(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶液ポリマーで製膜された伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、前記溶液ポリマーの成形収縮に追従可能な追従機能を有する成形収縮追従部と、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、前記粘着部を保護する機能を有する剥離部を備え、前記成形収縮追従部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部がこの順に積層されている医療用テープ。
伸縮性機能を有する伸縮性基材部となる溶液ポリマーを、該溶液ポリマーの成形収縮に追従可能な追従機能を有する成形収縮追従部の上層に塗布し、前記伸縮性基材部の製膜と前記成形収縮追従部との積層を同時に行うことで、前記溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる残留収縮力を減少させた状態の前記伸縮性基材部を得る工程、次いで、前記伸縮性基材部の上に、該伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部を積層し、該粘着部の上に該粘着部を保護する機能を有する剥離部を積層する工程を含む医療用テープの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場等において、ガーゼ及びパッド等の被覆固定、留置針やカテーテル等の処置具の固定、創傷や皮膚の被覆保護等には、防水性、透湿性、及び皮膚追従性等に優れた機能を備えたポリウレタンフィルム等のフィルム状素材を用いた医療用テープが選択されている。留置針(りゅうちしん)とは、採血・点滴の際に、静脈内に挿入し身体に固定して使用する注射針であり、一週間前後に渡る点滴等にも使用される。
【0003】
これらのフィルム状素材は、厚さ10μm程度と非常に薄いため、単独では平面形態を保持できず、自然環境下では丸まりやすい。そのため、平面形態を保持するための支持体として、フィルム状素材の伸縮性基材より剛性の高い保形用カバー、例えば、非伸縮性のプラスチックフィルムにフィルム状素材を積層させることで平面形態を保持し、しわ等を形成しないようにしている。
【0004】
なお、その製造工程では、平面形態を保持するための支持体とフィルム状素材を積層させる手段として、非伸縮性のプラスチックフィルムの上層(片面)に、ポリウレタンフィルムの原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を塗布した後、硬化させ製膜することで、ポリウレタンフィルムを得ると同時に平面形態を保持するための支持体とフィルム状素材を積層させる方法が汎用されている。
【0005】
しかし、上述の方法では、ポリウレタンフィルムの製膜と支持体への積層を同時に行うため、ポリウレタンフィルム内に、ポリウレタンフィルムの原料となる混液の硬化に伴う成形収縮によって残留した収縮力(内部応力)が発生する。以下、「製造過程において伸縮性基材内に残留した収縮力」を「残留収縮力」と称する。よって、上述の方法で得られたポリウレタンフィルムを医療用テープの伸縮性基材、非伸縮性のプラスチックフィルムを医療用テープの支持体として用いた医療用テープ、すなわち、「ポリウレタンフィルムの原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を用い、フィルム状の伸縮性基材の製膜及び上層に位置する非伸縮性の支持体への積層を同時に行い、伸縮性基材の下層に粘着剤が塗布され、最下層に非伸縮性の剥離紙を備え、伸縮性基材の上層に平面形態を保持するための非伸縮性の支持体を備えた医療用テープ」(以下、「非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープ」と称する。)では、伸縮性基材であるフィルム状素材に、成形収縮に伴う残留収縮力が存在することになる。すなわち、伸縮性基材の原料となる混液が、非伸縮性素材の支持体に付着していない場合には、伸縮性基材の原料となる混液は自由に収縮して、残留収縮力を生じないが、伸縮性基材の原料となる混液が、非伸縮性素材の支持体によく付着していると、伸縮性基材の原料となる混液は、膜厚方向以外には自由に収縮できず、製膜後の伸縮性基材と非伸縮性素材の支持体との付着界面付近に残留収縮力が発生する。
【0006】
なお、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの貼付手順は、1.剥離紙を取り除く。2.皮膚に貼付する。3.支持体を取り除く。となる。また、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの残留収縮力は、剥離紙をすべて取り除いても消失せず、皮膚に貼付した後、支持体を取り除くことで放たれ、皮膚を持続的に収縮させる力となり、皮膚を収縮させるため、貼付期間中の持続的な皮膚刺激の原因となる。
【0007】
ここで、
図1及び
図2を用い、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープに存在する残留収縮力について説明する。
図1は、支持体が二分された構造からなる非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープを皮膚に貼付した後、親指側の支持体を取り除いた様子を示した説明図である。親指側の支持体及び小指側の支持体の下層に位置する伸縮性基材の状態を比較するため、親指側の支持体は、取り除いた状態であり、小指側の支持体は、取り除いていない状態である。皮膚に貼付した後、支持体を取り除いた親指側の伸縮性基材には、細かな皺が出現したが、支持体を取り除いていない小指側の伸縮性基材には、変化は確認できなかった。
図2は、残りの支持体である、小指側の支持体を取り除いた状態を示しており、小指側の伸縮性基材にも細かな皺が出現している。このことは、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープでは、支持体を取り除いたことで伸縮性基材が支持体から解放されて収縮し、伸縮性基材に細かな皺を出現させたことを示しており、したがって、伸縮性基材には成形収縮に伴う残留収縮力が存在していたといえる。このように、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープでは、支持体を取り除くことで残留収縮力が放たれる。よって、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープに存在する成形収縮に伴う残留収縮力は、皮膚に貼付した後、支持体を取り除くことで、伸縮性基材を収縮させ、その結果、伸縮性基材に細かな皺を出現させることで確認できる。
【0008】
なお、医療テープ業界では、製品の取り扱い説明書等において、「皮ふ刺激の原因となりますので、引っ張らずに(伸ばさずに)、貼ってください」といった注意喚起がおこなわれている。このことから、医療テープ業界において、伸縮性医療テープの伸縮性基材部分を「引き伸ばした状態」で皮膚に貼付することの危険性については、当業者常識として十分に理解していると推察される。また、プラスチック業界において、非伸縮性の支持体(プラスチックフィルム等)の上層に、溶液ポリマーを塗布し、乾燥させ、ポリウレタンフィルムの製膜及び支持体への積層を同時に行えば、成形収縮に伴う残留収縮力(内部応力)がポリウレタンフィルム内に発生することは、当業者常識といえる。
【0009】
一方、医療テープ業界においては、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの伸縮性基材部分であるポリウレタンフィルム内に、成形収縮に伴う残留収縮力が存在することに対する認識(当業者常識)は乏しいと推察する。仮に、医療テープ業界に成形収縮に伴う残留収縮力の存在についての認識(当業者常識)があり、残留収縮力が弊害を伴うと捉えているのであれば、製品の取り扱い説明書等に「伸縮性基材部分に実在する成形収縮に伴う残留収縮力」に対する注意等の記載があるはずである。現在製造販売されている医療用テープの取り扱い説明書等には、「本品の使用中に皮膚障害(発疹・発赤、かゆみ等)と思われる症状が現れた場合には、使用を中止し、適切な治療を行ってください。」といった注意喚起のみで、使用者の体質的な内因と捉えかねないような問題を含む注意喚起の記載である。よって、使用者が目的をもって使用する医療用テープであるにもかかわらず、「伸縮性基材部分に実在する成形収縮に伴う残留収縮力」に伴う弊害を、使用者自身が認識することなく、さらに防ぐ術もないまま使用してしまうという問題があった。さらに、この問題の根幹となるのは、「成形収縮に伴う残留収縮力」は、プラスチック業界においては当業者常識であるが、同様の素材を用いた製品を製造販売する医療テープ業界においては、当業者常識ではないという矛盾が生じていることであり、医療テープ業界では、弊害を伴う成形収縮に伴う残留収縮力について対応がなされていないという問題があった。
【0010】
一部では、伸縮性医療用テープの伸縮性基材の貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減するための医療用テープ(例えば、特許文献1参照)が提案され、残留収縮力を原因とする非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの貼付期間中の持続的な皮膚刺激が改善されている。しかし、該医療用テープでは、製造工程において、伸縮性基材部を弛ませた状態又は引き伸ばさない状態で伸縮性基材部と伸張防止部を積層させることが必須のため、該医療用テープの製造は、効率の観点から、製造設備や製造コスト等の問題が浮上した。ゆえに、従来の非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープでは、成形収縮に伴う残留収縮力に対応する製造は容易ではなく、医療用テープの伸縮性基材部分に、成形収縮に伴う残留収縮力が生じるため、成形収縮に伴う残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減することは容易ではなく、このような不利を適切に解決できる手段がなかったのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者は、鋭意研究を重ねていく過程で、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの残留収縮力の要因は、製造時に、製膜及び積層を同時に行うことで生じる成形収縮にあり、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの残留収縮力は、剥離紙をすべて取り除いても消失せず、皮膚に貼付した後、非伸縮性の支持体を取り除くことで放たれ、皮膚を持続的に収縮させる力となって、皮膚を収縮させるため、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープによる貼付期間中の持続的な皮膚刺激となる。そこで、溶液ポリマーを原料とする医療用テープの製造工程において、製膜及び積層を同時に行うことで生じる成形収縮に対し、製造段階から対応することで、成形収縮に伴う残留収縮力を減少させる手段について着目した。
【0017】
ここで、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープを、創傷や皮膚の被覆保護等を目的として使用した場合の皮膚刺激について説明する。皮膚表面には、皮脂腺や汗腺の開口部があり、毛が存在する。そのため、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの残留収縮力は、皮脂腺や汗腺の開口部を持続的に変形させ、時に閉塞させる力となり、皮脂腺や汗腺の炎症(発赤、腫脹、発熱、疼痛、機能障害)を促すことも少なくない。また、皮膚を持続的に収縮させる力は、皮膚を収縮させ、持続的に毛を引き上げる力となり、毛根やその周辺組織に炎症を引き起こすことも稀ではない。
【0018】
次に、ガーゼ及びパッド等の被覆固定、留置針やカテーテル等の処置具の固定を目的として非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープを使用した場合の皮膚刺激について説明する。非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの残留収縮力は、留置針やカテーテル等を固定するに留まらず、留置針やカテーテル等の固定部位の皮膚を持続的に圧迫する力として作用し、これらの処置具を介し、皮膚の細胞や毛細血管等を持続的に圧迫する力に変わる。
【0019】
次に、皮膚の細胞や毛細血管等を持続的に圧迫する力について説明する。例えば、血管は全身に張り巡らされており、その総延長は10万km程度、地球2周半程度に及ぶ。その95パーセント程度が、毛細血管である。毛細血管の直径は、わずか7μm程度であり、その壁の厚さは1μm以下と極めて薄い。そのため、無自覚的な軽微な圧迫であっても、皮膚の毛細血管には容易に変形や閉塞が生じうる。
【0020】
また、全身の細胞に酸素を運ぶ役割を担う赤血球は、血液1マイクロリットル中に500万個程度存在し、直径が7から8μm程度、厚さが2μm程度の両面中央が凹んだ円盤状の固形物であり、変形することで直径7μm程度の毛細血管を通過している。しかし、固形物である赤血球の変形には限度があるため、毛細血管にわずかな変形が生じても通過が困難となり、赤血球が詰まることによって毛細血管の閉塞が生じることも稀ではない。その結果、細胞に血液循環不良に伴う酸素不足が生じることも少なくない。
【0021】
また、圧迫に伴う血液循環不良が起因となり、皮膚の組織や細胞が局部的に死ぬ疾患に褥瘡、いわゆる床ずれがある。実験的には、身体の同一箇所に2時間以上の持続的な圧が加わると褥瘡が発生するといわれている。そのため、医療現場においては、ベッド等で寝ている状態の寝たきり患者に対しては約2時間間隔、車椅子等に座った状態では約30分間隔で、体位の変換を行なうことを推奨し、褥瘡の発生を予防している。このように、褥瘡は数時間単位の圧迫に伴う血液循環不良が起因となって生じる。
【0022】
さらに、近年の非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープは、従来の伸縮性医療用テープより皮膚追従性、透湿性、防水性、皮膚粘着性等が飛躍的に向上しており、一週間前後の継続貼付が可能となった。そのため、ガーゼ及びパッド等の被覆固定、特に、一週間前後に渡る点滴などの留置針の固定に、非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープが使用されることも少なくなく、処置具を覆い皮膚を持続的に収縮させる力は、留置針やカテーテル等の医療関連器機の固定部位の皮膚を、数日間持続的に圧迫する力として作用することとなり、固定部位に医療関連器機圧迫創傷等の発生が危惧される。これは、褥瘡発生を予防するための数時間という限度をはるかに超えた時間であると言える。
【0023】
また、粘着剤や伸縮性基材の品質の向上により、剥がれにくく長時間の固定が可能となり、一週間以上の貼付が可能な製品も登場している。このように、剥がれにくく長時間の固定に優れた製品では、取扱説明等に「本品をはがす時は、皮膚を傷めないよう体毛の流れに沿ってゆっくりはがしてください。」といった注意喚起が重要となり、製品をはがす時の皮膚刺激を軽減するためには、製品をはがすことなく、はがれるまで放置する手段が有効となる。しかし、はがれるまで放置するという手段を用いれば、貼付期間は自ずと長くなり、残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激は、増加の一途を辿ることになる。
【0024】
なお、軽微な刺激であっても、違和感や苦痛を訴える患者は少なくない。しかし、身体に軽微な刺激が持続的に加わると、刺激に対し感覚が鈍くなる「知覚鈍麻」が生じ、違和感や苦痛を訴える患者が減少する。このことは、一般に「慣れ」と呼ばれているが、身体に加わっていた刺激が消失したことを意味するものではなく、さらに、皮膚の毛細血管に生じた変形や閉塞、及び血液循環不良等が改善されたことではない。段落[0017]〜[0023]で述べたところの成形収縮に伴う残留収縮力の程度は、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な刺激であっても十分にその原因となりうる。
【0025】
このように、貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減するためには、成形収縮に至る過程を考慮し、成形収縮追従部付き医療用テープの伸縮性基材部内に、製膜時の成形収縮に伴う残留収縮力を生じさせないように、成形収縮に伴う残留収縮力による、皮膚を持続的に収縮させる力を減少させることが肝要となる。ここで、該成形収縮追従部付き医療用テープの製造工程において、前記成形収縮追従部の上層に、後に前記伸縮性基材部となる溶液ポリマーを塗布し、製膜と前記成形収縮追従部との積層を同時に行う。このとき、前記成形収縮追従部の上層では、溶液ポリマーの硬化に伴う成形収縮が生じ、溶液ポリマーが硬化し、成形収縮が終了し、溶液ポリマーが製膜され、伸縮性基材部となる。この過程で、前記伸縮性基材部の長さは徐々に短くなり、前記伸縮性基材部と面で接する前記成形収縮追従部の上底は、前記伸縮性基材部の長さに追従し、収縮する。一方、前記伸縮性基材部と面で接しない前記成形収縮追従部の下底では、前記成形収縮追従部の上底程、前記伸縮性基材部の成形収縮による影響を受けないため、前記伸縮性基材部の収縮に追従せず、収縮しない。ゆえに、前記成形収縮追従部の断面は、下底より上底が短い台形状となる。この工程により、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる残留収縮力が減少又は消失した状態の前記伸縮性基材部を得ることが可能となる。そして、上述の方法により得られた前記伸縮性基材部に、粘着部及び剥離部を備えることで、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる残留収縮力が減少又は消失した状態の成形収縮追従部付き医療用テープが完成する。
【0026】
上述のように製造された該成形収縮追従部付き医療用テープの使用手順は、1.剥離部を取り除く。2.粘着部で皮膚に貼付する。3.成形収縮追従部を取り除く。となる。このように、製造段階から成形収縮に対応することで、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる残留収縮力が減少又は消失した状態の成形収縮追従部付き医療用テープを使用することができる。よって、該成形収縮追従部付き医療用テープの製造時において、残留収縮力を減少させることは、従来の非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープ、特に溶液ポリマーを原料とし、製造工程において製膜及び積層を同時に行うことで成形収縮を伴う医療用テープの残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減するための有効な手段となる。
【0027】
これらの有効な手段を成形収縮追従部付き医療用テープに機能として取り入れることで、該医療用テープの使用時に、該医療用テープの残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付し、該医療用テープの残留収縮力による皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、該残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることが可能となり、軽微な刺激であっても過敏に反応してしまう皮膚への貼付が可能となる。さらに、貼付期間中の持続的な皮膚刺激を原因とする皮膚トラブルや医療関連器機圧迫創傷等の予防に期待することができる。これらの観点から見ると、従来の非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープ、特に溶液ポリマーを原料とし、製造工程において製膜及び積層を同時に行うことで成形収縮を伴う医療用テープにおいては、成形収縮に伴う残留収縮力に対する考慮がなされていないことがわかる。
【0028】
そこで、本発明者は、従来の非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープ、特に溶液ポリマーを原料とし、製造工程において製膜及び積層を同時に行うことで成形収縮を伴う医療用テープの成形収縮に伴う残留収縮力を減少させる機能を取り入れた成形収縮追従部付き医療用テープを提供するために、後に前記伸縮性基材部となる溶液ポリマーの材料として、成形収縮追従部の上層に塗布した後、硬化し製膜となる素材から、成形収縮追従部と積層が可能な素材を選択し、さらに製膜後に、伸縮性基材部として機能する素材の中から、医療用として使用可能な防水性、透湿性、及び皮膚追従性等に優れた素材を選択した。次に、成形収縮追従部の材料として、溶液ポリマーの成形収縮に追従可能な追従機能を有する素材を選択した。また、粘着部の材料として、伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有し、剥離時の糊残りや角質損傷等が少ない医療用粘着剤を選択し、さらに、剥離部の材料として、粘着部を保護する機能を有する素材を選択し、各素材が有する機能を利用して、成形収縮追従部付き医療用テープを構成することを着想した。
【0029】
これらの素材を組み合わせ、該成形収縮追従部付き医療用テープの製造工程において、前記成形収縮追従部の上層に、後に前記伸縮性基材部となる溶液ポリマーを塗布し、前記伸縮性基材部の製膜と前記成形収縮追従部との積層を同時に行う。その後、溶液ポリマーの硬化に伴う成形収縮により、前記伸縮性基材部の長さは、徐々に短くなり、前記成形収縮追従部の上底(前記伸縮性基材部と接する面)は、前記伸縮性基材部の長さに追従し収縮する。その結果、前記成形収縮追従部の断面は、下底(前記伸縮性基材部と接しない面)より上底が短い台形状となる。このことで、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる残留収縮力が減少又は消失した状態の前記伸縮性基材部を得ることが可能となる。そして、上述の方法により得られた前記伸縮性基材部に、粘着部及び剥離部を備えることで、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる残留収縮力が減少又は消失した状態の成形収縮追従部付き医療用テープの製造が可能となる。よって、該成形収縮追従部付き医療用テープの使用時には、残留収縮力を減少又は消失した状態で皮膚に貼付することができ、従来の非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープ、特に溶液ポリマーを原料とし、製造工程において製膜及び積層を同時に行うことで成形収縮を伴う医療用テープの残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させるための手段を該成形収縮追従部付き医療用テープに機能として取り入れることができ、残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることで、軽微な刺激であっても過敏に反応してしまう皮膚への貼付を可能とする医療用テープを提供することができるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0030】
本発明の医療用テープは、上層から、前記成形収縮追従部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、前記剥離部の順に設けられている。製造工程においては、前記成形収縮追従部の上層に後に前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、前記伸縮性基材部の製膜と前記成形収縮追従部との積層を同時に行う。その後、溶液ポリマーの硬化に伴う成形収縮により、前記伸縮性基材部の長さは、徐々に短くなり、前記成形収縮追従部の上底(前記伸縮性基材部と接する面)は、前記伸縮性基材部の長さに追従し収縮する。その結果、
図4に示すように、前記成形収縮追従部の断面は、下底(前記伸縮性基材部と接しない面)より上底が短い台形状となる。このことで、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる残留収縮力が減少又は消失した状態の前記伸縮性基材部を得ることが可能となり、前記伸縮性基材部の上層に粘着部と剥離部を備えることで、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる残留収縮力が減少又は消失した状態の成形収縮追従部付き医療用テープが完成し、残留収縮力を減少又は消失した状態で、成形収縮追従部付き医療用テープを使用することができる。
【0031】
なお、前記伸縮性基材部の上層に粘着部や剥離部を備える時期は、前記伸縮性基材部の成形収縮に伴う残留収縮力が消失した、成形収縮終了後(製膜終了後)が望ましい。しかし、選択する成形収縮追従部や溶液ポリマーの素材、製造設備や製造効率等を考慮し、製膜終了を待たずともよい。仮に製膜終了を待たず、前記成形収縮追従部に前記溶液ポリマーを塗布した直後に、粘着部を有した非伸縮性の剥離部を備えたことで、前記溶液ポリマーの成形収縮に伴う残留収縮力が、前記伸縮性基材部と前記粘着部との境界部分に残留したとしても、上述の成形収縮に伴う残留収縮力は、使用時に前記剥離部を取り除くことにより消失するため、使用時には、残留収縮力を減少又は消失した状態で使用することができる。よって、前記粘着部及び前記剥離部を備える時期は任意でよい。
【0032】
本発明の医療用テープは、前記成形収縮追従部の上層に、後に前記伸縮性基材部となる前記溶液ポリマーを塗布する。このとき、前記成形収縮追従部と前記溶液ポリマーの断面形状は、同じ長さの長方形となる(
図3)。その後、前記溶液ポリマーの成形収縮に伴い、下層に位置する前記成形収縮追従部は、前記溶液ポリマーの収縮に追従し、徐々に収縮し、前記溶液ポリマーの成形収縮が終了した時点で前記成形収縮追従部の収縮も終了する(
図4)。このことで、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる残留収縮力が減少又は消失した状態の前記伸縮性基材部を得ることが可能となる。そして、上述の工程で得た前記伸縮性基材部を用いて該成形収縮追従部医療用テープを製造することにより、該成形収縮追従部医療用テープ内に存在する残留収縮力を減少又は消失させることができる。なお、減少させる残留収縮力の程度は、完全に消失させることが望ましい。しかし、原因となる成形収縮に伴う残留収縮力の程度は、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微なものであるため、減少させる残留収縮力は、軽微でもよく、軽微であっても本発明の効果を十分に奏することができる。
【0033】
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、成形収縮追従部付き医療用テープを構成する素材の適切な選択・組み合わせ及び、製造工程において、前記溶液ポリマーの成形収縮に追従可能な追従機能を有する、フィルム状の軟質ポリウレタンフォームを前記成形収縮追従部として選択し、前記成形収縮追従部の上層に、後に前記伸縮性基材部となるポリウレタンフィルムの原料である前記溶液ポリマー(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を塗布し(
図3)、前記溶液ポリマーが硬化し、前記伸縮性基材部となり、成形収縮が終了し、前記伸縮性基材部内の残留収縮力が消失した後に(
図4)、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部としてアクリル系粘着剤を塗布し、上質紙の表面に剥離剤をコーティングした剥離部を備えることで(
図5)、該成形収縮追従部付き医療用テープは完成する(
図6)。なお、該医療用テープでは、使用時に粘着部で皮膚に貼付した後に、前記成形収縮追従部を取り除く(
図7)。該成形収縮追従部付き医療用テープでは、残留収縮力による皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることを基本とする。本発明は、成形収縮追従部医療用テープの製造時に、残留収縮力を減少させることが必須である。
【0034】
図3から
図7に示す本発明の第1の実施の形態である成形収縮追従部付き医療用テープでは、伸縮性基材部2の原料となる溶液ポリマー(ウレタン樹脂液と架橋剤液)1と、伸縮性基材部2の原料となる溶液ポリマー(ウレタン樹脂液と架橋剤液)1で製膜された、伸縮性機能を有する伸縮性基材部2と、溶液ポリマー1の成形収縮に追従可能な追従機能を有する成形収縮追従部3と、伸縮性基材部2を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部4と、粘着部4を保護する機能を有する剥離部5から構成される。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施の形態を示す成形収縮追従部付き医療用テープ
の製造過程を示す図であり、成形収縮追従部の上層に伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布した積層過程の様子を示す概略断面図である。第1の実施の形態である成形収縮追従部付き医療用テープでは、溶液ポリマー1の成形収縮に追従可能な追従機能を有する、フィルム状の軟質ポリウレタンフォームを成形収縮追従部3として選択し、成形収縮追従部3の上層に、後に前記伸縮性基材部2となるポリウレタンフィルムの原料である溶液ポリマー(ウレタン樹脂液と架橋剤液)1を塗布し、前記伸縮性基材部2の製膜と成形収縮追従部3との積層を同時に行う。このとき、成形収縮追従部3と溶液ポリマー1の長さは、
図3で示すように、同じ長さとなる。なお、符号1は、溶液ポリマー、符号3は、成形収縮追従部である。
【0036】
図4は、本発明の第1の実施の形態を示す医療用テープの製造過程を示す概略断面図であり、
図3に示した、成形収縮追従部3の上層に、後に伸縮性基材部2となる溶液ポリマー1を塗布した状態から、硬化させ、製膜が完了し、成形収縮が終了した時点の成形収縮追従部3と伸縮性基材部2の様子を示している。
図3に示した時点では、成形収縮追従部3と溶液ポリマー1の長さは、同じであった。その後、
図4で示すように、溶液ポリマー1の硬化に伴う成形収縮により、伸縮性基材部2の長さは、徐々に短くなり、製膜が完了した時点で、成形収縮も終了した。成形収縮追従部3の上底(伸縮性基材部2と接する面)の長さは、伸縮性基材部2の収縮に追従し、短くなり、成形収縮追従部3の断面は、下底(伸縮性基材部2と接しない面)より上底(伸縮性基材部2と接する面)が短い台形状となった。このことは、伸縮性基材部2の製膜と非伸縮性の支持体への積層を同時に行う従来技術において、発生を防止することが困難であった残留収縮力の発生を、本発明の成形収縮追従部付き医療用テープによって、成形収縮追従部3の下底と上底の差にあたる分の残留収縮力の発生を防止できたことを示す。さらに、従来技術より、成形収縮に伴う残留収縮力を減少させることができたことを示している。なお、符号2は、伸縮性基材部、符号3は、成形収縮追従部である。
【0037】
図5は、本発明の第1の実施の形態を示す医療用テープの製造過程を示す概略断面図である。
図4に示した、成形収縮が終了した前記伸縮性基材部2の上層に、前記伸縮性基材部2を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部4として、粘着剤を塗布し、前記粘着部4の上層に前記粘着部4を保護する機能を有する前記剥離部5を備え、該成形収縮追従部医療用テープは完成する。なお、符号2は、伸縮性基材部、符号3は、成形収縮追従部、符号4は、粘着部、符号5は、剥離部である。
【0038】
図6は、本発明の第1の実施の形態を示す医療用テープの概略断面図であり、
図7は、該医療用テープの使用時の様子を示す概略断面図である。
図7は、
図6に示す状態から、剥離部5を取り除き、粘着部4で皮膚6に貼付し、成形収縮追従部3を取り除いた様子を示す。なお、符号2は、伸縮性基材部、符号3は、成形収縮追従部、符号4は、粘着部、符号5は、剥離部、符号6は、皮膚である。
【0039】
該成形収縮追従部付き医療用テープの使用手順は、1.剥離部を取り除く。2.粘着部で皮膚に貼付する。3.成形収縮追従部を取り除く。となる。該成形収縮追従部付き医療用テープでは、従来技術において、発生を防止することが困難であった伸縮性基材部の成形収縮に伴う残留収縮力の発生を、製造工程において対応し、伸縮性基材部に積層した成形収縮追従部の下底と上底の差にあたる分の残留収縮力の発生を防止することで、従来技術より、成形収縮に伴う残留収縮力を減少又は消失させた伸縮性基材部を得ることができている。そのため、皮膚に貼付した後に、成形収縮追従部を取り除いても、従来技術の非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープのように、伸縮性基材部が縮むという明確な変化は起こらない。
【0040】
該成形収縮追従部付き医療用テープでは、製造工程において、伸縮性基材部に積層した成形収縮追従部の下底と上底の差にあたる分の残留収縮力の発生を防止し、従来技術より、成形収縮に伴う残留収縮力を減少又は消失させた状態の伸縮性基材部を得て、該成形収縮追従部付き医療用テープを完成させている。そのため、該成形収縮追従部付き医療用テープは、残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付することができる。よって、成形収縮追従部付き医療用テープの残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減することが可能となる。したがって、本発明の成形収縮追従部付き医療用テープでは、従来技術の非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの成形収縮に伴う残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させるための手段を医療用テープに機能として取り入れることで、成形収縮追従部付き医療用テープの使用時に、成形収縮追従部付き医療用テープの残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付し、成形収縮追従部付き医療用テープの残留収縮力による皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、該残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることが可能となる。このことにより、原因となる成形収縮に伴う残留収縮力の程度が、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な刺激であっても、過敏に反応してしまう皮膚への貼付が可能となり、低刺激の医療用テープや貼付剤等を提供することができる。
【0041】
具体的には、本発明の第1の実施の形態において、ウレタン樹脂液と架橋剤液を溶液ポリマー1とし、溶液ポリマー1で製膜された伸縮性機能を有するポリウレタンフィルムを伸縮性基材部2とし、溶液ポリマー1の成形収縮に追従可能な追従機能を有する、フィルム状の軟質ポリウレタンフォームを成形収縮追従部3とし、伸縮性基材部2を皮膚に貼付し保持する機能を有するアクリル系粘着剤を粘着部4とし、上質紙の表面に剥離剤をコーティングした剥離紙を剥離部5とした。製造工程では、成形収縮追従部3であるフィルム状の軟質ポリウレタンフォームの上層に、溶液ポリマー1であるウレタン樹脂液と架橋剤液を塗布し、伸縮性基材部2となるポリウレタンフィルムの製膜とフィルム状の軟質ポリウレタンフォームとの積層を同時に行い、その後、ウレタン樹脂液と架橋剤液の硬化に伴う成形収縮により、ポリウレタンフィルムの長さは、徐々に短くなり、フィルム状の軟質ポリウレタンフォームの上底(ポリウレタンフィルムと接する面)は、ポリウレタンフィルムの長さに追従し収縮する。その結果、フィルム状の軟質ポリウレタンフォームの断面は、下底(ポリウレタンフィルムと接しない面)より上底が短い台形状となり、ポリウレタンフィルムの製膜とフィルム状の軟質ポリウレタンフォームとの積層が終了した後に、ポリウレタンフィルムの上層にアクリル系粘着剤を備え、粘着剤の上層に、上質紙の表面に剥離剤をコーティングした剥離紙を備えた。なお、図示はしていないが、本発明の実施例の前処理として、前記成形収縮追従部として選択したフィルム状の軟質ポリウレタンフォームの上層に、後に前記伸縮性基材部となるポリウレタンフィルムの原料である前記溶液ポリマーを、前記溶液ポリマーのフィルム状の軟質ポリウレタンフォームへの染み込み防止及び双方を積層するための粘着剤の役割を持たせるため、前記成形収縮追従部の追従機能を阻害しない程度に極薄く塗布し、硬化させ、製膜した。
【0042】
また、第1の実施の形態では、溶液ポリマーの素材として、ウレタン樹脂液と架橋剤液を用いたが、成形収縮追従部の上層に塗布し、成形収縮追従部の素材との積層が可能で、製膜後に伸縮性機能を有し、上層に粘着部を備えることができる溶液ポリマー素材であればよい。また、ガーゼ及びパッド等の被覆固定、留置針やカテーテル等の処置具の固定、創傷や皮膚の被覆保護等の用途に応じ、それぞれに適した機能を備えさせることが可能な溶液ポリマー素材であればよく、その他の新素材等を用いてもよく、異なる溶液ポリマー素材を混合又は積層してもよい。また、成形収縮追従部の素材として、溶液ポリマーの成形収縮に追従可能な追従機能を有するフィルム状の軟質ポリウレタンフォームを用いたが、溶液ポリマーの成形収縮に追従可能な追従機能を有していれば、不織布構造や起毛構造等を備えた素材を用いてもよい。また、フィルム状の軟質ポリウレタンフォームや不織布構造、起毛構造等のように、単独で溶液ポリマーの成形収縮に追従可能な追従機能を有する素材に限らず、例えば、板状のゴム等の伸縮機能を有する素材に、外力を加え、溶液ポリマーの成形収縮率と同等に引き伸ばし、その上層に溶液ポリマーを塗布し、溶液ポリマーの成形収縮終了後(製膜終了後)に、加えていた外力を取り除き、溶液ポリマーの成形収縮に追従させ、成形収縮に伴う残留収縮力を減少又は消失させてもよく、その他の素材の組み合わせによって、成形収縮に伴う残留収縮力を減少又は消失させてもよく、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。また、粘着部の素材は、アクリル系粘着剤を用いたが、伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有し、医療用として使用可能な粘着剤であればよく、用途に応じ、粘着剤を塗布する部位は一部もしくは全部でもよく、素材やその形状等による制限を受けない。また、剥離部の素材は、上質紙の表面に剥離剤をコーティングした剥離紙を用いたが、粘着部を保護する機能を有していれば、用途やデザイン、利便性等に応じ、素材やその形状等による制限を受けない。
【0043】
なお、該成形収縮追従部付き医療用テープの成形収縮追従部の上層に、用途に応じ、支持体を備えてもよい。例えば、該医療用テープの平面形態を保持し、しわ等を形成させない目的で備えてもよく、あるいは、該医療用テープの使用時に、伸縮性基材が引き伸ばされて使用されることで、伸縮性基材が元に戻ろうとする力(復元収縮力)が働くことを防止する目的等で、非伸縮性のプラスチックフィルム等を備えてもよく、なお、支持体の素材や形状等は、用途やデザイン、利便性等に応じ、任意でよく、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。
【0044】
図3から
図7に示した本発明の医療用テープは、いずれも本発明の基本的構造を備えており、このような構成としたことにより、従来技術の非伸縮性素材を支持体に用いた支持体付き医療用テープの成形収縮に伴う残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させるための手段を医療用テープに機能として取り入れることで、製造工程において、前記溶液ポリマーの成形収縮に伴う残留収縮力を減少させた医療用テープを製造することが可能となる。そのため、成形収縮追従部付き医療用テープでは、成形収縮に伴う残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付し、成形収縮追従部付き医療用テープの成形収縮に伴う残留収縮力による皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることができる。このことにより、原因となる成形収縮に伴う残留収縮力の程度が、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な刺激であっても、過敏に反応してしまう皮膚への貼付が可能となり、低刺激の医療用テープや貼付剤等を提供することができ、皮脂腺や汗腺の炎症、毛根やその周辺組織の炎症、圧迫によって生じる皮膚の細胞や毛細血管等に対する血液循環不良による医療関連器機圧迫創傷等の予防に期待することが可能となる。
【0045】
以上、第1の実施の形態では、医療用テープの形状を長方形とした例について説明してきたが、医療用テープの形状は、用途に応じ自由な形状を選択できる。例えば、ロール形状やシート形状でもよく、身体の各部位に適した形状とすることもできる。また、該医療用テープは、上層から成形収縮追従部、伸縮性基材部、粘着部、剥離部からなる構成を基本とするが、用途やデザイン、利便性等に応じ、粘着部の下層にガーゼ及びパッド等を備えさせてもよい。なお、本発明は、皮膚に密着して貼付することを基本としているが、場合によっては、皮膚を医療用粘着剤等から保護するための保護材等を介して該医療用テープを貼付してもよい。
【0046】
また、成形収縮に伴う残留収縮力は、すべてを消失させることが望ましいが、わずかに減少させた状態であってもよい。なぜなら、段落[0017]〜[0024]で述べたように、本特許が解決しようとする成形収縮に伴う残留収縮力の程度は、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルであるからである。本明細書では、医療用テープの製造から貼付に至るまでの過程を記しており、「使用時」と「貼付期間中」を以下のように定義している。「使用時」とは、医療用テープの使用手順に従い、剥離部を取り除き、皮膚に貼付し、成形収縮追従部を取り除く迄を表す。「貼付期間中」とは、成形収縮追従部付き医療用テープを継続して貼付している間を表す。
【0047】
なお、本発明の医療用テープの機能は、身体への貼付を目的とする医療用テープに有効に作用する。例えば、皮膚刺激過敏症患者は、軽微な皮膚刺激にも激しく反応するため、経皮吸収可能な薬物を含有する医療用テープの使用が見送られることも少なくなかった。しかし、本発明の成形収縮追従部付き医療用テープは、軽微な皮膚刺激を軽減できるため、粘着部に、経皮吸収可能な薬物を配合することで、貼付薬として使用することができる。また、本発明の医療用テープにパッドを備えることで、処置製品として使用することができる。
【解決手段】溶液ポリマーで製膜された伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、前記溶液ポリマーの成形収縮に追従可能な追従機能を有する成形収縮追従部と、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、前記粘着部を保護する機能を有する剥離部を備え、前記成形収縮追従部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部がこの順に積層されている医療用テープ。