(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を
図1〜4を参照しながら説明する。
【0012】
図1において、本発明の一実施形態の熱膨張性耐火性複合材1は、第1の熱膨張性耐火材2と、第1の熱膨張性耐火材よりも高い膨張温度で膨張を開始する第2の熱膨張性材耐火材3とが積層されてなる。
【0013】
本実施形態では、第1の熱膨張性耐火材2および第2の熱膨張性材耐火材3は、平板シート状の成形体である。第1の熱膨張性耐火材2および第2の熱膨張性材耐火材3は、同時成形により形成されてもよいし、第1の熱膨張性耐火材2および第2の熱膨張性材耐火材3を別々に平板シート状に成形した後で、互いに貼り合わせてもよい。
【0014】
以下、熱膨張性耐火性複合材1の熱膨張性耐火性複合材2,3を構成する熱膨張性耐火材料について詳細に説明する。
【0015】
第1の熱膨張性耐火材2は、樹脂成分と、第1の膨張開始温度を有する第1の熱膨張性黒鉛と、無機充填剤とを含む第1の熱膨張性耐火性樹脂組成物から形成され、第2の熱膨張性材耐火材3は、樹脂成分と、第1の膨張開始温度よりも高い第2の膨張開始温度を有する第2の熱膨張性黒鉛と、無機充填剤とを含む第2の熱膨張性耐火性樹脂組成物から形成される。このため、第2の熱膨張性材耐火材3は第1の熱膨張性材耐火材2よりも高い温度で膨張を開始する。なお、第1の熱膨張性耐火材2における樹脂成分と第2の熱膨張性耐火材3における樹脂成分は同じであっても異なっていてもよく、第1の熱膨張性耐火材2における無機充填剤と第2の熱膨張性耐火材3における無機充填剤は同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
熱膨張性耐火材2,3の樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、ゴム物質、熱硬化性樹脂、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0018】
ゴム物質としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエンゴム(1,2−BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等が挙げられる。
【0019】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0020】
これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
樹脂成分のうち、後述する熱膨張性黒鉛を配合する場合に、その膨張温度以下で成形可能であるという観点からは、樹脂成分はポリオレフィン系樹脂またはゴム物質が好ましく、中でもポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0022】
また、防火性能をより向上させるために、充填剤を多量に配合することが可能であるという観点からは、樹脂成分は上述のゴム物質が好ましい。
【0023】
さらに、熱膨張性耐火材2,3の空洞内への固定を可能にするために、熱膨張性耐火樹脂組成物自体が粘着性を有してもよい。粘着性を付与する方法としては、例えば、ゴム物質に粘着付与樹脂、可塑剤、油脂類、低分子量化合物等を添加することが挙げられる。粘着付与樹脂としては特に限定されず、例えば、ロジン、ロジン誘導体、ダンマル樹脂、コーパル、クマロン−インデン樹脂、ポリテルペン、非反応性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、石油系炭化水素樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
粘着性を付与する可塑剤は、単独で粘着性を発現させることは難しいが、前記粘着付与樹脂との併用で粘着性を向上させることができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、リシノール酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、塩化パラフィン等が挙げられる。
【0025】
また、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、樹脂成分はフェノール樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。特に分子構造の選択が広範囲で、熱膨張性耐火性樹脂組成物の防火性能や力学物性を調整することが容易であることから、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、基本的にはエポキシ基を持つモノマーと硬化剤を反応させて得られる樹脂である。エポキシ基をもつモノマーとしては、2官能のグリシジルエーテル型、2官能のグリシジルエステル型、多官能のグリシジルエーテル型が挙げられる。
【0026】
また、エポキシ樹脂には、他の樹脂が添加されていてもよい。特許第4691324号に記載したように、エポキシ樹脂には、種々の形状または寸法の空洞内に挿入することが
可能になるように、可撓性が付与されてもよく、可撓性を付与する方法は特許第4691324号に記載されている。前記エポキシ樹脂の可撓性を調整することによって、硬い板状物から柔軟性を有する成形体が得られ、種々の空洞の形状および寸法に応じて、熱膨張性耐火材2,3を挿入することが可能となる。
【0027】
熱膨張性耐火材2,3を構成する熱膨張性耐火性樹脂組成物に含有される膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。このように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、さらにアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用してもよい。
【0028】
熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は材料によって異なり、第1の熱膨張性耐火性樹脂組成物を構成する第1の膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛と、第2の熱膨張性耐火性樹脂組成物を構成する、第1の膨張開始温度よりも高い第2の膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛とを当業者は適宜選択し得る。例えば、第1の熱膨張性耐火性樹脂組成物を構成する熱膨張性黒鉛としては、エア・ウォーター株式会社製50LTE−UN(膨張開始温度170℃)が挙げられ、第2の熱膨張性耐火性樹脂組成物を構成する熱膨張性黒鉛としては、エア・ウォーター株式会社製CA−60(膨張開始温度210℃)が挙げられる。
【0029】
一つの実施形態では、第1の熱膨張性耐火材2を形成する第1の熱膨張性耐火性樹脂組成物は熱膨張性黒鉛を含有し、第2の熱膨張性耐火材3を形成する第2の熱膨張性耐火性樹脂組成物は、第1の熱膨張性耐火性樹脂組成物に含まれる熱膨張性黒鉛の膨張開始温度よりも高い膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛を含有する。第2の熱膨張性耐火性樹脂組成物に含まれる熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は、第1の熱膨張性耐火性樹脂組成物に含まれる熱膨張性黒鉛の膨張開始温度よりも好ましくは20℃以上高く、より好ましくは30℃以上高い。
【0030】
別の実施形態において、または上記の実施形態の好ましい態様として、第2の熱膨張性耐火材3の膨張開始温度は、第1の熱膨張性耐火材2の膨張開始温度よりも高く、好ましくは20℃以上高く、より好ましくは30℃以上高い。
【0031】
一つの実施形態では、第1の熱膨張性耐火材2を形成する第1の熱膨張性耐火性樹脂組成物は150℃以上の膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛を含有し、第2の熱膨張性耐火材3を形成する第2の熱膨張性耐火性樹脂組成物は、第1の熱膨張性耐火性樹脂組成物に含まれる熱膨張性黒鉛の膨張開始温度よりも高い膨張開始温度、好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは230℃以上の膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛を含有する。この実施形態において、第2の熱膨張性耐火性樹脂組成物に含まれる熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は、第1の熱膨張性耐火性樹脂組成物に含まれる熱膨張性黒鉛の膨張開始温度よりも好ましくは20℃以上高く、より好ましくは30℃以上高い。
【0032】
別の実施形態において、または上記の実施形態の好ましい態様として、第1の熱膨張性耐火材2の膨張開始温度は150℃以上であり、第2の熱膨張性耐火材3の膨張開始温度は第1の熱膨張性耐火材2の膨張開始温度よりも高く、好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは230℃以上高い。
【0033】
熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより大きいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層が得るのに十分であり、また粒度が20メッシュよ
り小さいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
【0034】
熱膨張性耐火材2,3を構成する熱膨張性耐火性樹脂組成物に含有される無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
【0035】
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0036】
無機充填剤の中でも、含水無機物および/または金属炭酸塩が好ましい。含水無機物の中でも、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物は、生成する水の量が多く、より防火性能を発揮するため特に好ましい。金属炭酸塩の中でも、周期律表II族に属する金属炭酸塩、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウムは、炭酸反応が生起しやすいため、特に好ましい。
【0037】
無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
【0038】
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
【0039】
熱膨張性耐火材2,3を構成する熱膨張性耐火性樹脂組成物では、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を添加してもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の
観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、および、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0041】
化学式(1)中、R1およびR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0042】
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR
CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
【0043】
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
熱膨張性耐火性樹脂組成物において、熱膨張性黒鉛の配合量は、樹脂成分100重量部に対して10〜300重量部が好ましい。配合量が10重量部以上では、体積膨張率が低く樹脂サッシを構成する合成樹脂製部材が焼失した部分を埋める程度の防火性能を有する。300重量部以下であると、組成物が機械的強度が使用に耐えられる程度に維持される。より好ましくは、20〜250重量部である。
【0045】
熱膨張性耐火性樹脂組成物において、無機充填剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対して30〜400重量部が好ましい。配合量が30重量部以上では、十分な防火性能が得られる。400重量部以下であると、組成物が機械的強度が使用に耐えられる程度に維持される。より好ましくは40〜350重量部である。
【0046】
熱膨張性耐火性樹脂組成物において、リン化合物を添加する場合、リン化合物の配合量
は、樹脂成分100重量部に対して30〜300重量部である。配合量が30重量部以上であると、膨張断熱層の強度を向上させる効果が発揮され、300重量部以下であると、組成物が機械的強度が使用に耐えられる程度に維持される。より好ましくは40〜250重量部である。
【0047】
熱膨張性黒鉛と無機充填剤の合計量は、樹脂成分100重量部に対して40〜500重量部が好ましい。合計量が40重量部以上であると、十分な膨張断熱層が得られ、500重量部以下であると、組成物が機械的強度が使用に耐えられる程度に維持される。より好ましくは、70〜400重量部である。
【0048】
さらにリン化合物を添加させる場合、リン化合物、熱膨張性黒鉛および無機充填剤の合計量は、樹脂成分100重量部に対して70〜500重量部が好ましい。合計量が70重量部以上であると、十分な膨張断熱層が得られ、500重量部以下であると、組成物が機械的強度が使用に耐えられる程度に維持される。より好ましくは100〜400重量部である。
【0049】
さらに本発明に使用する熱膨張性耐火性樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0050】
さらに本発明に使用する熱膨張性耐火性樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0051】
熱膨張性耐火材2,3の各々は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
【0052】
第1および第2の熱膨張性耐火材2,3を構成する第1および第2の熱膨張性耐火性樹脂組成物は、特に限定されないが、好ましくは50kW/m
2の加熱条件下で30分間加
熱した後の体積膨張率が3〜50倍の材料である。体積膨張率が3倍以上であると、熱膨張性耐火材2,3が膨張性能を発揮するのに十分な程度に膨張し、また50倍以下であると膨張断熱層の強度が維持され、火炎の貫通が防止される。より好ましくは、熱膨張性耐火材2,3の体積膨張率が5〜40倍であり、さらに好ましくは8〜35倍である。
【0053】
次に、
図2(a)〜(c)を参照しながら、
図1の熱膨張性耐火性複合材1の作用について説明する。
【0054】
まず、
図2(a)に示すように、熱膨張性耐火性複合材1を建具の開口枠体10の上に配置する。このとき、熱膨張性耐火性複合材1の第1の熱膨張性耐火材2は、開口枠体10の空洞内で第2の熱膨張性耐火材3よりも開口枠体10に近い側に配置される。
図2(a)において、火災は矢印の方向から発生していると仮定する。
【0055】
火の勢いが強くなり、第1の熱膨張性耐火材2における温度が第1の熱膨張性耐火材2の熱膨張性黒鉛の膨張開始温度以上の温度になると、
図2(b)に示すように、第1の熱
膨張性耐火材2が先に膨張を開始する。
【0056】
続いて、火が燃え続け、第2の熱膨張性材耐火材3における温度が、第1の熱膨張性耐火材2の熱膨張性黒鉛の膨張開始温度よりも高い第2の熱膨張性耐火材3の熱膨張性黒鉛の膨張開始温度以上の温度になると、
図2(c)に示すように、第2の熱膨張性耐火材3も膨張を開始する。このように、先に第1の熱膨張性耐火材2が加熱により膨張して膨張層を形成することで断熱層として作用し、第2の熱膨張性耐火材3の膨張開始を遅らせることができる。また、第2の熱膨張性耐火材3は第1の熱膨張性耐火材2と時間を空けて膨張するため、開口枠体10の熱による変形に追従して膨張層を形成することもできる。第1および第2の熱膨張性耐火材2,3を構成する材料、熱膨張性黒鉛の種類、および厚みを適宜選択することにより、第1および第2の熱膨張性耐火材2,3の膨張のタイミングを制御することができ、建具の耐火性が向上する。
【0057】
図3は、建具としての防火性樹脂サッシ5に
図1の熱膨張性耐火性複合材を配置した状態を示す正面図、
図4は、
図3のA−A線に沿う要部断面図である。防火性樹脂サッシ5は引き違い窓の態様として示している。
図3,4において、防火性樹脂サッシ5は住宅等の構造物に形成された矩形の開口部に固定されるものであって、開口部を有する矩形の開口枠体10と、その内部に水平方向に移動可能な引き違いの2枚の障子20,20とを備えている。
【0058】
建具枠体としての開口枠体10は枠部材としての左右の縦枠材11,12および上下の横枠材13,14から構成され、各枠材11〜14に囲まれた内部が開口部となっている。そして、建具枠体としての2枚の障子20は前記の開口部を閉塞するもので構造的には略同一構成であり、左右の縦框材21,22と上下の横框材23,24から矩形に形成され、中央側の縦框材が前後に重なって召し合わせ部となっている。開口枠体10および障子20,20は、合成樹脂製部材である縦横の枠材11〜14と、縦横の框材21〜24とをそれぞれ組み合わせて構成されている。
【0059】
防火性樹脂サッシ5は、前記のように開口枠体10に、2枚の障子20,20がスライド可能に支持されるものであり、障子20,20の外周枠体を構成する枠部材としての縦横の框材21〜24が、内部に位置する窓ガラス25を支持している。窓ガラス25は鉄製網入りガラスからなり、耐火性板材を構成する。窓ガラス25は防火性樹脂サッシ5の室外と室内を仕切る仕切り面を構成し、縦框材21,22の段差部に位置し、ゴムシール材やシーリング剤26で固定されている。なお、耐火性板材としては透光性を有する窓ガラスに限らず、金属板材やケイカル板のような遮光性を有するものでもよい。
【0060】
防火性樹脂サッシ5の構成は、特に限定されるものではなく、サッシを構成する上下左右の各枠材11〜14、各框材21〜24は、合成樹脂の押出し材で形成され各枠材11〜14,21〜24の長手方向に沿って延びる空洞を有し、長手方向と直交する横断面の形状が一つあるいは複数の空洞の空間を有するものであれば、周知のいずれの形態であってもよい。またサッシを構成する各枠材、各框材に用いられる合成樹脂は、硬質ポリ塩化ビニルやABS樹脂等いずれでもよいが、防火性能に有利という観点からは硬質塩化ビニルが好ましい。
【0061】
開口枠体10を構成する縦枠材11,12は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂を押出し成型した長尺材を切断して形成したものであり、縦枠材11,12を長手方向に貫通して延びる空洞11a,12aをそれぞれ備えている。また、開口枠体10を構成する横枠材13,14も、図示していないが同様に、横枠材13,14を長手方向に貫通して延びる空洞を備えている。
【0062】
障子20を構成する左右の縦框材21,22は、同様に合成樹脂を押出し成型した長尺材を切断して形成したものであり、横断面には長手方向に貫通して延びる空洞21a,22aをそれぞれ備えている。また、障子20を構成する横框材23,24も、図示していないが同様に長手方向に貫通して延びる空洞を備えている。
【0063】
本実施形態に示す防火性樹脂サッシ5は、開口枠体10および障子20を構成する合成樹脂製部材である各枠材11〜14および各框材21〜24の空洞に、熱膨張性耐火性複合材1が挿入されている。すなわち、縦枠材11の空洞11a,12aには熱膨張性耐火材料の平板状のシートを短冊状に切断した熱膨張性耐火性複合材1が縦枠材11の長手方向に沿って挿入されている。熱膨張性耐火性複合材1は片面に粘着層を有しており、縦枠材11の2つの空洞にそれぞれ挿入され、粘着層により貼り付けられている。なお、図示していないが、横枠材13,14にも長手方向に貫通して延びる空洞内に、同様に熱膨張性耐火性複合材1が挿入されている。
【0064】
また、障子20の縦框材21,22の空洞21a,22aにも、熱膨張性耐火材料のシートを短冊状に切断した熱膨張性耐火性複合材1’が挿入されている。熱膨張性耐火性複合材1’は、熱膨張性耐火性複合材1と同じ組成であっても異なる組成であってもよい。熱膨張性耐火性複合材1’も平板状のシートであり、それぞれ縦框材21,22の空洞21a,22aにおける窓ガラス25の面と平行な壁面に接した状態で挿入されている。そして、障子20の上下の横框材23,24にも、図示していないが長手方向に貫通して延びる空洞内に耐火熱膨張性耐火性複合材1’が挿入されている。
【0065】
このように、開口枠体10の空洞と、障子20,20の空洞には、多数の熱膨張性耐火性複合材1,1’が窓ガラス25の面に沿って平行な状態に並べられ、空洞の内壁面に粘着層で密着しており、耐火面を形成している。
【0066】
熱膨張性耐火性複合材1,1’は、厚さが数mmの熱膨張性耐火材シートを短冊状に切断し、この耐火材シートを空洞の窓ガラス25の面と平行な壁面に沿わせて挿入している。
【0067】
熱膨張性耐火性複合材1,1’は、合成樹脂製部材の空洞内に挿入するために、その空洞の形状と寸法に合った成形体でもよく、空洞の形状や寸法に関係なく挿入可能になることから、短冊状またはテープ状の成形体が好ましい。 熱膨張性耐火性複合材1,1’は、
図1および2に関して説明したように、膨張開始温度が異なる少なくとも2種類の熱膨張性耐火材を積層させた部材であり、火災時等の高温にさらされると、体積膨張して膨張断熱層を形成し、火災の際に各枠材11〜14と各框材21〜24等の合成樹脂製部材が燃焼して焼失した部分を、熱膨張性耐火材2,3の膨張断熱層が埋めて、火炎の貫通を防止する。
【0068】
熱膨張性耐火性複合材1,1’の空洞内での固定は、短冊状またはテープ状の成形体の場合、粘着剤または接着剤を用いる方法、ねじで固定する方法、空洞と熱膨張性耐火性複合材1,1’のシートの空間に丸型等の発泡体等を挿入する法、あるいは発泡体の原料を注入したあと発泡させて固定する方法等が挙げられる。また空洞の形状と寸法に合った成形体の場合は、そのまま挿入するだけでもよく、前記した固定方法を用いてもよい。
【0069】
熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物の成形体は、前記の樹脂組成物の混練物を作製した後成形することにより、空洞の形状および寸法に合った成形体を、またシート状またはロール状の成形体を作製してから切断することにより、短冊状またはテープ状の成形体を得ることができる。さらに溶剤を混練時に添加してから成形後、溶剤を揮発させる方法であってもよい。
【0070】
樹脂組成物の混練物は、前記の各成分を押出機、ハンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール等、またエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の場合は、さらに、ライカイ機、遊星式撹絆機等、公知の混練装置を用いることにより得ることができる。また二液性の熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂の場合は、二液それぞれと充填剤の混練物を、前記混練方法にて別々に作製しておき、プランジャーポンプ、スネークポンプ、ギアポンプ等でそれぞれの混練物を供給し、スタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混合を行って混錬物を作製してもよい。
【0071】
樹脂組成物の成形方法としては、前記の混練物を例えば、プレス成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等、公知の方法を用いて成形することができる。また二液性の熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂の成形方法としては、さらにSMC(Sheet Molding Compound)等によるロール成形、ロールコーターやブレードコーターによるコーター成形等、適宜形状に応じて公知の方法を用いることができる。
【0072】
熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂の硬化方法は、特に限定されず、前記プレスやロールによる加熱、または成形ライン中の加熱炉等、成形と硬化を連続で行う方法、あるいは成形後加熱炉に投入する方法等、公知の方法によって行うことができる。また、溶剤を用いて成形する場合は、前記と同様な方法にて溶剤を揮発することができる。
【0073】
前記の成形方法によって成形されたシート状またはロール状の成形体を、短冊状またはテープ状に成形する方法としては、切断加工、スリット加工、輪切り加工等公知の方法を用いることができる。樹脂組成物の成形体が短冊状あるいはテープ状の場合の厚みは、0.1〜6mmが好ましい。厚みが0.1mm以上であると、加熱によって形成される膨張断熱層の厚みによって、十分な防火性能を発揮することができる。また、6mm以下であれば、空洞内への挿入が容易であり得る。より好ましくは厚みは0.3〜4mmである。
【0074】
熱膨張性耐火性複合材1,1’を構成する熱膨張性耐火材2,3は、空洞内への挿入や固定のしやすさから、剛性のある材料が好ましい。例えば、熱膨張性耐火材を形成する材料のデュロメータ硬さが、JISK7215に準拠してタイプAで測定した場合に、65以上が好ましい。75以上であれば、より好ましく、80以上であれば、さらに好ましい。デュロメータ硬さが大きくなる程、熱膨張性耐火材2,3の剛性が増し、空洞内へ挿入することがより簡便になるばかりでなく、空洞内への固定も容易にすることができ、防火性樹脂サッシの製造を簡略化することができる。
【0075】
樹脂組成物は、膨張断熱層の強度をさらに向上させるために、不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットが積層されていてもよい。不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットとしては、無機繊維あるいは金属繊維状材料からなるものが好ましく、例えば、ガラス繊維の織布(ガラスクロス、ロービングクロス、コンティニュアスストランドマット等)あるいは不織布(チョップドストランドマット等)、セラミック繊維の織布(セラミッククロス等)あるいは不織布(セラミックマット等)、炭素繊維の織布あるいは不織布、ラスまたは金網から形成されるネットまたはマットが好適に用いられる。
【0076】
熱膨張性耐火材は、樹脂組成物の成形体の片面または両面に、施工性や膨張層の強度を改善する目的で基材層が積層されていてもよい。基材層に用いられる材料としては、例えば、布、ポリエステルやポリプロピレン等からなる不織布、紙、プラスチックフィルム、割布、ガラスクロス、アルミガラスクロス、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、アルミニウム箔積層紙、および、これらの材料の積層体等が挙げられる。これらの基材層のうち、粘着剤または接着剤の塗工や塗布がしやすいことから、ポリエチレンラミネートポリエステル不織布が、防火性能上有利に働くことから、アルミニウム箔積層紙、アルミガラスクロ
スが好ましい。また基材層の厚みは、防火性能あるいは施工上影響を及ぼさなければいずれでもよいが、好ましくは0.25mm以下である。
【0077】
さらに、熱膨張性耐火材は、不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットと基材層との積層体を、樹脂組成物からなるシート表面に積層して形成してもよい。積層体としては、例えば、アルミガラスクロスあるいはポリフィルムとガラスクロスの積層体等が挙げられる。基材層または不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットを積層あるいは含浸させる方法としては、樹脂組成物を成形する段階で一体化する方法が挙げられる。
【0078】
熱膨張性耐火材に、粘着剤または接着剤を予め塗工あるいは施工時に塗布し、合成樹脂製部材の空洞内に固定する場合、用いる粘着剤または接着剤としては、合成樹脂製部材の樹脂に接着または粘着するものであればいずれでもよいが、例えば、アクリル系、エポキシ系、ゴム系等が挙げられる。また、予め成形体に粘着剤または接着剤層を有する基材を積層する場合は、成形時に積層してもよく、両面に粘着剤または接着剤を有する基材を成形体に積層してもよい。
【0079】
熱膨張性耐火材は、前記のように防火性能に優れているため、防火性能を発現するのに必要な熱膨張性材料を減らすことが可能になるため、防火性樹脂サッシの軽量化と低コスト化を図ることが可能となる。また、前記のように、公知の技術を用いて簡単に短冊状またはテープ状成形体を製造可能であり、空洞内の形状および寸法に関係なく容易に挿入することができ、簡便に防火性樹脂サッシを製造することが可能となる。
【0080】
前記の如く構成された本実施形態の防火性樹脂サッシ5は、合成樹脂からなる樹脂製部材の空洞内に、熱膨張耐火材料からなる熱膨張性耐火性複合材1,1’を、窓ガラス25等の板材の面に沿う方向に熱膨張性耐火性複合材1,1’の幅広面耐火面が形成されるように選択して挿入することにより、火災時に合成樹脂製部材の樹脂部分が燃焼して焼失した部分を、耐火シートの膨張断熱層が埋めて火炎の貫通や、熱の進入を防止することができる。
【0081】
防火性樹脂サッシ5の室内側、あるいは室外側で火災が発生すると、火災の熱が合成樹脂製部材の空洞内に挿入された熱膨張性耐火性複合材1,1’を加熱し、まず防火性樹脂サッシ5の枠体11〜14,21〜24に近い側に配置された第1の熱膨張性耐火材2が膨張する。防火性樹脂サッシ5が燃焼し続けると、次に、第1の熱膨張性耐火材2、2’の膨張から時間を空けて第2の熱膨張性材耐火材3,3’が膨張する。熱膨張性耐火性複合材1,1’は全ての面が窓ガラス25に沿って平行に配置され、防火性樹脂サッシ5を例えば窓ガラス25に対し垂直な方向から見たとき大部分の面積が熱膨張性耐火性複合材1,1’により占められているため、熱膨張により形成された耐火断熱層がほぼ全面に隙間無く形成され、防火性能が安定する。特に、サッシ5の開口枠体10と障子20の間で熱膨張性耐火性複合材1,1’の各々が時間差で膨張することにより、開口枠体10と障子20の間の隙間が埋められ、耐火性が向上する。
【0082】
また、熱膨張性耐火性複合材1,1’は火災の熱源と幅広面で対面するため、熱が効率良く伝わって速やかに膨張する。このため、火災が発生した場合、迅速に防火性能を発揮することができる。
【0083】
さらに、熱膨張性耐火材である熱膨張性耐火性複合材1,1’と、耐火性板材である鉄製網入りガラスからなる窓ガラス25とで、防火性樹脂サッシ5の開口部を覆うように構成し、開口部が耐火面で覆われているため、火災時における局所的な弱点を除去することができ、防火性能を向上させることができる。熱膨張性耐火性複合材1自体が粘着性を有するか、あるいは片面に粘着剤が塗工されていると、合成樹脂製部材の空洞に挿入された
ときに、空洞の内壁面に粘着できて施工が容易となる。
【0084】
そして、熱膨張性耐火性複合材1,1として、体積膨張率が高く、断熱膨張層の強度がある熱膨張性耐火材を用いることにより、挿入する熱膨張性耐火材を減少することが可能となり、さらなる低コストを図ることができる。さらに樹脂組成物からなる成形体である耐火シートを用いることにより、公知の技術を用いて簡単に短冊状またはテープ状成形体を製造可能であり、空洞内の形状および寸法に関係なく容易に挿入することができ、簡便に防火性樹脂サッシを製造することが可能となる。
【0085】
ここまで、本発明を第1実施形態を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
・
図5の実施形態では、熱膨張性耐火性複合材1が開口枠体10の四つの辺の枠材11〜14に連続して配置されているが、
図6に示されるように、熱膨張性耐火性複合材1は、各枠材11〜14のうちの少なくとも一つにおいて長手方向に間隔を空けて整列した構成となっていてもよい。この場合、離間して隣り合う2つの熱膨張性耐火性複合材1の間の間隔は、間隔が大き過ぎると火災時に火が通過して防火性能が損なわれるが、好ましくは加熱時に熱膨張性耐火性複合材1が膨張して隣り合う2つの熱膨張性耐火性複合材1間の間隔が埋められ、それらの熱膨張性耐火性複合材1同士が接触する大きさに設定される。ただし、開口枠体10自体が耐火性を有するため、隣り合う2つの熱膨張性耐火性複合材1間の間隔が埋められない場合であっても本発明の範囲に包含される。一つの実施形態では、上下の横枠材13,14に一つの連続的な熱膨張性耐火性複合材1がそれぞれ配置され、左右の縦枠材11,12に、複数の熱膨張性耐火性複合材1が間隔を空けて配置される。別の実施形態では、熱膨張性耐火性複合材1は、上下側の横枠材13、14に複数の熱膨張性耐火性複合材1が間隔を空けて配置され、左右の縦枠材11,12に、一つの連続的な熱膨張性耐火性複合材1がそれぞれ配置されるか、複数の熱膨張性耐火性複合材1が間隔を空けて配置されてもよい。さらに、上記の実施形態において、枠材11〜14のうちのいずれか一つには、熱膨張性耐火性複合材1が配置されなくてもよい。火災時に全ての枠材の面を膨張材で塞がなくても、枠体自体にもある程度耐火性があるため、枠材11〜14の欠損部分(ビスで穴を開けている箇所や、切欠がある箇所)等のような弱い部分に少なくとも熱膨張性耐火性複合材1を貼り付ければ、耐火性を発揮する。また、放熱性も確保できる。さらに、上記の実施形態において、各枠材11〜14に配置される1つまたは複数の熱膨張性耐火性複合材1の長さの合計が、その枠体の全長の40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、または80%以上の長さである。
・熱膨張性耐火性複合材1の配置と、熱膨張性耐火性複合材1’の配置とは同じでも異なっていてもよい。
・熱膨張性耐火性複合材1が配置される位置は、枠材11〜14の空洞に長手方向に延びるものに限定されない。例えば、サッシ1の枠材11〜14に樹脂製の部品(ピース部材)が設けられている箇所や、サッシ1が特にアルミサッシである場合の枠材11〜14の欠損部分には、火が通過しやすいため、その上下15cm内の周囲に熱膨張性耐火性複合材1を優先的に配置することが望まれる。
・熱膨張性耐火性複合材1は枠材11〜14の外表面に配置されてもよい。加熱時に開口枠体10と障子20との間の空間を埋める位置で、枠材11〜14の外表面に貼り付ければ、建具に防火性能が付与される。
・熱膨張性耐火性複合材1が配置される位置は、枠材11〜14の空洞への直接貼り付け、つまり枠材11〜14の内側への張り付けに限られず、枠材11〜14の内部に配置される金属補強材に貼り付けて、枠材11〜14に挿入してもよい。
・熱膨張性耐火性複合材1は開口枠体10の上に直接配置される以外に、熱膨張性耐火性複合材1と開口枠体10の間に他の部材が介在していてもよいし、第1の熱膨張性耐火材2と第2の熱膨張性耐火材3とが直接接触せず、第1の熱膨張性耐火材2と第2の熱膨張性耐火材3との間にも他の部材が介在していてもよい。
・第1の熱膨張性耐火材2と第2の熱膨張性耐火材3に加えて、第1の熱膨張性耐火材2または第2の熱膨張性耐火材3と組成が同一であっても異なっていてもよい第3の熱膨張性耐火材やそれよりも多くの熱膨張性耐火材がさらに熱膨張性耐火性複合材1の構成要素として設けられてもよい。
・熱膨張性耐火性複合材1’の配置のパターンは、
図4に示すものに限定されず、熱膨張性耐火性複合材1の
図5および6など、熱膨張性耐火性複合材1と同様なパターンで障子20の一対のうちの少なくとも一方の、少なくとも一辺、すなわち障子10を構成する4つの枠材21〜24のうちの少なくとも一つの辺を構成する枠材に、複数の熱膨張性耐火性複合材1’が配置されていればよい。
・熱膨張性耐火性複合材1’が配置される位置も、框材21〜24の空洞に枠材21〜24の長手方向に延びるものに限定されない。例えば、鍵(クレセント)や取っ手の部分の取り付けのビス穴などの障子20の框材21〜24における欠損部分(例えば)には、火が通過しやすいため、その上下15cm内の周囲に熱膨張性耐火性複合材1’を優先的に配置することが望まれる。
・熱膨張性耐火性複合材1の各々は同じ形状かつ同じ大きさでなくてもよく、異なる形状および/または異なる同じ大きさでもよい。
・本発明は、防火性樹脂サッシだけでなく、金属、木、または金属、木、および樹脂のうちの少なくとも2つからなる複合材料から形成されたサッシや、障子、ドア(すなわち扉)、戸、ふすま、および欄間等の建具にも適用される。
【0086】
(第2実施形態)
図7,8(A),8(B)は本発明を防火ドアに具現化した第2実施形態を示す。
図7は防火ドアの例を示す略図であり、
図8(A)は
図7のB−B線における要部横断面図、
図8(B)火災が生じた場合の
図8(A)の熱膨張性耐火性複合材1の防火性能を示す略断面図である。
【0087】
図7において、防火ドア6は、開口部を有する矩形の枠体30と、その内部にヒンジ35を介して回動する耐火性板材としてのドア本体40とを備えている。ドア本体40は取っ手42を有する。
図7において、左上が建物の上側かつ外側に対応する。
【0088】
建具枠体としての枠体30は左右の縦枠材31,32と上下の横枠材33,34とから構成され、各枠材31〜34に囲まれた内部が開口部となっている。
図7,
図8(A)を参照すると、枠体30の枠材31〜34の各々には熱膨張性耐火性複合材1が枠材31〜34の長手方向に沿って配置されている。この複数の熱膨張性耐火性複合材1の配置については上記の第1実施形態で説明した通りである。
図8(A)に示すように、熱膨張性耐火性複合材1の第1の熱膨張性耐火材2は枠材31〜34に近い側に配置され、第2の熱膨張性材耐火材3は第1の熱膨張性耐火材2の上に配置される。
【0089】
図8(B)に示されるように、矢印の方向から火災が発生すると熱膨張性耐火性複合材1が熱により膨張し、間隙36を塞ぐ。このとき、熱膨張性耐火性複合材1は
図2(a)〜(b)の実施形態で説明したように、まず第1の熱膨張性耐火材2が膨張し、次に第2の熱膨張性材耐火材3が膨張する。第2の熱膨張性耐火材3は第1の熱膨張性耐火材2と時間を空けて膨張するため、開口枠体10の熱による変形に追従して膨張層を形成することができる。これにより、ドア本体40と枠体30との間からの火災や煙の侵入が低減または防止され、防火性が大きく改善される。
【0090】
ドア本体40の表面または内部に、熱膨張性耐火性複合材1と同じ組成であっても異なる組成であってもよい熱膨張性耐火性複合材1’が配置されていてもよい。このとき、熱膨張性耐火性複合材1’は例えばドア本体40の幅広面と平行な壁面に沿わせて配置される。
【0091】
第2の実施形態も、熱膨張性耐火性複合材1の配置を、第1の実施形態の別例で説明
したのと同様に、種々の態様に変形可能である。
【0092】
本明細書中に引用されているすべての特許出願および文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0093】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0094】
1.熱膨張性耐火材の製造
実施例1
表1に示すように、第2の熱膨張性耐火材料として、エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製「JER825」)、ジアミン系硬化剤(三菱化学株式会社製「FL052」)、熱膨張性黒鉛(エア・ウォーター株式会社製CA−60(膨張開始温度210℃)、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製「ホワイトンSSB(赤)」)、およびポリリン酸アンモニウム(ドイツ国Budenheim社、TERRAJU S−10)をディスパー撹拌して
第1の耐火性樹脂組成物を得、これを150℃で15分間プレス成形して硬化させ、厚さ0.6mmのシート状の第2熱膨張層を得た。また、第1の熱膨張性耐火材料として、第2の膨張層に対して熱膨張性黒鉛をエア・ウォーター株式会社製「50LTE−UN」)に代えた以外は同じ組成のものを混練ロールで混練して第2の耐火性樹脂組成物を得、これを第2の膨張層を基材として積層し、150℃で15分間プレス成形して硬化させ、厚さ1.0mmのシート状の第1熱膨張層を得た。この第1熱膨張層と第2熱膨張層とからなる熱膨張性耐火性複合材を、耐火性評価の評価に用いた。
【0095】
実施例2
表1に示すように第1膨張層および第2膨張層の樹脂成分としてポリ塩化ビニル樹脂を用い、第1膨張層および第2膨張層を構成する第1の耐火性樹脂組成物および第2の耐火性樹脂組成物を混練ロール(オープンロール)にて混練し、第1膨張層と第2膨張層を同時押出成形した以外は、実施例1と同様にシート状の熱膨張性耐火材を得た。
【0096】
比較例1,2
樹脂成分をそれぞれエポキシ樹脂(比較例1)およびポリ塩化ビニル樹脂(比較例2)とし、熱膨張性黒鉛をエア・ウォーター株式会社製「50LTE−UN」)とする厚さ1.6mmの単一層のみからなるシート状の熱膨張性耐火材を得た。
【0097】
2.耐火性試験
実施例1,2および比較例1,2の熱膨張性耐火材から10cm(縦)×10cm(横)を切り出してコーンカロリメーター試験用サンプルとし、ISO−5660に準拠し、放射熱強度50kW/m
2にて各試験用サンプルを燃焼させたときの、加熱開始から15秒後および90秒後の膨張倍率について測定した。 結果は表1に示す通りである。
【0098】
実施例1,2の熱膨張性耐火性複合材では、比較例1,2の熱膨張性耐火性材と加熱開始から90秒後の膨張倍率はほぼ同じであるものの、比較例1,2の熱膨張性耐火性材と比較して、加熱開始から15秒後の膨張が抑えられ、膨張を制御できることが判明した。
【0099】
【表1】