(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の絶縁カバーを、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0009】
(第1の実施形態)
図1から
図10を参照して、第1の実施形態の絶縁カバー100について説明する。まず、絶縁カバー100が用いられる電気接続構造10の一例について説明する。この電気接続構造10は、例えば、後述する第2から第6の実施形態でも共通である。ただし、各実施形態の絶縁カバー100は、以下に示す例に限らず、種々の電気接続構造に広く適用可能である。
【0010】
図1は、電気接続構造10の一例を一部分解して示す斜視図である。電気接続構造10は、例えば、複数の電線200、複数の圧着端子300、端子台400、および複数の固定部材500を含む。なお本明細書では、互いに接続された圧着端子300と電線200とを合わせて「電線ユニットU」と称する。
【0011】
電線200は、導体(芯線)210と、絶縁体(被膜)220とを有する。導体210は、1本のワイヤーWにより形成されてもよく、束ねられた複数のワイヤーWにより形成されてもよい。導体210は、略円状の断面を有する。絶縁体220は、導体210の周面を覆っている。導体210は、絶縁体220の外部に突出した端部211を有する。
【0012】
圧着端子300は、いわゆる裸圧着端子である。圧着端子300は、筒部(圧着部)310と、板部(端子部)320とを有する。
【0013】
筒部310は、筒状に形成されて、電線200の導体210の端部211が挿入される。なお本明細書で「筒部」および「筒状」とは、筒部310が予め筒状に形成されている場合に限定されず、平状またはU字状などに形成された素材が導体210との接続時に導体210を包むように筒状に形成される場合も含む。また本明細書で「挿入」とは、予め筒状に形成された筒部310の内部に導体210の端部211を入れる場合に限定されず、平状またはU字状などに形成された素材が導体210を包むように筒状に形成されることで筒部310の内部に導体210の端部211が位置する場合も含む。筒部310は、例えば、圧着工具または圧着機械などによって、導体210の端部211に向けて物理的な圧力が加えられることで、導体210の端部211に圧着される。これにより、筒部310と導体210の端部211とが物理的および電気的に接続される。
【0014】
板部320は、筒部310と一体に設けられている。板部320は、筒部310の径方向の一端部から、筒部310の軸方向に板状に延びている。板部320は、貫通穴320aを有する。貫通穴320aは、板部320の厚さ方向に板部320を貫通している。貫通穴320aには、ねじまたはボルトのような固定部材500が通される。固定部材500は、頭部510と、頭部510よりも細くてねじ山が形成された軸部520とを有する。
【0015】
端子台400は、例えば、端子台本体410と、端子台カバー420とを有する。端子台本体410は、絶縁性のベース411と、ベース411に設けられた複数の電気接続部(端子台端子部)412とを有する。ベース411は、複数の電気接続部412の間に起立壁411aを有する。
【0016】
電気接続部412は、圧着端子300の板部320が接続される金属部品412aを含む。また電気接続部412は、圧着端子300の貫通穴320aに面するねじ穴412bを有する。ねじ穴412bは、金属部品412aに設けられてもよく、金属部品412aの裏側に金属部品412aとは別の受け部が設けられる場合は、その受け部に設けられてもよい。圧着端子300の貫通穴320aに通された固定部材500は、電気接続部412のねじ穴412bに係合する。これにより、圧着端子300の板部320と電気接続部412とが物理的および電気的に接続される。
【0017】
端子台カバー420は、例えば複数の電気接続部412を覆う板状に形成されている。端子台カバー420は、合成樹脂のような絶縁材料で形成されている。端子台カバー420は、電気接続部412とは反対側から圧着端子300の板部320を覆う。電気接続構造10では、例えば、圧着端子300の板部320の一部および筒部310は、端子台400の外部に位置する。圧着端子300の板部320の一部および筒部310は、端子台カバー420によって覆われない。
【0018】
図2は、電線ユニットUの一例を示す斜視図である。
図2に示す例では、圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との間には、筒部310の軸方向で隙間gが存在する。電線200の導体210の端部211は、筒部310と絶縁体220との間の隙間gに露出した露出部211aを有する。隙間gは、この隙間gを意図的に空けて圧着端子300が電線200の導体210に取り付けられることで形成されてもよく、電線200の曲げや設置の過程などで結果的に形成されてもよく、隙間gを生じさせるように絶縁体220に外力を加えて導体210に対して絶縁体220をずらす(後退させる)ことで形成されてもよく、その他の方法で形成されてもよい。
【0019】
圧着端子300の板部320は、端子台400に面する第1領域R1と、端子台400の外部に張り出す第2領域R2とを有する。
【0020】
図3は、圧着端子300の一例を示す図である。圧着端子300は、例えば、比較的大きな電流が流れる圧着端子であり、端子台400の電気接続部412に対する接触面積を大きく確保するため、次のような形状を有する。すなわち、圧着端子300の板部320は、第1端部320e1と、第1端部320e1とは反対側に位置した第2端部320e2とを有する。第1端部320e1は、筒部310に接続された端部である。第1端部320e1は、圧着端子300の幅方向において、筒部310の両側に直線状に延びた直線部SPを有する。ただし、圧着端子300の形状は、上記例に限定されない。
【0021】
次に、本実施形態の絶縁カバー100について説明する。
図4は、電線ユニットUおよび絶縁カバー100を示す斜視図である。絶縁カバー100は、合成樹脂のような絶縁材料で形成されている。絶縁カバー100の材質の一例は、ポリカーボネートであるが、これに限定されない。絶縁カバー100は、端子台400の外部に配置され、圧着端子300の板部320の大部分は覆わない。絶縁カバー100は、圧着端子300の筒部310を覆う。
【0022】
ここで、説明の便宜上、+X方向、−X方向、+Y方向、−Y方向、+Z方向、および−Z方向について定義する。+X方向は、電線ユニットUに対する絶縁カバー100の取り付け方向であり、例えば圧着端子300の板部320に対して略垂直な方向である。+X方向は、圧着端子300の筒部310の径方向に沿う方向である。−X方向は、+X方向とは反対の方向である。+X方向と−X方向とを区別しない場合は、単に「X方向」と称する。+Y方向および−Y方向は、X方向とは異なる(例えば略直交する)方向である。+Y方向は、後述するカバー本体110の第2カバー部112から第3カバー部113へ向かう方向である。−Y方向は、+Y方向とは反対方向である。+Y方向と−Y方向とを区別しない場合は、単に「Y方向」と称する。+Z方向および−Z方向は、X方向およびY方向とは異なる(例えば略直交する)方向であり、筒部310の軸方向に沿う方向である。+Z方向は、電線200の絶縁体220から圧着端子300の筒部310に向かう方向である。―Z方向は、+Z方向とは反対方向である。+Z方向と−Z方向とを区別しない場合は、単に「Z方向」と称する。本実施形態では、+X方向は、「第1方向」の一例である。+Z方向は、「第2方向」の一例である。−Z方向は、「第3方向」の一例である。
【0023】
図5は、絶縁カバー100を示す斜視図である。絶縁カバー100は、例えば、カバー本体110、係合部120、および一対の支持部130A,130Bを有する。
【0024】
まず、カバー本体110について説明する。カバー本体110は、圧着端子300の筒部310の径方向に沿う少なくとも一方向(例えば+X方向)が開放されている。カバー本体110は、端子台400の外部に配置され、少なくとも圧着端子300の板部320のなかで端子台400の電気接続部412に面する領域を覆わないとともに、圧着端子300の筒部310を覆う。カバー本体110は、例えば、第1カバー部111、第2カバー部112、第3カバー部113、および切欠き部114A,114Bを有する。なお切欠き部114A,114Bについては後述する。
【0025】
第1カバー部111は、Y方向およびZ方向に沿う板状に形成されている。第1カバー部111は、+X方向で圧着端子300の筒部310を覆う。また、第1カバー部111は、+X方向で、圧着端子300の板部320の第1領域R1を覆わないとともに、板部320の第2領域R2の少なくとも一部を覆う。
【0026】
第2カバー部112は、第1カバー部111の−Y方向側の端部から、+X方向に延びている。第2カバー部112は、X方向およびZ方向に沿う板状に形成されている。第2カバー部112は、+Y方向で圧着端子300の筒部310を覆う。本実施形態では、第2カバー部112は、第1カバー部111の−Z方向側の端部よりも、さらに−Z方向側に延びている。
【0027】
第3カバー部113は、第1カバー部111の+Y方向側の端部から、+X方向に延びている。第3カバー部113は、X方向およびZ方向に沿う板状に形成されている。第3カバー部113は、−Y方向で圧着端子300の筒部310を覆う。すなわち、カバー本体110は、第1から第3のカバー部111,112,113によって圧着端子300の筒部310を3方向から囲む。カバー本体110は、+X方向において外部に開放された開放部Oを有する。開放部Oは、第2カバー部112の+X方向側の端部と、第3カバー部113の+X方向側の端部との間に形成されている。本実施形態では、第3カバー部113は、第1カバー部111の−Z方向側の端部よりも、さらに−Z方向側に延びている。
【0028】
絶縁カバー100には、識別表示IDが設けられてもよい。識別表示IDは、絶縁カバー100が取り付けられる電線200の線番号を示すものでもよく、絶縁カバー100が取り付けられる電線200に供給される交流電力の相(U相、V相、W相)を示すものでもよい。識別表示IDは、絶縁カバー100の表面に設けられた凹凸により形成されてもよく、絶縁カバー100に貼られたシールなどの表示で形成されてもよい。また、識別表示IDは、文字に限らず、単色または2色以上の色のみで構成されてもよい。例えば、識別表示IDは、交流電力の相(U相、V相、W相)ごとに異なる色を含んでもよい。識別表示IDは、第1カバー部111、第2カバー部112、および第3カバー部113の2つ以上に設けられてもよい。
【0029】
次に、係合部120について説明する。係合部120は、第1カバー部111の−Z方向側の端部から、+X方向に延びている。係合部120は、X方向およびY方向に沿う板状に形成されている。係合部120は、電線200の導体210の外形(外周面)に沿う円弧部121を有する。円弧部121は、+X方向で、導体210の端部211のなかで圧着端子300の筒部310に覆われていない領域に係合する。なお本明細書で「係合」とは、「係わり合うこと」を広く意味する。すなわち、「係合」とは、互いに係合する2つの部材に固定状態が生じる場合に限定されず、単に接するだけの場合も含む。
【0030】
本実施形態では、係合部120は、圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との間の隙間gに挿入され、導体210の端部211のなかで隙間gに露出した露出部211aに係合する(
図4参照)。圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との間に係合部120が挿入された場合、係合部120は、+Z方向で圧着端子300の筒部310に面し、−Z方向で電線200の絶縁体220に面する。これにより、係合部120の+Z方向の位置(絶縁カバー100の+Z方向の位置)は、圧着端子300の筒部310によって規制される。一方で、係合部120の−Z方向の位置(絶縁カバー100の−Z方向の位置)は、電線200の絶縁体220によって規制される。例えば、係合部120は、圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との両方に接して、筒部310と絶縁体220とによって挟持される。なお、係合部120は、例えば係合部210の厚みに比べて隙間gが大きい場合、筒部310と絶縁体220とのうちいずれか一方のみに接してもよい。
【0031】
図6は、絶縁カバー100を別の角度から見た斜視図である。本実施形態では、係合部120の円弧部121は、180度よりも大きく形成されて、係合部120の内側に電線200の導体210が挿入される空間Sを規定している。空間Sは、+X方向側が開放されている。空間Sは、この空間Sの中央に位置した中央部Saと、中央部Sa対して+X方向側に位置した入口部Sbとを有する。入口部SbのY方向の幅W2は、中央部SaのY方向の幅W1よりも狭い。これにより、係合部120は、入口が狭くなったU穴状に形成されている。
【0032】
本実施形態では、中央部SaのY方向の幅W1は、電線200の導体210の直径と略同じである。一方で、入口部SbのY方向の幅W2は、電線200の導体210の直径よりも小さい。係合部120は、電線200の導体210が押し付けられた場合、電線200の導体210が入口部Sbを通過できるように弾性変形する。これにより、電線200の導体210は、入口部Sbを通過して空間Sの中央部Saに挿入される。空間Sの中央部Saに挿入された電線200の導体210は、入口部Sbの幅が導体210の直径よりも狭いため、空間Sから抜けにくい。また、電線200の導体(芯線)210が撚り線である場合、撚り線を構成する複数のワイヤーW同士の位置がずれることで、導体210は細くまたは太くなる方向に弾性変形可能である。このため、電線200の導体210が係合部120に押し付けられた場合、撚り線を構成する複数のワイヤーW同士の位置がずれて導体210が入口部Sbよりも細くなる。これにより、電線200の導体210は、入口部Sbを通過して空間Sの中央部Saに挿入されてもよい。この場合、導体210が空間Sの中央部Saに至ることで、導体210は元の形状に戻り、導体210が空間Sから抜けにくくなる。
【0033】
以上を別の観点で説明すると、係合部120は、第1部分122a、第2部分122b、および第3部分122cを有する。第1部分122aは、+X方向で電線200の導体210に面する。第2部分122bは、第1部分122aに対して第1周方向θ1で90度よりも大きく異なる位置で電線200の導体210の面する。第1周方向θ1は、導体210の外形(外周面)に沿う方向である。一方で、第3部分122cは、第1部分122aに対して第2周方向θ2で90度よりも大きく異なる位置で電線200の導体210の面する。第2周方向θ2は、導体210の外形(外周面)に沿う方向であって、第1周方向θ1とは反対の方向である。第2部分122bと第3部分122cとの間の隙間は、空間Sの入口部Sbを規定する。
【0034】
第2部分122bおよび第3部分122cの各々は、空間Sの中央部Saに挿入された電線200の導体210を、第1部分122aとは異なる方向から支持する支持部である。なお本明細書で「支持する」とは、対象物に対して常に接して支持する場合に限定されず、対象物との間に隙間が存在するとともに、例えば外力が作用して対象物が動く(例えば傾く)場合などに対象物に接して対象物を支持する(例えば位置を規制する)場合も含む。
【0035】
本実施形態では、係合部120は、カバー本体110の第2カバー部112および第3カバー部113には接続されていない。このため、係合部120は、第2カバー部112および第3カバー部113によって弾性変形が規制されない。このため、係合部120は、電線200の導体210が入口部Sbを通過できるように比較的自由に弾性変形することができる。
【0036】
次に、一対の支持部130A,130B(第1支持部130Aおよび第2支持部130B)について説明する。第1支持部130Aは、第2カバー部112の+X方向側の端部に設けられている。第1支持部130Aは、例えば、第2カバー部112の+X方向側の端部が絶縁カバー100の内側に向けて折り曲げられることで形成されている。第1支持部130Aは、カバー本体110の少なくとも一部(例えば、第1カバー部111)とは反対側から電線200および圧着端子300の筒部310に面する。
【0037】
本実施形態では、第1支持部130Aは、Z方向で、第2カバー部112の全長に亘って設けられている。第1支持部130Aは、係合部120よりも+Z方向側に位置した第1部分130Aaと、係合部120よりも−Z方向側に位置した第2部分130Abとを有する。第1部分130Aaは、第1カバー部111とは反対側から圧着端子300の筒部310に面する。第2部分130Abは、第1カバー部111とは反対側から電線200の絶縁体220に面する。本実施形態では、電線200の絶縁体220の外径は、圧着端子300の筒部310の外径よりも大きい。このため本実施形態では、第2部分130Abが電線200の絶縁体220に接して電線200を支持する。なお、圧着端子300の筒部310の外径が電線200の絶縁体220の外径と略同じまたはそれよりも大きい場合、第1部分130Aaが圧着端子300の筒部310に接して圧着端子300の筒部310を支持してもよい。なお、第1支持部130Aは、第1部分130Aaと、第2部分130Abとのうちいずれか一方のみを有してもよい。言い換えると、第1支持部130Aは、電線200と圧着端子300の筒部310とのうち少なくとも一方を支持すればよい。
【0038】
第2支持部130Bは、第3カバー部113の+X方向側の端部に設けられている。第2支持部130Bは、例えば、第3カバー部113の+X方向側の端部が絶縁カバー100の内側に向けて折り曲げられることで形成されている。第2支持部130Bは、カバー本体110の少なくとも一部(例えば、第1カバー部111)とは反対側から電線200および圧着端子300の筒部310に面する。
【0039】
本実施形態では、第2支持部130Bは、Z方向で、第3カバー部113の全長に亘って設けられている。第2支持部130Bは、係合部120よりも+Z方向側に位置した第1部分130Baと、係合部120よりも−Z方向側に位置した第2部分130Bbとを有する。第1部分130Baは、第1カバー部111とは反対側から圧着端子300の筒部310に面する。第2部分130Bbは、第1カバー部111とは反対側から電線200の絶縁体220に面する。本実施形態では、第2部分130Bbが電線200の絶縁体220に接して電線200を支持する。なお、圧着端子300の筒部310の外径が電線200の絶縁体220の外径と略同じまたはそれよりも大きい場合、第1部分130Baが圧着端子300の筒部310に接して圧着端子300の筒部310を支持してもよい。なお、第1支持部130Bは、第1部分130Baと、第2部分130Bbとのうちいずれか一方のみを有してもよい。言い換えると、第2支持部130Bは、電線200と圧着端子300の筒部310とのうち少なくとも一方を支持すればよい。
【0040】
図7は、電線ユニットUおよび絶縁カバー100を示す断面図である。第1支持部130Aは、電線200の一部に対して係合部120とは反対側に位置し、係合部120とは反対側から電線200の絶縁体220を支持する。同様に、第2支持部130Bは、電線200の一部に対して係合部120とは反対側に位置し、係合部120とは反対側から電線200の絶縁体220を支持する。これにより、係合部120と一対の支持部130A,130Bとの間に電線200の位置が規制される。これにより、絶縁カバー100が電線ユニットUから脱落しにくくなる。
【0041】
図8は、電線ユニットUに対する絶縁カバー100の取り付け方法を示す断面図である。絶縁カバー100は、第1支持部130Aと第2支持部130Bとの間を開くように弾性変形可能である。例えば、第1支持部130Aおよび第2支持部130Bは、第1カバー部111に対して第2カバー部112および第3カバー部113を弾性変形させることで、互いに離れる方向に移動可能である。これにより、電線ユニットUを絶縁カバー100の内側に挿入することができる。
【0042】
ここで本実施形態では、第2カバー部112および第3カバー部113は、係合部120に接続されていない。このため、第2カバー部112および第3カバー部113は、係合部120によって弾性変形が規制されない。このため、第2カバー部112および第3カバー部113は、第1支持部130Aと第2支持部130Bとの間に電線ユニットUを通過させるように比較的自由に弾性変形することができる。
【0043】
次に、カバー本体110の切欠き部114A,114Bについて説明する。
図9は、電線ユニットUおよび絶縁カバー100を示す斜視図である。本実施形態では、カバー本体110は、第1端部110e1と、第2端部110e2とを有する。第1端部110e1は、+Z方向側の端部である。第1端部110e1は、Z方向において、第1カバー部111に対して係合部120とは反対側に位置した端部である。第2端部110e2は、−Z方向側の端部であり、第1端部110e1とは反対側に位置する。
【0044】
ここで、圧着端子300の板部320は、第1主面321、第2主面322、端面323、および側面324を有する。第1主面321および第2主面322は、Y方向およびZ方向に沿う面である。第1主面321および第2主面322の各々は、板部320の表面のなかで面積が最も大きな面である。第1主面321は、−X方向に向いている。第1主面321は、板部320の貫通穴320aに通される固定部材500の頭部510に面する。第2主面322は、第1主面321とは反側側に位置し、+X方向に向いている。端面323は、板部320の−Z方向側の端部に位置し、X方向およびY方向に沿う面である。端面323は、第1主面321と第2主面322との間を繋いでいる。端面323は、上述した直線部SPを規定している。側面324は、板部320の周面のなかで、+Y方向または−Y方向に向く面である。側面324は、第1主面321とは略直交し、第1主面321と第2主面322との間を繋いでいる。
【0045】
本実施形態では、カバー本体110の第1端部110e1の一部は、板部320の第1主面321よりも+X方向側に突出し、+Z方向で板部320の端面323(すなわち直線部SP)に面する。これにより、カバー本体110の第1端部110e1の+Z方向の位置(絶縁カバー100の+Z方向の位置)は、圧着端子300の板部320によって規制される。本実施形態では、カバー本体110の第1端部110e1は、+Z方向で板部320の直線部SPに面する。これにより、カバー本体110の第1端部110e1の位置が、より安定して規制される。
【0046】
本実施形態では、カバー本体110の第1端部110e1には、一対の切欠き部114A,114B(第1切欠き部114Aおよび第2切欠き部114B)が設けられている。第1切欠き部114Aは、第2カバー部112の+X方向側の端部および第1支持部130Aが切り欠かれることで形成されている。言い換えると、第1切欠き部114Aは、第2カバー部112と第1支持部130Aとに亘って設けられている。第1切欠き部114Aは、+Z方向および+X方向で板部320(例えば、板部320の直線部SP)に係合する。これにより、絶縁カバー100の+Z方向の位置に加え、絶縁カバー100の+X方向の位置(例えば、第2カバー部112の+X方向の位置)が圧着端子300の板部320によって規制される。なお本明細書で「係合する」とは、対象物に対して常に接している場合に限定されず、対象物との間に隙間が存在するとともに、例えば外力が作用して対象物が動く(例えば位置ずれする)場合などに対象物に接して対象物に係合する場合も含む。本明細書では、例えば、切欠き部により規定された空間(切欠き部により少なくとも2方向から囲まれた空間)に別部材の少なくとも一部が位置する場合、「係合」と称する。
【0047】
一方で、第2切欠き部114Bは、第3カバー部113の+X方向側の端部および第2支持部130Bが切り欠かれることで形成されている。言い換えると、第2切欠き部114Bは、第3カバー部113と第2支持部130Bとに亘って設けられている。第2切欠き部114Bは、+Z方向および+X方向で板部320(例えば、板部320の直線部SP)に係合する。これにより、絶縁カバー100の+Z方向の位置に加え、絶縁カバー100の+X方向の位置(例えば、第3カバー部113の+X方向の位置)が圧着端子300の板部320によって規制される。本実施形態では、第1および第2の切欠き部114A,114Bがそれぞれ板部320に係合することで、電線200の周方向(第1周方向θ1および第2周方向θ2)における絶縁カバー100の回転が規制される。
【0048】
次に、絶縁カバー100の取り付け方法を説明する。まず、圧着端子300の筒部310に電線200の導体210の端部211が挿入される。そして、圧着工具または圧着機械などを利用して圧着端子300の筒部310が電線200の導体210の端部211に圧着される。これにより、電線200と圧着端子300とを含む電線ユニットUが形成される。
【0049】
絶縁カバー100は、例えば、電線ユニットUが端子台400に取り付けられる前に、電線ユニットUに取り付けられる。具体的には、第1支持部130Aと第2支持部130Bとの間を開くように絶縁カバー100を弾性変形させ、+X方向に沿って絶縁カバー100が電線ユニットUに取り付けられる。このとき、電線200の導体210が係合部120に押し付けられ、係合部120が弾性変形することで、電線200の導体210が空間Sの入口部Sbを通過して空間Sの中央部Saに挿入される。また、電線200の導体(芯線)210が撚り線である場合、導体210が係合部120に押し付けられ、撚り線を構成する複数のワイヤーW同士の位置がずれて導体210が入口部Sbよりも細くなることで、電線200の導体210が空間Sの入口部Sbを通過して空間Sの中央部Saに挿入されてもよい。これにより、第1支持部130A、第2支持部130B、および係合部120によって電線200が複数の方向から支持され、絶縁カバー100が電線ユニットUから外れにくくなる。
【0050】
また本実施形態では、絶縁カバー100の係合部120が圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との間に挿入されるとともに、カバー本体110の切欠き部114A,114Bが圧着端子300の板部320に係合する。これにより、+Z方向、−Z方向、第1周方向θ1、および第2周方向θ2における絶縁カバー100の位置ずれや回転が規制される。
【0051】
絶縁カバー100が電線ユニットUに取り付けられた後、電線ユニットUが端子台本体410に取り付けられる。そして、端子台本体410に端子台カバー420が取り付けられる。これにより、圧着端子300の板部320が端子台カバー420によって覆われ、絶縁性が高まる。
【0052】
なお、絶縁カバー100の取り付け方法は、上記例に限定されない。例えば、電線ユニットUは、絶縁カバー100が取り付けられる前に、端子台本体410に取り付けられてもよい。この場合、絶縁カバー100は、端子台本体410に電線ユニットUが取り付けられた後に、電線ユニットUに取り付けられる。
【0053】
次に、絶縁カバー100の作用について説明する。絶縁カバー100は、端子台400の外部に配置され、端子台カバー420では覆われていない圧着端子300の筒部310を覆う。これにより、圧着端子300の筒部310の絶縁性が高められる。
【0054】
図10は、端子台400、複数の電線ユニットU、および複数の絶縁カバー100を示す斜視図である。
図10に示す構成では、1つの端子台400に複数の電線ユニットUが取り付けられている。そして、絶縁カバー100は、各電線ユニットUに取り付けられている。このような構成によれば、導電性の異物M(例えば切子)が複数の圧着端子300の筒部310に跨って接触しようとする場合であっても、複数の圧着端子300の筒部310の間の絶縁性が確保され、短絡が防止される。
【0055】
このような構成によれば、汎用性が高いとともに、後付けや交換が可能な絶縁カバー100を提供することができる。以下、この内容について説明する。従来、圧着端子300の筒部310を絶縁するためには、絶縁鞘付き圧着端子が用いられるか、筒状の絶縁キャップが取り付けられていた。
【0056】
絶縁鞘付きの圧着端子は、電線のサイズに加えて、圧着端子のねじのサイズごとにも種類が分かれている。そのため、絶縁鞘付きの圧着端子を利用する場合は、多くの種類の在庫を持つ必要がある。また、絶縁鞘付きの圧着端子は、後付けや交換が困難であり、交換するためには電線200の切断が必要になる。本明細書で「後付け」とは、圧着端子300を電線200に取り付けた後に、絶縁用の部品を取り付けることを意味する。また、絶縁鞘付きの圧着端子は、一度取り付けると再利用が困難である。さらに、絶縁鞘付きの圧着端子は、一般的には所定サイズ(例えば5.5mm
2)までしかなく、太線に適用することは困難である。
【0057】
また、筒状の絶縁キャップは、圧着端子300を電線200に接続する前に電線200を通しおく必要があるため、後付けや交換が困難であり、交換するためには電線200の切断が通常必要になる。さらに、筒状の絶縁キャップは、電線200が通されるだけであるので、位置が固定されない。このため、絶縁キャップは、輸送時や機器のメンテナンス時に位置がずれてしまう可能性がある。絶縁キャップの位置がずれると、圧着端子の筒部が露出したり、端子台と圧着端子との間に絶縁キャップの一部が入り込み、接触不良の原因となり得る。このため、絶縁キャップを用いる場合は、絶縁キャップの位置がずれないように、絶縁キャップの一部を端子台に固定するなど、追加の対策が必要になる場合が多い。
【0058】
一方で、本実施形態の絶縁カバー100は、カバー本体110と、一対の支持部130A,130Bとを有する。カバー本体110は、圧着端子300の筒部310の径方向に沿う少なくとも一方向が開放されている。カバー本体110は、端子台400の外部に配置され、少なくとも圧着端子300の板部のなかで端子台400の電気接続部412に面する領域を覆わないとともに、圧着端子300を覆う。一対の支持部130A,130Bは、カバー本体110とは反対側から電線200に面する。
【0059】
このような構成によれば、絶縁カバー100の形状は、圧着端子300の板部320の形状や、固定部材500のサイズ、端子台400の形状などに依存しない。絶縁カバー100の形状は、例えば、電線200のサイズのみで決定される。このため、絶縁鞘付きの圧着端子や、例えば圧着端子300の板部320まで覆うような絶縁キャップが利用される場合に比べて、絶縁カバー100の種類を少なくすることができる。これにより、絶縁カバー100の汎用性を高めることができる。
【0060】
また本実施形態の絶縁カバー100によれば、圧着端子300の筒部310の径方向に沿う少なくとも一方向が開放されているため、圧着端子300を電線200に取り付けた後であっても、電線ユニットUに絶縁カバー100を後付けで取り付けたり、電線ユニットUに既に取り付けられた絶縁カバー100を別の絶縁カバー100に交換することが可能である。絶縁カバー100を後付けすることができると、例えば機器を設置した後に絶縁性の問題が生じた場合でも、絶縁カバー100を後付けすることで、電線200の切断や引き直しなどを行うことなく、その問題に対処することができる。また、絶縁カバー100は、筒状の絶縁キャップのように先に電線200を通しおく必要もないため、取付作業性も良好である。さらに、一度取り外した絶縁カバー100を再利用することもできる。これにより、機器の設置時やメンテナンス時の作業性を高めることができるとともに、必要なコストを低減することができる。
【0061】
また本実施形態の絶縁カバー100は、少なくとも圧着端子300の板部320のなかで端子台400の電気接続部412に面する領域を覆わない構成とすることで、圧着端子300の板部320の形状や大きさに関わらず、例えば圧着端子300の筒部310よりも一回り大きい程度まで小型化することが可能である。このような小型化された絶縁カバー100は、例えば複数の電線ユニットUが密に配置された場所にも適用可能であり、より汎用性が高いと言える。
【0062】
また本実施形態の絶縁カバー100は、比較的構成が簡単であり、太い電線などに対しても準備しやすい。このため、電線200が所定サイズ以上であっても、絶縁カバー100によって圧着端子300の筒部310の絶縁を確保することができる。
【0063】
また本実施形態によれば、カバー本体110とは反対側から電線200に面する一対の支持部130A,130Bが設けられている。このような構成によれば、電線ユニットUから絶縁カバー100が脱落することを抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、圧着端子300の板部320は、端子台400に面する第1領域R1と、端子台400の外部に張り出した第2領域R2とを有する。カバー本体110は、圧着端子300の板部320の第2領域R2の少なくとも一部を覆う。このような構成によれば、端子台400の外部に露出した板部320の第2領域R2の絶縁性も高めることができる。
【0065】
本実施形態では、絶縁カバー100は、係合部120を有する。係合部120は、電線200の導体210の外形に沿う円弧部121を有し、+X方向で、電線200の導体210の端部211のなかで圧着端子300の筒部310に覆われていない領域に係合する。すなわち、本実施形態は、電線200の導体210の端部211のなかに圧着端子300の筒部310に覆われていない領域があることに着目し、その領域を利用して絶縁カバー100を固定する係合部120を設けたものである。このような構成によれば、電線200の絶縁体220と比べて導体210が細いため、電線200の絶縁体220の外形に沿う円弧状の係合部が設けられる場合と比べて、係合部120の大きさを小さくすることができる。すなわち、電線200の導体210に係合する円弧状の係合部120を備えることで、電線200に対する絶縁カバー100の固定の確実性をより高めつつ、絶縁カバー100の小型化を図ることができる。
【0066】
本実施形態では、係合部120は、圧着端子300の筒部310の軸方向において、圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との間に挿入される。係合部120は、+Z方向で圧着端子300の筒部310に面し、−Z方向で電線200の絶縁体220に面する。このような構成によれば、電線200に対して係合部120のZ方向の位置を確実に規制することができる。これにより、輸送時や機器のメンテナンス時に絶縁カバー100の位置がずれてしまう可能性を小さくし、圧着端子300の筒部310が露出したり、接触不良が生じたりすることを抑制することができる。
【0067】
本実施形態では、係合部120の円弧部121は、180度よりも大きく形成されて、係合部120の内側に電線200の導体210が挿入される空間Sを規定する。空間Sは、中央部Saと、中央部Saに対して+X方向側に位置した入口部Sbとを有する。入口部Sbは、中央部Saに比べて狭い。このような構成によれば、電線200の導体210が中央部Saに挿入された場合、電線200から絶縁カバー100がより脱落しにくくなる。そして、本実施形態の場合、係合部120の円弧部121は、電線200の導体210の外形に沿う円弧部であるため、180度よりも大きく形成された場合であっても、電線200の絶縁体220の外形に沿う係合部が設けられる場合に比べて、絶縁カバー100の小型化を図ることができる。
【0068】
本実施形態では、カバー本体110は、+X方向で圧着端子300の筒部310を覆う第1カバー部111と、第1カバー部111に対して係合部120とは反対側に位置した第1端部110e1とを有する。第1端部110e1は、+Z方向で圧着端子300の板部320に面する。このような構成によれば、Z方向における第1カバー部111の両側の位置で、係合部120および絶縁カバー100の第1端部110e1によって電線ユニットUに対する位置の規制がそれぞれ行われる。これにより、絶縁カバー100の位置がより安定しやすくなる。
【0069】
本実施形態では、カバー本体110の第1端部110e1は、少なくとも+Z方向で圧着端子300の板部320に係合する切欠き部114Aを有する。このような構成によれば、カバー本体110の位置が圧着端子300の板部320によってより確実に規制される。これにより、絶縁カバー100の位置がより安定しやすくなる。
【0070】
本実施形態では、切欠き部114Aは、+Z方向に加え、+X方向で圧着端子300の板部320に係合する。このような構成によれば、電線200の周方向における絶縁カバー100の回転が抑制される。これにより、例えば
図10に示すような構成において、1つ以上の絶縁カバー100が回転してしまい、2つの絶縁カバー100の開放部O同士が互いに向かい合うことを避けることができる。
【0071】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、絶縁カバー100が蓋140を有する点で第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0072】
図11は、第2の実施形態の絶縁カバー100を示す斜視図である。本実施形態では、第1支持部130Aは、第2支持部130Bに近付く方向に屈曲した第1くびれ部131Aを有する。例えば、第1くびれ部131Aは、Z方向で、第2カバー部112の全長に亘って設けられている。第1くびれ部131Aは、第2カバー部112の+X方向側の端部から第2支持部130Bに近付く方向に折れ曲った第1部分131Aaと、第1部分131Aaの+X方向側の端部から第1部分131Aaとは反対方向に折れ曲った第2部分131Abとを含む。
【0073】
第1部分131Aaは、電線200の絶縁体220の外形および圧着端子300の筒部310の外形に沿うように形成され、電線200の絶縁体220および圧着端子300の筒部310に面する。例えば、第1部分131Aaは、電線200の一部に対して係合部120とは反対側に位置し、係合部120とは反対側から電線200の絶縁体220を支持する。なお、圧着端子300の筒部310の外径が電線200の絶縁体220の外径と略同じまたはそれよりも大きい場合、第1部分131Aaは、電線200の絶縁体220に加えて、または電線200の絶縁体220に代えて、圧着端子300の筒部310を支持してもよい。
【0074】
同様に、第2支持部130Bは、第1支持部130Aに近付く方向に屈曲した第2くびれ部131Bを有する。例えば、第2くびれ部131Bは、Z方向で、第3カバー部113の全長に亘って設けられている。第2くびれ部131Bは、第3カバー部113の+X方向側の端部から第1支持部130Aに近付く方向に折れ曲った第1部分131Baと、第1部分131Baの+X方向側の端部から第1部分131Baとは反対方向に折れ曲った第2部分131Bbとを含む。
【0075】
第1部分131Baは、電線200の絶縁体220の外形および圧着端子300の筒部310の外形に沿うように形成され、電線200の絶縁体220および圧着端子300の筒部310に面する。例えば、第1部分131Baは、電線200の一部に対して係合部120とは反対側に位置し、係合部120とは反対側から電線200の絶縁体220を支持する。なお、圧着端子300の筒部310の外径が電線200の絶縁体220の外径と略同じまたはそれよりも大きい場合、第1部分131Baは、電線200の絶縁体220に加えて、または電線200の絶縁体220に代えて、圧着端子300の筒部310を支持してもよい。
【0076】
図12は、第2の実施形態の電線ユニットUおよび絶縁カバー100を示す斜視図である。本実施形態では、絶縁カバー100は、カバー本体110に着脱可能に取り付けられ、カバー本体110とは反対側から電線200を覆う蓋140を備える。蓋140は、合成樹脂のような絶縁材料(例えば、カバー本体110と同じ材質)で形成されている。
【0077】
蓋140は、第1くびれ部131Aに外側から係合する第1係合部141Aと、第2くびれ部131Bに外側から係合する第2係合部141Bとを有する。第1および第2のくびれ部131A,131Bに第1および第2の係合部141A,141Bが係合することで、カバー本体110に蓋140が着脱可能に取り付けられる。
【0078】
このような構成によれば、圧着端子300の筒部310のさらに高い絶縁性を確保することができる。例えば、本実施形態の構成によれば、端子台400が平置きされる場合に加え、端子台400が平置き以外の姿勢で設置される場合であっても圧着端子300の筒部310に対して高い絶縁性を確保することができる。「平置きされる場合」とは、圧着端子300の第1主面321を上方に向けて端子台400が設置されることを意味する。「平置き以外の姿勢で設置される場合」とは、例えば、圧着端子300の第1主面321を水平方向に向けて端子台400が柱などに取り付けられ、端子台400の裏側が外部に露出する場合などを意味する。この場合、第1の実施形態の絶縁カバー100では、圧着端子300の筒部310の裏側が覆われておらず、圧着端子300の筒部310が外部に露出する。このため、平置き以外の姿勢で端子台400が設置される場合、例えば冷却風に乗って飛来する導電性の異物Mなどが複数の圧着端子300の筒部310に跨るように接触し、複数の圧着端子300の筒部310が短絡する可能性が残る。
【0079】
そこで本実施形態では、絶縁カバー100は、カバー本体110に着脱可能に取り付けられ、カバー本体110とは反対側から電線200を覆う蓋140をさらに備える。これにより、平置き以外の姿勢で端子台400が設置される場合であっても、圧着端子300の筒部310が外部に露出しない。このため、圧着端子300の筒部310に対してさらに高い絶縁性を確保することができる。また本実施形態によれば、端子台400が平置きされる場合には、蓋140を省略することができる。これにより、端子台400が平置きされる場合における設置作業の工数の削減を図ることができる。
【0080】
本実施形態では、一対の支持部130A,130Bは、カバー本体110の端部に設けられて互い近付く方向に屈曲した一対のくびれ部131A,131Bを有する。蓋140は、一対のくびれ部131A,131Bに係合することでカバー本体110に取り付けられる。このような構成によれば、電線200を支持する支持部130A,130Bを利用してカバー本体110に蓋140を取り付けることができる。これにより、蓋140を支持する特別な構造が設けられる場合に比べて、絶縁カバー100の形状の単純化を図ることができる。これにより、絶縁カバー100の製造コストの低減などを図ることができる。
【0081】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、電線ユニットUに対して絶縁カバー100が複数の方向から取り付け可能である点で第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0082】
図13は、電線ユニットUおよび絶縁カバー100を示す斜視図である。本実施形態では、電線ユニットUに対する絶縁カバー100の取付方向として、第1の実施形態と同じ取り付け方向を「第1取付方向」、上記第1取付方向に対して第2周方向θ2に90度異なる方向を「第2取付方向」、上記第1取付方向に対して第1周方向θ1に90度異なる方向を「第3取付方向」とした場合、第1取付方向、第2取付方向、および第3取付方向から選択される任意の方向で、絶縁カバー100が電線ユニットUに取り付け可能である。第2取付方向および第3取付方向の各々は、圧着端子300の板部320の第1主面321と略平行な方向である。
図13は、第2取付方向で取り付けられた絶縁カバー100を代表して示す。
【0083】
図14は、電線ユニットUおよび絶縁カバー100を示す正面図である。
図14は、第2取付方向で取り付けられた絶縁カバー100を示す。本実施形態では、第1距離L1および第2距離L2を次のように定義する。第1距離L1は、板部320の側面324を延長した仮想面VSと筒部310の内面との間の距離であって、第1主面321に沿う方向の最短距離である。第2距離L2は、第1カバー部111の内面と、導体210の端部211に接する係合部120の端面(円弧部121の内周面)との間の最短距離である。そして、第2距離L2は、第1距離L1よりも大きい。このような構成によれば、絶縁カバー100の第1カバー部111と圧着端子300の板部320との干渉を避けることができ、第2取付方向に沿って絶縁カバー100を取り付けられることが許容される。また、電線ユニットUは、
図14において、左右に線対称の構成を有する。また、絶縁カバー100は、
図14において、上下に線対称の構成を有する。このため、絶縁カバー100は、第3取付方向からでも取り付けられることが許容される。
【0084】
また本実施形態では、第3距離L3および第4距離L4を次のように定義する。第3距離L3は、板部320の第2主面322と筒部310の内面との間の距離であって、第1主面321に略垂直な方向の最短距離である。第4距離L4は、第3カバー部113の内面と、導体210の端部211に接する係合部120の端面(円弧部121の内周面)との間の最短距離である。そして、第4距離L4は、第3距離L3よりも大きい。このような構成によれば、第2取付方向に沿って絶縁カバー100が電線ユニットUに取り付けられた場合、第3カバー部113は、板部320の第2主面322に面する。第3カバー部113は、板部320のなかで端子台400から張り出した第2領域R2に面する。第3カバー部113は、板部320の第2主面322と略平行である。第3カバー部113が板部320の第2主面322に面すると、電線200の周方向(第1周方向θ1および第2周方向θ2)における絶縁カバー100の回転が規制される。
【0085】
また本実施形態では、第5距離L5を次のように定義する。第5距離L5は、第2カバー部112の内面と、導体210の端部211に接する係合部120の端面(円弧部121の内周面)との間の最短距離である。そして、第5距離L5は、第3距離L3よりも大きい。このような構成によれば、第3取付方向に沿って絶縁カバー100が電線ユニットUに取り付けられた場合、第2カバー部112は、板部320の第2主面322に面する。第2カバー部112は、板部320のなかで端子台400から張り出した第2領域R2に面する。第2カバー部112は、板部320の第2主面322と略平行である。第2カバー部112が板部320の第2主面322に面すると、電線200の周方向(第1周方向θ1および第2周方向θ2)における絶縁カバー100の回転が規制される。
【0086】
次に、本実施形態の絶縁カバー100の使用方法について説明する。
図15は、端子台400、複数の電線ユニットU、および複数の絶縁カバー100を示す斜視図である。
図15に示すように、複数の絶縁カバー100は、互いに同じ方向から複数の電線ユニットUに取り付けられる。すなわち、ある電線ユニットUに取り付けられた絶縁カバー100の開放部Oは、隣の電線ユニットUに取り付けられた絶縁カバー100の第1カバー部111に向かい合う。
【0087】
このような構成によれば、圧着端子300への取り付け姿勢として、第1の実施形態と同様の第1姿勢と、第1姿勢から90度回転させた第2姿勢と、第1姿勢に対して前記第2姿勢とは反対方向に90度回転させた第3姿勢を選択可能な絶縁カバー100が提供される。これにより、端子台400に対して90度回転させた姿勢で圧着端子300が取り付け可能になる。これにより、複数の絶縁カバー100の開放部Oが互いに同一方向に向くことを避けることができる。これにより、第2の実施形態と同様に、平置き以外の姿勢で端子台400が設置される場合であっても、導電性の異物Mが複数の圧着端子300の筒部310に跨るように接触し、複数の圧着端子300の筒部310が短絡することを防止することができる。
【0088】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、絶縁カバー100の係合部120が第1カバー部111に対して傾斜して設けられた点で第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0089】
図16は、第4の実施形態の絶縁カバー100を示す側面図である。本実施形態では、係合部120は、第1カバー部111に対して第1カバー部111から離れるに従い+Z方向に進むように傾斜している。係合部120は、Z方向に弾性変形可能である。
【0090】
図17は、電線ユニットUに取り付けられた絶縁カバー100に作用する力を示す側面図である。本実施形態では、係合部120が第1カバー部111に対して第1カバー部111から離れるに従い+Z方向に進むように傾斜していることで、係合部120が圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との間に挿入された場合、絶縁カバー100の一部(例えば、切欠き部114A,114B)を圧着端子300の板部320に向けて押圧する押圧力Fが絶縁カバー100に作用する。例えば、絶縁カバー100の一部(例えば、切欠き部114A,1114B)は、上記押圧力Fによって圧着端子300の板部320に対して+X方向で押圧される。
【0091】
以上のような構成によれば、絶縁カバー100のガタつきを抑制することができる。すなわち、電線200が配線される過程で電線200に多くの曲げ部が設けられた場合やその他の理由で、圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との間の隙間gが大きくなる場合がある。この隙間gが大きくなると、電線ユニットUに対して絶縁カバー100がガタつくことが考えられる。
【0092】
そこで本実施形態では、係合部120は、第1カバー部111に対して傾斜して設けられるとともに、第1カバー部111に対して筒部310の軸方向に弾性変形可能である。このような構成によれば、係合部120の+X方向側の端部と−X方向側の端部とにより係合部120にZ方向の幅を持たせることができるため、隙間gのある程度の広がりに対応することができる。例えば、圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との間の隙間gが大きい場合であっても、圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220の両方に対して係合部120が接触を維持することができる。これにより、電線ユニットUに対して絶縁カバー100がガタつくことを抑制することができる。なお、係合部120は、第1カバー部111に対して第1カバー部111から離れるに従い+Z方向に進むように傾斜している場合に限定されず、第1カバー部111に対して第1カバー部111から離れるに従い−Z方向に進むように傾斜していてもよい。
【0093】
本実施形態では、係合部120は、第1カバー部111に対して第1カバー部111から離れるに従い+Z方向に進むように傾斜している。このような構成によれば、係合部120が圧着端子300の筒部310と電線200の絶縁体220との間に挿入されることで絶縁カバー100の一部(例えば、切欠き部114A,114B)を圧着端子300の板部320に向けて押し付ける押圧力Fが絶縁カバー100に作用する。このような構成によれば、絶縁カバー100の位置がさらに安定するとともに、絶縁カバー100の回転もさらに確実に抑制される。また、電線ユニットUに対する絶縁カバー100のガタつきもより確実に抑制することができる。
【0094】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、係合部120が突起115を有する点で第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0095】
図18は、第5の実施形態の絶縁カバー100を示す斜視図である。本実施形態では、絶縁カバー100は、突起115を有する。突起115は、係合部120の第1部分122aに設けられ、円弧部121の内周面から+X方向に突出している。本実施形態では、電線200の導体210は、複数のワイヤーWにより形成されている(
図1参照)。絶縁カバー100の突起115は、係合部120が電線200の導体210に係合する場合に複数のワイヤーWの間に挿入される。
【0096】
このような構成によれば、絶縁カバー100の突起115が複数のワイヤーWの間に挿入されることで、電線200の周方向(第1周方向θ1および第2周方向θ2)における絶縁カバー100の回転を規制することができる。なお、本実施形態では、絶縁カバー100は、2つの突起115を有する。ただし、絶縁カバー100に設けられる突起115は、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【0097】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態は、係合部120が電線200の先端部211bに係合する点で第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0098】
図19は、第6の実施形態の電線ユニットUおよび絶縁カバー100を示す斜視図である。電線200の導体210の端部211は、圧着端子300の筒部310から+Z方向に突出した先端部211bを有する。
【0099】
本実施形態では、係合部120は、第1カバー部111の+Z方向側の端部から、+X方向に延びている。係合部120は、導体210の端部211のなかで筒部310から突出した先端部211bに係合する。係合部120は、導体210の端部211の先端部211bに係合することで、−Z方向で圧着端子300の筒部310に面する。これにより、係合部120の−Z方向の位置(絶縁カバー100の−Z方向の位置)が圧着端子300の筒部310によって規制される。
【0100】
本実施形態では、第1および第2の支持部130A,130Bは、圧着端子300の板部320の一部よりも+X方向側に位置する。第1および第2の支持部130A,130Bは、+Z方向で圧着端子300の板部320に面する。これにより、絶縁カバー100の+Z方向の位置が圧着端子300の板部320によって規制される。
【0101】
本実施形態では、係合部120の第2部分122bおよび第3部分122cの各々は、+X方向で、圧着端子300の板部320の第1主面321に面する。これにより、係合部120の第2部分122bおよび第3部分122cは、電線200の周方向(第1周方向θ1および第2周方向θ2)における絶縁カバー100の回転を規制する。
【0102】
このような構成によれば、第1の実施形態と同様の理由で、汎用性が高いとともに、後付けや交換が可能な絶縁カバー100を提供することができる。
【0103】
以上、第1から第6の実施形態について説明したが、実施形態は上記例に限定されない。例えば、上述した実施形態では、カバー本体110が一方向のみに開放された例について説明した。ただし、カバー本体110は、複数の方向が開放されていてもよい。また、圧着端子300の板部320は、直線部SPを有しなくてもよい。
【0104】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、絶縁カバーは、カバー本体と、一対の支持部とを備えている。前記カバー本体は、圧着端子の筒部の径方向に沿う一方向が開放されており、端子台の外部に配置され、少なくとも前記圧着端子の板部のなかで前記端子台の電気接続部に面する領域を覆わないとともに、前記筒部を覆う。前記一対の支持部は、前記カバー本体とは反対側から電線と前記筒部とのうち少なくとも一方に面する。このような構成によれば、汎用性が高いとともに、後付けや交換が可能な絶縁カバーを提供することができる。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。