(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832612
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ヘアスタイリング装置
(51)【国際特許分類】
A45D 1/04 20060101AFI20210215BHJP
A45D 2/04 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
A45D1/04 C
A45D2/04
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-144342(P2014-144342)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2015-20068(P2015-20068A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2017年7月14日
【審判番号】不服2019-9733(P2019-9733/J1)
【審判請求日】2019年7月23日
(31)【優先権主張番号】20 2013 103 275.1
(32)【優先日】2013年7月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501173793
【氏名又は名称】ダブリュアイケー ファー イースト エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コック, マーヴィン
【合議体】
【審判長】
佐々木 芳枝
【審判官】
窪田 治彦
【審判官】
堀川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−160247(JP,A)
【文献】
特開2013−106697(JP,A)
【文献】
特開昭61−240903(JP,A)
【文献】
特表2009−539417(JP,A)
【文献】
実開平2−25901(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3164998(JP,U)
【文献】
実開昭59−5104(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D1/04,2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛束を収容および成形するために蝶番式に互いに対して動かせる第1のアームおよび第2のアームを備えたヘアスタイリング装置であって、
前記第1のアームおよび前記第2のアームのそれぞれが、ヘアスタイリング時に他方のアームに向かい合う面に加熱成形プレートを有し、
前記加熱成形プレートのそれぞれが、ヘアスタイリング工程で加熱され且つスタイリングされている毛束と接触する成形面を有し、前記加熱成形プレートの前記成形面が、前記ヘアスタイリング装置の閉位置において、反対側のアームの加熱成形プレートの少なくとも1つの成形面と実質的に平行であり、前記スタイリングされている毛束がヘアスタイリング工程において引っ張られて前記成形面を通り過ぎる、成形面であり、
前記第1のアームが、カールする毛束が前記第2のアームが閉じられる前に少なくとも2点で支持されるように、前記加熱成形プレートを担持する側から離間して非加熱毛髪支持部を有し、前記2点が前記第1のアームと前記非加熱毛髪支持部の一部であり、
毛束を前記加熱成形プレート上に引き下げる前記非加熱毛髪支持部が搭載された前記第1のアームの前記加熱成形プレートの前記成形面と、前記非加熱毛髪支持部との間のアーム収容部内に、前記第2のアームが導入されるように、前記非加熱毛髪支持部が前記第1のアームの前記成形面から離間しており、
前記第1のアームおよび前記第2のアームの前記加熱成形プレートが、ハサミのように互いに対して動かすことができ、前記加熱成形プレートの前記成形面が、前記第1のアームおよび前記第2のアームの移動経路に対して傾斜配向を有し、
前記アーム収容部の断面がV字状であり、前記アーム収容部の脚部が前記成形面を備えており、それぞれ前記アーム収容部の各頂部の前記第2のアームに対向する端部が、それぞれ前記アーム収容部に関して対向して位置する前記頂部の非加熱毛髪支持部を形成しており、前記第1のアームには、前記第2のアームの前記成形面を補完するように具現化された2つの傾斜した前記成形面が搭載され、
前記アーム収容部を備えた前記第1のアームの前記成形面が、前記アーム収容部の2つの頂部によって隔離された2つの加熱成形プレートの前記成形面であり、
前記非加熱毛髪支持部が搭載された前記第1のアームに対して動かすことができる前記第2のアームが、前記毛束をカール状またはウェーブ状に成形するのに適するように形成された冷却表面を、前記アーム収容部のV字状の断面の頂点に対して反対側にある前記第2のアームの面に備えている、ヘアスタイリング装置。
【請求項2】
前記第1のアームおよび前記第2のアームの前記成形面の平面が、前記第1のアームおよび前記第2のアームの移動平面(E)に対して、前記第1のアームおよび前記第2のアームの蝶番式の動きのために傾けられていることを特徴とする、請求項1に記載のヘアスタイリング装置。
【請求項3】
前記第1のアームおよび前記第2のアームの前記成形面の、前記第1のアームおよび前記第2のアームの前記移動平面(E)に対する傾斜角度が、互いに対して、最大20°で傾いていることを特徴とする、請求項2に記載のヘアスタイリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアスタイリング装置に関する。このヘアスタイリング装置は、毛束を収容および成形するために関節式に互いに対して調節可能な2本のアームを備えており、それぞれのアームの毛髪成形時に他方のアームに対向する面には、毛髪成形工程のために成形対象の毛束と接触する成形面を備えた成形プレートが搭載されており、これらの成形面に沿って成形対象の毛髪が引っ張られる。
【背景技術】
【0002】
カールヘアまたはウェーブヘアは、いわゆるヘアアイロン(ストレートアイロン)を用いても成形することができる。このような、通常は毛髪のストレート化に使用されるヘアスタイリング装置は、関節式にペンチのように互いに対して調節可能な2本のアームを有している。これらのアームのそれぞれには、それぞれ他方のアームに対向する面に成形プレートが搭載されている。典型的には両方の成形プレートが加熱されるが、成形プレートを加熱するために、1つもしくは複数の電気加熱素子、典型的にはPTC加熱素子および/または熱気流が使用される。成形プレートの間には、アームが関節式に配置されていることにより開口または閉鎖することができる毛髪成形隙間が設けられている。成形プレートの毛髪成形隙間に対向する面には、平らな表面が具備されている。毛髪をストレート化するために、この毛髪が閉鎖された毛髪成形隙間を通って引っ張られる。毛髪に加えられる熱によって、ストレート化過程が促進される。この種のヘアスタイリング装置は、カールまたはウェーブを成形するためにも用いられる。これが可能であるのは、このようなヘアスタイリング装置のアームが断面ほぼ半円形状または半楕円形状に具現化されており、加熱された毛髪を閉鎖されたアームの外面に巻き付けることができるからである。このような用途では、このようなストレートアイロンがカールアイロンのように使用される。アームの外面はその際、成形体として機能する。
【0003】
ヘアスタイリング装置の両アームが関節式に互いに接続していることにより、成形面が互いに対向して一列に配置された状態のままで、これらのアームを互いに対して調節することができる。アームの調節によって成形面が互いから離間するように動かされると、互いに対向する成形プレートの間に毛束を収容することができる。続いて、アームがその閉鎖位置に移動され、この位置で、成形面を備えた成形プレートが成形面間に挟み込まれた毛束に作用する。毛束をカールまたはウェーブさせるために、この毛束をアームの外面を利用して毛髪成形隙間を通して引っ張らなければならない。このためには、毛束を挟み込んだ後、ヘアスタイリング装置を、所望の形を作るために成形体としてのその外面に沿って毛束を導くべき方向に、少なくとも90°、しかし大抵の場合は120°を超えて回転させる必要がある。
【0004】
この種のヘアスタイリング装置において、毛束を掴んだ後に、毛束が導いて通される回転方向に関わらずカールまたはウェーブとしての毛髪成形を行えるように、両アームの外面を成形体として構想し得るとしても、このヘアスタイリング装置には、その回転方向に応じてカールまたはウェーブの回転方向が異なるという欠点がある。典型的には、多数の毛束のカールまたはウェーブは同じ方向に回転しているのが望ましい。さらに困難なことに、このようなヘアスタイリング装置の取扱いでは、自己施術の際に毛束の収容およびヘアスタイリング装置の回転が鏡の前で行われるので、自らの動きを鏡を介して鏡面反転にしか見ることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上述の従来技術に基づいて、本発明の基礎となる課題は、とりわけカールまたはウェーブの回転方向に関して同じ方向に毛髪成形が行われるという点で、カールまたはウェーブを成形するためのヘアスタイリング装置の取扱いが可能になるように、冒頭で挙げたヘアスタイリング装置を発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題が冒頭で挙げた汎用のヘアスタイリング装置によって解決される。この装置では、両アームのうちの一方が、成形プレートが搭載された面に毛髪支持部を備えている。毛髪支持部と毛髪支持部が搭載されたアームの成形プレートの成形面との間のアーム収容部に他方のアームを導入できるように、また、毛髪成形のために協働する両アームの成形プレートをハサミのように互いに対して調節できるように、毛髪支持部がこの一方のアームの成形面から距離をおいて配置されている。
【0007】
既知のこの種のヘアスタイリング装置とは異なり、このヘアスタイリング装置では、両アームがハサミのように互いに対して調節可能である。つまり、両アームを、成形面の平面上で、または少なくともこの平面上に位置するベクトルの大部分を用いて、互いに対して調節する。その限りでは、このアームの旋回軸は、従来技術のヘアスタイリング装置においてのようには成形面の平面上には位置しておらず、この平面に対して特に70°より大きい角度で傾斜している。さらに、両アームのうちの一方に、毛髪支持部が搭載されるように構成されている。この毛髪支持部は、成形プレートが搭載されたアームの面から間隔を空けており、しかもその距離が、他方のアームが毛髪支持部と毛髪支持部が搭載されたアームとの間に嵌め込まれるほどの大きさである。毛髪支持部は典型的に平行に、少なくともこのアームの成形プレートの縦方向の延在部分にわたって延在している。このヘアスタイリング装置の両アームの互いに対する前述のハサミ様の調節性により、毛髪支持部が搭載されていないアームを、このアームの成形面が他方のアームの成形面に隣接すると、その使用位置から旋回させることができる。少なくとも毛髪支持部上に、および毛髪支持部から間隔を空けて配置された毛髪支持部が搭載されたアームの面上に、毛束を支持できる程度の旋回性が与えられている。その場合、毛束が2点で支持される。ここで、毛髪支持部が搭載された第1のアームに対して旋回された他方の第2のアームがその使用位置に旋回して戻されると、前述の支持された配置にある毛束が、閉鎖する毛髪成形隙間内にこのアームと共に引き込まれる。この過程の際に、毛髪成形隙間を閉鎖するアームの外面に毛束が自動的に当接される。このヘアスタイリング装置のアームが、先に引き込まれた毛束と共に閉鎖されると、毛束がアームの外面に設けられた当接部に位置するので、成形対象の毛髪を成形体として機能するアームの外面に当接させるためにヘアスタイリング装置を回転させる必要がもはやなくなる。その結果、取扱いが容易になるが、このことは毛髪成形を行う人が自らの毛髪を成形し、この目的のために鏡で自身を見なければならない場合にとりわけ顕著になる。
【0008】
特に実用的な構成では、両アームの成形プレートの成形面の平面が、それらのアームの移動平面に対して傾けられている。成形面の平面をより大きい傾斜角度で配置すれば、アームの成形体として機能する外面上での成形対象の毛束の当接が、より僅かな角度にわたってのみ延在するようになる。典型的には、使用者はアームの外面を可能な限り成形輪郭として利用しようと努める。
【0009】
毛髪支持部が搭載されていないアームの外面は、相応に形成されているか、または相応の要素を備えており、これらの要素の上を引っ張られる、先に成形プレート間で加熱された毛束を、これらの要素に沿ってまたはこれを用いて所望の形にすることができるものと理解される。成形のために使用されるアームの外面に、互いから距離をおいて、およびこのアームのハウジングの外側端部から距離をおいて配置され、アームの縦方向の延在部分に延在する複数の成形体が搭載されていれば、前述のヘアスタイリング装置を用いて特に効果的な毛髪成形を達成することができる。このような構成を用いて実行することができる毛髪成形方法では、まずは成形対象の毛髪が、毛髪ケラチン鎖が含む硫黄架橋の少なくとも大部分が分解されるまで加熱され、続いて、加熱された毛髪を、互いから距離をおいて配置された複数の成形体に沿って接触させながら引っ張ることによって毛髪成形が実行され、毛髪が少なくとも第1の成形体との接触の際にはまだ、硫黄架橋の少なくとも大部分がまだ再結合されない温度を有している。この場合、成形体に沿って引っ張られる毛髪の移動経路が湾曲経路に相当するように、またはそれに近似するように、成形体が互いに対して配置されており、毛髪が最後の毛髪成形体から離れる前に、分解された硫黄架橋の少なくとも大部分が既に再び新たに結合される温度にまで毛髪が冷却される。
【0010】
この方法では、ケラチン鎖に含まれる、タンパク質ストランドを互いに結合させる硫黄架橋の少なくとも大部分が分解される程度にまで毛髪が加熱される。この毛髪の状態で、毛髪を成形、保持、続いて冷却することにより、変更された髪型が「凍結」される。これは、まだ成形過程の間に、およびよって毛髪施術の間に硫黄架橋が新たに形成され、したがってタンパク質ストランドを毛髪の形に応じて新たに結合することによって達成される。カールまたはウェーブをかけられる毛髪は成形体に沿って引っ張られるので、また、毛髪が引張方向における最後の成形体との接触から離れる際には、少なくとも大多数の硫黄架橋が再び形成される温度にまで毛髪が既に冷却されるように構成されているので、毛髪がその成形後にいわば焼き入れされる。その際、毛髪を周囲温度にまで冷却する必要はない。むしろ、硫黄架橋が新たに結合する温度までの冷却だけで、従来の方法と比べてより持続的な毛髪成形を実現するのに全く十分であることが驚くべきことに確認された。前述の結果が驚くべきであるのは、優勢な定説が、所望のカールまたはウェーブを得るために、例えばカーラーまたはカールアイロン上に保持されたカールを大幅により低い温度レベルにまで冷却することを必要とみなすことに基づいているからである。毛髪成形のために使用されるヘアスタイリング装置においての急速冷却自体によって、取扱いの際に必要な引張工程によって毛髪が新たに引張荷重にさらされる前に、少なくとも大部分の硫黄架橋が形の凍結のために既に再び形成されるようになる。そのため、成形された毛髪に対するこの不可避の引張応力は、成形された毛髪に対して重要な影響を与えない。
【0011】
成形された毛髪の急速冷却を可能にするために、成形体は、成形体に沿って接触しながら引っ張られる毛髪の移動経路に対して、互いから間隔を空けている。これによって、毛髪が通過した湾曲経路に対して径方向に外側へ、および成形体の間の空間において内側へ、成形体が搭載されたアームへ向かう方向においても、毛髪からの熱放射が可能になる。その限りでは、成形体が、加熱された毛髪がその上を引っ張られる支持部を形成する。その限りでは、毛髪は支持部として機能する成形体の間に自由に垂れ下がっており、成形体の表面には当接していない。毛髪成形隙間の始点を起点として最後の成形体との接触から離れるまでの毛髪の経路は、湾曲経路を示している。湾曲経路の構成に応じて、つまり、成形体の互いに対する配置に応じて、より大きいカールまたはより小さいカールを成形することができる。また、湾曲経路は、設けられる成形体の数によっても影響される。成形対象の毛髪が成形体に沿って接触しながら引っ張られることによって、この毛髪が、少なくとも大部分の硫黄架橋がこの形の固定のために再び結合する程度に冷却過程が進行するまで、所望の形で漸進的に引っ張られた状態で保持される。
【0012】
前述の方法を実行するためのヘアスタイリング装置の設計の簡単な一形態では、加熱された毛髪が毛髪成形隙間から出てくる側の、成形プレートに隣接するアームの縁部を、成形体として使用してもよい。この縁部は、実用的には丸められている。その場合、前述の方法で毛髪を導いてアームのハウジングから距離をおいて保持するために、たった1つの追加の成形体が必要になる。しかし、実用的には、湾曲経路をより良好により長く形成するために、複数の、典型的には3から5つの成形体が使用される。その際、アームの前述の縁部が同様に成形体として前述の意味で使用されるようにもちろん構成することができる。
【0013】
好適には、毛髪が最後の成形体から離れる際に、少なくとも10℃、好適には15℃を超え20℃まで、毛髪のケラチン鎖に含まれている硫黄架橋が分解される温度よりも低い温度で毛髪の冷却が行われるようにこの方法が実施される。これを成形対象の毛髪の質に応じて、毛髪の質に適合した加熱を介して、および/またはヘアスタイリング装置が毛髪を通るように動かされる引張速度を介して制御することができる。アームの両方の成形プレート間の毛髪成形隙間に位置する毛髪に加えられる圧力を介しても、方法の運用に影響を与えることができる。
【0014】
冷却を促進するために、気流を使用することができる。
【0015】
特に効果的な毛髪の冷却では、成形体が点状にのみ支持されており、したがって、成形体のアームに対向する面には自由空間が存在している。これにより、その方向に熱を放出可能な成形体を介しての毛髪の冷却が実現されるだけでなく、とりわけ、ヘアスタイリング装置のこのアームの周りに導かれた毛髪またはヘアスタイリング装置のこのアームの周りに導かれた毛束とハウジング外面との間の領域においての空気交換もまた実現される。毛髪と成形体が搭載されたアームの外面との間の乱気流およびそれに伴う空気交換は、既に引張工程によってもたらされ、この乱気流によって、毛髪から放出される熱が除去されて冷たい周囲空気が供給される。
【0016】
一実施例によれば、成形体がロッドとして具現化されている。
【0017】
毛髪の引張方向において、とりわけ成形体のアームに対向する面が自由空間に隣接している場合、成形体が異なる断面形状を備えるようにすることが原理的に可能である。したがって、例えば、少なくとも最後に毛髪と接触する成形体がより大きい毛髪との接触面を有することにより、熱除去によって最後の温度低下をもたらすことができる。このような成形体は、例えば1つまたは複数の冷却リブのように、比較的より大きい熱放出表面をも有していることが実用的である。
【0018】
典型的には、毛髪が第1の成形体の上を接触しながら導かれる際に、硫黄架橋がケラチン鎖の再構成のために成形に対応して再び結合する温度を下回る程には、毛髪がまだ冷却されないように、少なくとも1つまたは複数の第1の成形体が形成され配置されている。
【0019】
以下では本発明を、実施例に基づいて添付図面を参照しながら説明する。これらの実施例から、本発明のさらなる利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来技術によるヘアスタイリング装置のアームの関節式の調節性を示す概略図。
【
図2】本発明によるヘアスタイリング装置のアームの調節性を示す概略図。
【
図3】成形対象の毛束を収容するための開口位置にある
図2のヘアスタイリング装置の図。
【
図4】毛髪成形工程の際に毛束を収容した
図3のヘアスタイリング装置の図。
【
図5】別の構成による本発明によるヘアスタイリング装置の図。
【
図6】さらに別の構成による本発明によるヘアスタイリング装置の図。
【
図7】
図6のヘアスタイリング装置のアームの側面図。
【
図8】別の構成における本発明によるヘアスタイリング装置の斜視図。
【
図9】ヘアスタイリング装置のアームのアーム収容部内を見た、一視点からの
図8のヘアスタイリング装置の図。
【
図10】アームが閉鎖された
図8および
図9のヘアスタイリング装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、従来技術による、いわゆるストレートアイロンとして具現化されたヘアスタイリング装置は、2本のアーム1、1.1を有している。アームの互いに対向する面には、それぞれ成形プレート2、2.1が設けられている。これらの成形プレート2、2.1が加熱される。加熱された成形プレートに沿って引っ張られることによって加熱される毛束を収容するために、両アーム1、1.1は、
図1の左側にブロック矢印で示されているように、ペンチのように互いに対して調節可能である。このヘアスタイリング装置の両アーム1、1.1の
図1の右側に示された開口位置では、毛束が成形プレート2、2.1の間に位置する開口された毛髪成形隙間内に挟み込まれる。続いて、アーム1、1.1が毛髪成形過程を実行するために閉鎖される。両アームの関節式の互いとの結合の旋回軸は、成形プレート2、2.1によってもたらされる成形面の平面上に位置している。この旋回軸が、図中に符号Sで示されている。
【0022】
本発明によるヘアスタイリング装置3は、同様に2本のアーム4、4.1を有しており、それぞれのアームが1つまたは複数の加熱素子によって加熱される成形プレート5、5.1を備えている。閉鎖位置において、このヘアスタイリング装置3は、成形プレート5、5.1の互いに対向する平行な成形面の隣接の点では、従来技術によるヘアスタイリング装置の閉鎖位置と異なっていない。ヘアスタイリング装置3は、とりわけ両アーム4、4.1の関節式の結合の点で既知のヘアスタイリング装置と異なっている。ヘアスタイリング装置3では、アーム4、4.1がハサミのように関節式に互いに対して調節可能である。つまり、両アーム4、4.1を、毛髪成形隙間を開口および閉鎖するためにハサミの動作のように調節することができる。したがって、両アームが互いに対して調節される移動平面は、成形プレート5、5.1の成形面の平面に交差して、または基本的に交差して位置している。図示の実施例では、成形プレート5、5.1の成形面が移動経路Eの平面に対して傾いており、しかもその傾斜角度が約10°である。旋回軸は
図2の右側に同様に符号Sで示されている。互いに対する両アーム4、4.1の関節式の調節性は、ヘアスタイリング装置3の閉鎖位置(
図2の左側参照)と開口位置(
図2の右側参照)との比較によって特に明確になる。アーム4、4.1の移動経路Eに対する成形プレート5、5.1の成形面の傾いた配向によって、毛髪成形隙間をこの傾斜に対応して開口および閉鎖することができる。また、これにより、成形プレート5、5.1の間の毛髪成形隙間内に挟み込まれた毛束にある一定の圧力を加えることが可能になる。
【0023】
アーム4には、バーとして具現化された毛髪支持部6が搭載されている。毛髪支持部6は、図示の実施例では金属棒である。毛髪支持部6は、ブラケット7を介してヘアスタイリング装置3のアーム4に接続されている。その限りでは、支持するブラケット7およびアーム4と共に毛髪支持部6によってアーム収容部8が形成される。アーム収容部8は、アーム4.1をヘアスタイリング装置の閉鎖位置において収容するために使用される。この理由から、毛髪支持部6とアーム4との間の間隔は相応に大きい。ヘアスタイリング装置の取扱性を損なわないように、通常、この間隔は、アーム4.1を嵌め込むために実際に必要であるよりもほんの僅かに大きく選定される。毛髪支持部6は、成形プレート5の縦方向の延在部分に平行に、さらにその長さにわたって延在している。
図2に示されたヘアスタイリング装置3の位置では、毛髪支持部6の上縁が、同じ方向に向けられたアーム4の上端とほぼ同じ平面上に位置している。
【0024】
図3は、成形対象の毛束9の収容工程の際の開口位置におけるヘアスタイリング装置3の概略図である。この開口位置では、毛髪支持部6の上面およびアーム4のハウジングの他方のアーム4.1に対向する面が、それぞれ毛束9のための支持部を形成している。したがって、ブラケット7によって縁取られたアーム収容部8に、毛束9が2点支持によって架け渡されている。頭部自体は、
図3内に符号10で示されている。
【0025】
ここで、成形過程を実行するために、ヘアスタイリング装置3を閉鎖すれば、アーム4.1がアーム4に対する旋回軸S周りの自身の旋回によって、アーム収容部8に導入される。この移動と共に毛束9もまたアーム収容部8内に引き込まれて、この過程の際に、アーム4.1の外面11周りに、または外面11の一部分に巻き付く。アーム4.1の外面11は、その上で毛髪成形を行えるように構成されており、したがって、成形体として形成されているか、またはこの目的のために外面11には1つもしくは複数の成形体が搭載されている。
【0026】
図4に示すように、成形プレート5、5.1の間に位置する毛髪成形隙間が閉鎖されると、毛束をヘアスタイリング装置3の毛髪成形隙間を通して相応に引っ張ることによって、および加熱された毛束9がアーム4.1の外面11に沿って自動的に引っ張られることによって、毛髪成形過程を行うことができる。
【0027】
有利には、本明細書の導入部で説明した方法が、持続的な毛髪成形を目的として実行されるように、ヘアスタイリング装置3の温度管理が実施される。図示の実施例では、とりわけ、下方に向けられた、成形プレート5.1と平行に延在するアーム4.1のハウジングの縁部が成形体として機能する。この方法では、毛髪ケラチン鎖内の硫黄架橋がアーム4の外側の成形に対応して新たに結合されるまで、毛束9がアーム4.1の外面11から離れないことが重要である。外面に沿って毛束9が引っ張られることによって、アーム4.1の外面11と接触する内面より、外面においてより大きい引張応力が支配するので、毛髪ケラチン鎖がその硫黄架橋を用いて相応に結合することにより、ウェーブまたはカールが特に長持ちする。
【0028】
冷却過程を促進するために、
図5に示す別の構成による本発明によるヘアスタイリング装置3.1は、冷却体12を有している。
図5に示す実施例では、冷却体12が、毛髪支持部6.1が搭載されていないヘアスタイリング装置3.1のアーム13に配置されている。毛髪支持部6.1が搭載されたアームは符号13.1で識別されている。冷却体12は金属片であり、毛髪成形隙間から加熱されて導出される毛髪がこの金属片に沿って引っ張られる。冷却体12上での冷却は、
図2から
図4の実施例に関して説明されるようなアーム13の外面上のみの冷却よりも急速に行われる。
【0029】
図6および
図7は、さらに、本発明によるヘアスタイリング装置3.2の別の実施例を示している。このヘアスタイリング装置のアーム14には、ヘアスタイリング装置3.1のアーム13とは異なり、その外面に複数の冷却体、この場合は3つの冷却体15、15.1、15.2が搭載されている。冷却体15、15.1、15.2は金属ロッドとして構想されており、それぞれの端部がアーチ部16内に保持されている。上面図のため、冷却体15のアーチ部16のみがその引用符号で識別されている。冷却体12と同様に、冷却体15、15.1、15.2は、それぞれのアーム13または14の外面と平行な縦方向の延在部分において、および少なくともアーム13または14の成形プレートの縦方向の延在部分にわたる長さにおいて延在している。冷却体15、15.1、15.2は互いに対して間隔をおいて、さらにアーム14の表面17から間隔をおいて配置されている。そうすれば、
図4の図示内容に対応して冷却体15、15.1、15.2の外側の頂部上を超えて引っ張られる毛束は、熱を径方向に外側にだけでなく表面17の方向に内側へも放出することができる。これによって、特に効果的な冷却がもたらされる。
図7は、ヘアスタイリング装置3.2のアーム14の側面図である。
図7より、冷却体15、15.1の縦方向の延在部分がはっきりと分かる。
【0030】
ヘアスタイリング装置3.1および3.2の実施例は、前述の特別な毛髪成形方法の実行に特に適している。この方法によれば、ケラチン鎖を結合する硫黄架橋およびそれとともに存在する水素架橋および塩橋が加熱によって分解される温度にまで、成形対象の毛束が加熱され、またこの方法によれば、少なくとも硫黄架橋が新たに結合される温度にまで毛束が冷却されるまで毛束が冷却体または冷却体配列から離れない。しかし好適には、水素架橋および塩橋も既に新たに結合される程度にまで毛束が冷却されてから、毛束が冷却体配列の冷却体または最後の冷却体から離れる。
【0031】
図8は、別のヘアスタイリング装置3.3の斜視図であり、このヘアスタイリング装置は、先行する実施例において説明したヘアスタイリング装置3、3.1、3.2と同じ原理に従って機能する。ヘアスタイリング装置3.3は、両面が作用するように設計されている点で、前述のヘアスタイリング装置の発展形を示している。ヘアスタイリング装置3.3は同様に、関節式に互いに対して調節可能な2本のアーム18、18.1を有している。
図8の図示内容では、アーム18、18.1が開口されたヘアスタイリング装置3.3が示されている。アーム18はアーム収容部19を有している。
図9からの方が分かりやすいが、アーム収容部19はV字状に形成されている。アーム収容部19は両面が縁取りされており、したがって、アーム収容部19の頂部がそれぞれ成形面20、20.1によって縁取りされている。成形面20、20.1は、それぞれ、毛髪成形に利用される表面、各成形プレート21、21.1である。成形プレート21、21.1の少なくとも一方が、ヘアスタイリング装置3の運用の際に加熱される。アーム収容部19の頂部の領域では成形プレート21、21.1が互いから間隔を空けている。頂部のこの間隔領域には、一列に配置された、アーム収容部19の縦方向の延在部分に沿った複数の貫通部22が配置されている。貫通部22はアーム18を通過して延びている。
【0032】
アーム18.1には補完的な成形面23が搭載されており、
図9では成形面20を補完する成形面23のみを見ることができる。アーム18.1の
図9では見られない面には、成形面20.1を補完する成形面も位置している。アーム18.1の両方の成形面23は、頂部24を形成することによって形成される半径を介して互いに面一に移行する。成形面20、20.1および23は、アーム18、18.1が閉鎖される際に互いに接触するように配置されている。ヘアスタイリング装置3.3の使用時には、成形面20、20.1、23の間に成形対象の毛束が位置する。ヘアスタイリング装置3、3.1、3.2の場合と同様に、一方のアーム、すなわちアーム18の成形面20、20.1が、他方のアーム、すなわちアーム18.1の成形面に対して、ハサミのように互いに対して動かされる。この目的のため、成形面23と同様に成形面20、20.1は、両アーム18、18.1の旋回軸に対し互いに対して傾いており、しかも、ヘアスタイリング装置3、3.1、3.2の先行する実施例に関して説明したのと同様に傾いている。
【0033】
図9のヘアスタイリング装置3.3の図示内容から明らかであるように、成形プレート20または20.1が搭載されたアーム部分26、26.1のそれぞれの上端25、25.1が、それぞれの他方のアーム部分26.1または26のための毛髪支持部を形成することにより、先行する実施例に関して既に説明したのと同様の方法で、毛束をアーム収容部19内に導入することができる。
【0034】
図10は、アーム18、18.1が閉鎖されたヘアスタイリング装置3.3を示している。両アーム18、18.1のこの位置は、毛髪成形位置を形成する。アーム収容部19には、成形面23を備えたアーム18.1が導入されている。アーム18.1の成形面23は、アーム18の成形プレート21または21.1の補完的な成形面20または20.1に当接している。
【0035】
図10内に見られるアーム18.1の上面には冷却表面27が具備されている。この冷却表面27は、後に接触しながらこの表面27上を超えて動かされる、アーム収容部19を通って引っ張られる毛髪を冷却するため、しかも、先行する実施例の冷却体に基づいて既に説明したような方法で冷却するために使用される。
【0036】
ヘアスタイリング装置3.3における利点は、毛髪をカールさせるためにこのヘアスタイリング装置を両方の方向に回転させて使用することができる点である。
【0037】
アーム18.1の成形面23の加熱において可能な一構成では、この成形面が協働して機能し、1つまたは複数のペルティエ素子の加熱のために使用される。この構想では、例えば成形面20および23のようなたった1つの成形面対が加熱される場合、所望の毛髪成形にとって十分であることが利用される。したがって、ヘアスタイリング装置3.3のこのような構想では、アーム18.1の加熱されていない成形表面23を冷却面として運用することができる。その限りでは、このような運用方法では、電力消費も低減される。というのは、このようにすれば、アーム18.1の加熱されていない成形面を介して毛髪から除去される熱が、他方の成形面の加熱に利用されるからである。
また、ヘアスタイリング装置が、冷却対象の毛髪に向けられる気流を生成するための、ファンを有していてもよい。
【0038】
本発明を、実施例に基づいて図面を参照しながら説明した。当業者には、本発明を有効な請求項の枠内で実現することができる、多数のさらなる可能な構成が明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1、1.1 アーム
2、2.1 成形プレート
3、3.1、3.2 ヘアスタイリング装置
4、4.1 アーム
5、5.1 成形プレート
6 毛髪支持部
7 ブラケット
8 アーム収容部
9 毛束
10 頭部
11 外面
12 冷却体
13、13.1 アーム
14、14.1 アーム
15、15.1、15.2 冷却体
16 アーチ部
17 表面
18、18.1 アーム
19 アーム収容部
20、20.1 成形面
21、21.1 成形プレート
22 貫通部
23 成形面
24 頂部
25、25.1 上端/毛髪支持部
26、26.1 アーム部分
27 冷却表面
E 移動平面
S 旋回軸