接着剤である。接着剤の選択は、大部分は、得られるテープの目的とする用途に応じて決まる。好適な接着剤の実例としては、アクリレート、天然ゴム、ブチルゴム、スチレンコポリマー等のゴム樹脂、シリコーン、及びこれらの組み合わせをベースとするものが挙げられる。接着剤は、溶液コーティング、水系コーティング、又はホットメルトコーティング法によって適用することができる。接着剤としては、ホットメルトコーティングされた組成物、転写コーティングされた組成物、溶媒コーティングされた組成物、及びラテックス組成物、並びに積層接着剤、熱活性化接着剤、及び水活性化接着剤を挙げることができ、テープロールの巻き出し及び接着特性の望ましいバランスをもたらすものであることを除き、限定されるものではない。
【0099】
当業者であれば、本発明に使用するための好適な接着剤を、大部分は所望の用途に応じて、選択することができる。
【0100】
本発明のテープの使用に好適な、粘着付与されたゴム状ホットメルト接着剤の実例は、米国特許第4,125,665号、同第4,152,231号、及び同第4,756,337号に開示されている。本発明のテープの使用に好適な、アクリル系ホットメルト接着剤の実例は、米国特許第4,656,213号及び同第5,804,610号に開示されている。
【0101】
当業者であれば、本発明の物品で使用するための接着剤を適用するための、ロータリーロッド又は他の好適なコーティング技法を容易に選択することができる。コーティング方法の選択は、部分的には、接着剤の流動特性、接着剤の穿孔への所望の浸透等による。当業者であれば、接着剤をシート上に適用又はコーティングするための好適な方法を容易に選択することができる。実例としては、ロータリーロッドダイコーティング、ナイフコーティング、ドロップダイコーティング等が挙げられる。本発明のテープの作製に使用することができるロータリーロッドコーティング法の実例は、米国特許第4,167,914、同第4,465,015号、及び同第4,757,782号に開示されている。
【0102】
バッキング部材と接着剤との間の接着を増強するため、例えば、少燃料条件下での火炎処理、コロナへの暴露、化学的プライマー等の接着促進処理(複数可)を、バッキング部材の第2主面に適用してもよい。
【0103】
感圧接着剤は、指圧以下で強力で永久的な粘着、付着を有し、被着物上に留まる充分な能力を有することが周知である。
【0104】
更に、これらの接着剤は、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、抗酸化剤、安定剤、顔料、拡散材、硬化剤、繊維、フィラメント、及び溶剤等の添加物を含むことができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、接着剤を、場合により、任意の好適な方法によって硬化させ、流動がより起こりにくくする等の、接着剤の特性を改変することができる。特に、良好なテープロールの巻き出しと完成品の接着剤特性とのバランスをもたらすように、架橋度合いを選ぶことができる。典型的な架橋は、放射線誘発の架橋(例えば、UV又は電子線)、熱誘発架橋、化学反応架橋、又はこれらの組み合わせ等の周知の方法によって提供することができる。
【0106】
接着剤は、任意の所望の量で適用することができ、典型的には従来の乾燥コーティング重量約5〜約100g/m
2をもたらすように適用される。濃厚な接着剤コーティングは、巻き出し力の望ましくない増加を引き起こす確率を増加させる傾向がある。希薄すぎるコーティングは、機能しない、又は、基材表面の湿潤が不完全となる傾向がある。
【0107】
有用な感圧接着剤の一般的な説明は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.13,Wiley−Interscience Publishers(New York,1988)に見出すことができる。有用な感圧接着剤の更なる説明は、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.1,Interscience Publishers(New York,1964)に見出すことができる。
【0108】
接着剤のバッキング部材への適用に次いで、本発明のテープは、例えば、スリッティング、圧延等の既知の手法を使用して、所望の構造に変換してもよい。本発明の複数枚のテープは、ロールの形態に巻いてもよい(例えば、場合により適宜使用されるコアの周りでそれ自体の上に巻かれる1枚以上のテープ)、又は、シートの形態で積層してもよい。本発明に従い、このようなテープアセンブリによって提供される驚くべき利点としては、上層の接着剤層と下層の主フィルムの隆起した周縁を有する第1主面との間の境界面が容易に分離することによる容易な巻き出し、並びに良好な手切れ性、形状適合性、及び他のテープ特性が挙げられる。
【0109】
図10は、本発明のテープの例示的なロールを示す。ロール110は、場合により適宜使用されるコア114上でそれ自体の上にロール形態に巻かれたテープ112を備える。テープ112は、バッキング部材116及び接着剤層118を備える。
図11に示すように、テープ112は、第1主面14及び反対側の第2主面16を有する、バッキング部材116(これは
図1のフィルム10の実施形態である)を備える。バッキング部材は複数の改質領域20を有する主フィルム10を含み、この例では複数の改質領域20を有する主フィルム10から実質的になる。
【0110】
用途
本発明は、包装用テープ、塗装用マスキングテープ、一般用途又は「ダクト」テープ、医療用テープ、マスキングフィルム、ライナー、ラップ、並びに不織材、フォーム等を含む、1つ以上の追加の層を有するラミネート等の多くの用途向けの、接着剤付き又は接着剤なしであり得る、テープ又はシートの製造に使用することができる。
【0111】
本発明の利点の1つは、前駆体フィルムの引裂強度を、より有用な大きさまで低減できることである。典型的には、本発明の主フィルムは、引裂強度が約100g
f/mil厚さ以下、いくつかの実施形態においては約70g
f/mil厚さ以下、いくつかの実施形態においては約55g
f/mil厚さ以下である、1つ以上のセグメントを有する。
【0112】
本発明の主フィルムのロール形態(例えば、巻かれた裸のシート又は接着剤付きのロール)のようないくつかの実施形態において、主フィルムは、単一の均質のセグメント(すなわち、改質領域の均一なアレイを備えるシート)からなる。他の実施形態において、主フィルムは2つ以上のセグメントを備えることができ、これらのセグメントは性質又は改質領域の有無について異なっている。
図11Aは、本発明の主フィルムの例示的な一実施形態を示す。主フィルム122は、本発明に従う改質領域を有するセグメント126が差し込まれた、改質領域を有しない複数のセグメント124を備える、細長いテープである。テープの用途において、このような構造は、フィルムを、セグメント126に対応した個別の長さで、より容易に形状適合させ又は分離できるようにするために、使用することができる。セグメントは所望の相対的なサイズ及び間隔とすることができる。
図11Bは、他の例示的な一実施形態を示す。主フィルム128は、中央セグメント132とこれに隣接した改質領域を有しないセグメント130(複数)とを備える、細長いテープである。テープの構造において、このような構造は、フィルムを、細長い中央部において、より容易に形状適合させる(例えば、壁の角で曲げる)ために使用することができる。理解されるとおり、本発明の主フィルムは、改質領域のアレイを有する1つ以上の第1セグメントと、改質領域のアレイを有しないか第1セグメント(複数可)のアレイとは異なる改質領域を有する1つ以上の他のセグメントと、からなる他の所望の構造によっても作製することができる。このように、異なる位置及び異なる構造において、引裂強度、形状適合性等の様々な特性を有する主フィルムを、本発明に従って実現することができる。
【0113】
本発明のコンテクスト
接着テープは、接着、接合、又はマスキング用途に幅広く使用されている。このような接着テープの本質的な側面は、自己接着剤及び剥離コーティングが付加されたテープバッキングが存在することである。接着テープの使用には、接着テープのバッキングが、道具又は手で引き裂くことによって分割供給が可能であり、有用な長さのテープをロールから分離できることが不可欠である。特に、マスキングテープ用途の分野では、所望分のテープを、いかなる道具又はテープの分割供給装置も使用せずに、接着テープロールから直接手で容易に引き裂けることが不可欠である。これにより、マスキングテープの、柔軟な、最速の使用が可能となる。本明細書で使用する手切れ性は、平均的な人間が、妥当で過度ではない労力のみによって、ある長さ若しくはシートの上記バッキングを容易に引き裂けるという意味での、テープが手で引き裂かれる能力、又は、手切れ性を指す。いくつかの態様において、鋭い力を素速く適用し、テープを有用な長さに「ぷつっと切る(snap)」ことができるのが望ましい。
【0114】
歴史的に、接着マスキングテープは、取り扱い及び適用、特に手で引き裂くこと、を容易にするため、紙のバッキングで作製されてきた。紙テープの本質的な脆弱性及び多孔性のため、このようなバッキングは、所望の強度、弾性、液体コーティングへの暴露に対する耐性、および液体コーティングへの抵抗性を付与するため、1つ以上のポリマー材料(例えば、バリアコート、バインダー、飽和剤等)でコーティングすることによって改質しなくてはならない。このようなコーティングは、通常、1つ以上のコーティング作業において適用され、続いて硬化又は乾燥され、コーティングを適所に固着する。このことは、紙の処理作業、続いて剥離コーティング及び接着剤コーティングの適用を行い、所望の製品を製造するために、多段階のコーティング処理ラインの使用が必要となる。あるいは、バリアコート、飽和剤、及びバインダーの紙へのプレコーティングを、接着剤コーティングの前に別の作業で実施し得る。
【0115】
バリアコート、バインダー、及び飽和剤を添加しても、接着マスキングテープ構造体への紙のバッキングの使用には、明らかな短所がある。紙のバッキングは、水又は紫外線に暴露されると本質的に不安定であり、典型的には自動車の塗装等の産業で使用される「水研ぎ(wet sanding)」、すなわち水による研磨を必要とする用途で使用すると、ずたずたに裂けてしまう傾向がある。紙のバッキングは真っ直ぐな切れ目で破れず、スリバリングとして知られる、様々な角度で破れる傾向があり、ずたずたの切れ端が残る。多くの新式の紙ベースの接着マスキングテープが、カレンダーバッキング又は特別に平滑化された紙のバッキングを使用して製造されており、これらのバッキングは、一旦除去されると、より均一な塗装ラインを可能とする。それでもなお、紙は結合した紙繊維からなるため、こうして形成された塗装ラインは、典型的には、ポリマーのテープバッキングの場合よりも鋭くなく、このような紙のバッキングは、通常ポリマーフィルムのバッキングよりも厚い。更に、紙バッキングのテープは、典型的には硬すぎ、十分な伸長を有していないため、なめらかな曲線状での適用(すなわち、平らな表面上で曲線状の塗装ラインを形成するように、x−y次元において曲がること)ができない。典型的には、紙バッキングのテープの伸長率は約25%未満であり、場合によっては15%未満であるため、多くの所望の構造のマスキングに対して不適切となってしまう。最後に、紙ベースのマスキングテープは、バリアコーティング、バインダーコーティング、及び飽和剤コーティングを適用する必要性のため、製造コストが相対的に高くなってしまう場合がある。それぞれのこのような工程はまた、溶媒の除去及び緩和措置に関して、又は上記のコーティングを乾燥するための熱の必要性に関して、無駄を引き起こすことについても言及しなくてはならない。
【0116】
対照的に、本発明によって可能であるように、接着テープの用途にポリマーフィルムを使用することにより、いくつかの明確な利点をもたらすテープを得ることができる。ポリマーフィルム、特にポリオレフィン系ポリマーフィルムは、典型的には、湿気及び水の影響を受けず、典型的には目立たず、高強度、形状適合性が良好で、かつ低コストである。しかしながら、いくつかの特定のタイプのポリマーのバッキングを除き、ほとんどのポリマー接着テープは、道具又はテープ分割供給ブレードを使用せずに手で引き裂くのは困難又は不可能である。
【0117】
良好な手切れ性を呈するポリマーフィルムのいくつかの例はあるが、それでもなお、特定の用途、特にマスキング用途には好適ではない。SCOTCH(商標)テープ(3M Company)に使用されている酢酸セルロース等のキャストフィルムは、手で容易に引き裂くことができるが、感湿性であり、水に暴露されると膨潤し、丸まってしまうことがある。ポリ塩化ビニルベースの他の接着テープのバッキングは、引き伸ばして変形させることなしに容易に引き裂くことはできず、更に製造が割高である。
【0118】
ポリオレフィン又はポリエステル等の他のポリマーフィルムは商品のポリマー樹脂をベースとしているため、割安となる場合がある。しかし、このようなポリマーフィルムは、手で引き裂くのは非常に困難である。ある場合には、このようなフィルムは、二軸配向等の好適なフィルム作製プロセスの選択及び/又は多層の組み込みによって、手切れ性を高めることができるが、特に後者の場合、フィルムには、特にマスキング及び保護等に用いた場合、除去に際し、層間剥離又は層分離を起こす傾向がある。これは、接着テープが使用後にきれいかつ容易に取り外し可能であることを要求する使用者にとっては、受け入れられない。
【0119】
本発明によって提供される主フィルムは、以下の特質の所望の組み合わせを、独自に、提供する:
・好都合な手切れ性
・固有の耐湿気性及び耐水性
・スリバリングに対する抵抗性
・直線の引裂伝搬
・目立たないこと
・高い形状適合性、すなわち、ポリマーフィルムの固有の伸長性と、火炎衝撃を受けたフィルムが有する薄くなった中央部に起因する「追加的」な伸長性と、の両方による、連続的かつ平坦な外側又は凸状端部で半径に形状を合わせられる能力。
・低コスト
・バリア、バインダー、又は飽和剤のコーティングを必要としないこと。
【0120】
本発明の主フィルムによって提供される優れた特性の組み合わせを、多くの以前から既知のテープバッキング材料と比較して、以下の表に概略的に示す。
【表2】
【実施例】
【0121】
本発明は、下記の実例を参照することにより、更に理解することができる。
【0122】
試験方法
下記の試験方法を使用した。
【0123】
ASTM D3759引張弾性率
BOPPフィルムの引張弾性率は、Alliance RT/5 MTS引張試験機により、ASTM D3759に従い測定した。幅1インチ、長さ6インチの試料を、試験フィルムの横方向に沿って切り出した。各試料の厚さを、この細片に沿って3つの異なる点で測定し、3つの測定値の平均として記録した。続いて、試験片を試験機のグリップに、分離間隔4インチで固定した。試験片の長軸を、グリップの中央の間を走る仮想の直線に沿って注意深く整列させた。固定中、試験片には、緩みの除去に必要とされた以上の引張力は加えなかった。次に、試験片が破断するまで、クロスヘッドを12インチ/分で移動した。引張弾性率を記録し、厚さによって正規化した。各フィルムについて、5反復を試験した。
【0124】
制約下での熱誘発弾性回復応力−B1
試験片の熱誘発弾性回復応力を、TA Instrument model RSA G2 Dynamic Mechanical Analyzer(TA Instruments(New Castle,DE))を使用し、引張モードで測定した。
【0125】
試験片は、測定用に、フィルム配向の主軸に沿って切断した。実際には、逐次的に延伸したBOPPに対し、フィルムの横方向(TD)で、寸法はMDが6.2mm、TDが25mmとなる。試験片が平坦かつ均一に配置されるように、試験片を一定のひずみ1%で固定した。試料をまず30℃で2分間コンディショニングし、次いで3℃/分で30℃から190℃に昇温した。これらの一定の固定条件下で、加熱の際に、温度の上昇に伴ってフィルムの結晶質セグメント又は他の硬質相セグメントが軟化及び溶融するため、軸方向の収縮力又は弾性回復力が発生する。DMAの引張モードにおいて、一定のひずみにおける軸方向の力は、加熱の際に解放された回復応力を反映する。正規化された応力を温度に対してプロットすると、加熱によって引き起こされた弾性回復の際の応力の変化が示される。正規化された応力は、フィルムの断面の面積によって軸方向の力を正規化することによって得られる。熱誘発回復応力は、試験片の留め具に対してひずみ方向にかかるため、報告される値は負となる(つまり、試験片は引く収縮力(pull tensile force)又は引張収縮力(tensile retractive force)を、クリップが取り付けられた力変換器に対して及ぼす)。
【0126】
図8は、実施例のいくつかのフィルム(火炎衝突前)の、制約下における横(TD)方向の弾性回復応力のプロットである。
【0127】
ASTM D2732−14及びD2732−TDの制約下での熱誘発弾性回復応力(非FIPフィルム)−B2
試験片の熱誘発弾性回復を、高精度寸法追跡システム(CCDマイクロメーター、LS−7001及びCCD LS−7030T)を取り付けたPerbix Thermal Shrinkage Analysis Instrument(Perbix Machine Company(Brooklyn Park,MN))を使用して測定し、熱処理前のフィルムの寸法の変化を検出した。試験片は、測定用に、フィルム配向の主軸に沿って切断した。実際には、逐次的に延伸したBOPPに対し、フィルムの横方向(TD)で、寸法はMDが25.4mm、TDが228.6mmとなる。試験片が平坦かつ均一に配置されるように、試験片を、1.5gの重りの引張力を使用して固定した。試験片をまず25℃で最短5分間コンディショニングした。フィルムの試験片の一方の端でフィルムをクリップに定置し、次いでオーブン中115℃で5分間加熱し、続いて25℃まで2分間冷却した。試料を加熱及び冷却しながら、試料の長さをKeyenceシステムで測定し、経時的な長さの変化を測定した。加熱の際に、フィルムの結晶質セグメント又は他の硬質相セグメントが軟化及び溶融するため、軸方向の収縮力又は弾性回復力が生じる。この結果、試験片のTDの長さの低下(熱収縮)又は増加(熱膨張)が起こる。報告したデータは、115℃下で少なくとも1分経過した後の、最初のプラトー領域から取られるものである。熱誘発弾性回復は、試験片の留め具に対してひずみ方向にかかるため、報告される値は、収縮のため負となる(つまり、試験片は引張収縮力を留め具に対して及ぼす)。熱膨張の場合には、値は正で報告される。
【0128】
ASTM D1922 Elmendorf(非ノッチ)引裂試験、熱処理フィルム
選択的な熱プロセスに供されたフィルムの手切れ性を、BOPPフィルムの横方向における開始引裂力試験を使用して測定した。引裂を開始する力を、Thwing−Albert Electronic Pro Elemendorf Tear Testerを使用して測定した。引裂試験を、非ノッチの2.5”×2.5”(63mm×63mm)のフィルム試験片に対し、それぞれについて5反復とし、1600gの振り子重りを使用して実施した。試験方法は、Elemendorf Propagation Force Tear試験−ASTM D1922に基づく。5反復の平均を、引裂を引き起こすグラム重単位で報告する。
【0129】
配向プロセス
厚さ約30〜約40マイクロメートルの、下記ポリマーの完成品シートを形成し、ロールに巻き取った。使用したプロセス条件を、表1に示す。
【0130】
フィルム1及び2の調製
同時二軸配向ポリプロピレンフィルムを、米国特許第4,675,582号、同第4,825,111号、同第4,853,602号、同第5,036,262号、同第5,051,225号、及び同第5,072,493号に記載の、リニアモーターに基づく同時延伸プロセスを使用して調製した。延伸装置は、Brueckner Maschinenbraue(Seigsdorf,Germany)によって組み立てられた。表2に記載のポリマーを使用した。
【0131】
樹脂A、B、H、及びIを押出成形した。各層に対して単軸押出を使用し、各層に対し、溶融温度が約227〜260℃である、安定な溶融物を得た。フィルムが3層のそれぞれで別個の樹脂を有するように、表2に列挙したポリマーを、表示したとおり、各それぞれの層に使用した。ポリマー溶融物を、スロットダイを通して押し出し、約18.5m/分で回転する、水冷式のクロムめっきしたスチール製キャスティングホイール上でキャスティングした。キャスティングホイールは、閉鎖ループ内水循環を使用し、水が約18℃の水浴中にキャスティングホイールを浸漬させることにより、約35℃に調節した。キャストシートは、トリミング幅約83〜86cm及び厚さ約0.185cmであった。キャストシートを、約440℃に設定したIRヒーターのバンクを通し、キャストフィルムをテンターオーブン中で延伸する前に、約70℃に予熱した。次いで、キャストし予熱したフィルムを、縦方向(MD)及び横方向(TD)に同時延伸し、二軸配向フィルムを製造した。この0.038mmの完成品のフィルムに対し、オーブンの予熱セクションを調節し、約150〜160℃の温度で予熱したフィルムを得た。予熱セクション中に使用されたテンターオーブン温度の設定点は、名目上、予熱領域を約170℃、延伸領域を142℃に、かつアニーリングセクションを165℃に設定した。最終的な総面積の延伸比は、アニーリングにおける名目上の緩和後、名目上約50:1であった。MD比は約7.5/1、また、TD比は約7.3/1であった。延伸されたフィルムは、厚さ約0.038mm及びトリミング幅約523cmであった。フィルムをSoftalコロナ処理器でコロナ処理し、約38ダインの表面張力を有する1つの表面を得た。巻き取り速度は名目上約140m/分であった。所望のフィルムの厚さ0.038mmが得られるように、条件を調節した。フィルムを、試験に有用な試料幅で長手方向に切り離し(オフライン)、かつ/又は真新しいブレードを備えたかみそり切れ刃を使用して、更に処理した。全ての言及した温度、割合、速度、比率、寸法等は、名目上かつ概算のものである。
【0132】
フィルム3〜16の調製
表1に列挙した樹脂を、単軸押出機に装着された3層押出ダイを使用して共押出しし、32〜64℃の範囲の温度に設定したキャスティングドラム上でキャスティングすることにより、シートに形成した。続いてキャストシートを、まず、一組の選択的に加熱された駆動ローラーに通し、長手方向(MDO)の伸長比約5倍、次いで長手方向縁部に沿って一連のバネ仕掛けのグリップで固定し、横方向(TDO)に約9倍延伸することにより、逐次的に配向させた。このように形成した二軸配向シートを、更に処理するため、連続するロールとして回収した。
【表3】
【0133】
火炎衝突の選択的な加熱のプロセス
下記の火炎衝突プロセスを使用して、実施例における選択的な加熱を実施した。
【0134】
米国特許第7,037,100号の
図3に示された火炎衝突を、以下の操作条件で使用した。圧縮空気を天然ガス燃料(化学量論比9.7:1及び熱含量37.7kJ/Lを有する)とベンチュリミキサー(Flynn Burner Corporation(Mooresville,North Carolina)より)中で予混合し、可燃混合気を形成した。空気及び天然ガスの流量を熱式質量流量計(Fox Thermal Instrument,Inc.(Marina,California)より)で測定し、天然ガス及び空気の流速をサーボモーター駆動ニードル弁(Flynn Burner Corporationより)で制御した。全ての流量は、火炎の当量比が0.96(空気:燃料比が10.1:1)、正規化火炎力が1635W/バーナー面積cm
2(14,140Btu/時−バーナーの長さ1インチ)となるように調整した。可燃混合気は、水冷式アルミニウムハウジングに取り付けられた、長さ30.5cmx幅1cmの、6ポート波形ステンレス鋼リボン(Flynn Burner Corporationより)を備える、米国特許第7,635,264号に記載されたタイプのリボンバーナーへの配管を通過した。
【0135】
バーナーは、直径35.5cm、面幅46cmの、冷却されたスチールバッキングロール(American Roller Company(Union Grove,Wisconsin)より)に隣接して取り付けた。バッキングロールの温度は、240L/分の再循環する水流により、温度10℃に制御した。バッキングロールの面は銅0.5mmでめっきされ、ロールの面の中央の29cmは米国特許第7,037,100号の
図6に示された穿孔パターンのエッチングが施され、次いで、全面がクロム0.01mmでコーティングされていた(Custom Etch Rolls Inc.(New Castle,Pennsylvania)による)。フィルタを通した、圧が約35kPa/m
2(5psig)の圧縮空気をバッキングロールに吹き込み、バッキングロール中央のパターン部分への水分凝縮の量を、制御可能に低減した。米国特許第7,037,100号の
図4中のDの距離である、バーナーハウジングの面とバッキングロールの面との間の距離は、16mmに調整した。
図4のEの距離は3mmに等しかった。
【0136】
示したフィルムはアイドラーロールによって誘導され、冷却されたバッキングロール及びロールのパターン化された部分に巻かれ、速度60m/分で火炎衝突プロセスを通過させた。フィルムの上流及び下流の引張力は約2.2N/直線cmに維持した。ポリプロピレンフィルムと冷却されたバッキングロールとの間の密着を確実にするため、6mmのVN 110 VITON(商標)エラストマー(American Roller Companyより)でカバーされた、直径10cm、面幅40cmのインバウンド(inbound)ニップロールを、冷却されたバッキングロールのインバウンド側のバーナーに対して約45°で配置した。ニップロールとバーナーとの間に、再循環水で温度38℃に維持した水冷式のシールドを配置した。ニップロールとバッキングロールとの接触圧は、約50N/線cmに維持した。
【0137】
比較例C2及びC3の、火炎衝突の選択的な加熱のプロセス
長手方向の配向比が5:1、横方向の配向比が9:1である標準的な市販の逐次二軸配向ポリプロピレンを、実施例について記載した火炎衝突プロセスを通過させた。ただし、火炎の強さは578W/cm
2(5000Btu/時インチ)、当量比は0.97(空気:燃料比10.0:1)、バッキングロール温度を38℃に保ち、濃縮を制御するための圧縮空気はバッキングロールには吹き込まず、リボンバーナーハウジングとバッキングロールとの間の距離は12mmであった。フィルムを速度25〜30m/分で、火炎衝突プロセスを通過させた。
【0138】
30m/分のフィルム速度で、処理されたフィルム上に周縁は認められなかった。フィルム速度25m/分において、処理されたフィルムの全ての穿孔領域は開いており、つまり、
図5に示した「c」の寸法は0であった。このように、市販のBOPPフィルムでは、周縁を有するが、開口した穿孔がないフィルムを作製するための火炎衝突処理の幅は、非常に小さい。このような標準的なBOPPでは、周縁を有するが、開口した穴を持たないフィルムを作製するプロセスを製造環境で一貫して実施することは、不可能ではないにしても、困難である。更に、これらの周縁を有するが、穴がないBOPPフィルム(比較例C2及びC3)は、外観が極めて不均一であり、寸法「a」及び「c」は個々の熱改質の領域間で大きくばらついていた。このような不均一な材料は、例えば、機能性の接着テープに転換することは不可能である。比較例C2及びC3にはまた、手で引き裂ける特性もない。これらの比較例は、処理されたBOPPの一方の端に沿ってはさみの切り込み等の傷が入れられない限り、手で容易に引き裂くことはできない。したがって、本明細書に開示の火炎衝突によって処理されたBOPPで得られた容易な引裂開始とは対照的に、これらの試料の引裂開始力は高い。これらの比較例はまた、本明細書に記載の特製のBOPPで得られたほとんど直線の引裂とは対照的に、真っ直ぐには引き裂かれず、ばらばらの角度で裂かれる。
【0139】
注:上記の条件は、周縁を有するが穴がない、任意のタイプの標準的なBOPPを作製するための最適な条件を表したものである。本発明者らが試みた、フィルム速度、火炎の強さ、間隔、バッキングロール温度の任意の他の組み合わせは、不均一な熱改質を示したため、更なる検討は不可能であった。
【0140】
実施例及び比較例の試験の結果を、表2に示す。
【表4】
【0141】
以上、添付図面を参照して本発明をその好ましい実施形態と関連付けて十分に説明したが、様々な変更及び改変が当業者に明らかである点に留意されたい。このような変更及び改変は、添付の「特許請求の範囲」によって規定される本発明の範囲から逸脱しない限り、本発明の範囲に含まれるものと理解することとする。本明細書で言及された全ての特許、特許文書、及び刊行物の完全な開示内容が、参照により組み込まれる。