(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した従来の位置補正手法では、例えば、ロボットのハンドなどを工作機械内に進入させ、当該ハンドを用いて工作機械のチャックなどに対してワークの着脱を行う際に、この着脱を行うロボットの作業姿勢を正確に補正することができないという問題があった。
【0008】
即ち、前記無人搬送車は、比較的自由度の高い車輪の動作によって移動するように構成されているため、ロボットが搭載された載置面は床面に対して傾き易く、また、当該傾きが、搭載するロボットの姿勢の変化に応じて、言い換えれば、ロボットの重心位置の変化に応じて、変動し易いという特性を有している。
【0009】
このため、上述したワークの着脱を行う際に、ロボットがそのハンドを工作機械内に進入させた姿勢を取るとき、言い換えれば、ロボットのアームが前記無人搬送車から大きくオーバハングした状態となるときの前記載置面の傾きは、ロボットのハンドが工作機械の機外に在り、アームが前記無人搬送車からオーバハングしていないか、或いはオーバハングしていたとしても少量である場合の傾きよりも、大きなものとなる。
【0010】
したがって、上述した従来の位置補正手法のように、較正用マーカである視覚ターゲットを工作機械の外表面に配設し、ロボットが工作機械の機外に在る状態で、ロボットの位置補正量(姿勢補正量)を取得しても、得られた位置補正量を用いては、ロボットのハンドが工作機械内にあるときに実行されるワークの着脱動作については、当該ロボットの姿勢を正確には補正することができないのである。
【0011】
そして、ワークを着脱する際のロボットの姿勢を正確に補正することができなければ、チャックに対してロボットハンドを正確に位置決めすることができず、例えば、前記チャックがコレットチャックなど、把持部の動き代(ストローク)が極僅かであるチャックの場合には、当該チャックに対してワークを確実に把持させることができないという問題を生じる。
【0012】
斯くして、このようにワークの着脱を確実に実行することができなければ、当該生産システムの稼働率が低下することになるため、当該生産システムにおいて、信頼性が高く、生産効率の良い無人化を実現することはできない。
【0013】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、無人搬送車に搭載されたロボットにより、工作機械に対して作業を行うように構成された生産システムにおいて、工作機械に対するロボットの作業姿勢をより高精度に補正することができる生産システムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、
ワークを加工する加工領域を機内に備えると共に、該加工領域内に配設されて、該加工領域内を撮像するカメラを備え
た工作機械と、
前記工作機械に対して作業を行うロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記工作機械に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
予め設定された動作指令を含む動作プログラムに従って、前記無人搬送車を前記作業位置に移動させた後、前記ロボットに、作業開始姿勢から移行して、姿勢を補正するための撮像姿勢を取らせ、ついで複数の作業姿勢を順次取らせるように構成された制御装置とを備え、
前記作業開始姿勢、撮像姿勢及び作業姿勢は、前記ロボットをティーチング操作することによって予め設定される生産システムであって、
姿勢補正用の識別図形を有する識別体が前記ロボットに配設され、
前記撮像姿勢は、前記工作機械に設けられた前記カメラ
によって前記識別体を撮像可能な姿勢であり、
前記制御装置は、前記工作機械と通信可能に構成され、該工作機械に対して、前記カメラにより撮像する撮像信号を送信すると共に、該カメラによって撮像された画像を前記工作機械から受信するように構成され、
更に、前記ティーチング操作時に、前記ロボットが撮像姿勢に移行した状態で、前記工作機械に前記撮像信号を送信して前記カメラにより前記識別図形を撮像させると共
に、撮像された画像を前記工作機械から受信して、得られた識別図形の画像を基準画像として予め記憶し、前記動作プログラムに従って、前記無人搬送車及びロボットを繰り返し動作させる際に、前記ロボットを、前記作業開始姿勢から前記撮像姿勢に移行させた状態で、前記撮像信号を前記工作機械に送信して前記カメラにより撮像される前記識別図形の画像を前記工作機械から受信し、受信した画像及び前記基準画像に基づいて、前記ロボットの現在の姿勢とティーチング操作時の姿勢との間の誤差量を推定し、推定された誤差量に基づいて、前記作業姿勢を補正するように構成された生産システムに係る。
【0015】
この生産システムによれば、前記制御装置により前記無人搬送車及びロボットが制御され、無人搬送車は工作機械に対して設定された作業位置に経由する。そして、ロボットは、前記制御装置による制御の下、予め設定された動作指令を含む動作プログラムに従った複数の作業姿勢を順次取ることにより、例えば、工作機械に対してワークの着脱などの作業を実行する。
【0016】
ロボットの動作は動作プログラムに従って制御され、無人搬送車が前記作業位置に移動した後、ロボットは、作業開始姿勢から動作を開始し、ついで、自身に取り付けられた姿勢補正用の識別図形を工作機械の加工領域内に配設されたカメラによって撮像可能な撮像姿勢をとり、次に複数の作業姿勢を順次取るように動作する。この作業開始姿勢、撮像姿勢及び作業姿勢は、予め、ロボットをティーチング操作することによって設定される。
【0017】
そして、制御装置は、前記ティーチング操作時に、ロボットを撮像姿勢に移行させた状態で、工作機械に撮像信号を送信してカメラにより識別図形を撮像させると共
に、撮像された画像を工作機械から受信して、得られた識別図形の画像を基準画像として予め記憶する。
【0018】
次に、制御装置は、動作プログラムに従って、無人搬送車及びロボットを繰り返し動作させる際に、ロボットを、作業開始姿勢から撮像姿勢に移行させた状態で、撮像信号を工作機械に送信してカメラによって識別図形を撮像させ、ついで、得られた識別図形の画像を工作機械から受信し、受信した画像及び前記基準画像に基づいて、ロボットの現在の姿勢とティーチング操作時の姿勢との間の誤差量を推定し、推定された誤差量に基づいて、前記作業姿勢を補正する。
【0019】
斯くして、この生産システムでは、ロボットが実際に作業する工作機械の加工領域内に配設されたカメラを用いるとともに、ロボットに、当該ロボットに配設された識別図形を前記カメラによって撮像する撮像姿勢を取らせることにより得られた識別図形の画像を用いて、ロボットの作業姿勢を補正するようにしているので、当該作業姿勢を正確に補正することができ、これにより、ロボットは、高い動作精度が求められる作業でも、当該作業を精度良く実行することができる。
【0020】
そして、このようにロボットが精度の良い作業を実行することで、当該生産システムは不要な中断を招くことなく高い稼働率で稼働し、結果、当該生産システムによれば、信頼性が高く、生産効率の高い無人化を図ることが可能となる。
【0021】
尚、本発明に係る生産システムでは、上記のように、前記制御装置によって前記誤差量を推定する態様(第1の態様)の他に、これに代えて、前記工作機械において、前記誤差量を推定する態様(第2の態様)を採ることができる。この第2の態様の場合、前記制御装置及び工作機械は以下のように構成される。
【0022】
即ち、制御装置は、工作機械と通信可能に構成され、ティーチング操作時に、ロボットが撮像姿勢に移行した状態で、工作機械に撮像信号を送信してカメラにより識別図形を撮像させると共に、動作プログラムに従って、無人搬送車及びロボットを繰り返し動作させる際に、ロボットを、作業開始姿勢から撮像姿勢に移行させた状態で、撮像信号を工作機械に送信してカメラにより識別図形を撮像させるように構成され、更に、ロボットの作業姿勢を補正するための補正データを工作機械から受信し、受信した補正データに基づいて作業姿勢を補正するように構成される。
【0023】
一方、工作機械は、ティーチング操作時に、カメラによって撮像された識別図形の画像を基準画像として記憶すると共に、前記動作プログラムに従った繰り返し動作時に、カメラによって撮像された識別図形の画像、及び基準画像に基づいて、ロボットの現在の姿勢とティーチング操作時の姿勢との間の誤差量を推定し、推定された誤差量に基づいて前記作業姿勢を補正するための補正データを生成して、前記制御装置に送信するように構成される。
【0024】
この第2の態様の生産システムにおいても、上述した第1の態様の生産システムと同様の作用、効果が奏される。
【0025】
また、前記第1及び第2の態様の生産システムにおいて、前記識別図形は、ロボットに配設された識別体に表示された態様を採ることができ、この識別体への表示は、当該識別体に識別図形を直接描画する態様や、識別図形が描画されたシート体を当該識別体に貼付ける態様を採ることができる。また、識別体をディスプレイから構成して、このディスプレイに識別図形を表示するようにしても良い。また、当該識別体は、前記ロボットが備えるハンドに装着された態様をとることができる。
【0026】
更に、前記カメラは、前記工作機械が工具を保持する工具主軸を備えた態様において、この工具主軸に着脱可能に設けられるホルダに装着された態様を採ることができる。このようなホルダは、工作機械が加工を実行している間においては、これを加工領域外に配置することができるので、カメラが切屑等によって汚損されるのを防止することができる。この結果、上記補正を精度良く行うことができる。
【0027】
また、上記の生産システムにおいて、前記識別体が備える図形は、複数の画素が二次元に配列されたマトリクス構造を備えた態様を採ることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明に係る生産システムによれば、ロボットが実際に作業する工作機械の加工領域内に配設されたカメラを用いるとともに、ロボットに、当該ロボットに配設された識別図形を前記カメラによって撮像する撮像姿勢を取らせることにより得られた識別図形の画像を用いて、ロボットの作業姿勢を補正するようにしているので、当該作業姿勢を正確に補正することができ、これにより、ロボットは、高い動作精度が求められる作業でも、当該作業を精度良く実行することができる。
【0029】
そして、このように、ロボットが精度の良い作業を実行することで、当該生産システムは不要な中断を招くことなく高い稼働率で稼働し、この結果、当該生産システムによれば、信頼性が高く、生産効率の高い無人化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、本例の生産システム1は、工作機械10、周辺装置としての材料ストッカ20及び製品ストッカ21、無人搬送車35、この無人搬送車35に搭載されるロボット25、ロボット25に装着される識別体30、並びにロボット25及び無人搬送車35を制御する制御装置40などから構成される。
【0033】
図4及び
図5に示すように、前記工作機械10は、ワークを把持するチャック15が装着されるワーク主軸、旋削工具などが配設されるタレット14、並びに回転工具等が保持される工具主軸12を有する刃物台11など備えた所謂複合加工型のNC(数値制御)工作機械10であり、旋削加工及びミーリング加工の双方を行うことができるようになっている。また、この工作機械10の加工領域内には、当該加工領域内の画像を撮像するカメラ16が設けられている。尚、前記回転工具等はホルダ13に保持された状態で工具主軸12に装着される。
【0034】
前記材料ストッカ20は、
図1において工作機械10の左隣に配設され、当該工作機械10で加工される複数の材料(加工前ワーク)をストックする装置である。また、前記製品ストッカ21は、
図1において工作機械10の右隣に配設され、当該工作機械10で加工された複数の製品、又は半製品(加工済ワーク)をストックする装置である。
【0035】
図1に示すように、前記無人搬送車35には、その上面である載置面36に前記ロボット25が搭載され、また、オペレータが携帯可能な操作盤37が付設されている。尚、この操作盤37は、データの入出力を行う入出力部、当該無人搬送車35及びロボット25を手動操作する操作部、並びに画面表示可能なディスプレイなどを備えている。
【0036】
また、無人搬送車35は、工場内における自身の位置を認識可能なセンサ(例えば、レーザ光を用いた距離計測センサ)を備えており、前記制御装置40による制御の下で、前記工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21が配設される領域を含む工場内を無軌道で走行するように構成され、本例では、前記工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21のそれぞれに対して設定された各作業位置に経由する。
【0037】
前記ロボット25は、第1アーム26、第2アーム27及び第3アーム28の3つのアームを備えた多関節型のロボットであり、第3アーム28の先端部にはエンドエフェクタとしてのハンド29が装着され、また、このハンド29に識別体30が装着されている。この識別体30には、
図6(a)に示した識別図形が描画されたシートが貼着されている。尚、本例の識別図形は複数の正方形をした画素が二次元に配列されたマトリクス構造を有するものであり、各画素が白または黒で表示されている。
図6では、黒色の画素に斜線を付している。
【0038】
前記制御装置40は、前記無人搬送車35の筐体内に格納されており、
図2に示すように、動作プログラム記憶部41、移動位置記憶部42、動作姿勢記憶部43、マップ情報記憶部44、基準画像記憶部45、手動運転制御部46、自動運転制御部47、マップ情報生成部48、位置認識部49、補正量算出部50及び入出力インターフェース51から構成される。そして、制御装置40は、この入出力インターフェース51を介して、前記工作機械10、材料ストッカ20、製品ストッカ21、ロボット25、無人搬送車35及び操作盤37に接続している。
【0039】
尚、制御装置40は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記手動運転制御部46、自動運転制御部47、マップ情報生成部48、位置認識部49、補正量算出部50及び入出力インターフェース51は、コンピュータプログラムによってその機能が実現され、後述する処理を実行する。また、動作プログラム記憶部41、移動位置記憶部42、動作姿勢記憶部43、マップ情報記憶部44及び基準画像記憶部45はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。
【0040】
前記手動運転制御部46は、オペレータにより前記操作盤37から入力される操作信号に従って、前記無人搬送車35及びロボット25を動作させる機能部である。即ち、オペレータは、この手動運転制御部46による制御の下で、操作盤37を用いて、前記無人搬送車35及びロボット25の手動操作を実行することができ、また、工作機械10に対して、カメラ16によって画像を撮像し、撮像された画像を制御装置40に転送する操作信号(撮像信号)を送信することができる。
【0041】
前記動作プログラム記憶部41は、生産時に前記無人搬送車35及び前記ロボット25を自動運転するための自動運転用プログラム、並びに後述する工場内のマップ情報を生成する際に前記無人搬送車35を動作させるためのマップ生成用プログラムを記憶する機能部である。自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムは、例えば、前記操作盤37に設けられた入出力部から入力され、当該動作プログラム記憶部41に格納される。
【0042】
尚、この自動運転用プログラムには、無人搬送車35が移動する目標位置としての移動位置、移動速度及び無人搬送車35の向きに関する指令コードが含まれ、また、ロボット25が順次動作する当該動作に関する指令コード、及び前記カメラ16の操作に関する指令コード(即ち、カメラ16によって画像を撮像し、撮像された画像を制御装置40に転送する操作信号(撮像信号)を工作機械10に送信する指令コード)が含まれる。また、マップ生成用プログラムは、前記マップ情報生成部48においてマップ情報を生成できるように、無人搬送車35を無軌道で工場内を隈なく走行させるための指令コードが含まれる。
【0043】
前記マップ情報記憶部44は、無人搬送車35が走行する工場内に配置される機械、装置、機器など(装置等)の配置情報を含むマップ情報を記憶する機能部であり、このマップ情報は前記マップ情報生成部48によって生成される。
【0044】
前記マップ情報生成部48は、詳しくは後述する前記制御装置40の自動運転制御部47による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納されたマップ生成用プログラムに従って無人搬送車35を走行させた際に、前記センサによって検出される距離データから工場内の空間情報を取得するとともに、工場内に配設される装置等の平面形状を認識し、例えば、予め登録された装置等の平面形状を基に、工場内に配設された具体的な装置、本例では、工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21の位置、平面形状等(配置情報)を認識する。そして、マップ情報生成部48は、得られた空間情報及び装置等の配置情報を工場内のマップ情報として前記マップ情報記憶部44に格納する。
【0045】
前記位置認識部49は、前記センサによって検出される距離データ、及び前記マップ情報記憶部44に格納された工場内のマップ情報を基に、工場内における無人搬送車35の位置を認識する機能部であり、この位置認識部49によって認識される無人搬送車35の位置に基づいて、当該無人搬送車35の動作が前記自動運転制御部47によって制御される。
【0046】
前記移動位置記憶部42は、前記無人搬送車35が移動する具体的な目標位置としての移動位置であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した具体的な移動位置を記憶する機能部であり、この移動位置には、上述した工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21に対して設定される各作業位置が含まれる。尚、この移動位置は、例えば、前記手動運転制御部46による制御の下、前記操作盤37により前記無人搬送車35を手動運転して、目標とする各位置に移動させた後、前記位置認識部49によって認識される位置データを前記移動位置記憶部42に格納する操作によって設定される。この操作は所謂ティーチング操作と呼ばれる。
【0047】
前記動作姿勢記憶部43は、前記ロボット25が所定の順序で動作することによって順次変化するロボット25の姿勢(動作姿勢)であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した動作姿勢に係るデータを記憶する機能部である。この動作姿勢に係るデータは、前記手動運転制御部46による制御の下で、前記操作盤37を用いたティーチング操作により、当該ロボット25を手動運転して、目標とする各姿勢を取らせたときの、当該各姿勢におけるロボット25の各関節(モータ)の回転角度データであり、この回転角度データが動作姿勢に係るデータとして前記動作姿勢記憶部43に格納される。
【0048】
ロボット25の具体的な動作姿勢は、前記材料ストッカ20、工作機械10及び製品ストッカ21において、それぞれ設定される。例えば、材料ストッカ20では、当該材料ストッカ20において作業を開始するときの作業開始姿勢(取出開始姿勢)、当該材料ストッカ20に収納された加工前ワークをハンド29によって把持して、当該材料ストッカ20から取り出すための各作業姿勢(各取出姿勢)及び取出を完了したときの姿勢(取出完了姿勢であり、本例では、取出開始姿勢と同じ姿勢)が取出動作姿勢として設定される。
【0049】
また、工作機械10では、加工済のワークを工作機械10から取り出すワーク取出動作姿勢、及び加工前ワークを工作機械10に取り付けるワーク取付動作姿勢が設定される。
【0050】
具体的には、ワーク取出動作姿勢では、例えば、工作機械10に進入する前の作業開始姿勢(
図4参照)、ハンド29を加工領域内に進入させて、当該ハンド29に設けられた識別体30の識別図形を工作機械10の加工領域内に配設されたカメラ31によって撮像させる姿勢(撮像姿勢)(
図5参照)、工作機械10のチャック15に把持された加工済ワークに対してハンド29を対向させた姿勢(取出準備姿勢)、ハンド29をチャック15側に移動させて、当該チャック15に把持された加工済ワークをハンド29によって把持する姿勢(把持姿勢)、ハンド29をチャック15から離隔させて加工済ワークをチャック15から取り外した姿勢(取外姿勢)、工作機械10から抜け出させた姿勢(作業完了姿勢)の各姿勢が設定される。
【0051】
また、ワーク取付動作姿勢では、例えば、工作機械10に進入する前の作業開始姿勢(
図4参照)、ハンド29を加工領域内に進入させて、当該ハンド29に設けられた識別体30の識別図形を工作機械10の加工領域内に配設されたカメラ31によって撮像させる姿勢(撮像姿勢)(
図5参照)、工作機械10のチャック15に対してハンド29に把持された加工前ワークを対向させた姿勢(取付準備姿勢)、ハンド29をチャック15側に移動させて、加工前ワークを当該チャック15によって把持可能にした姿勢(取付姿勢)、ハンド29をチャック15から離隔させた姿勢(離隔姿勢)、工作機械10から抜け出させた姿勢(作業完了姿勢)の各姿勢が設定される。
【0052】
前記製品ストッカ21では、当該製品ストッカ21において作業を開始するときの作業開始姿勢(収納開始姿勢)、ハンド29に把持した加工後のワークを製品ストッカ21内に収納するための各作業姿勢(収納姿勢)及び収納を完了したときの姿勢(収納完了姿勢であり、本例では、収納開始姿勢と同じ姿勢)が収納動作姿勢として設定される。
【0053】
前記自動運転制御部47は、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムの何れかを用い、当該プログラムに従って無人搬送車35及びロボット25、並びに工作機械10を介して前記カメラ16を動作させる機能部である。その際、前記移動位置記憶部42及び動作姿勢記憶部43に格納されたデータが必要に応じて使用される。
【0054】
前記基準画像記憶部45は、ティーチング操作時に、無人搬送車35が工作機械10に対して設定された作業位置に在り、ロボット25が撮像姿勢にあるときに、前記カメラ16によって撮像された識別図形の画像を、前記工作機械10から受信して基準画像として記憶する機能部である。
【0055】
前記補正量算出部50は、前記自動運転制御部47による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラムに従って前記ロボット25が自動運転される際に、当該ロボット25が撮像姿勢にあり、前記工作機械10に設けられたカメラ16によって撮像された識別図形の画像を当該工作機械10から受信すると、当該自動運転時に得られた識別図形の画像と、前記基準画像記憶部45に格納された基準画像とを基に、ティーチング時におけるロボット25の撮像姿勢と、自動運転時におけるロボット25の撮像姿勢との間の誤差量を推定し、推定された誤差量に基づいて、ロボット25のワーク取出動作姿勢及びワーク取付動作姿勢に対する補正量を算出する。
図6(b)に自動運転時に撮像された識別図形の一例を示している。
【0056】
前記カメラ16は所謂ステレオカメラであり、これらによって得られる画像から、カメラ16と識別図形との間の相対的な位置関係、及びカメラ16と識別図形(即ち、識別体30)との相対的な回転角、例えば、直交3軸周りの回転角を算出することができる。斯くして、前記基準画像を基に算出される位置関係及び回転角、並びに自動運転時に得られる画像を基に算出される位置関係及び回転角から、ティーチング時のロボット25の撮像姿勢と、自動運転時のロボット25の撮像姿勢との間の誤差量を推定することができる。
【0057】
以上の構成を備えた本例の生産システム1によれば、以下のようにして、無人自動生産が実行される。
【0058】
即ち、前記制御装置40の自動運転制御部47による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラムが実行され、この自動運転用プログラムに従って、例えば、無人搬送車35及びロボット25が以下のように動作する。
【0059】
まず、無人搬送車35は、工作機械10に対して設定された作業位置に移動するとともに、ロボット25は上述したワーク取出動作の作業開始姿勢を取る。尚、この時、工作機械10は所定の加工を完了して、ロボット25が加工領域内に侵入可能なようにドアカバーを開いており、また、自動運転制御部47からの指令を受信して、前記ツールプリセッタ13の支持バー15を加工領域内に進出させているものとする。
【0060】
ついで、ロボット25は前記撮像姿勢に移行する。そして、自動運転制御部47は、ロボット25を撮像姿勢に移行させた後、工作機械10に対して、ロボット25のハンド29に装着された識別体30の識別図形をカメラ16によって撮像する指令(信号)、及び撮像された画像を制御装置40に転送する指令(信号)を送信する。尚、これらの指令は撮像指令(撮像信号)を形成する。これにより、カメラ16による識別図形の撮像が実行され、撮像された画像が制御装置40に転送される。そして、このようにして、識別図形の画像が制御装置40に転送されると、前記補正量算出部50において、転送された識別図形の画像と、前記基準画像記憶部45に格納された基準画像とを基に、ロボット25のティーチング時における撮像姿勢と、現在の撮像姿勢との間の誤差量が推定され、推定された誤差量に基づいて、ロボット25の以降のワーク取出動作姿勢に対する補正量が算出される。
【0061】
斯くして、自動運転制御部47は、補正量算出部50により算出された補正量に基づいて、以降のワーク取出動作姿勢、即ち、上述した取出準備姿勢、把持姿勢、取外姿勢及び作業完了姿勢を制御し、工作機械10のチャックに把持された加工済のワークをハンド29に把持して当該工作機械10から取り出す。尚、ロボット25に前記把持姿勢を取らせた後に、自動運転制御部47から工作機械10にチャック開指令を送信することで、当該チャックが開かれる。
【0062】
次に、自動運転制御部47は、無人搬送車35を、製品ストッカ21に対して設定された作業位置に移動させるとともに、ロボット25に、当該製品ストッカ21において作業を開始するときの収納開始姿勢、ハンド29に把持した加工済ワークを製品ストッカ21内に収納するための各収納姿勢及び収納を完了したときの収納完了姿勢を順次取らせて、ハンド29に把持した加工済ワークを製品ストッカ21に収納する。
【0063】
ついで、自動運転制御部47は、無人搬送車35を、材料ストッカ20に対して設定された作業位置に移動させるとともに、ロボット25に、当該材料ストッカ20において作業を開始するときの取出開始姿勢、当該材料ストッカ20に収納された加工前ワークをハンド29によって把持して、当該材料ストッカ20から取り出すための各取出姿勢及び取出を完了したときの取出完了姿勢を順次取らせて、ハンド29に加工前ワークを把持させる。
【0064】
次に、自動運転制御部47は、再度、無人搬送車35を工作機械10に対して設定された作業位置に移動させるとともに、ロボット25に上述したワーク取付動作の作業開始姿勢を取らせる。次に、自動運転制御部47は、ロボット25を前記撮像姿勢に移行させた後、工作機械10に対して、ロボット25のハンド29に装着された識別体30の識別図形をカメラ16によって撮像する指令、及び撮像された画像を制御装置40に転送する指令、即ち、前記撮像指令を送信する。これにより、カメラ16による識別図形の撮像が実行され、撮像された画像が制御装置40に転送される。そして、このようにして、識別図形の画像が制御装置40に転送されると、前記補正量算出部50において、転送された識別図形の画像と、前記基準画像記憶部45に格納された基準画像とを基に、ロボット25のティーチング時における撮像姿勢と、現在の撮像姿勢との間の誤差量が推定され、推定された誤差量に基づいて、ロボット25の以降のワーク取付動作姿勢に対する補正量が算出される。
【0065】
この後、自動運転制御部47は、補正量算出部50により算出された補正量に基づいて、以降のロボット25のワーク取付動作姿勢、即ち、上述した取付準備姿勢、取付姿勢、離隔姿勢及び作業完了姿勢を制御して、ロボット25に、ハンド29に把持された加工前ワークを工作機械10のチャックに取り付けた後、機外に退出する動作を行わせる。この後、自動運転制御部47は、工作機械10に加工開始指令を送信して、工作機械10に加工動作を行わせる。尚、ロボット25に前記取付姿勢を取らせた後に、自動運転制御部47から工作機械10にチャック閉指令を送信することで、当該チャックが閉じられ、当該チャックによって加工前ワークが把持される。
【0066】
そして、以上を繰り返すことにより、本例の生産システム1では、無人自動生産が連続して実行される。
【0067】
斯くして、本例の生産システム1では、ロボット25が実際に作業する工作機械10の加工領域内に配設されたカメラ16を用いるとともに、ロボット25に、当該ロボット25に配設された識別図形を前記カメラ16によって撮像する撮像姿勢を取らせることにより得られた識別図形の画像を用いて、ロボット25の作業姿勢を補正するようにしているので、当該作業姿勢を正確に補正することができ、これにより、ロボット25は、高い動作精度が求められる作業でも、当該作業を精度良く実行することができる。
【0068】
また、このように、ロボット25が精度の良い作業を実行することで、当該生産システム1は不要な中断を招くことなく高い稼働率で稼働し、結果、当該生産システム1によれば、信頼性が高く、生産効率の高い無人化を図ることが可能となる。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態に係る生産システム1’は、
図7に示すように、第1の実施形態における制御装置40から、前記基準画像記憶部45及び補正量算出部50を削除し、これらと同じ機能を有する基準画像記憶部17及び補正量算出部18を、例えば、前記工作機械10の数値制御装置に設けた構成を備えている。尚、
図7において、第1の実施形態における構成と同じ構成については、同じ符号を付して、以下では、その詳しい説明を省略する。
【0070】
この第2の実施形態に係る生産システム1’では、第1の実施形態と同様にして、前記手動運転制御部46による制御の下で、オペレータが前記操作盤37により前記ティーチング操作を行って、ロボット25に撮像姿勢を取らせた後、工作機械10に撮像指令を送信することで、前記ロボット25のハンド29に装着された識別体30の識別図形が前記カメラ16によって撮像され、撮像された画像が基準画像として前記基準画像記憶部17に格納される。
【0071】
また、前記動作プログラム記憶部41に格納される自動運転用プログラムには、ロボット25が撮像姿勢にあるときに、工作機械10に操作信号(撮像信号)を送信する指令コードであって、前記カメラ16により画像を撮像し、前記補正量算出部18によって算出された補正データを制御装置40’に送信することを指令する指令コードが含まれる。
【0072】
そして、前記補正量算出部18は、自動運転制御部47による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラムに従って前記ロボット25が自動運転される際に、当該自動運転制御部47から工作機械10に画像の撮像及び補正データの送信に関する指令が送信され、前記カメラ16によって識別図形の画像が撮像されると、撮像された識別図形の画像と、前記基準画像記憶部45に格納された基準画像とを基に、ティーチング時におけるロボット25の撮像姿勢と、自動運転時におけるロボット25の撮像姿勢との間の誤差量を推定し、推定された誤差量に基づいて、ロボット25のワーク取出動作姿勢及びワーク取付動作姿勢のいずれかに対応する補正量を算出し、算出された補正量に係るデータ(補正データ)を前記自動運転制御部47に送信する処理を行う。
【0073】
斯くして、前記自動運転制御部47は、前記補正量算出部18から送信された補正データに従って、ロボット25の対応する動作姿勢、即ち、ワーク取出動作姿勢及びワーク取付動作姿勢の何れか動作姿勢を補正する。
【0074】
この第2の態様の生産システム1’においても、上述した第1の態様の生産システム1と同様の作用、効果が奏される。
【0075】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、この第1及び第2の実施形態に限定されるものではない。
【0076】
例えば、上述した第1及び第2の実施形態では、識別図形が描画されたシートを識別体30に貼着するようにしたが、これに限られるものではなく、識別図形を識別体30に直接描画するようにしても良い。或いは、前記識別体30をディスプレイから構成して、このディスプレイに識別図形を表示するようにしても良い。
【0077】
また、上記の各実施形態では、前記識別図形として、複数の画素が二次元に配列されたマトリクス構造を備えたものを採用したが、これに限られるものではなく、撮像画像からロボット25の姿勢の補正量を算出することができるものであれば、様々な図形を採用することができる。また、識別図形は、平面図形に限られるものではなく、立体図形であっても良い。
【0078】
また、上記の実施形態では、カメラ16を、2つ撮像部を有するステレオカメラから構成したがこれに限られるものではなく、撮像画像からロボット25の姿勢の補正量を算出することができれば、単体の撮像部を有するものでも良い。
【0079】
また、前記カメラ16は、工具主軸12に着脱可能に設けられるホルダ13に装着され、このホルダ13に保持された状態で工具主軸12に装着される態様としても良い。このようにすれば、前記識別図形を撮像するときにのみ、当該カメラ16を工具主軸12に装着し、工作機械10が加工を実行している間は、当該カメラ16を加工領域外に配置することができるので、カメラ16が切屑等によって汚損されるのを防止することができる。この結果、上記補正を精度良く行うことができる。
【0080】
また、上例では、マップ生成用プログラムに従って無人搬送車35を走行させることにより、前記マップ情報を生成するようにしたが、このような態様に限られるものではなく、例えば、前記操作盤37を用いた手動操作や、適宜ラジオコントローラ(無線操縦装置)を用いた手動操作により無人搬送車35を走行させることによって、前記マップ情報を生成するようにしても良い。
【0081】
繰り返しになるが、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【解決手段】工作機械10、ロボット25、ロボット25を搭載した無人搬送車35及び制御装置40を備える。工作機械10の加工領域内にはカメラ16が配設され、ロボット25に識別図形が設けられる。制御装置40は、ティーチング操作時に、ロボット25を撮像姿勢にした状態で、カメラ16により撮像された識別図形の画像を工作機械10から受信して基準画像として記憶し、繰り返し動作時に、ロボット25を撮像姿勢にした状態で、カメラ16により撮像され、工作機械10から送信された識別図形の画像、及び基準画像に基づいて、ロボット25の現在の姿勢とティーチング操作時の姿勢との誤差量を推定し、推定された誤差量に基づいて、ロボット25の作業姿勢を補正する。