(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832433
(24)【登録日】2021年2月3日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】真空ギャップスイッチを用いた逆電流注入型直流遮断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20210215BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20210215BHJP
H01H 33/66 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
H01H33/59 A
H01H9/54 A
H01H33/66 T
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-534171(P2019-534171)
(86)(22)【出願日】2017年12月19日
(65)【公表番号】特表2020-502767(P2020-502767A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】KR2017015015
(87)【国際公開番号】WO2018117591
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年6月21日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0175793
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514219031
【氏名又は名称】コリア エレクトロテクノロジー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】Korea Electrotechnology Research Institute
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス、エレクトリック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS ELECTRIC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イ ウヨンイ
(72)【発明者】
【氏名】パク へヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ ギョンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク サンフン
(72)【発明者】
【氏名】ペ チェユン
(72)【発明者】
【氏名】シム ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヒョンジェ
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−213192(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/167490(WO,A1)
【文献】
国際公開第2016/043508(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/28−33/59
H01H 9/54− 9/56
H01H 33/60−33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式スイッチである主遮断用スイッチを含む主通電部と、
前記主通電部の入力端に連結され、予め設定された逆電流を生成する逆電流電源部と、及び
前記逆電流を前記主通電部の出力端側に供給する逆電流通電部と、
を含む直流遮断装置であって、
前記逆電流電源部は、
前記主通電部の入力端に印加される電圧によって充電される第1逆電流用キャパシタと、
前記第1逆電流用キャパシタの極性を反転させるための極性反転用インダクタと、及び
前記極性反転用インダクタが、前記第1逆電流用キャパシタの極性を反転させるように回路連結を行う逆電流電源部スイッチと、
を含み、
前記逆電流通電部は、前記逆電流電源部スイッチの分離後、前記逆電流が前記主通電部の出力端に供給されるように回路連結を行う第1通電部スイッチを含み、
前記逆電流電源部は、前記極性反転用インダクタ及び前記逆電流電源部スイッチに対して、前記第1逆電流用キャパシタと対称になるように連結される第2逆電流用キャパシタを、さらに含み、
前記逆電流通電部は、前記極性反転用インダクタ及び前記主遮断用スイッチに対して、前記第1通電部スイッチと対称になるように連結される第2通電部スイッチを、さらに含むことを特徴とする直流遮断装置。
【請求項2】
前記逆電流は、極性反転状態の前記第1逆電流用キャパシタから放電される電流であることを特徴とする請求項1に記載の直流遮断装置。
【請求項3】
前記逆電流電源部スイッチと前記第1通電部スイッチは、真空ギャップスイッチであることを特徴とする請求項2に記載の直流遮断装置。
【請求項4】
前記逆電流電源部スイッチと前記第1通電部スイッチは、電極間の電気的距離の変化に応じて電流の流れを制御する可動ギャップスイッチであることを特徴とする請求項3に記載の直流遮断装置。
【請求項5】
前記逆電流電源部スイッチと前記第1通電部スイッチは、予め設定された電極移動速度及び電極間の距離に応じて、前記逆電流電源部スイッチと前記第1通電部スイッチとの連結時間間隔が設定されることを特徴とする請求項4に記載の直流遮断装置。
【請求項6】
前記逆電流電源部スイッチと前記第1通電部スイッチは、電極が位置する固定部及び前記電極間の連結及び分離を行う移動部を含み、
前記移動部の移動に応じて、前記逆電流電源部スイッチと前記第1通電部スイッチが選択的に連結されることを特徴とする請求項5に記載の直流遮断装置。
【請求項7】
前記固定部と前記移動部は、少なくとも一つの接点で連結されることを特徴とする請求項6に記載の直流遮断装置。
【請求項8】
前記第1逆電流用キャパシタ又は前記第2逆電流用キャパシタの電圧を制限する避雷器を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の直流遮断装置。
【請求項9】
前記主通電部と負荷入力端との間で前記主遮断用スイッチと直列連結される電流制限インダクタを、さらに含むことを特徴とする請求項8に記載の直流遮断装置。
【請求項10】
二つの端子中の一つが、前記逆電流電源部及び前記逆電流通電部とそれぞれ連結されたキャパシタ充電用スイッチを、さらに含むことを特徴とする請求項9に記載の直流遮断装置。
【請求項11】
前記逆電流電源部及び前記逆電流通電部とそれぞれ連結された前記キャパシタ充電用スイッチの端子と前記負荷入力端との間に連結されるダイオードを、さらに含むことを特徴とする請求項10に記載の直流遮断装置。
【請求項12】
請求項1に記載の直流遮断装置が、
前記主通電部に流れる電流が予め設定された第1遮断範囲に該当する場合、前記主遮断用スイッチを分離し、前記逆電流電源部スイッチを連結し、前記第1逆電流用キャパシタの極性を反転させるステップと、
予め設定された時点で前記第1通電部スイッチを連結し、前記主遮断用スイッチに流れる電流に零点を発生させ、前記主遮断用スイッチを介して流れる電流を遮断するステップを含む直流遮断方法であって、
前記逆電流電源部は、前記極性反転用インダクタ及び前記逆電流電源部スイッチに対して、前記第1逆電流用キャパシタと対称になるように連結される第2逆電流用キャパシタを、さらに含み、
前記逆電流通電部は、前記極性反転用インダクタ及び前記主遮断用スイッチに対して、前記第1通電部スイッチと対称になるように連結される第2通電部スイッチを、さらに含み、
前記主遮断用スイッチの分離前に、前記主通電部に流れる電流の方向を判断するステップと、
前記電流の方向に応じて予め設定された第1遮断範囲又は第2遮断範囲を判断するステップと、
前記第2遮断範囲に該当する場合、前記第2通電部スイッチを連結するステップと、
を、さらに含むことを特徴とする直流遮断方法。
【請求項13】
前記予め設定された時点は、前記主遮断用スイッチの極間が前記主遮断用スイッチの分離後、前記第1逆電流用キャパシタに充電される電圧から前記主遮断用スイッチが、絶縁が維持されるように設定された時点であることを特徴とする請求項12に記載の直流遮断方法。
【請求項14】
前記直流遮断装置は、
二つの端子中の一つが、前記逆電流電源部及び前記逆電流通電部とそれぞれ連結されたキャパシタ充電用スイッチを、さらに含み、
負荷電流遮断のために、前記キャパシタ充電用スイッチを連結するステップを、さらに含むことを特徴とする請求項12に記載の直流遮断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流遮断装置及び方法に関し、より詳細には、電圧型コンバータが用いられる直流送電系統で事故直流を速やかに遮断することができるようにする直流遮断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧型コンバータを使用する直流(DC)系統は、大きな関心の対象となりつつある。しかし、このような系統では事故発生時、事故電流の大きさが急激に上昇する特性を有しているので、速やかな電流遮断が行われなければ、系統信頼度に対して深刻な問題となる。
【0003】
速やかな電流遮断を行うためには、従来の機械式スイッチの代わりに、半導体スイッチング素子を利用する方案が検討されている。しかし、半導体スイッチング素子は、電力損失が大きく、システム構成による経済性の面で難しい点が多く、最近では、機械式スイッチと半導体スイッチを共に使用するハイブリッド(hybrid)型遮断方式が多く提案されている。
【0004】
一方、高圧直流(HVDC)用DC遮断技術の開発傾向は、大きく2種類に分類される。その一つは、直流遮断は、半導体スイッチが担当し、遮断後印加される過度電圧は機械式スイッチが担当する方式であり、直流遮断機として求められる電流と電圧特性を互いに分離して行うようにする方式である。
【0005】
他の一つは、機械式遮断機を用い、直流遮断に必要な電流零点生成のために、機械式遮断機に逆電流を注入する方式であり、逆電流の発生に半導体素子が適用される方式である。
【0006】
そのため、従来は逆電流印加のための回路としてサイリスタのような能動型電力半導体を使用してきた。しかし、高電圧部でのこのような能動型電力半導体素子の使用は、ゲート信号印加の必要による電源及び信号線の設置が直流遮断機構成に困難を与えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述した従来の問題点を解決するために案出されたものであり、高電圧部で能動型電力半導体素子を用いないことによって、信号制御及びシステム絶縁性において、より簡単で且つ強靭な特性を有し、費用の面でも比較的優位を占めることができる直流遮断装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による直流遮断装置は、機械式スイッチである主遮断用スイッチを含む主通電部、主通電部の入力端に連結され、予め設定された逆電流を生成する逆電流電源部、及び生成された逆電流を主通電部の出力端側に供給する逆電流通電部を含む。
【0009】
逆電流電源部は、さらに、主通電部の入力端に印加される電圧によって充電される第1逆電流用キャパシタ、第1逆電流用キャパシタの極性を反転させるための極性反転用インダクタ、及び極性反転用インダクタが第1逆電流用キャパシタの極性を反転させるように回路連結を行う逆電流電源部スイッチを含む。
【0010】
このような構成によれば、高電圧部で能動型電力半導体素子を用いないことによって、信号制御及びシステム絶縁性において、より簡単で且つ強靭な特性を有し、費用の面でも比較的優位を占めることができる直流遮断装置を提供することができる。
【0011】
ここで、逆電流は、反転状態の第1逆電流用キャパシタから放電される電流であってもよく、逆電流通電部は、逆電流電源部スイッチの分離後、逆電流が主通電部の出力端に供給されるように回路連結を行う第1通電部スイッチを含む。
【0012】
また、逆電流電源部スイッチと第1通電部スイッチは、真空ギャップスイッチであってもよく、逆電流電源部スイッチと第1通電部スイッチは、電極間の電気的距離の変化に応じて電流の流れを制御する可動ギャップスイッチであってもよい。
【0013】
また、逆電流電源部スイッチと第1通電部スイッチは、予め設定された電極移動速度及び電極間の距離に応じて、逆電流電源部スイッチと第1通電部スイッチとの連結時間間隔が設定される。
【0014】
また、逆電流電源部スイッチと第1通電部スイッチは、電極が位置する固定部及び電極間の連結及び分離を行う移動部を含み、移動部の移動に応じて、逆電流電源部スイッチと第1通電部スイッチとが選択的に連結される。このとき、固定部と移動部は少なくとも一つの接点で連結される。
【0015】
また、逆電流電源部は、極性反転用インダクタ及び逆電流電源部スイッチに対して、第1逆電流用キャパシタと対称になるように連結される第2逆電流用キャパシタをさらに含み、逆電流通電部は極性反転用インダクタ及び主通電路スイッチに対して、第1通電部スイッチと対称になるように連結される第2通電部スイッチをさらに含む。
【0016】
また、第1逆電流用キャパシタ又は第2逆電流用キャパシタの電圧を制限する避雷器をさらに含む。
【0017】
また、主通電路と負荷入力端との間で主遮断用スイッチと直列連結される電流制限インダクタをさらに含む。
【0018】
また、二つの端子中の一つが、逆電流電源部及び逆電流通電部とそれぞれ連結されたキャパシタ充電用スイッチ、及び逆電流電源部及び逆電流通電部とそれぞれ連結された前記キャパシタ充電用スイッチの端子と負荷入力端との間に連結されるダイオードを含むキャパシタ充電回路をさらに含む。
【0019】
また、本発明による直流遮断方法は、前記直流遮断装置が主通電部に流れる電流が予め設定された第1遮断範囲に該当する場合、主遮断用スイッチを分離し、逆電流電源部スイッチを連結し、第1逆電流用キャパシタの極性を反転させるステップ、及び予め設定された時点で第1通電部スイッチを連結し、主遮断用スイッチに流れる電流に零点を発生させ、主遮断用スイッチを介して流れる電流を遮断するステップを含む。
【0020】
また、予め設定された時点は、主遮断用スイッチの極間が主遮断用スイッチを介した電流遮断後、第1逆電流用キャパシタに充電される電圧から主遮断用スイッチが絶縁を維持できるように設定された時点であってもよい。
【0021】
また、主遮断用スイッチの分離前に、主通電部に流れる電流の方向を判断するステップ、電流の方向に応じて予め設定された第1遮断範囲又は第2遮断範囲を判断するステップ、及び第2遮断範囲に該当する場合、第2通電部スイッチを連結するステップをさらに含む。
【0022】
また、負荷電流遮断のために、キャパシタ充電用スイッチを連結するステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来、直流遮断方式で、直流の遮断や逆電流印加のために用いられてきたIGBTやIGCT或いはサイリスタのような能動型電力半導体スイッチング素子の代わりに、ダイオード(Diode)と真空ギャップスイッチを適用することによって、高電圧部に位置する素子の電源及び制御信号線による絶縁問題を単純化し、費用の面で競争力を有し得る直流遮断装置及び方法を提供できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例による直流遮断装置の概略的な回路図である。
【
図2】可変放電ギャップスイッチの構成及び動作過程を示した図である。
【
図3】直流遮断過程における可変放電ギャップ動作と遮断電流の関係を示した図である。
【
図4】
図2の可変放電ギャップスイッチが直流遮断装置に設けられた例が示された図である。
【
図8】可動放電ギャップ動作状態により現れる電流波形とキャパシタの電圧を示した図である。
【
図9】作動時のみに逆電流及び過度電圧発生用キャパシタを充電する方式の直流遮断装置の回路図を示した図である。
【
図10】本発明による直流遮断方法を行うための概略的な流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施例による直流遮断装置の概略的な回路図である。
図1には両方向直流遮断装置を構成する回路図が示されている。
図1で、直流遮断装置10は、通常の正常状態で電流が流れることになる回路であり、主通電部100、逆電流電源部200、逆電流通電部300、400、及び避雷器511を含む。
【0027】
単方向直流遮断機の場合、二つの逆電流通電部300、400の一つの回路と対称な形状を有する逆電流電源部200で共通使用される中央部のインダクタ212と真空ギャップスイッチ211を除いて、これを基準とした両側の回路のうち、片側を省略して構成することができる。
【0028】
主通電部100は、直流遮断機と電流制限用インダクタ21、22が直列に連結され、主遮断用高速機械式スイッチ111を含み、逆電流電源部200と逆電流通電部300、400は、主遮断用高速スイッチ111の両端に遮断電流の方向に応じて、それぞれ作用し、避雷器511は、主遮断用高速スイッチ111が直流を遮断した直後、前記逆電流電源部200に含まれる逆電流及び過度電圧発生用キャパシタと並列に連結された状態で線路蓄積エネルギーを吸収する。
【0029】
逆電流電源部200は、逆電流の発生のための逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231、各キャパシタに直列に連結された充放電電流制限用抵抗222、232、及び放電防止用ダイオード223、233を含み、逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231の充電電圧極性を反転させるための構成である。各キャパシタには、極性反転用ダイオード224、234とインダクタ212及び真空ギャップスイッチ211が直列に構成され、連結される。
【0030】
逆電流通電部300、400は、ダイオード312、412と真空ギャップスイッチ311、411が直列に連結された構造を有し、真空ギャップスイッチ311、411の放電作動時、逆電流電源部200の逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231が一定電圧以上を維持するように、直流遮断部の負荷側のインダクタ22を連結することで、注入される逆電流が安定した大きさを有するようにする。
【0031】
より具体的に説明すると、正常状態で電流通電を担当する主遮断部100は、1個の高速機械式スイッチ111のみからなり、直流遮断装置の入出力端子には直列に電流制限用インダクタ21、22が連結されるように構成されている。
【0032】
また、主遮断用高速機械スイッチ111の両端に、遮断電流の方向に応じて、直流遮断に作用することになる逆電流電源部200と逆電流通電部300、400が対称な構造を有し、アース側に連結されている。
【0033】
逆電流電源部200は、逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231の電圧極性を反転させるためのインダクタ212と真空ギャップスイッチ211が直列に連結された回路を中心に、4個のダイオード223、224、233、234と逆電流制限用抵抗222、232が両方向電流方向にそれぞれ作用する電圧充電用キャパシタと連結され、構成される。
【0034】
また、逆電流通電部300、400には、遮断しなければならない電流方向に応じて、それぞれ作用することになる2つの回路が主遮断用高速機械式スイッチの両端に連結されているダイオード312、412と真空ギャップスイッチ311、411とで構成されている。
【0035】
このような回路は、適切な時点での順次の動作を介して、(1)逆電流電源部200は、ダイオード223、233、抵抗222、232、キャパシタ221、231からなるキャパシタ充電回路、(2)キャパシタ221、231、ダイオード224、234、インダクタ212、ギャップスイッチ211で構成される極性反転回路、及び3キャパシタ221、231、真空ギャップスイッチ311,411、ダイオード312、412、主遮断部スイッチ111、ダイオード223、233、逆電流大きさ制御抵抗222、232で構成される逆電流注入回路とともに3種類の形態の回路であり、それぞれ作用することで直流遮断動作を提供することになる。
【0036】
このように、極性反転回路のダイオード224、234と真空ギャップスイッチ211を用いて既存のサイリストの役割を遂行させることで、高電圧部に能動型電力半導体素子の適用による困難を解消できることになる。
【0037】
また、両方向直流遮断装置の構造において、各電流方向に対する逆電流用キャパシタを別に使用するようにすることで、主遮断部スイッチ111を両方向電流に対して共通活用することができるようにし、直流遮断装置を簡素化できることになる。
【0038】
このとき、極性反転回路の真空ギャップスイッチ211と逆電流注入回路の真空ギャップスイッチ311、411は、同じギャップトリガー制御器で作動されるようにすることによって、2つの真空ギャップスイッチ間の投入動作時点差が特定遅延時間Tdだけ一定に維持されるようにし、常に一定の大きさの逆電流が生成されるようにすることができる。
【0039】
また、遅延時間Tdの間、極性が反転したキャパシタ221、231充電電圧が負荷側ショートにより放電されることを防止するために、直流遮断部の負荷側にインダクタを設けて、使用することができる。
【0040】
このような方式で逆電流生成のために用いられた既存の方式で、能動型電力半導体素子と非線形抵抗素子が用いられたものを、ダイオードと真空ギャップスイッチに代替することで、安定した逆電流注入と直流遮断のための相手電圧(count voltage)の生成が行われる直流遮断装置を提供できることになる。
【0041】
また、直流遮断装置は、別途3個の真空ギャップスイッチを用いて実現することができ、電流遮断時電流方向に応じて、このうちの2個の真空ギャップスイッチを作動させることで、遮断動作を行うことになる。
【0042】
または、真空ギャップスイッチの代わりに可変放電ギャップを用いて直流遮断装置を実現することもできる。
図2は、可変放電ギャップスイッチの構成及び動作過程を示した図である。
【0043】
換言すれば、逆電流電源部200と逆電流通電部300、400に用いられる真空ギャップスイッチの代わりに、可動ギャップスイッチで作動でき、可動ギャップスイッチは、同じ操作機で可動され、ストローク速度及び距離に応じて2つのスイッチ間の投入時点時間遅延が決定される。
【0044】
図2において、用いられる可動ギャップスイッチは、固定部と可動部との間にある3つの内部接点C1、C21、C22、C3と外部との接続のための3つの外部接続端子P1、P2、P3で構成されており、この内部接点間の相互接触関係で外部接続端子間の接続状態が与えられ、可動部の動作時、内部接点の接触衝撃を防止するために、全ストローク領域で固定部と可動部との間に少なくとも1点の軸整列支持点を保持することになる。
【0045】
図2に示されるように、電流零点を形成させるための逆電流生成段階で作動する可変放電ギャップ211、311、411を用いたい場合、その構造で外部的に3つの接続端子P1、P2、P3と内部的に可動放電ギャップの可動部が下方向に進みながら接触と分離が行われる可動ギャップC1、C2、C3があることを示している。また、C2は、可動ギャップC21とC22の直列接続形態になるようにし、極間の絶縁回復性能を強化できる構造になっている。
【0046】
初期の可動放電ギャップ接続状態は、接点C1とC3は分離されており、C2は、接触した状態になっているので、接続端子P1、P2、P3は全部分離された状態になり、可動放電ギャップの可動部が作動すれば、可動部は下部方向にストロークが進みながら、可動ギャップC1は、可動ギャップC2が依然として接触した状態で投入されるようになり、外部接続端子P1とP2がクローズ状態となる。
【0047】
また、ストロークが継続して進むと、ギャップC21とC22とが直列連結で構成された可動ギャップC2が分離され、これにより、外部接続端子P1とP2は再びオープン状態となる。また、続くストロークの進行により可動ギャップC3が投入されながら、この時点まで接続状態を保持してきた可動ギャップC1と共に外部接続端子P1とP3がクローズ状態となり、それ以降、ストロークに応じて放電ギャップC1が分離され、外部接続端子P1とP3はオープン状態となり、ストロークは終了する。
【0048】
図3は、直流遮断過程における可変放電ギャップ動作と遮断電流の関係を示した図である。
図3は、可動放電ギャップの動作を、ストローク特性と主遮断部を介して流れる遮断電流の関係において示したものであり、可動ギャップの外部端子間状態が順次一定時間間隔を置いて投入後、再び開極される状態を示す。
【0049】
図3における‘C1+C3’の最後の投入が発生する時点が、逆電流により主遮断部の電流が遮断される時点であり、直流遮断装置の遮断時間より短くなければならない。一例として、遮断時間が2ms以下に規定された直流遮断装置では、この時間が2ms以下で動作しなければなない。
【0050】
図4は、
図2の可変放電ギャップスイッチが直流遮断装置に設けられた例が示された図である。
図4は、前記可動放電ギャップが直流遮断装置に設けられた一例を示したものであり、両方向遮断機の場合、二つの可動放電ギャップが使用される。
【0051】
主遮断部の電流方向が右側の場合、作動する可動放電ギャップは、可動接点C11、C12及びC13で構成され、外部接続端子がP11、P12、P13となる。反面、主遮断部の電流方向が左側の場合、作動する可動放電ギャップは可動接点C21、C22及びC23で構成され、外部接続端子がP21、P22、P23となる。
【0052】
前述するように、可動放電ギャップのストロークの進行により順次行われる接続状態は、C11とC12の‘クローズ’に、P11とP12の連結線路が‘オン’になった後、直ちにC12は‘オフ’となり、C13が‘オン’となり、P11とP12の連結線路は‘オフ’となり、P11とP13を連結する線路が‘オン’となる過程に続く。また、主遮断部の電流方向が反対の場合、対称に設けられた放電ギャップが前記と同様に順次行われる。
【0053】
図5及び
図6は、直流遮断時の電圧波形を図示した図であり、
図5は、直流遮断時の主な電圧信号を示し、
図6は、
図5の電圧充電用キャパシタの極性転換区間を拡大して示している。
【0054】
電圧充電用キャパシタの電圧Vcは、遮断動作過程を経て線路電圧で充電された状態で極性が反転し、まもなく本来の極性に復元されながら、その大きさは避雷器の残留電圧の大きさで充電状態を保持することになる。
【0055】
また、主遮断用高速スイッチの両端に印加される電圧Vcbは、逆電流印加で発生した電流零点に直流が転流回路に転流され、電圧充電用キャパシタを介して直流が流れる過程で現れる電圧が避雷器に再び転流されながら発生する電圧形態になる。
【0056】
図7は、直流遮断時の電流波形を示した図であり、
図8は、可動放電ギャップ状態により現れる電流波形とキャパシタの電圧を示した図である。まず、Ipは、極性反転回路に流れる電流であり、可動放電ギャップのC1とC2が‘オン’となった時点で半波の共振電流が現れ、これにり、電圧充電用キャパシタは極性が反転し、逆電流を印加する準備状態となる。
【0057】
まもなく現れる可動放電ギャップのC1とC3が‘オン’となる時点で、逆電流Iiが発生し、主遮断用高速スイッチに電流零点が生成し、電流が遮断され、励起通電されていた遮断電流はIiとなり、この電流によりキャパシタ充電電圧が上昇し、避雷器の残留電圧分まで達すれば、この電流は再び避雷器電流Isaになり、線路の残存エネルギーを全部吸収して、直流遮断に達することになる。
【0058】
極性反転用スイッチの作動時点と逆電流注入回路用スイッチ作動時点との間には、遅延時間Tdが存在しており、この期間で直流遮断部の負荷側インダクタを介した放電により充電電圧が低くなるので、逆電流注入用スイッチ作動時点でのキャパシタに充電された電圧が一定電圧よりは大きくなるようにしなければならない。
【0059】
このときの一定電圧とは、キャパシタの残留電圧Vcと逆電流制限抵抗222、232から与えられる逆電流の大きさが遮断電流の大きさよりも大きくて、主遮断用高速機械式スイッチ111に電流零点が発生するようにする電圧の大きさをいう。
【0060】
また、直流遮断装置構造に事故電流発生時のキャパシタ充電回路500、600を追加し、加えて、ダイオード511、611を用いるものと事故電流遮断と正常負荷電流遮断を区分して作動するためのキャパシタ充電用スイッチ213を有することができる。
【0061】
図9は、作動時のみに、逆電流及び過度電圧発生用キャパシタを充電する方式の直流遮断装置の回路図を示した図である。
図9において、直流遮断装置のキャパシタ221、231は、平常時には充電されていない状態であるが、遮断動作が必要な時点でのみ充電して使用するようにする。
【0062】
事故電流発生時には、直流遮断装置の両側に設けられた電流制限用インダクタ21、22に誘起される電圧を利用して、キャパシタを充電できるように充電用ダイオード511、611が設けられ、正常負荷電流遮断時には、線路電圧がキャパシタ充電に使用されるように、平常時には開放状態で運転していたキャパシタ充電用スイッチ213を投入して使用する。
【0063】
詳しくは、逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231が平常時には充電されていない状態を保持し、事故電流発生の時だけ線路上発生する電圧により充電されるか、正常負荷電流遮断時は、普段開放されて運転されていたキャパシタ充電用スイッチ214を投入し、キャパシタを充電した後、遮断するように実現する。
【0064】
図10は、本発明による直流遮断方法を行うための概略的な流れ図である。
図10には、直流遮断装置の作動順序が示されており、直流遮断装置の直流遮断過程が図式的に表現されている。
【0065】
直流遮断の過程は、逆電流電源部200の逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231に線路電圧により充電された電圧(S101)を極性反転命令に従って(S102)、真空ギャップスイッチ211の作動で極性を反転させれば(S103)、極性が反転されたキャパシタ電圧は、直流遮断機の負荷側インダクタを介して自主的に放電が開始される(S104)。
【0066】
このキャパシタ電圧が一定電圧以下で放電される前に、直ぐに逆電流通電部300、400の真空ギャップスイッチ311、411を作動させ(S105)、主遮断用高速スイッチ111に遮断電流と逆方向に電流を流して、遮断電流と逆電流との合計からなる電流零点を人為的に作ることで、主遮断部100の電流が遮断(S107)される。
【0067】
このとき、作動する真空ギャップスイッチ311、411は、選択的に作動することになり、主遮断部100に流れる遮断電流の方向に応じて2つの真空ギャップスイッチのうちの1つだけが作動する。即ち、主遮断部の遮断電流方向が右側に流れる場合、右側の真空ギャップスイッチ311が作動し、反対に左に流れる場合、左側の真空ギャップスイッチ411が作動し、直流が遮断される。
【0068】
このように、高速機械式スイッチ111で電流を遮断することになる時点は、電流遮断後発生する過度電圧から高速機械式スイッチ111が絶縁を十分に保持しうる極間距離になる時点で調整しなければならず、主遮断部の高速機械式スイッチ111で電流が遮断されれば、遮断電流は逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231を介する転流回路(commutation circuit)に通電され、キャパシタの充電電圧が過度電圧として発生(S108)することになる。
【0069】
このときの過度電圧は、一定電圧以上になれば(S109)、逆電流及び過度電圧発生用キャパシタと並列に連結された避雷器511によって制限され、2次転流(commutation)が発生し(S110)、線路に蓄積されたエネルギーは避雷器511を介して吸収(S111)され、電流は減少し、続いて発生する電流零点時に最終的に遮断が完了(S112)する。
【0070】
詳しく説明すると、
図1の直流遮断装置において、a)主通電部100に流れる電流の大きさ及び方向を判断し、b)与えられる動作指令により主遮断用高速スイッチ111の開極動作と電圧極性反転用機械式スイッチ211の投入によって逆電流及び過度電圧発生用キャパシタの充電電圧極性を反転させ、c)主通電部100の電流方向に応じて逆電流通電用機械式スイッチ311、411を選定し、主遮断用高速スイッチ111の極間が電流遮断後発生する過度電圧に耐えられる距離になる時点で、これを投入して主遮断用高速スイッチ111に流れる電流に零点が発生するようにして、その通電電流を遮断する。
【0071】
これにより、d)主遮断部100で遮断された電流は、逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231で形成される転流(commutation)回路を介して流れ、一定電圧以上に電圧充電用キャパシタに電圧が高くなれば、線路エネルギー吸収用として使用される避雷器510側に再び電流され、このとき、発生された逆電圧により電流が遮断される。
【0072】
このとき、主通電部100に流れる電流が右側方向の場合には、右側逆電流通電用真空ギャップスイッチ311を投入し、左側の逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221放電電流を主遮断用高速スイッチ111に通電させ、電流の方向が反対に左側方向の場合、左側逆電流通電用真空ギャップスイッチ411を投入し、右側の逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ231放電電流を主遮断用高速スイッチ111に通電させることで、主遮断用高速スイッチ111に電流零点が発生するようにする。
【0073】
また、逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231の極性反転用真空ギャップスイッチ211と逆電流通電部の真空ギャップスイッチ311、411の放電動作は、極性反転回路により完全に極性が反転された後、逆電流通電部の真空ギャップスイッチの投入が行えるように一定の時間間隔を確保するために、2つの真空ギャップスイッチ間の遅延動作を保持し、逆電流注入のための真空ギャップスイッチ311、411の投入時点で、逆電流及び過度電圧発生用キャパシタ221、231の残留電圧を一定に確保するために、適切な放電時定数を有するように直流遮断部の負荷側インダクタ22を用いる。
【0074】
本発明は、直流遮断装置及び方法に関するものであり、従来の電流型コンバータ方式に比べて著しく速い事故電流遮断時間が求められる電圧型コンバータが使用される直流送電系統で系統安定性を保持できるように事故直流を速やかに遮断できる直流遮断装置及び方法に関するものである。
【0075】
逆電流注入方式として、主遮断部に電流零点を人為的に作り、直流遮断を行うために、同じ概念の以前の方式では系統電圧が印加される高電圧部にサイリスタのようなゲート信号が必要な能動型電力半導体素子が用いられ、信号発生のための電源及び信号線が直流遮断機システムを複雑にしていた。
【0076】
本発明は、直流遮断装置の高電圧の部分を受動素子のみで構成することによって、より経済的で、簡潔な装置の構成を実現することを特徴とする。即ち、電源部及び信号線が使用されないように高電圧部に受動素子であるダイオードと真空ギャップスイッチを使用する方式で直流遮断を行う。
【0077】
本発明によれば、高電圧部位に位置し、使用されていた能動型電力半導体素子の代わりに、ゲート制御信号とこれによる電源装置が必要でない受動素子ダイオードと真空ギャップスイッチを使用することで、高電圧部の構成を簡単、且つ信頼性あるように構成することができる。
【0078】
このような効果は、適用電圧が高くなればなるほど一層大きくなり、今後超高圧化される多端子HVDC送電系統にも便利に適用することができる。
【0079】
本発明は、一部の好ましい実施例によって説明されたが、本発明の範囲はこれによって制限されるものではなく、特許請求の範囲によって裏付けられる前記実施例の変形や改良などを含む。