【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の汚泥水吸収土嚢は、毛管吸水吸着作用のある繊維状または微細な多孔質構造を有する材料で形成され、懸濁物を繊維間または多孔質構造内に付着させる付着部と、前記付着部が外周表面に
ループパイル状に形成された通水性の袋状部と、前記袋状部に収納された吸水性樹脂と、を有する構成を有している。
この構成により、以下の作用・効果を有する。
(a)表面の付着部により、汚物やシルト等の粗粒懸濁物を絡めて付着保持することができ、床面上等で汚泥水吸収土嚢を引きずるだけで細粒汚泥や浮遊物質等を付着させ排除できる。
(b)袋状部が、通水性なので、微細な有機物やシルトからなる微細懸濁物や汚水を通過させ内包された吸水性樹脂層に導くことができる。
(c)袋状部を通過した微細な懸濁物や汚水は吸水性樹脂により吸収吸着され、強固にゲル内に保持される。
(d)吸水量が1〜60kgになるように吸水性樹脂の使用量を調整することにより、吸水後の汚泥水吸収土嚢を手軽に搬送することができ作業性を高める。
(e)吸水性樹脂土嚢は、吸水性樹脂がゲル化するので、搬送するのに手ごろな硬さとすることができ、また、吸水性樹脂のゲル化体は保水性に優れるので、保管中や搬送中に汚水や微細懸濁物等の液漏れがなく、外部への搬送作業が容易で作業性や安全性に優れる。特に家屋の床下等の狭い場所や危険物貯蔵所等の床面の滞留汚泥水を排出する場合は著しく作業性や安全性、省力性を高めることがわかった。
【0008】
ここで、付着部としては、袋状部の表面に起毛や固着された繊維状物や、吸水性に優れ毛細管吸水吸着作用のある微細な多孔質構造を有する材料が好ましい。
また袋状部を構成するシートの表面に繊維や目の細かい網体をループパイル状植毛部が、袋状部のシートの上面に高さが1〜10mmで幅が1〜10mm、ピッチが1〜10mmの波状になるように折り曲げその一面を袋状部のシート面に溶着や接着等で固定したものや、袋状部の上面を起毛機で毛羽立たせたもの、等が用いられる。
また、ループ状物としては網目の大きさが0.1〜10mmの網体を用いても良い。
付着部により、汚泥水を繊維間の毛管現象と汚泥のとのファンデルワールス力等により結合させ絡め取ることができる。
【0009】
袋状部の材料としては、水や微細浮遊物、シルト等の微細懸濁物は通過させるが吸水性樹脂粒子は通過させないポア径を有する透水性の織布や不織布、軟質合成樹脂製シートやゴムシート等の不透水性シートに該懸濁物は通過させるが吸水樹脂粒子は通過させない微小孔を開けた材料が用いられる。透水性を有する織布や不織布としては、親水性を有する合成樹脂等が好適に用いられる。
具体的には、不織布としては、スパンポンド法、水流交絡法等により得られるポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリアミド等の繊維からなるものが使用できる。織布としては、セルロース繊維、タンパク繊維等の天然繊維、ビスコース法レーヨン等の再生繊維、酢酸セルロース繊維等の半合成繊維、ポリアミド、ポリビニールアルコール、ポリエステル、ポリアクリレート等の合成繊維、PETボトルや包装材等の合成樹脂を再生したリサイクル品等を用いることができる。
【0010】
吸水性樹脂としては、洪水等の淡水や高潮の海水等の電解質含有水に対して各々適合した材料が選択される。
淡水を吸収する吸水性樹脂としては、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、澱粉系、セルロース系等の天然物系樹脂、澱粉にアクリル酸塩をグラフト重合させた澱粉系、カルボキシセルロースにアクリル酸塩をグラフト重合させたセルロース系、アクリル酸系重合体、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキサイド変性物等の合成系のカルボキシル基、水酸基、エーテル基、アミド基等の親水性の官能基を有する合成樹脂が用いられる。
電解質含有水を吸収する吸水性樹脂としては、アクリルアミド・ターシャリーブチルスルホン酸親水性共重合体、ノニオン系吸水性樹脂等が用いられる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1において、吸水性樹脂に通水補助材が分散混入されている構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。
(a)袋状部の中の吸水性樹脂の層は、水に浸けるとその表面のみが先に吸水してゲル化膨潤を起し、不透水層を形成し内部の吸水性樹脂層に水やシルト、微細浮遊物が通過するのを妨げ、全体のゲル化のスピードが阻害されゲル化に時間を要し、汚泥水を吸水するのに長時間を要するという課題を有していた。しかし、通水補助剤を吸水性樹脂に分散混合することにより、汚泥水が通水補助剤の内部や外表面を伝って吸水性樹脂層の内部全体に通水拡散するので、汚泥水吸収土嚢の汚泥水の吸収速度を著しく高めることができ、作業時間を著しく短縮できる。。
(b)吸水性樹脂に通水補助材が分散混合されているので、吸水性樹脂が汚泥水の水分を吸収しゲル化膨張しながら、同時に、吸水性樹脂間やと吸水性樹脂と通水補助材の間に微細な有機汚泥やシルト等の微細懸濁物を捕捉し保持することができる。
(C)吸水性樹脂全体に汚泥水が吸収されるので、汚泥水の吸収速度が速く、粗粒懸濁物や、シルトや微細浮遊物等の微細懸濁物が水に同伴して付着部に誘引され粗粒懸濁物や、微細懸濁物は付着部や袋状部の繊維間に絡め取られて捕捉され、更にシルトや微細浮遊物は袋状部を通過し吸水性樹脂層に誘引捕捉され保持される。
(d)吸水性樹脂層表面に通水補助剤の一部が露出しているので、吸水性樹脂層の表面が目詰まりを生ずるのを防止し、吸水性樹脂の吸水能を維持できる。
【0012】
ここで、通水補助剤と吸水性樹脂の配合量は、吸水性樹脂の種類にもよるが99.5vol%以下好ましくは90vol%以下になるように混合される。吸水性樹脂が90vol%を超えると、吸水性樹脂が吸水を始めた際に、表面のゲル化膨張が生じ易く、99,5vol%を超えると、吸水性樹脂層の表面のゲル化膨張が一気に進み吸水性樹脂層の表面に不透水層が形成され吸水性樹脂全体のゲル化のスピードが低下する傾向が大きく、また目詰まりの現象が現れやすく、吸水性樹脂土嚢の汚泥水の吸収量が減少するので好ましくない。
【0013】
通水補助剤は0.7〜10vol%以上混入される。
通水補助剤としては、比重が吸水性樹脂に近い物質を用いるのが好ましい。吸水性樹脂と均質に分散混合されやすいためである。具体的には親水性のヤシガラ粉砕物、もみ殻等の多孔質体、パーライト、パルプスラッジ紛体等が用いられる。
なかでも、セルロースを主成分とするタルクパウダー等の繊維状物が好適に用いられる。
比重の大きい汚泥水に使用する場合は砂等の重錘を適宜加えても良い。
【0014】
本発明の請求項3に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1において、付着部が、袋状部の表面に固着された綿、セルロース繊維、わら、竹繊維、ケナフ、ヤシ等の植物性繊維、レーヨン等の化学繊維、ロックウール、グラスウール等の無機繊維の不織布、織り布、ヤシガラ粉砕粉、もみ殻等の多孔質体、フェルトや連続気泡のスポンジ、親水性のメラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロース等のファイバーのいずれか1種以上で形成された吸水性に優れ、毛細管吸水吸着作用のある微細な多孔質構造を有する繊維状物等の材料で形成された構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。
(a)付着部を表面に備えているので、汚泥水中の懸濁物を絡め取ることができる。
(b)付着部の多数の繊維状物で粗粒状や微細状の懸濁物を絡め取るので、懸濁物の保持性に優れる。
【0015】
ここで、付着部としては、濡れやすく、表面張力の大きいものが用いられる。
汚泥水中の水分や微細な有機物やシルトを素早く吸水性樹脂層全体に分散浸透させるためである。
付着部の繊維状物の高さとしては、材料により異なるが、数mm〜10mm程度が好ましい。汚泥水中の懸濁物を絡め取りやすく保持しやすいためである。
付着部の繊維状物の目付としては、材質により異なるが、10〜100g/m
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の物が好ましい。懸濁物中の粗粒物を絡め取り捕捉しやすいことが分かったためである。
付着部の繊維状物の剛性としては、材料により異なるが、0.1d〜15d程度の繊維径を用いるのが好ましい。
また袋状部を構成するシートの表面に繊維や、不織布、目の細かい網体をループパイル状の立体状の植毛部として、袋状部のシートの外周面に高さが1〜10mmで幅が1〜10mm、ピッチが1〜10mmの波状になるように折り曲げその一面を袋状部のシート面に溶着や接着等で固定したものや、袋状部の上面を起毛機で毛羽立たせたものが用いられる。
また、繊維を所定高さの波上に水平方向に重ね合わせて透水性の生地上に接着や溶着でパイル状に立体植毛したものも、粗粒上の懸濁物をも強力に保持し脱落させないので好ましい。
【0016】
本発明の請求項4に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1において、前記
吸水性樹脂に消臭剤、殺菌剤、中和剤、放射性物質吸着剤のいずれか1種以上が混入されている構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。(a)吸水性樹脂中に消臭剤が混入されているので、吸水性樹脂土嚢を外部に取り出した際に、消臭されているので、不快臭がなく取り扱い性に優れる。(b)吸水性樹脂中に殺菌剤や中和剤、放射性物質吸着剤が混入されているので、安全性に優れる。
ここで、放射性物質吸着材としては、ゼオライト、プルシアンブルー、結晶化シリコチタネート、合成ゼオライト、チタン酸塩等が用いられる。
【0017】
本発明の請求項5に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1乃至4のいずれか1に記載の発明において、付着部、袋状部、吸水性樹脂のいずれか1以上が生分解性材料で形成されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4のいずれか1に記載の発明で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。
(a)汚泥水を吸水吸着し安定して保持した吸水性樹脂土嚢を埋立地等にそのまま埋設でき作業性に優れる。
ここで、生分解性ポリマーとしては、微生物系、天然物系、化学合成系が用いられる。
具体的には、ポリ乳酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート―コー3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート等が持ちいられる。
中でも、ポリ乳酸系が、土壌中の微生物や紫外線により生分解を受けやすいので好適に用いられる。
【0018】
本発明の請求項6に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1,3乃至5のいずれか1に記載の発明において、袋状部の周縁部の少なくとも1縁部に1以上の係止孔を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1,3乃至5のいずれか1に記載の発明で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。
(a)係止孔にロープ等の係止具を締結して、吸水性樹脂土嚢を汚泥水の滞留部分に投げ込み、汚泥水を吸収させたのち、係止具を引きずり出しながら床面を清掃するとともに、汚泥水を吸収した吸水性樹脂土嚢を取り出すことができる。
(b)係止孔に係止具を備えた吸水性樹脂土嚢を放射性汚泥水の除去に使用する場合、作業員が滞留汚泥水から離れた場所から操作、作業をできるので、人体への放射線被曝等の被害を防止し、作業性、安全性に優れる。
ここで、係止孔としては、1縁部に1以上形成される。