【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1に記載の構成を備える、木質パネル、特には木質チップボードパネルや木質繊維ボードパネルを製造する方法により、さらには、当該方法により製造される請求項10及び請求項12に係る木質パネルにより解決される。
【0014】
したがって、揮発性有機化合物(VOC)の放出が抑制された木質パネル(特には、木質チップボードパネルや木質繊維ボードパネル)を製造する方法であって、
a)適切な木材から木質チップを作製する工程と、
b)前記木質チップの少なくとも一部を150℃〜300℃の温度で1時間〜5時間にわたって熱処理する工程と、
c)熱処理されていない前記木質チップと熱処理された前記木質チップの少なくとも一部とを、切削(shaving)によって木削片を形成するように又は蒸解(digesting)によって木質繊維を形成するように細かくする(comminuting)工程と、
d)前記木削片または木質繊維を、少なくとも1種のバインダーで樹脂処理する(resinating)工程と、
e)樹脂処理された前記木削片を、多層削片ケーキを形成するようにコンベアベルトに配する工程、あるいは、樹脂処理された前記木質繊維を、単層繊維ケーキを形成するようにコンベアベルトに配する工程と、
f)前記削片ケーキまたは前記繊維ケーキを、木質パネルを形成するように圧縮する工程と、
を備える、方法が提供される。
【0015】
本発明に係る方法は、熱処理された木材(特には、熱処理されていない未処理の木質チップと共に又はこのような未処理の木質チップに代えて既知の製造工程へと導入される熱処理された木質チップ)を用いて、木質パネル(例えば、木質チップボードパネル、木質繊維ボードパネル等)を製造することを可能にする。
【0016】
熱処理された木質チップから作製された木削片又は木質繊維を含む、本発明に係る方法により製造される木質パネル(特には、典型的なパネル比重が400〜1200kg/m
3であるチップボードパネル又は繊維ボードパネルの形態の木質パネル)は、揮発性有機化合物(特には、高級アルデヒド類および有機酸類)の放出が抑制されていることにより特徴付けられる。
【0017】
本発明に係る方法は、さらなる利点を奏する。つまり、木質パネル(例えば、チップボードパネル、繊維ボードパネル等)を、通常の製造工程連鎖に大幅な影響を及ぼすことなく簡単に製造することができる。さらに、木質パネルを製造する工程中での空気中への揮発性化合物の放出、および工程用水の汚染が抑えられる。
【0018】
好ましくは、本発明で採用される、木質チップの熱処理は、飽和水蒸気雰囲気中で、特には高圧下(好ましくは5bar超)で行われる。
【0019】
本発明に係る熱処理は、従来の半炭化(torrefaction)であるか、あるいは、少なくとも圧力条件に関して従来の半炭化を変更したものであると理解され得る。半炭化(トレファクション)は、半炭化用の材料が無酸素ガス雰囲気中で、典型的には大気圧下で加熱される熱処理工程である。空気が混入しない状態でバイオマスを処理することにより、熱分解及び乾燥が生じる。この工程は、熱分解にしては比較的低温である250〜300℃の温度で行われる。その目的は、コークス化(coking)の場合の目的と同様に、単位質量当たりの及び単位体積当たりのエネルギー密度を上げることによって原材料の発熱量を増やすこと;搬送性を向上させること;あるいは、後で行われるバイオマスの粉砕のコストを下げ及び複雑性を緩和することである。
【0020】
本発明に係る方法では、木質チップを熱処理する工程が、様々な方法でなされ得る。
【0021】
例えば、一実施形態では、木質チップを熱処理する工程を、木質パネル(例えば、チップボードパネル、繊維ボードパネル等)を製造する工程に組み込むことが可能である。換言すれば、前記熱処理工程が、全体的な工程又は製造ラインに組み込まれてオンラインで実施される。
【0022】
代替的な一実施形態では、木質チップを熱処理する工程が、木質パネル(例えば、チップボードパネル、繊維ボードパネル等)を製造する工程とは別に実行され得る。よって、本発明に係る方法のこの変形例では、前記熱処理工程が、全体的な工程または製造ラインの外部で実施される。この場合、木質チップが、製造工程から取り出されて熱処理装置(例えば、熱処理反応器等)へと導入される。その後、熱処理された木質チップが、必要に応じて中間貯蔵された後に従来の製造工程へと再導入され得る。この構成により、製造方法の融通性を高くすることができる。
【0023】
本発明で使用される木質チップは、長さが10〜100mm(好ましくは20〜90mm、特に好ましくは30〜80mm);幅が5〜70mm(好ましくは10〜50mm、特に好ましくは15〜20mm);厚さが1〜30mm(好ましくは2〜25mm、特に好ましくは3〜20mm)であり得る。
【0024】
本発明に係る方法のさらなる実施形態では、木質チップが、200℃〜280℃(特に好ましくは220℃〜260℃)の温度で熱処理される。
【0025】
木質チップを熱処理する工程は、既述したように1〜5時間(好ましくは2〜3時間)にわたるものであり得て、この工程の時間は、使用される出発材料の品質及び性質に応じて変化する。好ましくは、前記熱処理工程は、木質チップの10%〜30%(好ましくは15%〜20%)の質量の損失で終了する。
【0026】
本発明に係る方法の一変形例では、既述したように、木質チップが、低酸素(oxygen-depleted)雰囲気又は無酸素雰囲気中で、特には飽和水蒸気雰囲気中で加熱されることによって熱処理される。これは、大気圧下で行われてもよい。飽和水蒸気が使用される場合には、好ましくは、熱処理工程が160℃〜220℃の温度で且つ6bar〜16barの圧力下で実行される。
【0027】
また、好ましくは、水分率が20〜50重量%である木質チップの少なくとも一部が熱処理される。換言すれば、この場合、前記木質チップは予備乾燥されずに、むしろ、切削後にさらなる前処理なしで熱処理装置に供給される。
【0028】
本発明で使用される熱処理反応器は、バッチ式プラントまたは連続動作式プラントの形態を取り得る。
【0029】
熱処理工程時に放散される熱分解ガスは、本質的にヘミセルロース類および他種の低分子量化合物に由来し、稼働エネルギーの生成に利用される。この場合に形成されるガス混合物の量は、エネルギーの観点から自給自足的に工程を動作させることを可能にするためのガス燃料として十分である。
【0030】
好ましくは、熱処理された木質チップは、室温にまで冷却されて、必要に応じて中間貯蔵を介して又は直接、製造工程へと必要に応じて加湿後に再供給される。
【0031】
本発明に係る方法の一変形例では、熱処理された木質チップが、少なくとも1種の湿潤剤が混合された水浴で冷却及び湿潤される。当該湿潤剤は、例えば従来の界面活性剤等であり、熱処理の結果として生じた木質チップの疎水性表面が水によって湿潤するのを容易にする。この場合、木質チップが運ばれていく前記水浴中の湿潤剤の量は、0.1〜1.0重量%である。水による湿潤は、後で行われる切削又は解繊(fiberizing)の工程に良好な影響を及ぼす。結果として、水を溶媒として含むバインダーによる削片又は繊維の濡れ性も向上する。水による湿潤工程により、熱処理されたチップの水分率は5%〜20%(好ましくは10%〜15%)に調節される。
【0032】
熱処理されていない未処理の木質チップの水分率も、相応に調節される。この工程では、例えば、当該木質チップが洗浄及び蒸煮される。このような水処理は、当該木質チップが切削又は解繊されることを可能にするのに望ましい。また、水なしでは、切削又は解繊の工程時に大量の不所望のダストが形成されることにもなる。
【0033】
この後に、フレーク化装置で前記木質チップをフレーク化(flaking)する工程、あるいは、リファイナーで前記木質チップを解繊する工程が行われる。この構成に加えて、湿潤剤が、熱処理された木材又は木質チップの、水による濡れ性を向上させるように添加されることも可能であり、この添加は必要に応じて、木削片又は当該解繊工程中の木質繊維に対して行われる。
【0034】
フレーク化工程で作製された木削片は粗削片と微削片とに分級されて、大きいほうの木削片はチップボードの中間層に使用されるのが好ましく、小さいほうの木削片は外層に使用されるのが好ましい。この場合、前記中間層に使用される前記木削片は熱処理された木質チップから作製された木削片であるのが、このような木削片が典型的に暗い色であることから好ましい。つまり、暗い色の削片が前記中間層に使用される場合には、パネルの外観に悪影響がない。しかも、前記中間層は典型的にチップボードパネルの約2/3を占めていることを考慮すると、放出抑制効果に悪影響を及ぼさない。
【0035】
フレーク化工程により作製された木質繊維は、長さが1.5mm〜20mm、厚さが0.05mm〜1mmである。
【0036】
本発明に係る方法のさらなる工程では、フレーク化工程後の木削片または解繊工程後の木質繊維が、当該木削片同士または当該木質繊維同士を互いに結合するのに適した少なくとも1種のバインダーと接触させられる。当該木削片や当該木質繊維と当該バインダーとのこの接触は、それぞれ様々な方法で行われ得る。
【0037】
例えば、工程d)において木質繊維は前記少なくとも1種のバインダーと、当該バインダーが当該木質繊維の流れに対して吹き付けられるブローライン法(blowline process)で接触させられ得る。この場合、前記木質繊維同士を互いに結合させる後述のバインダーがブローラインで、木質繊維/蒸気の混合物へと供給されることが可能である。
【0038】
反対に、木削片の場合には、バインダーと好ましくは混合装置内で接触させられる。
【0039】
添加されるバインダーの量は、当該バインダーの性質および木質パネルの性質に依存する。
【0040】
繊維ボードパネル用のホルムアルデヒド系バインダーの場合には、木質繊維に適用されるバインダーの量が、3〜20重量%(好ましくは5〜15重量%、特に好ましくは8〜12重量%)である。反対に、繊維ボードパネル用に含ポリウレタン系バインダー(例えば、PMDI等)が使用される場合には、バインダーの必要量が1〜10重量%(好ましくは2〜8重量%、特に好ましくは4〜6重量%)に減る。
【0041】
チップボードパネルの場合には、ホルムアルデヒド系バインダーを使用するのが好ましく、中間層には5〜8重量%(好ましくは6〜7重量%)のバインダーの量が用いられ、外層には6〜10重量%(好ましくは8〜9重量%)のバインダーの量が用いられる。チップボードパネルにおいてポリウレタン系バインダー(例えば、PMDI等)が使用される場合には、中間層におけるバインダーの量が2〜5重量%(好ましくは3重量%)であり、外層におけるバインダーの量が4〜8重量%(好ましくは5重量%)である。
【0042】
好ましくは、本発明に係る方法の一実施形態では、バインダーとして上記のようにポリマー接着剤が使用され、当該ポリマー接着剤は、ホルムアルデヒド系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤およびポリエステル系接着剤を含む群から選択される。主に、ホルムアルデヒド系接着剤が使用される。
【0043】
具体的に述べると、ホルムアルデヒド系接着剤として、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂系接着剤(PF)および/またはクレゾール/レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂系接着剤および/または尿素−ホルムアルデヒド樹脂系接着剤(UF)および/またはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂系接着剤(MF)を使用することが可能である。
【0044】
ホルムアルデヒド系接着剤に代わる適切な代替品としては、芳香族ポリイソシアネート類、特にはポリジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI)および/またはトリレンジイソシアネート(TDI)および/またはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)に基づくポリウレタン系接着剤が挙げられ、PMDIが極めて好ましい。
【0045】
2種類以上のポリマー接着剤の混合物、例えば、ホルムアルデヒド系接着剤(例えば、MUF、MF、UF等)とポリウレタン系接着剤(例えば、PMDI等)との混合物の使用も可能であり且つ考えられ得る。この種のハイブリッド型接着剤系は、欧州特許第2447332号明細書から知られている。
【0046】
バインダーと共に又はバインダーとは別に少なくとも1種の難燃剤を、木削片又は木質繊維に供給することも可能である。
【0047】
難燃剤は、木質繊維/バインダーの混合物へ、典型的に1〜20重量%(好ましくは5〜15重量%、特に好ましくは10重量%)の量で添加され得る。
【0048】
典型的な難燃剤は、リン酸系難燃剤およびホウ酸系難燃剤(特には、ポリリン酸アンモニウム、リン酸トリス(トリブロモネオペンチル)、ホウ酸亜鉛、または多価アルコールのホウ酸錯体類)を含む群から選択される。
【0049】
後の製造工程では、木削片又は木質繊維が1%〜10%(好ましくは3%〜5%)の水分率にまで乾燥される。木削片の場合には、この乾燥工程が例えばドラムドライヤー等での一段階工程で行われるのが好ましいとされる一方で、木質繊維の場合は二段階工程で乾燥され得る。
【0050】
その後、乾燥された木削片又は木質繊維は、木削片又は木質繊維のサイズに従って分別又は選別されて、好ましくは例えばサイロ、バンカー等の中間貯蔵に入れられる。
【0051】
乾燥工程後の削片又は繊維の分別は、典型的には、副次的な洗浄工程と合わせて行われる。この目的のために、前記繊維は、空気流中に置かれて、旋回、急激な偏向(abrupt deflection)、衝突分別もしくは上昇空気分別によって又はこれら2つ以上の作用の組合せによって、大部分で、樹脂塊などの重い成分が取り除かれる。その後、当該繊維はサイクロン分離器によって前記空気流から再分離されて、さらに利用される。木削片の分別の場合には、当該木削片が中間層用の粗削片と外層用の微削片とに分級される。
【0052】
上記のように、木質繊維の樹脂処理は、乾燥工程よりも前に行われ得る。変形例として、木質繊維は、乾燥工程後に樹脂処理されてもよい。ただし、木削片を使用する場合には、分別後に樹脂処理が行われ、樹脂処理は削片と樹脂との混合により達成される。
【0053】
分別が行われた後、樹脂処理された木削片又は木質繊維が、コンベアベルト上に散布され、削片ケーキ又は繊維ケーキが形成される。木質繊維の場合に典型的に使用される散布場所は、秤量バンカー、マット散布設備およびマット平滑化設備で構成される。木削片の場合には、空気散布で実行するのが一般的であり、初めに第1の外層を、続いて中間層を、最後に第2の外層を散布する。
【0054】
その後、削片ケーキ又は繊維ケーキが、まず予備プレスされた後、100℃〜250℃(好ましくは130℃〜220℃、特には200℃)の温度で加熱プレスされる。
【0055】
この場合、散布が行われた後に削片ケーキ又は繊維ケーキが、まず、秤量されて且つ水分率が測定される。その後、削片ケーキ又は繊維ケーキが予備プレスに進入する。ここでは、低温予備圧縮の工程で当該ケーキの厚さを薄くし、後続の加熱プレスで荷重をより効率的にかけられることが可能となり、当該ケーキへの損傷のリスクを低下させることができる。連続動作式の予備圧縮の場合には、コンベアベルトの原理で予備ベルトプレスによって実行するのが一般的である(これほどは一般的ではないが、しばしば無限軌道の原理で予備プレートベルトプレスによって、又は丸太を用いたピラミッドの石の運搬の原理で予備ロールベルトプレスによって実行することも可能である)。
【0056】
予備プレスの後には、圧縮されたケーキ又はマットのトリミングが行われる。ここでは、当該マットから側部の帯片が除去されて、これによって所望のパネル幅の製造が可能となる。これら側部の帯片は、散布機よりも上流の工程に戻される。この後に、比重を監視するさらなる測定装置や金属を検出するさらなる測定装置が設けられ得る。
【0057】
また、任意で、表面品質を向上させたり、前記マット内部の加熱を促進させたりするマット吹付け設備が設けられる。
【0058】
この後に、サイクル毎に又は連続的に実行され得る加熱プレスが行われる。本発明では、連続的に実行される加熱プレスが好ましい。これは、圧力及び温度が伝達されるプレスベルト又はプレスプレートによって動作する連続式プレスを用いて行われる。この場合の当該ベルトは、ローラのカーペット、ロッドのカーペットまたはオイルクッションにより、一般的に熱媒油で(これほどは一般的ではないが、しばしば蒸気で)加熱される加熱プレートに対向して支持されている。このプレスシステムは、1.5mm〜60mmのパネル厚さの製造を可能にする。カレンダープレスでは、薄いチップボード又は繊維ボードパネルのみを製造することができる。この場合のプレスは、プレスロールと加熱されたカレンダーロール上の外側ベルトとにより行われる。
【0059】
加熱プレスの後に、圧縮されたパネルが仕上げ加工される。この後には、通常、品質管理、特には厚さ管理のための一連の測定が行われる。
【0060】
極めて好ましい一実施形態では、VOC放出が抑制されたチップボードパネルを製造する本発明に係る方法が、
a1)適切な木材から木質チップを作製する工程と、
b1)任意で、前記木質チップを予備乾燥する工程と、
c1)前記木質チップの少なくとも一部を150℃〜300℃の温度で1時間〜5時間にわたって熱処理する工程と、
d1)熱処理された前記木質チップを水処理する工程と、
e1)熱処理されていない前記木質チップと熱処理された前記木質チップの少なくとも一部とを、木削片を形成するようにフレーク化する工程と、
f1)前記木削片を分別する工程と、
g1)熱処理された木質チップから作製された前記木削片を、あるいは、熱処理されていない木質チップから作製された木削片と熱処理された木質チップから作製された木削片との混合物を、少なくとも1種のバインダーで樹脂処理する工程と、
h1)樹脂処理された前記木削片を、多層削片ケーキを形成するようにコンベアベルト上に散布する工程であって、当該木削片は、第1の外層、中間層および第2の外層として重なるように散布される、工程と、
i1)前記削片ケーキを、チップボードパネルを形成するように圧縮する工程と、
を備える。
【0061】
極めて好ましい一実施形態では、VOC放出が抑制された繊維ボードパネルを製造する本発明に係る方法が、
a2)適切な木から木質チップを作製する工程と、
b2)任意で、前記木質チップを予備乾燥する工程と、
c2)前記木質チップの少なくとも一部を150℃〜300℃の温度で1時間〜5時間にわたって熱処理する工程と、
d2)熱処理された前記木質チップを水処理する工程と、
e2)熱処理されていない前記木質チップと熱処理された前記木質チップの少なくとも一部とを、木質繊維を形成するように繊維蒸解する工程と、
f2)熱処理された木質チップから作製された前記木質繊維を、あるいは、熱処理されていない木質チップから作製された木質繊維と熱処理された木質チップから作製された木質繊維との混合物を、少なくとも1種のバインダーと混合する工程と、
g2)樹脂処理された前記木質繊維を、単層繊維ケーキを形成するようにコンベアベルト上に散布する工程と、
h2)前記繊維ケーキを、予備プレスする工程と、
i2)前記繊維ケーキを、繊維ボードパネルを形成するように加熱プレスする工程と、
を備える。
【0062】
熱処理された木質チップをチップボードパネルや繊維ボードパネルを製造するために使用することには、一連の利点がある。つまり、熱処理された木質チップから作製された木削片や木質繊維は、熱処理された木材の親水性が低いことが特に理由となって極めて乾燥させ易いという点で極めて有利である。これは、さらに、製造された繊維ボードパネルを利用するうえでも、熱処理された木質チップから作製された木削片又は木質繊維の所定の温度及び雰囲気湿度での平衡水分率が、熱処理されていない木材よりも低いことから有利である。
【0063】
熱処理された木質チップを出発材料として使用することのさらなる長所として、最初の原材料の木材がより均質になるという点が挙げられる。これは、木質チップを用いてチップボードパネル、繊維ボードパネル又は他の木質材料を製造するときには原材料の木材の季節変動を考慮する必要があることから、経済的に極めて重要である。他の利点として、熱処理された木質チップは貯蔵によって生分解や他の変化に曝されることがないので、当該熱処理された木質チップは比較的長期にわたって貯蔵することができるという点が挙げられる。さらに、水と接触しても、構成成分は熱処理工程で破壊済みなので浸出しない。
【0064】
よって、本発明に係る方法により、熱処理された木質チップから作製された木削片又は木質繊維をそれぞれ含む、揮発性有機化合物の放出が抑制されていることにより特徴付けられたチップボードパネルや繊維ボードパネルの製造が可能となる。本発明に係るチップボードパネルは、熱処理された木質チップから作製された木削片で全体的に構成されたものであり得るか、あるいは、未処理の(すなわち、熱処理されていない)木質チップから作製された木削片と熱処理された木質チップから作製された木削片との混合物で構成されたものであり得る。これに対応するように、本発明に係る繊維ボードパネルは、熱処理された木質チップから作製された木質繊維で全体的に構成されたものであり得るか、あるいは、未処理の(すなわち、熱処理されていない)木質チップから作製された木質繊維と熱処理された木質チップから作製された木質繊維との混合物で構成されたものであり得る。
【0065】
具体的に述べると、本発明に係るチップボードパネル又は繊維ボードパネルはそれぞれ、木材蒸解工程時に放散されるアルデヒド類(特には、ペンタナール、ヘキサナールもしくはオクタナール)、および/または有機酸類(特には、酢酸)の放出が抑制されている。
【0066】
本発明に係るチップボードパネル又は繊維ボードパネルの形態の木質パネルは、パネル比重が400〜1200kg/m
3(好ましくは500〜1000kg/m
3、特に好ましくは600〜800kg/m
3)であり得る。
【0067】
本発明に係るチップボードパネル又は繊維ボードパネルの形態の木質パネルは、厚さが3〜20mm、好ましくは5〜15mmであり得て、極めて好ましくは厚さが10mmである。
【0068】
本発明に係るチップボードパネルは、60〜90重量%(好ましくは70〜80重量%)の木削片と、5〜20重量%(好ましくは10〜15重量%)のバインダーとで構成される。
【0069】
本発明に係る繊維ボードパネルは、60〜90重量%(好ましくは70〜80重量%)の木質繊維を含む繊維混合物と、5〜20重量%(好ましくは10〜15重量%)のバインダーとで構成される。この点に関しては、使用される前記バインダーの性質についての前述の説明を参照されたい。
【0070】
既述したように、本発明に係るチップボードパネル及び本発明に係る繊維ボードパネルはいずれも、熱処理されていない木質チップから作製された木削片/木質繊維と熱処理された木質チップから作製された木削片/木質繊維との混合物で構成されたものであり得る。前記チップボードパネルに及び前記繊維ボードパネルに使用される当該混合物は、熱処理されていない木質チップから作製された10〜50重量%(好ましくは20〜30重量%)の削片/繊維と、熱処理された木質チップから作製された50〜90重量%(好ましくは70〜80重量%)の削片/繊維とを含み得る。前記チップボードパネルの場合には既述したように、熱処理された木質チップから得られた削片が中間層に使用されるのが好ましい。
【0071】
本発明に係るチップボードパネル及び本発明に係る繊維ボードパネルはいずれも、家具用の、および床、壁もしくは天井のパネル張り用の、低放出チップボード又は繊維ボードパネルとして使用され得る。
【0072】
本発明の課題は、請求項15に記載されているような、熱処理された木質チップから作製された木削片又は木質繊維の使用によっても解決される。
【0073】
つまり、熱処理された木質チップから作製された木削片および木質繊維が、チップボード又は繊維ボードパネルからの揮発性有機化合物(VOC)の放出を抑制するために使用される。
【0074】
好ましい一変形例では、熱処理された木質チップから作製された木削片および木質繊維が、木材蒸解工程時に放散されるアルデヒド類および/または有機酸類を抑制するために使用される。
【0075】
これに対応するように、本発明では、熱処理された木質チップから作製された木削片/木質繊維が、有機酸類(特には、酢酸やヘキサン酸)の放散を抑制するために使用されるのが好ましい。具体的に述べると、有機酸類は、木材の構成成分であるセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの分解生成物として得られて、アルカン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸等)または芳香族酸類が好ましくは形成される。
【0076】
同様に、熱処理された木質チップから作製された木削片/木質繊維を、アルデヒド類の放出を抑制するために使用することも望ましい。これに関連して、木質繊維が、木材の水性木材蒸解(aqueous wood digestion)工程時に放散されるアルデヒド類を抑制するために使用されるのが特に好ましい。これに対応して、熱処理された木質チップから作製された木削片又は木質繊維は、C1〜C10アルデヒド類(特に好ましくはペンタナール、ヘキサナール又はオクタナール)の放散を抑制するために使用される。
【0077】
以下では、本発明を、複数の実施例に関して図面を参照しながら詳細に説明する。