特許第6832300号(P6832300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6832300-管理装置、管理方法、及びプログラム 図000002
  • 特許6832300-管理装置、管理方法、及びプログラム 図000003
  • 特許6832300-管理装置、管理方法、及びプログラム 図000004
  • 特許6832300-管理装置、管理方法、及びプログラム 図000005
  • 特許6832300-管理装置、管理方法、及びプログラム 図000006
  • 特許6832300-管理装置、管理方法、及びプログラム 図000007
  • 特許6832300-管理装置、管理方法、及びプログラム 図000008
  • 特許6832300-管理装置、管理方法、及びプログラム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832300
(24)【登録日】2021年2月3日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】管理装置、管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20210215BHJP
   G06Q 30/02 20120101ALI20210215BHJP
【FI】
   G06Q50/02
   G06Q30/02 310
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-9084(P2018-9084)
(22)【出願日】2018年1月23日
(65)【公開番号】特開2019-128733(P2019-128733A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 尚史
【審査官】 松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−078238(JP,A)
【文献】 特開2005−151851(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/178097(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106212243(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜生産場の管理者の連絡先と前記野菜生産場が供給する苗の需要者の連絡先とを管理する連絡先管理部と、
前記苗の出荷前に定められた特定の時点における前記野菜生産場の前記苗の供給可能量を取得する供給量取得部と、
前記時点における前記苗の需要者が有する苗生育装置の使用状況を取得する使用状況取得部と、
前記苗生育装置の使用状況に基づいて、前記時点における前記苗の需要量の推定値である需要予測量を取得する需要量取得部と、
前記供給可能量と前記需要予測量との乖離度を取得する乖離度取得部と、
前記乖離度に応じて定められた複数の通知の中から、前記乖離度取得部が取得した乖離度に該当する通知を、前記管理者と前記需要者との少なくともいずれか一方の連絡先に通知する通知部と、
を備える管理装置。
【請求項2】
前記通知部は、前記需要予測量に対する前記供給可能量が第1の閾値を下回る場合、前記需要者の連絡先に前記苗の出荷予定日を通知する、
請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記通知部は、前記需要予測量に対する前記供給可能量が第1の閾値を下回る場合、前記管理者の連絡先に前記苗の生育を早めることを促すメッセージを通知する、
請求項1又は2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記通知部は、前記需要予測量に対する前記供給可能量が第2の閾値を上回る場合、前記需要者の連絡先に前記苗の引き取りを促すメッセージを通知する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記通知部は、前記需要予測量に対する前記供給可能量が第2の閾値を上回る場合、前記管理者の連絡先に前記苗の生育を遅らせることを促すメッセージを通知する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記使用状況取得部は、前記需要者の苗生育装置の空きロット数を、前記使用状況として取得する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項7】
前記苗の需要量の変動履歴を記録する需要データベースをさらに備え、
前記需要量取得部は、前記需要データベースを参照して取得した過去における前記時点と同時期の需要量と、前記使用状況取得部が取得した使用状況とに基づいて、前記苗の需要量を予測する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項8】
プロセッサが、
野菜生産場が供給する苗の出荷前に定められた特定の時点において前記野菜生産場における前記苗の供給可能量を取得するステップと、
前記時点において前記苗の需要者が有する苗生育装置の使用状況を取得するステップと、
前記苗生育装置の使用状況に基づいて、前記時点における前記苗の需要量の推定値である需要予測量を取得するステップと、
前記供給可能量と前記需要予測量との乖離度を取得するステップと、
前記乖離度に応じて定められた複数の通知の中から、取得した乖離度に該当する通知を、前記野菜生産場の管理者と前記需要者との少なくともいずれか一方の連絡先に通知するステップと、
を実行する管理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
野菜生産場が供給する苗の出荷前に定められた特定の時点において前記野菜生産場における前記苗の供給可能量を取得する機能と、
前記時点において前記苗の需要者が有する苗生育装置の使用状況を取得する機能と、
前記苗生育装置の使用状況に基づいて、前記時点における前記苗の需要量の推定値である需要予測量を取得する機能と、
前記供給可能量と前記需要予測量との乖離度を取得する機能と、
前記乖離度に応じて定められた複数の通知の中から、取得した乖離度に該当する通知を、前記野菜生産場の管理者と前記需要者との少なくともいずれか一方の連絡先に通知する機能と、
を実現させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然条件の変動に左右されない農業環境づくりとして、農作物の栽培に必要な光、水、肥料、及び温度等を制御可能な野菜栽培技術が実用化されつつある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−143175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、家庭で手軽に栽培するための小型化された水耕栽培キッドも実用化されつつある。農作物の需要者は、苗の生産場で育てられた野菜等の苗の受取場所において苗を受け取り、自宅に持ち帰る。需要者である水耕栽培キッドのユーザは、自宅に設置された苗水耕栽培キッドに苗を移して生育する。
【0005】
上述の技術を用いて苗を栽培する際、野菜品種や栽培環境によって、成長スピードが異なることや、顧客の受領日が不定なことから、最適譲渡サイズをターゲット日に合わせて育てることが困難となる。そのため、野菜生産場で生育する苗の譲渡可能数と、ユーザによる苗の需要数とが乖離することも起こり得る。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、野菜生産場で生育する苗の譲渡可能数と、ユーザによる苗の需要数との乖離を軽減させるための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、管理装置である。この装置は、野菜生産場の管理者の連絡先と前記野菜生産場が供給する苗の需要者の連絡先とを管理する連絡先管理部と、前記苗の出荷前に定められた特定の時点における前記野菜生産場の前記苗の供給可能量を取得する供給量取得部と、前記時点における前記苗の需要者が有する苗生育装置の使用状況を取得する使用状況取得部と、前記苗生育装置の使用状況に基づいて、前記時点における前記苗の需要量の推定値である需要予測量を取得する需要量取得部と、前記供給可能量と前記需要予測量との乖離度を取得する乖離度取得部と、前記乖離度に応じて定められた複数の通知の中から、前記乖離度取得部が取得した乖離度に該当する通知を、前記管理者と前記需要者との少なくともいずれか一方の連絡先に通知する通知部と、を備える。
【0008】
前記通知部は、前記需要予測量に対する前記供給可能量が第1の閾値を下回る場合、前記需要者の連絡先に前記苗の出荷予定日を通知してもよい。
【0009】
前記通知部は、前記需要予測量に対する前記供給可能量が第1の閾値を下回る場合、前記管理者の連絡先に前記苗の生育を早めることを促すメッセージを通知してもよい。
【0010】
前記通知部は、前記需要予測量に対する前記供給可能量が第2の閾値を上回る場合、前記需要者の連絡先に前記苗の引き取りを促すメッセージを通知してもよい。
【0011】
前記通知部は、前記需要予測量に対する前記供給可能量が第2の閾値を上回る場合、前記管理者の連絡先に前記苗の生育を遅らせることを促すメッセージを通知してもよい。
【0012】
前記使用状況取得部は、前記需要者の苗生育装置の空きロット数を、前記使用状況として取得してもよい。
【0013】
前記管理装置は、前記苗の需要量の変動履歴を記録する需要データベースをさらに備えてもよく、前記需要量取得部は、前記需要データベースを参照して取得した過去における前記時点と同時期の需要量と、前記使用状況取得部が取得した使用状況とに基づいて、前記苗の需要量を予測してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様は、管理方法である。この方法において、プロセッサが、野菜生産場が供給する苗の出荷前に定められた特定の時点において前記野菜生産場における前記苗の供給可能量を取得するステップと、前記時点において前記苗の需要者が有する苗生育装置の使用状況を取得するステップと、前記苗生育装置の使用状況に基づいて、前記時点における前記苗の需要量の推定値である需要予測量を取得するステップと、前記供給可能量と前記需要予測量との乖離度を取得するステップと、前記乖離度に応じて定められた複数の通知の中から、取得した乖離度に該当する通知を、前記野菜生産場の管理者と前記需要者との少なくともいずれか一方の連絡先に通知するステップと、を実行する。
【0015】
本発明の第3の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、野菜生産場が供給する苗の出荷前に定められた特定の時点において前記野菜生産場における前記苗の供給可能量を取得する機能と、前記時点において前記苗の需要者が有する苗生育装置の使用状況を取得する機能と、前記苗生育装置の使用状況に基づいて、前記時点における前記苗の需要量の推定値である需要予測量を取得する機能と、前記供給可能量と前記需要予測量との乖離度を取得する機能と、前記乖離度に応じて定められた複数の通知の中から、取得した乖離度に該当する通知を、前記野菜生産場の管理者と前記需要者との少なくともいずれか一方の連絡先に通知する機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、野菜生産場で生育する苗の譲渡可能数と、ユーザによる苗の需要数との乖離を軽減させるための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る管理システムの全体構成を模式的に示す図である。
図2】実施の形態に係る管理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態に係る苗生育装置に備えられたロット及びセンサを説明するための図である。
図4】実施の形態に係る通知部が乖離度に応じて実行するアクションを格納するアクションデータベースを模式的に示す図である。
図5】苗が需要過多の場合に通知部が通知する通知画面を示す図である。
図6】苗が供給過多の場合に通知部が通知する通知画面を示す図である。
図7】実施の形態に係る過去における苗の需要量の変動履歴を記録する需要データベースのデータ構造を模式的に示す図である。
図8】実施の形態に係る管理装置が実行する管理処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態の概要>
図1は、実施の形態に係る管理システムSの全体構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る管理システムSは、管理装置1、野菜生産場F、管理者端末Tm、アクセスポイントA、及び需要者端末Tuを含み、これらはネットワークNを介して互いに通信可能な態様で接続している。アクセスポイントAは需要者宅Cに設置されており、同じく需要者宅Cに設置されている苗生育装置Hと通信可能である。需要者端末Tuは、需要者Uが所持する端末であり、例えばスマートフォンやタブレットPC(Personal Computer)等の通信端末である。
【0019】
野菜生産場Fは、野菜等の植物の苗を育てる生産場である。図1は、野菜生産場Fが人工光源を用いた水耕栽培によって野菜の苗を育てる植物工場である場合の例を示している。野菜生産場Fにおいて育てられた苗は受取場所Bに運ばれる。なお、野菜生産場Fは植物工場である場合に限られず、ハウス栽培や露地栽培によって植物を栽培するのであってもよい。
【0020】
需要者Uは、受取場所Bにおいて野菜の苗を受け取り、需要者宅Cに持ち帰る。需要者Uは、需要者宅Cに設置された苗生育装置Hに苗を移して生育する。苗生育装置Hは、需要者宅Cに設置できるように小型化された水耕栽培キッドである。需要者Uは、受取場所Bで受け取った野菜の苗を需要者宅C内の苗生育装置Hで育成することにより、自分の食べたいタイミングかつ新鮮な状態で野菜を食べることができる。
【0021】
苗生育装置HはIoT(Internet Of the Thing)技術を用いた種々のセンサを備えている。管理装置1は、苗生育装置Hが備えるセンサが取得した情報を、アクセスポイントAを介して取得することができる。
【0022】
以下、図1を参照しながら実施の形態に係る管理システムSにおける処理の流れの概要を(1)から(5)の順に説明するが、その説明は図1中の(1)から(5)の数字と対応する。
【0023】
(1)管理装置1は、野菜生産場Fから、苗の供給可能量を取得する。野菜生産場Fにおける苗の供給可能量は、例えば野菜生産場Fの管理者Mが定期的に目視で確認した苗の生育状況から推測してもよい。あるいは、カメラ等で苗を撮影し、機械学習等で作成した発育状況確認エンジンを用いて画像解析技術によって苗の供給可能量を取得してもよい。
【0024】
(2)管理装置1は、苗生育装置Hから、苗生育装置Hの使用状況を取得する。苗生育装置Hは、苗を備えて生育するための複数の開口部を有するロットを備えている。管理装置1は、苗生育装置Hから、ロットの使用率を使用状況として取得する。
【0025】
(3)管理装置1は、管理装置1が管理する複数の苗生育装置Hのそれぞれから取得した使用状況に基づいて、苗の出荷時における苗の需要予測量を推定する。
(4)管理装置1は、野菜生産場Fにおける苗の供給可能量と苗の需要予測量とを比較し、供給可能量と需要予測量との乖離度を取得する。
【0026】
(5)管理装置1は、取得した乖離度に応じたアクションを実行する。具体的には、管理装置1は、供給可能量が需要予測量を下回る場合には、野菜生産場Fの管理者Mに苗の成長を促進させることを示すメッセージを通知する。これにより、管理者Mは、苗の出荷時までに苗の出荷量を増加させることができる。また、管理装置1は、供給可能量が需要予測量を上回る場合には、需要者Uに苗の引き取りを促すメッセージを通知する。これにより、苗の出荷時に受取場所Bに足を運ぶ需要者Uを増加させることが期待できる。
【0027】
このように、実施の形態に係る管理装置1は、野菜生産場で生育する苗の譲渡可能数と、ユーザによる苗の需要数との乖離を軽減させることができる。
【0028】
<実施の形態に係る管理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る管理装置1の機能構成を模式的に示す図である。管理装置1は、記憶部10と制御部11とを備える。
【0029】
記憶部10は、管理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や管理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照されるデータベースを格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0030】
制御部11は、管理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することによって連絡先管理部110、供給量取得部111、使用状況取得部112、需要量取得部113、乖離度取得部114、及び通知部115として機能する。
【0031】
なお、図2は、管理装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、管理装置1は、例えばクラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部11を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0032】
連絡先管理部110は、野菜生産場Fの管理者Mの連絡先と野菜生産場Fが供給する苗の需要者Uの連絡先とを管理する。管理者Mの連絡先及び需要者Uの連絡先とは、それぞれ管理者M及び需要者Uのメールアドレス、電話番号、住所等の情報である。これらの連絡先を格納する連絡先データベース(不図示)は記憶部10に保持されており、連絡先管理部110は連絡先データベースを管理している。
【0033】
供給量取得部111は、苗の出荷前に定められた特定の時点における野菜生産場Fの苗の供給可能量を取得する。野菜生産場Fにおいては、例えばレタスやサラダ菜、ルッコラ等の葉物、バジルやセージ、ミント等のハーブ類等の苗が育てられている。これらは、種を植えてから食用可能となるまでにおおむね1か月ほどかかる。野菜生産場Fでは、種が発芽してから2週間ほど育った苗を受取場所Bに出荷する。
【0034】
「苗の出荷前に定められた特定の時点」とは、供給量取得部111が苗の出荷可能量(すなわち苗の供給可能量)を取得するタイミングとして定められた日時情報であり、種が植えられてから出荷までの間に定められた複数の日時情報である。日時情報は、苗の成長速度、苗の需要予測等を考慮して実験により定めればよいが、例えば毎夜0時である。
【0035】
苗の成長の度合いは、毎日管理者M又は専門の作業者によって確認され、管理者端末Tmに入力されている。供給量取得部111は、管理者端末Tmから苗の成長の度合いを取得することによって、その時の苗の出荷可能量及びその後の出荷可能量の見込み量を取得することができる。
【0036】
なお、上述したように、カメラ等で苗を撮影し、機械学習等で作成した発育状況確認エンジンを用いて画像解析技術によって分析した苗の成長速度に基づいて、供給量取得部111は苗の供給可能量を取得してもよい。
【0037】
使用状況取得部112は、特定の時点における苗の需要者Uが有する苗生育装置Hの使用状況を取得する。記憶部10には、管理装置1が通知を管轄する複数の苗生育装置Hと通信するための情報が格納されている。使用状況取得部112は、ネットワークNを介して管理装置1が通知を管轄する複数の苗生育装置Hから、それぞれ使用状況を取得する。使用状況取得部112は、取得した使用状況を統合することにより、ネットワークNを介して管理装置1が通知を管轄する苗生育装置Hの需要者U全体としての使用状況を取得する。
【0038】
なお、使用状況取得部112は、需要者Uの苗生育装置Hの空きロット数を、使用状況として取得する。
【0039】
図3は、実施の形態に係る苗生育装置Hに備えられたロットL及びセンサOを説明するための図である。図3において符号Lが付された楕円は植物の種を植えるためのロットである。煩雑となるためすべてのロットには符号を付していないが、図3において符号Lが付された楕円と同形状の楕円はロットLである。図3に示す苗生育装置Hは15個のロットLを備えている。
【0040】
センサOは例えば光学センサであり、各ロットLに隣接して配置される。センサOは、各ロットLに種又は苗が存在するか否かを検出する。煩雑となるためすべてのロットには符号を付していないが、図3において符号Oが付された矩形と同形状の矩形はセンサOである。各OはIoTセンサであり、検出した情報をネットワークNを介して管理装置1に送信することができる。
【0041】
需要量取得部113は、苗生育装置Hの使用状況に基づいて、特定の時点における苗の需要量の推定値である需要予測量を取得する。具体的には、需要量取得部113は、各苗生育装置HにおけるロットLの空き状況から苗の需要を予測する。また、需要量取得部113は、需要者Uの過去の野菜苗消費履歴に基づくことにより、ロットLの確認時点では空いていなくても、需要予測をすべき時点において空いていると推定できるロットLであれば、苗の需要を予測に反映してもよい。なお、需要者Uの過去の野菜苗消費履歴は、使用状況取得部112が取得した空きロット数の変遷を需要者U毎に紐づけて記憶部10に記憶させることで得ることができる。
【0042】
乖離度取得部114は、供給量取得部111が取得した苗の供給可能量と、需要量取得部113が取得した苗の需要予測量との乖離度を取得する。通知部115は、苗の供給可能量と需要予測量との乖離度に応じて定められた複数の通知の中から、乖離度取得部114が取得した乖離度に該当する通知を、管理者Mと需要者Uとの少なくともいずれか一方の連絡先に通知する。乖離度に応じて定められた複数の通知には、それぞれ乖離度を小さくするためのアクションが記載されている。これにより、実施の形態に係る管理装置1は、野菜生産場Fで生育する苗の譲渡可能数と、需要者Uによる苗の需要数との乖離を軽減させることができる。
【0043】
図4は、実施の形態に係る通知部115が乖離度に応じて実行するアクションを格納するアクションデータベース100を模式的に示す図である。図4において、苗の供給可能量と需要予測量との乖離度Dは、苗の需要予測量に対する苗の供給可能量の差(すなわち、乖離度D=供給可能量―需要予測量)で定義されている。このため、乖離度Dが正の値の場合、需要予測量よりも供給可能量が多い状態である供給過多を示すことになる。反対に、乖離度Dが負の値の場合、需要予測量よりも供給可能量が少ない状態である需要過多を示すことになる。
【0044】
通知部115は、苗の需要予測量に対する供給可能量が第1の閾値Th1を下回る場合、すなわち苗の需要予測量よりも供給可能量が少ない状態である需要過多の状態の場合、需要者Uの連絡先に苗の出荷予定日を通知する。また、通知部115は、苗の需要予測量に対する供給可能量が第1の閾値Th1を下回る場合、管理者Mの連絡先に苗の生育を早めることを促すメッセージを通知してもよい。
【0045】
ここで「苗の出荷予定日」は、苗の供給可能量が苗の需要予測量と拮抗することが推測される予定の日である。通知部115が苗の出荷予定日を需要者Uに通知することにより、出荷予定日前に受取場所Bに足を運ぶ需要者Uの数を減少させることが期待できる。また、通知部115が管理者Mに苗の成長促進を促すことにより、出荷予定日前における苗の供給量を増加することができる。
【0046】
また、「第1の閾値Th1」は、通知部115が苗の需要過多に備えたアクションを実行するか否かを判定するために参照する「需要過多時アクション判定用閾値」である。第1の閾値Th1の具体的な値は、苗の成長速度や需要者Uの引き取りパターン等を考量して実験により定めればよいが、例えば需要予測量の−5%である。すなわち、乖離度Dが負の値であり、その絶対値が需要予測量の5%を超える場合、通知部115は需要者Uの連絡先に苗の出荷予定日を通知したり、管理者Mに苗の成長促進を促すメッセージを送信したりする。
【0047】
図5(a)−(b)は、実施の形態に係る通知部115が通知する通知画面の一例を模式的に示す図である。具体的には、図5(a)−(b)は、苗が需要過多の場合に通知部115が通知する通知画面を示す図である。これらの通知画面はアクションデータベース100に格納されている。
【0048】
より具体的には、図5(a)は苗が需要過多の場合に通知部115が需要者Uに通知する通知画面の一例を示しており、図5(b)は苗が需要過多の場合に通知部115が管理者Mに通知する通知画面の一例を示している。図5(a)に示すように、パクチーの苗が需要過多の場合に、通知部115はパクチーの情報とともに需要者Uに出荷予定日を通知している。これにより、出荷予定日前に受取場所Bに足を運ぶ需要者Uの数を抑えることができる。
【0049】
図5(b)に示すように、サラダ菜の苗が需要過多の場合に、通知部115は管理者Mにサラダ菜の苗の成長を促進する方法を具体的に通知している。これにより、通知を受け取った管理者Mは、迅速にサラダ菜の苗の成長促進を実施することができる。
【0050】
通知部115は、苗の需要予測量に対する供給可能量が第2の閾値Th2を上回る場合、すなわち苗の需要予測量よりも供給可能量が多い状態である供給過多の状態の場合、需要者Uの連絡先に苗の引き取りを促すメッセージを通知する。また、通知部115は、苗の需要予測量に対する供給可能量が第2の閾値Th2を上回る場合、管理者Mの連絡先に前記苗の生育を遅らせることを促すメッセージを通知してもよい。
【0051】
ここで、「第2の閾値Th2」は、通知部115が苗の供給過多に備えたアクションを実行するか否かを判定するために参照する「供給過多時アクション判定用閾値」である。第2の閾値Th2の具体的な値は、苗の成長速度や需要者Uの引き取りパターン等を考量して実験により定めればよいが、例えば需要予測量の+5%である。すなわち、乖離度Dが正の値であり、その絶対値が需要予測量の5%を超える場合、通知部115は需要者Uの連絡先に苗の出荷予定日を通知したり、管理者Mに苗の成長を遅らせるメッセージを送信したりする。
【0052】
図6(a)−(b)は、実施の形態に係る通知部115が通知する通知画面の別例を模式的に示す図である。具体的には、図6(a)−(b)は、苗が供給過多の場合に通知部115が通知する通知画面を示す図である。これらの通知画面も、アクションデータベース100に格納されている。
【0053】
より具体的には、図6(a)は苗が供給過多の場合に通知部115が需要者Uに通知する通知画面の一例を示しており、図6(b)は苗が供給過多の場合に通知部115が管理者Mに通知する通知画面の一例を示している。図6(a)に示すように、サラダ菜の苗が供給過多の場合に、通知部115はサラダ菜の情報とともに需要者Uに苗の引き取りを促すメッセージを通知している。これにより、受取場所Bに足を運ぶ需要者Uの数を上昇させることができる。
【0054】
図6(b)に示すように、バジルの苗が供給過多の場合に、通知部115は管理者Mにバジルの苗の成長を遅くする方法を具体的に通知している。これにより、通知を受け取った管理者Mは、迅速にバジルの苗の成長を遅くする処置を講じることができる。
【0055】
以上、需要量取得部113が苗生育装置Hの使用状況に基づいて苗の需要予測量を取得する場合について説明した。需要量取得部113は、苗生育装置Hの使用状況に加えて、予測時点と同時期の過去における需要量にもさらに基づいて、苗の需要予測量を取得してもよい。これを実現するために、記憶部10は、苗の需要量の変動履歴を記録する需要データベースを備えている。
【0056】
図7は、実施の形態に係る過去における苗の需要量の変動履歴を記録する需要データベース101のデータ構造を模式的に示す図である。図7に示すように、需要データベース101には、各年の月毎の需要量が、苗の種類毎に格納されている。図7には、サラダ菜の苗について、2009年から2016年までの各月の需要量の履歴が示されている。
【0057】
需要量取得部113は、需要データベース101を参照して取得した特定の時点と同時期の過去における需要量と、使用状況取得部112が取得した使用状況とに基づいて、苗の需要量を予測する。
【0058】
例えば、需要量取得部113は、使用状況取得部112が取得した使用状況のみから取得した需要予測量に対して過去の需要量が小さければ、需要予測量を下方修正する。反対に、需要量取得部113は、使用状況取得部112が取得した使用状況のみから取得した需要予測量に対して過去の需要量が大きければ、需要予測量を情報修正する。このように、需要量取得部113は需要予測量の予測の根拠を増やすことにより、需要予測量の精度を高めることができる。
【0059】
<実施の形態に係る管理装置1が実行する管理処理の処理フロー>
図8は、実施の形態に係る管理装置1が実行する管理処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば管理装置1が起動したときに開始する。
【0060】
供給量取得部111は、野菜生産場Fが供給する苗の出荷前に定められた特定の時点において野菜生産場Fにおける前記苗の供給可能量を取得する(S2)。使用状況取得部112は、特定の時点において苗の需要者Uが有する苗生育装置Hの使用状況を取得する(S4)。
【0061】
需要量取得部113は、苗生育装置Hの使用状況に基づいて、特定の時点における苗の需要量の推定値である需要予測量を取得する(S6)。乖離度取得部114は、苗の供給可能量と前記需要予測量との乖離度Dを取得する(S8)。
【0062】
通知部115は、需要データベース101を参照して、乖離度Dに応じて定められた複数の通知の中から乖離度取得部114が取得した乖離度Dに該当する通知を、野菜生産場Fの管理者Mと需要者Uとの少なくともいずれか一方の連絡先に通知する(S10)。通知部115が通知を実行すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0063】
<実施の形態に係る管理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る管理装置1によれば、野菜生産場Fで生育する苗の譲渡可能数と、需要者Uによる苗の需要数との乖離を軽減させるための技術を提供することができる。
【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0065】
<第1の変形例>
上記では、野菜生産場Fが苗の成長促進又は成長を遅らせための機能を搭載している場合について説明した。ここで、需要者Uの家に設置される苗生育装置Hが苗の成長をコントロールするための機能を搭載していてもよい。
【0066】
この場合、例えば需要者Uは、野菜収穫の希望時期を苗生育装置Hに設定することができる。苗生育装置Hは、需要者Uが設定した時期に収穫時期をコントロールできる場合には、照明、液体肥料の濃度、及び温度の少なくともいずれか一つを制御する。また、苗生育装置Hは、需要者Uが設定した時期に収穫時期をコントロールできない場合(例えば、設定した時期が早すぎる場合や遅すぎる場合)には、その旨を需要者Uに通知する。これにより、需要者Uは野菜の収穫時期をコントロールすることができる。
【0067】
また、苗生育装置Hが苗の成長をコントロールするための機能を搭載している場合において、苗の供給過多又は需要過多の場合には、苗の成長促進又は成長を遅らせる旨のメッセージを需要者Uの連絡先に通知してもよい。この場合、管理装置1は、需要者Uの承諾が得られることを条件として苗生育装置Hにおける苗の成長をコントロールすることにより、乖離度Dを小さくすることができる。
【0068】
<第2の変形例>
上記では、使用状況取得部112は、苗生育装置Hに備えられたセンサOを用いて、苗生育装置Hの空きロット数を取得する場合について説明した。これに替えて、あるいはこれに加えて、使用状況取得部112は、ロットLを被写体に含む画像を撮像して、画像処理によって空きロット数を取得してもよい。
【0069】
この場合、苗生育装置Hに図示しない撮像素子を設け、ロットLを被写体に含む画像を撮像することによって実現できる。なお、使用状況取得部112は、例えばニューラルネットワーク等の既知の機械学習を用いて作成した空きロット認識エンジンを用いることで、画像から空きロット数を取得することができる。
【符号の説明】
【0070】
1・・・管理装置
10・・・記憶部
100・・・アクションデータベース
101・・・需要データベース
11・・・制御部
110・・・連絡先管理部
111・・・供給量取得部
112・・・使用状況取得部
113・・・需要量取得部
114・・・乖離度取得部
115・・・通知部
F・・・野菜生産場
H・・・苗生育装置
O・・・センサ
S・・・管理システム
Tm・・・管理者端末
Tu・・・需要者端末

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8