(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832614
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】冷却器の結露防止カバー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
B01D 5/00 20060101AFI20210215BHJP
B01D 3/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
B01D5/00 Z
B01D5/00 A
B01D3/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-19696(P2015-19696)
(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公開番号】特開2016-140839(P2016-140839A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月25日
【審判番号】不服2019-13276(P2019-13276/J1)
【審判請求日】2019年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591245543
【氏名又は名称】東京理化器械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 英昭
【合議体】
【審判長】
日比野 隆治
【審判官】
岡田 隆介
【審判官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−089869(JP,A)
【文献】
特開2000−279703(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3156864(JP,U)
【文献】
米国特許第4759825(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00 - 8/00
C02F 1/02 - 1/18
F16L 59/00 - 59/22
B01L 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ガラス製の外管の内部に、冷却水が流通する内管を配置した二重管構造を有するとともに、前記内管の端部を、前記外管を貫通させて外部に突出させ、冷却水導入用のノズル及び冷却水導出用のノズルを下方に屈曲させて形成し、前記ノズルの突出端外周に雄ネジ部が設けられ、前記内管と前記外管との間の外部流路に凝縮成分を含む蒸気を、内管内の内部流路に冷却水を供給して前記凝縮成分の少なくとも一部を凝縮させる冷却器における前記ノズル部分の結露防止カバーであって、中心部に前記ノズルを挿通可能なノズル挿通孔を有する円筒状の断熱部材と、該断熱部材のノズル先端側を収納可能な有底円筒状のケース部材とを備え、前記断熱部材は、断熱性を有する軟質合成樹脂によって、軸線方向の長さが前記ノズルの雄ネジ部を除く部分の寸法以上の長さに形成され、前記ケース部材は、薄肉合成樹脂によって、軸線方向の長さが前記ノズルの雄ネジ部を除く部分の寸法より短く形成されるとともに、ノズル先端側の底部中央には、雄ネジ部が挿通される雄ネジ挿通孔が設けられていることを特徴とする冷却器の結露防止カバー。
【請求項2】
前記ケース部材の雄ネジ挿通孔の内周には、周方向に複数の突出片が設けられ、該突出片は、弾性変形可能で、かつ、各突出片の突出端を通る円の直径が前記雄ネジ部の山部の直径より小さく形成されていることを特徴とする請求項1記載の冷却器の結露防止カバー。
【請求項3】
前記断熱部材の前記外管側の端面及び前記ケース部材の前記外管側の端縁を通る平面は、各部材の軸線に対して傾斜していることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却器の結露防止カバー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の冷却器の結露防止カバーの使用方法であって、前記ケース部材を、前記雄ネジ部に螺着される冷却水配管固定ナットで前記ノズルの外周に固定することを特徴とする冷却器の結露防止カバーの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器の結露防止カバーに関し、詳しくは、ロータリーエバポレーターなどの各種実験機器に用いられている透明ガラス製冷却器の結露を防止するためのカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
各種実験における蒸留操作や低沸点有機溶媒の回収操作などにおいて、蒸気中の必要成分又は不要成分を凝縮させて分離するための冷却器が広く用いられている。一般的な冷却器は、透明ガラス製の外管の内部に内管を配置した二重管構造を有しており、一般的に、内管と前記外管との間の外部流路に凝縮成分を含む蒸気を、内管内の内部流路に冷却水を供給して前記蒸気成分の少なくとも一部を凝縮させるようにしている。
【0003】
このような冷却器では、操作条件によっては、例えば冷却水の温度が低かったり、周囲の湿度が高かったりした場合に、冷却器の外面に結露を生じることがあった。冷却器に結露が生じると、結露水が落下して装置や実験台が水浸しになることがあった。このような結露対策として、外管を断熱二重管構造とした冷却器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−279703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1に記載された冷却器は、価格が高価になるという問題があるだけでなく、外管を貫通させて外部に突出した冷却水導入ノズル及び冷却水導出ノズルは断熱構造を有していないため、このノズル部分に結露を生じて結露水が落下し、長時間の実験では、装置や実験台が水浸しになってしまう。
また、冷却器がガラス製であることから、ノズル部分の形状が均一ではなく、さらに、冷却器の種類によってノズル部分の形状が異なるため、結露防止構造を採用することが困難であり、結露対策として気泡緩衝材や布を巻き付けているのが実情である。
【0006】
そこで本発明は、標準的なノズル形状であれば、多少寸法が異なっていても取り付けが可能で、ノズル部分で結露が発生することを抑えることができる冷却器の結露防止カバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の冷却器の結露防止カバーは、透明ガラス製の外管の内部に、冷却水が流通する内管を配置した二重管構造を有するとともに、前記内管の端部を、前記外管を貫通させて外部に突出させ、冷却水導入用のノズル及び冷却水導出用のノズルを
下方に屈曲させて形成し、
前記ノズルの突出端外周に雄ネジ部が設けられ、前記内管と前記外管との間の外部流路に凝縮成分を含む蒸気を、内管内の内部流路に冷却水を供給して前記
凝縮成分の少なくとも一部を凝縮させる冷却器における前記ノズル部分の結露防止カバーであって、中心部に前記ノズルを挿通可能なノズル挿通孔を有する円筒状の断熱部材と、該断熱部材のノズル先端側を収納可能な有底円筒状のケース部材とを備え、前記断熱部材は、断熱性を有する軟質合成樹脂によって、軸線方向の長さが前記ノズルの
雄ネジ部を除く部分の寸法以上の長さに形成され、前記ケース部材は、薄肉合成樹脂によって、軸線方向の長さが前記ノズルの
雄ネジ部を除く部分の寸法より短く形成されるとともに、ノズル先端側の底部中央には
、雄ネジ部が挿通される雄ネジ挿通孔が設けられていることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の冷却器の結露防止カバーは、前記ケース部材の雄ネジ挿通孔の内周には、周方向に複数の突出片が設けられ、該突出片は、弾性変形可能で、かつ、各突出片の突出端を通る円の直径が前記雄ネジ部の山部の直径より小さく形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、前記断熱部材の前記外管側の端面及び前記ケース部材の前記外管側の端縁を通る平面は、各部材の軸線に対して傾斜していること
を特徴としている。さらに本発明の冷却器の結露防止カバーの使用方法は、前記ケース部材を、前記雄ネジ部に螺着される冷却水配管固定ナットで前記ノズルの外周に固定
することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の冷却器の結露防止カバーによれば、ケース部材に収納した断熱部材に形成されているノズル挿通孔にノズルを挿通することにより、ノズルの部分に結露が発生することを防止できる。また、断熱部材をケース部材に収納しているので、ノズルへの着脱などの取り扱いも容易である。さらに、両部材は、洗浄することによって再利用が可能である。
【0011】
また、ケース部材の雄ネジ挿通孔の内周に弾性変形可能な突出片を設けることにより、ノズルへの取付時に雄ネジ部に突出片を係止させて仮止め状態とすることができ、ノズルへの冷却水配管の接続を容易に行うことができる。さらに、外管側の先端を傾斜した状態に形成することにより、外管に対してノズルが傾斜して突出している場合でも、ノズル全体を確実にカバーすることができる。また、冷却水配管固定ナットで固定することにより、他の固定手段を用意する必要がなく、配管の接続とカバーの固定とを同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の冷却器の結露防止カバーの一形態例を示す断面図である。
【
図3】結露防止カバーを冷却器のノズルに取り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図4は、本発明の冷却器の結露防止カバーの一形態例を示している。まず、本形態例に示す冷却器は、円筒状の外管11と、該外管11内に収容された二重螺旋状の内管12との二重管構造を有しており、全て透明ガラスによって形成されている。外管11の下部には、内管12と外管11との間の外部流路13の下部に連通する蒸気導入部14及び凝縮液導出部15が設けられるとともに、内管12内の内部流路16における流入端及び流出端にそれぞれ連通する冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18が外管11を貫通して設けられている。また、外管11の上部には、前記外部流路13の上部に連通する蒸気導出ノズル19が設けられ、外管11の下部には、外管11の軸線方向に設けられた排気管20に連通し、外部流路13内を減圧する際に排気管を接続するための排気ノズル21が設けられている。
【0014】
蒸気導入部14には試料フラスコが接続され、凝縮液導出部15には凝縮液回収フラスコが接続され、冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18には冷却水循環用配管を介して冷却水循環装置がそれぞれ接続される。試料フラスコ内で蒸発した蒸気は、蒸気導入部14から外部流路13内に流入し、内部流路16内を流れる冷却水で冷却された内管12に接触することによって蒸気内の凝縮成分が凝縮し、外部流路13内を流下して凝縮液導出部15から回収フラスコに流下して回収される。また、蒸気中の非凝縮成分は、蒸気導出ノズル19又は排気ノズル21から導出される。
【0015】
前記冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18は、取付部17aが外管11の外周面の法線方向に接続された後、ノズル本体部17bが下方に屈曲した状態で突出しており、突出端外周には、冷却水配管固定ナット22によって冷却水配管接続具23を接続するための雄ネジ部24が設けられている。
【0016】
本形態例に示す結露防止カバー31は、中心部にノズル挿通孔32を有する円筒状の断熱部材33と、該断熱部材33のノズル先端側を収納可能な有底円筒状のケース部材34とを備えている。前記断熱部材33は、断熱性を有する軟質合成樹脂、例えば、特殊エラストマーや合成ゴムによって形成されており、長さは、取り付けるノズルの雄ネジ部を除くノズル本体の長さと同じ寸法乃至僅かに長い寸法に形成され、ノズル挿通孔32の内径は、ノズルの外径と同じ寸法乃至僅かに小さな寸法に形成されている。また、前記断熱部材33の前記外管側の端面33aは、該断熱部材33の軸線に対して傾斜した傾斜面、本形態例では外管11の軸線に平行な方向の、約45度にカットされた状態の傾斜面に形成されている。
【0017】
前記ケース部材34は、適度に弾性変形可能な合成樹脂材料、例えば、ポリプロピレンの薄肉成形品からなるもので、断熱部材33の長さの半分程度の大きさの有底円筒状のケース本体部34aと、該ケース本体部34aの開口端から直線状に外管方向に突出した保持片34bとを有している。保持片34bは、ケース本体部34aの周方向に複数個が等間隔で設けられており、先端部の幅は、基部の幅より狭く形成され、保持片34bの先端部が内外方向に容易に変形可能な形状となっている。さらに、各保持片34bの突出端縁を通る平面は、前記断熱部材33の端面33aと同様に、ケース部材34の軸線に対して傾斜した状態になっている。
【0018】
また、前記ケース部材34のノズル先端側の底部中央には、前記雄ネジ部24が挿通される雄ネジ挿通孔35が設けられている。この雄ネジ挿通孔35の内周には、周方向に複数の突出片35aが切込部35bを介して等間隔で設けられている。この突出片35aは、弾性変形可能で、かつ、各突出片35aの突出端を通る円の直径は、前記雄ネジ部24の山部の直径より小さく形成されており、雄ネジ挿通孔35内に雄ネジ部24を挿通する際には、ケース部材34を押し込むことで突出片35aが弾性変形して雄ネジ部24の外周を通過し、押込力を解除したときに、突出片35aが雄ネジ部24の山部に係止してケース部材34をノズル部分に仮止めした状態になるように形成されている。
【0019】
このように形成した結露防止カバー31は、断熱部材33のノズル先端側をケース部材34内に収納し、接着剤などで固着した状態で使用される。これにより、断熱部材33を単独で用いる場合に比べて結露防止カバー31の取り扱い性を大幅に向上できる。結露防止カバー31を冷却器のノズル、例えば、
図3及び
図4に示すように、冷却水導入ノズル17に結露防止カバー31を取り付ける際には、ケース部材34を持って断熱部材33のノズル挿通孔32内に冷却水導入ノズル17を挿通するように押し込み、断熱部材33の端面33aを外管11の外周面に当接させる。また、冷却水導出ノズル18にも同様にして結露防止カバー31を取り付ける。この状態で、ケース部材34の突出片35aが雄ネジ部24に係止して仮止め状態になるので、冷却器を所定の設置状態にセットした後、冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18に、冷却水配管固定ナット22によって冷却水配管接続具23を接続する。冷却水配管固定ナット22を雄ネジ部24にねじ込むことにより、冷却水配管固定ナット22がケース部材34の底部外面を外管11の方向に押圧した状態で、各ノズルに結露防止カバー31にそれぞれ固定することができる。
【0020】
このようにして冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18に結露防止カバー31を取り付けることにより、冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18に低温の冷却水が流れて冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18の外面が露点温度以下になっても、結露防止カバー31が外気との接触を遮断するので、冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18の外面に結露が発生することを防止できる。
【0021】
また、断熱部材33やケース部材34の外管側を斜めにカットした状態に形成しておくことにより、外管11の法線に対して下方に屈曲した状態で設けられることが多い各ノズルに結露防止カバー31を取り付けた際に、断熱部材33の端面33aを外管11の外周面により確実に圧接することができる。特に、ケース部材34に先端側が弾性変形可能な保持片34bを設けておくことにより、冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18の外周面や外管11の外周面に断熱部材33をより確実に圧接させることができる。
【0022】
さらに、雄ネジ挿通孔35の内周に突出片35aを設けておくことにより、冷却水導入ノズル17及び冷却水導出ノズル18に結露防止カバー31を仮止めすることができるので、冷却水配管接続具23の接続作業を容易に行うことができるとともに、冷却水配管固定ナット22でケース部材34を押圧して固定することにより、他の固定部材を用いる場合に比べて結露防止カバー31の取り付けを容易に行うことができる。
【0023】
また、冷却器における外管外周面の結露防止は、前記特許文献1に記載された断熱二重管構造を採用してもよく、
図3及び
図4に想像線で示すように、外管11の外周を覆う円筒状の外管カバー材41を取り付けるようにしてもよい。
【0024】
なお、断熱部材やケース部材の形状は、標準的なノズル形状に応じて適宜な形状で形成しておくことにより、ノズル形状が多少異なっていても、断熱部材やケース部材の弾性変形で取付可能であり、各種冷却器に適用することができる。一方、特定の冷却管専用の形状で形成することもできる。
【0025】
また、断熱部材やケース部材の形状は前記形態例の形状に限るものではなく、例えば、断熱部材やケース部材の外管側端面は、断熱部材の弾性変形量などの条件によっては斜めにカットすることなく、直角方向にしてもよく、角度も任意に設定することができる。また、雄ネジ挿通孔の突出片の形状は任意であり、仮止め状態が不要な場合には突出片を省略することができ、ノズルへの結露防止カバーの固定も適宜な手段を採用することができる。
【符号の説明】
【0026】
11…外管、12…内管、13…外部流路、14…蒸気導入部、15…凝縮液導出部、16…内部流路、17…冷却水導入ノズル、17a…取付部、17b…ノズル本体部、18…冷却水導出ノズル、19…蒸気導出ノズル、20…排気管、21…排気ノズル、22…冷却水配管固定ナット、23…冷却水配管接続具、24…雄ネジ部、31…結露防止カバー、32…ノズル挿通孔、33…断熱部材、33a…端面、34…ケース部材、34a…ケース本体部、34b…保持片、35…雄ネジ挿通孔、35a…突出片、35b…切込部、41…外管カバー材