特許第6832353号(P6832353)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832353
(24)【登録日】2021年2月3日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】自己衛生浄化型電気機械
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/04 20060101AFI20210215BHJP
   H02P 29/60 20160101ALI20210215BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20210215BHJP
   H02K 33/00 20060101ALI20210215BHJP
   A61L 2/02 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   A61L2/04
   H02P29/60
   B06B1/04 Z
   H02K33/00 Z
   A61L2/02
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-529511(P2018-529511)
(86)(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公表番号】特表2018-528049(P2018-528049A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】US2016048903
(87)【国際公開番号】WO2017040253
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年8月23日
(31)【優先権主張番号】62/210,994
(32)【優先日】2015年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518064293
【氏名又は名称】デビソン,ジェームズ
(73)【特許権者】
【識別番号】518064307
【氏名又は名称】ブラウン,ジェリー
(73)【特許権者】
【識別番号】518064318
【氏名又は名称】ガリソン,ケビン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】デビソン,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】ガリソン,ケビン
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許発明第00649565(DE,C2)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0188480(US,A1)
【文献】 特開2015−167861(JP,A)
【文献】 米国特許第04195324(US,A)
【文献】 実開昭60−144888(JP,U)
【文献】 国際公開第2014/103787(WO,A1)
【文献】 特開2007−082868(JP,A)
【文献】 特開平04−008326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/04
A61L 2/02
B06B 1/04
H02K 33/00
H02P 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モーターを衛生浄化する方法であって、前記方法は、
標的微生物を死滅させる前記電気モーターの運転パラメータを設定し、
該運転パラメータは前記標的微生物を死滅させる目標温度と、該目標温度に到達するために必要な電流レベルと、通電継続時間とを含み、
前記設定した運転パラメータを用いて前記目標温度になるまで前記電気モーターに通電し、
前記電気モーターの温度と加熱維持時間とをモニターし、
前記目標温度に達するように前記電気モーターへ供給される電流を調整し、
前記電気モーターのモニターされた前記温度と前記目標温度とを比較すること
を含むことを特徴とする方法
【請求項2】
前記電気モーターの前記運転パラメータを設定する工程は、前記電気モーターのコイルに通電する電流振幅を、前記標的微生物が死滅する前記目標温度にまで前記電気モーターの筐体を加熱するために十分な電流振幅に設定することを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
前記筐体の前記温度を、少なくとも130F(54.4℃)にまで昇温することを特徴とする、請求項2の方法。
【請求項4】
記電気モーターの運転パラメータを設定する工程は、前記電気モーターのコイルに周波数が変化する電流波形を印加し、前記標的微生物を死滅させる複数の周波数で振動を起こすことを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項5】
前記死滅させる複数の周波数は10Hzから20kHzの範囲内であることを特徴とする、請求項4の方法。
【請求項6】
前記運転パラメータを通常設定に戻し、
前記電気モーターを通常運転に戻すことをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記電気モーターの温度及び振動の少なくとも一方をモニターし、
モニター結果に基づいて前記電気モーターを通常運転に戻すことをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記電気モーターの筐体は同時に振動し加熱されることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項9】
衛生的環境で用いるように構成された電気モーターであって、
衛生基準にまで加工した表面を有する筐体と、
前記筐体の表面に沿った近傍に配置した1組の振動装置であって、標的微生物を死滅させる周波数の領域で前記筐体の表面を振動させるのに適した振動装置と、を有する電気モーター。
【請求項10】
前記死滅させる周波数は10Hzから20kHzの範囲にあることを特徴とする、請求項9の電気モーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は米国特許法第111条(a)のもとに出願され、同法第119条(e)のもと、2015年8月28日に出願した米国特許仮出願番号第62/210,994による優先権を主張する。如何なる目標においても、前記米国特許仮出願の全体を参照して本明細書に組み入れる。
【0002】
一般に、本発明はモーター技術に係り、特に衛生的環境で用いる自己衛生浄化型モーター類に係る。
【背景技術】
【0003】
モーターなどの電気機械は、食品加工、医薬及び包装設備内の多くのプロセスに使用される。例えば、ミキサー、カッター、充填機、コンベヤー、及び包装機械類は、多数の機能を発揮するために様々なモーター類を必要とする。こうした設備では、信頼性、エネルギ効率、全体にわたる精度や制御に必要な性能に加えて、食品の安全性及び衛生面に関する別の要件が要る。
【0004】
一般に、多くの設備において機械配置の複雑さやその大きさのために、浄化操作用の製造ラインから、前記の機械を取り外すのは厄介な作業である。よって、産業界では機械を取り外すことなく、製造現場で洗浄する定置洗浄(clean−in−place)操作の方向に向かいつつある。こうした定置洗浄を容易に行うために、周知のIP69K密封型衛生浄化サーボモーターには、食品、飲料及び医薬を扱う設備のモーターを頻繁に高圧水流洗浄する過酷な使用においても、長寿命で信頼できる操作が行えるステンレス製の円形格納型の設計がなされている。飲料及び医薬機械の製造者は、通常、ステンレススチール製の部品をできるだけ多く使用する。また、モーターや、その制御及び通信機器は、封入され容器に入れられて、耐蝕性を備えて水流洗浄できるように設計されている。
【0005】
全米食品安全強化法などの法規制が、モーターを備える設備や機械について細目を定めるに伴い、衛生的設計を考慮したモーターへの関心が高まっている。しかし、モーターを単に水流洗浄するだけの仕様では不適切であり、上記の安全性規則に完全に適合できないか、或いは、この規制の文言が満たされていたとしても設備を完全に衛生浄化できる保証はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上より、設備衛生面の維持を更に改善できる、自己衛生浄化の機能を備える食品加工及びそれに関連した用途のための電気機械類を提供することは、有益である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態では、電気モーターを衛生浄化する方法を提供する。前記方法では、標的微生物を死滅させる電気モーターに係る運転パラメータを設定して、前記の設定した運転パラメータを用いる電気モーターに通電する。
【0008】
電気モーターの運転パラメータを設定する方法は、標的微生物が死滅する温度まで電気モーターの筐体を加熱するのに十分な、電気モーターのコイルに通電する電流振幅を設定する工程を含む。前記筐体の温度は、少なくとも華氏130oF(摂氏54.4℃)にまで昇温する。また、電気モーターの運転パラメータを設定する工程は、標的微生物を死滅させる周波数で振動させるために、周波数を変化させた電流波形を、電気モーターのコイルに提供することを含む。前記の死滅させる周波数は、約10Hzから約20kHzの範囲内にある。
【0009】
また、前記方法は、運転パラメータを通常設定に戻して、前記モーターを通常運転に戻すことを含む。さらに、前記方法は、電気モーターの温度及び振動のうち少なくとも一方をモニターし、モニター結果に従って、電気モーターを通常運転に戻すことも含む。なお、電気モーターの筐体は同時に振動及び加熱されてもよい。
【0010】
また、別の実施形態では、機械可読媒体に記憶したコンピュータプログラム製品を提供する。このコンピュータプログラム製品は、電気モーターを衛生浄化する機械実行可能な命令を含み、ある方法を実行させる命令である。さらに、前記方法は、標的微生物を死滅させる電気モーターの運転パラメータを設定し、前記した運転パラメータ一式を用いる電気モーターに通電する。
【0011】
また、前記方法は、電気モーターの温度及び振動のうち少なくとも1つをモニターして、モニターした結果に従い、電気モーターを通常動作に戻すことができる。また、前記方法は、設備データ、衛生基準及び予定表のうち少なくとも1に従い、運転パラメータを決定することができる。さらに、前記方法は、特徴データのライブラリから、電気モーターに関する特徴データを取得することができる。さらに、前記方法は、電気モーターに関する特徴データ、及び、衛生浄化プロトコルを制御する運転パラメータの設定機能のうち少なくとも1つに従って、運転パラメータを調節することができる。
【0012】
また、さらに別の実施形態では、衛生環境で使用するように構成された電気モーターを開示する。前記電気モーターは、電流通電時、機械的エネルギを供給するように構成された内部部品を含む筐体と、電気モーターの衛生浄化処理を制御する電流を制御するように構成された制御部とを有する。
【0013】
制御部は、納部内に含まれるものの1つで、筐体に搭載される回路を有する。制御部は温度制御モジュール及び振動制御モジュールののうち少なくとも1つを有する。また、制御部は筐体から遠方の場所に位置していてもよい。また、制御部は衛生浄化処理及び前記処理開始のうち少なくとも1つを制御するように構成できる。
【0014】
電気モーターには、さらに誘導モーター、同期モーター、分巻モーター、他励モーター、直巻モーター、永久磁石モーター、複合モーター、ステッパモーター、ブラシレス直流モーター、ヒステリシスモーター、リラクタンスモーター、交直両用モーター、及びその他のモーターが挙げられる。
【0015】
電気モーターの衛生浄化処理は、電気モーターに付着した微生物の活動の少なくとも一部を駆除するように構成される。
【0016】
さらにまた、別の実施形態では、機械可読媒体に記憶したコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は、電気モーターを衛生浄化するための機械実行可能命令であって、方法を実行する命令を含む。前記方法は標的微生物を死滅させるために電気モーターの筐体の目標温度を設定して、電気モーターを作動して前記目標温度に到達させる。
【0017】
さらに、前記方法は、電気モーター筐体の温度をモニターし、モニターした温度と目標温度とを比較し、目標温度になるように電気モーターに通電する電流を調節する。なお、目標温度は130oF(54.4℃)から160oF(71.1℃)の範囲にあればよい。
【0018】
また、さらに別の実施形態では、機械可読媒体に記憶したコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は、電気モーターを衛生浄化するための機械実行可能命令を有し、前記命令は方法を実行する。前記方法は標的微生物を死滅させるために電気モーター筐体を振動させる標的周波数範囲を設定して、前記の標的周波数範囲で電気モーターに通電する。
【0019】
また、前記方法は、標的周波数範囲を有する電気モーターに、周波数電流波形を印加する。
【0020】
また、別の実施形態では、衛生環境中で使用するように構成された電気モーターを開示する。この電気モーターは、表面を備える筐体と、筐体の表面に沿って近傍に配置した1組の導電性コイルとを有する。前記電導性コイルは、標的微生物を死滅させる温度にまで筐体表面を加熱できるように、電流を受けるようになっている。
【0021】
電気モーターはステンレススチールで構成されていてよい。
【0022】
さらにまた別の実施形態では、衛生環境中で使用するために構成された電気モ-ターを開示する。この電気モーターは、表面を備える筐体と、標的微生物を死滅させる周波数領域で前記筐体表面に振動を起こすようにした1組の振動装置とを有する。
【0023】
電気モーターにおいて、前記周波数領域は10Hzから20kHzの範囲内で選択される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本発明の一実施形態に係る自己衛生浄化型モーターシステムの模式図である。
図2図2はリストの微生物を死滅させることを見出した振動周波数範囲を示すグラフ例である。
図3A図3Aは本明細書で網羅的に示した本発明の一実施形態に係るモーターの衛生浄化方法のフローチャートである。
図3B図3Bは本明細書で網羅的に示した本発明の一実施形態に係るモーターの衛生浄化方法のフローチャートである。
図3C図3Cは本明細書で網羅的に示した本発明の一実施形態に係るモーターの衛生浄化方法のフローチャートである。
図3D図3Dは本明細書で網羅的に示した本発明の一実施形態に係るモーターの衛生浄化方法のフローチャートである。
図3E図3Eは本明細書で網羅的に示した本発明の一実施形態に係るモーターの衛生浄化方法のフローチャートである。
図4A図4Aは本発明の一実施形態に係るモーター筐体に直接電流を通電する電極を備えたモーターの概略平面図である。
図4B図4Bは本発明の一実施形態に係るモーター筐体の近くに配置した1組の導電性コイルを備えたモーターの概略平面図である。
図5図5は本発明の一実施形態に係るモーター上に設置した1組の振動装置を備えたモーターの概略平面図である。
図6図6は本発明の一実施形態に係るモーターの一例を示す断面図である。
図7図7は本発明の一実施形態に係るモーターの表面温度を制御する方法を図示した機能制御ループ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書では、電気モーター上又は内の微生物活動を略駆除するための技術を開示する。有益なことに、電気モーターを衛生浄化する技術は、電気モーターの特徴として有用であり、モーター自身変更を必要としない。こうして、一般的に衛生的環境中での使用に適した略無菌電気モーターが実現した。
【0026】
ここで、「機械」及び「モーター」の用語は、本明細書において交換可能に使用され、一方の用語に対し他方の用語を用いても、本願発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
また、ここで使用する「筐体」の用語は、ローター及びモーターを格納する構造体又は複数の構造体の如何なるものも意味する。
【0028】
ここで使用する「微生物」の用語は、一般に有害である可能性をもち病原体を含む可能性がある、菌や寄生生物を意味するが、これに限定されるものではない。一般的に、微生物活動の定量的限界値は所与の電気モーターを使用する環境中のプロセスに関連すると伴にプロセスを決定する。微生物活動に係る限界値は病原体に特異的である。ここで述べるように、病原体または微生物の活動が制御または制限される環境は、「衛生的環境」及び他の同様な用語で呼ばれる。通常、ここで使用するように、「衛生浄化する」の用語及びこの用語の他の形態は、ある表面での微生物活動を減少させることを意味する。また、ここで説明するように、衛生浄化手順とは、適用可能な標準に適合又は略適合する水準にまで、微生物活動を意図的に減少させることであるが、このことは必須要件ではない。例えば、衛生浄化手順は、ここに示した上記プロセスと併せて、後に別のプロセスを行う意図のもと、微生物活動を単に減少させるだけでもよい。
【0029】
なお、設備を衛生浄化するために適用可能な基準は、例えば、アメリカ食品医薬局(FDA)、アメリカ農務省(USDA)並びに多数の州及び地方規制当局によって公表されている。
【0030】
食品加工及び医薬品の施設又は他の施設において、設備の表面は、しばしばステンレススチールで製造されている。ステンレススチールは機械加工されて正確に平坦に加工され、菌の滞留、潜伏、増殖を防止し、設備表面上に生物膜が形成されるのを防止する。こうした設備の表面は、極めて頻繁に、微生物を静菌及び殺菌する小泡を発生させる発泡剤と共に、高温、高圧水で定期的に水流洗浄される。この技術は長年にわたり使用されてきたが、食品由来の病気が依然として発生するために清潔にする努力は極めて重要である。
【0031】
ある範囲の周波数で電気モーターの筐体を振動させると、高水準の衛生浄化が確保されることが見出されてきた。例えば、大腸菌,リステリア属及びサルモネラ菌などの標的微生物は、殺菌及び/又は宿主表面から略除菌できる。
【0032】
本発明は、複数の水流洗浄サイクルを行う間に、設備表面に吸着した如何なる菌の増殖をなお一層阻害するために、製造設備の性状を利用する有害微生物を死滅させる技術を提供する。この技術は、標的微生物を十分に殺菌できる温度及び長さの時間までモーター筐体を加熱することと、及び/又は微生物を死滅できることが分かっている周波数でモーター筐体を低振幅振動させることと、を含む。幾つかの実施形態では、通常の洗浄手順に加え、設備作動期間または作動停止期間の何れかにおいて、加熱及び振動の両者を用いることで、さらに設備の衛生浄化を改善できる。このように、モーターに定期的に供給する電力を衛生浄化手順に使用し続けることから、このモーターは自己衛生浄化型であるといえる。
【0033】
図1は自己衛生浄化型モーターシステム100の実施形態を例示した模式図である。前記システム100において、モーター102は、外側筐体104、ローター106及び電気コイル108を有する。電気駆動ケーブル112を介して、電力モジュール110によって、モーター102は遠隔から電力を供給される。幾つかの実施形態では、電力モジュール110は、モーター102に搭載されており、電気駆動ケーブル112を必要としない。また、様々なセンサ類が、ブロック114でまとめて表される。これらのセンサ類114は、熱電対、又は筐体表面の温度を測定する別種のセンサ類から構成されると伴に、筐体の動きを測定する加速度計を備える。センサ類114はモーター筐体104上に配置するか、またはその近傍に配置する。
【0034】
モーター筐体104は特有の形状、大きさ及びデザインをもつという特徴を有する。モーター102は「衛生的」表面を備えることが好ましい。つまり、前記表面は衛生基準まで浄化されたステンレススチールなどの好適な材料で作られていることを意味する。一般に、衛生的表面は、凹部、裂け目、又は細菌コロニーの形成を招く他の如何なる特徴も除去した微細な公差(例えば、1ミクロンスケール)にまで加工されている。モーター102はリニアモーターまたは回転モーターとして設計されていてよい。ローター106及びコイル108は、モーターが所望通り作動するように任意に構成できる。
【0035】
本実施形態では、電力モジュール110は、2個の制御モジュール、つまり温度制御モジュール122及び振動制御モジュール124を有する。温度制御モジュール122によって、運転者は、モーター102に通電する電流の位相と振幅を制御できる。また、振動制御モジュール124によって、運転者は、モーター102に印加される電圧及び/又は電流の周波数を制御できる。温度制御モジュール122及び振動制御モジュール124の両者ともに、電力モジュール110の回路構成の一部として、電気的及び/又は電子的に実行される。
幾つかの実施形態では、温度制御モジュール122及び振動制御モジュール124は、別々に実行される。モジュール122及び124のインターフェースには、手動制御、及び/又は、コンピュータシステムによって作動するグラフィックユーザーインターフェースなどのソフトウエア制御が用いられる。
【0036】
ある実施形態では、温度制御モジュール122は、コイル108に出力される電流信号を調節する。作動状況に応じて、モーター102が発生する出力トルクの有無によらずに電流が通電される。永久磁石(paramagnet magnet:PM)を用いるモーター102では、モーター102のローター106にトルクを全く発生させないで、コイル108に電流を流すことができる。従って、PMモーター102では、電流をコイル108に流すことで、モーター102の可動部分を動かすことなしに熱を発生できる。トルクを発生することなしに熱を発生できるのは、モーター内部の電流ベクトルとローター磁場ベクトルとの相互作用に基づく。
これらベクトルは、d−軸及びq−軸として示されるベクトル類として表記できる。もし、ローターの磁場ベクトルに対応するようにd−軸を選んだ場合、このd−軸に対してq−軸つまり横軸は90度になる。コイル108の誘導特性によって、電圧ベクトルは電流ベクトルと位相が異なる。温度モジュール122によってコイル108内の電流を制御し、電流ベクトルを磁場d−軸と同方向に揃えたとき、モーター電流のアンペアに対してトルクが発生することはない。しかし、コイル108に電流が流れるために熱は発生する。
【0037】
以下の表1は、数種類の肉についてサルモネラ菌の「7−log10(1/千万)」減少を達成するのに必要な温度及び(その温度における)時間に係る情報を記載する。なお、「7−log10」減少とは、食品工業のために公表されたUSDA特性基準である。
【表1】


【0038】
表1は、130F(54.4℃)から昇温したある温度での、ローストビーフのサルモネラ菌の減少を示す。また、異なるレベルの脂肪含有量の鶏肉及び七面鳥肉でも、温度が高くなればなるほどサルモネラ菌を浄化でき、高い温度を必要とする加熱時間は短くなる。例えば、1%の脂肪含有量をもつ鶏肉のサルモネラ菌を、140F(60℃)で7−log10減少させ得る時間は25.2分である。他方、160F(71.1℃)で7−log10減少させ得る時間は、僅か13.7秒である。
【0039】
モーター102のコイル108に通電される電流によって、コイル108の温度は加熱されて上昇する。ここで、例示したモーターの断面図である図6を参照する。各々のモーター102は、モーターコイル108とモーター筐体104の表面との間に熱抵抗Rthを有する。ここで、Rthの単位は、℃/ワットであり、℃はワット一定消費毎の温度上昇である。モーター筐体の温度上昇は、
ΔT[℃]= Rth * Pin
として求められる。ここで、Pinはコイルの電力消費である。従って、Rthは特定のモーター設計についてPinとΔTとを関連付ける定数となる。モーターを衛生浄化する開ループ法によって、Rthを、モーターの大きさ、筐体の材料、コイルの材料、及び、コイルとモーター筐体との距離に基づいて推定可能であるが、及び/又は、モーターの加熱に係る一般的ガイドラインを用いてもよい。通常、コイル108はモーター筐体104の内表面から約3〜75mmの範囲に設置する。加熱されたコイル108は放射、伝導及び対流によって筐体104と熱交換する。
筐体104は、コイルで発生した熱と相関して温度を上昇させる。500Wから2kWの典型的なモーターでは、通常電気出力で筐体表面最大温度(>>160F(71.1℃))に達するまでに通常30分かかることが分かった。従って、500W〜2kWモーターの通常運転では、上記した表1のデータによれば、サルモネラ菌の除染に必要な温度(130〜160F(54.4〜71.1℃))にまで筐体表面が到達する時間は30分未満である。 従って、温度フィードバック情報なしに開ループ法を使用した場合、コイルは500W以上で作動するので、通常のモーターは30分以内にサルモネラ菌の7−log10除染温度以上に加熱される。
【0040】
一方、閉ループ法では、筐体表面温度をモニターし、目標温度になるように電流を調節して温度制御を行う。閉ループ法は、永久磁石の積層スチールのロスなど、電気機械での他のロス源を利用できる。例えば、モーター筐体の表面温度を制御する目的でこうしたロスを利用できる。
図7に示した制御ループでは、ブロック702において温度制御モジュール122は、微生物を徐染する筐体表面の標的温度を設定する。続いて、ブロック704では、温度制御モジュール122はモーターの熱抵抗(Rth)を含むモーターの既知特性を考慮したアルゴリズムを用い、モーターに通電する電流を、制御移行機能に調節させる。また、ブロック706では、例えば、温度センサ114(図1)を使用した、筐体表面温度のモニターによるフィードバックが、温度制御モジュール122に伝達される。次に、再びブロック702に戻り、温度制御モジュール122は、前記フィードバックと設定温度とを比較する。この比較情報は、ブロック704の制御移行機能に送られる。ここで、筐体表面温度が目標温度と一致しない場合、モーターに通電する電流を調節する。或いは、目標温度と筐体表面温度とが一致する場合、制御移行機能はこれ以上の調節を行わない。このようにして、制御ループでは、筐体表面温度を連続してモニターし、筐体表面温度が目標温度となるように、電流振幅及び位相を含む電流特性の調節を行う。
【0041】
また、振動モジュール124で制御する別の実施形態では、非DC電流波形をコイルに印加及び変化させて筐体104に共振を誘発する。電流信号が低振幅であってもこの振動はコイル108の励起に応じて起きる。例えば、電流波形は、掃過的又は矩形的な交流電流周波数領域(つまり、段階的又は離散的に周波数を変えること)であるか、或いは、広域帯の周波数を複数同時に発信するホワイトノイズであってもよい。この周波数領域は、食品加工設備が特に汚染され易い標的微生物を死滅させる周波数の大部分又は全部を含むように設計される。図2は、選択したある微生物を死滅させる周波数領域を示す模式的グラフである。なお、ここに示した値は概略値及び例示であり、含まれる微生物の死滅周波数の完全に正確な値でも詳細な記載でもないことに留意されたい。
【0042】
図2に示すように、サルモネラ菌は一群の死滅周波数領域を有し、約300〜700Hzの相対的に低い周波数領域と、7kHzを超える高い死滅周波数領域とを有する。同様に、リステリア属及び大腸菌は低い死滅周波数領域(約300〜1000Hz)と、高い死滅周波数領域(>7kHz)とを有する。なお、菌量が少ない場合、特定の死滅周波数において、菌は非常に低い振幅数で死滅する。また、モーター102のコイル108に、その必須周波数で周波数波形を流すと、それに伴う十分な機械的振動が生じるので、AC電気信号の電気エネルギを筐体の機械的運動に転換する機構は不要なことが分かった。さらに、ある量の水が筐体に存在する洗浄操作では、この水によって振動効果が増幅され、振動モードの有効性に寄与する。これは、振動で発生する水中の空洞現象(気泡生成)によるものである。空洞現象で発生した気泡は、微生物の大きさと同程度の大きさをもつので、気泡と接触した微生物を死滅させる顕著な流体圧破壊作用を発揮する。
【0043】
モーター筐体104は、高温又は振動衛生浄化モードの何れか一方で処理されるが、両モードで同時又は順番に処理するのも好適である。つまり、順番に処理する場合、浄化操作を行う間(或いは、浄化処理前後の短い間)、モーターをオンにして、モーター102のトルクの有無によらず、コイル108に電流を通電し、標的微生物を死滅させるのに必要な温度までモーター筐体104を加熱する。続いて、コイル108を通る周波数領域全体で、電流信号の周波数を変化させ、標的微生物を死滅させる周波数で低振幅振動を誘発させる。
【0044】
図3Aは、モーターの衛生浄化方法を例示したフロ-チャートである。この例では、モーター筐体を加熱して、標的微生物を死滅させる(つまり、高温モードだけを使用)。この方法は、モーターを水流洗浄する間、又は、その前後半の一部や、食品加工の間に実行する。最初の工程302では、モーターをオンにする。或いは、既にモーターがオンの場合は、オンのままにする。2番目の工程304では、温度制御モジュールによって、標的微生物を死滅させる温度に到達するのにモーター筐体が必要な電流レベルと、前記温度を維持する通電継続時間とを決定する。ここで、求められる到達温度とは、大部分の耐熱菌を死滅させる温度である。例えば、菌種Aが温度Tで死滅し、菌種Bが温度Tで死滅し、菌種Cが温度Tで死滅し、T>T>Tである場合、モーター筐体の温度がTに到達するのに必要な電流レベル及び時間を決定する。続く工程306では、電力モジュールは、先に決定した電流をモーターコイルに通電し、モーターのトルクの有無によらず、必要な温度を達成する。
さらに、判定工程308では、所望の温度に到達し、且つその温度が十分な継続時間維持されているか否かを判定する。幾つかの実施形態中、この判定は、温度センサ112を用いた筐体の現在温度を検知することを含み、或いは、加熱過程の間にコイルの電力出力量などの近接測定を含んでもよい。もし、加熱維持時間が不十分である場合、工程サイクルを工程306に戻すか、そうでない場合この方法を終了(工程310)とする。
【0045】
次に、図3Bにモーター衛生浄化方法の別の例を示したフローチャートを示す。この例では、モーター筐体を振動させて、標的微生物を死滅させる(つまり、振動モードだけを使用する)。この方法は、モーターを水流洗浄する間、又はその前後半の一部や、食品加工の間に実行する。最初の工程312では、モーターをオンにする。または、既にモーターがオンの場合は、オンのままにする。2番目の工程314では、振動制御モジュールによって、標的微生物を死滅させるのに使用する大部分又は全部の周波数(約10Hzから20kHz)を包含できる周波数波形を、モーターコイルに印加する。
上記したように、大腸菌やサルモネラ菌などの異なる微生物は異なる(複数の)周波数で死滅するので、ある範囲の振動数を用いてモーター筐体を衛生浄化する。この工程は1回以上繰返して行ってよい。また、判定工程316では、周波数領域の掃過が閾値数で生じているか否かを確認することで、モーター筐体が目標周波数で振動しているか否かを判定する。もし、モーター筐体の振動が不十分である場合、工程サイクルを工程314に戻すか、そうでない場合この方法を終了とする(工程320)。
【0046】
次に、図3Cはモーター衛生浄化方法の別の例を示したフローチャートである。この例では、モーター筐体を先ず加熱し、続いて振動させて標的微生物を死滅させる(つまり、高温モードに続いて振動モードを順次使用する)。この方法も、モーターを水流洗浄する間、又はその前後半の一部や、食品加工の間に実施する。最初の工程322では、モーターをオンにする。或いは、既にモーターがオンの場合、オンのままにする。次に、2番目の工程324では、温度制御モジュールは、標的微生物を死滅させる温度にモーター筐体が到達するのに必要な電流レベル及びその温度を維持する通電継続時間を決定する。上記したように、求められる温度とは、大部分の耐熱微生物が死滅する温度のことである。続く工程326では、モーターのトルクの有無によらず、使用するモーターの種類に応じて電力モジュールは、先に決定した電流をモーターコイルに通電し、必要な温度を達成する。また、判断工程328では、所望の温度に到達し、且つその温度が十分な時間維持されているか否かを判定する。もし、その温度を維持する通電継続時間が不十分である場合、サイクル過程を工程326に戻す。そうでない場合、工程330において振動モードを作動させ、振動制御モジュールによって、標的微生物を死滅させるのに使用する大部分又は全部の振動数(約10Hz〜20kHz)を包含する電流周波数の波形をモーターコイルに通電する。この工程は、1回以上繰り返すことができる。また、判定工程332では、周波数領域の掃過が閾値数で生じているか否かを確認することで、モーター筐体が十分に目標周波数で振動しているか否かを判定する。もし、モーター筐体の振動が不十分である場合、工程サイクルを工程330に戻すか、そうでない場合この方法を終了とする(工程334)。
【0047】
続いて、図3Dは、モーター衛生浄化方法の別の例を示したフローチャートである。この例では、モーター筐体を先ず振動させ、続いて加熱することで標的微生物を死滅させる(つまり、振動モードに続いて高温モードを順次使用する)。この方法も、モーターを水流洗浄する間、又はその前後半の一部や、食品加工の間に実施する。最初の工程342では、モーターをオンにする。或いは、既にモーターがオンの場合、オンのままにする。次に、2番目の工程344では、振動制御モジュールは、標的微生物を死滅させるのに使用する大部分又は全部の振動数(約10Hz〜20kHz)を包含する電流周波数の波形を、モーターコイルに通電する。上記したように、大腸菌やサルモネラ菌などの異なる微生物は異なる(複数の)周波数で死滅するので、ある範囲の振動数を用いてモーター筐体を衛生浄化する。この工程は1回以上繰返して行ってよい。また、判断工程346では、周波数領域の掃過が閾値数でできているか否かを確認することで、モーター筐体が十分に目標周波数で振動しているか否かを判定する。もし、モーター筐体の振動が不十分である場合、工程サイクルを工程344に戻す。
そうでない場合、工程348で高温モードを作動させ、温度制御モジュールによって、標的微生物を死滅させる温度にモーター筐体を到達させるのに必要な電流レベルと、その温度を維持する通電継続時間とを決定する。上記したように、求められる温度とは、大部分の耐熱微生物が死滅する温度のことである。続く工程350では、電力モジュールは、モーターのトルクの有無によらず、先に決定した電流をモーターコイルに通電し、必要な温度を達成させる。また、判定工程352では、所望の温度にまで到達し、且つその温度が十分な時間維持継続されているか否かを判定する。もし、その通電継続時間が不十分である場合、サイクル過程を工程350に戻すか、そうでない場合、この方法を終了とする(工程354)。
【0048】
続いて、図3Eは、モーター衛生浄化方法の別の例を示したフローチャートである。この例では、モーター筐体を同時に振動及び加熱することで標的微生物を死滅させる(つまり、振動モードと高温モードを同時に使用する)。この方法には、2つの衛生浄化モードを一緒に実施するので、より速く実施できるという利点がある。この方法も、モーターを水流洗浄する間、又はその前後半の一部や、食品加工の間に実施する。最初の工程362では、モーターをオンにする。或いは、既にモーターがオンの場合、オンのままにする。次に、2番目の工程364又は工程366では、振動制御モジュールは、大部分又は全部の標的微生物を死滅させる電流周波数波形をモーターコイルに通電する。さらに、これと同時に、温度制御モジュールは、標的微生物を死滅させる温度にモーター筐体を到達させるのに必要な電流レベルと、その温度を維持する通電継続時間とを決定する。上記したように、求められる温度とは、大部分の耐熱微生物が死滅する温度のことである。
【0049】
図3Eに示した方法の第1の分岐では、工程370において、電力モジュールは、先に決定した電流をモーターコイルに通電し、モーターのトルクの有無によらずに必要な温度を達成する。続いて、判定工程327において、所望の温度に到達し、且つその温度が十分な時間維持継続されているか否かを判定する。もし、前記通電継続時間が不十分である場合、工程サイクルを工程370に戻すか、そうでない場合、この方法を終了する(工程374)。次に、図3Eに示した第2の分岐では、工程376において、周波数領域の掃過が閾値数で生じているか否かを確認することで、モーター筐体が目標の周波数で十分振動しているか否かを判定する。もし、モーター筐体の振動が不十分である場合、過程サイクルを工程366に戻すか、そうでない場合、この方法を終了する(工程380)。
【0050】
先に説明した図3A図3Eの各方法では、加熱及び振動モードを閉ループで実行し、結果が達成されたか否かを判定した。つまり、筐体温度が達成又は略達成され、筐体で一定範囲の振動周波数が実施されたか否かを判定した。
しかし、加熱及び振動モードの各々は、結果に基づく判定プロセスではなく、開ループで実施することもできる。特に、設備汚染のリスクを減少する一助として、通常の洗浄工程に捕捉して上記した衛生浄化モードを使用する場合、閉ループで結果が達成されたか否かを検知するセンサ類を使用しないでも、設定手順にしたがい、モーターを単に加熱、及び/又は、振動するだけでよい。
【0051】
幾つかの実施形態中、モーター筐体を直接加熱してもよい。第1の実施形態では、高周波電流を導電性の筐体に直接印加する。例えば、電力供給ケーブル(図示なし)の末端にある複数の電極端子を筐体に取り付けて電流を印加する。図4Aは高周波電流信号を受信する一端末に置かれた電極404、406を有するモーター筐体402を示した模式図である。この高周波電流信号によって、筐体の表面に電流が流され、これによって筐体表面に熱が発生する。この結果、抗微生物効果を起こすのに十分なまで筐体が加熱される。或いは、機械の外表面の周囲に導電性コイルを追加して巻きつけてもよい。図4Bは、モーター筐体412及び筐体の表面長手方向に巻き付けた導電性コイル414を示す模式図である。このコイル414に高周波電流を印加すると、渦電流が発生し、筐体に熱を誘導して有害な菌及びウイルスを死滅させるのに十分な温度になる。
【0052】
また、さらに別の実施形態では、筐体を直接振動させることができる。図5に示した実施形態では、振動素子504、505、506、507をモーター筐体502の表面に設置する。なお、4個の振動素子が図示してあるが、もっと多くの、または少ない数の素子も利用できる。振動素子504〜507は起動すると、アルゴリズム的に設定した波形の振動モジュールを用いて、モーターコイルにより誘導された振動に係る上記と同様の周波数領域で、モーター筐体502の振動を、例えば、10Hzから20kHzで誘導する。この振動は、大腸菌やリステリアを含む通常の微生物を死滅させる周波数領域を包含する。
【0053】
また、振動モードを抗アレルギー源手段として使用し、筐体表面からアレルギー性粒子状物質を除去できる。アレルギー源除去に振動を用いる方法は、水流洗浄とは別個に行えるので、モーター筐体の表面上又は表面近くに水分を含むことなく実施できる。さらに、周波数波形を用いる周波数領域全体の振動だけで、通常範囲の大きさのアレルギー性粒子及び繊維を、十分除去可能である。
【0054】
また、所与の電気モーターの性能を以下のように特徴付けてもよい。例えば、所与のモーターの熱伝達性特性は、一連の評価及びその結果得られたデータを曲線近似して求められる。この特徴付けは、衛生浄化プロトコルを左右する運転パラメータを設定するのに有用である。また、この特徴付けは、生菌を用いても同様に行える。従って、生産現場に一旦設置した所与の電気モーターを衛生浄化するのに必要な時間間隔及び/又はプロトコルを、より良く明らかにできる。また、特徴データを用いて、確実に衛生浄化が実施できるように、電気モーターに通電する電力の運転パラメータを選択できる。また、幾つかの実施形態では、特徴データのライブラリを記憶することもできる。例えば、特徴データのライブラリを固定媒体に記憶し、電気モーターを使用する設備からこのライブラリを遠隔に離して設置することもできる。
【0055】
以上、本発明の態様を紹介してきたが、さらに他の特徴、実施形態及び考察を以下説明する。
【0056】
上記した実施形態では食品加工について記載してきたが、本明細書で述べる衛生浄化実施用に構成された電気モーターは、適切と思われる他の環境でも使用可能なことを認識するべきである。例えば、前記した駆動モーターは、食品及び飲料流通業界、梱包及びコンバーティング業界、医薬、材料成形、医療研究及び自動化、ロボット工学、印刷、ラベリング、航空宇宙産業、及び適切と思われる他の任意の環境を含む、産業界や状況で使用できる。
【0057】
この例では、駆動モーターは「衛生的モーター」のことをいう。つまり、衛生基準が課せられている環境で厳格な操作及び周期的浄化に耐えうるように、駆動モーターを設計する。一例として、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、肉鶏加工設備の設計用に、Current Good Manufacturing Practices(CGMP)を定めている。「21世紀のGood Manufacturing Practices(GMPs)−食品加工、添付A、2004年8月9日」参照。この手引書では、FDAによって加工用設備に関する基準(「予防制御」と称される)を推奨している。こうした基準には以下が含まれる。つまり、加工用設備は、衛生的に設計すべきこと。微生物レベルまで清潔にするべきこと。自己排出式であること(つまり、製品又は液体回収できないこと)。中空領域を密封封印するべきこと。窪みを有してはならないこと。衛生的操作性能をもつべきこと。封入物を衛生的に維持すること。他のプラント装置と衛生的に両立するべきこと。及び、バリデーションされた洗浄及び浄化プロトコルを有すること。もちろん、様々な他の基準、規則や規定が、別の当局や規制制定機関によって適用、及び/又は発表されている。
【0058】
また、様々な衛生浄化剤を使用して、駆動モーター102などの設備を衛生浄化できる。例示すると、過酢酸、ヨウ素又は塩素などの4級アンモニウム塩(QAC類)を含有する薬剤などが挙げられる。また、その他の薬剤が知られており広く使用されている。要するに、本明細書に記載した処理プロセスは、公知の又は今後考案される他の処理方法と組み合わせて使用し、設備について適切又は費用効果がある衛生浄化を確実に行うことができる。
【0059】
前記駆動モーターには、適切と思われる如何なる種類のモーターも含むことができる。例えば、前記駆動モーターは、交流(AC)又は直流(DC)によって作動する。例えば、前記駆動モーターには、以下に限定されるものではないが、誘導モーター、永久磁石モーター、複合モーター、同期モーター、分巻モーター、ステッパモーター、ブラシレスDCモーター、ヒステリシスモーター、リラクタンスモーター、交直両用モーター、及びその他種類の様々な1以上の任意のモーターが含まれる。また、前記駆動モーターは、適切と思われる任意の材料を有する。例えば、ステンレススチールが使用できる。また、別の例では、ポリマー材料が使用でき、そのポリマー材料に抗菌剤を含ませてもよい。
【0060】
一般に、温度制御モジュール及び振動制御モジュールの少なくとも一方を、コンピュータで実行できる。また、通常、前記コンピュータは、固定機械可動媒体(例えば、ROM、RAM又は大容量記憶装置)に、機械実行可能命令を記憶できる。前記した機械実行可能命令(本明細書では、「ソフトウエア」、「アプリケーション」、「クライアント」、「プロセス」、「プラグイン」及びその他類似の用語で呼ぶことにする)は、本明細書で後に詳細に説明するように、一般的に、機能性を提供する。幾つかの実施形態では、ソフトウエアはダウンロードされて、通信回線を介して記憶される(RAM)。
【0061】
機械可読媒体に記憶された機械実行可能命令の幾つかは、操作環境を含むことができる。本明細書に提示したソフトウエアは、好適と思われる任意の言語で開発できる。開発言語の例としては、以下に限定されるものではないが、アセンブラ、C(及びその変形)、ジャバ、ジャバスクリプト及びその他が含まれる。ソフトウエアの特徴は、他のソフトウエアと共に実行できることである。例えば、ユーザーインターフェースをXML、HTMLなどで提供して、ブラウザで実行できる。また、適切と思われる任意の種類のデータベースにデータを記憶し、適切なツールを用いて処理できる。例えば、画像と共に、入手可能な金型の形状及び目録を、オラクル社製のORACLE、レッドウッド ショアーズ、カリフォルニア州;マイクロソフト社製のSQL SERVER、レドモンド、ワシントン州;及びSAP社製のSYBASE、ダアブリン、カリフォルニア州などのデータベースに記憶してもよい。さらに、本明細書中で生み出されたデータライブラリ(以下で説明する)は、このようにして管理できる。つまり、適切と思われる任意のツールを用い、使用者、設計者、又は他の同様な利害関係者は、ソフトウエアを開発可能である。
【0062】
アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)モジュールは、モーターなどの部品と共に、又は部品として包含できる。この結果、温度制御モジュール及び振動制御モジュールの少なくとも一方を、第三者の部品(例えば、モーター運転を制御するシステム装置など)、並びに、第三者のデータ(例えば、基準設定当局からのデータ)を用いて認識及び共同作業するように構成できる。また、APIは、当初のソフトウエアインストールを備えるか、遠隔サーバーからダウンロードされるか、又はさもなければ、利用可能に供される。
【0063】
また、前記のソフトウエアは、様々な温度センサ及び/又は振動センサと通信、或いは、前記センサからのデータを受信するように構成される。
【0064】
本明細書に開示する方法を実行するため使用するソフトウエアは、ホスト付加的な特徴を有する。例えば、アップル社(iOS環境)、クパーチノ、カリフォルニア州;マイクロソフト社(WINDOWS環境)、レドモンド、ワシントン州;グーグル社(アンドロイド)、マウンテンビュー、カリフォルニア州、及びその他の同様な環境などの演算環境で、設定した命令を実施できる。
【0065】
温度制御モジュール及び振動制御モジュールの少なくとも一方を実行するのに好適なコンピュータは、遠隔コンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットコンピュータ、スマートフォン、及び特殊コンピュータの少なくとも1つが含まれる。計算装置類の高度に構成された性質を考慮して、「コンピュータ」の用語は、要素類の任意の構成、及び/又は、目標の機能性、並びにその拡張性を提供するのに必要な任意のソフトウエアを含むものとする。幾つかの実施形態では、前記のコンピュータは少なくとも1つのマイクロ制御器を有する。
【0066】
本明細書で教示することは、現有の設備に使用可能であり、例えば、温度制御モジュール及び振動制御モジュールの少なくとも一方で利用可能である。別の幾つかの実施形態では、前記モーターは、本明細書に記載したように、周期的に工程サイクルを実行できるようにオンボード電子機器に搭載できる。
【0067】
また、本明細書に記載した幾つか用語は、先行する関連仮特許出願に記載した用語と一致、又は、部分的に一致する。当業者は、用語の様々な用法を認識して、区別することができる。しかし、矛盾が生じる場合には、本開示に記載する用語が優先する。幾分かの修正用語は、単に説明のために用いられることを認識するべきである。用語に関して如何なる矛盾もないことを解釈し、推し量るべきである。
【0068】
また、性能、材料、アセンブリ、又はその他パラメータなどに関する基準は、設計者、製造者、利用者、所有者、運転者、又は他の利害関係者によって判断されるべきものである。如何なる基準に係る特別な規定も含まれず、本明細書の開示によって類推されるものである。
【0069】
また、本明細書に述べるように、前記の電気モーターは、「少なくとも一定の温度」(例えば、)130F(54.4℃)にまで昇温される。しかし、この記載は、何の限定もない無制限の範囲を表すと解釈されるものではない。つまり、過大な温度では電気モーターが損傷する可能性があり、通常運転に戻す前に、長い冷却期間が必要であることも理解されたい。従って、一定の現実的な限度があると解釈するべきである。
【0070】
また、本明細書で述べる、「周期的」の用語は、進行中の過程を意味する。つまり、作業が周期的間隔で実行されるとき、使用者の必要性を満たすために、及び、所望程度の結果が得られるように、周期的規則に基づいて前記作業が実行されるものとする。この結果、「周期的規則」の用語は、規定した程度の性能を満たすのに適した間隔又は頻度で、作業を実施するものと解釈するべきである。また、一般に、「自動的」の用語は、人の関与又は起動なしに、あるプロセスを開始することを意味する。また、「半自動」の用語は、限定的な人の関与又は係わりのあるなかで、あるプロセスを開始することを、一般的に意味する。
【0071】
本開示の原理、態様、及び実施形態を引用して本明細書で言及した事柄、及びその具体例は、その構造的及び機能的等価体を包含することを意味する。また、こうした等価体は現在知られている等価体のみならず、将来開発される等価体も含まれることも意味する。つまり、構造に拘わらず、同じ機能を果たすように開発された要素を意味する。
【0072】
様々な他の構成部品が、本明細書で教示した態様を提供するために包含及び所望される。例えば、追加の材料、材料どうしの組合せを用いて、及び/又は材料を省略して、本教示の範囲のなかで追加の実施形態を提供できる。
【0073】
本発明又は本発明の実施形態の要素を導入する際、冠詞「a」、「an」、「the」は、1以上の要素があることを意味することを意図する。同様にして、形容詞の「another」をある要素につけて用いる場合、1以上の要素を意味することを意図する。また、「including」及び「having」の用語は、示された要素のほかに追加要素があることを包括的に意味することを意図する。また、「exemplary」の用語は、多数の可能な実施形態のなかの一例を意味するものとして解釈するべきである。また、「exemplary」の用語は、必ずしも、より優れた或いは劣った実施形態であると解釈されるべきではないが、あるときは、こうした場合であることもあり得る。
【0074】
以上、例示した実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変形が可能であり、要素を等価体で置き換えられることを当業者は理解できよう。さらに、当業者は、多数の変更を評価して、本発明の本質的範囲から逸脱することなく、特別な装置、状態又は材料を本発明の教示に適用するであろう。従って、本発明は、本発明を実施するのに考慮される最良の形態として開示した特別な実施形態だけに限定されるものではなく、本発明は添付した請求項の範囲に入る全実施形態を含むものである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6
図7