(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<リチウムイオン二次電池用正極材料>
本発明のリチウム二次電池用正極材料(以下、正極材料ともいう)は、正極活物質、導電助剤、及びバインダーを含み、バインダー1gあたりの正極活物質及び導電助剤の総表面積が700m
2/g以下であり、正極材料1gあたりの導電助剤の総表面積が16m
2/g以上であり、正極活物質のBET比表面積が1.2m
2/g以下である。
本発明の正極材料は、バインダー1gあたりの正極活物質及び導電助剤の総表面積、正極材料1gあたりの導電助剤の総表面積、及び正極活物質のBET比表面積を上記のとおりと特定範囲としているため、該正極材料を用いて製造したリチウムイオン二次電池は、サイクル特性及び出力特性が良好となる。
【0010】
(正極活物質)
本発明の正極材料は、BET比表面積が1.2m
2/g以下である正極活物質を含有する。正極活物質のBET比表面積が1.2m
2/gを超える場合は、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が悪くなりやすく、リチウムイオン二次電池の強度も低下しやすい。リチウムイオン二次電池のサイクル特性を良好とする観点から、正極活物質のBET比表面積は、好ましくは1.0m
2/g以下であり、より好ましくは0.8m
2/g以下であり、そして好ましくは0.1m
2/g以上である。
BET比表面積はBET法により求めることができ、具体的には、窒素ガス吸着によるBET法により求めることができる。
【0011】
正極活物質としては、金属酸リチウム化合物が挙げられる。金属酸リチウム化合物としては、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)等が例示できる。また、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)などであってもよい。さらに、リチウム以外の金属を複数使用したものでもよく、リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物(NCM)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物(NCA)などを使用してもよい。これらの中でも、リチウムイオン二次電池の充放電容量を向上させる観点から、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物(NCA)が好ましい。
【0012】
リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物は、ニッケル酸リチウムのニッケルの一部をアルミニウム及びコバルトで置換したものである。リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物は、一般式ではLi
tNi
1−x−yCo
xAl
yO
2(但し、0.95≦t≦1.15、0<x≦0.3、0<y≦0.2、x+y≦0.5を満たす。)と表される。
【0013】
正極活物質の平均粒子径は0.5〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましく、5〜15μmであることが更に好ましい。リチウムイオン二次電池のサイクル特性を良好とする観点から、正極活物質の平均粒子径は12μm以上であることが好ましく、そして好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた正極活物質の粒度分布において、体積積算が50%での粒径(D50)を意味する。後述する負極活物質の平均粒子径、及び絶縁性微粒子の平均粒子径も同様の方法で測定できる。
正極材料における正極活物質の含有量は、正極材料全量基準で50〜98.5質量%が好ましく、60〜98質量%がより好ましい。
【0014】
(導電助剤)
本発明の正極材料は、導電助剤を含有する。導電助剤を含有することにより、正極材料の電気伝導性を向上させることができる。
本発明の正極材料において、正極材料1gあたりの導電助剤の総表面積は16m
2/g以上である。正極材料1gあたりの導電助剤の総表面積が16m
2/g未満であると、リチウムイオン二次電池の出力特性が悪くなる。リチウムイオン二次電池の出力特性を良好とする観点から、正極材料1gあたりの導電助剤の総表面積は16.3m
2/g以上であることが好ましく、17m
2/g以上であることがより好ましく、そして200m
2/g以下であることが好ましく、50m
2/g以下であることがより好ましい。
【0015】
本発明の正極材料においては、バインダー1gあたりの正極活物質及び導電助剤の総表面積が700m
2/g以下である。該総表面積が700m
2/gを超える場合は、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が悪くなりやすく、また強度も低下しやすい。これは、バインダー1gあたりの正極活物質及び導電助剤の該総表面積が大きい場合は、正極活物質及び導電助剤の表面にバインダーが消費されてしまうことによって電極全体の強度が低下するためと考えられる。
サイクル特性を向上させる観点から、バインダー1gあたりの正極活物質及び導電助剤の総表面積は697m
2/g以下であることが好ましく、695m
2/g以下であることがより好ましい。
バインダー1gあたりの正極活物質及び導電助剤の総表面積は、以下の[1]と[2]との合計を正極材料中のバインダーの質量割合(wt%)で除することで求めることができる。すなわち、([1]+[2])/(正極材料中のバインダーの質量割合(wt%))の式で求めることができる。
[1]:正極材料中の正極活物質の質量割合(wt%)×正極活物質のBET比表面積(m
2/g)
[2]:正極材料中の導電助剤の質量割合(wt%)×導電助剤のBET比表面積(m
2/g)
また、導電助剤を2種以上用いる場合は、個々の導電助剤の正極材料中の質量割合とBET比表面積の積を総和すればよい。例えば、導電助剤を後述する導電助剤aと導電助剤bの2種類を用いる場合は、上記[2]に代えて、下記[2’]を用いて、バインダー1gあたりの正極活物質及び導電助剤の総表面積を求めることができる。
[2’]:正極材料中の導電助剤aの質量割合(wt%)×導電助剤aのBET比表面積(m
2/g)+正極材料中の導電助剤bの質量割合(wt%)×導電助剤bのBET比表面積(m
2/g)
なお、正極活物質を2種以上用いる場合も、導電助剤を2種以上用いる場合と同様に計算することができる。
【0016】
本発明の正極材料に含まれる導電助剤は、BET比表面積の異なる導電助剤a及び導電助剤bを含有することが好ましい。BET比表面積の異なる導電助剤を含有する正極材料を用いることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性及び出力特性を向上させることができる。
導電助剤aのBET比表面積は600m
2/g以上であることが好ましく、800m
2/g以上であることがより好ましく、1000m
2/g以上であることが更に好ましく、そして、2000m
2/g以下であることが好ましく、1500m
2/g以下であることがより好ましい。
導電助剤bのBET比表面積は100m
2/g未満であることが好ましく、50m
2/g以下であることが好ましく、20m
2/g以下であることが更に好ましく、そして、5m
2/g以上であることが好ましく、10m
2/g以上であることがより好ましい。
【0017】
導電助剤の含有量は、正極材料全量基準で、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。なお、導電助剤の含有量は、導電助剤が1種類の場合はその含有量を意味し、導電助剤を複数用いる場合は、複数の導電助剤の総量を意味する。
また、導電助剤が上記したBET比表面積の異なる導電助剤a及びbを含む場合は、導電助剤aの含有量は、正極材料全量基準で、0.2〜15質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることが更に好ましい。導電助剤bの含有量は、正極材料全量基準で、0.3〜15質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、2〜7質量%であることが更に好ましい。
導電助剤における導電助剤a及びbの含有量は、リチウムイオン二次電池のサイクル特性及び出力特性を向上させる観点から、導電助剤aの含有量よりも導電助剤bの含有量の方が多いことが好ましく、導電助剤aの含有量に対する導電助剤bの含有量を1.2〜3.0とすることがより好ましく、1.5〜2.5とすることが更に好ましい。
【0018】
導電助剤の種類としては、正極活物質よりも導電性の高い材料であれば特に限定されないが、炭素材料を用いることが好ましい。
炭素材料としては、特に限定されないが、鎖状のカーボン、繊維状又は棒状のカーボン、黒鉛粒子等が挙げられる。
【0019】
導電助剤が上記したBET比表面積の異なる導電助剤a及びbを含む場合は、これらの種類は特に限定されないが、好ましくは、両者共に炭素材料であることが好ましい。
より詳細には、導電助剤aは、鎖状のカーボン及び黒鉛粒子から選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記鎖状のカーボンとは、粒子同士が融着ないし凝集等により鎖状につながったものをいい、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。上記アセチレンブラックとしては、例えば、電気化学工業社製の商品名「デンカブラック」が挙げられる。上記ファーネスブラックとしては、例えば、イメリス社製の商品名「Super P」が挙げられる。さらに、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の「ケッチェンブラック」も鎖状のカーボンとして用いることができる。
上記黒鉛粒子としては、天然黒鉛、人造黒鉛の何れでもよく、炭素質層などの表面層を有する黒鉛粒子であってもよい。黒鉛粒子としては、具体的には、日本黒鉛社製の「UP−5α」、「SP−5030α」、イメリス社製「KS4」、「KS6」などが挙げられる。
【0020】
導電粒子bは、繊維状又は棒状のカーボンであることが好ましい。繊維状又は棒状のカーボンとしては、例えば、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等が挙げられ、中でも、カーボンナノチューブが好ましく、気相成長カーボンファイバーがより好ましい。気相成長カーボンファイバーとしては、例えば、昭和電工株式会社製、商品名「VGCF−H」が挙げられる。
【0021】
(バインダー)
本発明の正極材料は、バインダーを含有する。これにより正極材料は、上記した正極活物質及び導電助剤がバインダーに結着されて構成される。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有樹脂、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリビニルアルコール等が挙げられる。これらバインダーは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、カルボキシメチルセルロースなどは、ナトリウム塩などの塩の態様にて使用されていてもよい。これらの中でも、フッ素含有樹脂であることが好ましく、フッ素含有樹脂の中でもポリフッ化ビニリデン(PVDF)を使用することが好ましい。
正極材料におけるバインダーの含有量は、正極材料全量基準で、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、2〜4質量%であることが更に好ましい。
【0022】
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウム二次電池用正極材料は、リチウムイオン二次電池の正極活物質層として使用することができる。該正極活物質層を有する正極を備えるリチウムイオン二次電池は、サイクル特性及び出力特性が共に良好となる。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態を示す概略断面図である。リチウムイオン二次電池10は、正極12と、正極12と対向するように配置される負極11と、正極12と負極11との間に配置されるセパレータ13とを備えている。
負極11は負極集電体11aと、負極集電体11aの上に積層された負極活物質層11bとを備えており、正極12も同様に、正極集電体12aと、正極集電体12aの上に積層された本発明の正極材料からなる正極活物質層12bとを備えている。
本発明の正極材料からなる正極活物質層12bは、上記したとおり、バインダー1gあたりの正極活物質及び導電助剤の総表面積、正極材料1gあたりの導電助剤の総表面積、及び正極活物質のBET比表面積を特定範囲としている。これにより、リチウムイオン二次電池10は、サイクル特性及び出力特性が共に良好となる。
なお、負極活物質層11bとセパレータ13との間、又は正極活物質層12bとセパレータ13との間に図示しない絶縁層を設けてもよい。絶縁層を設けることにより、正極12と負極11との間の短絡が有効に防止できるようになる。
【0023】
(正極)
本発明のリチウムイオン二次電池における正極は、本発明の正極材料からなる正極活物質層を有し、好ましくは正極集電体と、正極集電体上に積層された正極活物質層とを有する。正極活物質層の厚みは特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましく、50〜150μmであることがより好ましい。
正極集電体を構成する材料としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性を有する金属が挙げられ、好ましくはアルミニウム又は銅、より好ましくはアルミニウムが使用される。正極集電体は、一般的に金属箔からなり、その厚さは、特に限定されないが、1〜50μmが好ましい。
正極材料は、正極材料用組成物から形成されることが好ましい。正極材料用組成物は、上記した正極活物質、導電助剤、及びバインダーを含む組成物である。正極材料用組成物は、さらに溶剤を含有することが好ましい。正極材料用組成物は一般的にスラリーになる。正極材料用組成物中の各成分の含有量は、溶剤を除いた各成分の含有量が、上記した正極材料において説明した含有量となるように調整すればよい。
正極材料用組成物を、正極集電体上に塗布し乾燥することにより、正極集電体上に正極材料からなる正極活物質層が形成された正極を得ることができる。
【0024】
(負極)
本発明のリチウムイオン二次電池における負極は、負極材料からなる負極活物質層を有し、好ましくは負極集電体と、負極集電体上に積層された負極活物質層とを有する。負極活物質層は、典型的には、負極活物質と、負極用バインダーとを含む。
負極活物質層に使用される負極活物質としては、グラファイト、ハードカーボンなどの炭素材料、スズ化合物とシリコンと炭素の複合体、リチウムなどが挙げられるが、これら中では炭素材料が好ましく、グラファイトがより好ましい。
負極活物質は、特に限定されないが、その平均粒子径が0.5〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、負極活物質層全量基準で、50〜98.5質量%が好ましく、60〜98質量%がより好ましい。
【0025】
負極活物質層は、導電助剤を含有してもよい。導電助剤は、上記負極活物質よりも導電性が高い材料が使用され、具体的には、カーボンブラック、カーボンナノファーバー、カーボンナノチューブ、黒鉛粒子などの炭素材料が挙げられる。
負極活物質層において、導電助剤が含有される場合、導電助剤の含有量は、負極活物質層全量基準で、1〜30質量%であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。
【0026】
負極活物質層に含有される負極用バインダーとしては、上記した正極材料にて使用されるバインダーと同種のものが使用できる。
負極活物質層における負極用バインダーの含有量は、負極活物質層全量基準で、1.5〜40質量%であることが好ましく、2.0〜25質量%がより好ましい。
負極活物質層の厚みは、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましく、50〜150μmであることがより好ましい。
【0027】
負極集電体を構成する材料としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性を有する金属が挙げられ、これらの中ではアルミニウム又は銅が好ましく、銅がより好ましい。負極集電体は、一般的に金属箔からなり、その厚さは、特に限定されないが、1〜50μmが好ましい。
【0028】
上記した正極の場合と同様に、負極活物質、負極用バインダー、導電助剤、及び必要に応じて配合される溶媒を含有する負極材料用組成物を、負極集電体上に塗布し乾燥することにより、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極を得ることができる。
【0029】
(セパレータ)
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極と正極との間に配置されるセパレータを備える。セパレータにより、正極及び負極の間の短絡が効果的に防止される。また、セパレータは、後述する電解質を保持してもよい。
セパレータとしては、多孔性の高分子膜、不織布、ガラスファイバー等が挙げられ、これらの中では多孔性の高分子膜が好ましい。多孔性の高分子膜としては、エチレン系多孔質フィルムなどのオレフィン系多孔質フィルムが例示される。
【0030】
(絶縁層)
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極活物質層上又は正極活物質層上に絶縁層を備えるものであってもよい。絶縁層により正極及び負極の間の短絡が効果的に防止される。絶縁層は、好ましくは、絶縁性微粒子と絶縁層用バインダーとを含み、絶縁性微粒子が絶縁層用バインダーによって結着されて構成された多孔質構造を有する層である。
【0031】
絶縁性微粒子は、絶縁性であれば特に限定されず、有機粒子、無機粒子の何れであってもよい。具体的な有機粒子としては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋スチレン−アクリル酸共重合体、架橋アクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム)、ポリアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の有機化合物から構成される粒子が挙げられる。無機粒子としては二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、ベーマイト、チタニア、ジルコニア、窒化ホウ素、酸化亜鉛、二酸化スズ、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、フッ化カリウム、フッ化リチウム、クレイ、ゼオライト、炭酸カルシウム等の無機化合物から構成される粒子が挙げられる。また、無機粒子は、ニオブ−タンタル複合酸化物、マグネシウム−タンタル複合酸化物等の公知の複合酸化物から構成される粒子であってもよい。絶縁性微粒子は1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
絶縁性微粒子の平均粒子径は、絶縁層の厚さよりも小さければ特に限定されず、例えば0.001〜1μm、好ましくは0.05〜0.8μm、より好ましくは0.1〜0.6μmである。
絶縁層に含有される絶縁性微粒子の含有量は、絶縁層全量基準で、好ましくは15〜95質量%、より好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは60〜85質量%である。絶縁性微粒子の含有量が上記範囲内であると、絶縁層は、均一な多孔質構造が形成でき、かつ適切な絶縁性が付与される。
【0032】
絶縁層用バインダーとしては、上記した正極材料にて使用されるバインダーと同種のものが使用できる。絶縁層における絶縁層用バインダーの含有量は、絶縁層全量基準で、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%がより好ましく、15〜40質量%が更に好ましい。
絶縁層の厚さは、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、3〜7μmが更に好ましい。
【0033】
(電解質)
本発明のリチウムイオン二次電池は、電解質を備える。電解質は特に限定されず、リチウムイオン二次電池で使用される公知の電解質を使用すればよい。電解質としては例えば電解液を使用する。
電解液としては、有機溶媒と、電解質塩を含む電解液が例示できる。有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトロヒドラフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテートなどの極性溶媒、又はこれら溶媒の2種類以上の混合物が挙げられる。電解質塩としては、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCF
3CO
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2CF
2CF
3)
2、LiN(COCF
3)
2及びLiN(COCF
2CF
3)
2、リチウムビスオキサレートボラート(LiB(C
2O
4)
2等のリチウムを含む塩が挙げられる。また、有機酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体、LiBH
4等の錯体水素化物等の錯体が挙げられる。これらの塩又は錯体は、1種単独で使用してもよいが、2種以上の混合物であってもよい。
また、電解質は、上記電解液に更に高分子化合物を含むゲル状電解質であってもよい。高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のポリアクリル系ポリマーが挙げられる。なお、ゲル状電解質は、セパレータとして使用されてもよい。
電解質は、負極及び正極間に配置されればよく、例えば、電解質液は、上記した負極、正極、及びセパレータが内部に収納されたバッテリーセル内に充填される。また、電解質は、例えば、負極又は正極上に塗布されて負極及び正極間に配置されてもよい。
【0034】
リチウムイオン二次電池は、負極、正極がそれぞれ複数積層された多層構造であってもよい。この場合、負極及び正極は、積層方向に沿って交互に設けられればよい。また、セパレータは各負極と各正極の間に配置されればよく、絶縁層を設ける場合は、負極−セパレータ間又は正極−セパレータ間に設ければよい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
得られたリチウムイオン二次電池は、以下の評価方法により評価した。
【0037】
(サイクル特性の評価)
作製した電池の容量が3mA/cm
2になるように正極材料用組成物及び負極材料用組成物の塗工量を調整し、後述するように実施例、比較例のリチウムイオン二次電池を得た。25℃の恒温下、端子電圧の充電下限電圧を2.5V、放電の上限電圧を4.2Vとした電圧範囲とした。以下の条件で充放電を繰り返した。
充電:6mA/cm
2、4.2Vの定電流後、0.3mA/cm
2の電流値となるまで低電圧充電
放電:6mA/cm
2の定電流、2.5Vの終始条件で放電
繰り返し数:1000回
1000回の充放電の後の放電容量を1回目の放電容量の値で除した割合を容量維持率とし、以下のように評価した。
A:80%≦容量維持率
B:60%≦容量維持率<80%
C:容量維持率<60%
【0038】
(出力特性評価)
作製した電池の容量が3mA/cm
2になるように正極材料用組成物及び負極材料用組成物の塗工量を調整し、後述するように実施例、比較例のリチウムイオン二次電池を得た。25℃の恒温下、端子電圧の充電下限電圧を2.5V、放電の上限電圧を4.2Vとした電圧範囲で3mA/cm
2の定電流放電と15mA/cm
2の定電流放電を実施した際の比を出力特性評価とした。なお以下のように判定した。
A:60%以上
B:50%以上60%未満
C:50%未満
【0039】
(電極強度)
各実施例、比較例で作製した正極(電極)について、以下のように電極強度を測定した。
正極を30mm×100mmにカットし、正極活物質層を内側に折り曲げ10mm厚のアクリル板で上下から挟み込んだ。挟み込んだのち、500gの錘を載せて5秒間保持した。その後、折り曲げ面を上にして開き、外観を検査し、以下の基準で評価した。
A:正極活物質層が亀裂を生じなかった。
B:正極活物質層が一部粉落ちした。
C:正極活物質層が粉落ちし、集電箔が見えた。
【0040】
[実施例1]
(正極の作製)
表1に示す正極材料(正極活物質、導電助剤、及び正極用バインダー)を、溶媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)と混合し、固形分濃度60質量%に調整したスラリー状の正極材料用組成物を作製した。この正極材料用組成物を、正極集電体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、予備乾燥後、120℃で真空乾燥した。その後、両面に正極材料用組成物を塗布した正極集電体を、400kN/mの線圧でローラにより加圧プレスし、更に電極寸法の100mm×200mm角に打ち抜いて、両面に正極活物質層を有する正極を作製した。該寸法のうち、正極活物質が塗布された面積は100mm×180mmであった。
【0041】
(負極の作製)
負極活物質としてグラファイト(平均粒子径10μm)100質量部と、負極用バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩を1.5質量部と、その他のバインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)1.5質量部と、溶媒として水とを混合し、固形分50質量%に調整したスラリー状の負極材料用組成物を得た。この負極材料用組成物を、負極集電体としての厚さ12μmの銅箔の両面に塗布して100℃で真空乾燥した。その後、両面に負極材料用組成物を塗布した負極集電体を、300kN/mの線圧でローラにより加圧プレスし、更に電極寸法の110mm×210mm角に打ち抜いて、両面に負極活物質層を有する負極を作製した。該寸法のうち、負極活物質が塗布された面積は110mm×190mmであった。
【0042】
(電解液の調製)
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を3:7の体積比(EC:DEC)で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF
6を1モル/リットルとなるように溶解して、電解液を調製した。
【0043】
(リチウムイオン二次電池の製造)
上記で得た負極10枚と、正極9枚と、セパレータ18枚を積層し仮積層体を得た。ここで、負極と正極は交互に配置して、各負極と正極の間にセパレータを配置した。また、セパレータとしては、ポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。
各正極の正極集電体の露出部の端部を纏めて超音波融着で接合するとともに、外部に突出する端子用タブを接合した。同様に、各負極の負極集電体の露出部の端部を纏めて超音波融着で接合するとともに、外部に突出する端子用タブを接合した。
次いで、アルミラミネートフィルムで上記積層体を挟み、端子用タブを外部に突出させ、三辺をラミネート加工によって封止した。封止せずに残した一辺から、上記で得た電解液を注入し、真空封止することによってラミネート型のセルを製造した。
得られたリチウムイオン二次電池の評価結果を表1に示す。
【0044】
[実施例2、比較例1〜5]
正極材料を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を得た。評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
なお、正極の作製に用いた正極活物質、導電助剤及び電極用バインダーは以下のとおりである。
(正極活物質)
・NCA1:リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物(平均粒子径:13.3μm、BET比表面積0.66m
2/g)
・NCA2:リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物(平均粒子径:11.1μm、BET比表面積1.3m
2/g)
・NCA3:リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物(平均粒子径:10.5μm、BET比表面積1.7m
2/g)
・NCA4:リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物(平均粒子径:7.7μm、BET比表面積2.0m
2/g)
【0047】
(導電助剤)
・鎖状のカーボン:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製(「ケッチェンブラック600」)、BET比表面積1275m
2/g
・棒状のカーボン:気相成長カーボンファイバー、昭和電工株式会社製(「VGCF−H」)、
BET比表面積13m
2/g
(正極用バインダー)
・PVDF:ポリフッ化ビニリデン
【0048】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いた実施例1〜2のリチウムイオン二次電池は、サイクル特性及び出力特性のいずれも良好になることが分かった。
一方、本発明のリチウムイオン二次電池用電極を用いない比較例1〜5のリチウムイオン二次電池は、いずれもサイクル特性及び出力特性の両方を良好とすることができなかった。