(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832312
(24)【登録日】2021年2月3日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】誘導加熱コイル
(51)【国際特許分類】
H05B 6/44 20060101AFI20210215BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20210215BHJP
C21D 1/42 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
H05B6/44
H05B6/10 371
C21D1/42 J
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-109022(P2018-109022)
(22)【出願日】2018年6月6日
(65)【公開番号】特開2019-212538(P2019-212538A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219004
【氏名又は名称】島田理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松原 佑輔
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−238995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/44
C21D 1/42
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱により被加熱物を加熱する誘導加熱コイルにおいて、
被加熱物を配置可能な間隔を開けて配置された第1の誘導加熱コイル部と第2の誘導加熱コイル部とを有し、
前記第1の誘導加熱コイル部と第2の誘導加熱コイル部とはそれぞれ螺旋形状を備え、
前記第1の誘導加熱コイル部における前記螺旋形状の延長方向と前記第2の誘導加熱コイル部における前記螺旋形状の延長方向との間に前記被加熱物を配置し、
前記第1の誘導加熱コイル部と前記第2の誘導加熱コイル部とに通電することにより、前記第1の誘導加熱コイル部と前記第2の誘導加熱コイル部とに流れる高周波電流によって前記被加熱物の周面に沿って同一方向に誘導電流が流れるようにした
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱コイルにおいて、前記第1の誘導加熱コイル部と前記第2の誘導加熱コイル部とは、同じ巻き方向の螺旋形状に巻回されている
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項3】
請求項1に記載の誘導加熱コイルにおいて、前記第1の誘導加熱コイル部と前記第2の誘導加熱コイル部とは、反対の巻き方向の螺旋形状に巻回されている
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項4】
請求項2に記載の誘導加熱コイルにおいて、
前記第1の誘導加熱コイル部の前記螺旋形状の延長方向における一方側の端部と前記第2の誘導加熱コイル部の前記螺旋形状の延長方向における前記一方側の端部とは反対側の他方側の端部とが接続され、
前記第1の誘導加熱コイル部の前記螺旋形状における前記他方側の端部と前記第2の誘導加熱コイル部の前記螺旋形状における前記一方側の端部とが、前記第1の誘導加熱コイル部と前記第2の誘導加熱コイル部とへ高周波電流を通電する高周波電流源に接続されている
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項5】
請求項3に記載の誘導加熱コイルにおいて、
前記第1の誘導加熱コイル部の前記螺旋形状の延長方向における一方側の端部と前記第2の誘導加熱コイル部の前記螺旋形状の延長方向における前記一方側の端部とが接続され、
前記第1の誘導加熱コイル部の前記螺旋形状における前記一方側の端部とは反対側の他方側の端部と前記第2の誘導加熱コイル部の前記螺旋形状における前記他方端部とが、前記第1の誘導加熱コイル部と前記第2の誘導加熱コイル部とへ高周波電流を通電する高周波電流源に接続されている
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項6】
請求項4または5のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルにおいて、
前記第1の誘導加熱コイル部と前記第2の誘導加熱コイル部とを上方側または下方側のいずれか一方で接続した
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項7】
請求項2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルにおいて、
前記螺旋形状は、略四角形状の領域が螺旋状に連続している
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項8】
請求項7に記載の誘導加熱コイルにおいて、
前記第1の誘導加熱コイル部と前記第2の誘導加熱コイル部とは、互いの前記略四角形状における辺の領域が対向するように配置されている
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項9】
請求項2、3、4、5、6、7または8のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルにおいて、
前記螺旋形状は、常螺旋形状または平行巻き螺旋形状である
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項10】
請求項2、3、4、5、6、7、8または9のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルにおいて、
前記螺旋形状の内径側に、磁性材料を配置した
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱コイルに関する。さらに詳細には、本発明は、被加熱物を均一に加熱することが可能な誘導加熱コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、誘導加熱によるろう付け作業などのように、誘導加熱コイルに対して被加熱物を差し込んで誘導加熱する際に用いる誘導加熱コイルとしては、所謂、鞍型誘導加熱コイル(なお、「鞍型誘導加熱コイル」は「ヘアピン型誘導加熱コイル」とも称される。)が用いられている。
【0003】
ここで、従来の鞍型誘導加熱コイルを用いて被加熱物を誘導加熱する際において、
図1に示すように、高周波電流源100に接続された鞍型誘導加熱コイル200の前端部領域Aにおいて円柱形状の被加熱物300を誘導加熱する場合について検討する。
【0004】
この場合には、鞍型誘導加熱コイル200の上方側コイル200aと下方側コイル200bとにそれぞれ対向する被加熱物300の軸方向に沿って延長する周面部にはループする誘導電流が発生し、被加熱物300を誘導加熱することができる。
【0005】
その一方で、被加熱物300の左右両側面部には、鞍型誘導加熱コイル200の上方側コイル200aと下方側コイル200bとから互いに相殺する向きの誘導電流が流れるため、被加熱物300は直接的に誘導加熱されない。
【0006】
即ち、この
図1に示すように、鞍型誘導加熱コイル200の前端部領域Aにおいて被加熱物300を誘導加熱する場合においては、被加熱物300の軸方向に沿って延長する周面部は直接的に誘導加熱されるが、その一方で、被加熱物300左右両側面部が直接的に誘導加熱されないので、被加熱物300の断面方向における加熱分布が均一にはならないという問題点があった。
【0007】
次に、従来の鞍型誘導加熱コイルを用いて被加熱物を誘導加熱する際において、
図2に示すように、高周波電流源100に接続された鞍型誘導加熱コイル200の懐部領域Bにおいて被加熱物300を誘導加熱する場合について検討する。
【0008】
この場合には、被加熱物300の左右両側端部において対向する誘導電流が流れるため、被加熱物300の中央部は直接的に誘導加熱されない。
【0009】
このため、
図2に示すように、鞍型誘導加熱コイル200の懐部領域Bにおいて被加熱物300を誘導加熱する場合においても、被加熱物300の加熱分布が均一にはならないという問題点があった。
【0010】
なお、上記した従来の鞍型誘導加熱コイルを用いて被加熱物の加熱分布を均一にしようとすると、鞍型誘導加熱コイルに対して被加熱物を回転するなどのために、鞍型誘導加熱コイルと被加熱物との位置関係を相対的に移動するための構成を設けて当該移動作業を行う必要があり、構成ならびに作業が繁雑なるという新たな問題点を招来するものとなっていた。
【0011】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記したような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、誘導加熱コイルに対して被加熱物を差し込んで誘導加熱することが可能であるとともに、加熱分布が均一となるように被加熱物を均一に誘導加熱することができるようにした誘導加熱コイルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、被加熱物を配置可能な間隔を開けて、同一方向に高周波電流が流れる第1の誘導加熱コイル部と第2の誘導加熱コイル部とを配置するようにしたものである。
【0014】
従って、本発明によれば、同一方向に高周波電流が流れる第1の誘導加熱コイル部と第2の誘導加熱コイル部との間に被加熱物を配置することで、当該被加熱物の断面周囲方向に均一かつ同じ方向に回転する誘導電流を流すことができるようになるので、当該被加熱物を均一に加熱して加熱分布を均一にすることができる。
【0015】
また、本発明によれば、第1の誘導加熱コイル部と第2の誘導加熱コイル部との間に被加熱物を配置可能な間隔が開けられているので、第1の誘導加熱コイル部と第2の誘導加熱コイル部との間に被加熱物を差し込んで配置することができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、誘導加熱コイルと被加熱物との位置関係を相対的に移動することなく当該被加熱物を均一に加熱して加熱分布を均一にすることができるので、構成が簡潔であるとともに作業性もよい。
【0017】
即ち、本発明は、誘導加熱により被加熱物を加熱する誘導加熱コイルにおいて、被加熱物を配置可能な間隔を開けて
配置された第1の誘導加熱コイル部と第2の誘導加熱コイル部と
を有し、上記第1の誘導加熱コイル部と第2の誘導加熱コイル部とはそれぞれ螺旋形状を備え、上記第1の誘導加熱コイル部における上記螺旋形状の延長方向と上記第2の誘導加熱コイル部における上記螺旋形状の延長方向との間に上記被加熱物を配置し、上記第1の誘導加熱コイル部と上記第2の誘導加熱コイル部とに通電することにより、上記第1の誘導加熱コイル部と上記第2の誘導加熱コイル部とに流れる高周波電流によって上記被加熱物の周面に沿って同一方向に誘導電流が流れるようにしたものである。
【0018】
また、本発明は、上記した本発明において、上記第1の誘導加熱コイル部と上記第2の誘導加熱コイル部とは、同じ巻き方向の螺旋形状に巻回されているようにしたものである。
【0019】
また、本発明は、上記した本発明において、上記第1の誘導加熱コイル部と上記第2の誘導加熱コイル部とは、反対の巻き方向の螺旋形状に巻回されているようにしたものである。
【0020】
また、本発明は、上記した本発明において、上記第1の誘導加熱コイル部の上記螺旋形状の延長方向における一方側の端部と上記第2の誘導加熱コイル部の上記螺旋形状の延長方向における上記一方側の端部とは反対側の他方側の端部とが接続され、上記第1の誘導加熱コイル部の上記螺旋形状における上記他方側の端部と上記第2の誘導加熱コイル部の上記螺旋形状における上記一方側の端部とが、上記第1の誘導加熱コイル部と上記第2の誘導加熱コイル部とへ高周波電流を通電する高周波電流源に接続されているようにしたものである。
【0021】
また、本発明は、上記した本発明において、上記第1の誘導加熱コイル部の上記螺旋形状の延長方向における一方側の端部と上記第2の誘導加熱コイル部の上記螺旋形状の延長方向における上記一方側の端部とが接続され、上記第1の誘導加熱コイル部の上記螺旋形状における上記一方側の端部とは反対側の他方側の端部と上記第2の誘導加熱コイル部の上記螺旋形状における上記他方端部とが、上記第1の誘導加熱コイル部と上記第2の誘導加熱コイル部とへ高周波電流を通電する高周波電流源に接続されているようにしたものである。
【0022】
また、本発明は、上記した本発明において、上記第1の誘導加熱コイル部と上記第2の誘導加熱コイル部とを上方側または下方側のいずれか一方で接続するようにしたものである。
【0023】
また、本発明は、上記した本発明において、上記螺旋形状は、略四角形状の領域が螺旋状に連続しているようにしたものである。
【0024】
また、本発明は、上記した本発明において、上記第1の誘導加熱コイル部と上記第2の誘導加熱コイル部とは、互いの上記略四角形状における辺の領域が対向するように配置されているようにしたものである。
【0025】
また、本発明は、上記した本発明において、上記螺旋形状は、常螺旋形状または平行巻き螺旋形状であるようにしたものである。
【0026】
また、本発明は、上記した本発明において、上記螺旋形状の内径側に、磁性材料を配置するようにしたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上説明したように構成されているので、誘導加熱コイルに対して被加熱物を差し込んで誘導加熱することが可能であるとともに、加熱分布が均一となるように被加熱物を均一に誘導加熱することができるようになるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、従来の鞍型誘導加熱コイルを用いて被加熱物を誘導加熱する際において、鞍型誘導加熱コイルの前端部領域において被加熱物を誘導加熱する場合を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図2は、従来の鞍型誘導加熱コイルを用いて被加熱物を誘導加熱する際において、鞍型誘導加熱コイルの懐部領域において被加熱物を誘導加熱する場合を模式的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態の一例による誘導加熱コイルを模式的に示す説明図であり、
図4のD矢視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態の一例による誘導加熱コイルを模式的に示す説明図であり、
図3のC矢視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態の他の例による誘導加熱コイルを模式的に示す説明図であり、
図6のF矢視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態の他の例による誘導加熱コイルを模式的に示す説明図であり、
図5のE矢視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態の他の例による誘導加熱コイルを模式的に示す説明図であり、
図8のK矢視図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態の他の例による誘導加熱コイルを模式的に示す説明図であり、
図7のJ矢視図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態の他の例による誘導加熱コイルを模式的に示す説明図であり、
図10のM矢視図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態の他の例による誘導加熱コイルを模式的に示す説明図であり、
図9のL矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による誘導加熱コイルの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0030】
図3ならびに
図4には、本発明の実施の形態の一例による誘導加熱コイルを模式的に示す説明図があらわされている。なお、
図3は
図4のD矢視図であり、
図4は
図3のC矢視図である。
【0031】
この誘導加熱コイル10は、高周波電流源30にそれぞれ接続された第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とを有して構成されている。
【0032】
ここで、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とは、それぞれ螺旋形状(ソレノイド形状)に巻回されて構成されていて、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とは略同一の形状を備えている。
【0033】
具体的には、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とはXZ平面において略四角形状を備えており、互いの略四角形状における辺の領域が対向するように第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とが配置されている。
【0034】
また、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とは、それぞれのソレノイド軸方向(延長方向)が前後方向に延長するとともに、上下方向における同一平面上において左右方向に所定の間隙Gを開けて配置されている。
【0035】
こうした第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とは、C矢視ならびにD矢視において同じ巻き方向の螺旋形状(ソレノイド形状)に巻回されている。
【0036】
ここで、間隙Gは、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との間に被加熱物20を下方から差し込み可能な裕度をもった寸法に設定されている。
【0037】
なお、本実施の形態においては、被加熱物20が円柱状の形状を備えた場合について示している。
【0038】
そして、誘導加熱コイル10においては、第1誘導加熱コイル部12の螺旋形状における延長方向の一方側の端部(前方側端部)の上方側に位置する前方側端部12aと、第2誘導加熱コイル部14の螺旋形状における上記一方側とは反対側の他方側の端部(後方側端部)の上方側に位置する後方側端部14aとが、接続部16により電気的に接続されている。
【0039】
また、誘導加熱コイル10においては、第1誘導加熱コイル部12の螺旋形状における上記一方側とは反対側の他方側の端部(後方側端部)の上方側に位置する後方側端部12bと高周波電流源30とが電気的に接続され、かつ、第2誘導加熱コイル部14の螺旋形状における上記一方側の端部(前方側端部)の上方側に位置する前方側端部14bと高周波電流源30とが電気的に接続されている。
【0040】
従って、誘導加熱コイル10に高周波電流源30から高周波電流が通電されると、C矢視ならびにD矢視において、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とに同一方向に高周波電流が流れる。
【0041】
以上の構成において、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との間に下方側から被加熱物20を差し込み、高周波電流源30により誘導加熱コイル10に高周波電流を通電する。
【0042】
なお、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とは上方側で接続されているので、被加熱物20を下方側から出し入れすることにより、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との間の間隙Gに被加熱物20を配置する際に制約を受けることがない。
【0043】
高周波電流源30により誘導加熱コイル10に高周波電流を通電すると、C矢視ならびにD矢視において、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とに同一方向の高周波電流が流れ、誘導電流が被加熱物20の周面に沿って同一方向、かつ、均一に流れることになる。
【0044】
即ち、左側の第1誘導加熱コイル部12と右側の第2誘導加熱コイル部14とから電磁誘導を受けて、被加熱物20の周面に沿って同一方向、かつ、均一に誘導電流が流れる。
【0045】
つまり、この被加熱物20においては、前後方向のいずれの位置においても同様の誘導電流が流れる。
【0046】
従って、誘導加熱コイル10によれば、被加熱物20を流れる誘導電流により、被加熱物20を均一に誘導加熱することができる。
【0047】
以上において説明したように、誘導加熱コイル10によれば、加熱分布が均一となるように被加熱物20を均一に誘導加熱することができるようになる。
【0048】
また、誘導加熱コイル10によれば、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とをXZ平面において略四角形状を備えるようにすればよいので、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とを容易に作製することができる。
【0049】
さらに、誘導加熱コイル10によれば、互いの略四角形状における辺の領域が対向するように第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とが配置されていて、その間に被加熱物20が差し込まれて電磁誘導されるので、被加熱物20を効率よく加熱することができるようになる。
【0050】
さらに、誘導加熱コイル110によれば、誘導加熱コイル10と被加熱物20との位置関係を相対的に移動することなく被加熱物20を均一に加熱して加熱分布を均一にすることができるので、構成が簡潔であるとともに作業性もよい。
【0051】
なお、上記した各実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。
【0052】
例えば、上記した各実施の形態は、以下の(1)乃至(8)に示すように変形するようにしてもよい。
【0053】
(1)上記した実施の形態においては、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とは、C矢視ならびにD矢視において、同じ巻き方向の螺旋形状(ソレノイド形状)に巻回されているようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、
図5および
図6に示すように、E矢視ならびにF矢視において、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との巻き方向が互いに反対方向(反対の巻き方向)の螺旋形状(ソレノイド形状)に巻回されて、螺旋形状(ソレノイド形状)の巻き方が間隙Gを挟んで対称形となるようにしてもよい。
【0054】
このようにした場合には、
図5ならびに
図6に示すように、第1誘導加熱コイル部12の後方側端部12bと第2誘導加熱コイル部14の後方側端部14aとを、接続部16により電気的に接続する。さらに、第1誘導加熱コイル部12の前方側端部12aと高周波電流源30とを電気的に接続し、かつ、第2誘導加熱コイル部14の前方側端部14bと高周波電流源30とを電気的に接続する。このように第1誘導加熱コイル部12、第2誘導加熱コイル部14、接続部16ならびに高周波電流源30を接続すると、誘導加熱コイル10に高周波電流源30から高周波電流が通電されたとき、E矢視ならびにF矢視において、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とに同一方向に高周波電流が流れる。
【0055】
(2)上記した実施の形態においては、単一の高周波電流源30により第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とに高周波電流を通電するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、誘導加熱コイル10において、接続部16を設けることなく、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とを電気的に絶縁して構成するとともに、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とに高周波電流を通電するための高周波電流源をそれぞれ設け、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とに対してそれぞれ設けた高周波電流源を同期して駆動して通電開始および通電停止を行うようにしてもよい。
【0056】
(3)上記した実施の形態においては、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とがXZ平面において略四角形状を備えているように構成したが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とがXZ平面において略円形形状を備えているように構成してもよいし、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とがXZ平面において略三角形状や略五角形以上の適宜の多角形状を備えているように構成してもよい。
【0057】
(4)上記した実施の形態においては、被加熱部20として円柱形状の被加熱物を加熱する場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、被加熱部20は適宜の多角柱形状でもよいし、その他の形状でもよい。
【0058】
(5)上記した実施の形態においては、接続部16により第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とを上方側で接続するように構成したが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とを下方側で接続するように構成してもよい。第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14とを下方側で接続した場合でも、被加熱物20を上方側から出し入れすることにより、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との間の間隙Gに被加熱物20を配置する際に制約を受けることがない。
【0059】
(6)上記した実施の形態においては、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との螺旋形状について常螺旋形状を示したが、これに限られるものではないことは勿論である。第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との螺旋形状は、例えば、
図7ならびに
図8に示すように、周状の一箇所のみで巻きの高さ(Y軸方向の位置)の変更があり、その他の部分の高さ(Y軸方向の位置)は一定に保たれている、所謂、平行巻き螺旋形状でもよい。要するに、本発明における螺旋形状とは、回転しながら回転面に垂直成分のある方向へ上昇する三次元曲線の形状全般を意味するものであって、特に限定されるものではない。
【0060】
(7)上記した実施の形態においては、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との螺旋形状の内径側に磁性材料を配置していないが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、
図9ならびに
図10に示すように、第1誘導加熱コイル部12の螺旋形状の内径側に鉄などの磁性材料よりなる四角柱形状体40を配置するとともに、第2誘導加熱コイル部14の螺旋形状の内径側に鉄などの磁性材料よりなる四角柱形状体42を配置するようにしてもよい。このように、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との螺旋形状の内径側に磁性材料を配置することにより、インダクタンスを大きくすることができる。なお、第1誘導加熱コイル部12と第2誘導加熱コイル部14との螺旋形状の内径側に配置する磁性材料の組成や形状や大きさなどは、
図9ならびに
図10を参照しながら上記において説明したものに限られるものではなく、任意の大きさや形状を適宜に選択すればよい。
【0061】
(8)上記した各実施の形態ならびに上記した(1)乃至(7)に示す各実施の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、誘導加熱によるろう付け作業などのように、誘導加熱コイルに対して被加熱物を差し込んで誘導加熱する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 誘導加熱コイル
12 第1誘導加熱コイル(第1の誘導加熱コイル)
12a 第1誘導加熱コイルの前方側端部
12b 第1誘導加熱コイルの後方側端部
14 第2誘導加熱コイル(第2の誘導加熱コイル)
14a 第2誘導加熱コイルの後方側端部
14b 第2誘導加熱コイルの前方側端部
16 接続部
20 被加熱物
30 高周波電流源
40 四角柱形状体
42 四角柱形状体
G 第1誘導加熱コイルと第2誘導加熱コイルとの間の間隙
100 高周波電流源
200 鞍型誘導加熱コイル
200a 上方側コイル
200b 下方側コイル
300 被加熱物
A 鞍型誘導加熱コイルの前端部領域
B 鞍型誘導加熱コイルの懐部領域