(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の冷却装置および冷却方法を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0008】
本明細書で言う「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。さらに「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。本明細書で言う「YYの途中」とは、YYの両端の間の中間点に限定されず、YYの両端の間の任意の位置を意味する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1から
図7を参照し、第1の実施形態の冷却装置3について説明する。本実施形態は、冷却装置3がドライブシステム(電動機制御システム)1に適用された例である。ただし、冷却装置3は、ドライブシステム以外のシステムにも広く利用可能である。すなわち、後述する「電気装置」は、電力変換装置2のモジュールに限定されず、冷却が望まれる種々の電気装置が広く該当する。
【0010】
<1.ドライブシステムの全体構成>
図1は、冷却装置3を含むドライブシステム1の一例を示す図である。ドライブシステム1は、例えば、電力変換装置2と、冷却装置3と、外部熱交換器4と、外部ポンプ5とを含む。
【0011】
<2.電力変換装置の構成>
まず、電力変換装置2について説明する。電力変換装置2は、例えば、電力変換回路11、変流器(CT:Current Transformer)12、ヒートシンク13、および制御部14を含む。
【0012】
電力変換回路11は、例えば、第1電力線16を介して交流電源PSに接続されるとともに、第2電力線17を介して負荷L(例えば電動機)に接続されている。電力変換回路11は、複数のスイッチング素子および複数のダイオードを有し、交流電力と直流電力との間で電力を変換する。例えば、電力変換回路11は、交流電源PSから供給された交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を負荷Lに適した交流電力にさらに変換して負荷Lに供給する。
【0013】
変流器12は、第2電力線17に設けられている。変流器12は、電力変換装置2から第2電力線17に出力される出力電流に基づきその出力電流の大きさに比例した検出用電流を生成する。変流器12は、生成した検出用電流を制御部14に出力する。なお変流器12は、第2電力線17に代えて、電力変換回路11に設けられてもよい。
【0014】
ヒートシンク13は、電力変換回路11を構成する1つ以上のモジュール11a(例えば上記スイッチング素子を含むIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュール)が取り付けられ、そのモジュール11aと熱的に接続されている。ヒートシンク13の内部には、後述する第1冷却水が流れる流路が設けられている。ヒートシンク13は、ヒートシンク13の内部を第1冷却水が流れることで冷却され、モジュール11aの冷却を促進する。ヒートシンク13に取り付けられたモジュール11aは、「電気装置」の一例である。以下では説明の便宜上、モジュール11aを「電気装置11a」と称する。
【0015】
制御部14は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御により電力変換回路11に含まれる複数のスイッチング素子を制御し、所望の電力変換を行う。制御部14は、電流検出部14aを含む。電流検出部14aは、変流器12により生成された検出用電流に基づき、電力変換装置2から第2電力線17に出力される出力電流の電流値を算出する。制御部14は、算出された出力電流の電流値に基づき、電力変換回路11の制御および過電流保護などを行う。本実施形態では、制御部14は、算出された出力電流の電流値を後述する冷却装置3の制御部29に出力する。なおこれに代えて、変流器12により生成された検出用電流が冷却装置3の制御部29に直接に出力され、冷却装置3の制御部29によって出力電流の電流値が算出されてもよい。
【0016】
<3.冷却装置の構成>
次に、冷却装置3について説明する。冷却装置3は、例えば、熱交換器20、第1配管21、ポンプ22、バルブ23、第2配管24、バイパス配管25、電磁弁26、第1温度センサ27A、第2温度センサ27B、記憶部28、および制御部29を有する。
【0017】
熱交換器20は、第1冷却水が流れる流路20aと、第2冷却水が流れる流路20bとを有する。熱交換器20では、第1冷却水と第2冷却水との間で熱交換が行われる。第1冷却水は、熱交換器20と電力変換装置2のヒートシンク13との間で循環され、ヒートシンク13を冷却する冷却水である。第1冷却水は、例えば純水である。一方で、第2冷却水は、後述する外部熱交換器4と熱交換器20との間で循環され、ヒートシンク13で温められた第1冷却水を熱交換器20で冷却する冷却水である。第2冷却水は、例えば、外水と呼ばれる工業用水である。熱交換器20は、「第1熱交換器」の一例である。
【0018】
第1配管21は、熱交換器20と、電力変換装置2のヒートシンク13とを繋ぎ、熱交換器20とヒートシンク13との間で第1冷却水を循環させる。例えば、第1配管21は、第1配管部21aと、第2配管部21bとを有する。第1配管部21aは、熱交換器20の第1冷却水出口と、ヒートシンク13の冷却水入口との間に延びており、熱交換器20で冷却された第1冷却水をヒートシンク13に導く。一方で、第2配管部21bは、ヒートシンク13の冷却水出口と、熱交換器20の第1冷却水入口との間に延びており、ヒートシンク13の内部を通ることで温められた第1冷却水を熱交換器20に導く。
【0019】
ポンプ22およびバルブ23は、第1配管21に設けられている。バルブ23が開かれ、ポンプ22が駆動されると、第1冷却水は、第1配管21内を流れる。本実施形態では、ポンプ22の回転数が固定値であり、第1配管21を流れる第1冷却水の流量は常に一定である。なお、第1配管21を流れる第1冷却水の流量が変動する場合、後述する制御部29は、ポンプ22の回転数に対応する信号に基づき、第1冷却水の流量を検出してもよい。またこれに代えて、第1配管21に流量センサが設けられ、流量センサの検出結果が制御部29に出力されてもよい。
【0020】
第2配管24は、後述する外部熱交換器4と熱交換器20とを繋ぐように設けられ、外部熱交換器4と熱交換器20との間で第2冷却水を循環させる。例えば、第2配管24は、第1配管部24aと、第2配管部24bとを有する。第1配管部24aは、外部熱交換器4の冷却水出口と、熱交換器20の第2冷却水入口との間に延びており、外部熱交換器4の内部を通ることで冷却された第2冷却水を熱交換器20に導く。一方で、第2配管部24bは、熱交換器20の第2冷却水出口と、外部熱交換器4の冷却水入口との間に延びており、熱交換器20で温められた第2冷却水を外部熱交換器4に導く。
【0021】
バイパス配管25は、第2配管24から分岐し、第2配管24を流れる第2冷却水の少なくとも一部を、熱交換器20を通さずに第2配管24に戻す。例えば、バイパス配管25の一端は、第2配管24の第1配管部24aの途中に接続されている。バイパス配管25の他端は、第2配管24の第2配管部24bの途中に接続されている。
【0022】
電磁弁26は、バイパス配管25に設けられ、第2配管24からバイパス配管25に流入する第2冷却水の流量を変更する。本実施形態では、電磁弁26は、後述する制御部29からの制御指令に基づき、バイパス配管25を閉じる閉状態と、バイパス配管25を開く開状態との間で切り替えられる。電磁弁26が開状態に切り替えられると、第2配管24からバイパス配管25に第2冷却水の一部が流入する。その結果、第2配管24から熱交換器20に流入する第2冷却水の流量が減少する。一方で、電磁弁26が閉状態に切り替えられると、第2配管24からバイパス配管25に第2冷却水が流入しなくなる。その結果、第2配管24から熱交換器20に流入する第2冷却水の流量が増加する。すなわち、冷却装置3は、電磁弁26によって、「第1状態」と「第2状態」との間で切り替えられる。第2状態は、第1状態と比べて第2配管24からバイパス配管25に流入する第2冷却水の流量が多い状態である。言い換えると、第2状態は、第1状態と比べて第2配管24から熱交換器20に流入する第2冷却水の流量が少ない状態である。
【0023】
なお、電磁弁26の構成は、上記例に限定されない。例えば、電磁弁26は、複数の開き度に制御可能であり、第2配管24からバイパス配管25に流入する第2冷却水の流量を複数段階で切り替えることができてもよい。すなわち、上記第1状態は、バイパス配管25を第2冷却水が全く流れない状態に限定されず、相対的に少量の第2冷却水がバイパス配管25を流れる状態でもよい。電磁弁26は、「流量変更機構」の一例である。なお、「流量変更機構」は、バイパス配管25に設けられた電磁弁に限定されず、第2配管24とバイパス配管25との接続部に設けられた三方向弁などでもよい。
【0024】
本実施形態では、バイパス配管25および電磁弁26は、例えば第1冷却水の凍結抑制のために設けられている。詳しく述べると、後述する制御部29は、例えば第1配管21に設けられた第1温度センサ27A(後述)から、第1温度センサ27Aの検出結果を受け取る。制御部29は、第1温度センサ27Aの検出結果が所定の条件を満たす場合(例えば、第1冷却水の温度が凍結防止用に設定された閾値未満である場合)、バイパス配管25を開くように電磁弁26を制御する。これにより、第2配管24から熱交換器20に流入する第2冷却水の流量が減少し、熱交換器20での第1冷却水と第2冷却水との熱交換が抑制される。これにより、第1冷却水の温度がすでに低い場合に第1冷却水を過度に冷却することが抑制され、第1冷却水の凍結が抑制される。
【0025】
冷却装置3は、例えば、冷却装置3が第1冷却水の凍結のおそれがある場所(例えば寒冷地)で使用されることが想定される場合に、上記凍結抑制機能を持つ。ただし、凍結抑制機能は、冷却装置3にとって必須の機能ではない。すなわち、冷却装置3は、凍結抑制機能を有しなくてもよい。言い換えると、バイパス配管25および電磁弁26は、第1冷却水の凍結抑制とは異なる目的(例えば、後述するヒートシンク13の温度変動抑制のみ)のために設けられたものでもよい。
【0026】
第1温度センサ27Aは、第1配管21の第2配管部21bに設けられている。例えば、第1温度センサ27Aは、第2配管部21bのなかでヒートシンク13の冷却水出口に接続された端部に設けられている。第1温度センサ27Aは、ヒートシンク13の冷却水出口における第1冷却水の温度(後述する冷却水出口温度T
out)を検出する。なお、第1温度センサ27Aは、第1配管21に代えて、ヒートシンク13に設けられてもよい。第1温度センサ27Aの検出結果は、制御部29に出力される。
【0027】
第2温度センサ27Bは、第2配管24の第1配管部24aに設けられている。第2温度センサ27Bは、熱交換器20の第2冷却水入口における第2冷却水の温度(後述する外水温度T
a)を検出する。第2温度センサ27Bの検出結果は、制御部29に出力される。
【0028】
記憶部28は、冷却装置3の制御に必要な各種情報を記憶している。記憶部28は、例えば、電力変換装置2の設計時に求められた「電流―損失特性」を記憶している。電流―損失特性とは、電力変換装置2(または電気装置11a)の出力電流の電流値と、電力変換装置2(または電気装置11a)の電力損失の値との対応関係である。
【0029】
制御部29は、冷却装置3の全体を制御する。例えば、制御部29は、ポンプ22、バルブ23、および電磁弁26を制御する。なお、制御部29については、詳しく後述する。
【0030】
<4.外部熱交換器および外部ポンプ>
次に、外部熱交換装置4および外部ポンプ5について説明する。
外部熱交換器4は、例えば、冷却装置3の外部に配置されている。外部熱交換器4は、例えばクーリングタワーであり、第2冷却水を大気と直接または間接的に接触させることで第2冷却水を冷却する。ただし、外部熱交換器4の構成は、上記例に限定されず、例えば送風機を伴う熱交換器でもよい。外部熱交換器4は、「第2熱交換器」の一例である。
【0031】
外部ポンプ5は、第2配管24に設けられている。外部ポンプ5が駆動されると、第2冷却水は、第2配管24内を流れる。なお、外部ポンプ5は、冷却装置3の一部として設けられてもよい。
【0032】
<5.制御部の機能構成>
次に、制御部29の機能構成について説明する。本実施形態の制御部29は、ヒートシンク13の温度変動を抑制する機能を持つ。具体的には、制御部29は、電気装置11aの電力損失と第1冷却水の温度とのうち少なくとも一方に関する検出値を監視する。そして、制御部29は、前記検出値が第1閾値未満になる場合に、第2配管24からバイパス配管25に流入する第2冷却水の流量を増やすように電磁弁26を制御する。これにより、第2配管24から熱交換器20に流入する第2冷却水の流量を減らし、ヒートシンク13が過度に冷却されることを抑制する。一方で、制御部29は、前記検出値が第2閾値以上になる場合に、第2配管24からバイパス配管25に流入する第2冷却水の流量を減らす(例えば元に戻す)ように電磁弁26を制御する。これにより、第2配管24から熱交換器20に流入する第2冷却水の流量を増やし(例えば元に戻し)、ヒートシンク13の冷却を効率的に行う。
【0033】
本実施形態では、前記検出値として、電気装置11aの電力損失に関する値が監視される例について説明する。具体的には、本実施形態では、電力変換装置2(または電気装置11a)の出力電流の電流値に基づいて電気装置11aの電力損失そのものが監視される。一方で、前記検出値として第1冷却水の温度に関する値が監視される例については、第2の実施形態として後述する。
【0034】
また本実施形態では、上記「第1閾値」と「第2閾値」とが同じ値(例えば後述する閾値W
th)に設定される例について説明する。すなわち、後述する閾値W
thは、「第1閾値」の一例であるとともに、「第2閾値」の一例である。なお、「第1閾値」と「第2閾値」とは、互いに異なる値でもよい。
【0035】
<5.1 制御の概要>
本実施形態では、制御部29は、後述する所定の第1条件が満たされるか否かを判定する。そして、制御部29は、第1条件が満たされると判定した場合、第1制御モードで冷却装置3を制御する。一方で、制御部29は、第1条件が満たされないと判定した場合、第2制御モードで冷却装置3を制御する。第1制御モードと第2制御モードとでは、電磁弁26の開閉状態を切り替える(冷却装置3を第1状態と第2状態とで切り替える)ための閾値の値が異なる。以下、第1制御モードおよび第2制御モードについてそれぞれ説明する。
【0036】
<5.2 第1制御モード>
ここで先に、いくつかの物理量について定義する。
T
inは、冷却水入口温度(ヒートシンク13の冷却水入口における第1冷却水の温度)[℃]である。
T
outは、冷却水出口温度(ヒートシンク13の冷却水出口における第1冷却水の温度)[℃]である。
T
out_Hは、第1状態において電力変換装置2(電気装置11a)が最大電力損失で運転したと仮定した場合における冷却水出口温度T
outである。以下ではT
out_Hを「第3基準温度」と称することがある。
T
out_Lは、第1状態において電力変換装置2(電気装置11a)が最低電力損失で運転したと仮定した場合における冷却水出口温度T
outである。以下ではT
out_Lを「第1基準温度」と称することがある。
T
out_L’は、第2状態において電力変換装置2(電気装置11a)が最低電力損失で運転したと仮定した場合における冷却水出口温度T
outである。以下ではT
out_L’を「第2基準温度」と称することがある。
ΔTは、T
out_HとT
out_Lとの温度差である。
ΔT’は、T
out_HとT
out_L’との温度差である。
T
aは、外水温度(熱交換器20の第2冷却水入口における第2冷却水の温度)[℃]である。
Wは、電気装置11aの電力損失[W]である。
W
maxは、電気装置11aの運転時最大電力損失[W]である。なお、運転時最大電力損失W
maxは、電力変換装置2(電気装置11a)の負荷パターンに応じて予め求められ、記憶部28に記憶されている。
W
minは、電気装置11aの運転時最低電力損失[W]である。なお、運転時最低電力損失W
minは、電力変換装置2(電気装置11a)の負荷パターンに応じて予め求められ、記憶部28に記憶されている。
W
thは、上述したヒートシンク13の温度変動を抑制する制御において、電磁弁26の開閉状態を切り替えるために設定される電気装置11aの電力損失Wに関する閾値である。
Cは、第1冷却水の比熱[J/(g・K)]である。比熱Cは、記憶部28に記憶されている。
ρは、第1冷却水の密度[g/cm2]である。密度ρは、記憶部28に記憶されている。
Qは、第1冷却水の流量[L/min]である。流量Qは、予め求められ記憶部28に記憶されている。ただし、流量Qが変動する場合は、制御部29は、ポンプ22の回転数の制御量または第1配管21に設けられた流量センサの検出結果などに基づいて流量Qを算出してもよい。
εは、熱交換器20の温度効率(熱交換効率)である。
ε
1は、電磁弁26が閉状態における(すなわち冷却装置3が第1状態における)熱交換器20の温度効率εである。
ε
2は、電磁弁26が開状態における(すなわち冷却装置3が第2状態における)熱交換器20の温度効率εである。
【0037】
熱交換器20の温度効率εは、式(1)のように算出することができる。式(1)は、熱交換器の温度効率の定義式である。
【数1】
【0038】
冷却水出口温度T
outは、式(2)のように算出することができる。式(2)は、式(1)を変形することで得ることができる。
【数2】
【0039】
冷却水出口温度T
out_Hは、式(3)のように算出することができる。
【数3】
【0040】
冷却水出口温度T
out_Lは、式(4)のように算出することができる。
【数4】
【0041】
温度差ΔTは、式(5)のように算出することができる。
【数5】
【0042】
冷却水出口温度T
out_L’は、式(6)のように算出することができる。
【数6】
【0043】
温度差ΔT’は、式(7)のように算出することができる。
【数7】
【0044】
温度差ΔTと温度差ΔT’との差分は、式(8)のように算出することができる。
【数8】
【0045】
図2は、第1制御モードを説明するための図である。
図2中の直線L1は、第1状態において電力変換装置2(電気装置11a)が運転したと仮定した場合における、電気装置11aの電力損失Wと冷却水出口温度T
outとの関係を示す。一方で、
図2中の直線L2は、第2状態において電力変換装置2(電気装置11a)が運転したと仮定した場合における、電気装置11aの電力損失Wと冷却水出口温度T
outとの関係を示す。
【0046】
本実施形態では、電磁弁26の開閉状態を切り替えるため閾値W
thが設定される。そして、制御部29は、詳しくは後述する方法で電気装置11aの電力損失の検出値を監視する。そして、制御部29は、電力損失の検出値が閾値W
th以上の領域(領域A1)にある場合、電磁弁26を閉状態に制御することで、冷却装置3を第1状態に制御する。一方で、制御部29は、電力損失の検出値が閾値W
th未満の領域(領域A2)にある場合、電磁弁26を開状態に制御することで、冷却装置3を第2状態に制御する。すなわちこの場合、冷却装置3は、
図2中に太線で示される特性で制御される。
【0047】
次に、第1制御モードでの閾値W
thの一例について説明する。
閾値W
thは、電力損失Wに関する値として、例えば、第1状態において電気装置11aが運転したと仮定した場合における第1冷却水の温度(直線L1上の温度値)と第2基準温度T
out_L’との差D11が第1基準温度T
out_Lと第2基準温度T
out_L’との差Dの半分以下となる範囲(
図2中に示す範囲R)内に設定される。すなわち、閾値W
thの一例は、範囲R内の任意の値である。なお前提として、ΔT’<ΔTである。
【0048】
図2に示す例では、閾値W
thは、第1状態において電気装置11aが運転したと仮定した場合に第1冷却水の温度(直線L1上の温度値)が第2基準温度T
out_L’となる値W
Aに設定されている。
【0049】
この場合の閾値W
thは、以下の式(9)を解くことによって求められ、式(10)のように算出される。
【数9】
【数10】
【0050】
図3は、第1制御モードを説明するための別の図である。
図3は、第1制御モードでの閾値W
thの別の例を示す。
図3に示す例では、閾値W
thは、第2状態において電気装置11aが運転したと仮定した場合に第1冷却水の温度(直線L2上の温度値)が第3基準温度T
out_Hとなる値W
Bに設定されている。すなわちこの場合、冷却装置3は、
図3中に太線で示される特性で制御される。
【0051】
すなわち、1つの観点によれば、閾値W
thは、第1状態において電気装置11aが運転したと仮定した場合に第1冷却水の温度(直線L1上の温度値)が第2基準温度T
out_L’となる値W
Aと、第2状態において電気装置11aが運転したと仮定した場合に第1冷却水の温度が第3基準温度T
out_Hとなる値W
Bとの間の範囲(
図3中に示す範囲R1)内に設定されればよい。
【0052】
<5.3 第2制御モード>
次に、第2制御モードについて説明する。
図4は、第2制御モードを説明するための図である。ここで冷却装置3では、電気装置11aの運転時最大電力損失W
maxや電気装置11aの運転時最低電力損失W
min、外水温度T
a、第1冷却水の流量Qなどのうち1つ以上に起因して、熱交換器20の温度効率ε
1とε
2が大きくかけ離れる場合がある。熱交換器20の温度効率ε
1とε
2が大きくかけ離れる場合、
図4中の領域Aに示すように、電磁弁26が閉状態と開状態とのいずれの状態でも冷却水出口温度T
outがΔT’(T
out_H 〜T
out_L’)の範囲内に収まらない場合がある。
【0053】
このような現象が生じる条件は、下記の式(11)が満たされる場合であり、変形して式(12)となる。
【数11】
【数12】
【0054】
すなわち、式(12)の条件が満たされる場合は、上述した第1制御モードではなく、第1制御モードとは異なる第2制御モードで冷却装置3を制御することが好ましい。
【0055】
この場合、制御部29は、閾値W
thに代えて、閾値W
th’を用いる。閾値W
th’は、閾値W
thと同様に、ヒートシンク13の温度変動を抑制する制御において、電磁弁26の開閉状態を切り替えるために設定される電気装置11aの電力損失[W]に関する閾値である。閾値W
th’は、「第1閾値」の別の一例であるとともに、「第2閾値」の別の一例である。
【0056】
図4に示す例では、閾値W
th’は、第1状態において電気装置11aを運転したと仮定した場合における第1冷却水の温度(直線L1上の温度値)と第2基準温度T
out_L’との差を第1差D21、第2状態において電気装置11aを運転したと仮定した場合における第1冷却水の温度(直線L2上の温度値)と第3基準温度T
out_Hとの差を第2差D22とした場合、第1差D21と第2差D22とが互いに同じになる値W
Cに設定される。すなわちこの場合、冷却装置3は、
図4中に太線で示される特性で制御される。第1差D21および第2差D22は、ΔT’の範囲からの逸脱値である。この場合、T
outの変動幅は、T’’(T
out_L’’〜T
out_H’)となる。
【0057】
この場合の閾値W
th’は、以下の式(13)を解くことによって求められ、式(14)のように算出される。
【数13】
【数14】
【0058】
またこの場合の所量の計算式は、以下の式(15)〜(17)のようになり、低減できるT
outの変動幅は、式(18)のようになる。
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【0059】
この場合、T
outの変動幅を低減するためには、式(18)の右辺分子が0よりも大きいことが条件である。その条件を満たす場合は、以下の式(19)のようになる。
【数19】
【0060】
すなわち、式(19)の条件が満たされない場合は、閾値W
th’において電磁弁26を開状態に切り替えると、T
outの変動幅が逆に増大してしまう。このため式(19)の条件が満たされない場合は、電磁弁26の制御は行わない。なお、式(19)は、
図4中のW
CにW
th’が設定される場合の条件である。
【0061】
図5は、第2制御モードを説明するための別の図である。
図5は、第2制御モードでの閾値W
th’の別の例を示す。
図5に示す例では、閾値W
th’は、第2状態において電気装置11aを運転したと仮定した場合に第1冷却水の温度(直線L2上の温度値)が第3基準温度T
out_Hとなる値W
Dに設定されている。すなわちこの場合、冷却装置3は、
図5中に太線で示される特性で制御される。
【0062】
すなわち、1つの観点によれば、閾値W
th’は、上述した第1差D21と第2差D22とが互いに同じになる値W
Cと、第2状態において電気装置11aを運転したと仮定した場合に第1冷却水の温度(直線L2上の温度値)が第3基準温度T
out_Hとなる値W
Dとの間の範囲(
図5中に示す範囲R2)内に設定されればよい。
【0063】
なお、
図5中のW
DにW
th’が設定される場合、電磁弁26の制御を行わない条件(式(19)に相当する条件)は、以下の式(20)の条件が満たされないことでもよい。
【数20】
【0064】
ただし、この式(20)は、式(19)よりも緩い条件である。このため、式(20)を敢えて定義する必要はなく、W
DにW
th’が設定される場合であっても、式(19)の条件を満たさない場合には電磁弁26の制御を行わないようにしてもよい。
【0065】
<5.4 制御部の機能構成>
図6は、制御部29の機能構成を示すブロック図である。制御部29は、例えば、制御モード判定部31、閾値設定部32、電流値取得部33、電力損失算出部34、比較部(監視部)35、開閉決定部36、および電磁弁操作回路37を含む。なお以下の説明において、電磁弁26は、冷却装置3の運転開始時では閉状態にあるものとする。
【0066】
制御モード判定部31は、例えば、記憶部28に記憶された第1冷却水の流量Q、記憶部28に記憶された第1冷却水の比熱C、記憶部28に記憶された第1冷却水の密度ρ、第1温度センサ27Aにより検出された冷却水出口温度T
out、第2温度センサ27Bにより検出された外水温度T
a、および電力損失算出部34により検出された電力損失Wに基づき、熱交換器20の温度効率ε
1,ε
2を算出する。例えば、これら温度効率ε
1,ε
2は、ドライブシステム1の予備運転で冷却装置3を予め第1状態と第2状態とのそれぞれで運転し、そのときに検出された冷却水出口温度T
out、外水温度T
a、および電力損失Wに基づき予め算出される。
【0067】
次に、制御モード判定部31は、算出した熱交換器20の温度効率ε
1,ε
2と、記憶部28に記憶された運転時最大電力損失W
maxおよび運転時最低電力損失W
minとに基づき、以下の式(21)である第1条件が満たされるか否かを判定する。
【数21】
【0068】
制御モード判定部31は、上記第1条件が満たされると判定した場合、冷却装置3を第1制御モードで制御することを決定し、第1制御モードで制御することを閾値設定部32に通知する。
【0069】
一方で、制御モード判定部31は、上記第1条件が満たされないと判定した場合、算出した熱交換器20の温度効率ε
1,ε
2と、記憶部28に記憶された運転時最大電力損失W
maxおよび運転時最低電力損失W
minとに基づき、以下の式(22)である第2条件が満たされるか否かを判定する。
【数22】
【0070】
制御モード判定部31は、上記第2条件が満たされると判定した場合、冷却装置3を第2制御モードで制御することを決定し、第2制御モードで制御することを閾値設定部32に通知する。一方で、制御部29は、上記第2条件が満たされないと判定された場合、電磁弁26を閉状態に維持する。
【0071】
閾値設定部32は、制御モード判定部31により第1制御モードで冷却装置3を制御すると決定された場合、電磁弁26の開閉状態を切り替える切替点として閾値W
thを設定する。閾値W
thの値は、
図3を参照して上述した範囲R1内の任意の値が予め選定されており、例えば、第1状態において電気装置11aが運転したと仮定した場合に第1冷却水の温度(直線L1上の温度値)が第2基準温度T
out_L’となる値W
Aが設定される。
【0072】
一方で、閾値設定部32は、制御モード判定部31により第2制御モードで冷却装置3を制御すると決定された場合、電磁弁26の開閉状態を切り替える切替点として閾値W
th’を設定する。閾値W
th’の値は、
図5を参照して上述した範囲R2内の任意の値が予め選定されており、例えば、上述した第1差D21と第2差D22とが互いに同じになる値W
Bが設定される。閾値設定部32は、設定した閾値W
thまたは閾値W
th’を比較部35に出力する。
【0073】
電流値取得部33は、電力変換装置2の制御部29により検出された電力変換装置2の出力電流の電流値を、電力変換装置2の制御部29から受け取る。電流値取得部33は、受け取った出力電流の電流値を、電力損失算出部34に出力する。
【0074】
電力損失算出部34は、電流値取得部33から受け取る電流値と、記憶部28に記憶された電流―損失特性とに基づき、電気装置11aの電力損失Wを算出する。電力損失算出部34は、算出した電気装置11aの電力損失Wを比較部35に出力する。電気装置11aの電力損失Wは、監視対象として用いられる「検出値」の一例である。
【0075】
比較部(監視部)35は、電力損失算出部34により算出された電力損失Wを監視する。本実施形態では、比較部35は、閾値設定部32により設定された閾値W
th(または閾値W
th’)と、電力損失算出部34により算出された電力損失Wとを所定の周期で比較する。比較部35は、電力損失Wと閾値W
th(または閾値W
th’)との比較結果を開閉決定部36に出力する。
【0076】
開閉決定部36は、比較部35の比較結果に基づき、電力損失Wが減少し、電力損失Wが閾値W
th(または閾値W
th’)以上の状態から閾値W
th(または閾値W
th’)未満に低下した場合に、電磁弁26を開くことを決定する。開閉決定部36は、電磁弁26を開くことを決定した場合、電磁弁26を開くための指令を電磁弁操作回路37に出力する。
【0077】
一方で、開閉決定部36は、比較部35の比較結果に基づき、電力損失Wが増加し、電力損失Wが閾値W
th(または閾値W
th’)未満の状態から閾値W
th(または閾値W
th’)以上に増加した場合に、電磁弁26を閉じることを決定する。開閉決定部36は、電磁弁26を閉じることを決定した場合、電磁弁26を閉じるための指令を電磁弁操作回路37に出力する。
【0078】
電磁弁操作回路37は、電磁弁26を開くための指令を開閉決定部36から受け取った場合、開状態に対応した制御信号を電磁弁26に出力し、電磁弁26を閉状態から開状態に移行させる。一方で、電磁弁操作回路37は、電磁弁26を閉じるための指令を開閉決定部36から受け取った場合、閉状態に対応した制御信号を電磁弁26に出力し、電磁弁26を開状態から閉状態に移行させる。
【0079】
<5.4 処理流れ>
次に、制御部29の処理流れについて説明する。
図7は、制御部29の処理流れの一例を示すフローチャートである。制御部29は、まず、冷却水出口温度T
out、外水温度T
a、第1冷却水の流量Q、および電力損失Wに基づき、熱交換器20の温度効率ε
1,ε
2を算出する(S101)。このS101の処理は、上述したようにドライブシステム1の予備運転で冷却装置3を予め第1状態と第2状態とのそれぞれで運転することで、予め行われる。
【0080】
次に、制御部29は、熱交換器20の温度効率ε
1,ε
2と、運転時最大電力損失W
maxおよび運転時最低電力損失W
minとに基づき、上記第1条件が満たされるか否かを判定する(S102)。
【0081】
制御部29は、上記第1条件が満たされると判定した場合(S102:YES)、電磁弁26の開閉状態を切り替える閾値として、閾値W
thを設定する(S103)。そして、制御部29は、S107の処理に進む。
【0082】
一方で、制御部29は、上記第1条件が満たされないと判定した場合(S102:NO)、熱交換器20の温度効率ε
1,ε
2と、運転時最大電力損失W
maxおよび運転時最低電力損失W
minとに基づき、上記第2条件が満たされるか否かを判定する(ステップ104)。
【0083】
制御部29は、上記第2条件が満たされると判定した場合(S104:YES)、電磁弁26の状態を切り替える閾値として、閾値W
th’を設定する(S105)。
【0084】
一方で、制御部29は、上記第2条件が満たされないと判定した場合(S104:NO)、本方式での温度変動の抑制制御は行わず(S106)、本フローを終了する。
【0085】
これらS102からS106までの計算は、S101で求められた温度効率ε
1,ε
2に基づき予め行われる。また、これらS101からS106までの計算は、計算式のパラメータ(例えば第1冷却水の流量Q、運転時最大電力損失W
max、運転時最低電力損失W
minなど)が更新されたタイミングで再計算される。そして、制御部29は、S107からS110までの処理を冷却装置3の実際の運転時(冷却装置3を用いた冷却時)に行う。
【0086】
すなわち、制御部29は、冷却装置3の運転時に、電力変換装置2(または電気装置11a)の出力電流の電圧値と、電流―損失特性とに基づき、電気装置11aの電力損失Wを算出する(S107)。次に、制御部29は、算出された電力損失Wが閾値W
th(または閾値W
th’)以上であるか否かを判定する(S108)。
【0087】
制御部29は、電力損失Wが閾値W
th(または閾値W
th’)以上である場合(S108:YES)、電磁弁26を開状態に制御する(S109)。一方で、制御部29は、電力損失Wが閾値W
th(または閾値W
th’)未満である場合(S108:NO)、電磁弁26を閉状態に制御する(S110)。
【0088】
次に、制御部29は、冷却装置3の運転停止の指令があるか否かを判定する(S111)。制御部29は、冷却装置3の運転停止の指令がない場合(S111:NO)、所定の周期でS107からS110までの処理を繰り返す。一方で、制御部29は、冷却装置3の運転停止の指令がある場合(S111:YES)、冷却装置3の運転を停止する。これにより、本フローの処理が終了する。
【0089】
(作用)
比較例として、上記のような温度変動抑制の制御が行われない場合を考える。この場合、ヒートシンク13の温度は、
図2中のΔTの幅で変動することになる。ヒートシンク13の温度変動が大きい場合、例えば、ヒートシンク13と電気装置11aとの熱膨張率の違いにより、ヒートシンク13と電気装置11aとの間に設けられたグリースが外部に流出し、ヒートシンク13と電気装置11aとの熱接続性が低下する場合がある。その結果、電気装置11aが高温になりやすく、電気装置11aの信頼性が低下する場合がある。
【0090】
一方で、本実施形態では、制御部29は、電気装置11aの電力損失に関する検出値を監視し、前記検出値が第1閾値未満になる場合に第2配管24からバイパス配管25に流入する第2冷却水の流量を増やすように電磁弁26を制御し、前記検出値が第2閾値以上になる場合に第2配管24からバイパス配管25に流入する第2冷却水の流量を減らすように電磁弁26を制御する。このような構成によれば、ヒートシンク13の温度変動をΔT’の幅に抑えることができる。これにより、ヒートシンク13の温度変動を小さくすることができる。ヒートシンク13の温度変動を小さくすることができると、電気装置11aのサーマルサイクル耐量の増加を通じて電気装置11aの信頼性向上を図ることができる。
【0091】
本実施形態では、冷却装置3は、第2配管24から分岐し、第2配管24を流れる第2冷却水の少なくとも一部を、熱交換器20を通さずに第2配管24に戻すバイパス配管25を有する。電磁弁26は、第2配管24からバイパス配管25に流入する第2冷却水の流量を変更する。このような構成によれば、インバータ機能が無い冷却装置(流量が調整できない冷却装置)であってもヒートシンク13の温度変動を小さくし、電気装置11aの信頼性向上を図ることができる。
【0092】
本実施形態では、前記検出値として、電気装置11aの電力損失に関する値が監視される。このような構成によれば、閾値と検出値との比較において、冷却水の水温を測定する必要が無い。また、水温検出により制御する場合、水温の変化には時定数があるためどうしても制御応答が遅れるが、電流値は瞬時に変化するため迅速な制御応答を行うことができる。
【0093】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、検出値として、第1冷却水の温度が直接監視される点で、第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0094】
図8は、第2の実施形態のドライブシステム1の一例を示す図である。
図9は、第2の実施形態の制御モードを示す図である。本実施形態では、第1制御モードでは、電力損失に関する閾値W
thの代わりに、第1冷却水の温度に関する閾値として第1閾値T
out_thLと第2閾値T
out_thHとが設定されている(
図9参照)。
【0095】
制御部29の比較部35は、例えば第1温度センサ27Aにより検出された冷却水出口温度T
outと、第1閾値T
out_thLおよび第2閾値T
out_thHとを周期的に比較する。そして、制御部29は、電磁弁26が閉じている状態において、冷却水出口温度T
outがT
out_thL未満に低下する場合に、電磁弁26を開くように制御する。一方で、制御部29は、電磁弁26が開いている状態において冷却水出口温度T
outがT
out_thH以上に増加するに、電磁弁26を閉じるように制御する。
【0096】
また本実施形態では、第2制御モードでは、電力損失に関する閾値W
th’代わりに、第1冷却水の温度に関する閾値として第1閾値T
out_thL’と第2閾値T
out_thH’とが設定されている。なお、第1閾値T
out_thL’と第2閾値T
out_thH’の使用方法は、第1閾値T
out_thLおよび第2閾値T
out_thHと同様である。
【0097】
このような構成によっても、ヒートシンク13の温度変動を抑制し、冷却対象である電気装置の信頼性向上を図ることができる。なお、第1閾値T
out_thLおよび第2閾値T
out_thHは、例えば互いに異なる値であるが、互いに同じ値でもよい。同様に、第1閾値T
out_thL’と第2閾値T
out_thH’は、例えば互いに異なる値であるが、互いに同じ値でもよい。
【0098】
(変形例)
次に、第1および第2の実施形態の変形例について説明する。例えば外水温度T
aや第1冷却水の流量Qが実質的に一定である場合、冷却装置3は、上記第1条件を常に満たすように設計されてもよい。この場合、制御部29は、第1制御モードと第2制御モードとの判定を行う必要はなく、閾値として常に閾値W
th(または第1閾値T
out_thLおよび第2閾値T
out_thH)が設定されていてもよい。
【0099】
同様に、冷却装置3は、上記第1条件を満たさず、且つ、上記第2条件を常に満たすように設計されてもよい。この場合、制御部29は、第1制御モードと第2制御モードとの判定を行う必要はなく、閾値として常に閾値W
th’(または第1閾値T
out_thL’と第2閾値T
out_thH’)が設定されていてもよい。
【0100】
上述した実施形態および変形例において、制御部29の全部または一部は、例えば、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現される。なお、制御部29の全部または一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなハードウェアプロセッサが不図示のメモリに格納されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現されるソフトウェア機能部でもよく、ハードウェアとソフトウェア機能部との協働によって実現されてもよい。
【0101】
以上、いくつかの実施形態および変形例について説明した。ただし、実施形態は、上記例に限定されない。例えば、ヒートシンク13に取り付けられる電気装置11aは、IGBTモジュールに限定されず、他の種類の電気装置でもよい。
【0102】
上述した実施形態では、冷却装置3は、バイパス配管25および電磁弁26を有した。なお、冷却装置3は、バイパス配管25を有しなくてもよい。この場合、冷却装置3は、第2配管24に設けられて、回転数などが可変であり第2配管24を流れる第2冷却水の流量を変更可能なポンプを有してもよい。この場合、ポンプは、「流量変更機構」の一例である。
【0103】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、冷却装置の制御部は、電気装置の電力損失と第1冷却水の温度とのうち少なくとも一方に関する検出値を監視し、前記検出値が第1閾値未満になる場合に第2配管からバイパス配管に流入する第2冷却水の流量を増やすように流量変更機構を制御し、前記検出値が第2閾値以上になる場合に前記第2配管から前記バイパス配管に流入する前記第2冷却水の流量を減らすように前記流量変更機構を制御する。このような構成によれば、冷却対象である電気装置の信頼性向上を図ることができる。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
実施形態の冷却装置は、第1熱交換器と、第1配管と、第2配管と、バイパス配管と、流量変更機構と、制御部とを備えている。前記制御部は、電気装置の電力損失と第1冷却水の温度とのうち少なくとも一方に関する検出値を監視し、前記検出値が第1閾値未満になる場合に前記第2配管から前記バイパス配管に流入する第2冷却水の流量を増やすように前記流量変更機構を制御し、前記検出値が第2閾値以上になる場合に前記第2配管から前記バイパス配管に流入する前記第2冷却水の流量を減らすように前記流量変更機構を制御する。