【実施例】
【0066】
実施例1
式(I)の化合物の調製(ACGET61と称する)
【化6】
効率的な凝縮器およびマグネチックスターラーを備えた丸底フラスコ中に、R
1(MW:175.088;4.43g)およびR
2(MW:132.16;3.347g)を1:1のモル比で加える。次いでNH
4Cl(443mg)を触媒(R
1に対して10重量%)として加える。混合物を150℃にて45時間加熱し、それは濃緑色/濃紫色になる。試薬の消失を、検出剤(200mgのニンヒドリンを150mlのEtOHに溶解して調製した)としてニンヒドリンを使用してTLC(AcOEt:ヘキサン 1:2)によってモニターする。
【0067】
試薬が完全に消失すると、反応混合物を冷やし、残渣をDCMに溶解し、HCl 3Nで3回洗浄し、次いで中性pHになるまで水で洗浄する。
【0068】
このように得られた粗生成物を、AcOEt:ヘキサン(1:10〜1:1)の勾配で溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0069】
純粋な生成物(ACGET61、MW275.11)を、64%の収率で白色/薄いピンクの固体として得る。
【0070】
4−メトキシ酪酸メチル(R
2試薬)合成
【化7】
効率的な凝縮器およびマグネチックスターラーを備えた丸底フラスコ中に、γ−ブチロラクトンR
3(MW:86.06;1eq;d=1.12)、オルトギ酸トリメチルR
4(MW:106.12;1.9eq;d=097)および濃硫酸(10mlのγ−ブチロラクトンR
3につき1ml)をMeOH(1gのγ−ブチロラクトンR
3につき4ml)中で混合する。混合物を撹拌下で60℃にて26時間加熱する。試薬の消失を、検出剤(25gのモリブデン酸アンモニウムおよび5gの硫酸セリウムを450mlのH
2Oおよび50mlの濃硫酸に溶解して調製した)としてPancaldi溶液を使用してTLC(AcOEt:ヘキサン 1:1)によってモニターする。
【0071】
反応の終わりに、溶媒を減圧下で蒸発させる。残渣をAcOEtに溶解し、pH=8になるまで飽和NaHCO
3溶液で洗浄する。
【0072】
粗製物の淡黄色油を真空下で蒸留する(BP:163〜164℃、p:760Torr)。純粋な生成物(P、MW:132.16)を80%の収率で無色の油として得る。
【0073】
実施例2
サルデーニャ(Sardinian)のアルコール嗜好(sP)ラットにおける式(I)の化合物(ACGET61と称する)の抗アルコールプロファイル
サルデーニャのアルコール嗜好(sP)ラットにおけるACGET61の抗アルコールプロファイル
サルデーニャのアルコール嗜好(sP)ラットは、高いエタノール嗜好および消費に関して世界中で選択的に交配された少数のラット系統のうちの1つを表し(Colomboら、2006)、異なる種のアルコール飲料の評価について検証される多くの実験手順において利用されている。これらの実験手順はアルコール摂取の維持、およびアルコールのオペラント自己投与を含む。
【0074】
アルコール摂取の維持
この手順において、sPラットを、アルコール(10%v/v)と水との間の2つのボトルの自由選択のレジメンに曝露した。この条件下で、アルコール溶液を含有するボトルと水を含有するボトルとの間で、約6g/kg/日のアルコールを自発的に消費し、約90%のアルコールを嗜好する動物を選択できる。この手順はヒトアルコール依存症の能動的な飲料段階の有益な実験モデルを構成し;このモデルに曝露したsPラットのアルコール摂取は、ヒトアルコール依存症におけるアルコールの欲求および消費を低減させる、GHB、ナルトレキソンおよびバクロフェンなどの薬物によって低減されることが見出され、このモデルの予測妥当性が実証された。
【0075】
全体として、実験結果により、25〜100mg/kgの範囲の用量でのACGET61の実際の経口投与は、水および食物摂取に影響を与えずにアルコール消費を長期間減少させたことが実証された。特に、ACGET61により誘導される低減は、少なくとも3回の独立した実験において繰り返し観測されるように24時間でさえも持続した。アルコール、水および食物の蓄積消費として表されるこれらの実験のうちの1つの結果を
図1に報告する。
【0076】
結論として、その位置異性体GET73と比較したACGET61の抗アルコール活性の主要な改善は活性の持続期間にあった:GET73はアルコール消費を低減させる際にほぼ同じ効力(10、25、50mg/kg)を示したが、その効果は3時間のみしか継続しなかった(比較について表1を参照のこと;Locheら、2012)。
【0077】
アルコールのオペラント自己投与
これらの手順において、sPラットに、レバーを押すことによってアルコールまたはスクロースを自己投与する訓練をし、アルコールを得るのに必要とされる仕事の量(レバーを押すこと)を、強化、一定比率(FR)または累進比率(PR)の単一のスケジュールの目的に応じて変化させた。
【0078】
試験化合物がアルコール溶液(15%v/v)自己投与に対して選択的効果を与えるかどうかを評価するために、スクロース溶液(3%w/v)を代替の強化因子としてこれらの実験において系統的に利用した。
【0079】
FRにおいて、ラットは4回の連続したレバー押し(FR4)に応答してアルコールまたはスクロースを得、一方でPRにおいて、アルコールまたはスクロースを得るのに必要なレバー押しの回数は、ラットがレバーを押すのを停止する(ブレークポイント;BP)まで徐々に増加させた。各FR4またはPR/BP期間は30分継続した。
【0080】
これらの実験条件下で、sPラットは長く持続するレバー押し行動を示し、このラット系統においてアルコールが強力な強化および動機付け特性を有することが実証される(Colomboら、2006)。
【0081】
FR4
ACGET61 100mg/kgは、
図2に示されるように、強化のFR4スケジュールに曝露したsPラットにおけるアルコールの強化特性に対する選択的な低減効果を与え、30分の時間におけるレバー応答の総数ならびにアルコール摂取(g/kg)およびスクロース摂取(ml/kg)の量を報告する。具体的には、
図2は、sPラットにおけるアルコールのFR4オペラント自己投与に対するACGET61の効果を示す。レバー押しの数およびアルコールまたはスクロース摂取の量を報告した。
*ビヒクル処置群に対してp<0.05。
【0082】
PR/BP
ACGET61 50および100mg/kgは、PRに曝露したsPラットにおいてレバー押しの数、およびアルコールに対するブレークポイントの両方を低減させ、効果がアルコールに特異的でなかった場合でさえ、化合物は
図3に証明されるようにスクロースに対する応答も低減させることができる。具体的には、
図3は、aPラットにおけるアルコールのPRオペラント自己投与に対するACGET61の効果を示す。アルコールまたはスクロースに対するレバー押しおよびブレークポイントの数を報告した。
*ビヒクル処置群に対してp<0.05および
**ビヒクル処置群に対してp<0.01。
【0083】
/
特に、GET73は、PRに曝露し、50mg/kgで投与したsPラットにおけるスクロース摂取の有意な低減を除いて、同じモデルにおいていずれの効果も実証しなかった(比較のために本明細書以下の表1を参照のこと)。
【0084】
【表1】
【0085】
インビトロでのACGET61の神経化学プロファイル
おそらく、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGluR5)の複雑な調節によりラット海馬においてアミノ酸作動性(aminoacidergic)神経伝達に影響を及ぼす、GET73について得られた以前の結果に基づいて(Beggiatoら、2013;Ferraroら、2011、2013)、位置異性体ACGET61を、異なる実験条件においてGABAおよびグルタミン酸レベルを測定することによって海馬スライスにおいてインビトロで評価した。
【0086】
基礎GABAおよびグルタミン酸流出に対するACGET61の効果
GABAおよびグルタミン酸の基礎放出に対する効果は、ACGET61(10および100μM)によって与えられなかった。
【0087】
K
+誘発性GABAおよびグルタミン酸流出に対するACGET61の効果
KCl刺激性海馬スライスにおけるACGET61(10pM〜10μM)の効果を調べることを目的としたさらなる研究を実施した。
【0088】
10nM〜10μMの濃度にてACGET61は、最も高い濃度によって誘発されたGABAの有意な減少(データは示さず)を除いて、明白な効果を与えなかった。10nM未満のACGET61の濃度、具体的には100、300および500pMは、
図4に例示したようにK
+誘発性グルタミン酸流出のわずかな有意ではない低減を誘発した。具体的には、
図4は、KCl刺激性海馬スライスを示す。K
+誘発性グルタミン酸流出に対するpM濃度におけるACGET61の効果。
【0089】
K
+誘発性グルタミン酸流出の増加に対するACGET61の効果はmGluR5受容体アゴニストCHPGによって誘導された
mGluR5アゴニストCHPGとのACGET61の相互作用をKCl刺激性海馬スライスにおいて調べた。ACGET61 300pM(それ自体で効果がない濃度)の灌流媒体への添加は、
図5に示されるようにCHPGによって与えられるK
+誘発性グルタミン酸流出の増加に少なくとも部分的に対抗できた。具体的には、
図5は、KCl刺激性海馬スライス−K
+誘発性グルタミン酸流出である。グルタミン酸流出の増加に対するACGET61 300pMの効果はCHPG 100μMによって誘導された。
**対照に対してp<0.01;
〇ACGET61+CHPGに対してp<0.05。
【0090】
この予備結果により、ACGET61が、mGluR5における負の調節を示唆する神経化学プロファイルを有することが示された。特に、異なるpM濃度を調べることを目的とするさらなる研究が実施されるべきであるが、ACGET61の効力は、同じモデルにおいて500nmにてGET73によって与えられるものと比較して大きいように見える。
【0091】
インビトロでのACGET61の神経保護プロファイル
アルコールの神経毒作用は動物およびヒトの両方において十分に確立されており、海馬は特にアルコールの有害作用に感受性がある脳領域を表す。異なる前臨床モデルがアルコールの神経毒作用を研究するために利用されている。これらのモデルの1つは、器官型海馬培養物をアルコールに曝露することで構成され、それは、細胞生存率の低減、および活性酸素種(ROS)の増加を含む、様々な効果を与える。
【0092】
アルコールに曝露した海馬培養物において興味深い神経保護プロファイルを実証した、GET73について得られた以前の結果に基づいて、ACGET61を同じモデルにおいて評価した。
【0093】
簡潔に述べると、ラット海馬ニューロンの初代培養物をエタノール(75mM;4日)に慢性的に曝露し、ACGET61の神経保護効果を、細胞生存率(MTTアッセイ)および活性酸素種生成(ローダミン123蛍光)を求めることによって評価した。
【0094】
0.01〜10μMの範囲の異なる濃度にてACGET61を評価すると、エタノールに曝露した海馬培養物において細胞生存率の増加、およびROS生成の減少の両方の実験パラメーターに対して正の効果を及ぼした。
【0095】
MTTアッセイ
エタノールへの曝露は、対照細胞培養値に対する吸光度値の有意な減少(p<0.01)によって示されるように細胞生存率の減少を誘導した。慢性エタノール曝露の1時間前および間に加えたACGET61 0.1、1および10μMはエタノール誘導性損傷を阻止し、細胞生存率は対照群に対して有意に異ならなかったが、エタノール群に対して有意に異なった(p<0.05)。ACGET61(0.01〜10μM)はそれ自体でエタノールに曝露しなかった海馬細胞培養物において細胞生存率に影響を与えなかった。対照培養物中で測定したニューロン生存率のパーセンテージとして表した結果を
図6に示す。具体的には、
図6は、エタノール(EtOH;75mM、4日)に曝露した海馬細胞培養物における細胞生存率に対するACGET61の効果を示す。
**対照に対してp<0.01;
〇EtOH 75mMに対してp<0.05。
【0096】
ROS生成
エタノール曝露は、ローダミン123の蛍光発光によって測定して、ROS生成の有意な増加を誘導した(p<0.001)。
【0097】
慢性エタノール曝露の1時間前および間のACGET61 0.1、1および10μMの添加はROS生成のエタノール誘導性増加を阻止し、ROS生成は対照群に対して有意に異ならなかったが、エタノール群に対して有意に異なった(p<0.01;p<0.001)。
【0098】
ACGET61(0.01〜10μM)それ自体はエタノールに曝露していない海馬細胞培養物においてROS生成に影響を与えなかった。対照培養物において測定したROS生成のパーセンテージとして表した結果を
図7に示す。具体的には、
図7は、エタノール(EtOH;75mM、4日)に曝露した海馬細胞培養物におけるROS生成に対するACGET61の効果を示す。
**対照に対してp<0.01、
***対照に対してp<0.001;
○○EtOH 75mMに対してp<0.01、
○○○EtOH 75mMに対してp<0.001。
【0099】
特に、これらの神経保護効果は、0.1、1および10μMにてACGET61によって与えられ、その位置異性体GET73と比べて大きな効力を示唆しており:実際に、ACGET61についての最小有効濃度は、GET73の1μMに対して0.1μMであった。
【0100】
実施例3
医薬組成物
N−[(2−トリフルオロメチル)ベンジル]−4−メトキシブチルアミド(ACGET61) 50mg
微結晶性セルロース(適切な崩壊剤として) 60mg
タルク(潤滑剤として) 10mg
ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤として) 5mg
リン酸カルシウム(凝集剤−希釈剤として) 200mg
炭酸マグネシウム(希釈剤−結合剤として) 100mg
【0101】
実施例4
医薬組成物
N−[(2−トリフルオロメチル)ベンジル]−4−メトキシブチルアミド(ACGET61) 150mg
トウモロコシデンプン(適切な崩壊剤として) 100mg
ベヘン酸グリセリル(潤滑剤として) 10mg
ポリソルベート(界面活性剤として) 10mg
炭酸マグネシウム(希釈剤−結合剤として) 150mg
ラクトース(希釈剤として) 150mg
【0102】
実施例5
フィルムコーティング/修飾放出を有する医薬組成物
N−[(2−トリフルオロメチル)ベンジル]−4−メトキシブチルアミド(ACGET61) 500mg
微結晶性セルロース(適切な崩壊剤として) 200mg
クロスポビドン(抗凝集剤として) 50mg
デンプン(希釈剤−崩壊剤として) 50mg
コロイド状シリカ(乾燥剤として) 10mg
ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤として) 10mg
ヒプロメロース(コーティング剤として) 50mg
マクロゴール(可塑剤として) 10mg
二酸化チタン(染料として) 10mg