(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。また、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0014】
<システム構成>
図1は、本実施の形態に従う系統安定化システム1000の全体構成の一例を示す図である。
図1を参照して、系統安定化システム1000は、他の電力系統の一例である基幹系統6に接続された電力系統4を安定化するためのシステムとして機能する。電力系統4には、複数の電気所100A〜100Cと、発電所102とが設けられており、これらは送電線Lを介して互いに接続されている。
【0015】
電気所100A〜100Cには、それぞれ母線2A〜2Cと、変圧器TRa〜TRcと、端末装置10A〜10Cとが設けられる。また、電気所100Aには遮断器CBa1,CBa2が設けられ、電気所100Bには遮断器CBb1,CBb2が設けられ、電気所100Cには遮断器CBc1,CBc2が設けられる。なお、本実施の形態では、電気所100A〜100Cが変電所である構成について説明するが、当該構成に限られず、電路を開閉するための開閉所であってもよい。
【0016】
発電所102には、発電機Gと、母線2Dと、主変圧器TRmと、遮断器CBd1と、遮断器8と、端末装置10Dと、出力制御装置20と、励磁制御装置30とが設けられる。以下では、端末装置10A〜10Dの各々に共通の構成や機能を説明する際には、それらを「端末装置10」と総称する。
【0017】
送電線Lは、例えば、3相2回線の長距離送電線であり、4つの母線2A〜2Dにより区分されている。本明細書では、基幹系統6から母線2Aまでの区間に対応する送電線をL1と称し、母線2Aから母線2Bまでの区間に対応する送電線をL2と称し、母線2Bから母線2Cまでの区間に対応する送電線をL3と称し、母線2Cから母線2Dまでの区間に対応する送電線をL4と称する。なお、発電所102内に設けられた、母線2Dから発電機Gまでの区間に対応する線路は、Lgと称する。
【0018】
母線2A〜2Cには、それぞれ変圧器TRa〜TRcが接続されている。各変圧器TRa〜TRcは、送電電圧を降圧する降圧用の変圧器であり、2次側には2次母線(図示しない)が設けられ、2次母線には負荷(工場、一般家庭等の需要家)が接続される。
【0019】
また、母線2A〜2Dの各々には、当該母線および送電線L間を開閉する遮断器が接続されている。具体的には、遮断器CBa1は母線2Aおよび送電線L1間を開閉し、遮断器CBa2は母線2Aおよび送電線L2間を開閉する。遮断器CBb1は母線2Bおよび送電線L2間を開閉し、遮断器CBb2は母線2Bおよび送電線L3間を開閉する。遮断器CBc1は母線2Cおよび送電線L3間を開閉し、遮断器CBc2は母線2Cおよび送電線L4間を開閉する。遮断器CBd1は母線2Dおよび送電線L4間を開閉する。
【0020】
また、母線2Dには、線路Lgを介して同期発電機で構成される発電機Gが接続されている。具体的には、母線2Dと発電機Gとの間には、昇圧用の主変圧器TRmおよび遮断器8が接続されている。
【0021】
このように、本実施の形態に従う電力系統4では、発電機Gは、基幹系統6より延びる送電線Lに対して接続されている。具体的には、発電機Gは、複数の電気所100A〜100Cの母線2A〜2Cの各々と送電線Lとの間を開閉する複数の遮断器CBa1,CBa2,CBb1,CBb2,CBc1,CBc2、発電所102の母線2Dと送電線Lとの間を開閉する遮断器CBd1とを介して基幹系統6に連系されている。そして、基幹系統6、発電機Gにより送電線Lの電圧を維持するように構成されている。
【0022】
各端末装置10は、対応する遮断器の開閉状態の入力を受け付ける。具体的には、端末装置10Aは遮断器CBa1,CBa2の開閉状態の入力を受け付け、端末装置10Bは遮断器CBb1,CBb2の開閉状態の入力を受け付け、端末装置10Cは遮断器CBc1,CBc2の開閉状態の入力を受け付け、端末装置10Dは遮断器CBd1および遮断器8の開閉状態の入力を受け付ける。各端末装置10は、対応する各遮断器の開閉状態を示す情報を中央制御装置80に送信する。
【0023】
中央制御装置80は、各遮断器CBa1,CBa2,CBb1,CBb2,CBc1,CBc2,CBd1(以下、単に「各遮断器CB」とも称する。)の開閉状態に基づいて予め定められた処理を実行し、励磁制御装置30が有する系統安定化機能をロックするか否かを判断する。中央制御装置80は、当該判断結果を示す情報を出力制御装置20に送信する。中央制御装置80の動作の詳細については後述する。
【0024】
出力制御装置20は、計器用変流器CTを介して線路Lgの電流と、計器用変圧器VTを介して母線2Dの母線電圧とを取り込み、これらの電気量に基づいて、予め定められたリレー演算を実行する。出力制御装置20は、このリレー演算結果と中央制御装置80から受信した判断結果とに基づいて、励磁制御装置30の系統安定化機能をロック(無効)状態にするためのロック信号、または当該機能を有効状態にするための有効信号を励磁制御装置30に出力する。出力制御装置20の動作の詳細については後述する。
【0025】
励磁制御装置30は、系統安定化機能を担う系統安定化器(PSS)32と、端子電圧一定制御機能を担う自動電圧調整器(AVR)34とを含む。以下、励磁制御装置30の動作の一例について説明する。
【0026】
PSS32は、計器用変流器(図示しない)および計器用変圧器(図示しない)を介して計測された電流および電圧に基づいて、発電機Gの出力電力を検出する。PSS32は、発電機Gの出力電力が大きく変動しないように安定化させることにより、電力系統の動揺を抑制するための系統安定化信号をAVR34に出力する。
【0027】
AVR34は、計器用変圧器(図示しない)を介して計測された発電機Gの端子電圧と端子電圧設定値とを比較した偏差を偏差信号とし、その偏差信号とPSS32から入力された系統安定化信号とを重畳した励磁制御信号を励磁機(図示しない)に出力する。励磁機は、励磁制御信号に従って発電機Gの界磁巻線40の励磁電流を制御する。
【0028】
典型的には、PSS32は、出力電力が急増した場合には励磁電流を急減するように系統安定化信号を出力し、出力電力が急減した場合には励磁電流を急増するように系統安定化信号を出力する。
【0029】
励磁制御装置30が、出力制御装置20からロック信号の入力を受け付けた場合には系統安定化機能はロックされる。すなわち、PSS32は、系統安定化信号をAVR34に対して出力しないロック状態となる。一方、PSS32がロックされた状態であるときに、励磁制御装置30が出力制御装置20から有効信号の入力を受け付けた場合には、PSS32のロック状態が解除されて有効状態となる。すなわち、PSS32は、系統安定化信号をAVR34に対して出力する状態となる。
【0030】
<ハードウェア構成>
図2は、本実施の形態に従う出力制御装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3を参照して、出力制御装置20は、補助変成器50と、AD(Analog to Digital)変換部60と、演算処理部70とを含む。
【0031】
補助変成器50は、計器用変流器CTおよび計器用変圧器VTからの系統電気量を取り込み、より小さな電気量に変換して出力する。
【0032】
AD変換部60は、補助変成器50から出力される系統電気量(アナログ量)を取り込んでディジタルデータに変換する。具体的には、AD変換部60は、アナログフィルタと、サンプルホールド回路と、マルチプレクサと、AD変換器とを含む。
【0033】
アナログフィルタは、補助変成器50から出力される電流および電圧の波形信号から高周波のノイズ成分を除去する。サンプルホールド回路は、アナログフィルタから出力される電流および電圧の波形信号を予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。マルチプレクサは、演算処理部70から入力されるタイミング信号に基づいて、サンプルホールド回路から入力される波形信号を時系列で順次切り替えてAD変換器に入力する。AD変換器は、マルチプレクサから入力される波形信号をアナログデータからディジタルデータに変換する。AD変換器は、ディジタル変換した波形信号(ディジタルデータ)を演算処理部70へ出力する。
【0034】
演算処理部70は、CPU(Central Processing Unit)72と、ROM73と、RAM74と、DI(ディジタル入力)回路75と、DO(ディジタル出力)回路76と、入力インターフェイス(I/F)77と、通信インターフェイス(I/F)78とを含む。これらは、バス71で結合されている。
【0035】
CPU72は、予めROM73に格納されたプログラムを読み出して実行することによって、出力制御装置20の動作を制御する。なお、ROM73には、CPU72によって用いられる各種情報が格納されている。CPU72は、たとえば、マイクロプロセッサである。なお、当該ハードウェアは、CPU以外のFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびその他の演算機能を有する回路などであってもよい。
【0036】
CPU72は、バス71を介して、AD変換部60からディジタルデータを取り込む。CPU72は、ROM73に格納されているプログラムに従って、取り込んだディジタルデータを用いて制御演算を実行する。
【0037】
CPU72は、制御演算結果に基づいて、DO回路76を介して、外部の装置に制御指令を出力する。また、CPU72は、DI回路75を介して、その制御指令に対する応答を受け取る。入力インターフェイス77は、典型的には、各種ボタン等であり、系統運用者からの各種設定操作を受け付ける。また、CPU72は、通信インターフェイス78を介して、他の装置(端末装置10、中央制御装置80等)と各種情報を送受信する。
【0038】
なお、端末装置10および中央制御装置80のハードウェア構成は、出力制御装置20のハードウェア構成と同様である。典型的には、端末装置10、出力制御装置20および中央制御装置80は、ディジタル保護継電装置として構成されている。
【0039】
<PSS機能のロック>
本実施の形態に従うPSS機能のロック方式について説明する。具体的には、中央制御装置80によるPSSロック判定方式、および出力制御装置20によるPSSロック出力方式について説明する。
【0040】
図3は、本実施の形態に従うPSSロック判定方式を説明するための図である。
図4は、本実施の形態に従うPSSロック出力方式を説明するための図である。
【0041】
図3を参照して、端末装置10Aは、遮断器CBa1が開放された状態(以下、「開状態」とも称する。)を検出するための開状態検出要素500Aと、遮断器CBa2の開状態検出要素502Aとを含む。端末装置10Bは、遮断器CBb1の開状態検出要素500Bと、遮断器CBb2の開状態検出要素502Bとを含む。端末装置10Cは、遮断器CBc1の開状態検出要素500Cと、遮断器CBc2の開状態検出要素502Cを含む。端末装置10Dは、遮断器CBd1の開状態検出要素500Dを含む。
【0042】
開状態検出要素500Aは、遮断器CBa1が開状態を検出した(すなわち、発電機Gと基幹系統6との連系が遮断器CBa1により遮断された)場合には、出力値“1”を論理ゲート510に出力する。同様に、開状態検出要素500B,開状態検出要素500C,開状態検出要素500Dは、それぞれ遮断器CBb1,CBc1,CBd1の開状態を検出した場合に、出力値“1”を中央制御装置80の論理ゲート510に出力する。開状態検出要素502A,開状態検出要素502B,開状態検出要素502Cは、それぞれ遮断器CBa2,CBb2,CBc2の開状態を検出した場合に、出力値“1”を論理ゲート510に出力する。
【0043】
中央制御装置80は、論理ゲート510およびロック判定出力要素512を含む。論理ゲート510は、開状態検出要素500A〜500D,502A〜502Cの各出力値のOR演算を行ない、演算結果をロック判定出力要素512に出力する。ロック判定出力要素512は、論理ゲート510から“1”の入力を受けた場合には出力値“1”を出力制御装置20(
図4の論理ゲート530)に出力し、論理ゲート510から“0”の入力を受けた場合には値“0”を出力制御装置20に出力する。
【0044】
図4を参照して、出力制御装置20は、有効電力変化率リレー要素514と、オフディレータイマ516と、不足周波数リレー要素518と、過周波数リレー要素520と、周波数変化率リレー要素522と、オフディレータイマ524と、論理ゲート526と、オフディレータイマ528と、論理ゲート530と、出力回路532とを含む。なお、上記の各リレー要素は、動作時(異常検出時)に“1”を出力し、不動作時(定常時)に“0”を出力するものとする。
【0045】
有効電力変化率リレー要素514は、発電機Gから送電線Lに対して出力される有効電力(母線2Dの通過有効電力)の変化率が基準変化率以上である場合に動作して、出力値“1”をオフディレータイマ516に出力する。なお、有効電力は、計器用変流器CTにより計測された線路Lgの電流と、計器用変圧器VTにより計測された母線2Dの電圧とに基づいて算出される。
【0046】
オフディレータイマ516は、有効電力変化率リレー要素514が出力値“1”を出力した場合、その値を時間T1の間維持して論理ゲート526に出力する。時間T1は、例えば、3秒である。
【0047】
不足周波数リレー要素518は、母線2Dの電圧の周波数が不足した場合(すなわち、設定周波数F1未満になった場合)に動作して、出力値“1”を論理ゲート526に出力する。
【0048】
過周波数リレー要素520は、母線2Dの電圧の周波数が過剰になった場合(すなわち、設定周波数F1よりも大きい設定周波数F2以上になった場合)に動作して、出力値“1”を論理ゲート526に出力する。
【0049】
周波数変化率リレー要素522は、母線2Dの電圧の周波数変化率が過大になった場合(設定変化率以上になった場合)に動作して、出力値“1”をオフディレータイマ524に出力する。
【0050】
オフディレータイマ524は、周波数変化率リレー要素522が出力値“1”を出力した場合、その値を時間T2の間維持して論理ゲート526に出力する。時間T2は、例えば、30秒である。
【0051】
論理ゲート526は、オフディレータイマ516、不足周波数リレー要素518、過周波数リレー要素520およびオフディレータイマ524の各出力値のOR演算を行ない、演算結果をオフディレータイマ528に出力する。
【0052】
オフディレータイマ528は、論理ゲート526が出力値“1”を出力した場合、その値を時間T3の間維持して論理ゲート530に出力する。時間T3は、例えば、1秒である。
【0053】
論理ゲート530は、ロック判定出力要素512およびオフディレータイマ528の各出力値のAND演算を行ない、演算結果を出力回路532に出力する。出力回路532は、論理ゲート530から出力値“1”の入力を受けた場合に、一定時間だけ“1”を出力する。
【0054】
上述したロジックによると、発電機Gと基幹系統6との連系が各遮断器CBのいずれかにより遮断された場合、かつ各リレー要素により異常が検出された(電力系統4に故障が発生した)場合に、ロック信号が出力される(すなわち、出力回路532から“1”が出力される)。
【0055】
<PSS機能の有効化>
次に、本実施の形態に従うPSS機能を有効にするための方式について説明する。具体的には、中央制御装置80によるPSS有効判定方式、および出力制御装置20によるPSS有効出力方式について説明する。
【0056】
図5は、本実施の形態に従うPSS有効判定方式を説明するための図である。
図6は、本実施の形態に従うPSS有効出力方式を説明するための図である。
【0057】
図5を参照して、開状態検出要素500A〜500D、502A〜502Cの各々の動作は、
図3で説明した動作と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0058】
中央制御装置80は、論理ゲート610および有効判定出力要素612を含む。論理ゲート610は、開状態検出要素500A〜500D、502A〜502Cの各出力の論理レベルを反転した各値のAND演算を行なう。論理ゲート610は、演算結果を有効判定出力要素612に出力する。
【0059】
有効判定出力要素612は、論理ゲート610から“1”の入力を受けた場合には出力値“1”を出力制御装置20(
図6の論理ゲート624)に出力し、論理ゲート610から“0”の入力を受けた場合には出力値“0”を出力制御装置20に出力する。
【0060】
図6を参照して、出力制御装置20は、不足周波数リレー要素518と、過周波数リレー要素520と、論理ゲート620と、オンディレータイマ622と、論理ゲート624と、オンディレータイマ626と、出力回路628とを含む。不足周波数リレー要素518および過周波数リレー要素520の動作は、
図4で説明した動作と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0061】
論理ゲート620は、不足周波数リレー要素518および過周波数リレー要素520の各出力の論理レベルを反転した各値のAND演算を行ない、演算結果をオンディレータイマ622に出力する。
【0062】
オンディレータイマ622は、論理ゲート620からの出力値“1”が時間T4の間維持された場合に、論理ゲート624に出力値“1”を出力する。時間T4は、母線2Dの周波数が安定しているとみなせる時間に設定される。
【0063】
論理ゲート624は、有効判定出力要素612およびオンディレータイマ622の各出力値のAND演算を行ない、演算結果をオンディレータイマ626に出力する。オンディレータイマ626は、論理ゲート624からの出力値“1”が時間T5の間維持された場合に、論理ゲート628に出力値“1”を出力回路628に出力する。論理ゲート628は、出力回路628は、オンディレータイマ626から出力値“1”の入力を受けた場合に、一定時間だけ“1”を出力する。
【0064】
上述したロジックによると、発電機Gと基幹系統6との連系が各遮断器CBにより遮断されていない場合、かつ各リレー要素により異常が検出されていない(電力系統4に故障が発生していない)場合に、PSS機能を有効化するための有効信号が出力される(すなわち、出力回路628から“1”が出力される)。
【0065】
<機能構成>
図7は、本実施の形態に従う系統安定化システム1000の機能構成を示す模式図である。
図7を参照して、端末装置10は、開閉状態検出部110と、開閉情報送信部120とを含む。中央制御装置80は、開閉情報受信部810と、状態判断部820と、判断結果送信部830とを含む。出力制御装置20は、判断結果受信部210と、電気量取得部220と、故障判定部230と、出力制御部240とを含む。これらの各機能は、例えば、各装置の演算処理部のCPUがROMに格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、これらの機能の一部または全部はハードウェアで実現されるように構成されていてもよい。
【0066】
端末装置10の開閉状態検出部110は、DI回路を介して、各遮断器CBの開閉状態を検出する。開閉状態検出部110は、各遮断器CBが開状態なのか、閉状態(すなわち、閉じた状態)なのかを検出する。開閉情報送信部120は、通信インターフェイスを介して、検出結果である開閉状態を示す情報(開閉情報)を中央制御装置80に送信する。端末装置10Aの開閉状態検出部110および開閉情報送信部120は、例えば、
図3中の開状態検出要素500Aおよび開状態検出要素502Aに対応する。
【0067】
中央制御装置80の開閉情報受信部810は、通信インターフェイスを介して、各端末装置10から送信される開閉情報を受信する。状態判断部820は、各遮断器CBの開閉状態に基づいて、各遮断器CBのうちのいずれかの遮断器が開状態であるか否かを判断する。判断結果送信部830は、通信インターフェイスを介して、状態判断部820の判断結果(各遮断器CBのうちのいずれかの遮断器が開状態であるとの判断結果、または各遮断器CBのすべてが閉状態であるとの判断結果)を出力制御装置20に送信する。
【0068】
開閉情報受信部810および状態判断部820は、例えば、
図3中の論理ゲート510および
図5中の論理ゲート610に対応する。判断結果送信部830は、例えば、
図3中のロック判定出力要素512および
図5中の有効判定出力要素612に対応する。
【0069】
出力制御装置20の判断結果受信部210は、通信インターフェイスを介して、中央制御装置80から送信される判断結果を受信する。電気量取得部220は、計器用変流器CTおよび計器用変圧器VTを介して、電気量を取得する。具体的には、電気量取得部220は、母線2Dと発電機Gとの間の線路Lgの電流を計器用変流器CTを介して取得し、母線2Dの電圧を計器用変圧器VTを介して取得する。
【0070】
故障判定部230は、取得された電気量に基づいてリレー演算を実行することにより、電力系統4で故障が発生しているか否かを判定する。具体的には、故障判定部230は、発電所102の母線2Dの通過有効電力の変化率が異常である場合に動作する有効電力変化率リレーと、母線2Dの電圧の周波数Fの大きさが異常である場合に動作する周波数リレーと、周波数Fの変化率が異常である場合に動作する周波数変化率リレーとを含む。周波数リレーは、周波数Fが設定周波数F1未満になった場合に動作する不足周波数リレーと、周波数Fが設定周波数F2以上になった場合に動作する過周波数リレーとを含む。すなわち、周波数リレーは、周波数Fが整定範囲(F1≦F<F2)から外れた場合に動作する。
【0071】
故障判定部230は、有効電力変化率リレー、周波数リレーおよび周波数変化率リレーのうちの少なくとも1つのリレーが動作した場合に、電力系統4で故障が発生していると判定する。また、故障判定部230は、周波数リレーが動作しない時間(周波数異常が発生していない時間)が予め定められた時間(例えば、時間T4)以上になった場合に、電力系統4で故障が発生していないと判定する。
【0072】
出力制御部240は、各遮断器の開閉状態の判断結果に基づいて、PSS32による系統安定化信号出力をロックまたは有効化する。具体的には、ある局面では、出力制御部240は、各遮断器CBのうちのいずれかの遮断器が開状態であるとの判断結果に少なくとも基づいて、PSS32による系統安定化信号出力をロックする。この場合、出力制御部240は、ロック信号を励磁制御装置30に出力する。別の局面では、出力制御部240は、各遮断器CBがすべて閉状態であるとの判断結果に基づいて、当該系統安定化信号出力を有効にする(すなわち、系統安定化信号がロックされている場合、当該ロックを解除する)。この場合、出力制御部240は、有効信号を励磁制御装置30に出力する。
【0073】
なお、出力制御部240は、各遮断器CBの開閉状態の判断結果に加えて、故障判定部230による判定結果をさらに考慮して、PSS32による系統安定化信号出力をロックまたは有効化する構成であってもよい。具体的には、ある局面では、出力制御部240は、各遮断器CBのうちのいずれかの遮断器が開状態であると判断され、かつ電力系統4で故障が発生していると判定された場合に、系統安定化信号出力をロックする。この場合、出力制御部240は、ロック信号を励磁制御装置30に出力する。別の局面では、PSS32の系統安定化信号出力がロックされている場合、出力制御部240は、各遮断器CBがすべて閉状態であると判断され、かつ電力系統4で故障が発生していないと判定された場合に、系統安定化信号出力を有効にする。
【0074】
また、
図4,
図6,
図7を参照して、判断結果受信部210は、例えば、論理ゲート530、624に対応する。故障判定部230は、例えば、有効電力変化率リレー要素514、不足周波数リレー要素518、過周波数リレー要素520、周波数変化率リレー要素522、オフディレータイマ516,524,528、オンディレータイマ622、および論理ゲート526,620に対応する。出力制御部240は、例えば、論理ゲート530,624、オンディレータイマ626および出力回路532,628に対応する。
【0075】
<処理手順>
図8は、本実施の形態に従う系統安定化システム1000の処理手順の一例を示すフローチャートである。典型的には、
図8に示す各ステップは、各装置のCPUにより実行される。
【0076】
図8を参照して、端末装置10は、各遮断器CBの開閉状態を検出して(ステップS10)、当該開閉状態を示す開閉情報を中央制御装置80に送信する(ステップS12)。
【0077】
中央制御装置80は、各端末装置10から各遮断器CBの開閉状態を示す情報を受信して(ステップS14)、当該情報に基づいて各遮断器CBがすべて閉状態であるか否かを判断する(ステップS16)。
【0078】
各遮断器CBがすべて閉状態である場合には(ステップS16においてYES)、中央制御装置80は、各遮断器がすべて閉状態であるとの判断結果(発電機Gと基幹系統6とが連系されているとの判断結果)を出力制御装置20に送信する(ステップS18)。そうではない場合には(ステップS16においてNO)、中央制御装置80は、各遮断器のいずれかが開状態であるとの判断結果(発電機Gと基幹系統6との連系が遮断されているとの判断結果)を出力制御装置20に送信する(ステップS20)。
【0079】
出力制御装置20は、計器用変流器CTおよび計器用変圧器VTを介して電気量を取得して(ステップS22)、中央制御装置80から送信された判断結果を受信する(ステップS24)。
【0080】
出力制御装置20は、発電機Gと基幹系統6との連系が遮断されているとの判断結果を受信しているか否かを判断する(ステップS26)。当該判断結果を受信している場合(ステップS26においてYES)、出力制御装置20は、電気量に基づいて、電力系統4で故障が発生しているか否かを判断する(ステップS28)。故障が発生している場合(すなわち、発電機Gと基幹系統6との連系が遮断されており、かつ故障が発生している場合)には(ステップS28においてYES)、出力制御装置20は、系統安定化信号をロックするためのロック信号を励磁制御装置30に出力する(ステップS30)。一方、故障が発生していない場合には(ステップS28においてNO)、出力制御装置20は処理を終了する。この場合、出力制御装置20は、ロック信号を出力しない。
【0081】
これに対して、発電機Gと基幹系統6とが連系されているとの判断結果を受信している場合(ステップS26においてNO)、出力制御装置20は、電気量に基づいて、電力系統4で故障が発生しているか否かを判断する(ステップS32)。故障が発生していない場合(すなわち、発電機Gと基幹系統6とが連系されており、かつ故障が発生していない場合)には(ステップS32においてNO)、出力制御装置20は、系統安定化信号を有効にするための有効信号を励磁制御装置30に出力する(ステップS34)。一方、故障が発生している場合には(ステップS32においてYES)、出力制御装置20は処理を終了する。この場合、出力制御装置20は、有効信号を出力しない。
【0082】
<利点>
本実施の形態によると、発電所102内の母線2Dに接続された遮断器CBd1の開閉情報だけではなく、発電所102から離れた各電気所100A〜100C内の母線2A〜2Cに接続された各遮断器CBa1〜CBc2の開閉情報も考慮して、発電機Gと基幹系統6との連系が遮断されているか否かが判断される。したがって、送電線Lの各地点において発電機Gと基幹系統6との連系の遮断を精度よく把握できるため、発電側が単独系統となった場合にPSSのロックを迅速に行なうことができる。これにより、単独系統発生時におけるPSS不要動作による電圧上昇を防ぐことができる。また、発電機Gが基幹系統に連系した場合には、PSSの有効化を迅速に行なうことにより、電力系統の安定度を維持できる。
【0083】
また、本実施の形態によると、発電機Gの出力に関わらず、PSSをロックおよび有効にすることができる。
【0084】
さらに、本実施の形態によると、電力系統4での故障発生の有無を考慮してPSSをロックおよび有効にすることもできる。これによると、電力系統4で故障が発生していない場合における不要なPSSのロックを防ぐことができるとともに、電力系統4で故障が発生している場合における不要なPSSの有効化を防ぐことができる。
【0085】
[その他の実施の形態]
上述した実施の形態では、出力制御装置20は、電力系統4での故障発生の有無を判定する場合に、有効電力変化率リレー、周波数リレーおよび周波数変化率リレーの3つを利用する構成について説明したが、当該構成に限られない。例えば、出力制御装置20は、3つのリレーの少なくとも1つを利用して故障の有無の判定を実行してもよい。また、リレーの種類も上記に限られず、出力制御装置20は、母線2Dが設定電圧以上となった場合に動作する過電圧リレー、母線2Dが設定電圧未満となった場合に動作する不足電圧リレーを利用して、故障判定を実行してもよい。
【0086】
上述した実施の形態において、中央制御装置80および出力制御装置20は、別体の装置として説明したが、一体の装置として構成されていてもよい。この場合、中央制御装置80および出力制御装置20を一体にした制御装置は、これらの各機能を有する。典型的には、当該制御装置は、
図7中の開閉情報受信部810と、状態判断部820と、電気量取得部220と、故障判定部230と、出力制御部240とを含む。この場合、制御装置は、発電所102内に設けられる。
【0087】
また、端末装置10Dおよび出力制御装置20が、一体の装置として構成されていてもよい。この場合、当該装置は、典型的には、
図7中の開閉状態検出部110と、状態判断部820と、判断結果送信部830とを含む。
【0088】
さらに、上述した実施の形態において、端末装置10D、中央制御装置80および出力制御装置20を、一体の制御装置として構成されていてもよい。この場合、当該制御装置は、
図7中の開閉状態検出部110と、状態判断部820と、電気量取得部220と、故障判定部230と、出力制御部240とを含む。
【0089】
上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。
【0090】
また、上述した実施の形態において、その他の実施の形態で説明した処理や構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。