特許第6832577号(P6832577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6832577ビール風味ノンアルコール飲料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832577
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ビール風味ノンアルコール飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20210215BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   A23L2/38 J
   A23L2/38 R
   A23L2/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-46967(P2017-46967)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-148838(P2018-148838A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】517088492
【氏名又は名称】オホーツクビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002480
【氏名又は名称】特許業務法人IPアシスト特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪内 順逸
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/077292(WO,A1)
【文献】 特開2009−159882(JP,A)
【文献】 特開2003−169660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
C12G 3/00−3/08
C12J 1/04
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビールを酢酸発酵させて得られる酢又は麦芽酢を麦汁に添加することで麦汁のpHを4.2〜4.7に調整する工程、及びpH調整後の麦汁に炭酸ガスを溶解させる工程を含む、実質的にアルコールを含まないビール風味ノンアルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
麦汁がホップを含む麦汁である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
pH調整前の麦汁の糖度が2.5〜4.2重量%である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
ビールを酢酸発酵させて得られる酢又は麦芽酢と麦汁とを主成分として含み、かつ実質的にアルコールを含まないpH4.2〜4.7のビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項5】
麦汁がホップを含む麦汁である、請求項4に記載のビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項6】
麦芽に由来する成分、ホップに由来する成分、水及び炭酸ガス以外の成分を含まない、請求項5に記載のビール風味ノンアルコール飲料。
【請求項7】
糖度が2.3〜4.0重量%である、請求項4〜6のいずれか一項に記載のビール風味ノンアルコール飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールを実質的に含まない、ビール風味を有するノンアルコール飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の運転前、妊娠中、授乳中その他のアルコール飲料を摂ることができない場面においても、気軽にビールの風味を楽しみたいというニーズに対応して、数多くの低アルコールビール又はビール風味ノンアルコール飲料が開発され、販売されている。そうした新たな飲料における最も重要な課題の一つが、可能な限りビールに近い風味を飲料に持たせることである。
【0003】
ビールの製造は、糖化処理した麦汁にホップを加え、さらに酵母を加えてアルコール発酵させるという工程を経る。この発酵工程でアルコール及び様々な香味成分が生産されることで、ビールの風味が決定されるといわれている。実際に、糖化処理した麦汁にホップを加えただけの飲料は、ビールとは異なる風味を有する。そのため、アルコール発酵工程を経ない、ホップを含む麦汁の風味をビールに近づけるための、様々な工夫が報告されている。
【0004】
例えば、甘味料と酸味料と苦味料を含有する飲料にグルコン酸ナトリウムを含有させるノンアルコールビールテイスト飲料(特許文献1)、麦由来のエキス、水溶性食物繊維、ネオテーム、アセスルファムカリウム又はスクラロースを含有していることを特徴とするビールテイストノンアルコール飲料(特許文献2)、コラーゲンペプチド、炭酸ガス、イソα酸及び酸味料を含有するpH3以上4以下の実質的にノンアルコールのビールテイスト飲料(特許文献3)等が報告されている。
【0005】
しかし、従来のビール風味ノンアルコール飲料とその製造方法は、いずれも複数の添加物を使用するものであり、それらの配合量によって影響を受ける甘味、酸味、苦み、コク等の風味を構成する種々の要素のバランスを取ることが難しい。また、多くの添加物の使用は製造コストを高めるという問題を伴う。さらに、ビールの風味にできるだけ近づけるという課題に対しては、必ずしも満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−217706号公報
【特許文献2】特開2014−168464号公報
【特許文献3】特開2016−168039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ビールに近い風味を有するノンアルコール飲料及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ビールを酢酸発酵させて得られる酢又は麦芽酢を麦汁に添加することで前記課題を解決することができることを見出し、下記の各発明を完成させた。
【0009】
(1)ビールを酢酸発酵させて得られる酢又は麦芽酢を麦汁に添加することで麦汁のpHを4.2〜4.7に調整する工程、及びpH調整後の麦汁に炭酸ガスを溶解させる工程を含む、実質的にアルコールを含まないビール風味ノンアルコール飲料の製造方法。
(2)麦汁がホップを含む麦汁である、(1)に記載の製造方法。
(3)pH調整前の麦汁の糖度が2.5〜4.2重量%である、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)ビールを酢酸発酵させて得られる酢又は麦芽酢と麦汁とを主成分として含み、かつ実質的にアルコールを含まないpH4.2〜4.7のビール風味ノンアルコール飲料。
(5)麦汁がホップを含む麦汁である、(4)に記載のビール風味ノンアルコール飲料。
(6)麦芽に由来する成分、ホップに由来する成分、水及び炭酸ガス以外の成分を含まない、(5)に記載のビール風味ノンアルコール飲料。
(7)糖度が2.3〜4.0重量%である、(4)〜(6)のいずれか一項に記載のビール風味ノンアルコール飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ビールと殆ど変わらない風味を有するノンアルコール飲料を提供することができる。このような飲料は、法律上又は健康上その他の理由からアルコール飲料を摂ることができない場面においても、安心してビール風味を楽しむことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の態様は、ビールを酢酸発酵させて得られる酢又は麦芽酢を麦汁に添加することで麦汁のpHを4.2〜4.7に調整する工程を含む、実質的にアルコールを含まないビール風味ノンアルコール飲料の製造方法に関する。
【0012】
本発明は、ビールを酢酸発酵させて得られる酢又は麦芽酢を利用することを特徴とする。ビールを酢酸発酵させて得られる酢(以下、ビール酢と表す)は、酢の醸造に利用される酢酸菌をビールに加えて酢酸発酵させることで調製することができる。
【0013】
酢酸発酵に用いられるビールの種類には特に制限はなく、スタウト、ヴァイツェン、ケルシュ等のエールビール、ピルスナー、メルツェン、ドゥンケル等のラガービールのいずれでもよく、またこれらのいずれかを単独で又は混合して使用してもよい。本発明に利用されるビール酢の原料として好ましいビールは、スタウトビール及びエールビールである。特に、副原料を用いないオールモルトビールが好ましい。
【0014】
なお、日本の酒税法上ビールとは区別されている発泡酒及びいわゆる「第三のビール」も、本発明におけるビール酢の原料とすることができる。特に断らない限り、本発明における用語「ビール酢」におけるビールは、酒税法上の定義によることなく、酒税法上のビール、ビール風味の発泡酒及び第三のビールのいずれも包含するものとして定義される。
【0015】
ビールを原料とする酢酸発酵に用いられる酢酸菌は、米酢又は麦芽酢を製造する際に使用される一般的なアセトバクター・アセチ(A.aceti)等のアセトバクター属細菌であればよく、特別な微生物は必要としない。また、ビールを原料とする以外、酢酸発酵の諸条件は、米酢又は麦芽酢の製造における発酵条件に準じて設定すればよい。
【0016】
麦芽酢は、麦芽、特に大麦麦芽を糖化したものを原料として製造される酢であり、大麦黒酢、モルトビネガー等が知られている。麦芽酢は新たに発酵生産して使用してもよく、また市販されている麦芽酢を使用してもよい。好ましい麦芽酢は大麦麦芽を主原料としたモルトビネガーである。
【0017】
本発明における麦汁は、通常のビールの製造において調製される、ビール酵母を接種して発酵させる前の麦汁である。具体的には、粉砕した麦芽を糖化処理し、マイシェから固形物を除去することで得られる麦汁、又はこれにホップを加えて煮沸し、不溶性タンパク質等を除去することで得られる、ホップを含む麦汁である。麦芽は淡色麦芽、濃色麦芽又はそれらの混合物を使用してもよい。また、糖化処理はインフュージョン法又はデコクション法のいずれで行ってもよいが、デコクション法がより好ましい。
【0018】
ホップの添加量は、通常のビールの製造における使用量に準ずればよい。例えば、最終製品の苦味価(IBU)がピルスナービールと同等の15〜25程度となる量であればよく、あるいは個性を与えるために前記範囲以上のIBUとなる量を加えてもよい。なお、ホップは、後に説明するビール酢又は麦芽酢を麦汁に添加することで麦汁のpHを4.2〜4.7に調整する工程において、ビール酢又は麦芽酢と麦汁とを混合する際に加えてもよい。
【0019】
本発明における麦汁は、糖度が2.5〜4.2重量%であることが好ましい。ここにいう糖度は、溶液100g中の蔗糖の含有重量%を意味する、屈折糖度計を用いて測定することができる値であり、Brix値とも称される。
【0020】
糖度は最終産物であるビール風味ノンアルコール飲料における風味、特にコクやキレに影響を与え得る。ビールの製造における発酵前の麦汁の糖度は、通常10〜12重量%であるが、発酵工程を経ない本発明においては、麦汁の糖度は前記の範囲に調整される。その調整は、糖化処理の時間若しくは温度を適宜調節することで、又は麦汁を濃縮若しくは希釈することで行うことができる。
【0021】
本発明の第1の態様にかかる製造方法は、ビール酢又は麦芽酢を麦汁に添加することで麦汁のpHを4.2〜4.7に調整する工程を含む。本工程は、ビール酢又は麦芽酢と麦汁とを混合してpH4.2〜4.7の混合液を調製する工程と表すこともできる。使用する酢の酸度にもよるが、ビール酢又は麦芽酢と麦汁との混合比を5.5:1000〜7:1000の範囲で調節することで、混合液のpHを概ね4.2〜4.7とすることができる。特に、ビール酢と麦汁との混合が好ましい。なお、pHの微調整のために、風味に影響を与えない微量のpH調節剤を適宜加えることは差し支えない。
【0022】
本発明の第1の態様に係る製造方法は、上記混合液に炭酸ガスを溶解する工程を含む。炭酸ガスの溶解は、混合液を炭酸ガスで充填した適当な容器内でビール酢又は麦芽酢と麦汁とを混合する、またはビール酢又は麦芽酢と麦汁との混合液に炭酸ガスを通過させる等によって行うことができる。
【0023】
炭酸ガスを溶解させた混合液は、ビールの一般的な製造方法において使用されるろ過助剤、例えば黒曜石又は真珠岩を細かく砕いて粒子状にしたいわゆるパーライト(珪藻土)、セルロース及びシリカゲルを適宜配合したろ過助剤を用いてろ過することが好ましい。
【0024】
本発明の第1の態様に係る製造方法は、ビール酢若しくは麦芽酢又は麦汁を調製した後は、凍結しない限り低温下で、特に0℃〜−0.5℃で、混合、ろ過、炭酸ガスの溶解その他の作業を行うことが好ましい。また、ビール酢、麦芽酢又は麦汁の調整中又は調製後に澱等が発生したときは、適宜ろ過して取り除くことが好ましい。さらに、必要に応じて防腐剤その他の任意の添加剤を加えてもよい。最終的に得られる混合液は、殺菌処理され、適当な容器に詰めて製品とする。
【0025】
本発明の第1の態様に係る製造方法においては、風味の観点から、麦汁、麦を主原料とするビールを酢酸発酵させて得られる酢又は麦芽酢、ホップ及び炭酸ガスのみを原料とし、コーンスターチ等の副原料や防腐剤等の食品添加物を使用しないでノンアルコール飲料を製造することが好ましい。
【0026】
かくして、ビール酢又は麦芽酢と麦汁とを主成分として含み、かつ実質的にアルコールを含まないpH4.2〜4.7のビール風味ノンアルコール飲料が製造される。また、糖度は、麦汁の糖度2.5〜4.2重量%から2.3〜4.0重量%に低下する。ここで「実質的にアルコールを含まない」とは、アルコール濃度が0.05%以下、特に0.001%以下であることを意味する。係る濃度であれば、法律上又は健康上の理由からアルコール飲料を摂ることができない場面においても、安心して当該飲料を楽しむことができる。
【0027】
本発明の第2の態様は、ビール酢又は麦芽酢と麦汁とを主成分として含み、かつ実質的にアルコールを含まないpH4.2〜4.7のビール風味ノンアルコール飲料に関する。その糖度は2.3〜4.0重量%であることが好ましい。ここで、各用語の意義は、前記第1の態様において説明したとおりである。本発明の第2の態様に係る飲料は、典型的には本発明の第1の態様にかかる方法によって製造することができる。
【0028】
また、本発明の第2の態様にかかる飲料は、麦汁又はホップを含む麦汁をアルコール発酵させ、さらに酢酸菌を加えて酢酸発酵させることで、麦汁と麦芽酢とを主成分として含む混合液に相当するものを調製し、これに炭酸ガスを溶解する方法によって製造することもできる。この方法において、麦汁の組成、アルコール発酵及び酢酸発酵の度合い等を適宜調節することで、炭酸ガス溶解前の混合液のpHを4.2〜4.7に、及び糖度を2.3〜4.0重量%に調節することが好ましい。
【0029】
本発明の第2の態様に係る飲料は、外観は原料とする麦汁に応じて淡褐色〜濃褐色であり得る。また、試験例において示すように、淡褐色の麦汁を原料としたときの風味は、通常のピルスナービールと殆ど代わらない。
【0030】
また、本発明の第2の態様にかかる飲料は、麦汁、麦を主原料とするビールを酢酸発酵させて得られる酢又は麦芽酢、ホップ及び炭酸ガスのみを原料とするものであることで、最もビールに近い風味を有する飲料となる。したがって、本発明の第2の態様にかかる飲料は、麦芽に由来する成分、ホップに由来する成分、水及び炭酸ガス以外の成分を実質的に含まないビール風味ノンアルコール飲料であることが好ましい。
【0031】
ここで、「麦芽に由来する成分、ホップに由来する成分、水及び炭酸ガス以外の成分を実質的に含まない」とは、飲料中の麦芽に由来する成分、ホップに由来する成分、水及び炭酸ガス以外の成分の含有量が5重量%未満であること、好ましくは1重量%未満であることを意味する。特に、オールモルトビールを元に製造されるビール酢と、麦100%の麦汁、ホップ及び水とを原料として製造される本発明のビール風味ノンアルコール飲料は、ドイツにおけるいわゆる「ビール純粋法」が規定する「ビールは麦芽、ホップ及び水飲みを原料とする」との要件にも適う飲料となる。
【0032】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0033】
1)ホップを含む麦汁の調製
仕込釜(煮沸釜)に粉砕した大麦麦芽4.5kgと50℃の温水67Lを加えて1℃/分で昇温させた。50分後に煮立ち始めてから、さらに20分間保持した。一方、仕込釜が煮立ち始まるタイミングで仕込槽(糖化釜)に粉砕した大麦麦芽40.5kgと50℃の温水113Lを加えて20分間穏やかに撹拌することで蛋白休止を行った。加熱終了後のマイシェを蛋白休止が終了したマイシェがある仕込槽へ移動させ、おおよそ65℃となった混合マイシェを60分間穏やかに撹拌する事で糖化を行った。糖化終了後のマイシェをろ過槽へ移動させて麦汁ろ過を施してろ液(以後「麦汁」と表す)を回収し、ホップを適量加えて90分間煮沸した。煮沸後の麦汁に湯を添加して糖度を3.0重量%に調整後ワールプールへ移し、熱で凝固したタンパク質及びホップ粕を沈殿させた。上清であるホップを含む麦汁を、無菌状態下、プレートクーラーで冷却しながら、あらかじめ食添用二酸化炭素にて内部をガス置換・ガス加圧を施した閉鎖型1250L容貯蔵タンクに移送した。
【0034】
2)ビール酢の調製
スタウトビール:エールビール=4:3(容積比)の混合液25Lを70℃で30分間加熱することで、炭酸が除去された酢醸造用の培養液を得た。ここに酢酸菌(種菌)を接種し、30〜34℃で3週間保持して酢酸発酵を行った。発酵終了後、火入れ殺菌を行い、さらにろ過してろ液を回収することで、ビール酢を調製した。このビール酢の酸度は4.0であった。
【0035】
3)ビール風味飲料の調製
1)のホップを含む麦汁1000Lに対し、2)のビール酢7000mLを添加し、混合して飲料原液とした。その後容器内へ更に食添用二酸化炭素を適宜加圧充填して、飲料原液へ炭酸ガスを溶け込ませた後、パーライトをフィルターとしたろ過装置を用いて飲料原液をろ過し、さらに最終的な二酸化炭素溶存量を調整して、pH4.2、アルコール濃度0.00%、糖度2.9重量%のビール風味ノンアルコール飲料(実施例1)を製造した。
【0036】
また、麦汁の糖度又はビール酢添加量を変更して、表1に示すpH及び糖度を持つビール風味ノンアルコール飲料(実施例2〜4)及び比較例の飲料(比較例1〜3)を製造した。なお、比較例2の飲料は、酢を添加しない麦汁に炭酸ガスを溶解させたものに相当する。
【表1】
【0037】
さらに、2)のビール酢に代えて、大麦麦芽を原料とした麦芽酢(ハインツ社、酸度5.0)を使用してビール風味ノンアルコール飲料(実施例5)を、穀物酢(ミツカン社、酸度4.2)又は白ワインビネガー(ミツカン社、酸度5.0)を使用して飲料(比較例4及び5)を製造した。いずれの飲料も実施例1と同様に、pHは4.2、アルコール濃度は0.00%、糖度は2.9重量%であった。
【0038】
<試験例>
官能試験1 糖度を変えたビール風味ノンアルコール飲料の評価
実施例1〜3のビール風味ノンアルコール飲料、比較例1の飲料、及び通常の方法で製造したピルスナービールについて、12名のパネラーによって、下記の表中に示す項目について、ピルスナービールの点数を3.0点とした場合の相対比較評価を行った。結果を表2に示す。
【表2】
【0039】
実施例1〜3の飲料は、ピルスナービールと比較して良好な評価を受けた。一方、糖度2.0重量%の比較例1の飲料は、特に麦芽風味及びボディの項目でピルスナービールより劣っていた。
【0040】
官能試験2 pHを変えたビール風味ノンアルコール飲料の評価
実施例1及び4のビール風味ノンアルコール飲料、比較例2及び3の飲料、並びに通常の方法で製造したピルスナービールについて、12名のパネラーによって、下記の表中に示す項目について、ピルスナービールの点数を3.0点とした場合の相対比較評価を行った。結果を表3に示す。
【表3】
【0041】
実施例1及び4の飲料は、ピルスナービールと比較して良好な評価を受けた。一方、pH6.0の比較例2の飲料は麦芽風味以外の全ての評価項目で、pH4.0の比較例3の飲料は特に麦芽風味についてピルスナービールより劣っていた。
【0042】
官能試験3 酢の種類を変えたビール風味ノンアルコール飲料の評価
実施例1のビール風味ノンアルコール飲料、麦芽酢を用いた実施例5のビール風味ノンアルコール飲料、穀物酢又は白ワインビネガーを用いた比較例4及び5の飲料について、12名のパネラーによって、酸味の質の相対比較評価を行った。結果を表4に示す。
【表4】
【0043】
実施例1及び5のビール風味ノンアルコール飲料は酸味の質がビールに比較的近いことが確認された一方、比較例4び5の飲料はいずれもビール風味と呼ぶことのできない、全く異なる風味を示すことが確認された。