特許第6832651号(P6832651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6832651インターネット技術を利用したiPS細胞バンキングシステム及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832651
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】インターネット技術を利用したiPS細胞バンキングシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20180101AFI20210215BHJP
   G06Q 10/08 20120101ALI20210215BHJP
【FI】
   G06Q50/22
   G06Q10/08 330
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-164154(P2016-164154)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-22456(P2018-22456A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年2月15日
(31)【優先権主張番号】15/228,017
(32)【優先日】2016年8月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516255057
【氏名又は名称】アイ ピース,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】田邊 剛士
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 清典
(72)【発明者】
【氏名】小田 勝
【審査官】 谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−290147(JP,A)
【文献】 特開2015−100309(JP,A)
【文献】 特開2003−108660(JP,A)
【文献】 特開2002−027983(JP,A)
【文献】 特開2005−285142(JP,A)
【文献】 特開2015−222539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G16H 10/00−80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客からのiPS細胞の製造依頼を受付ける端末装置と、前記iPS細胞を製造するための体細胞の受入工程、前記iPS細胞の製造工程、製造された前記iPS細胞の保管工程、及び製造された前記iPS細胞の輸送工程を管理するサーバ装置とを有するiPS細胞バンキングシステムであって、
前記端末装置は、
前記体細胞の採取希望日を含む前記顧客からの前記製造依頼を、前記顧客を識別するための顧客識別情報とともに受付ける受付部と、
受付けた前記製造依頼及び前記顧客識別情報を、前記サーバ装置に送信する端末送信部と、を有し、
前記サーバ装置は、
前記体細胞を採取することが可能な採取可能日、前記iPS細胞を製造することが可能な製造可能期間、並びに製造された前記iPS細胞を保管することが可能な保管可能場所及び保管可能期間を記憶する記憶部と、
送信された前記製造依頼及び前記顧客識別情報を受信する受信部と、
受信された前記製造依頼に含まれる前記採取希望日と記憶された前記採取可能日とに基づいて、前記体細胞の採取日を決定し、
決定された前記体細胞の前記採取日と記憶された前記製造可能期間とに基づいて、前記iPS細胞の製造期間を決定し、
決定された前記体細胞の前記採取日及び前記製造期間に基づいて、前記体細胞の受入日を決定し
決定された前記製造期間と記憶された前記保管可能場所及び前記保管可能期間とに基づいて、製造された前記iPS細胞の保管場所及び保管期間を決定し、
決定された前記製造期間と決定された前記保管場所及び前記保管期間とに基づいて、製造された前記iPS細胞の出荷日を決定する決定部と、
決定された前記体細胞の前記採取日、前記製造期間、前記体細胞の前記受入日、前記保管場所及び前記保管期間、並びに前記iPS細胞の前記出荷日を、受信した前記顧客識別情報と関連付けて前記記憶部に記憶する記憶処理部と、
記憶された前記顧客識別情報によって示される顧客に、当該顧客識別情報に関連付けて記憶された、前記体細胞の前記採取日、前記製造期間、前記体細胞の前記受入日、前記保管場所及び前記保管期間、並びに前記iPS細胞の前記出荷日を送信するサーバ送信部と、を有する
ことを特徴とするiPS細胞バンキングシステム。
【請求項2】
前記体細胞が血液細胞である、請求項1に記載のiPS細胞バンキングシステム。
【請求項3】
前記サーバ装置は、決定された前記体細胞の前記採取日に、前記体細胞の輸送時間を加算してiPS細胞製造所へ最も速く到達する最速到達日を求めると共に、前記体細胞の品質を保持できる品質保持可能期間を加算して前記iPS細胞製造所へ最も遅く到達する最遅到達日を求め、前記最速到達日から前記最遅到達日までの到達可能期間を算出し、前記到達可能期間にオーバーラップする前記製造可能期間のうち最先の前記製造可能期間に基づいて前記iPS細胞の前記製造期間を決定する、請求項1又は2に記載のiPS細胞バンキングシステム。
【請求項4】
前記サーバ装置は、決定された前記体細胞の前記採取日に前記体細胞の輸送時間を加算して前記体細胞の受入日を求め、前記受入日が前記iPS細胞の前記製造期間内であるか否かをチェックし、前記体細胞の前記受入日を決定する、請求項1から3のいずれか一項に記載のiPS細胞バンキングシステム。
【請求項5】
前記サーバ装置は、決定された前記iPS細胞の前記製造期間の満了日に、前記iPS細胞の輸送時間を加算してiPS細胞保管所へ最も速く到達する最速到達日を求めると共に、前記iPS細胞の品質を保証できる品質保証可能期間を加算して前記iPS細胞保管所へ最も遅く到達する最遅到達日を求め、前記最速到達日から前記最遅到達日までの到達可能期間を算出し、前記到達可能期間にオーバーラップする前記保管可能期間のうち最先の前記保管可能期間に基づいて前記iPS細胞の前記保管期間及び前記保管場所を決定する、請求項1から4のいずれか一項に記載のiPS細胞バンキングシステム。
【請求項6】
前記サーバ装置は、前記保管期間の開始日から前記iPS細胞の輸送時間を減算して前記iPS細胞の出荷日を求め、前記出荷日が前記製造期間の満了日以降であることをチェックし、前記iPS細胞の前記出荷日を決定する、請求項5に記載のiPS細胞バンキングシステム。
【請求項7】
前記サーバ装置は、製造された前記iPS細胞の品質試験の結果を登録し、登録した前記iPS細胞の前記品質試験の結果が不適合である場合に、決定された前記iPS細胞の前記出荷日を取消す、請求項1から6のいずれか一項に記載のiPS細胞バンキングシステム。
【請求項8】
前記品質試験が、
1)細胞数並びに生存数、
2)確認試験、
3)細胞の純度試験、
4)製造工程由来不純物試験、
5)無菌試験及びマイコプラズマ否定試験、
6)エンドトキシン試験、
7)ウイルス試験、及び
8)iPS細胞に関連する特性試験、
i)様々な体細胞に分化できる多分化能を有すること、及び
ii)移植後に癌を誘発する遺伝子変異を認めず、未分化細胞の混入による造腫瘍性のリスクが低いこと、
の少なくとも1つを含む、請求項7に記載のiPS細胞バンキングシステム。
【請求項9】
顧客からのiPS細胞の製造依頼を受付ける端末装置と、前記iPS細胞を製造するための体細胞の受入工程、前記iPS細胞の製造工程、製造された前記iPS細胞の保管工程、及び製造された前記iPS細胞の輸送工程を管理するサーバ装置とを有するiPS細胞バンキングシステムにおいて実行される方法であって、
前記端末装置が、
前記体細胞の採取希望日を含む前記顧客からの前記製造依頼を、前記顧客を識別するための顧客識別情報とともに受付けるステップと、
受付けた前記製造依頼及び前記顧客識別情報を、前記サーバ装置に送信するステップと、
前記サーバ装置が、
前記体細胞を採取することが可能な採取可能日、前記iPS細胞を製造することが可能な製造可能期間、並びに製造された前記iPS細胞を保管することが可能な保管可能場所及び保管可能期間を記憶部に記憶するステップと、
送信された前記製造依頼及び前記顧客識別情報を受信するステップと、
受信された前記製造依頼に含まれる前記採取希望日と記憶された前記採取可能日とに基づいて、前記体細胞の採取日を決定するステップと、
決定された前記体細胞の前記採取日と記憶された前記製造可能期間とに基づいて、前記iPS細胞の製造期間を決定するステップと、
決定された前記体細胞の前記採取日及び前記製造期間に基づいて、前記体細胞の受入日を決定するステップと、
決定された前記製造期間と記憶された前記保管可能場所及び前記保管可能期間とに基づいて、製造された前記iPS細胞の保管場所及び保管期間を決定するステップと、
決定された前記製造期間と決定された前記保管場所及び前記保管期間とに基づいて、前記iPS細胞の出荷日を決定するステップと、
決定された前記体細胞の前記採取日、前記製造期間、前記体細胞の前記受入日、前記保管場所及び前記保管期間、並びに前記iPS細胞の前記出荷日を、受信した前記顧客識別情報と関連付けて前記記憶部に記憶するステップと、
記憶された前記顧客識別情報によって示される顧客に、当該顧客識別情報に関連付けて記憶された、前記体細胞の前記採取日、前記製造期間、前記体細胞の前記受入日、前記保管場所及び前記保管期間、並びに前記iPS細胞の前記出荷日を送信するステップと、を有する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット技術を利用したiPS細胞バンキングシステム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生医療において、健康なHLA(Human Leukocyte Antigen:ヒト白血球型抗原)ホモ接合体のドナーから血液を採取し、京都大学iPS細胞研究所でiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製するとともに保管する、iPS細胞ストックプロジェクトが進展している。このような背景において、ストックされたiPS細胞を利用して再生医療や臨床研究を行うビジネス(システムの構築)が必須であり急務であると考えられる。これに関して医療品の在庫や薬品の温度を管理する技術としては、例えば特許文献1〜3が公知である。
【0003】
特許文献1には、血液及び組織等を分析する臨床分析器において使用される消耗品(化学試料、キャリブレータ)の在庫及び注文管理システムの発明が記載されている。
【0004】
特許文献2には、病院で取扱う消耗品(注射器、包帯、消毒用アルコール)の在庫管理及び発注を行う管理システムの発明が記載されている。
【0005】
特許文献3には、食品及び薬品等の温度管理を要する物品に対する、工場、保管庫及び搬送時の温度管理を行うシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−243324号公報
【特許文献2】特開2005−112499号公報
【特許文献3】特開2015−202918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
臨床用iPS細胞の製造には時間とコスト、労力がかかる事が実用化への大きなハードルとなっている。それは以下に記載する様な規制に準拠した製造管理及び品質管理等に関連する膨大なデータの正確な一元管理ができる管理システムが存在しないことに起因する。
【0008】
iPS細胞製造の原料となる体細胞の受入工程、iPS細胞の製造工程、iPS細胞の保管工程、及びiPS細胞の輸送工程において、適切な管理を行わなければ、iPS細胞の品質の維持・確保ができないという懸念がある。これには、例えば再生医療製品の製造に使用する原料に関する「生物由来原料基準」、製造及び品質管理に関しては「再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(GCTP省令)、「ヒト(自己)及び(同種)iPS(様)細胞加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する」厚生労働省局長通知、細胞バンクの作製やウイルス否定試験に対しては日米欧州医薬品調和国際会議(ICH)で合意されているQ5A及びQ5D等に基づいて分析する必要がある。
【0009】
また、作製された臨床用iPS細胞は、厳密に品質評価される必要がある。ヒトiPS細胞加工医薬品等(原料にあたるiPS細胞を含む)の品質管理全体の方策として、iPS細胞の規格及び試験方法の設定し、その根拠を示すことになっている。例えば以下の様な品質評価化項目が求められている。
1)細胞数並びに生存数
2)確認試験
3)細胞の純度試験
4)製造工程由来不純物試験
5)無菌試験及びマイコプラズマ否定試験
6)エンドトキシン試験
7)ウイルス試験
8)iPS細胞に関連する特性試験
i)様々な体細胞に分化できる多分化能を有すること、
ii)移植後に癌を誘発する遺伝子変異を認めず、未分化細胞の混入による造腫瘍性のリスクが低いこと、
など、様々な厳密な品質試験管理項目に適合することが求められる。如何にしてiPS細胞の品質を維持・確保しながら顧客に安定供給するかという基盤構築は、今後の課題となっている。
【0010】
また、ドナー自身のデータ(性別、年齢、病歴、健康状態、遺伝的背景等)、iPS細胞作製の原料としての体細胞の受入データ、また作製されたiPS細胞の品質試験結果、その他製造状況と保管状況等、様々な大量の多岐にわたるデータを正確に双方向に検索できる管理システムの構築が必須である。
【0011】
そこで、高品質のiPS細胞を顧客へ正確な品質管理の下、安定供給するシステムの構築が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、顧客からのiPS細胞の製造依頼を受付ける端末装置と、iPS細胞を製造するための原料となる血液細胞、皮膚細胞等をはじめとする体細胞(以下、「体細胞」と呼ぶ。)の受入工程、iPS細胞の製造工程、製造されたiPS細胞の保管工程、及び製造されたiPS細胞の輸送工程を管理するサーバ装置と、を有するiPS細胞バンキングシステムであって、端末装置は、体細胞の採取希望日を含む顧客からの製造依頼を、顧客を識別するための顧客識別情報とともに受付ける受付部と、受付けた製造依頼及び顧客識別情報を、サーバ装置に送信する端末送信部と、を有し、サーバ装置は、体細胞を採取することが可能な採取可能日、iPS細胞を製造することが可能な製造可能期間、並びに製造されたiPS細胞を保管することが可能な保管可能場所及び保管可能期間を記憶する記憶部と、送信された製造依頼及び顧客識別情報を受信する受信部と、受信された製造依頼に含まれる採取希望日と記憶された採取可能日とに基づいて、体細胞の採取日を決定し、決定された体細胞の採取日と記憶された製造可能期間とに基づいて、iPS細胞の製造期間を決定し、決定された体細胞の採取日及び製造期間に基づいて、体細胞の受入日を決定し、決定された製造期間と記憶された保管可能場所及び保管可能期間とに基づいて、製造されたiPS細胞の保管場所及び保管期間を決定し、決定された製造期間と決定された保管場所及び保管期間とに基づいて、製造されたiPS細胞の出荷日を決定する決定部と、決定された体細胞の採取日、製造期間、体細胞の受入日、保管場所及び保管期間、並びにiPS細胞の出荷日を、受信した顧客識別情報と関連付けて記憶部に記憶する記憶処理部と、記憶された顧客識別情報によって示される顧客に、当該顧客識別情報に関連付けて記憶された、体細胞の採取日、製造期間、体細胞の受入日、保管場所及び保管期間、並びにiPS細胞の出荷日を送信するサーバ送信部と、を有する、iPS細胞バンキングシステムを提供する
本開示の他の態様は、顧客からのiPS細胞の製造依頼を受付ける端末装置と、iPS細胞を製造するための体細胞の受入工程、iPS細胞の製造工程、製造されたiPS細胞の保管工程、及び製造されたiPS細胞の輸送工程を管理するサーバ装置とを有するiPS細胞バンキングシステムにおいて実行される管理方法であって、端末装置が、体細胞の採取希望日を含む顧客からの製造依頼を、顧客を識別するための顧客識別情報とともに受付けるステップと、受付けた製造依頼及び顧客識別情報を、サーバ装置に送信するステップと、サーバ装置が、体細胞を採取することが可能な採取可能日、iPS細胞を製造することが可能な製造可能期間、並びに製造されたiPS細胞を保管することが可能な保管可能場所及び保管可能期間を記憶部に記憶するステップと、送信された製造依頼及び顧客識別情報を受信するステップと、受信された製造依頼に含まれる採取希望日と記憶された採取可能日とに基づいて、体細胞の採取日を決定するステップと、決定された体細胞の採取日と記憶された製造可能期間とに基づいて、iPS細胞の製造期間を決定するステップと、決定された体細胞の採取日及び製造期間に基づいて、体細胞の受入日を決定するステップと、決定された製造期間と記憶された保管可能場所及び保管可能期間とに基づいて、製造されたiPS細胞の保管場所及び保管期間を決定するステップと、決定された製造期間と決定された保管場所及び保管期間とに基づいて、iPS細胞の出荷日を決定するステップと、決定された体細胞の採取日、製造期間、体細胞の受入日、保管場所及び保管期間、並びにiPS細胞の出荷日を、受信した顧客識別情報と関連付けて記憶部に記憶するステップと、記憶された顧客識別情報によって示される顧客に、当該顧客識別情報に関連付けて記憶された、体細胞の採取日、製造期間、体細胞の受入日、保管場所及び保管期間、並びにiPS細胞の出荷日を送信するステップと、を有する、管理方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、原料である体細胞及び製品となるiPS細胞の品質を考慮して各工程が管理されるため、高品質のiPS細胞を効率的に必要な時に顧客へ安定供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るビジネスモデル及びiPS細胞バンキングシステムを示す概略図である。
図2】本実施形態に係る端末装置及びサーバ装置を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係るデータベース(DB)のテーブル構造を示す概略図である。
図4】本実施形態に係るiPS細胞バンキングシステムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。各図面において、同様の構成要素には同様の符号が付与されている。なお、以下に記載される内容は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲及び用語の意義を限定するものではない。
【0016】
(ビジネスモデルの概要)
まず、図1を参照して本発明に係るビジネスモデルの概要について説明する。図1は、本実施形態に係るビジネスモデル及びiPS細胞バンキングシステムを示す概略図である。本ビジネスモデルは、iPS細胞製造所30が、顧客10からのiPS細胞の製造依頼を受付け、血液細胞等の体細胞を採取機関20から受入れ、受入れた体細胞からiPS細胞32を作製し、作製されたiPS細胞32の品質を評価した後、品質評価済iPS細胞33をiPS細胞保管所40に保管し、要求に応じて顧客10に輸送するとともに、課金するビジネスモデルである。
【0017】
顧客10は、iPS細胞33を利用する医療機関11、研究機関12その他の利用機関を含む。顧客10は電話、ファクシミリ、依頼書の送付、顧客端末13その他の依頼手段を用いて、iPS細胞製造所30にiPS細胞の製造を依頼する。顧客10は、本ビジネスモデルで提供されたiPS細胞を分化誘導して、角膜、心筋、肝臓その他の移植組織細胞を作製するとともに、作製された組織細胞を再生医療又は臨床研究に利用する。
【0018】
採取機関20は、患者その他のドナー21から体細胞である血液22を採取可能な病院、献血所その他の採取機関を含み、複数拠点(例えば東京、大阪、福岡等)に設置されている。採取機関20は、iPS細胞製造所30から通知された採取日に、ドナー21から血液22を採取するとともに、iPS細胞製造所30から通知された出荷日に、採取された血液22を出荷する。出荷された血液22は、適切に温度管理された状態で、iPS細胞製造所30に輸送される。
【0019】
iPS細胞製造所30は、iPS細胞33を製造可能な医療機関、研究機関その他の製造機関を含む。iPS細胞製造所30は、顧客10から製造依頼を受付けると、体細胞を受入るため、iPS細胞バンキングシステム1によって自動決定された採取日及び受入日を採取機関20に通知する。そうして、採取された血液がiPS細胞製造所30に輸送される。
【0020】
iPS細胞製造所30は、iPS細胞バンキングシステム1によって自動決定された製造期間内に、iPS細胞33を製造する。iPS細胞製造所30は、採取された体細胞の血液細胞31に誘導因子を導入して、iPS細胞32を作製するとともに、作製されたiPS細胞32の品質試験(分化誘導能検査、遺伝子変異検査、及び真菌・細菌・ウイルス検査等)を実施して、規格適合済iPS細胞33を製造する。iPS細胞製造所30は、iPS細胞バンキングシステム1によって自動決定された出荷日に、iPS細胞バンキングシステム1によって自動決定された保管場所へ、iPS細胞33を出荷する。出荷されたiPS細胞33は、適切に温度管理された状態で、iPS細胞保管所40に輸送される。
【0021】
iPS細胞保管所40は、iPS細胞33を保管可能な倉庫、医療機関その他の保管所を含み、複数拠点(例えば東京、大阪、福岡等)に設置されている。iPS細胞保管所40は、iPS細胞バンキングシステム1によって自動決定された保管期間の間、iPS細胞33を凍結保存するとともに、解凍検査を定期的に実施し、使用時にも再確認する。iPS細胞保管所40は、保管されたiPS細胞33を、要求に応じて顧客10に輸送する。輸送されたiPS細胞33は、適切に温度管理された状態で、顧客10に輸送される。
【0022】
(iPS細胞バンキングシステムの構成)
次に、図1を参照してiPS細胞バンキングシステムの構成について説明する。iPS細胞バンキングシステム1は、顧客からiPS細胞の製造依頼を受付ける受注工程と、体細胞31を受入れる受入工程と、iPS細胞33を製造する製造工程と、iPS細胞33を保管する保管工程と、iPS細胞33を顧客に輸送する輸送工程と、を管理する。iPS細胞バンキングシステム1は、端末装置50〜80及びサーバ装置90を備える三層アーキテクチャのクラウドコンピューティングシステムである。端末装置50〜80及びサーバ装置90は、ネットワーク110を介して相互接続される。
【0023】
端末装置50〜80は、PC、タブレットPCその他のコンピュータ装置を備える。端末装置50〜80は、受注工程を管理するための受注管理端末50と、受入工程を管理するための受入管理端末60と、製造工程を管理するための製造工程管理端末70と、保管工程を管理するための保管管理端末80と、を有する。端末装置50〜80は、各工程の管理情報を、サーバ装置90に送信するとともに、サーバ装置90から受信するように構成されている。
【0024】
サーバ装置90は、ワークステーションその他のコンピュータ装置を備える。サーバ装置90は、全工程の管理情報を格納するDB100を有し、DB100は、関係データベース管理システム(RDBMS)を有する。サーバ装置90は、各工程の管理情報を、端末装置50〜80から受信してDB100に記憶するとともに、DB100から読出して端末装置50〜80に送信するように構成されている。
【0025】
(端末装置及びサーバ装置の構成)
次に、図2を参照して、端末装置及びサーバ装置の構成についてさらに詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る端末装置及びサーバ装置を示すブロック図である。
【0026】
受注管理端末50は、ネットワーク110を介して情報を受信する第1受信部51と、キーボード、マウス、スキャナその他の入力手段を有する第1入力部52と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)その他の不揮発性の記憶手段を有する第1記憶部53と、ネットワーク55を介して情報を送信する第1送信部54と、中央処理装置(CPU)その他の処理手段を有する第1処理部56と、プレゼンテーション層のユーザインターフェイス(UI)プログラムから構成される受付部57と、を備える。
【0027】
受付部57は、体細胞の採取希望日と、必要に応じてiPS細胞の保管希望場所及びiPS細胞の保管希望期間とを含む顧客からの製造依頼を、顧客を識別する顧客IDとともに受付ける受付画面を提供する。また、同時に採取体細胞の受入検査項目として、例えば、目視検査、顕微鏡検査、採取収率、生存率、細胞の特性解析及び微生物試験等の実測値を提示し暫定値を示し記録をする。
【0028】
第1送信部54は、受付けた製造依頼及び顧客IDを、サーバ装置90に送信する。
【0029】
受入管理端末60は、ネットワーク110を介して情報を受信する第2受信部61と、キーボード、マウス、スキャナその他の入力手段を有する第2入力部62と、HDD、SSDその他の不揮発性の記憶手段を有する第2記憶部63と、ネットワーク110を介して情報を送信する第2送信部64と、CPUその他の処理手段を有する第2処理部66と、プレゼンテーション層のUIプログラムから構成される第2登録部67と、を備える。
【0030】
第2登録部67は、複数の採取機関から入手した体細胞の採取可能日を、採取機関を識別する採取機関IDとともに登録する登録画面を提供する。
【0031】
第2送信部64は、登録された採取可能日を、採取機関IDとともにサーバ装置90に送信する。
【0032】
製造工程管理端末70は、ネットワーク110を介して情報を受信する第3受信部71aと、キーボード、マウス、スキャナその他の入力手段を有する第3入力部72と、HDD、SSDその他の不揮発性の記憶手段を有する第3記憶部73と、ネットワーク110を介して情報を送信する第3送信部74と、CPUその他の処理手段を有する第3処理部76と、プレゼンテーション層のUIプログラムから構成される第3登録部77と、を備える。
【0033】
第3登録部77は、iPS細胞の製造可能期間及びiPS細胞の品質試験結果を登録する登録画面を提供する。
【0034】
第3送信部74は、登録された製造可能期間をサーバ装置90に送信する。
【0035】
保管管理端末80は、ネットワーク110を介して情報を受信する第4受信部81と、キーボード、マウス、スキャナその他の入力手段を有する第4入力部82と、HDD、SSDその他の不揮発性の記憶手段を有する第4記憶部83と、ネットワーク110を介して情報を送信する第4送信部84と、CPUその他の処理手段を有する第4処理部86と、プレゼンテーション層のUIプログラムから構成される第4登録部87と、を備える。
【0036】
第4登録部87は、複数のiPS細胞保管所から入手した保管可能場所及び保管可能期間を、iPS細胞保管所を識別する保管所IDとともに登録する登録画面を提供する。
【0037】
第4送信部84は、登録された保管可能場所及び保管可能期間を、保管所IDとともにサーバ装置90に送信する。
【0038】
サーバ装置90は、ネットワーク110を介して情報を受信する第5受信部91と、HDD、SSDその他の不揮発性の記憶手段を有する第5記憶部92と、ネットワーク110を介して情報を送信する第5送信部93と、CPUその他の処理手段を有する第5処理部94と、アプリケーション層のビジネスロジック(BL)プログラムから構成される決定部95と、データ層のDBプログラムから構成される記憶処理部96と、BLプログラムから構成される取消部97と、を備える。
【0039】
記憶処理部96は、端末装置50〜80から送信された、体細胞の採取可能日、iPS細胞の製造可能期間、並びにiPS細胞の保管可能場所及び保管可能期間を、第5記憶部92に記憶する。
【0040】
第5受信部91は、受注管理端末50から送信された製造依頼及び顧客IDを受信する。
【0041】
決定部95は、送信された製造依頼に含まれる採取希望日と記憶された採取可能日とに基づいて、体細胞の採取日を決定する。
【0042】
決定部95は、決定された体細胞の採取日と記憶されたiPS細胞の製造可能期間とに基づいて、iPS細胞の製造期間を決定する。
【0043】
決定部95は、決定された体細胞の採取日及び製造期間に基づいて、体細胞の受入日を決定する。
【0044】
決定部95は、決定されたiPS細胞の製造期間と記憶されたiPS細胞の保管可能場所及び保管可能期間とに基づいて、iPS細胞の保管場所及び保管期間を決定する。
【0045】
決定部95は、決定された製造期間並びに決定された保管場所及び保管期間に基づいて、iPS細胞の出荷日を決定する。
【0046】
取消部97は、登録されたiPS細胞の品質試験結果が不適合である場合に、決定されたiPS細胞の出荷を取消す。
【0047】
記憶処理部96は、決定された採取日、製造期間、体細胞である血液の受入日、iPS細胞の保管場所及び保管期間、並びにiPS細胞の出荷日を、顧客IDに関連付けて第5記憶部92に記憶する。
【0048】
第5送信部93は、顧客IDによって示される顧客に、顧客IDに関連付けて記憶された、体細胞の採取日、製造期間、体細胞の受入日、iPS細胞の保管場所及び保管期間、並びにiPS細胞の出荷日を送信する。
【0049】
(DBのテーブル構造)
次いで、図3を参照してDBのテーブル構造について説明する。図3は、本実施形態に係るDBのテーブル構造を示す概略図である。DBは、製造依頼を記憶する受注テーブル101と、受入情報を記憶する受入テーブル102と、製造工程情報を記憶する製造工程テーブル103と、保管情報を記憶する保管テーブル104と、を有する。
【0050】
受注テーブル101は、受注ID、受注日、顧客ID、体細胞の第1採取希望日、第2採取希望日、及び第3採取希望日を含む。
【0051】
受入テーブル102は、受入ID、採決機関ID、体細胞の採取可能日、受注ID、血液の採取日、及び血液の出荷日を含む。
【0052】
製造工程テーブル103は、製造ID、iPS細胞の製造可能期間、受注ID、iPS細胞の製造期間、及びiPS細胞の出荷日を含む。
【0053】
保管テーブル104は、保管ID、保管所ID、iPS細胞の保管可能場所、iPS細胞の保管可能期間、受注ID、iPS細胞の保管場所、及びiPS細胞の保管期間を含む。
【0054】
(iPS細胞バンキングシステムの動作)
ここで、図4を参照してiPS細胞バンキングシステムの動作について説明する。図4は、本実施形態に係るiPS細胞バンキングシステムの動作を示すシーケンス図である。なお、ステップS100〜ステップS106は、処理順序を問わない。
【0055】
ステップS100においては、受入管理端末が、複数の採取機関から入手した採取可能日を、採取機関IDとともにサーバ装置に送信する。すると、ステップS101において、サーバ装置が、受信した採取可能日を、受入ID及び採取機関IDとともに受注テーブルに記憶する。
【0056】
ステップS102においては、製造工程管理端末が、iPS細胞の製造可能期間をサーバ装置に送信する。すると、ステップS103において、サーバ装置が、受信したiPS細胞の製造可能期間を、製造IDとともに製造工程テーブルに記憶する。
【0057】
ステップS104においては、保管管理端末が、複数のiPS細胞保管所から入手した保管可能場所及び保管可能期間をサーバ装置に送信する。すると、ステップS105において、サーバ装置が、受信した保管可能場所及び保管可能期間を、保管ID及び保管所IDとともに保管テーブルに記憶する。
【0058】
ステップS106においては、受注管理端末が、顧客から第1採取希望日〜第3採取希望日を含む製造依頼を、顧客IDとともに受付ける。すると、ステップS107において、受注管理端末が、受付けた第1採取希望日〜第3採取希望日を含む製造依頼を、顧客IDとともにサーバ装置に送信する。
【0059】
続いて、ステップS108において、サーバ装置は、受信した製造依頼に含まれる第1採取希望日〜第3採取希望日と、記憶された採取可能日とに基づいて、体細胞の採取日を決定する。
【0060】
ここで図3を参照して、ステップS108の処理について詳細に説明する。サーバ装置は、受注ID(0001)について、ドナーの第1採取希望日(2018/03/15)にマッチする採取機関の採取可能日を受入テーブル102から抽出する。第1採取希望日(2018/03/15)にマッチする採取可能日は、受入テーブル102に存在しないため、サーバ装置は、ドナーの第2採取希望日(2018/03/16)にマッチする採取機関の採取可能日を受入テーブル102から抽出する。第2採取希望日(2018/03/16)にマッチする採取可能日(2018/03/16)は、受入テーブル102に存在するため、サーバ装置は、採取可能日(2018/03/16)を採取日に決定する。第1採取希望日〜第3採取希望日にマッチする採取可能日が受入テーブルに存在しない場合、サーバ装置は、採取希望日の再設定を通知する。
【0061】
続いて、図4を参照すると、ステップS109において、サーバ装置は、決定された体細胞の採取日と、記憶されたiPS細胞の製造可能期間とに基づいて、iPS細胞の製造に供される製造期間を決定する。
【0062】
図3を参照して、ステップS109の処理についてさらに詳細に説明する。サーバ装置は、受注ID(0001)について、決定された採取日(2018/03/16)に、採取機関に応じて定まる体細胞の輸送時間(例えば東京採取所は1日)を加算して、iPS細胞製造所へ最も速く到達する最速到達日(2018/03/17)を求めるとともに、採取した体細胞の品質を保持できる品質保持可能期間(例えば血液の場合、2日)を加算して、iPS細胞製造所へ最も遅く到達する最遅到達日(2018/03/18)を求めて、採取機関からiPS細胞製造所へ体細胞を到達させることができる到達可能期間(2018/03/17〜2018/03/18)を算出する。次いで、サーバ装置は、算出した到達可能期間(2018/03/17〜2018/03/18)にオーバーラップする製造可能期間(2018/03/16〜2018/09/16、2018/03/17〜2018/09/17)のうち、最先の製造可能期間(2018/03/16〜2018/09/16)を製造工程テーブル103から抽出し、iPS細胞の製造に供される製造期間(2018/03/16〜2018/09/16)を決定する。これにより、体細胞の品質を考慮してiPS細胞の製造期間が決定されるため、高品質のiPS細胞を顧客へ安定供給できる。なお、本実施例における「製造期間」とは、iPS細胞製造所における体細胞の受入から規格適合済iPS細胞の完成までの期間を意味していて、実質的なiPS細胞の製造期間(3ヶ月)だけでなく、作製したiPS細胞の品質試験期間(3ヶ月)も含む。
【0063】
次いで、図4を参照すると、ステップS110において、サーバ装置は、決定された体細胞の採取日及び決定されたiPS細胞の製造期間に基づいて、採取された体細胞をiPS細胞製造所で受け入れる受入日を決定する。
【0064】
図3を参照して、ステップS110の処理についてさらに詳細に説明する。サーバ装置は、受注ID(0001)について、決定された体細胞の採取日(2018/03/16)に、採取機関に応じて定まる体細胞の輸送時間(例えば東京採取所は1日)を加算して受入日(2018/03/17)を求め、求めた受入日(2018/03/17)がiPS細胞の製造期間(2018/03/16〜2018/09/16)内であることをチェックし、体細胞の受入日(2018/03/17)を決定する。
【0065】
次に、図4を参照すると、ステップS111において、サーバ装置は、決定されたiPS細胞の製造期間と記憶された保管可能場所及び保管可能期間とに基づいて、iPS細胞の保管場所及び保管期間を決定する。
【0066】
図3を参照して、ステップS111の処理についてさらに詳細に説明する。サーバ装置は、受注ID(0001)について、決定された製造期間の満了日(2018/09/16)に、iPS細胞保管所に応じて定まるiPS細胞の輸送時間(例えば東京保管所は1日)を加算して、iPS細胞保管所へ最も速く到達する最速到達日(2018/09/17)を求めるとともに、製造したiPS細胞の品質を保証できる品質保証期間(例えば液体窒素で保存した場合、4日)を加算して、iPS細胞製造所へ最も遅く到達する最遅到達日(2018/09/20)を求めて、iPS細胞製造所からiPS細胞保管所へiPS細胞を到達させることができる到達可能期間(2018/09/17〜2018/09/20)を算出する。次いで、サーバ装置は、算出した到達可能期間(2018/09/17〜2018/09/20)にオーバーラップする保管可能期間(2018/09/19〜2068/09/19、2018/09/20〜2068/09/20)のうち、最先の保管可能期間(2018/09/19〜2068/09/19)である保管可能期間(2018/09/19〜2068/09/19)を保管テーブル104から抽出し、iPS細胞の保管に供される保管期間(2018/09/19〜2068/09/19)及び保管場所(例えば東京保管所)を決定する。これにより、iPS細胞の品質を考慮した保管場所及び保管期間が決定されるため、高品質のiPS細胞を顧客に安定供給できる。
【0067】
次に、図4を参照すると、ステップS112において、サーバ装置は、決定されたiPS細胞の製造期間と決定された保管場所及び保管期間に基づいて、製造されたiPS細胞の出荷日を決定する。
【0068】
ここで図3を参照して、ステップS112の処理について詳細に説明する。サーバ装置は、受注ID(0001)について、決定された保管期間の開始日(2018/09/19)から、iPS細胞保管所に応じて定まるiPS細胞の輸送時間(例えば東京保管所は1日)を減算して出荷日(2018/09/18)を求め、求めた出荷日(2018/09/18)が製造期間の満了日(2018/09/16)以降であることをチェックし、iPS細胞の出荷日(2018/09/18)を決定する。
【0069】
続いて、図4を参照すると、ステップS113において、サーバ装置は、決定された情報、すなわち決定された採取日、製造期間、体細胞の受入日、保管場所及び保管期間、並びにiPS細胞の出荷日を、顧客IDに関連付けて記憶する。
【0070】
また、ステップS114において、サーバ装置は、顧客IDによって示される顧客に、決定された情報、すなわち決定された採取日、製造期間、体細胞の受入日、保管場所及び保管期間、並びにiPS細胞の出荷日を送信する。
【0071】
なお、ステップS114に続いて、サーバ装置は、iPS細胞の品質試験結果を登録するステップと、登録されたiPS細胞の品質試験結果が不適合である場合に、図3に示すように、決定されたiPS細胞の出荷を取消すステップと、を有する。
【0072】
ここで、本実施形態のiPS細胞バンキングシステムの作用効果について説明する。サーバ装置は、ステップS109の処理で記載したように、体細胞の品質保持可能期間(例えば血液の場合、2日)を考慮してiPS細胞の製造期間を決定するため、高品質のiPS細胞を顧客へ安定供給できる。
【0073】
また、サーバ装置は、ステップS111の処理で記載したように、品質試験に適合したiPS細胞の品質保証期間(例えば液体窒素で保存した場合、4日)を考慮してiPS細胞の保管場所及び保管期間を決定するため、高品質のiPS細胞を顧客に安定供給できる。
【0074】
なお、本実施形態に係る全てのプログラムは、コンピュータ読取り可能な非一時的な記録媒体、例えばCD-ROMに記録されることによって提供される。
【0075】
本明細書において種々の実施形態について説明したが、本発明は、前述した種々の実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲に記載された範囲内において種々の変更を行えることを認識されたい。
【符号の説明】
【0076】
1 iPS細胞バンキングシステム
10 顧客
20 採取機関
30 iPS細胞製造所
40 iPS細胞保管所
50 受注管理端末
54 第1送信部
57 受付部
60 受入管理端末
70 製造工程管理端末
80 保管管理端末
90 サーバ装置
91 第5受信部
92 第5記憶部
93 第5送信部
95 決定部
96 記憶処理部
100 データベース
101 受注テーブル
102 受入テーブル
103 製造工程テーブル
104 保管テーブル
図1
図2
図3
図4